(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のジエンエラストマーが、アルコキシシラン官能基およびアミン官能基を有するカップリング剤とのカップリング反応、それに続いてアルコキシラン官能基のシラノール官能基への加水分解によって得ることができるジエンエラストマーである、請求項1または請求項2に記載のトレッド。
第1のジエンエラストマーに存在するスター鎖および分岐鎖の量が、第1のジエンエラストマーの総質量の0質量%から50質量%未満の範囲である、請求項1から5までのいずれか1項に記載のトレッド。
【発明を実施するための形態】
【0005】
I−発明の詳細な説明
本説明において、別途明示されない限り、示される全ての百分率(%)は、質量%である。略号「phr」は、ゴム組成物中に存在する全エラストマーにあるエラストマーマトリックス100質量部当たりの質量部を表す。ガラス転移温度「Tg」の全ての値は、規格ASTM D3418(1999年)によるDSC(示差走査熱量測定)による既知の方法で測定する。
さらに、表現「aとbの間」により示される値の任意の範囲は、aより多くbより少ない値の範囲(即ち、境界値aおよびbを除く)を表し、一方、表現「aからbまで」により示される値の任意の範囲は、aからbまでの値の範囲(即ち、厳密な境界値aおよびbを含む)を表す。
【0006】
I−1.ジエンエラストマー
「ジエン」型のエラストマー(または、おおまかに「ゴム」、2つの用語は同意語とみなされる)は、知られているように、少なくとも部分的に(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)ジエンモノマー(共役または非共役の2つの炭素−炭素二重結合を有するモノマー)に由来する(1つまたは複数の)エラストマーとして理解されたい。
これらジエンエラストマーは、「本質的に不飽和な」または「本質的に飽和な」の2つの範疇に分類することができる。「本質的に不飽和な」とは、少なくとも部分的に共役ジエンモノマーに由来し、15%(モル%)超のジエンを起源とする単位(共役ジエン)の量を有するジエンエラストマーを通常は意味し、従って、ブチルゴム、またはEPDM型であるジエンとα−オレフィンとのコポリマーなどのジエンエラストマーは上述の定義には含まれず、とりわけ「本質的に飽和な」ジエンエラストマー(少量または極少量のジエンを起源とする単位の量で、常に15%未満)と認定することができる。「本質的に不飽和な」ジエンエラストマーの範疇の中で、「強く不飽和な」ジエンエラストマーとは、特にジエンを起源とする単位(共役ジエン)の量が50%超を有するジエンエラストマーを意味する。
【0007】
どんな種類のジエンエラストマーにも当てはまるが、タイヤの当業者であれば、本発明が本質的に不飽和なジエンエラストマーで実施することが好ましいことを理解されよう。
こうした定義をすると、本発明による組成物に使用できるジエンエラストマーは、とりわけ以下のものを意味する。
(a)好ましくは4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合により得られる任意のホモポリマー、
(b)1種もしくは複数種の共役ジエンと、他の共役ジエンとの、または好ましくは8〜20個の炭素原子を有する1種もしくは複数種のビニル芳香族化合物との、共重合により得られる任意のコポリマー。
【0008】
とりわけ適当な共役ジエンとしては、ブタジエン−1,3,2−メチル−1,3−ブタジエン、例えば2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエンなどの2,3−ジ(C
1−C
5アルキル)−1,3−ブタジエン、アリール−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエンがある。適当なビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、オルト−、メタ−、パラ−メチルスチレン、「ビニル−トルエン」市販混合物、パラ−tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンがある。
本発明の一実施形態によれば、第1のジエンエラストマーはSBR、好ましくはSBR溶液である。
本発明のこの実施形態によれば、ジエンとビニル芳香族、中でも特にスチレンとのコポリマーのガラス転移温度Tgは、−55℃〜−40℃であることが有利である。
一般にジエンエラストマーが保持する官能基は、エラストマー鎖の末端または鎖内に(即ち鎖の末端から離れて)位置することができる。第1の場合は、例えば官能基を有する重合開始剤を使用して、または官能化剤を使用してジエンエラストマーを調製する時に、起こる。第2の場合は、例えばジエンエラストマーをカップリング剤または官能基を有する星型分岐剤を使用して修飾する時に、起こる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、シラノール官能基およびペンダントアミン官能基は、第1のジエンエラストマーの鎖の末端から離れて位置している。
第1のジエンエラストマーが保持するアミン官能基はペンダント基である。アミン官能基のペンダント位置は、知られているように、アミン官能基の窒素原子が、第1のジエンエラストマーのエラストマー鎖の炭素−炭素結合の間に挿入されていないことを意味する。
本発明の第1の変形によれば、第1のジエンエラストマーが保持するシラノール官能基はペンダント基であり、このことはシラノール官能基のケイ素原子が、第1のジエンエラストマーのエラストマー鎖の炭素−炭素結合の間に挿入されていないと言うことに等しい。ペンダントシラノール官能基を有するジエンエラストマーは、例えばアルコキシシラン基を有するシランによってエラストマー鎖をヒドロシリル化し、続いてアルコキシシラン官能基を加水分解してシラノール官能基にすることによって、調製することができる。
【0010】
本発明の第2の変形によれば、第1のジエンエラストマーが保持するシラノール官能基はペンダント基ではなく、エラストマー鎖に位置する。このことは、シラノール官能基のケイ素原子が第1のジエンエラストマーのエラストマー鎖の炭素−炭素結合の間に挿入されていると言うことに等しい。こうしたジエンエラストマーは、エラストマー鎖と、アルコキシシラン官能基およびアミン官能基を有するカップリング剤とのカップリング反応、それに続くアルコキシシラン官能基のシラノール官能基への加水分解により、調製され得る。適当なカップリング剤としては、例えば、ジアルキル基がC
1−C
10、好ましくはC
1−C
4であるN,N−ジアルキルアミノプロピルトリアルコキシシラン:化合物として、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン;3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン;3−(N,N−ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン;本発明の実施形態が何であれ特に好ましい3−(N,N−ジエチルアミノプロピル)トリエトキシシランがある。この第2の変形は好ましく、本発明のいずれの実施形態にも当てはまる。
【0011】
第1または第2の変形によれば、ジエンエラストマーが保持するアルコキシシラン官能基を加水分解してシラノール官能基にすることは、特許出願EP2266819A1他に記載の手順により、ジエンエラストマー含有溶液をストリッピングする工程により、実施することができる。
本発明の好ましい実施形態によれば、アミン官能基は第三級アミンである。本発明の実施形態が何であれ、第三級アミン官能基として、C
1−C
10アルキルラジカル、好ましくはC
1−C
4アルキル、より好ましくはメチルまたはエチルラジカルで置換されたアミンを挙げることができる。
【0012】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、第1のジエンエラストマーは主に線状形態である。即ち、スター鎖または分岐鎖を含む場合、これらはこのエラストマー中で少ない質量分率を示す。即ち、第1ジエンエラストマー中に存在するスター鎖および分岐鎖の量は、第1ジエンエラストマーの総質量の0質量%〜50質量%未満の範囲である。
第1のジエンエラストマーは、アミン官能基の化学的性質、ミクロ構造、またはマクロ構造が互いに異なるエラストマーの混合物からなり得ると理解すべきである。
本発明によるトレッドの組成物のエラストマーマトリックスが、第2のエラストマーを含む時、この第2のエラストマーはジエンエラストマーである。第2のジエンエラストマーは、シラノール官能基およびペンダントアミン官能基のいずれも有しない点で、第1のジエンエラストマーとは異なる。それでも、この第2のエラストマーは第1のジエンエラストマーと同じまたは異なるミクロ構造またはマクロ構造を有することができる。第2にエラストマーは0〜50%、好ましくは0〜25%、より好ましくは0〜10%の割合で使用される。換言すれば、エラストマーマトリックスは、50質量%超、好ましくは75質量%超、より好ましくは90質量%超の第1のジエンエラストマーを含み、100%に対する残りは第2のジエンエラストマーからなる。
【0013】
第2のジエンエラストマーは、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、またはこれらエラストマーの混合物でもよい。
I−2.補強用充填材
別の不可欠な特徴として、本発明によるトレッドのゴム組成物は、120〜140phrのシリカを含む。
使用するシリカは、当業者に公知の任意の補強用シリカでもよく、とりわけ、BET表面積ならびにCTAB比表面積がいずれも450m
2/g未満、好ましくは30〜400m
2/g、とりわけ60〜300m
2/gを有する、任意の沈降シリカまたは熱分解法シリカでもよい。高分散性沈降シリカ(「HDSs」と称する)として、例えばDegussa社による「Ultrasil」7000および「Ultrasil」7005シリカ、Rhodia社による「Zeosil」シリカ1165MP、1135MPおよび1115MP、PPG社による「Hi−Sil」シリカEZ150G、Huber社による「Zeopol」シリカ8715、8745および8755、ならびに特許出願WO03/16387に記載の高比表面積を備えたシリカを挙げることができる。
【0014】
当業者であれば、本段落に記載のシリカ充填材と同等なものとして、異種の補強用充填材、とりわけカーボンブラックなどの有機物を使用することは、この補強用充填材がシリカで覆われることになるので、可能であろうと理解されよう。一例として、例えば特許文書WO96/37547、WO99/28380に記載されたタイヤ用カーボンブラックを挙げることができる。
125〜135phrの範囲にあるシリカの量が有利である。
本発明の一実施形態によれば、本発明によるトレッドのゴム組成物は、カーボンブラックを含むことができる。カーボンブラックが存在する場合、20phr未満、より好ましくは10phr未満(例えば0.5〜20phr、とりわけ2〜10phr)の量で使用することが好ましい。記載の範囲において、無機補強用充填材がもたらす典型的な性能が損なわれることなく、カーボンブラックの着色特性(黒色顔料着色剤)および抗紫外線特性の利点が得られる。
【0015】
シリカをジエンエラストマーにカップリングするために、カップリング剤、通常は化学的および/または物理的性質の十分な結合を、無機充填材(充填材粒子の表面)とジエンエラストマーとの間に設けることを意図したシラン(または結合剤)が、周知のように使用される。このカップリング剤は少なくとも二官能性である。少なくとも二官能性のオルガノシランまたはポリオルガノシロキサンを特に使用する。
とりわけ、特定の構造に応じて「対称」または「非対称」と称するポリ硫化シランが、例えば特許出願WO03/002648(または米国特許出願公開第2005/016651号)およびWO03/002649(または米国特許出願公開第2005/016650号)に記載の通り、使用される。
【0016】
以下の定義に限定されることはないが、以下の一般式(I)に相当するポリ硫化シランが特に適当である:
(I) Z−A−S
x−A−Z
[式中、
・Xは2〜8(好ましくは2〜5)の整数であり;
・符号Aは、同一でも異なってもよいが、二価の炭化水素ラジカル(好ましくはC
1−C
18アルキレン基またはC
6−C
12アリーレン基、より具体的にはC
1−C
10、とりわけC
1−C
4アルキレン、特にプロピレン)であり;
・符号Zは、同一でも異なってもよいが、以下の3つの式のうちの1つに相当する:
【0017】
【化1】
[式中、
・ラジカルR
1は、置換されていても置換されていなくてもよく、かつ同一でも異なってもよく、C
1−C
18アルキル、C
5−C
18シクロアルキルまたはC
6−C
18アリール基(好ましくはC
1−C
6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、とりわけC
1−C
4アルキル基、より具体的にはメチルおよび/またはエチル)を示し;
・ラジカルR
2は、置換されていても置換されていなくてもよく、かつ同一でも異なってもよく、C
1−C
18アルコキシまたはC
5−C
18アルコキシル基(好ましくはC
1−C
8アルコキシルおよびC
5−C
8シクロアルコキシルから選択される基、さらにより好ましくはC
1−C
4アルコキシルから選択される基、特にメトキシおよびエトキシ)を示す。]]
【0018】
上記式(I)に相当するポリ硫化アルコキシシランの混合物、とりわけ通常市販されている混合物の場合、「x」の平均値は好ましくは2〜5の分数、より好ましくは4に近い。しかし本発明は、例えば二硫化アルコキシシラン(x=2)でも有利に実施することができる。
【0019】
ポリ硫化シランの例として、より具体的には、ビス(アルコキシ(C
1−C
4)−アルキル(C
1−C
4)シリル−アルキル(C
1−C
4))のポリスルフィド(とりわけジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、例えばビス(3−トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3−トリエトキシシリルプロピル)のポリスルフィドを挙げることができる。これらの化合物の中で、式[(C
2H
5O)
3Si(CH
2)
3S
2]
2であり、TESPTと略されるビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または、式[(C
2H
5O)
3Si(CH
2)
3S]
2であり、TESPDと略されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが、特に使用される。好ましい例として、ビス(モノアルコキシル(C
1−C
4)−ジアルキル(C
1−C
4)シリルプロピル)のポリスルフィド(とりわけジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、より具体的には、前述の特許出願WO02/083782(または米国特許第7217751号)に記載のビス−モノエトキシジメチルシリルプロピルテトラスルフィドも挙げることができる。
【0020】
ポリ硫化アルコキシシラン以外のカップリング剤の例として、とりわけ、例えば特許出願WO02/30939(または米国特許第6774255号)、WO02/31041(または米国特許出願公開第2004/051210号)、およびWO2007/061550に記載の二官能性POS(ポリオルガノシロキサン)もしくはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式IにおいてR
2=OH)、または、例えば特許出願WO2006/125532、WO2006/125533、WO2006/125534に記載の、他のシランもしくはアゾジカルボニル官能基を有しているPOSを挙げることができる。
他の硫化シランの例として、例えば米国特許第6849754号、WO99/09036、WO2006/023815、WO2007/098080の特許または特許出願に記載の、例えば少なくとも1つのチオール官能基(−SH)(メルカプトシランと称する)および/または少なくとも1つのブロックされたチオール官能基を有するシランを挙げることができる。
【0021】
もちろん、とりわけ前述の特許出願WO2006/125534に記載の、上記カップリング剤の混合物もまた使用することができる。
カップリング剤の含量は20phr未満が有利であるが、極力少量使用することが一般に望ましいことを理解されたい。カップリング剤の典型的な量は、シリカの量に対して0.5〜15質量%に相当する。その量は好ましくは0.5〜15phrであり、より好ましくは3〜12phrである。この量は、組成物に使用するシリカの量に応じて当業者により容易に調節される。
【0022】
I−3.可塑剤系:
本発明によるトレッドのゴム組成物の別の不可欠な特徴は、5〜60phrの範囲の含量Aに従った、Tgが20℃超を有する炭化水素含有樹脂と、0〜60phrの範囲の含量Bに従った、液体可塑剤とを含み、総量A+Bが60phr以上と理解すべき、特殊な可塑剤系をゴム組成物が含むことである。
油のような液体可塑剤とは対照的に、室温(23℃)で固体の化合物に対して、当業者に公知な定義により、「樹脂」という呼称を本出願では留保している。
【0023】
炭化水素含有樹脂は当業者にはなじみのあるポリマーで、本質的に炭素と水素に基づくが、場合により他の種類の原子も含み、特にポリマーマトリックス中の可塑剤または粘着性付与剤として使用することができる。炭化水素含有樹脂は、使用するレベルで、対象とするポリマー組成物と本来混和性(即ち相溶性)であり、その結果真の希釈剤として作用する。炭化水素含有樹脂は、例えばR.Mildenberg、M.ZanderおよびG.Collin著(New York,VCH、1997、ISBN3−527−28617−9)「炭化水素樹脂」という表題の著作物に記載されており、第5章でその用途、とりわけタイヤゴム(5.5「Rubber Tires and Mechanical Goods」)について考察している。炭化水素含有樹脂は、脂肪族/芳香族タイプ、即ち脂肪族および/または芳香族モノマーに基づく、脂肪族、脂環式、芳香族、水素化芳香族でもよい。炭化水素含有樹脂は天然または合成、石油系または非石油系(石油系なら、石油樹脂としても知られる)であってもよい。炭化水素含有樹脂のTgは好ましくは0℃超であり、とりわけ20℃超(ほとんどの場合30℃〜95℃)である。
【0024】
知られているように、炭化水素含有樹脂は、加熱により軟化し従って成形できるという意味で、熱可塑性樹脂とも表現することができる。炭化水素含有樹脂は軟化点によっても定義できる。炭化水素含有樹脂の軟化点は、そのTg値より通常は約50〜60℃高い。軟化点は規格ISO4625(「環球」法)により測定する。マクロ構造(Mw、MnおよびPDI)は、以下に示すサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定する。
念のために言えば、SEC分析は例えば、溶液中の高分子を多孔質ゲルで満たされたカラムを通過させて高分子の大きさによって分離することからなり、分子はその流体力学的容積によって分離され、最も容積の大きいものが最初に溶出される。分析する試料は、単純に事前に適当な溶媒であるテトラヒドロフランに1g/リットルの濃度で溶解させる。次に溶液を0.45μm孔のフィルターでろ過し、続いて装置に注入する。使用する装置は例えば以下の条件による「Waters alliance」クロマトグラフィーシリーズである:
・溶出溶媒:テトラヒドロフラン
・温度:35℃
・濃度:1g/リットル
・流速:1ミリリットル/分
・注入量:100μリットル
・ポリスチレン標準物質によるムーアの検量線作成
・「Waters」カラム直列3本セット(「Styragel HR4E」、「Styragel HR1」および「Styragel HR0.5」)
・示差屈折系(例えば「WATERS 2410」)による検出、これは操作用ソフトウエア(例えば「Waters Millenium」)を装備してもよい。
【0025】
ムーアの検量線作成は、低PDI(1.2未満)を備え、分析すべき分子量範囲を包含する既知分子量のポリスチレンである一連の市販標準物質を用いて実施する。質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および多分散性指数(PDI=Mw/Mn)を、記録データ(分子量の質量分布カーブ)から得る。
本出願で示される分子量の全ての値は、従ってポリスチレン標準物質により得られる検量線に関係する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、炭化水素含有樹脂は以下の性質の少なくとも1つ、より好ましくは全てを有する:
・25℃超(特に30℃〜100℃)、より好ましくは30℃超(特に30℃〜95℃)のTg
・50℃超(特に50℃〜150℃)の軟化点
・400〜2000g/モル、好ましくは500〜1500g/モルの数平均分子量(Mn)
・3未満、好ましくは2未満(念のため:PDI=Mw/Mn、Mwは質量平均分子量)の多分散性指数(PDI)。
【0027】
これら炭化水素含有樹脂の例として、シクロペンタジェンホモポリマーもしくはコポリマー樹脂(CPDと略す)、ジシクロペンタジェンホモポリマーもしくはコポリマー樹脂(DCPDと略す)、テルペンホモポリマーもしくはコポリマー樹脂、C
5留分ホモポリマーもしくはコポリマー樹脂、C
9留分ホモポリマーもしくはコポリマー樹脂、α−メチルスチレンホモポリマーもしくはコポリマー樹脂、またはこれらの樹脂の混合物を挙げることができる。上記コポリマー樹脂の中で、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、テルペンフェノールコポリマー樹脂、(D)CPD/C
5留分コポリマー樹脂、(D)CPD/C
9留分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、C
5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、またはこれらの樹脂の混合物をより具体的に挙げることができる。
【0028】
ここで用語「テルペン」は、知られているように、α−ピネンモノマー、β−ピネンモノマーおよびリモネンモノマーを包含する。リモネンモノマーを使用することが好ましく、これは、知られているように、3種の可能な異性体の形で存在する化合物である:L−リモネン(左旋性鏡像異性体)、D−リモネン(右旋性鏡像異性体)、または他にジペンテン(右旋性と左旋性鏡像異性体のラセミ体)。適当なビニル芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、オルト−メチルスチレン、メタ−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、ビニル−トルエン、パラ−tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、C
9留分(またはより一般的にC
8−C
10留分)由来の任意のビニル芳香族モノマーがある。
より具体的には、(D)CPDホモポリマー樹脂、(D)CPD/スチレンコポリマー樹脂、ポリリモネン樹脂、リモネン/スチレンコポリマー樹脂、リモネン/D(CPD)コポリマー樹脂、C
5留分/スチレンコポリマー樹脂、C
5留分/C
9留分コポリマー樹脂、またはこれらの樹脂の混合物を挙げることができる。
【0029】
上記全ての樹脂は当業者にはなじみがあり、市販されている。例えば、DRT社から「Dercolyte」という名称でポリモネン樹脂が、Neville Chemical社から「Super Nevtac」という名称で、Kolon社から「Hikorez」という名称で、もしくはExxon Mobil社から「Escorez」という名称でC
5留分/スチレン樹脂もしくはC
5留分/C
9留分樹脂が、またはStruktol社から「40MS」もしくは「40NS」という名称(芳香族および/または脂肪族樹脂の混合物)で、販売されている。
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、樹脂は好ましくは、リモネンのホモポリマーもしくはコポリマー、または他にC
5留分とC
9留分とのコポリマーなどのテルペン樹脂である。
【0030】
液体可塑剤は、好ましくは−20℃未満、より好ましくは−40℃のガラス転移温度を有する。
芳香族であれ非芳香族であれ任意のエキステンダー油、またはジエンエラストマーに関して可塑剤特性が知られている任意の液体可塑剤を、液体可塑剤として使用することができる。室温(23℃)において、これらの可塑剤またはこれらの油は、とりわけ室温で本来固体である炭化水素含有樹脂とは対照的に、様々な粘度で、液体(即ち、念のために言えば、容器の形状をとることができる物質)である。
特に適当な液体可塑剤としては、ナフテン油、パラフィン油、DAE油、MES(中度抽出溶媒和物(Medium Extracted Solvates))油、TDAE(処理留出物芳香族系抽出物(Treated Distillate Aromatic Extracts))油、RAE(残留芳香族抽出物(Residual Aromatic Extract))油、TRAE(処理残留芳香族抽出物(Treated Residual Aromatic Extract))油およびSRAE(安全残留芳香族抽出物(Safety Residual Aromatic Extract))油、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤ならびにこれらの化合物の混合物がある。
【0031】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、液体可塑剤は好ましくは植物油またはトリオレイン酸グリセロールである。とりわけ、オレイン酸が豊富な植物油は極めて適しており、植物油に由来する脂肪酸(または、もし何種類も存在するなら全ての脂肪酸)には、オレイン酸が質量割合で60%以上、好ましくは質量割合で70%以上、より好ましくは80%以上含まれる。適当な植物油として、ヒマワリ油を挙げることができ、ヒマワリ油に由来する全脂肪酸には、オレイン酸が質量割合で60%以上、好ましくは70%以上、本発明の特に有利な実施形態によれば質量割合で80%以上含まれる。ヒマワリ油に由来する全脂肪酸がオレイン酸を質量割合で80%以上含む時、そのヒマワリ油はオレインヒマワリ油と呼ばれる。
別の植物油として、ヒマワリ油に通常存在する脂肪酸トリエステルであるトリオレイン酸グリセロールを、液体可塑剤として使用することができる。
【0032】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、炭化水素含有樹脂および液体可塑剤の総量A+Bは、好ましくは60〜90phrの範囲、より好ましくは60〜80phrの範囲である。
本発明の好ましい実施形態によれば、炭化水素含有樹脂の量であるAは35〜60phrの範囲であり、液体可塑剤の量であるBは0〜35phrの範囲である。より好ましくはAは40phr超で60phr以下であり、Bは0〜30phrの範囲である。
【0033】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、液体可塑剤の量は15〜30phrである。
本発明の特別な実施形態によれば、AとBの比は1超、好ましくは2以上である。
本発明の別の特別な実施形態によれば、(A+B)と、無機補強用充填材とりわけシリカの質量との質量比は、40〜60%の範囲、好ましくは50〜60%である。
I−4.様々な添加剤
本発明によるタイヤトレッドのゴム組成物は、タイヤトレッドとりわけタイヤの製造を意図するエラストマーの組成物中に普通に用いられるいくつかのまたは全ての普通の添加物、上で挙げた以外の充填材、例えば白墨などの非補強用充填材、またはカオリン、タルクなどの層状充填材;顔料;オゾン防止ワックス、化学的オゾン防止剤、耐酸化剤などの保護剤;補強用樹脂(レゾルシノールまたはビスマレイミドなど);受容体(例えばノボラックフェノール樹脂)または例えば特許出願WO02/10269に記載のメチレン供与体(例えばHMTもしくはH3M);硫黄、または硫黄の供与体、および/または過酸化物の供与体、および/またはビスマレイミドの供与体に基づく架橋系;加硫促進剤または加硫遅延剤;加硫活性化剤、も含んでよい。
【0034】
こうした組成物は、カップリング剤を使用する時はカップリング活性化剤、無機充填材の被覆用薬剤、またはより一般的な処理助剤をも含んでよい。この処理助剤は、知られているように、ゴムマトリックス中での充填材の分散を改善し、組成物の粘度を低減することによって、原料状態での使い勝手を改善することができる。これらの薬剤としては例えば、アルキルアルコキシシランなどの加水分解性シラン、ポリオール、ポリエーテル、アミン、ヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサンがある。
【0035】
I−5. ゴム組成物の調製
本発明のタイヤトレッドで使用する組成物は、適当なミキサーで、当業者になじみのある2つの連続した調製工程を用いて製造することができる。即ち、第1の作業工程、または110℃〜190℃、好ましくは130℃〜180℃の高温における熱機械的混練(いわゆる「非生産的」工程)の工程と、続く、より低温、典型的には110℃未満、例えば40℃〜100℃での機械的作業の第2の工程(いわゆる「生産的」工程)であって、架橋系が取り込まれる仕上げ工程とがある。
こうした組成物を調製する方法は、例えば以下の工程を含む:
・第1のジエンエラストマー、シリカ、カップリング剤、可塑剤系を、最高温度が110℃〜190℃に達するまで、(例えば1回または2回以上)熱機械的に混練する(いわゆる「非生産的」工程)工程;
・全てを100℃未満の温度に冷却する工程;
・次に、第2の工程(いわゆる「生産的」工程)中に架橋系を取り込む工程;
・全てを最大温度110℃未満で混練する工程。
【0036】
一例として、非生産的工程は、単一の熱機械的工程において実施され、この間最初に全ての主要な構成物(ジエンエラストマーもしくはエラストマー、可塑剤系、無機補強用充填材およびカップリング剤)を通常の密閉式ミキサーなどの適当なミキサーに投入し、次に2番目に、例えば1〜2分間混練した後に、他の添加剤、充填材を被覆するための随意な追加薬剤または助剤を、架橋系とは別に加える。この非生産的工程における総混練時間は、好ましくは1〜15分である。
こうして得られた混合物を冷却した後、架橋系をオープンミルなどの開放ミキサーに取り込み、低温(例えば40℃〜100℃)で保持する。全てを次に数分間、例えば2〜15分間混合する(生産的工程)。
本来の架橋系は、好ましくは、硫黄および一次加硫促進剤、特にスルフェンアミド型促進剤をベースにする。様々な公知の二次促進剤または加硫活性化剤、例えば酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)等をこの加硫系に加え、第1の非生産的工程中および/または生産的工程中に取り込まれるであろう。硫黄の量は0.5〜3.0phrが好ましく、一次促進剤の量は0.5〜5.0phrが好ましい。
【0037】
硫黄の存在下でジエンエラストマーの加硫促進剤として働くことができる任意の化合物、とりわけチアゾール型およびその誘導体の促進剤、チウラム型促進剤、ジチオカルバミン酸亜鉛を、(一次または二次)促進剤として使用することができる。これら促進剤はより好ましくは、2−メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(「MBTS」と略す)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(「CBS」と略す)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(「DCBS」と略す)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(「TBBS」と略す)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンイミド(「TBSI」と略す)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(「ZBEC」と略す)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。好ましくは、スルフェンアミド型の一次促進剤を使用する。
【0038】
こうして得られた最終組成物は、次に、とりわけ実験室での特性評価用に例えばシートもしくは板形状にカレンダー仕上げしてもよく、または別に押出して、例えば、とりわけ乗用車用のタイヤトレッド製造用に使用するゴム異形材を形成してもよい。
本発明は、未加工状態(即ち硬化前)および硬化状態(即ち、架橋または加硫後)の両者での上記トレッドに関する。
本発明はまた、本発明によるトレッドを調製するための方法にも関し、前記方法は以下の工程を含む:
・第1のジエンエラストマー、シリカ、カップリング剤、可塑剤系を、110℃〜190℃の最高温度に到達するまで熱機械的に混練する工程;
・全てを100℃未満の温度に冷却する工程、
・次に、第2の工程で架橋系を取り込む工程;
・110℃未満の最高温度まで全てを混練する工程;
・こうして得られた組成物をカレンダー仕上げまたは押出す工程。
【0039】
本発明はまた、上記トレッドを含むタイヤにも関する。
また、本発明は、上記のゴム組成物が、複合体またはハイブリッドタイプのトレッド、とりわけ、異なる配合を有する2枚の半径方向重ね合せ層(いわゆる「キャップベース」構造)からなり、共にパターン化され、タイヤの稼動寿命中は、タイヤが回転するときに道路と接触することを意図するトレッドの1部のみを構成する場合にも当てはまる。上記配合のベース部分は、その場合、新品タイヤが回転を開始する時点から地面と接触することを意図するトレッドの半径方向外側層か、または、他方の、後の段階で地面と接触することを意図するトレッドの半径方向内側層を構成することができる。
【0040】
II.本発明の実施例
II.1 組成物の調製 C1、C2、C3およびC4:
組成物C1、C2、C3およびC4の配合(phr)を表Iに記す。本発明による組成物C1は、とりわけ第3級の、シラノール官能基およびアミン官能基を有し、これらの官能基がエラストマー鎖の末端から離れて位置するSBRを50質量%超含むエラストマーマトリックスによって特徴付けられる。組成物C1はまた、130phrのシリカ、23phrのオレインヒマワリ油および47phrのポリリモネン樹脂を含む。この組成物ではA+B量は70phrに等しく、45phrより多い。
本発明によらない組成物C2は、エラストマーマトリックスを構成するエラストマーの特質だけがC1と異なる。組成物C2のエラストマーマトリックスは、シラノール官能基をエラストマー鎖の末端に有するエラストマーを50質量%超含む。
【0041】
組成物C3およびC4は、C3およびC4において充填材の量が110phrであるために本発明にはよらない。またC4では、エラストマーはシラノール官能基を鎖の末端に有する。
これらの組成物の製造は以下の方法に従って実施する:エラストマー、シリカ、カップリング剤、可塑剤および加硫系を除く様々な他の成分を、密閉型ミキサーの中に連続的に投入する(最終量:約70体積%)。密閉型ミキサーの最初のタンク温度は約60℃である。熱機械的作業(非生産的工程)を1工程で実施する。この工程は最大「降下」温度が165℃に達するまで、合計5分要する。
こうして得られた混合物を回収し、冷却し、硫黄およびスルフェンアミド型の促進剤を23℃にてミキサー(ホモ−フィニッシャー)に取り込み、全体を適当な時間(例えば5〜12分)混合する(生産的工程)。
【0042】
硬化後の組成物C1およびC2の特性を表IIに示す。
II.2 結果
結果を表IIに示す。
動的特性であるtan(δ)maxを粘度アナライザー(Metravib VA4000)にて、規格ASTM D5992−96により測定する。加硫組成物の試料(厚み4mm、断面積400mm
2の円柱状試験片)を、周波数10Hz、0℃または100℃にて、単純な交互剪断の正弦波応力に供した応答を記録する。
100℃での測定では、歪み振幅掃引を0〜50%(外向きサイクル)、続いて50%〜0%(戻りサイクル)で実施する。戻りサイクルでは、観察されたtan(δ)の最大値、即ちtan(δ)maxを測定する。100℃でのtan(δ)maxの値が大きいほど、乾燥地面でのタイヤのグリップ性が良好である。
0℃での測定では、0.7MPaの一定応力下での歪み振幅掃引を行う。0℃でのtan(δ)の値が大きいほど、湿潤地面でのタイヤのグリップ性が良好である。
【0043】
本発明による組成物C1は、本発明によらない組成物C2に比較して、湿潤グリップ性と乾燥グリップ性との間の性能の折り合いが改善されることを、本結果は示している。事実、組成物C1は0℃および100℃でのtan(δ)の値が、組成物C2の値よりいずれも大きい。
もし、特定の官能性エラストマーと、可塑剤系と相まった充填材の特定の量との選択に基づく組合せが、本発明によらなければ、この折り合いの改善は得られないと見ることができる。事実、充填材の量が本発明によらないと、この場合110phrだと、組成物C3の0℃および100℃でのtan(δ)の値はいずれも、組成物C1の値よりはるかに低いと見ることができる。本発明によらない組成物C4に対して、同じ発見がなされる。0℃および100℃でのtan(δ)の値が組成物C3は組成物C4の値より低く、湿潤グリップ性と乾燥グリップ性との間の性能の折り合いの見地から、組成物C3は組成物C4より興味深くないと見ることもできる。
湿潤グリップ性と乾燥グリップ性の間の性能の折り合いを改善することは、官能性エラストマーおよび可塑剤系と相まったシリカの量を賢く選択することにより可能になる。こうした結果は予想外である。