(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495920
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】旋回シュラウドセクタを有する、エンジンとナセルとの間に挿入されたケーシング構造
(51)【国際特許分類】
B64D 27/26 20060101AFI20190325BHJP
B64D 29/00 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
B64D27/26
B64D29/00
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-539613(P2016-539613)
(86)(22)【出願日】2014年8月25日
(65)【公表番号】特表2016-532597(P2016-532597A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】FR2014052121
(87)【国際公開番号】WO2015033042
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2017年7月25日
(31)【優先権主張番号】1358478
(32)【優先日】2013年9月4日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】315008740
【氏名又は名称】サフラン エアークラフト エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】セドリック ベルジャンブ
(72)【発明者】
【氏名】ノエル ロバン
【審査官】
諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0024435(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0278345(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0060697(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0253843(US,A1)
【文献】
特表平10−507425(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01741879(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 27/26
B64D 29/00−29/08
F01D 25/24−25/26
F01D 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のエンジンとナセルとの間の機械的接合を実現するように嵌合されるケーシング構造において、
エンジン軸線を有する前記エンジンを取り囲み、且つ、定置部分(30)と複数のシュラウドセクタ(12A、12B)とを備える、シュラウドと、
前記ナセルに対する連結を実現する、前記シュラウドの周りに配置された少なくとも1つの半径方向アーム(14)と、
前記複数のシュラウドセクタを互いに固定するか又は前記少なくとも1つの半径方向アームに固定するための、複数の締結具手段とを備え、
前記複数の締結具手段は、それぞれ2つの組のボルト(26A及び26B、28A及び28B)を受け入れるための上記シュラウドセクタの2つの互いに平行な側壁(32、34)の中に形成されている2組の穴を備え、前記2つの組のボルト(26A及び26B、28A及び28B)の各々は、隣接するシュラウドセクタ又は隣接する半径方向アームの対応する組のオリフィス(32A、32B)の中を通る、ケーシング構造において、
さらに、前記シュラウドセクタの各々が、前記エンジンの軸線に沿って配置されている前記側壁に対して垂直な旋回軸(25)を中心として個別的に旋回させられることを可能にするために、ヒンジ(24)が前記シュラウドセクタの各々と前記シュラウドの前記定置部分との間に配置されていることを特徴とするケーシング構造。
【請求項2】
前記ヒンジは、2つのアーム(24A、24B)、即ち、前記シュラウド本体に連結されている一方のアームと、前記シュラウドの前記定置部分に固定されている他方のアームとによって形成されており、前記2つのアームは、前記ヒンジが前記エンジン軸線に対して垂直方向に旋回することを可能にする前記旋回軸によって連結されていることを特徴とする請求項1に記載のケーシング構造。
【請求項3】
前記シュラウドセクタの各々は、頭付きボルト(20)によって前記シュラウドセクタの本体(22)上に固定されているキャップ(18)によって覆われており、前記キャップは、前記頭付きボルトの頭部に対して嵌合するように、かつ前記頭部が面一に取り付けられることを可能にするように、その入口において面取りされているオリフィスを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のケーシング構造。
【請求項4】
前記シュラウドセクタの前記本体は、空気放出ダクト(36)を受け入れるためのスコープとして作用する開口部(16)を含むことを特徴とする請求項3に記載のケーシング構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のケーシング構造を含む航空機用エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばターボジェットのような航空機エンジンの分野に関し、より明確には、エンジンとナセルとの間に挿入されるケーシング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
既知であるように、エンジンとナセルとの間の機械的接合を実現することに加えて、こうした構造は、
バイパス流のための空気力学的通路の連続性を実現し、
エンジンの様々な構成要素(コア、ファン等)とエンジンのナセルとの間の(電気的、機械的、油圧)サービスを通過させ且つ維持し、
エンジンの個々の構成要素とバイパス流との間の耐火保護を実現し、
保守整備のために装置部品とサービスとに対する接近容易性(accessibility)を実現しなければならない。
【0003】
このケーシング構造は、それがカバーする機器部品(例えば、スラストテイクアップロッド(thrust take−up rod)又は実際には作動サービスのための様々なアクチュエータ)に対してナセルの開放時に容易に接近することを可能にするのに適している小さな幅(エンジンの軸線を中心として概ね数100ミリメートル)のセクタ化された円筒形フレーム(即ち、シュラウドセクタ)と、さらに、そのフレームの周りに配置される少なくとも1つの半径方向アームとの両方によって構成されている。従来においては、このフレームは、さらに、空気ブリードシステム(可変ブリード弁(VBV)ブースタ)のスクープ(scoop)を支持する。
【0004】
保守整備に必要とされる時間が最適化される必要があるので、限定されており且つ用途に基づいている時間内において、フレーム自体の取り外しと交換とのために必要とされる時間を計算に入れる必要がある時間内においては、駐機場上で、ナセルの開放時に、このフレームの下方に配置されている機器部品が取り外され、交換され、又は、検査されることを可能にするためには、このフレームはこうした機器部品に対する接近にとって障害物となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、これらの機器部品に対する容易な接近(即ち、地上での保守整備のために許可される時間に適合した接近)を実現し、且つ、上述した機能のすべてが実現されることを可能にすると同時に、特に空気流通路の妨害の減少を確実なものにする、ケーシング構造が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の主たる目的が、航空機のエンジンとナセルとの間に挿入されるケーシング構造であって、
エンジン軸線を有するエンジンを取り囲み、且つ、定置部分と複数のセクタとを備える、シュラウドと、
ナセルに対する連結を実現する少なくとも1つの半径方向アームと、
上記複数のシュラウドセクタを互いに固定するか又は上記少なくとも1つの半径方向アームに固定するための、複数の締結具手段とを備えるケーシング構造において、
それぞれ2つの組のボルトを受け入れるための上記シュラウドセクタの2つの互いに平行な側壁の中に形成されている2組の穴を備え、これらの2つの組のボルトの各々は、隣接するシュラウドセクタの対応する組のオリフィス、又は、隣接する半径方向アームの対応する組のオリフィスの中を通過し、さらに、上記シュラウドセクタの各々が、上記エンジン軸線に沿って配置されている上記側壁に対して垂直な共通旋回軸を中心として個別的に旋回させられることを可能にするために、ヒンジが上記シュラウドセクタの各々と上記シュラウドの上記定置部分との間に配置されていることを特徴とする
ケーシング構造を提案することによって、こうした欠点を軽減することである。
【0007】
したがって、旋回軸を中心とした各シュラウドセクタのヒンジ作用(hinging)が、そのセクタによって覆われる機器又はサービスに接近するために、隣接したセクタとは無関係に特定のセクタが容易且つ迅速に「引っ込められる(retracted)」ことを可能にし、開いたセクタがシュラウドによって保持されるので、その開いたセクタをサービス作業中に保管する必要なしに、セクタが引っ込められることを可能にする。
【0008】
好ましくは、上記ヒンジが、2つのアーム、即ち、上記シュラウド本体に連結されている一方のアームと、上記定置シュラウド部分に固定されている他方のアームとによって形成されており、上記2つのアームは、ヒンジが上記エンジン軸線に対して垂直方向に旋回することを可能にする上記共通の旋回軸によって連結されている。
【0009】
有利なことに、上記シュラウドセクタの各々は、頭付きボルトによって上記シュラウドセクタの本体上に固定されているキャップによって覆われており、上記キャップは、上記頭付きボルトの頭部に対して嵌合するように、その頭部が面一に取り付けられることを可能にするように、その入口において面取りされているオリフィスを含む。
【0010】
好ましくは、上記シュラウドセクタ本体は、空気放出ダクトを受け入れるためのスコープ(scope)として機能する開口部を含む。
【0011】
本発明は、さらに、上述したケーシング構造を含む航空機用エンジンを提供する。
【0012】
本発明の他の特徴と利点とが、非限定的な特徴を有する実施形態を示す添付図面を参照しながら行われる以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明によるエンジンとナセルとの間に挿入されるケーシング構造の外側斜視図である。
【
図3】機器への接近を可能にするためにシュラウドセクタが傾斜させられている、
図2の断面図と同様の断面図である。
【
図4】シュラウドセクタのキャップが取り外されている、
図1のケーシング構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1と
図2は、ナセルの少なくとも1つの半径方向ケーシング支持アーム(例えば、半径方向アーム14)によって連結されているセクタ型シュラウドの形で示されている(2つのセクタ12A、12Bだけが示されている)、航空機(典型的にはターボジェット)のエンジンとナセルとの間に挿入されているケーシング構造10の一部分を示す。エンジンの状況に応じて、例えば、スラストテイクアップロッドのような機器部品の位置に応じて、VBV又は様々な可変静翼(VSV)を作動させるためのアクチュエータに応じて、シュラウドが、互いから分離可能であり且つ複数の規則正しく分布した半径方向アームの間に取り付けられている8つまでの互いに隣接するセクタを備えてもよい。各々のシュラウドセクタは、エンジンの空気放出システム(例えば、可変ブリード弁即ちVBVシステム)の1つのためのスクープとして機能する開口部16によって穿孔されている。
【0015】
各々のシュラウドセクタは、そのシュラウドセクタの本体22の中を通る頭付きボルト20によって固定されている外側キャップ18を有する。有利なことに、このキャップ内のオリフィスが、頭付きボルトの頭部に対して嵌合し且つこれによってこの頭部が面一に取り付けられることを可能にするように、面取りされた入口を有し、したがって、各ボルトの頭部はそのオリフィスの中に正確に位置決めされる。その時に、この頭部は、バイパス空気流と接触しているカバーの上面と整合しており、したがって、バイパス空気流に対する障害物とはならず、こうしてバイパス空気流の空気力学的な連続性が確保される。
【0016】
本発明によって、
図3と
図4にさらに明確に示されているように、シュラウドセクタは、それぞれに2つの組のボルト26A及び26B、28A及び28Bを受け入れるためのシュラウドセクタの2つの互いに平行な側壁32、34の中に形成されている2組の穴を備える締結具手段によって、互いに固定されているか又は半径方向アームに固定されており、これらの2つの組のボルト26A及び26B、28A及び28Bの各々は、それらをそれぞれに一体的に保持するために、隣接するシュラウドセクタの対応する組のオリフィス32A、32B、又は、隣接する半径方向アームの対応する組のオリフィス32A、32Bの中を通過し、さらに、ボルトが取り外され終わった時に、シュラウドセクタの各々が上記側壁に対して垂直な共通旋回軸25を中心として、即ち、シュラウドセクタの外側表面の中心線に対して接線方向の共通の旋回軸を中心として、個別的に旋回することが可能であるように、ヒンジ24が、これらのシュラウドセクタの各々と連結部の定置部分30(例えば、残りのシュラウド部分)との間に配置される。
【0017】
複数のボルトは、各シュラウドセクタの2つの側壁内に形成されている複数の穴を通るためのものである。例えば、2つのボルト26A、26Bは、シュラウドセクタ12Aの側壁32内の2つの穴32A、32Bの中を通り、隣接する半径方向アーム14の側壁内に受け入れられる。当然であるが、ボルトの個数は単なる例示として示されており、側壁との連結は、冗長性を実現するために少なくとも2つのボルトを必ず有する。しかし、過剰に多いボルトが保守整備中の締め付け及び緩め操作に関して不利になるので、ボルトの個数は制限されるべきである。これに加えて、ボルトがシュラウドセクタの組を環状に形成することに寄与するので、ボルトは必ず多くの力を吸収し、したがって、堅固な連結を実現するために十分なだけ頑丈である必要がある。
【0018】
ヒンジ24は、従来の通りに、2つのアーム24A、24B、即ち、シュラウドセクタの本体22に固定されている一方のアームと、シュラウドの定置部分30に固定されている他方のアームとによって形成されており、これら2つのアームは、ヒンジが旋回することを可能にする共通の旋回軸25によって一体に連結されている。このヒンジは単一のヒンジであってもよく、この場合には、ヒンジは中心に配置され、又は、図に示されているように、セクタの中心軸線の両側に2つのヒンジがあってもよく、又は、実際には、(バイパス空気流の流れ方向に対して上流の)シュラウドセクタの上流の壁に沿って規則的に分布している複数のヒンジが存在してもよい。アバットメント(abutment)(図示されていない)が、シュラウドセクタが開かれている時に旋回を制限するために備えられてもよく、隣接したセクタとの閉鎖時の整合が、例えば、
図3に示されているように、定置部分30と接触するセクタ本体22によって得られる。さらに、セクタ本体の開口部16内にボルト38によって固定されているスクープのための空気放出ダクト36が存在することにも留意されたい。
【0019】
したがって、シュラウドセクタのヒンジによってそのシュラウドセクタを旋回させることが可能であることによって、隣接するシュラウドセクタにシュラウドセクタを連結するボルトが取り外され終わると直ちに、このセクタの下の機器に対する保守整備作業中に(例えば、スラストテイクアップロッドを定期的に検査する時に)、隣接するシュラウドセクタに全く触れることなしに、且つ、そのシュラウドセクタの一時的な保管を行う(このことは、シュラウドセクタの損傷又は紛失の原因となる可能性がある)必要なしに、その機器に対して迅速且つ容易に接近することが可能である。
【符号の説明】
【0020】
10 ケーシング構造
12A シュラウドセクタ
12B シュラウドセクタ
14 半径方向アーム
18 外側キャップ
20 頭付きボルト
22 シュラウドセクタの本体
24 ヒンジ
25 旋回軸
26A ボルト
26B ボルト
28A ボルト
28B ボルト
30 シュラウドの定置部分
32 シュラウドセクタの側壁
34 シュラウドセクタの側壁