特許第6495930号(P6495930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495930
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】NMRシステム用の集積回路
(51)【国際特許分類】
   G01N 24/00 20060101AFI20190325BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20190325BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   G01N24/00 580B
   G01N24/00 580C
   G01N24/08 510D
   A61B5/055 350
   A61B5/055 355
【請求項の数】25
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-550687(P2016-550687)
(86)(22)【出願日】2014年10月28日
(65)【公表番号】特表2016-535284(P2016-535284A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】US2014062621
(87)【国際公開番号】WO2015066005
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年8月21日
(31)【優先権主張番号】61/896,464
(32)【優先日】2013年10月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516125495
【氏名又は名称】シュルムバーガー テクノロジー ベスローテン フェンノートシャップ
(73)【特許権者】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】イー−チヤオ ソーン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ポールセン
(72)【発明者】
【氏名】トンヒ ハム
(72)【発明者】
【氏名】ドーンワン ハー
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0154635(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0057654(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/110901(WO,A1)
【文献】 特開平04−024588(JP,A)
【文献】 特開平07−151715(JP,A)
【文献】 特開2007−335958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 24/00−24/14
G01R 33/20−33/64
A61B 5/055
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部アンテナと共に用いられる集積回路であって、
NMRパルスシーケンスの一部である励起期間、励起のない遅延期間及び取得期間に関連するユーザ定義パラメータデータを格納するように構成されている記憶回路と、
前記記憶回路に格納されている前記ユーザ定義パラメータデータに従って無線周波数(RF)信号を生成するように協働するパルスシーケンス制御装置及びNMR送信回路であって、前記NMR送信回路は、前記NMRパルスシーケンスの励起期間中に励起信号を前記外部アンテナから発するために前記RF信号を出力するように構成されているパルスシーケンス制御装置及びNMR送信回路と、
前記NMRパルスシーケンスの前記取得期間中に前記外部アンテナによって生成された電気信号を受信するNMR受信回路と、
を備え
前記記憶回路、前記パルスシーケンス制御装置、前記NMR送信回路及び前記NMR受信回路は全て単一の集積回路チップのパーツとして集積されている集積回路。
【請求項2】
前記ユーザ定義パラメータデータは、複数のNMRパルスシーケンスに対応する複数のデータ要素を備え、各データ要素は、対応するNMRパルスシーケンスの一部である励起期間、励起のない遅延期間及び取得期間に関連するデータ値のセットを有し、前記データ値のセットは、前記対応するNMRパルスシーケンスの励起期間中に前記外部アンテナから発した前記励起信号のパルス振幅を特定するデータ値を有する請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
前記データ値のセットは、(i)前記励起期間の持続時間、(ii)前記励起信号のパルス位相、(iii)前記取得期間の持続時間、(iv)取得のない遅延期間の持続時間、(v)前記励起期間と前記取得期間との間の期間、(vi)前記NMRパルスシーケンスのループに対するループ開始及びループ終了、並びに、(vii)前記取得期間中に前記NMR受信回路を有効又は無効にする情報のうちの少なくとも一つを更に特定する追加のデータ値を有する請求項に記載の集積回路。
【請求項4】
ホストシステムに対するデータ通信インタフェースであって、前記ユーザ定義パラメータデータを前記ホストシステムから受信するとともに、受信したユーザ定義パラメータデータを、前記記憶回路に格納するために前記記憶回路に移すように構成されているデータ通信インタフェースを更に備え、前記データ通信インタフェースも単一の集積回路チップのパーツとして集積されている請求項1に記載の集積回路。
【請求項5】
前記データ通信インタフェースは、前記ホストシステムからの同期したシリアルデータ通信をサポートするシリアル周辺インタフェースを備える請求項4に記載の集積回路。
【請求項6】
前記NMR受信回路によって生成されるアナログ形式の電気信号を出力する少なくとも一つの出力ポートを更に備える請求項1に記載の集積回路。
【請求項7】
基準発振RF信号を入力するように構成されている入力ポートを更に備える請求項1に記載の集積回路。
【請求項8】
前記NMR送信回路は、前記基準発振RF信号に対するデジタル制御された位相オフセットで発振RF信号のパルスを生成するように構成されており、前記デジタル制御された位相オフセットは、前記記憶回路によって格納された特定のユーザ定義パラメータデータによって規定される請求項7に記載の集積回路。
【請求項9】
前記NMR送信回路は、前記デジタル制御された位相オフセットに対する90°の位相オフセットで発振RF信号を生成するように更に構成されている請求項8に記載の集積回路。
【請求項10】
出力部がデジタル制御マルチプレクサに結合された複数の直列結合されている遅延セルを有する遅延ロックループによって実現される多相生成器であって、前記デジタル制御マルチプレクサは、前記デジタル制御された位相オフセットを表す前記記憶回路によって格納されたユーザ定義パラメータデータの制御の下で動作するように構成されている多相生成器を更に備える請求項8に記載の集積回路。
【請求項11】
前記NMR送信回路は、前記NMR送信回路からの少なくとも一つのRF信号出力の制御電圧減衰を行うデジタル制御電圧減衰器を含み、前記デジタル制御電圧減衰器は、前記記憶回路によって格納されたユーザ定義パラメータデータの制御の下で動作するように構成されている請求項1に記載の集積回路。
【請求項12】
前記デジタル制御電圧減衰器は、パワーアンプ段の一部であるカスコードトランジスタを備え、前記カスコードトランジスタは、デジタル−アナログコンバータに操作的に結合されているゲート電極を有し、前記デジタル−アナログコンバータ及び前記カスコードトランジスタは、前記デジタル−アナログコンバータに供給されるデジタル制御信号に従って前記パワーアンプ段からの少なくとも一つの発振RF信号出力の制御電圧減衰を行うように協働し、前記デジタル制御信号は、前記記憶回路によって格納されたユーザ定義パラメータデータに基づく請求項11に記載の集積回路。
【請求項13】
前記デジタル制御電圧減衰器は、前記NMRパルスシーケンスの前記励起信号のパルス振幅を表した前記記憶回路によって格納されたユーザ定義パラメータデータに従って制御される請求項11に記載の集積回路。
【請求項14】
前記NMR受信回路は、前記NMRパルスシーケンスの取得期間中に前記外部アンテナから取得した少なくとも一つの電気信号の制御電圧減衰を行うデジタル制御電圧減衰器を含み、前記デジタル制御電圧減衰器は、前記記憶回路によって格納されたユーザ定義パラメータデータの制御の下で動作するように構成されている請求項1に記載の集積回路。
【請求項15】
前記NMR受信回路は、二つの固定利得増幅段を含み、前記デジタル制御電圧減衰器は、前記二つの固定利得増幅段の間に操作的に配置される請求項14に記載の集積回路。
【請求項16】
前記デジタル制御電圧減衰器は、供給されるデジタル制御信号によって制御される少なくとも一つのアナログマルチプレクサに操作的に結合される抵抗回路網を含む請求項14に記載の集積回路。
【請求項17】
前記パルスシーケンス制御装置は、前記集積回路に送信されたイネーブル信号に応答して少なくとも一つのNMRパルスシーケンスを伴うNMR実験を開始するように構成されている請求項1に記載の集積回路。
【請求項18】
前記集積回路は、ボーリング孔ツール(wellbore tool)の一部である請求項1に記載の集積回路。
【請求項19】
前記集積回路は、多次元分光実験と多次元緩和及び拡散実験の少なくとも一方を実行するように構成されている請求項1に記載の集積回路。
【請求項20】
前記集積回路は、研究室のNMR装置、小型のNMR装置又は携帯用のNMR装置の一部である請求項1に記載の集積回路。
【請求項21】
数の集積回路を備え、前記集積回路はそれぞれ、
i)NMRパルスシーケンスの一部である励起期間、励起のない遅延期間及び取得期間に関連するユーザ定義パラメータデータを格納するように構成されている記憶回路と、
ii)前記記憶回路に格納されている前記ユーザ定義パラメータデータに従って無線周波数(RF)信号を生成するように協働するパルスシーケンス制御装置及びNMR送信回路であって、前記NMR送信回路は、前記NMRパルスシーケンスの励起期間中に励起信号を部アンテナから発するために前記RF信号を出力するように構成されているパルスシーケンス制御装置及びNMR送信回路と、
iii)前記NMRパルスシーケンスの前記取得期間中に前記外部アンテナによって生成された電気信号を受信するNMR受信回路と、
を含み、前記記憶回路、前記パルスシーケンス制御装置、前記NMR送信回路及び前記NMR受信回路は全て単一の集積回路チップのパーツとして集積され、前記集積回路のそれぞれの前記パルスシーケンス制御装置は、前記集積回路に送信されたイネーブル信号に応答して少なくとも一つのNMRパルスシーケンスを伴うNMR実験を開始するように構成されているマルチチャネルNMRシステム。
【請求項22】
ホストシステムと、
なくとも一つの集積回路を備え、前記集積回路は、
i)NMRパルスシーケンスの一部である励起期間、励起のない遅延期間及び取得期間に関連するユーザ定義パラメータデータを格納するように構成されている記憶回路と、
ii)前記記憶回路に格納されている前記ユーザ定義パラメータデータに従って無線周波数(RF)信号を生成するように協働するパルスシーケンス制御装置及びNMR送信回路であって、前記NMR送信回路は、前記NMRパルスシーケンスの励起期間中に励起信号を部アンテナから発するために前記RF信号を出力するように構成されているパルスシーケンス制御装置及びNMR送信回路と、
iii)前記NMRパルスシーケンスの前記取得期間中に前記外部アンテナによって生成された電気信号を受信するNMR受信回路と、
iv)ホストシステムに対するデータ通信インタフェースであって、前記ユーザ定義パラメータデータを前記ホストシステムから受信するとともに、受信したユーザ定義パラメータデータを、前記記憶回路に格納するために前記記憶回路に移すように構成されているデータ通信インタフェースと、
を含み、
前記記憶回路、前記パルスシーケンス制御装置、前記NMR送信回路及び前記NMR受信回路は全て単一の集積回路チップのパーツとして集積されているNMR装置。
【請求項23】
前記集積回路は、前記集積回路の前記NMR受信回路によって生成されるアナログ形式の電気信号を出力する少なくとも一つの出力ポートを更に含み、
前記NMR装置は、前記少なくとも一つの出力ポートに操作的に結合されるとともに前記出力ポートから出力された前記電気信号を処理する信号処理回路を更に含む請求項22に記載のNMR装置。
【請求項24】
前記NMR装置は、ボーリング孔ツールの一部である請求項22に記載のNMR装置。
【請求項25】
請求項1に記載の集積回路と、
外部アンテナと、
前記集積回路のNMR送信回路と前記外部アンテナとの間に操作的に結合される外部RF増幅器と、
を備えるNMR装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2013年10月28日に出願された「ICベースのNMRシステム」(IC-based NMR systems)の表題の米国仮出願第61/896,464号からの優先権を主張し、参照により全体をここに組み込む。
【0002】
本願は、一般的に、NMR(核磁気共鳴)システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
核磁気共鳴(NMR)分光計は、長年用いられており、検査されるサンプルの撮像及び/又は分析を行うのに用いることができる。一般的には、典型的な単一チャネルNMR分光計は、三つの主要な構成要素:パルスシーケンス制御装置、NMR送信器及びNMR受信器から構成されている。NMR送信器及びNMR受信器の両方は、サンプルを受け入れるNMRプローブの典型的には一部である外部アンテナ(すなわちコイル)に結合されている。NMR実験中にサンプルに(典型的にはB磁場と称する)静磁場を加えるために外部磁石を設けることもできる。パルスシーケンス制御装置及びNMR送信器は、サンプル中の巨視的な核スピン(macroscopic nuclear spin)を励起するために発振RF(無線周波数)信号のパルスの列を外部アンテナに供給するように協働する。NMR受信器は、外部アンテナによって検出されたNMR信号を受信し、受信したNMR信号を低雑音及び高利得で増幅する。NMR受信器によって生成されたNMR信号は、有用な物理的及び化学的情報を取得するために(典型的にはアナログ−デジタルコンバータによるデジタル化及びデータプロセッサによるデータ処理を伴う)信号処理回路によって処理される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
NMR検層は、確立されたタイプのNMR測定であり、この場合、NMR分光計が地中のボーリング孔に下げられ、ボーリング孔の内部及び/又は周辺の特性を決定するためにNMR測定が実行される。しかしながら、現存するNMR検層分光器は、高価であること及びNMR実験のための制限されたパルスシーケンスフォーマット(pulse sequence format)のサポートを含む複数の欠点を有する。さらに、ボーリング孔内に適合するように設計されているダウンホールセンサパッケージ(downhole sensor package)は、サイズが大きくなるとともに非常に重くなることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この概要を、詳細な説明において以下で更に説明する概念の選択を導入するために設ける。この概要は、請求する主題の鍵又は本質的特徴を確認することのを意図するものではなく、請求する主題の範囲を制限するのに役立つのに用いることを意図するものでもない。
【0006】
対象となる開示の一実施の形態において、記憶回路、パルスシーケンス制御装置、NMR送信回路及びNMR受信回路を含む集積回路(IC)を設ける。ICを、ASIC(特定用途向け集積回路)及び/又はCMOS(相補型金属酸化膜半導体)集積回路のようなモノリシックICによって実現することができる。記憶回路は、NMRパルスシーケンスの一部である励起期間及び取得期間に関連するユーザ定義パラメータを格納するように構成されている。パルスシーケンス制御装置及びNMR送信回路は、記憶回路に格納されたユーザ定義パラメータに従ってRF信号を生成するように協働し、そのようなRF信号は、NMRパルスシーケンスの励起期間中に外部アンテナから励起信号を発するために外部アンテナに供給される。NMR受信回路は、NMRパルスシーケンスの取得期間中に外部アンテナによって生成された電気信号を受信する。
【0007】
他の態様において、ここで説明するような複数の集積回路を含むマルチチャネルNMRシステムを設け、各集積回路のパルスシーケンス制御装置は、各集積回路に送信されたイネーブル信号に応答して、少なくとも一つのNMRパルスシーケンスを伴うNMR実験を開始する。
【0008】
更に別の態様において、NMR装置は、ホストシステムと、ホストシステムに対するデータ通信インタフェースを含むここで説明するような少なくとも一つの集積回路と、を含む。データ通信インタフェースは、ホストシステムからユーザ定義パラメータデータを受信し、受信したユーザ定義パラメータデータを、格納のために集積回路の記憶回路に移す。少なくとも一つの集積回路は、集積回路のNMR受信回路によって生成されたアナログ形式の電気信号を出力するための少なくとも一つの出力ポートを更に含むことができる。NMR装置は、少なくとも一つの出力ポートに操作可能に結合されるとともに出力ポートからの電気信号出力を処理する信号処理回路を更に有することができる。
【0009】
本願の他の特徴及び利点は、添付図面と共に考察するときに以下の詳細な説明から容易に分かるであろう。
【0010】
本願を、本願の実施の形態の限定されない例として上記の複数の図面を参照しながら以下の詳細な説明において更に説明し、図面の複数の図を通じて、同様な参照番号は同様なパーツを表す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本願の一部の実施の形態によるNMR ASICの写真である。
図2】本願の一部の実施の形態によるNMR ASIC及びそのようなNMR ASICを用いるNMR分光計の機能ブロック図である。
図3】NMRパルスシーケンスの略図である。
図4図2のNMR ASICのパルスシーケンス制御装置の一実施の形態の略図である。
図5図4のパラメータメモリに格納することができるパラメータデータの64ビットベクトルの構成の図である。
図6図2のNMR ASICの多相生成回路の実施の形態の回路図である。
図7図2のNMR ASICのNMR送信器の実施の形態の回路図である。
図8図2のNMR ASICのNMR受信器のパワーアンプ段の実施の形態の回路図である。
図9図2のNMR ASICのNMR受信器のデジタル制御電圧減衰器及びパワーアンプ段の実施の形態の回路図である。
図10図2のNMR ASICのNMR受信器の直交ヘテロダイン復調段及びローパスフィルタ段の実施の形態の回路図である。
図11A図2のNMR ASICを用いる種々のマルチチャネルNMR形態の回路図である。
図11B図2のNMR ASICを用いる種々のマルチチャネルNMR形態の回路図である。
図11C図2のNMR ASICを用いる種々のマルチチャネルNMR形態の回路図である。
図12】本開示の一実施の形態による掘削同時検層(LWD)システムを示す。
図13】本開示の一実施の形態によるLWD NMR検層モジュールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の具体例は、核磁気共鳴(NMR)システムの集積回路を対象にする。集積回路を、外部アンテナと共に用いるために設ける。集積回路は、記憶回路、パルスシーケンス制御装置、NMR送信回路及びNMR受信回路を含むことができる。記憶回路は、NMRパルスシーケンスの一部である励起期間及び取得期間に関連するユーザ定義パラメータデータを格納するように構成されている。パルスシーケンス制御装置及びNMR送信回路は、記憶回路に格納されたユーザ定義パラメータに従ってRF信号を生成するために協働するように構成されており、そのようなRF信号は、NMRパルスシーケンスの励起期間中に外部アンテナから励起信号を発するために外部アンテナに供給される。NMR受信回路は、NMRパルスシーケンスの取得期間中に外部アンテナによって生成された電気信号を受信するように構成されている。種々の実施の形態の詳細を、後に説明する。
【0013】
図1は、約4mmの領域内に単一の集積回路チップのパーツとして集積されるデジタルプログラマブルパルスシーケンス制御装置11、デジタル制御NMR送信器12及びデジタル制御NMR受信器13を集積する本願によるNMR ASIC10の実施の形態を示す。他の実施の形態は、異なる寸法を有する集積回路チップを用いてもよい。NMR ASIC10を、(台湾セミコンダクターマニュファクチャリングカンパニー(TSMC)のTSMC0.18μmプロセスのような)商業的に利用可能であるプロセス技術を用いて製造することができる。NMR受信器13を、NMR受信器13の利得がNMR ASIC10の動作中に予測される温度の変化に反応しないように温度補償することができる。この形態は、高温でのNMR ASIC10のパフォーマンスを向上させることができる。
【0014】
NMR ASIC10のデジタルプログラマブルパルスシーケンス制御装置11及びデジタル制御NMR送信器12を、NMR送信器12が多種多様なNMRパルスシーケンス(すなわち、サンプル中の巨視的な核スピンを励起するために外部アンテナに供給される発振RF信号のパルスのシーケンス)を生成するように構成することができる。この形態によって、複数のNMRパルスシーケンスを、NMR ASIC10に対するハードウェアの変更を行うことなく種々のNMR実験に対してNMR ASIC10によって検査するとともに用いることができる。この形態は、新規のNMR技術の研究及び開発並びにその分野に対する技術の展開に有用である。
【0015】
図2は、NMR ASIC10及びそのようなNMR ASIC10を用いるNMR分光計100の実施の形態のアーキテクチャを示す。NMR ASIC10のデジタルプログラマブルパルスシーケンス制御装置11は、図3に示すようなNMRパルスシーケンスの一部である励起期間及び取得期間に関連する一つ以上のユーザ定義パラメータを表すデータ(ユーザ定義パラメータデータ)を受信するためにホストシステム230に結合されている通信インタフェース201を含む。そのようなユーザ定義パラメータデータは、(i)励起期間の持続時間、(ii)NMRパルスシーケンスの一部である励起信号のパルス振幅、(iii)そのような励起信号のパルス位相、(iv)取得期間の持続時間、(v)(図3に「クエンチ」を付した)励起期間と持続期間との間の期間、(vi)NMRパルスシーケンスのループに対するループ開始及びループ終了、(vii)取得期間中にNMR受信器13の利得を規定する情報、並びに、(viii)取得期間中にNMR受信器13を有効又は無効にする情報を表すことができる。ホストシステム203を、市販のマイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ又は他のデータ処理システムとすることができる。ホストシステム203は、ユーザがユーザ定義パラメータデータを定義(又は選択)するとともにそのようなデータをNMR ASIC10のデジタルプログラマブルパルスシーケンス制御装置11に移すことができるグラフィカルユーザインタフェース又はユーザ入力機構を用いることができる。デジタルプログラマブルパルスシーケンス制御装置11は、通信インタフェース201によって受信されるユーザ定義パラメータデータを格納する(レジスタファイルのような)記憶回路205も含む。通信インタフェース201は、シリアルペリフェラルインタフェース(SPI)プロトコル、RS−422インタフェースプロトコル、有線及び無線USBプロトコル、無線ブルートゥース(登録商標)プロトコル又は他の適切なデータ通信インタフェースを含むがそれに限定されないホストシステム203と通信するための一般的な通信プロトコルを利用することができる。パルスシーケンス制御回路11の通信インタフェース201によって、NMR ASIC10のICは、スタンドアローンNMR装置又は衛星用センサとして動作することができ、これによって、マルチチャネルNMRアプリケーションに対して適切となる。
【0016】
NMR実験中、ユーザ定義パラメータデータは、メモリ回路205に格納され、記憶回路205に格納されたユーザ定義パルスパラメータデータに従ってそのような実験中にNMR送信器12及びNMR受信器13の動作を制御するために、NMR ASIC10のデジタル制御NMR送信器12及びデジタル制御NMR受信器13に供給されるデジタル制御信号を生成するためのパルスシーケンス制御回路207によってアクセスされるとともに用いられる。例えば、NMR送信器12及び/又はNMR受信器13は、記憶回路205に格納されたユーザ定義パラメータデータに従ってそのようなNMR実験中に減衰のレベルを制御することができる後に説明するようなデジタル制御減衰段を有することができる。NMR送信器12及び/又はNMR受信器13の他のパーツを、記憶回路205に格納されたユーザ定義パラメータデータに従って制御することもできる。
【0017】
NMR送信器12は、コンデンサ及びダイオード回路網211を介して外部アンテナ209(すなわち、RFコイル)に結合している。回路網211のコンデンサを、回路のインピーダンスがアンテナ209のインダクタンスに整合するように構成することができる。回路網211のダイオードを、NMRパルスシーケンスの励起期間中のダイオード間の導通及びNMRパルスシーケンスの取得期間におけるNMR受信器13のNMR送信器12からの切り離しを行うデュープレクサとして構成することができる。アンテナ209を、サンプルを受け入れるNMRプローブ213の一部とすることができる。外部磁石215を、NMR実験中にサンプルに(通常B磁場と称される)静磁場を加えるために設けることもできる。
【0018】
外部クロック生成器217は、ラーモア周波数の基準発振RF信号を生成する。この基準発振RF信号は、パルスシーケンス制御装置11の位相生成回路219に供給される。パルスシーケンス制御回路207は、多相生成回路219に供給されるデジタル制御信号を生成するように動作し、多相生成回路219は、基準発振RF信号に対するデジタル制御された位相のオフセット及びラーモア周波数を有する発振RF信号(Φ)のパルスのシーケンスを、直交位相(Φ+π)及びラーモア周波数を有する発振RF信号とともに生成する。このデジタル制御された位相オフセットを、記憶回路205に格納されたユーザ定義パラメータデータによって規定するとともにパルスシーケンス制御回路207によって多相生成回路219に供給することができる。
【0019】
NMR送信器12は、外部アンテナ209に出力するために多相生成回路219によって生成されるパルス信号(Φ,Φ+π)の可変利得増幅を行うことができる。可変利得を、記憶回路205に格納されたユーザ定義パラメータデータによって規定するとともにパルスシーケンス制御回路207によってNMR送信器12に供給することができる。一実施の形態において、NMR送信器12は、外部アンテナ209に出力するために多相生成回路219によって生成されるパルス信号(Φ,Φ+π)を処理するパワーアンプ段221及びデジタル制御電圧減衰段223を含むことができる。パワーアンプ段221は、パルス信号(Φ,Φ+π)のパワーの線形的な増幅を行う。デジタル制御電圧減衰段223は、パルス信号(Φ,Φ+π)の電圧レベルの制御された減衰を行うことができる。減衰の量を、記憶回路205に格納されたユーザ定義パラメータデータに従って制御することができ、又は、ASICへの追加のデジタル入力によって制御することができる。パルスの持続時間は、記憶回路205に格納されたパルス幅パラメータデータに従って制御される。パルス幅パラメータデータは、クロックサイクルごとに1ずつパラメータを減少させるカウントダウンクロックにロードされる。このようにして、NMR送信器12の構成要素は、記憶回路205に格納されたユーザ定義パラメータデータに従って種々の振幅、位相及び持続時間のパルスを有するNMRパルスシーケンスを生成することができ、その結果、サンプル中の核スピンを、意図的に操作することができる。
【0020】
NMR ASIC10のNMR受信器13は、外部受信スイッチング回路225によって外部アンテナ209に結合されている。NMR受信器13は、例えば、磁場の周りの非平衡核スピンの磁化の歳差運動(non-equilibrium nuclear spin magnetization precessing)によって生成された自由誘導減衰(FID)である外部アンテナ209によって検出されるNMR信号の可変利得増幅を行うことができる。可変利得を、記憶回路205に格納されるとともにパルスシーケンス制御回路207によってNMR受信器に供給されるユーザ定義パラメータデータ又は追加のデジタル入力によって規定することができる。一例において、NMR受信器13は、外部アンテナ209によって検出されるNMR信号の低雑音増幅のための固定信号利得の二つの低雑音増幅段227A,227Bを含むことができる。デジタル制御電圧減衰段229を、二つの低雑音増幅段227A,227Bの間に結合することができ、記憶回路205に格納されるNMR受信器の利得を規定するユーザ定義パラメータデータに基づいてNMR受信器13の信号利得を制御するために用いることができる。そのような動作を、種々のアンテナ209に対するNMR受信器13の信号利得を調整又は調節するために用いることができる。受信スイッチング回路225を、記憶回路205に格納されるNMRパルスシーケンスの期間の持続時間データ(すなわち、励起期間の持続時間を表すデータ、励起期間と取得期間との間の時間を表すデータ及び取得期間の持続時間を表すデータ)によって規定されるようなNMRパルスシーケンスの取得時間外の所望の時間間隔でNMR ASIC10のNMR受信器13からアンテナ209及びNMR送信器12を物理的又は電気的に切り離すように制御することができる。受信スイッチング回路225を、記憶回路205に格納されるNMRパルスシーケンスの期間の持続時間データによって規定されるようなNMRパルスシーケンスの取得時間の所望の時間間隔でNMR ASIC10のNMR受信器13にアンテナ209及びNMR送信器12を物理的又は電気的に接続するように制御することができる。
【0021】
NMR受信器13は、図2に示すような直交ヘテロダイン復調段231及びローパスフィルタ段233を含むこともできる。直交ヘテロダイン復調段231には、クロック生成器217によって生成された基準発振RF信号が供給される。直交ヘテロダイン復調段231は、同相信号成分(この場合、基準発振RF信号は、増幅段227Bによって出力された増幅したNMR信号出力と混合される。)及び直角位相信号成分(この場合、基準発振RF信号の直角位相は、増幅段227Bによって出力された増幅したNMR信号出力と混合される。)を生成するために増幅段227Bによって出力された増幅したNMR信号を処理する。直交ヘテロダイン復調段231によって生成された同相信号成分と直角位相信号成分の両方には、ローパスフィルタ段233によってローパスフィルタ処理が施される。ローパスフィルタ段233によって出力されたフィルタ処理した同相信号成分及び直角位相信号成分を、信号処理回路235に供給することができ、信号処理回路235は、図示したようなデュアルチャネルデジタイザ(すなわち、デュアルチャネルアナログ−デジタルコンバータ)及び関連のデータプロセッサを有することができる。大抵のNMR信号がラーモア周波数よりも狭い周波数帯域を示すので、低周波数フィルタは、NMR信号帯域幅の外の雑音を除去し、したがって、NMR信号の信号対雑音比を向上させる。アナログ−デジタルコンバータは、アナログNMR信号をデジタル形式に変換し、したがって、取得したデジタル信号を、デジタルフィルタ処理、最適フィルタ、フーリエ変換等のように更に処理することができる。振幅成分、位相成分、周波数成分等のような信号の特性を、サンプルの特性(例えば、化学組成、物理的特性、粘性、水素密度等)を決定するために用いることができる。信号処理回路235(及び/又はその一部)をNMR受信器13において実現することができ、又は、フィルタ処理されたデータを、分析のためにデータプロセッサに更に送信することができる。データプロセッサを、ホストシステム203の一部又は個別のシステムとすることができる。このようにして、NMR受信器13を、一つ以上のNMRパルスシーケンスの取得期間中にNMR信号を処理するように構成することができ、任意の取得パターンを実行することができる。
【0022】
上述したように、NMR受信器13によって受信したNMR信号から有用な物理的及び化学的情報を抽出できるようにするために、NMR ASIC19のデジタルプログラマブルパルスシーケンス制御装置11及びNMR送信器12を、サンプルのスピン系に摂動を与えるNMRパルスシーケンスを生成するように構成することができる。例えば、受信したNMR信号を、一つ以上のNMRパルスシーケンスのスピンエコー振幅を測定するために信号プロセッサ235によってデジタル化するとともに処理することができる。これらのNMR測定から、サンプルの拡散係数及び他の特性を取得することができる。このように取得したNMR測定は、「拡散エンコード」され、サンプルの流体特性に関連する多次元分布関数を生成するために転化(inverted)される。多次元分布を、拡散係数Dをサンプルのスピン−スピン緩和時間(T)に関連させる2次元(2D)分布関数(D,T)、拡散係数Dをサンプルのスピン−格子緩和時間Tに関連させる2次元(2D)分布関数(D,T)、又は、拡散係数Dをサンプルのスピン−格子緩和時間T及びスピン−スピン緩和時間Tに関連させる3次元(3D)分布関数(D,T,T)とすることができる。そのような転化技術(inversion technique)の例は、米国特許第6,570,382号、米国特許第6,960,913号及び米国特許第7,053,611号に詳細に記載されており、参照により全体をここに組み込む。フーリエ変換のような他の分析方法を、周波数スペクトルを取得するためにNMRデータを処理するのに用いることもでき、この場合、異なる周波数の個別のピークを、サンプル中の分子種及びその分布を表すのに用いることができる。多次元分光実験を、分子構造、運動状態及び分子間相互作用を解明するために実行することができる。そのような実験の例は、COSY(相関分光法)、NOESY(核オーバーハウザー効果分光法)、TOCSY(全相関分光法(total correlation spectroscopy))、HMQC(異種核多量子コヒーレンス分光法(heteronuclear multi-quantum coherence spectroscopy))等である。
【0023】
図4は、プログラムドコントローラによって実現される図2のパルスシーケンス制御回路207の一実施の形態を示すブロック図であり、パルスシーケンス制御回路207は、CPU400と、プログラムメモリ402と、ホストシステム203に対する(SPIインタフェースのような)通信インタフェース404と、多相生成回路219、NMR送信器12及びNMR受信器13に対する対応するデータ経路を有する入出力(I/O)ポート406と、を含む。
【0024】
プログラムメモリ402は、図3に線形的に示すようなNMRパルスシーケンスの一部である励起期間及び取得期間に関連する複数のユーザ定義パラメータを表す予め規定された数までの固定サイズビットベクトルを格納するように構成されている(「パラメータメモリ」を付した)記憶空間408を含む。そのようなユーザ定義パラメータデータは、励起期間の持続時間、NMRパルスシーケンスの一部である励起信号のパルス振幅、そのような励起信号のパルス位相、取得期間の持続時間、(図3で「クエンチ」を付した)励起期間と取得期間との間の時間、NMRパルスシーケンスのループのループ開始及びループ終了、取得期間中にNMR受信器13の利得を規定する情報、及び、取得期間中にNMR受信器12を有効又は無効にする情報を表すことができる。一実施の形態において、パラメータメモリ408は、64ビット長を有するとともに図5に示すように配置された64個までの固定サイズビットベクトルを格納することができる。ビット<0>及び<1>は、NMRシーケンスの所定のループに対するループ終了及びループ開始を表す。ビット<2>は、取得期間中にNMR受信器12を有効又は無効にする情報を表す。ビット<3>〜<5>は、(図3で「クエンチ」を付した)励起期間と取得期間との間の時間を表す。ビット<6>〜<29>は、取得期間の持続時間を表す。ビット<30>〜<34>は、NMRパルスシーケンスの励起信号のパルス位相を表す。ビット<35>〜<39>は、NMRパルスシーケンスの励起信号のパルス振幅を表す。ビット<40>〜<63>は、NMRパルスシーケンスの励起信号のパルス幅(又は励起期間の持続時間)を表す。このようにして、64ビットベクトルは、パルス、遅延又はパルスと遅延の組合せを記述することができる。完全なパルスシーケンスは、ベクトルのリストとして記述される。例えば、FID(自由誘導減衰)パルスシーケンスを、四つのベクトル:1秒の遅延、10マイクロ秒のRFパルス、短い遅延(10マイクロ秒)及び取得による0.1秒の遅延のリストによって記述することができる。
【0025】
プログラムメモリ402は、パラメータメモリ格納ルーチン410及びパルスプログラミングルーチン412を含むCPU400によって実行される二つのルーチンのプログラム命令も格納する。通信インタフェース404は、上述したようにユーザ定義パルスパラメータを表す固定サイズビットベクトルを受信するためにホストシステム203に結合されている。CPU400によるパラメータメモリ格納ルーチン410の命令の実行は、通信インタフェース404によって受信した固定サイズビットベクトルをパラメータメモリ408に書き込むために通信インタフェース404と連携する。CPU400によるパルスプログラミングルーチン412の命令の実行は、パラメータメモリ408に格納された(一つ以上の)固定サイズビットベクトルによって規定されるような一つ以上のNMRパルスシーケンスを伴うNMR実験の実行に応じてイネーブル信号を受信するとともにデジタル制御信号を位相生成器219、NMR送信器12及びNMR受信器13に供給するためにI/Oポート406と連携する。そのようなNMR実験は、(パラメータメモリ408のサイズ及びNMR送信器12の最大パワーレベルによって制約される)変化する振幅、位相及び持続時間のNMRパルスシーケンスを伴うことができる。
【0026】
64ビット長を有するとともに図5に示すように配置された64個までの固定サイズビットベクトルをパラメータメモリ408が格納することができる説明した実施の形態において、CPU400によるパルスプログラミングルーチン412の命令の実行を、NMR送信器が各NMRパルスシーケンスに対する個別の振幅、位相及び持続時間を有する64個までのNMRパルスの列を生成するように構成することができる。各NMRパルスシーケンスは、励起期間中に生成される励起信号(一つのRFパルス)を含む。取得期間は、図3に示すように励起期間の後のクエンチ期間の次に生じる。NMR送信器12は、取得期間中にアンテナ209から切り離される。ビット<40>〜<63>は、NMRパルスシーケンスの励起信号のパルス幅(すなわち、励起期間の持続時間)を制御するのに用いられる。ビット<3>〜<5>は、クエンチ期間を制御するのに用いられる。ビット<6>〜<29>は、取得期間の持続時間を制御するのに用いられる。NMR受信器13を、所定のNMRパルスの対応する64ビットベクトルのビット<2>のビット値によって規定されるような取得期間中に選択的に有効にする(すなわち、受信スイッチング回路225によってアンテナ209に選択的に結合される)。CPU400によるパルスプログラミングルーチン412の命令の実行は、一つの64ビットベクトルに一度にアクセスし、励起期間の特定の持続時間中に特定の励起信号をアンテナ209に対して生成するためにNMR送信器12を制御する、及び/又は、取得期間の特定の持続時間中にアンテナ209から受信するようなNMR信号を取得するためにNMR受信器13を制御する。
【0027】
CPU400によるパルスプログラミングルーチン412の命令は、現在のパルスパラメータアドレスを表すとともに構成される場合にループに戻るためにアドレスを格納するパルスアドレスレジスタを用いることができる。ループを、64ビットベクトルのビット<0>及び<1>によって特定することができる。一方のビット(ビット<1>、ループ開始ビット)は、ループの開始を表し、他方のビット(ビット<0>、ループ終了ビット)は、ループの終了を表す。ループ終了ビットが現在の64ビットベクトルに設定される場合、既に設定されたループ開始ビットを有する64ビットベクトルのアドレスは、次のNMRパルスシーケンスに用いられる。このループ構造によって、CPMGパルスシーケンス又はそれに関連するもののような繰り返されるパルスセグメント(一群としての複数のRFパルス及び遅延並びに関連の取得期間)の実行を可能にする。
【0028】
CPU400によるパルスプログラミングルーチン412の命令を、対応する64ビットベクトルの<35>〜<39>によって規定されるような各NMRパルスシーケンスの励起信号の振幅を制御するように構成することもできる。
【0029】
CPU400によるパルスプログラミングルーチン412の命令を、対応する64ビットベクトルのビット<30>〜<34>によって規定されるような各NMRパルスシーケンスの励起信号の位相を制御するように構成することもできる。これによって、励起信号の位相を、所定のNMRパルスシーケンスの各々の間に励起信号(パルス)の各々に対する複数の許容された値のいずれか一つに設定することができる。この形態は、位相サイクリング技術及び向上したパルス設計に対して有用である。この形態によって、1組のパルスシーケンスの間に多相を用いるとともにシフトすることもできる。この形態は、例えば、位相サイクリング技術又は合成パルスのような向上したパルス設計に対して有用である。
【0030】
CPU400によるパルスプログラミングルーチン412の命令を、パラメータメモリ408に格納された64ビットパラメータベクトルによって規定されるような個別のパルスシーケンスの組を図4に示すようにI/Oポート406に供給されるイネーブル信号の受信に応答して開始するように構成することもできる。この形態は、複数のNMR ASIC10に亘るNMR実験の同期を取るのに有用である。
【0031】
説明した実施の形態によってCPU400によるパルスプログラミングルーチン412の命令が1組の64個の個別のNMRパルスを実行できることに留意されたい。組の中のNMRパルスシーケンスの数を、プロトコルを変更することなくパラメータメモリ408を増設することによって増大することができる。また、(64ビットを超える、例えば、128ビットの)更に複雑なRFパルスパラメータフォーマットを、パルスの特性を記述するために用いることができ、これによって、必要なオンチップメモリが増加する。
【0032】
図6は、遅延ロックループ(DLL)に基づく図2の多相生成回路219の実施の形態を示す。DLLには、クロック217によって生成される基準発振RF信号が供給される。基準発振RF信号は、数kHzから60MHzまでの周波数を有することができる。この基準発振RF信号は、32個の直列結合された遅延セル601−1,601−2,...,601−32を含む遅延線並びに1サイクルの遅延を有する基準発振RF信号及び1サイクルの遅延を有する基準発振RF信号を反転したものを生成する1サイクル遅延セルに並列に供給される。1サイクル遅延セル603によって生成される1サイクルの遅延を有する基準発振RF信号及び最後の遅延セル601−32の出力は、位相検出回路605に供給され、その出力は、直列結合されているチャージポンプ回路607、フィルタ回路609及びバイアス生成回路611を駆動する。バイアス生成回路611の出力は、32個の遅延セル601−1,601−2,...,601−32の各々に供給され、遅延セル601−1,601−2,...,601−32によって生成される発振RF信号のデューティサイクルが基準発振RF信号のデューティサイクルに整合するように構成されている。1サイクル遅延セル603によって生成される1サイクル遅延を有する基準発振RF信号を反転したもの及び中間の遅延セル601−16の出力は、位相検出回路613に供給され、その出力は、直列結合されたチャージポンプ615、フィルタ回路617及びバイアス生成回路619に供給される。バイアス生成回路619の出力は、32個の遅延セル601−1,601−2,...,601−32の各々に供給され、適切な遅延が32個の遅延セル601−1,601−2,...,601−32によって生成されるために位相誤差を最小にするように構成されている。32個の遅延セル601−1,601−2,...,601−32の出力は、32対2アナログマルチプレクサ621に供給され、そのマルチプレクサ処理動作は、それに供給される5ビット制御信号によって制御される。アナログマルチプレクサ621の二つの出力は、ここで説明するようにNMR送信器12に対する出力のためにパルス信号(Φ,Φ+π)を伝送する。(Φ+π)パルス信号の位相は、Φパルス信号の位相から90°オフセットされている。
【0033】
図6のDLLが複数(説明する実施の形態では32)の位相を同時に生成することができるとともに時間遅延を生じることなくこれらの間のスイッチングを行うことができることに留意されたい。DLLを、1サイクル遅延でロック(するとともに周波数が変化するときの他の課題を回避)し、かつ、周波数の変化に迅速に応答するように設計することができる。
【0034】
図7は、パワーアンプ機能及びデジタル制御可変減衰機能が単一の増幅段に組み合わされたNMR送信器12の実施の形態を示す。増幅段は、差動入力段(トランジスタ701A及び701B)を有するE級設計を採用し、差動入力段の各々は、直列結合されているカスコードトランジスタ(703A又は703B)及び対応する負荷素子としてのインダクタ(705A又は705B)を用いる。E級設計は、(Dトポロジーと異なり、)広範囲の周波数をカバーするとともにA級又はAB級のような線形的なPAよりも電力消費及び発熱を減少させるように構成されている。デジタル制御可変減衰機能は、デジタル−アナログコンバータ707によって実現され、その出力は、カスケードトランジスタの一方(703A)のゲートを駆動し、外部アンテナ209への出力のための二つのカスコードトランジスタ(703A,703B)のドレインで生成される差動RFパルス信号の可変減衰を行う役割を果たす。減衰のレベルを、デジタル−アナログコンバータ707の入力部に供給される5ビット制御信号又はコードによって規定される32レベルの間で選択することができる。
【0035】
図8は、二つの直列結合されている差動増幅段801A及び801Bを含む図2のNMR受信器13の低雑音増幅段227Aの実施の形態を示す。差動増幅段801Bのダブルエンド出力部は、ダブルエンドレベルシフト段803に結合されている。直列結合されている差動増幅段801A及び801Bの平衡構造は、約200の一定の差動信号利得及び0.8nV/sqrt(Hz)まで低くなる入力換算ノイズとなるようにコモンモードノイズの除去を行う。NMR受信器13の段のバイアスを、NMR受信器13の利得がNMR ASIC10の動作中の温度の予測される変化により影響を及ぼされないようにするために温度補償することができる。一実施の形態において、利得は、温度が25℃から150℃まで上昇すると4dB減少する。この形態は、高温でのNMR ASIC10のパフォーマンスを向上させることができる。
【0036】
図9は、図2のNMR受信器13のデジタル制御減衰段229及び低雑音増幅段227Bの実施の形態を示す。デジタル制御減衰段229は、差動入力部(IN+及びIN−)と二つのアナログマルチプレクサ903A,903Bの入力部との間に結合されている抵抗回路網901を含む。二つのアナログマルチプレクサ903A,903Bのマルチプレクサ処理動作は、それに供給される4ビット制御信号によって制御され、減衰段229の減衰レベルを制御する。一実施の形態において、減衰のレベルを、−6dBのステップサイズで−72dBまで制御することができ、これによって、スピン濃度及び容量が変化する種々のNMR実験に適合する広いダイナミックレンジを可能にする。二つのアナログマルチプレクサ903A,903Bによって出力される差動信号は、低雑音増幅段227Bの入力部に供給される。低雑音増幅段227Bは、ダブルエンドレベルシフト段907に結合されている単一の差動増幅段905を含む。増幅段の信号利得を、バイアス回路により周辺温度の変化に適応的に調整することができる。
【0037】
図10は、図2のNMR受信器13の直交ヘテロダイン復調段231及びローパスフィルタ段233の実施の形態を示す。直交ヘテロダイン復調段231には、クロック生成器217によって生成される(LOI+及びLOI−を付した)基準発振RF信号が供給される。直交ヘテロダイン復調段231は、増幅段227Bによって出力される(RF及びRFを付した)増幅したNMR信号を処理して、同相信号成分(I及びI)を生成し、この場合、基準発振信号成分(LOI+及びLOI−)が、増幅段227Bによって出力される増幅したNMR信号(RF及びRF)に混合され、直角位相信号成分(Q及びQ)を生成し、この場合、基準発振RF信号の直角位相(LOQ+及びLOQ−)が、増幅段227Bによって出力される増幅したNMR信号(RF及びRF)に混合される。基準発振信号成分(LOI+及びLOI−)及び増幅段227Bによって出力される増幅したNMR信号(RF及びRF)の混合は、2対のトランジスタ1001A,1001Bによって達成され、トランジスタ1001A,1001Bは、−3.9dBの一定利得又はトランジスタ1001A,1001Bの設計によって規定される他の所望の利得でパッシブな混合(passive mixing)を行う。基準発振RF信号の直角位相(LOQ+及びLOQ−)及び増幅段227Bによって出力される増幅したNMR信号(RF及びRF)の混合は、2対のトランジスタ1003A,1003Bによって達成され、トランジスタ1003A,1003Bは、−3.9dBの一定利得又はトランジスタ1003A,1003Bの設計によって規定される他の所望の利得でパッシブな混合を行う。直交ヘテロダイン復調段231によって生成される同相信号成分(I及びI)及び直角位相信号成分(Q及びQ)には、ローパスフィルタ段233によるローパスフィルタ処理が施される。同相信号成分(I及びI)のローパスフィルタ処理を、図示したように差動−シングルエンドローパスフィルタ処理を行うオペアンプフィルタ回路1005Aによって達成することができる。遮断周波数を、500kHz又はオペアンプフィルタ回路1005Aの設計によって規定される他の所望の周波数に設定することができる。直角位相信号成分(Q及びQ)のローパスフィルタ処理を、図示したように差動−シングルエンドローパスフィルタ処理を行うオペアンプフィルタ回路1005Bによって達成することができる。遮断周波数を、500kHz又はオペアンプフィルタ回路1005Bの設計によって規定される他の所望の周波数に設定することができる。ローパスフィルタ段233によって出力されるフィルタ処理した同相信号成分及び直角位相信号成分(Iout及びQout)を、上述したように図2の信号処理回路235に供給することができる。
【0038】
図11A〜11Cは、図2のNMR ASICを用いる種々のマルチチャネルNMRシステムの回路図である。図11Aは、三つの対応するNMR ASIC10を有する直列形態で配置されている三つのコイル209を有するシステムを示す。NMR ASIC10を、直列結合されているコイル209から並列な励起信号を発するためにNMRパルスシーケンスを互いに並列に送信するように構成することができる。これらの測定は、高い信号対雑音比を提供することができる。また、NMR ASIC10を、直列結合されているコイル209を用いて(H,19F等のような)異なるスピン種を検査するための励起信号を並列に発するために異なるNMRパルスシーケンスを互いに並列に送信するように構成することができる。図11Bは、二つの対応するNMR ASIC10を有する直交形態(すなわち、互いに90°の向き)で配置されている二つのコイル209を有するシステムを示す。直交するコイル209を、静磁界B内に配置することができ、例えば、両方のコイルの軸は、Bの向きに垂直である。NMR ASIC10を、直列結合されているコイル209から並列な励起信号を発するためにNMRパルスシーケンスを互いに並列に送信するように構成することができる。これらの測定は、高い信号対雑音比を提供することができる。図11Cは、四つの対応するNMR ASIC10を有するフェーズドアレイ形態で配置されている四つのコイル209を有するシステムを示す。フェーズドアレイコイル209を、静磁界B内に配置することができ、例えば、両方のコイルの軸は、Bの向きに垂直である。NMR ASIC10を、フェーズドアレイコイル209から並列な励起信号を発するためにNMRパルスシーケンスを互いに並列に送信するように構成することができる。これらの測定は、高い信号対雑音比を提供することができる。
【0039】
本開示の説明する実施の形態は、検層ツール(wellbore logging tool)のような石油及びガス分野の用途を更に対象とする。特に、図12は、地層(earth formation)704内の物質702を現場で調査するとともに堀削作業を行う間に物質の特性を決定する掘削同時検層(LWD)システムを示す。LWDシステム700は、ドリルストリングを有する。ドリルストリング708は、地層704を縦貫する(traverse)ボーリング孔706内に配置される。ドリルストリング708は、ドリルカラー710を含み、ドリルカラー710は、ドリルカラーの下端に配置されたドリルビット712を含む。LWDシステム700は、ボーリング孔706の上に配置されたデリックアセンブリ(derrick assembly)及びプラットフォームアセンブリ714を有する地表システム(surface system)も含む。デリックアセンブリ714は、ドリルストリング708を回転させ、ドリルストリングが回転すると、ドリルビット712は、ボーリング孔706を更に深く掘削する。LWD NMR検層モジュール716は、堀削作業を行う時にモジュールが周辺の地層を検層できるようにするためにドリルカラー710内に配置されている。検層モジュール716は、モジュールと通信を行うオペレータインタフェースを含む地表装置718と通信を行う。種々の実施の形態において、NMR検層モジュール716及びオペレータインタフェースは、ワイヤードドリルパイプ接続(wired-drill pipe connection)、音響テレメトリー接続、光接続及び/又は電気接続のいずれかを介して通信を行うことができる。
【0040】
図13は、地層にNMRパルスシーケンスを印加するLWD NMR検層モジュール800を示す。モジュール800は、地層802内の感知区域(zone of sensitivity)806内に静磁場を生成する磁石部804を含む。モジュール800は、軸方向スロット810を有するドリルカラー808も含む。コイル812は、軸方向スロット810内に配置されており、スロットには、セラミック、エポキシ樹脂又はグラスファイバーが充填されている。上述したように、コイル812は、逆極性で配置されている二つのコイル部を含む。コイル部は、軸方向スロット810内でドリルカラー808を巻いている。軸方向スロット810は、カバー814を用いて密閉されている。一部の実施の形態において、カバー814は、非磁性材料及び/又は非導電材料から形成されている。一端では、コイル部は接地される(例えば、ドリルカラー808に接続される)。他端では、コイル部は、例えば、図1及び図2で説明したICベースのNMR分光計100を含むNMR電子機器816に結合されている。NMR電子機器816は、例えば、真空フィードスルー(pressure feed-throughs)を介してコイル812に結合されている。コイル812は、地層802の感知区域806内の関心のある領域に発振磁界(例えば、NMRパルスシーケンス)を加える。一部の実施の形態において、発振磁界は、ドリルストリングの回転中に測定を容易にするために軸方向に対称である。NMR LWDシステムの更なる詳細は、1997年5月13日に発行された米国特許第5,629,623号及び2002年5月21日に発行された米国特許第6,392,410号に記載されている。これらの特許の各々を、参照により全体をここに組み込む。NMR LWDツールの一つの特定の例は、シュルンベルジエ社のproVISION(登録商標)ツールである。
【0041】
ここで説明したICベースのNMRシステムは、市販されているNMRシステムよりも優れた複数の利点を提供する。ここで説明したNMR集積回路は、長くて不要な相互接続を必要としなくするために極めて小さな部分内に主要な構成要素を集積する。相互接続は、寄生成分、電磁干渉、ワイヤーの抵抗に起因する雑音及び信号のタイミングの相違を含む多数の問題が生じうる。NMR集積回路の寸法が小さいので、NMR集積回路を、外部コイルに非常に近接して配置することができる。信号対雑音比に関しては、これは非常に有用である。その理由は、ケーブル及びインピーダンス変換回路網から生じた雑音を減少させることができるからである。
【0042】
ここで説明したNMR集積回路は、他の市販の分光計より優れた寸法についての非常に大きな利点も有する。また、上述したような効率よく設計されたスイッチングパワーアンプ形態及び低電力形態(無効でないときの電源オフ)によって、電力消費を低くする。これらの二つの形態を組み合わせることによって、NMRシステムの全体を、非常に小さくかつポータブルにすることができ、化学的実験、生物学的実験又は他の実験に必要な場所ならどこでも配置することができる。
【0043】
ここで説明したNMR集積回路が簡単なデータ通信インタフェースを通じて構成可能であるので、マルチチャネルNMRシステムを容易に形成することができる。特に、各NMR集積回路がそれ自体のチャネルを制御する高度に並列化されたシステムを実現することができる。
【0044】
一実施の形態において、マルチチャネルは、以下のように動作してもよい。各チャネルに対するパルスシーケンスを、各NMR集積回路のデータ通信インタフェースを通じてダウンロードすることができる。全てのNMR集積回路に接続されている単一のイネーブル信号が有効にされると、NMRチャネルの各々は、それ自体のパルスシーケンスの実行を同期しながら開始することができる。このようにして、マルチチャネル間の正確な同期が可能となる。これは、マルチチャネル異核実験(INEPT,NOESY,HMQC)に対して特に有益である。
【0045】
好適には、NMR集積回路のパルスシーケンス生成器は、任意のパルスシーケンスを実現することができる。これは、NMR分光法、拡散、多次元実験及びマルチチャネル(炭素−陽子のような多核)NMRを含む異なる複雑なシーケンスを実現しようとするNMRの用途において有利である。
【0046】
さらに、NMR集積回路は、特定のコア測定モジュールの坑井又は研究室若しくは現場システムにおける岩石コアの分析を含む油田における多数の用途を有する。研究室環境において、従来のNMRシステムは、個別の電子部品を使用し、その結果、電子機器が大きくなるとともに高価なものとなる。NMR ASICは、大きい電子機器の多くに取って代わることができるとともに岩石コアのNMR測定を実行することができる。坑井環境において、NMR ASICを、検層ツールの一部として集積することができる。例えば、NMR ASICを、坑井コアリングツールのNMRコア分析モジュールの一部として集積することができる。坑井コアリングツールは、ボーリング孔から岩石コアサンプルを取り出し、サンプルをNMRコア分析モジュールに移送する。NMR ASICがモジュール内に存在すると、NMR ASICを、岩石コアの一連のNMR測定を実行するのに用いることができる。NMR ASICの使用によって、電子機器の容量を著しく減少させることができ、したがって、コストが減少する。更なる用途は、研究室又は原油サンプルの坑井測定にある。特に、坑井の状況でそのような測定を行うことは重要である。その理由は、サンプルが噴き上げる孔(broughtuphole)であり、その結果、圧力及び温度が変化する場合に原油の特性が変化するおそれがあるからである。
【0047】
NMR ASICは、油田の用途以外の用途を有する。種々の実施の形態において、NMR ASICのパルスシーケンス制御装置をプログラム可能にすることによって、NMR ASICは、NMR ASICによって実行されるNMR実験の一部として広範囲のパルスシーケンスを用いることができる。これは、パルスシーケンスがCPMGに制限される従来のシステムとの主な違いである。したがって、この形態によって、NMR ASICは、多次元分光実験及び多次元緩和及び拡散実験を実行することができる。
【0048】
NMR ASICは、電子機器の寸法を減少させるのが特に有用である小型又は携帯型のNMR装置を用いる材料/流体特性化において他の用途を有する。例えば、NMR ASICを、小型又は超小型NMRコイルを用いる小型又は超小型NMRシステム(例えば、ラブオンチップのような直径0.1mmのキャピラリー及びマイクロ流体素子)の一部とすることができる。そのような小型又は超小型NMRシステムを、高スループットの分光法を実行するために従来の高磁場の磁石とともに用いることができる、又は、低コストで携帯可能なNMRシステムとなるように(しばしば永久磁石に基づく)小型磁石とともに用いることができる。
【0049】
NMR ASICの出力RFパワーが、大きなサンプルサイズに対して、設計により制約されるので、NMR ASICのNMR送信器の出力を外部のRF増幅器に向けるのが有益である。この形態において、外部RF増幅器は、NMR ASICのNMR送信器と外部アンテナとの間に結合されている。外部RF増幅器は、大きなサンプルサイズをカバーするために励起信号のRFパワーを必要に応じて増大することができる。
【0050】
開示した構成要素、ステップ、形態、目的、利益及び利点は、単なる例示である。これら及びこれらに関する議論のいずれも、保護の範囲を制限することを何ら意図するものではない。更に少ない、追加の及び/又は異なる構成要素、ステップ、形態、目的、利益及び利点を有する実施の形態を含む他の多数の実施の形態も予測される。
【0051】
説明又は図示したことは、あらゆる構成要素、ステップ、形態、目的、利益、利点又は等価物の発明を開放することを意図するものではない。明細書が本開示の特定の実施の形態を説明するが、当業者は、本開示中に開示された発明の概念から逸脱することなく本開示の変形を考え出すことができる。
【0052】
本願において、単数の素子の言及は、特に説明しない場合には「唯一」ではなく「一つ以上」を意味することを意図する。当業者にとって既知である又は後に既知となるであろう本開示全体に亘って説明した種々の実施の形態の素子の全ての構造的及び機能的な等価物は、参照によりここに明示的に組み込まれる。
【0053】
少数の実施の形態のみを詳細に説明したが、当業者は、本発明を実質的に逸脱することなく多数の変形が実施の形態において可能であることを容易に理解する。したがって、全てのそのような変形は、特許請求の範囲で規定されるような本開示の範囲内に含まれることを意図するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13