特許第6495941号(P6495941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495941
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】熱被覆された構成部品
(51)【国際特許分類】
   F16J 10/00 20060101AFI20190325BHJP
   C23C 4/131 20160101ALI20190325BHJP
   F02F 1/00 20060101ALI20190325BHJP
   F02F 1/20 20060101ALI20190325BHJP
   F02F 3/10 20060101ALI20190325BHJP
   F02F 3/00 20060101ALI20190325BHJP
   C23C 4/134 20160101ALI20190325BHJP
【FI】
   F16J10/00 Z
   C23C4/131
   F02F1/00 R
   F02F1/20
   F02F3/10 Z
   F02F3/00 L
   C23C4/134
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-563453(P2016-563453)
(86)(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公表番号】特表2017-519947(P2017-519947A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(86)【国際出願番号】EP2015000563
(87)【国際公開番号】WO2015161909
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2016年10月19日
(31)【優先権主張番号】102014005947.2
(32)【優先日】2014年4月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ベーア,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ベーム,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ハーン,マライケ
(72)【発明者】
【氏名】ハルトヴェグ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルケ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】クライゼル,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,グンター
(72)【発明者】
【氏名】レックツィーゲル,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァイカート,シュテファン
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−508871(JP,A)
【文献】 特開昭53−006238(JP,A)
【文献】 特開2010−190426(JP,A)
【文献】 特開平02−219851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00− 17/26
F16C 33/00− 33/28
F16J 1/00− 1/24
F16J 7/00− 10/04
C23C 4/131
C23C 4/134
F02F 1/00
F02F 1/20
F02F 3/00
F02F 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱被覆された構成部品であって、
摩擦相手に対して、摩擦を最適化された摺動面(2)を備え、
該表面(2)は、細孔(1)を有する、構成部品であって、
該細孔(1)は、入口フィレット(4、4’)を有し、
その縁部の勾配(A)は、該表面(2)の長さ部分(x)又は該表面(2)に対して 平行な長さ部分(x)に対する入口フィレット(4、4’)の深さ(y)の比として、2.5μm/mmを超える値を有することを特徴とする、構成部品。
【請求項2】
請求項1に記載の熱被覆された構成部品であって、
前記表面(2)の全ての細孔の前記勾配の平均は、3μm/mmを超える値であることを特徴とする、構成部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱被覆された構成部品であって、
前記摩擦を最適化された表面(2)は、機械加工される、好ましくは切削加工されることを特徴とする、構成部品。
【請求項4】
請求項1、2、又は3に記載の熱被覆された構成部品であって、
前記摩擦を最適化された表面(2)は、ホーニングによって加工されていることを特徴とする、構成部品。
【請求項5】
請求項4に記載の熱被覆された構成部品であって、
前記摩擦を最適化された表面(2)は、最初にダイヤモンドホーニング砥石を有する工具を用いて、続いてセラミックホーニング砥石を有する工具を用いて、少なくとも2回のホーニングによって仕上げ加工されていることを特徴とする、構成部品。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱被覆された構成部品であって、
熱被覆は、熱溶射被覆である、好ましくはワイヤアーク溶射層又はPTWA層であることを特徴とする、構成部品。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱被覆された構成部品であって、
前記構成部品は、エンジンブロック又はピストン、又はブッシュ、好ましくはシリンダスリーブであることを特徴とする、構成部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に詳細に記載された種類の熱被覆された構成部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な従来技術では、例えば、摩擦相手と相互作用する構成部品の摩擦などの表面特性を最適化することが既知である。この種類の構成部品は、おおよそその相互作用が例えば内燃エンジンにおいて重要性が最も高い、シリンダとピストンとの対であり得る。内燃エンジンの全体的性能及び燃料消費は、この相手間、すなわちシリンダ内壁面とピストンとの間の摩擦によって、実質的に決定される。先行技術では、適切な機械的表面加工によって、例えば、ホーニングによって、表面領域にオイルをある分量保持することをもたらして摩擦を最小化する構造を実現することが既知である。ホーニング時に生成する交差する溝は、そのために適している。
【0003】
更に、一般的な従来技術では、シリンダ摺動面又は摩擦学的特性に関して最適化すべき別の構成部品にも、被覆を備えることが既知である。選択肢として、例えば、いわゆる熱被覆があり得、この熱被覆は、特に溶射によって、例えば、ワイヤアーク溶射法又はPTWA(プラズマ移行型ワイヤアーク)法によって可能になる。このような表面は、特に開口した細孔を有し、この細孔は、同時に、表面領域にオイルを保持することに寄与する。特に、そのような熱的に塗布された被覆は、それに続く、例えば、ホーニングのような切削加工と組み合わせることができる。
【0004】
このような構成は、特許文献1に記載の種類から公知である。その熱的に被覆した構成部品は、特定のいわゆるオイル保持容量又はオイル保存容量によって特徴付けられ、その部品は、対応する所望のオイル量又は理論的に規定のオイル量が、運転中、すなわち摩擦相手が互いに摺動するときに、摩擦を最適化された表面の領域にとどまることをもたらす。それによって摩擦に関して最適な構成部品の組み合わせが、好ましくは内燃エンジンでのシリンダボアに関して達成可能である。
特許文献2から、良好な摩擦学的特性を有する被覆が公知である。この場合は、微細孔を含む鉄ベースの被覆である。この被覆は、最終的にホーニング法を介して研磨することができる。
更に、特許文献3及び特許文献4から、皮膜が熱溶射、特にプラズマ溶射によって塗布された摺動面を軽合金上に製作する方法が公知である。特許文献5から、滑りベアリング及びその製造方法が公知である。この場合は、充填材料がレーザー塗布を用いて塗布され、続いて切削加工及び/又はエッチング処理される。
別の先行技術に関して、特に、非特許文献1を参照することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2012 002 766 A1号明細書
【特許文献2】米国特許第5,863,870 A号明細書
【特許文献3】国際公開第97/16577 A1号
【特許文献4】独国特許出願公開第44 40 713 A1号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10 2010 053 326 A1号明細書
【非特許文献1】Barbezat G. et al.: Plasmabeschichtungen von Zylinderkurbelgehaeusen und ihre Bearbeitung durch Honen, in MTZ Motortechnische Zeitschrift, Vieweg Verlag,Wiesbaden,DE,Vol.62 No.4,1.April 2001,page 314〜320
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、熱的に被覆された構成部品のそのような表面を更に最適化することである。
【0007】
本課題は、本発明により、請求項1の特徴を有する熱被覆された構成部品によって解決される。有利な実施形態及び発展形態は、その従属請求項に開示される。
【0008】
本発明による熱被覆された構成部品は、熱被覆された表面に生じる細孔が入口フィレットに関して、表面の長さ部分又は細孔が存在する表面に平行な長さ部分に対する入口フィレットの深さの比から算出される入口フィレットの勾配が、いずれの場合も2.5μm/mmを超える値を有するように実現される。例えば、表面全体にわたり平均して全ての細孔に対して2.5μm/mmを超える入口フィレットのそのような勾配は、実際の表面における細孔縁部の適切ななだらかな移行部によってオイル保持容量が新たに顕著に増加することを可能にする。このような表面特性は、摩擦相手の摩耗に対して、例えば、熱被覆されたシリンダボアの場合にはピストンリングの摩耗に対して、非常に有利に作用する。
【0009】
入口フィレットのそのような高い勾配値は、特にセラミックホーニング砥石を用いたホーニングによって達成可能であり、好ましくはその前にダイヤモンドホーニング砥石を用いてホーニングされる。その際、セラミックホーニング砥石として、好ましくはセラミック結合をしているセラミック切削材料、例えば、炭化ケイ素(SiC)又は酸化アルミニウム(Al2O3)を有するホーニング砥石であると理解される。その際、セラミック切削材料の粒径が400メッシュ(約40μm)よりも細かいと、よく適合していることが実証されている。それに対してダイヤモンドホーニング砥石は、金属結合をしているダイヤモンド切削材料を有する。基本的に、切削材料はまた、合成樹脂結合又はプラスチック結合を用いてホーニング砥石に結合させることができるが、上述の結合は、経済的理由(ホーニング砥石の耐用年数、工具費用、工具の作製)から有利である。
【0010】
通常使用されるホーニング砥石、例えば、ダイヤモンドホーニング砥石は、入口フィレットを有する細孔を残し、細孔縁部と実際の入口フィレットとの間に対応する移行部を伴い、それによって通常は0.5〜1.5のスケールであるどちらかと言えば小さな勾配値を有する。驚くべきことに、セラミックホーニング砥石を用いた好適な最終ホーニングによって、入口フィレットの勾配は、2.5μm/mmを超える値、通常は3〜5.5μm/mmの値まで増大させることができる。その場合、その表面は、個々の細孔のキャッピングがない適切に開いた多孔性を伴う、非常に滑らかな覆い構造を有する。高い勾配値及び入口フィレットにおける細孔縁部の対応するなだらかな移行部によって、その場合、オイル保持容量は、先行技術に対して更に明確に、特に約40〜50%増加させることができる。
【0011】
入口フィレットを検知するために、例えば、細孔の入口フィレット領域を周囲表面から分離する境界線を検知することができる。そのために最初に、それぞれの細孔を囲む表面の平均高さレベルを(例えば、白色光干渉測定法又はその他の通常の測定技術を用いて)決定する。その後、平均高さレベル(所定値、例えば、それぞれの測定技術の分解能限界)に対して下がっていて、周囲表面と境界を接する、この細孔に属する点が検出される。そしてこれらの点は、その細孔の境界線を形成する。
【0012】
その後、少なくとも境界線のいくつかの点において、境界線に対する接線が生成される。この接線に対して垂直方向で、画定された測定区画に沿って入口フィレットの平均傾斜が測定される。続いて、それぞれの細孔の入口フィレットに対する平均値を得るために、細孔の全測定区画の平均傾斜の平均をとり、そしてこの平均値は、それぞれの細孔入口フィレットのいわゆる勾配と表現される。続いて、表面全体又は表面の個々の区画の全細孔の全入口フィレットの全勾配の平均値を得るために、この方法を他の細孔で連続して行う。
【0013】
そのために別法として、複数の境界線を用いて作業することも考えられる。そのために初めに、細孔のフィレットの領域を周囲表面から分離する第1の境界線を再び測定する。それに加えてこの別法では、第1の境界線は、定義された第1の高さレベルに延在することに留意する必要がある。続いて内側に、理想的には入口フィレットが細孔自体から分離される領域で、細孔の方向に移動した第2の境界線が形成され、この境界線は、同様に、定義された高さレベルに延在する。次いで、2つの境界線についてその高さが既知の場合、高さの差は、決定できる。次いで、それぞれの細孔の入口フィレットの平均勾配を得るために、この高さの差は、互いに離れた境界線の平均距離で割ることができる。
【0014】
その際、測定値は、広範囲の表面測定法、特に白色光干渉測定法を介して測定され、続いて、測定に基づく三次元データセットに変換される。次いで、この方法は、例えば、境界線、傾斜、及び勾配を検知するための画像処理方法に対して利用できる。
【0015】
前述したように、細孔の入口フィレットの2.5μm/mmを超える勾配は、表面の摩擦学的特性を明確に向上させることができる。
【0016】
その際、本発明により熱被覆された構成部品の有利な発展形態に基づき、摩擦が最適化された表面は、機械的に加工されている、好ましくは、切削加工されているようにすることができる。特にホーニングとして実現されるこの切削加工は、その際、熱的被覆が塗布された後に、例えば、シリンダボア表面又はシリンダスリーブが熱溶射によって表面を被覆された後に行われる。次いで、ホーニングによって、表面品質が向上し、表面、例えば、シリンダは、所望の寸法となる。
【0017】
その際、本概念の更に有利な発展形態に基づき、摩擦が最適化された表面は、最初にダイヤモンドホーニング砥石を用いて、続いてセラミックホーニング砥石を用いてホーニング加工する、多段階ホーニングによって仕上げ加工される。特に、ダイヤモンドホーニング砥石を用いるそのような前加工及びそれに続くセラミックホーニング砥石を用いる後加工は、非常に適切な入口フィレットをもたらし、その結果、入口フィレットの有利な勾配値は、2.5μm/mm超、好ましくは、3μm/mm超に達する。それによって、摩擦が最適化された表面の摩擦学的特性は、特に先行技術に対して更に明白に増加したオイル保持容量によって、更に一段と向上させることができる。
【0018】
熱被覆された構成部品の更に有利な実施形態は、残りの従属請求項から明らかになり、図面を参照して以下に詳細に記載する実施例から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】細孔の例を伴う表面である。
図2】細孔のフィレットと細孔の周囲表面との間の境界線を伴う図1に記載の細孔である。
図3】入口フィレットの視覚化のための、細孔の一部の断面の模式図である。
図4】本発明による第1の方法用に記入された接線及び測定区画を伴う部分拡大図である。
図5】本発明による第2の方法の明確化のための2つの境界線を伴う細孔である。
図6図5に記載の2つの境界線を伴う細孔の断面の模式図である。
図7】異なる方法で加工された異なる細孔の勾配値のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1の画像には、単なる例として、熱溶射されて摩擦が最適化された表面2の細孔1を示している。図1のここではグレースケールに変換された画像は、白色光干渉測定法に由来し、材料の高さごとに様々な色で、ここでは様々なグレースケールで表示している。図1の画像はまた、測定された表面2の三次元トポグラフィを、細孔1及び細孔1の周囲表面2と共に再現している。次いで、特に画像処理手法を介して、表面2のトポグラフィのこの三次元描写は、更に加工することができる。図2の画像では、図1の画像と類似した細孔1は、図2の画像の左側で再度認識できる。その際、図1の画像とは異なり、境界線3が記入されており、図2の右の画像では更に分離して表示している。第1の境界線と呼んでもよいこの境界線3は、後でもう一度示すように、その際、図1及び図2の画像で対応するグレートーンで認識できるいわゆる入口フィレット4の領域を、細孔1の周囲表面2から分離する。そのために、白色光干渉測定法を用いて、まず、細孔1の周囲表面2の平均高さレベルを決定する。その後、この細孔1に付随する点が検知され、この点は、その平均高さレベルに対して分解能限界の2倍まで下がっていて、周囲表面と境界を接している。次いで、これら点は、表面2に対する細孔1の境界線3を形成する。
【0021】
図3の図示では、その形成のことを、細孔1の側面の断面模式図で再度表示している。その際、スケールは、y方向ではμmを、x方向ではmmを選択し、それによって変形した図示となっている。しかし、このスケールの選択は、入口フィレットの視覚化のために必要である。細孔1は、5と示した材料、例えば、熱溶射被覆、の表面2における部分的なくぼみとして認識され得る。その際、実線を用いて、実際の細孔1の表面2との接続が認識でき、その接続は、比較的平坦な移行部を、細孔1の縁部6から入口フィレット4の領域に、それと同時に表面2に示す。その際、実線を用いて、細孔縁部6の比較的なだらかな移行部は、入口フィレット4に示されている。図3の図示で4’と示した破線を用いて、4と示した入口フィレットよりも格段に尖っている別の入口フィレット4’が示されている。
【0022】
入口フィレット4、4’は、どのような結果になったかに応じて構成部品又は被覆5の機能にここでは必ず影響する可能性がある。このことから、この入口フィレット4、4’は、表面2のパラメータとして測定技術的に決定できることが望ましい。図2に表示された画像に基づいて、ここでは適切な画像処理方法を用いて例えば、図4の画像で概略を示したように、境界線3の1つの点で、ただし具体的にはそれぞれの点に対して、Tと示した接線を接触させることで、入口フィレット4、4’のいわゆる勾配を検知可能である。この接線Tに対して垂直方向に、測定区画Mは、定義された長さで形成され、その長さは、境界線3に対して対称的に細孔の方向と同様に周囲の方向でも確定される。ここで例として検討している構造では、測定区画Mの全長は60μmに達する。その後、境界線3の外側の測定区画Mの始点から出発して、細孔1の方向で内部に向かい、平均傾斜は、例えば、線形回帰法を用いて、測定区画Mに沿って検知される。ここで境界線3に沿ってこの境界線3の複数の点、特に全ての点で、傾斜のこの決定が一様に実施される場合、次いで、対応する平均値を生成でき、その結果、細孔1の入口フィレット4の平均傾斜を得ることができる。
【0023】
この平均傾斜は、次いで、入口フィレット4、4’のいわゆる勾配として表現される。したがって、図3に記入した座標x及びyを用いて、入口フィレット4、4’の測定された深さyの、入口フィレットを囲む表面2に対する比率によって、表面2に平行な平均長さ部分xに関する比率で、又は規格化して(全測定区画Mの全投影の平均値に対応して)計算される。それによって以下の式が得られる。
【0024】
A=y/x[μm/mm]
【0025】
その際、勾配Aの値は、好ましくは、表面2の方向の長さ部分xのμm/mmで表示される。この値が大きくなればなるほど、細孔縁部6から表面2への移行部は、よりなだらかになる。対応するなだらかな移行部は、図3の縮尺が変更された図示で4と示した入口フィレットに対応している。勾配値がより小さくなる場合は、次いで、細孔縁部6に対する移行部は、なだらかさがより減少し、例えば、図3の図示で4’と示した移行部に対応するであろう。
【0026】
そのようにして得られた勾配A、例えば、細孔1の勾配A、又は、表面部分若しくは表面全体2の全細孔1に対する平均勾配A、に関する値に基づき、入口フィレット4、4’の形状は、非常に容易に対応させて比較でき、これは、表面2の機能指向の測定を容易にし、μm/mmでの平均勾配Aによって数字で表現され測定された入口フィレットを手かがりとして、表面2の良好な比較可能性を、例えば、様々な工具を用いて加工及び/又は様々な被覆5の後で、互いに可能にする。
【0027】
測定区画Mの境界をより容易に生じさせるために、境界線3に加えて、細孔1の入口フィレット4、4’の領域を細孔1自体から分離する細孔境界線7を設定することができる。次いで、この細孔境界線7は、接線Tに対して垂直方向の測定区画Mの内側の境界を形成する。明確化のために、そのような細孔境界線7は、図5の画像に記入してある。
【0028】
細孔境界線7は、この場合のように、第1の境界線3と同様に、ある高さレベルに走っている場合、入口フィレット4、4’の傾斜を測定するための別法にもまた利用可能である。この場合、細孔境界線7は、第2の境界線7を形成する一方で、境界線3が第1の境界線3を形成する。この場合、2つの境界線3、7は、それ自体の(平均)高さレベル上に表面2に対する比率で走っていることに、十分に留意すべきである。次いで、それは、図6の断面図に例として示した経過となり、その図示で3と示した第1の境界線は、表面2の高さにある一方で、高さのある一部分Δyだけ下に、第2の境界線7は、示されている。ここで2つの境界線3、7の平均距離Δxを細孔1の全周にわたって決定し、同時に2つの境界線3、7の間の高さの差Δyを決定する場合、次いで、それらの値から同様に、傾斜又は勾配A=y/xが計算できる。
【0029】
この方法は、上述の方法に対する別法として使用することができ、画像処理に応じて、場合により前述した方法よりも迅速であり得、それに対応してより少ない演算能力しか必要としない。一方、表面2の機能指向の評価を実施するために、適切な方法がそれぞれの細孔について実行できること、及び、全表面2又は表面2の部分に対応して、それぞれの細孔1のフィレットは、個々に又は平均値として利用可能であることもまた、ここでは重要である。もちろんその際、2つの境界線3、7の代わりに3つ以上の境界線を使用すること、及び/又は、細孔1のいくつかは、記載した第1の方法によって、そして別の細孔1は、記載した第2の方法によって、細孔の入口フィレット4、4’の勾配Aに関して評価することもまた可能である。
【0030】
勾配Aは、ここでは特に、摩擦が最適化された表面2の摩擦学的特性を評価するために利用できる。図7のグラフには、異なる製造方法で加工された個々の細孔1の平均勾配Aを提示した。その際、細孔1は、自動車の内燃エンジン用のシリンダスリーブ又はシリンダハウジングに塗布された熱被覆5に存在する。細孔1をダイヤモンドホーニング工具を用いる従来の手法でホーニングした後で、上述の方法によって細孔1の平均勾配Aが決定される。ダイヤモンドホーニング工具を用いてホーニングされた表面2のこの平均勾配Aは、図7のグラフの一番右にある。その表面は、勾配が−1〜+1.5の値を有する。この値は、入口フィレット4の領域の細孔縁部6のかなり尖った移行部に有利であることによって、比較的小さい。すなわち、表面2のダイヤモンド加工だけのこの細孔1でのフィレットは、図3の図示に記載の入口フィレット4’に対応したであろう。その際、負の測定値は、このとき細孔1のうち1つの領域に材料が蓄積した状態になったことに関係があり、その結果、負の勾配が生じた。
【0031】
図7のグラフの左に、表面2に、ダイヤモンドホーニング工具を用いて加工され、セラミック砥石を有する工具を用いて続けて後加工された後に実現された、5つの細孔の測定値がある。勾配値は、全て大きく2.5μm/mmを超え、特に3.5μm/mmを超え、またほとんどの場合に4すら超えている。入口フィレット4の細孔縁部6の適切になだらかな移行部に有利な、このような大きな勾配値は、例えば、図3の図示に入口フィレット4として示されたように形成される。細孔1のこのような実施形態は、次いで、適切な高いオイル保持容量を可能にし、その結果、摩擦が最適化された表面2の最良の摩擦学的特性が達成可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7