(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495961
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20190325BHJP
B60N 2/891 20180101ALI20190325BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20190325BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20190325BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20190325BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
B60N2/58
B60N2/891
B60N2/68
A47C7/38
A47C7/40
A47C31/02 B
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-44940(P2017-44940)
(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公開番号】特開2018-144771(P2018-144771A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 将真
【審査官】
毛利 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−101859(JP,U)
【文献】
実開昭61−116600(JP,U)
【文献】
実開平2−6598(JP,U)
【文献】
特開2002−125793(JP,A)
【文献】
実開平4−116224(JP,U)
【文献】
特開2004−357954(JP,A)
【文献】
米国特許第07703855(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C 1/00− 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、シートバックフレーム、前記シートバックフレームに支持されたパッド、及び前記パッドの表面に設けられた表皮材を含むシートバックとを有し、前記シートバックの上端前側にヘッドレストの一部を受容するヘッドレスト収納凹部が形成された乗物用シートであって、
前記シートバックフレームは、左右のサイドフレームと、左右に延び前記サイドフレームのそれぞれの上端に結合したアッパフレームと、前記アッパフレームの上方を左右に延びた上辺部及び前記上辺部の左右から下方に延びて前記アッパフレームに結合した左右の端部を備えた延長フレームと、上下に延びて前記アッパフレーム及び前記延長フレームの前記上辺部に結合したブラケットとを有し、
前記パッドは、上端から下方に凹むと共に前後に貫通して前記ブラケットと対向し、前記ブラケットと協動して前記ヘッドレスト収納凹部を画定するパッド側凹部を有し、
前記表皮材の前記ヘッドレスト収納凹部の後側面に対応した部分の裏面には支持プレートが結合され、
前記支持プレートは、面が前後を向く状態で前記ブラケットに結合されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記ブラケットは、面が前後を向く前板部と、前記前板部の前面に設けられ、前記支持プレートを受容するプレート受容凹部とを有し、
前記支持プレートは、前記プレート受容凹部に前記前板部と平行に配置されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記プレート受容凹部には、前後に貫通し、前記支持プレートを前記プレート受容凹部に締結する締結部材が挿入される少なくとも1つの締結孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
左右の前記サイドフレーム、前記アッパフレーム、前記延長フレームの後方には、面が前後を向くパンフレームが設けられ、
前記ブラケットの前記プレート受容凹部には、後方に更に凹んで前記パンフレームの前面に結合された結合用凹部を有することを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記前板部は、前記延長フレームの前方を通過して上方に延び、
前記ブラケットは、前記前板部の上端から前記延長フレームの上方を通過して後方に延び、面が上下を向く上板部を有し、
前記表皮材は、前記上板部の上面に沿って配置されていることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記表皮材は、前記パッド側凹部の下端部かつ後端に対応する位置において前記支持プレートに縫合されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記表皮材は、前記パッド側凹部の底壁上に配置された凹部底面部と、前記ブラケットの前方に配置された凹部後側面部とを有し、
前記凹部底面部の後縁と前記凹部後側面部の下縁とは、それぞれの外面同士が互いに当接して重なり合い、端末が前記シートバックの内方に突出するように縫合され、
前記表皮材は、前記凹部底面部の後縁と前記凹部後側面部の下縁との縫合部において前記支持プレートに縫合されていることを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記表皮材と前記支持プレートとの縫合部は、前記凹部底面部の前記ヘッドレスト収納凹部の外面を形成する部分よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記ヘッドレストのピラーを支持するべく、前記アッパフレームに支持された筒形のピラー支持部材を更に有し、
前記ピラー支持部材の上端は、前記パッド側凹部の底壁の上方に配置され、前記パッド側凹部の底壁との間に前記表皮材を挟持するフランジを有することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートとして、シートバックの上端前側にヘッドレストの下部を受容するためのヘッドレスト収納凹部を設けたものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1に係るシートは、左右に延びるアッパフレームと、アッパフレームから前方に延びる支持板と、支持板に結合され、ヘッドレストのピラーを受容する筒状のピラー支持部材と、表皮材の裏面に縫合された補強板とを有する。そして、補強板がピラー支持部材の上端に形成されたフランジと支持板との間に挟み込まれることによって、表皮材がヘッドレスト収納凹部の底部に固定される。また、アッパフレームから上方に突出したフレーム板に前方に切り起こされた係止部が形成され、係止部の下端に補強板の後縁が引っ掛けられることによって、補強板の後端の移動が規制されている。これらの構成によれば、表皮材に固定された補強板がフレームに対して所定の位置に配置され、表皮材がヘッドレスト収納凹部の壁面に沿って配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−101859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係るシートでは、補強板の後縁がフレーム板から前方に突出した係止部に引っ掛けられるため、表皮材と補強板との縫合部は係止部よりも前方に配置される。そのため、表皮材がフレーム板の前面から浮いた状態になり、表皮材の位置が安定しない。このように表皮材が浮くと、表皮材の位置ずれによって弛みが生じ易くなる。また、外部から表皮材に荷重が加わった場合に表皮材に伸びが生じ易く、その結果表皮材が弛み易くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、乗物用シートにおいて、ヘッドレスト収納凹部に配置される表皮材を弛み難くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、シートクッション(2)と、シートバックフレーム(11)、前記シートバックフレームに支持されたパッド(12)、及び前記パッドの表面に設けられた表皮材(13)を含むシートバック(3)とを有し、前記シートバックの上端前側にヘッドレスト(4)の一部を受容するヘッドレスト収納凹部(60)が形成された乗物用シート(1)であって、前記シートバックフレームは、左右のサイドフレーム(15)と、左右に延び前記サイドフレームのそれぞれの上端に結合したアッパフレーム(16)と、前記アッパフレームの上方を左右に延びた上辺部(18A)及び前記上辺部の左右から下方に延びて前記アッパフレームに結合した左右の端部(18B)を備えた延長フレーム(18)と、上下に延びて前記アッパフレーム及び前記延長フレームの前記上辺部に結合したブラケット(20)とを有し、前記パッドは、上端から下方に凹むと共に前後に貫通して前記ブラケットと対向し、前記ブラケットと協動して前記ヘッドレスト収納凹部を画定するパッド側凹部(30)を有し、前記表皮材の前記ヘッドレスト収納凹部の後側面に対応した部分の裏面には支持プレート(50)が結合され、前記支持プレートは、面が前後を向く状態で前記ブラケットに結合されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、表皮材の裏面に結合された支持プレートが、面が前後を向く状態で上下に延びるブラケットに結合されるため、表皮材がブラケットに沿うことでき、表皮材の位置が安定する。また、荷重が外部から加わるときには、ブラケットが表皮材を裏面側から支持し、表皮材の延びが抑制される。これにより、表皮材の弛みが抑制される。ヘッドレスト収納凹部の他の面に配置される表皮材は、パッド側凹部を構成する面によって支持されるため、これらも弛みが抑制される。
【0008】
また、上記の態様において、前記ブラケットは、面が前後を向く前板部(20A)と、前記前板部の前面に設けられ、前記支持プレートを受容するプレート受容凹部(20D)とを有し、前記支持プレートは、前記プレート受容凹部に前記前板部と平行に配置されるとよい。
【0009】
この態様によれば、支持プレートをプレート受容凹部に挿入することによってブラケットに対する支持プレートの位置決めを容易に行うことができる。また、ブラケットに対する支持プレートの前方への突出量が低減されるため、表皮材がブラケットの表面に一層沿い易くなる。
【0010】
また、上記の態様において、前記プレート受容凹部には、前後に貫通し、前記支持プレートを前記プレート受容凹部に締結する締結部材(52)が挿入される少なくとも1つの締結孔(20G)が形成されているとよい。
【0011】
この態様によれば、支持プレートは締結部材によってブラケットに締結され、表皮材は支持プレートを介してブラケットに確実に固定される。
【0012】
また、上記の態様において、左右の前記サイドフレーム、前記アッパフレーム、前記延長フレームの後方には、面が前後を向くパンフレーム(21)が設けられ、前記ブラケットの前記プレート受容凹部には、後方に更に凹んで前記パンフレームの前面に結合された結合用凹部(20E)を有するとよい。
【0013】
この態様によれば、ブラケットがパンフレームに結合することによってブラケットの剛性が向上する。また、結合用凹部の立体形状によってブラケットの剛性が向上する。そのため、ブラケットに支持プレートを介して支持される表皮材の位置ずれが抑制される。
【0014】
また、上記の態様において、前記前板部は、前記延長フレームの前方を通過して上方に延び、前記ブラケットは、前記前板部の上端から前記延長フレームの上方を通過して後方に延び、面が上下を向く上板部(20B)を有し、前記表皮材は、前記上板部の上面に沿って配置されているとよい。
【0015】
この態様によれば、ヘッドレスト収納凹部の後方において、表皮材に覆われたブラケットがシートバックの上端部を形成する。
【0016】
また、上記の態様において、前記表皮材は、前記パッド側凹部の下端部かつ後端に対応する位置において前記支持プレートに縫合されているとよい。
【0017】
この態様によれば、表皮材がヘッドレスト収納凹部の最深部において支持プレートに固定されるため、表皮材がパッド側凹部及びブラケットの表面に弛みなく配置される。
【0018】
また、上記の態様において、前記表皮材は、前記パッド側凹部の底壁(30A)上に配置された凹部底面部(42)と、前記ブラケットの前方に配置された凹部後側面部(44)とを有し、前記凹部底面部の後縁と前記凹部後側面部の下縁とは、それぞれの外面同士が互いに当接して重なり合い、端末が前記シートバックの内方に突出するように縫合され、前記表皮材は、前記凹部底面部の後縁と前記凹部後側面部の下縁との縫合部(47)において前記支持プレートに縫合されているとよい。
【0019】
この態様によれば、表皮材と支持プレートの縫合部が表皮材の表面側に露出しないため、意匠性が向上する。
【0020】
また、上記の態様において、前記表皮材と前記支持プレートとの縫合部は、前記凹部底面部の前記ヘッドレスト収納凹部の外面を形成する部分よりも下方に配置されているとよい。
【0021】
この態様によれば、前記支持プレートとの縫合部によって、凹部底面部は下方に引っ張られ、凹部底面部が弛みのない状態でパッド側凹部の底面上に配置される。
【0022】
また、上記の態様において、前記ヘッドレストのピラー(4A)を支持するべく、前記アッパフレームに支持された筒形のピラー支持部材(25)を更に有し、前記ピラー支持部材の上端は、前記パッド側凹部の底壁の上方に配置され、前記パッド側凹部の底壁との間に前記表皮材を挟持するフランジ(25B)を有するとよい。
【0023】
この態様によれば、ピラー支持部材のフランジによって表皮材がパッド側凹部の底面上に押さえ付けられ、表皮材の弛みが抑制される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様によれば、表皮材の裏面に結合された支持プレートが、面が前後を向く状態で上下に延びるブラケットに結合されるため、表皮材がブラケットに沿うことができ、表皮材の位置が安定する。また、荷重が外部から加わるときには、ブラケットが表皮材を裏面側から支持し、表皮材の延びが抑制されるため、表皮材の弛みが抑制される。ヘッドレスト収納凹部の他の面に配置される表皮材は、パッド側凹部を構成する面によって支持されるため、これらも弛みが抑制される。このようにして、乗物用シートにおいて、ヘッドレスト収納凹部に表皮材が弛み無く配置される。
【0025】
また、本発明の一態様において、支持プレートをプレート受容凹部に前板部と平行に配置することで、ブラケットに対する支持プレートの位置決めを容易に行うことができる。また、ブラケットに対する支持プレートの前方への突出量が低減されるため、表皮材がブラケットの表面に一層沿い易くなる。
【0026】
また、本発明の一態様において、プレート受容凹部に締結孔を形成することで、支持プレートが締結部材によってブラケットに締結され、表皮材が支持プレートを介してブラケットに確実に固定される。
【0027】
また、本発明の一態様において、ブラケットをパンフレームに結合することで、ブラケットの剛性が向上する。また、結合用凹部の立体形状によってブラケットの剛性が向上する。そのため、ブラケットに支持プレートを介して支持される表皮材の位置ずれが抑制される。
【0028】
また、本発明の一態様において、表皮材をブラケットの上板部の上面に沿って配置することで、ヘッドレスト収納凹部の後方において、表皮材に覆われたブラケットがシートバックの上端部を形成することができる。
【0029】
また、本発明の一態様において、表皮材をパッド側凹部の下端部かつ後端に対応する位置において支持プレートに縫合することで、表皮材をパッド側凹部及びブラケットの表面に弛みなく配置することができる。
【0030】
また、本発明の一態様において、表皮材を凹部底面部の後縁と凹部後側面部の下縁との縫合部において支持プレートに縫合することで、縫合部が表皮材の表面側に露出しなくなり、乗物用シートの意匠性が向上する。
【0031】
また、本発明の一態様において、表皮材と支持プレートとの縫合部を凹部底面部のヘッドレスト収納凹部の外面を形成する部分よりも下方に配置することで、凹部底面部を弛みのない状態でパッド側凹部の底面上に配置することができる。
【0032】
また、本発明の一態様において、ピラー支持部材の上端にフランジを設けることで、ピラー支持部材のフランジによって表皮材をパッド側凹部の底面上に押さえ付けることができ、表皮材の弛みを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明に係る乗物用シートを自動車の後部座席(2列目及び3列目を含む)に適用した一実施形態を説明する。乗物用シートは後述するように使用形態(着座形態)と収納形態との間で形態及び姿勢が変化するが、特に明記しない限り、使用形態を基準として各構成の形状を説明する。
【0035】
図1に示すように、シート1は、自動車の2列目又は3列目の後部座席を構成する。シート1は、自動車のフロアに設けられたシートクッション2と、シートクッション2の後部に支持された左右一対のシートバック3と、各シートバック3の上部に設けられた左右一対のヘッドレスト4を有する。
【0036】
シートクッション2は、四角形枠形のシートクッションフレーム(不図示)と、シートクッションフレームに支持されたシートクッションパッド(不図示)と、シートクッションパッドの表面を覆う表皮材2Aとを有する。シートクッション2は、左右に延び、乗員2人分の着座部を構成している。シートクッション2は、その前部において左右に延びる回転軸を中心として回動可能にフロアに結合され、その後部においてフロアに選択的に結合している。シートクッション2の後部がフロアに結合した状態では、シートクッション2の座面が上方を向き、シート1は使用形態となる。シートクッション2の後部とフロアとの結合が解除された状態では、シートクッション2は前部を中心とした回動が可能になり、座面が前方を向いた収納姿勢になることができる。
【0037】
2つのシートバック3は、左右に並んで配置され、それぞれシートクッション2の後端に回動可能に結合されている。左右のシートバック3及び左右のヘッドレスト4は、概ね左右対称形の構造を有する。以下、右側のシートバック3及びヘッドレスト4について説明し、左側のシートバック3及びヘッドレスト4については右側の説明を援用する。
【0038】
図3〜
図7に示すように、シートバック3は、骨格としてのシートバックフレーム11と、シートバックフレーム11に支持されたシートバックパッド12と、シートバックパッド12の表面に設けられ、シートバック3の外面を構成する表皮材13とを有する。
【0039】
図3に示すように、シートバックフレーム11は、上下に延びる左右一対のサイドフレーム15と、左右に延びて左右のサイドフレーム15のそれぞれの上端に結合するアッパフレーム16と、左右に延びて左右のサイドフレーム15のそれぞれの下部に結合するロアフレーム17と、アッパフレーム16に結合され、アッパフレーム16の上方に延出した延長フレーム18と、延長フレーム18とアッパフレーム16とに結合されたブラケット20と、各フレームの後部に配置されたパンフレーム21とを有する。
【0040】
本実施形態では、左右のサイドフレーム15の上部、アッパフレーム16、及びロアフレーム17は、1本の円形のパイプ材11Aを長方形枠形に屈曲させ、両端部を互いに溶接することによって形成されている。また、左右のサイドフレーム15の下部は、パイプ材11Aに溶接された板金部材11Bによって形成されている。板金部材11Bは、面が左右を向き、ロアフレーム17よりも下方に突出してサイドフレーム15の下端部を構成する。左右のサイドフレーム15の下端部は、シートクッションフレームの後端部にリクライニング機構(不図示)を介して回動可能に支持されている。
【0041】
アッパフレーム16は、その左右における中間部の前側に平面状の前側面16Aを有する。前側面16Aは、円形のパイプ材11Aを、断面が半円形となるように圧縮変形させることによって形成されている。前側面16Aには、左右一対のピラー支持ブラケット24が溶接されている。各ピラー支持ブラケット24は、両端が開口した四角筒形に形成されている。各ピラー支持ブラケット24は、それぞれの軸線が上下に延び、互いに左右に間隔をおいて配置されている。ピラー支持ブラケット24には、後述するピラー支持部材25が挿入され、固定される。
【0042】
延長フレーム18は、アッパフレーム16の上方を左右に延びる上辺部18Aと、上辺部18Aの左右端から下方に延びてアッパフレーム16に結合した左右の端部18Bとを備えている。延長フレーム18の上辺部18Aは、アップフレームと略同一の長さを有し、アッパフレーム16と上下に間隔をおいて平行に延びている。左右の端部は、左右内方に向けて屈曲し、アップフレームに溶接されている。延長フレーム18は、丸パイプ材を屈曲変形させることによって形成されている。
【0043】
ブラケット20は、板金部材から形成されている。
図3〜
図6に示すように、ブラケット20は、面が前後を向く前板部20Aと、前板部20Aの上縁から後方に延び面が上下を向く上板部20Bとを有する。前板部20Aは、上下に延び、延長フレーム18の上辺部18Aの前方を通過して上下に延びている。前板部20Aは、下端においてアッパフレーム16の後面に溶接され、後面の上部において延長フレーム18の上辺部18Aに溶接されている。上板部20Bは、延長フレーム18の上辺部18Aの上方に間隔をおいて配置され、前後に上辺部18Aよりも大きい所定の幅を有している。上板部20Bの縁部には、下方に向けて曲げ起こされた縁壁20Cが形成されている。縁壁20Cは上板部20Bの剛性を高める効果がある。
【0044】
ブラケット20は、アッパフレーム16の左右における中央部に配置されている。前板部20A及び上板部20Bの左右幅は、右側のピラー支持ブラケット24の右側面及び左側のピラー支持ブラケット24の左側面間の距離よりも大きく形成されている。
【0045】
前板部20Aの前面には、後方に向けて凹んだ凹部であるプレート受容凹部20Dが形成されている。プレート受容凹部20Dは、前面視で左右に長い略長方形に形成されている。プレート受容凹部20Dの底面の中央部には、底面に対して更に後方に向けて凹んだ凹部である第1結合用凹部20Eが形成されている。また、プレート受容凹部20Dの底面の上縁部には、底面に対して更に後方に向けて凹んだ凹部である第2結合用凹部20Fが形成されている。プレート受容凹部20D、第1結合用凹部20E、及び第2結合用凹部20Fは、前板部20Aの後面に後方に突出した凸部を形成している。プレート受容凹部20D、第1結合用凹部20E、及び第2結合用凹部20Fは、前板部20Aに立体形状を導入して前板部20Aの剛性を高める効果がある。第1結合用凹部20Eは、前方視で左右のピラー支持ブラケット24の間に配置されている。
【0046】
第2結合用凹部20Fは左右に延び、第2結合用凹部20Fの背面の凸部は延長フレーム18の上辺部18Aの下縁に沿って延びている。
図5に示すように、前板部20Aは、第2結合用凹部20Fの背面の凸部において、延長フレーム18の上辺部18Aに溶接されている。
【0047】
図4に示すように、ブラケット20のプレート受容凹部20D内には、ブラケット20を厚み方向に貫通する少なくとも一つの締結孔20Gが形成されている。締結孔20Gは、第1結合用凹部20Eの左又は右に形成されているとよい。本実施形態では、締結孔20Gは、第1結合用凹部20Eの左右に並んで、右側に2個、左側に2個形成されている。
【0048】
パンフレーム21は、面が前後を向く板状部材であり、左右のサイドフレーム15、アッパフレーム16、ロアフレーム17、延長フレーム18の後部を覆うように配置されている。パンフレーム21は、上縁において延長フレーム18に溶接され、下縁においてロアフレーム17に溶接され、左右の側縁において左右のサイドフレーム15に溶接されている。また、
図5に示すように、パンフレーム21は、上部前面においてブラケット20の第1結合用凹部20Eの背面の凸部に当接し、溶接されている。
図3に示すように、パンフレーム21の適所には、複数の補強用のビード21A及び肉抜き孔21Bが形成されている。
【0049】
ブラケット20の上板部20Bの後縁は、パンフレーム21の上縁よりも上方に配置され、かつパンフレーム21の後面と前後において略同位置に配置されている。
【0050】
シートバックパッド12は、ポリウレタンフォーム等の可撓性を有するクッション材から形成されている。
図7に示すように、シートバックパッド12は、面が前後を向く板状に形成され、前後に所定の厚みを有する。シートバックパッド12は、シートバックフレーム11の前側に配置される。シートバックパッド12の外形は、前方視において上下に延びた長方形に形成され、上縁が延長フレーム18の上辺部18Aに沿って延び、左右側縁が左右のサイドフレーム15に沿って延び、下縁がロアフレーム17に沿って延びている。
【0051】
シートバックパッド12の表面の適所には、表皮材13を釣り込むための釣り込み溝12Aが形成されている。釣り込み溝12Aの底部には、表皮材13を引っ掛けるためのワイヤー(不図示)が設けられている。
【0052】
シートバックパッド12は、上端の左右中央部から下方に凹むと共に前後に貫通したパッド側凹部30を有する。パッド側凹部30は、面が上方を向く凹部底壁30Aと、凹部底壁30Aの左右から上方に延び、面が左右内方を向く左右の凹部側壁30Bとによって画定されている。パッド側凹部30は、前方視で略長方形に形成され、ブラケット20の前板部20Aの前方に配置されている。シートバックパッド12の上端において、パッド側凹部30の左右両側に位置する部分は、延長フレーム18の前方に配置されるパッド肩部12Bを構成する。
【0053】
図5に示すように、シートバックパッド12の後面には、前方に向けて凹み、左右に延びた係止溝32が形成されている。係止溝32は、パッド側凹部30の下方を通過して左右に延びている。係止溝32にアッパフレーム16が受容されることによって、シートバックパッド12はアッパフレーム16に係止される。この構成により、シートバックパッド12はアッパフレーム16の上面に配置される部分を有し、アッパフレーム16の上面を覆っている。
【0054】
図6及び
図7に示すように、シートバックパッド12には、左右のピラー支持ブラケット24に対応した部分に上下に延びる貫通孔であるパッド側孔33が形成されている。各パッド側孔33の上端は、凹部底壁30Aに開口している。各パッド側孔33に各ピラー支持ブラケット24が配置されることによって、シートバックパッド12とピラー支持ブラケット24との干渉が避けられる。
【0055】
図5に示すように、表皮材13は、シートバック3の前面、上面、下面、左右側面、及びパッド側凹部30に対応した部分を構成するフロントシート35と、シートバック3の後面を構成するバックシート36とを組み合せて袋状に形成されている。フロントシート35は、表シート37Aと、裏シート37Bと、表シート37A及び裏シート37Bの間に介装されたクッションシート37Cとを含む複数の積層シート37を互いに縫合することによって形成されている。表シート37Aは例えば皮革、合成皮革、及び織布等であり、裏シート37Bは例えば不織布や織布等であり、クッションシート37Cは例えばウレタンや綿等である。バックシート36は、例えば不織布、織布、皮革、及び合成皮革等であってよい。フロントシート35とバックシート36とは、一部が縫合によって結合され、他の部分がファスナや面ファスナ、スナップフィット等によって開閉可能に結合されているとよい。これにより、表皮材13をシートバックフレーム11及びシートバックパッド12に被せた後に、袋状をなす表皮材13の開口部を閉じることができる。
【0056】
図2に示すように、フロントシート35は、シートバック3の前面、上面、下面、左右側面を構成する本体部41と、パッド側凹部30の凹部底壁30Aの上面に配置された凹部底面部42と、パッド側凹部30の左右の凹部側壁30Bの表面に配置された左右の凹部側面部43と、ブラケット20の前板部20Aの前面に配置された凹部後側面部44とを有する。本体部41は、複数の積層シート37を縫合して形成され、凹部底面部42、左右の凹部側面部43、及び凹部後側面部44のそれぞれは単一の積層シート37から形成されている。本体部41はパッド側凹部30に対応する部分に開口41Aを有し、その開口41Aが凹部底面部42、左右の凹部側面部43、及び凹部後側面部44によって閉じられている。
【0057】
凹部底面部42の左右側縁は左右の凹部側面部43の下縁に縫合され、凹部底面部42の後縁は凹部後側面部44の下縁に縫合されている。凹部後側面部44の左右の側縁は左右の凹部側面部43の後縁に縫合されている。凹部底面部42の前縁、左右の凹部側面部43の前縁及び上縁は、本体部41の開口41Aの縁部に縫合されている。凹部後側面部44の上部は、ブラケット20の上板部20Bの上面に沿って後方に延び、バックシート36の上縁に縫合されている。
【0058】
図5に示すように、凹部底面部42の後縁と凹部後側面部44の下縁とは、それぞれの表シート37Aの表面同士が互いに当接して重なり合い、端末がシートバック3の内方に突出するように縫合されている。凹部底面部42の後縁と凹部後側面部44の下縁との縫合部47は、左右に延びている。
【0059】
凹部後側面部44の裏面(後面)には、支持プレート50が設けられている。支持プレート50は、略長方形の平板であり、面が前後を向き、その前面が凹部後側面部44の裏面に沿うように配置されている。支持プレート50は、縫合が可能な樹脂材料から形成されている。
【0060】
支持プレート50の下縁は、凹部後側面部44の下縁に沿うように配置され、凹部後側面部44の下縁と凹部底面部42の後縁との縫合部47に縫合されている。これにより、支持プレート50と凹部後側面部44とを縫合する縫合糸が外部に露出しない。縫合部47は、凹部後側面部44の裏面において支持プレート50の前面に当接し、縫合されている。縫合部47は、支持プレート50に縫合された状態で端末が下方を向いている。この縫合形態によって、表皮材13(凹部後側面部44)と支持プレート50の縫合部は、凹部底面部42の外面を形成する部分よりも下方に配置されている。これにより、凹部底面部42及び凹部後側面部44が下方に引っ張られ、弛みのない状態で配置される。
【0061】
支持プレート50の下縁と凹部後側面部44の下縁との縫合部は、左右に延在している。支持プレート50は、凹部底面部42の後縁と凹部後側面部44の下縁とを縫合するときに、共に縫合されるとよい。
【0062】
図6に示すように、支持プレート50には、厚み方向に貫通する少なくとも1つのファスナ装着孔50Aが形成されている。ファスナ装着孔50Aには、ファスナ52(締結部材)が装着されている。ファスナ52は、例えば樹脂材料から形成され、支持プレート50の前面側においてファスナ装着孔50Aの縁に係止される頭部52Aと、頭部52Aからファスナ装着孔50Aを通過して後方に突出する軸部52Bと、軸部52Bの先端に設けられた係止爪52Cとを有する。
【0063】
図5及び
図6に示すように、支持プレート50は、ブラケット20の前方に配置され、後部がプレート受容凹部20Dに受容される。プレート受容凹部20Dに支持プレート50が挿入されることによって、支持プレート50はブラケット20に対して概ね位置決めがなされる。支持プレート50は、プレート受容凹部20Dに前板部20Aと平行に配置される。ファスナ52の軸部52Bがブラケット20の締結孔20Gを通過し、係止爪52Cが締結孔20Gに引っ掛かることによって、ファスナ52は支持プレート50をブラケット20に締結する。これにより、表皮材13の凹部後側面部44が支持プレート50を介してブラケット20に固定され、凹部後側面部44がブラケット20の前方の適切な位置に配置される。少なくとも2つのファスナ52で支持プレート50をブラケット20に締結することによって、ブラケット20に対する支持プレート50の回転が防止され、支持プレート50の位置が安定する。
【0064】
凹部底面部42は、各パッド側孔33に対向する部分のそれぞれに、厚み方向に貫通する表皮側孔55を有する。
【0065】
ヘッドレスト4のピラー4Aを支持するピラー支持部材25は、ピラー4Aを受容する筒部25Aと、筒部25Aの上端から側方に張り出したフランジ部25Bとを有する。フランジ部25Bには、筒部25Aに対するピラー4Aの挿入位置を固定するための係止手段25Cが設けられている。
【0066】
ピラー支持部材25の筒部25Aは、凹部底面部42の表皮側孔55と、シートバックパッド12のパッド側孔33とを通過してピラー支持ブラケット24に挿入されて固定される。ピラー支持部材25のフランジ部25Bは、凹部底面部42の上面上に配置され、シートバックパッド12の凹部底壁30Aとの間に凹部底面部42を挟持する。このようにピラー支持部材25によって、凹部底面部42はシートバックパッド12の凹部底壁30A上に弛みなく固定される。
【0067】
シートバックパッド12に表皮材13が被せられ、パッド側凹部30の表面及びブラケット20の前板部20Aの前面が凹部底面部42、凹部側面部43及び凹部後側面部44に覆われることによって、シートバック3の上端前側にヘッドレスト収納凹部60が形成される。パッド側凹部30とブラケット20とが協働して画定する凹部と、表皮材13とによってヘッドレスト収納凹部60が形成される。ヘッドレスト収納凹部60は、シートバック3の上端前側に凹設され、前方かつ上方に向けて開口している。ヘッドレスト収納凹部60は、底面が凹部底面部42によって形成され、左右の側面が左右の凹部側面部43によって形成され、後側面が凹部後側面部44によって形成され、略直方体をなす。
図1及び
図5に示すようにヘッドレスト4が最下位置にあるときに、ヘッドレスト4の後部はヘッドレスト収納凹部60に収納される。
【0068】
以上のように構成したシート1の効果について説明する。本実施形態では、ヘッドレスト収納凹部60の後側の壁部がブラケット20に表皮材13を被せることによって形成される。表皮材13を構成する凹部後側面部44の裏面には支持プレート50が縫合され、支持プレート50が前後を向く状態でブラケット20の前板部20Aに結合されるため、凹部後側面部44が前板部20Aに沿うことでき、凹部後側面部44の位置が安定する。また、荷重が外部から加わるときには、前板部20Aが表皮材13を裏面側から支持し、表皮材13の延びが抑制される。これにより、表皮材13の弛みが抑制される。凹部側面部43及び凹部後側面部44は、パッド側凹部30を構成する凹部底壁30A及び凹部側壁30Bによって支持されるため、これらも弛みが抑制される。
【0069】
支持プレート50がプレート受容凹部20Dに受容されることによって、支持プレート50のブラケット20に対する位置決めが容易になる。また、ブラケット20に対する支持プレート50の前方への突出量が低減されるため、表皮材13がブラケット20の前板部20Aに一層沿い易くなる。
【0070】
表皮材13は、パッド側凹部30の下端部かつ後端に対応する位置において支持プレート50に縫合されているため、ヘッドレスト収納凹部60の最深部において支持プレート59に固定される。そのため、表皮材13がパッド側凹部30及びブラケット20の表面に弛みなく配置される。
【0071】
ブラケット20は、アッパフレーム16、延長フレーム18、及びパンフレーム21に結合しているため、位置が安定すると共に変形し難くなっている。そのため、ブラケット20は、支持プレート50を安定性良く支持することができる。また、ブラケット20は、シートバック3の上端部に変形し難い高剛性部を形成する。これにより、シート1に装着されるチャイルドシートからシートバック3の上端部を通過して後部下方に延びるテザーを安定性良く支持することができる。
【0072】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、ブラケット20の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、プレート受容凹部20D、第1結合用凹部20E、及び第2結合用凹部20Fは、必須の構成ではなく、取捨選択可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 :シート
3 :シートバック
4 :ヘッドレスト
4A :ピラー
11 :シートバックフレーム
12 :シートバックパッド
13 :表皮材
15 :サイドフレーム
16 :アッパフレーム
18 :延長フレーム
18A :上辺部
18B :端部
20 :ブラケット
20A :前板部
20B :上板部
20D :プレート受容凹部
20E :第1結合用凹部
20G :締結孔
21 :パンフレーム
25 :ピラー支持部材
25A :筒部
25B :フランジ部
30 :パッド側凹部
30A :凹部底壁
30B :凹部側壁
33 :パッド側孔
42 :凹部底面部
43 :凹部側面部
44 :凹部後側面部
47 :縫合部
50 :支持プレート
52 :ファスナ(締結部材)