(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
映像データや音声データといったメディアデータを多重化して伝送するための技術標準として、非特許文献1が策定されている。この技術標準は、一般的にはMEPG−2システムとも呼ばれている。
【0003】
図1に、映像と音声が結合されたメディアデータを、MPEG−2システムで規定されているTS(Transport Stream)パケットに格納して伝送するために用いられる、メディアデータ伝送システムの一般的な構成を示す。このメディアデータ伝送システムは、メディアデータを送信するメディアデータ伝送装置1と、メディアデータを受信するメディアデータ伝送装置3とが、伝送路5で接続して構成される。
【0004】
送信側のメディアデータ伝送装置1には、撮像機などによって生成された入力信号が、シリアルデジタルインタフェース(SDI:Serial Digital Interface)などを介して入力される。メディアデータ伝送装置1に入力された入力信号は、メディア分離部11で映像データ、音声データおよび補助データに分離される。補助データとは、映像データのブランキング期間を用いて伝送される、字幕などの文字データや各種の制御信号であり、アンシラリとも呼ばれるものである。
【0005】
分離された映像データおよび音声データは、それぞれ映像符号化部12および音声符号化部13に入力され、適切な符号化方式で符号化される。符号化された映像データ、符号化された音声データおよび補助データは、それぞれ映像用パケット化部14、音声用パケット化部15および補助データ用パケット化部16に入力される。
【0006】
各パケット化部(14〜16)は、入力されたデータにPES(Packetized Elementary Stream)ヘッダを付与してPESパケットを生成し、さらにPESパケットを184バイトの固定長に分割して、TSヘッダを付与してTSパケットを生成する。各パケット化部(14〜16)から出力されたTSパケットは、パケット多重部17で多重化されて伝送路5に出力される。
【0007】
伝送路5は、メディアデータ伝送装置1が出力したTSパケットをメディアデータ伝送装置3に向けて伝送する。伝送路5は、例えばIPネットワークなどの通信ネットワークである。
【0008】
メディアデータ伝送装置3が受信したTSパケットは、パケット分離部31で格納されたデータ種別(映像データ/音声データ/補助データ)ごとに分離され、それぞれに対応する映像用デパケット化部32、音声用デパケット化部33および補助データ用デパケット化部34に出力される。
【0009】
各デパケット化部(32〜34)は、入力されたTSパケットからPESパケットを復元し、PESパケットから元のデータ(ES:Elementary Stream)を復元する。映像データに対応する映像用デパケット化部32が出力したESは、映像復号部35に入力されて復号される。音声データに対応する音声用デパケット化部33が出力したESは、音声復号部36に入力されて復号される。メディア結合部37は、復号された映像データ、復号された音声データおよび補助データを結合して入力信号と同じフォーマットの信号を形成し、出力信号として出力する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るメディアデータ伝送装置は、メディアデータに含まれる補助データの情報のうち未使用データ領域を通知し、補助データから当該未使用データ領域を削除した補助データをペイロード部に格納するとともに、当該未使用データ領域が削除前の補助データで位置していた位置情報をヘッダ部に格納したパケットを生成することを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係るメディアデータ伝送装置は、パケットのヘッダ部から、メディアデータに含まれる補助データの情報のうち未使用データ領域が当該補助データで位置していた位置情報を取り出し、前記パケットのペイロード部に格納された補助データに対して前記未使用データ領域を当該位置情報の位置に加えることを特徴とする。
【0024】
すなわち、本発明に係るメディアデータ伝送装置は、補助データから未使用データ領域を削除して伝送するので、伝送するパケットのデータ量あるいはビットレートを低減させることができる。
【0025】
なお、「パケット」とは、映像、音声、あるいは補助データなどを格納し、メディアデータ伝送装置間を伝送させるための信号フォーマットを意味している。パケットの例として、TSパケット(あるいは、TSパケットをカプセル化したIPパケット)を挙げることができる。また、「未使用データ領域」とは、補助データ中の領域であって、有効な情報を有していない領域あるいは補助データを利用しようとするユーザが情報の格納ないし伝送を必要としない領域を意味している。
【0026】
以下、図面を参照しながら、非特許文献2に規定された補助データを対象とした、本発明の一実施形態について説明する。
【0027】
[補助データの説明]
メディア機器(映像または音声を含むデジタルデータを生成する機器)のデータ伝送用インタフェースとして、シリアルデジタルインタフェース(SDI:Serial Digital Interface)が用いられている。SDIで伝送される信号(以下、「SDI信号」という)における補助データの扱いは、例えば1125/60i方式の映像であれば、非特許文献3に定められている。
【0028】
図2は、1125/60i方式のSDI信号のY(輝度)データにおける補助データの多重可能領域を説明する図である。
図2の横方向は、1水平ラインに相当し、縦方向はその垂直方向に相当する。SDI信号には、EAV(End of Active Video)、LN(Line Number)、CRCC(Cyclic Redundancy Check Code)、HANC(Horizontal Ancillary)、SAV(Start of Active Video)、有効映像領域が含まれる。
図2に示した横線網掛け部分は、補助データ多重可能領域である。放送局間でやりとりされる字幕データや制御信号などの補助データは、補助データパケットに格納されて伝送される。
【0029】
図3は、非特許文献2に規定された補助データパケットの配置を説明する図である。第1ラインは、おもに放送局間制御信号を伝送するラインであり、第2ラインは、おもに字幕を伝送するラインである。
【0030】
第1ラインは、放送局間制御信号、データ放送トリガ信号、ユーザデータ1およびユーザデータ2の各パケットが、
図2における20ラインおよび583ラインの0ワード目から1047ワード目にかけて、順次多重される。一方、第2ラインは、デジタル字幕データ、デジタル字幕データ(オプション1)およびデジタル字幕データ(オプション2)の各パケットが、
図2における19ラインおよび582ラインの0ワード目から785ワード目にかけて、順次多重される。これらの補助データパケットは、
図2において破線で囲ったライン内に多重される。
【0031】
放送局間制御信号パケットは、発局コードや発局時刻、映像モード、音声モード、トリガ信号などの放送局間制御データを含む。データ放送トリガ信号パケットは、発局と受局との間でデータ放送関連のタイミングを同期させるために用いるデータ放送トリガ信号を含む。デジタル字幕データパケットは、映像に同期して画面に表示される台詞などの文字データや管理情報である字幕データを含む。ユーザデータパケットは、ユーザが自由に設定した形式のデータを格納して伝送するためのものである。第2ラインにおける予約エリアは、今後の拡張用に確保されている領域である。
【0032】
なお、補助データパケットは、
図2に示した1125/60i方式のSDI信号に用いられるだけではない。非特許文献2では、1125/60i方式以外に、750/60p方式、525/60p方式および525/60i方式の各SDI信号における補助データパケットの多重位置が開示されている。
【0033】
図4は、非特許文献3に記載された第2形式の補助データパケットのパケット構造を説明する図である。
図3に示した各補助データパケット(放送局用制御信号、データ放送トリガ信号、ユーザデータ、デジタル字幕データの各パケット)は、いずれも
図4に示したパケット構造を有する。補助データパケットは、補助データフラグ(ADF)、データ識別ワード(DID)、第2データ識別ワード(SDID)、データカウントワード(DC)、ユーザデータワード(UDW)、チェックサム(CS)を含む。ADFは先頭から3ワード、DID、SDID、DCはそれぞれ1ワード、UDWは255ワード、CSは1ワードで構成される。UDWは、各パケットの用途に対応するデータを格納する領域である。なお、1ワードは10ビットである。
【0034】
各補助データパケットのDIDとSDIDには、その種別を識別できるように固有の値が与えられる。放送局間の情報伝送に使用される補助データパケットに用いられるDIDは、各補助データパケットに共通する値が与えられており、SDIDは、その中で各パケット種類を一意に識別可能な固有の値が与えられる。各補助データパケットに割り当てられたDIDおよびSDIDの値を
図5に示す。なお、この値は、1ワード(10ビット)の値を16進数で表したものである。
【0035】
図6は、各補助データパケットにおけるUDWの構成を説明する図である。放送局間制御信号パケットのプライベート領域、データ放送トリガ信号パケットのプライベート領域(正確には、private_data_byteワード)、ユーザデータパケットのUDW全域は、ユーザが自由に使用できる領域である。
【0036】
また、放送局間制御信号パケットの予約領域、データ放送トリガ信号パケットの予約領域は、今後の仕様が決定されるまで利用できない領域であるが、予約領域をユーザが利用した場合でも他の機器とは互換性が保たれないだけであり、予約領域を利用することに特段の制限はない。以下、放送局間制御信号パケットのプライベート領域と予約領域、ユーザデータパケットのUDW全域、データ放送トリガ信号パケットのプライベート領域と予約領域を総称して「ユーザが自由に利用可能な領域」と呼ぶ。ただし、使用の用途がこの名称の意図に沿っている領域であれば、「ユーザが自由に利用可能な領域」はこれらに限定されるものではない。
【0037】
非特許文献2では、各ラインにおいて2番目以降の補助データパケットを多重する場合であって、当該パケットの前に未使用領域が生じるときには、その領域にダミーパケットを挿入し、
図3に示した補助データパケットの位置を保つようにしている。
図7は、補助データパケットの一部にダミーパケットが使用された例を説明する図である。
【0038】
例えば、第1ラインにおいてデータ放送トリガ信号パケットのみが多重される場合、放送局間制御信号パケットが多重される位置にダミーパケットが挿入される。ダミーパケットは、
図4に示した第2形式のパケット構造を有し、データ識別ワードDIDは「25Fh」、第2データ識別ワードSDIDは「2FAh」が用いられる。なお、この例において、データ放送トリガ信号パケットより後の位置には、ダミーパケットの挿入等の処理は不要である。
【0039】
[装置構成]
本実施の形態に係るメディアデータ伝送システム、メディアデータ伝送装置1およびメディアデータ伝送装置3は、
図1に示された従来の構成とほぼ同じである。ただし、送信側のメディアデータ伝送装置1に備わり、補助データをPESパケット化およびTSパケット化して出力する補助データ用パケット化部16の構成と、受信側のメディアデータ伝送装置3に備わり、補助データのTSパケットから補助データを取り出して出力する補助データ用デパケット化部34の構成と、が異なる。以下、補助データ用パケット化部16および補助データ用デパケット化部34の構成について詳述する。
【0040】
本発明の実施形態に係る、送信側のメディアデータ伝送装置1に備わる補助データ用パケット化部16は、
図8に示すように、取得部161、蓄積部162、設定制御部163、PESパケット生成部164およびTSパケット生成部165を備える。
【0041】
取得部161は、メディアデータ伝送装置1に備わるメディア分離部11が出力した補助データパケットを逐次取得し、取得した補助データパケットを蓄積部162および設定制御部163へ逐次出力する機能を備える。
【0042】
蓄積部162は、取得部161が逐次出力した補助データパケットを一時的に保持するバッファ機能を備える。
【0043】
設定制御部163は、取得部161が逐次出力した補助データパケットを受信し、受信した補助データパケットに対して、ユーザが自由に利用可能な領域において有効な情報を有していない領域あるいは補助データを利用しようとするユーザが情報の格納ないし伝送を必要としない領域である未使用データ領域を指定する削除指示信号をPESパケット生成部164に出力する機能を備える。
【0044】
PESパケット生成部164は、設定制御部163から受信した削除指示信号に基づき、蓄積部162に保持されている補助データパケットのうち、削除指示信号が指定する未使用データ領域を除いた補助データパケットを読み出す機能を備える。また、PESパケット生成部164は、未使用データ領域が除かれた補助データパケットをPESパケットのペイロードに格納し、除去した未使用データ領域の位置情報をPESパケットのヘッダに付与してPESパケットを生成し、TSパケット生成部165へ出力する機能を備える。
【0045】
TSパケット生成部165は、PESパケット生成部164が出力したPESパケットを取得し、184バイトの固定長に分割し、TSヘッダを付与してTSパケットを生成する機能を備える。生成したTSパケットは、メディアデータ伝送装置1に備わるパケット多重部17に出力される。
【0046】
本明細書では、
図8に示した設定制御部163およびPESパケット生成部164の具体的な処理に関する2つの実施例を後述する。
【0047】
次に、本発明の実施形態に係る、受信側のメディアデータ伝送装置3に備わる補助データ用デパケット化部34について説明する。補助データ用デパケット化部34は、
図9に示すように、取得部341、PESパケット復元部342、蓄積部343、設定制御部344および補助データ復元部345を備える。
【0048】
取得部341は、メディアデータ伝送装置3に備わるパケット分離部31が出力した補助データを含むTSパケットを逐次取得し、取得したTSパケットをPESパケット復元部342へ逐次出力する機能を備える。
【0049】
PESパケット復元部342は、取得部341が逐次出力したTSパケットを受信し、TSパケットのペイロードを読み出してPESパケットを復元し、蓄積部343および設定制御部344へ出力する機能を備える。
【0050】
蓄積部343は、PESパケット復元部が逐次出力したPESパケットを一時的に保持するバッファ機能を備える。
【0051】
設定制御部344は、PESパケット復元部342が逐次出力したPESパケットを受信してPESパケットのヘッダを参照し、PESパケットに格納されている補助データパケットのユーザが自由に利用可能な領域における未使用データ領域の位置情報を取得し、未使用データ領域の位置情報を含む削除復元信号を補助データ復元部345に出力する機能を備える。
【0052】
補助データ復元部345は、蓄積部343からPESパケットのペイロードを読み出して、未使用データ領域が削除された補助データパケットを取り出し、設定制御部344が出力した削除復元信号に基づき、ユーザが自由に利用可能な領域で削除されている未使用データ領域を補完して元の補助データを復元し、メディアデータ伝送装置3に備わるメディア結合部37へ出力する機能を備える。
【0053】
本明細書では、
図9に示した設定制御部344および補助データ復元部345の具体的な処理に関する2つの実施例を後述する。
【0054】
[処理フロー]
次に、補助データ用パケット化部16および補助データ用デパケット化部34の処理フローについて詳述する。
【0055】
図10は、本実施の形態に係るメディアデータ伝送装置1に備わる、補助データ用パケット化部16の処理フローの概略を説明する図である。補助データ用パケット化部16は、
図10の処理フローに沿って、以下の処理を行う。
【0056】
まず、取得部161が、メディア分離部11が出力した補助データパケットを取得する(S11)。次に、設定制御部163が、取得した補助データパケットに対し、ユーザが自由に利用可能な領域において有効な情報を有していない領域あるいは補助データを利用しようとするユーザが情報の格納ないし伝送を必要としない領域である未使用データ領域を指定する(S12)。次に、PESパケット生成部164が、取得した補助データパケットから、指定された領域(未使用データ領域)を除去し(S13)、未使用データ領域が除去された補助データパケットをPESパケットのペイロードに格納し(S14)、除去した未使用データ領域の位置情報を当該PESパケットのヘッダに付与してPESパケットを生成する(S15)。最後に、TSパケット生成部165が、PESパケットをペイロードに格納したTSパケットを生成し、出力する(S16)。
【0057】
図11は、本実施の形態に係るメディアデータ伝送装置3に備わる、補助データ用デパケット化部34の処理フローの概略を説明する図である。補助データ用デパケット化部34は、
図11の処理フローに沿って、以下の処理を行う。
【0058】
まず、取得部341が、パケット分離部31が出力したTSパケットを取得する(S31)。次に、PESパケット復元部342が、取得したTSパケットのペイロードからデータを取り出し、PESパケットを復元する(S32)。次に、設定制御部344が、復元したPESパケットのヘッダを参照し、格納されている補助データパケットにおける未使用データ領域の位置情報を取得する(S33)。次に、補助データ復元部345が、復元したPESパケットのペイロードから、未使用データ領域が除去された補助データパケットを取り出し(S34)、取得した未使用データ領域の位置情報に基づき、PESパケットから取り出した補助データパケットに未使用データ領域を補完して元の補助データを復元し、出力する(S35)。
【0059】
[第1の実施例]
本発明の第1の実施例に係る、送信側のメディアデータ伝送装置1に備わる補助データ用パケット化部16の処理、特に設定制御部163およびPESパケット生成部164の具体的な処理について開示する。さらに、受信側のメディアデータ伝送装置3に備わる補助データ用デパケット化部34の処理、特に設定制御部344および補助データ復元部345の具体的な処理について開示する。
【0060】
第1の実施例は、メディアデータ伝送装置1を利用するユーザが、自由に利用可能な領域のうちある特定の部分領域をあらかじめ指定し、当該部分領域のみにユーザデータを格納し、それ以外の部分領域を削除してメディアデータ伝送装置3に伝送する、という使用態様に対応するものである。
【0061】
第1の実施例で用いるユーザデータ1パケットの補助データパケットの構成を
図12に例示する。以下、
図12に示したように、ユーザデータ1パケットを用い、そのUDWの冒頭32word(0−31word)をあらかじめ指定し、この領域にユーザデータを格納して伝送する例を用いて、本実施例を説明する。
【0062】
[PESパケット生成処理]
送信側のメディアデータ伝送装置1に備わる補助データ用パケット化部16における設定制御部163は、補助データ用パケット化部16の外部から指示を受信可能な構成(不図示)とされている。ユーザは、指示端末(不図示)を操作し、設定制御部163に対して、使用する補助データを「ユーザデータ1」、使用するUDWの領域を「0−31word」と指示する。
【0063】
まず、設定制御部163は、指示端末(不図示)からの指示に応じて、「使用する補助データ:ユーザデータ1、使用するUDWの領域:0−31word」の情報を含む削除指示信号を生成し、PESパケット生成部164に出力する。なお、削除指示信号に含まれる情報として、「使用するUDWの領域」に代えて、「使用しないUDWの領域(すなわち、未使用データ領域)」を用いるようにしてもよい。
【0064】
次に、PESパケット生成部164は、設定制御部163から受信した削除指示信号を参照し、ユーザデータ1パケットにおけるUDWの32−254wordはユーザが必要としない領域(すなわち、未使用データ領域)として削除対象であることを把握する。
【0065】
続いて、PESパケット生成部164は、蓄積部162に保持されている補助データパケットのSDIDを読み出し、その値が2FChであれば、削除対象パケットと認識し、UDWの32−254wordを除く領域を蓄積部162から読み出す。このように、PESパケット生成部164は、未使用データ領域を除いたユーザデータ1パケットを蓄積部162から読み出す。
【0066】
その後、PESパケット生成部164は、UDWが0−31wordの領域のみとされ未使用データ領域が除かれたユーザデータ1パケットを、PESパケットのペイロードに格納する。
【0067】
そして、PESパケット生成部164は、PESパケットのヘッダ(PESヘッダ)に、除去対象であるユーザデータ1パケットを識別するためのSDID(=2FCh)と、使用するUDWの領域の位置情報(=先頭0word:末尾31word)を付与してPESパケットを生成し、TSパケット生成部165へ出力する。
【0068】
図13は、PESパケット生成部164が生成するPESパケットのヘッダ構成例を説明する図である。なお、図中のカッコ内の数字は、その領域のビット数を表している。通常のPESヘッダ(PES基本ヘッダ)に用意されたPES拡張フラグ(PES_extension_flag)を1に設定することで、PES拡張ヘッダを利用することができるようになる。PESヘッダ長領域には、PES基本ヘッダとPES拡張ヘッダの合計の長さを設定する。
【0069】
ユーザデータ1パケットのUDWから削除した領域を復元するための情報は、PES拡張ヘッダに記載される。PES拡張ヘッダには、例えば、UDWの未使用データ領域が削除されている機能を特定するための固有の識別ID(16ビット)、このPESパケットのペイロードに格納されている補助データパケットの個数(4ビット)、未使用データ領域として用いるパディングデータ(8ビット)、未使用データ領域の削除対象とされた補助データパケットの種別に対応するSDID(8ビット)、ユーザがユーザデータを格納するために使用するUWD領域の先頭word番号(8ビット)、同末尾word番号(8ビット)を含めるようにすればよい。
【0070】
なお、未使用データ領域の削除対象とされた補助データパケットの種別が複数にわたる場合は、SDID/先頭word番号/末尾word番号の組をその種類の数だけPES拡張ヘッダ中に含めるようにすればよい。また、削除指示信号に、「使用するUDWの領域」ではなく、「使用しないUDWの領域(すなわち、未使用データ領域)」が用いられている場合、先頭word番号または末尾word番号に未使用データ領域のword番号を入力してもよい。
【0071】
図12に示した領域がユーザデータを格納するために使用される場合、例えば、識別ID=任意、格納パケット数=1h、パディングデータ=00h、SDID=FCh、先頭word番号=00h、末尾word番号=1Fhと設定すればよい。なお、末尾にhが付与されている数値は、それが16進数で書き表されていることを示している。
【0072】
[補助データ復元処理]
まず、受信側のメディアデータ伝送装置3に備わる補助データ用デパケット化部34の設定制御部344は、PESパケット復元部342が逐次出力したPESパケットを受信し、PESパケットのヘッダを参照する。PES拡張ヘッダの先頭16ビットが
図13の識別IDと一致している場合、設定制御部344は、当該PESパケットのペイロードに、UDWの未使用データ領域が削除された補助データパケットが少なくとも1つ含まれていることを認識する。
【0073】
次に、設定制御部344は、PES拡張ヘッダの先頭から17ビット目以降の4ビットを参照し、該当PESパケットのペイロードに、未使用データ領域が削除された補助データパケットの数を認識する。以降の補助データ復元処理は、未使用データ領域が削除された補助データパケットの数だけ繰り返す。
【0074】
次に、設定制御部344は、PES拡張ヘッダの先頭から21ビット目以降の8ビットを参照し、その領域(パディングデータ)に格納されているビット列(ただしくは、この8ビットを10ビットword形式にしたビット列)で書き戻せばよいことを認識する。
【0075】
また、設定制御部344は、PES拡張ヘッダの先頭から29ビット目以降の8ビットを参照し、その値が「FCh」であれば、未使用データ領域の削除対象とされた補助データパケットはユーザデータ1パケットであることを認識する。
【0076】
さらに、設定制御部344は、PES拡張ヘッダの先頭から37ビット目以降の8ビットおよび45ビット目以降の8ビットを参照し、その値がそれぞれ「00h」および「1Fh」であれば、ユーザデータはUDWの0〜31wordに含まれている、すなわち未使用データ領域はUDWの32〜254wordであることを認識する。
【0077】
そして、設定制御部344は、「未使用データの削除対象補助データのSDID:2FCh、UDWの未使用データ領域:32−254word、未使用データ領域のパディングデータ:00h」の情報を含む削除復元信号を生成し、補助データ復元部345に出力する。
【0078】
補助データ復元部345は、PESパケット復元部342が出力した削除復元信号を受信すると、蓄積部343からPESパケットのペイロードを読み出して、補助データパケットを取り出す。
【0079】
そして、取り出した補助データパケットのSDIDが削除復元信号から提供されたSDID(2FCh)と同じであった場合、補助データ復元部345は、削除復元信号の情報に基づき、この補助データパケットのUDWは未使用データ領域が削除されていることを認識する。
【0080】
その後、補助データ復元部345は、削除復元信号から提供されたUDWの未使用データ領域に対応する領域を、同じく削除復元信号から提供されたパディングデータで埋めることで補完し、元の補助データを復元する。
【0081】
最後に、補助データ復元部345は、復元した元の補助データをメディアデータ伝送装置3に備わるメディア結合部37へ出力する。
【0082】
以上説明したように、本実施例に係る送信側のメディアデータ伝送装置1は、入力信号に含まれる補助データのうちユーザが必要としない領域である未使用データ領域を指定し、補助データから該未使用データ領域を除去した補助データをペイロードに格納するとともに、補助データにおける除去した未使用データ領域の位置情報をヘッダに付与してパケットを生成し、伝送することを特徴とする。
【0083】
また、本実施例に係る受信側のメディアデータ伝送装置3は、受信したパケットのヘッダに含まれる除去された未使用データ領域の位置情報に基づき、パケットのペイロードに格納された補助データに対し、未使用データが除去された領域を補完して補助データを復元することを特徴とする。
【0084】
すなわち、本実施例に係るメディアデータ伝送装置は、補助データからユーザが必要としない未使用データ領域を削除して伝送するので、伝送するパケットのデータ量あるいはビットレートを低減させることができる。
【0085】
[第2の実施例]
本発明の第2の実施例に係る、送信側のメディアデータ伝送装置1に備わる補助データ用パケット化部16の処理、特に設定制御部163およびPESパケット生成部164の具体的な処理について開示する。さらに、受信側のメディアデータ伝送装置3に備わる補助データ用デパケット化部34の処理、特に設定制御部344および補助データ復元部345の具体的な処理について開示する。
【0086】
第2の実施例は、自由に利用可能な領域のうちどの部分領域にユーザデータが格納されるかを外部から指定されなくとも、メディアデータ伝送装置1が有効な情報を有していない領域(未使用データ領域)を自律的に特定し、当該部分領域を削除してメディアデータ伝送装置3に伝送する、という使用態様に対応するものである。
【0087】
以下、
図12に示したように、ユーザデータ1パケットを用い、そのUDWの冒頭32word(0−31word)の領域にユーザデータを格納して伝送する例を用いて、本実施例を説明する。
【0088】
[PESパケット生成処理]
まず、送信側のメディアデータ伝送装置1に備わる補助データ用パケット化部16における設定制御部163は、取得部161が逐次出力した補助データパケットを受信する。
【0089】
次に、設定制御部163は、受信した補助データパケットのDIDおよびSDIDを参照し、補助データパケットの種別を判定する。
図12の例ではDID=25Fh、SDID=2FChであるので、
図5を参照すれば、この補助データパケットがユーザデータ1パケットであると判定できる。
【0090】
次に、設定制御部163は、受信した補助データパケットのうちユーザが自由に利用可能な領域(
図12の例では補助データパケットはユーザデータ1パケットであるので、
図6のとおりUDWの全域)を参照し、特定のビット列の存在を検索する。
【0091】
ここで言う「特定のビット列」とは、有効な情報を有していない領域に挿入されるビット列であって、通常はオール1(10ビットワードでは「2FFh」)あるいはオール0(同「200h」)が用いられる。すなわち、設定制御部163は、受信した補助データパケットのうちユーザが自由に利用可能な領域に対して、「2FFh」あるいは「200h」のビット列を検索し、該当するビット列は、有効な情報を有していない領域(未使用データ領域)と特定する。
図12の例では、UDWの32−254wordが未使用データ領域に相当する。
【0092】
そして、設定制御部163は、未使用データ領域として特定された領域を指定する削除指示信号をPESパケット生成部164に出力する。
図12の例では、「使用する補助データ:ユーザデータ1、未使用データ領域:32−254word」の情報を含む削除指示信号を生成し、PESパケット生成部164に出力する。なお、削除指示信号に含まれる情報として、「未使用データ領域」に代えて、「ユーザが使用しているUDWの領域」(
図12の例では、0−31word)を用いるようにしてもよい。
【0093】
その後、PESパケット生成部164は、設定制御部163から受信した削除指示信号を参照し、ユーザデータ1パケットにおけるUDWの32−254wordは未使用データ領域として削除対象であることを把握する。以降のPESパケット生成部164の処理は、第1の実施例におけるPESパケット生成部164の処理と同様であるため、説明は省略する。
【0094】
[補助データ復元処理]
受信側のメディアデータ伝送装置3に備わる補助データ用デパケット化部34の設定制御部244および補助データ復元部345は、第1の実施例と同様の処理を行うものであるため、その処理の説明は省略する。
【0095】
以上で説明しように、本実施例に係る送信側のメディアデータ伝送装置1は、入力信号に含まれる補助データに対し、有効な情報を有していない領域に挿入される特定のビット列を検索することで未使用データ領域を指定し、補助データから該未使用データ領域を除去した補助データをペイロードに格納するとともに、補助データにおける除去した未使用データ領域の位置情報をヘッダに付与してパケットを生成し、伝送することを特徴とする。
【0096】
すなわち、本実施例に係るメディアデータ伝送装置は、補助データから有効な情報を有していない未使用データ領域を削除して伝送するので、伝送するパケットのデータ量あるいはビットレートを低減させることができる。
【0097】
最後に、本実施の形態に係るメディアデータ伝送装置1,3による具体的な数値上の効果を説明する。映像を含めたTSパケットのビットレートを3Mbpsとし、伝送を行う補助データとして放送局間制御信号およびデジタル字幕データの2パケットとし、それら以外のパケットに対しては本実施の形態に従って未使用データ領域を削除したと仮定すると、補助データを約250Kbps削減することができる。放送局間において複数のメディアデータが同じ時間帯で重畳伝送されることを考慮すると、その定量的数値の数倍の削減効果が期待される。
【0098】
なお、本実施の形態で説明したメディアデータ伝送装置1,3は、CPU、メモリ、ハードディスク等を備えたコンピュータまたはデジタル映像デバイス(エンコーダ装置およびデコーダ装置)で実現できる。また、メディアデータ伝送装置1,3としてコンピュータを機能させるためのプログラムや当該プログラムの記憶媒体を作成することも可能である。