特許第6495986号(P6495986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6495986
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 15/12 20060101AFI20190325BHJP
   F26B 21/00 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   F26B15/12 B
   F26B21/00 C
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-173697(P2017-173697)
(22)【出願日】2017年9月11日
(62)【分割の表示】特願2015-184630(P2015-184630)の分割
【原出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2017-211178(P2017-211178A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2017年12月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-14155(P2015-14155)
(32)【優先日】2015年1月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高原 竜平
(72)【発明者】
【氏名】西部 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】磯 明典
(72)【発明者】
【氏名】坂下 健司
(72)【発明者】
【氏名】松田 大輝
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−278859(JP,A)
【文献】 特開2008−029922(JP,A)
【文献】 実開昭56−054796(JP,U)
【文献】 特開2013−045877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 1/00−25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、
前記処理室内に設けられ、基板を搬送する搬送部と、
前記処理室内に前記基板が搬送される搬送路を挟むように前記搬送路の上下に個別に設けられ、それぞれ前記搬送路に向けて気体を吹き付ける第1の気体供給部及び第2の気体供給部と、
前記処理室内に設けられ、気体の流れを整える複数の整流板と、
を備え、
前記第1の気体供給部及び前記第2の気体供給部は、それぞれ、前記気体を吹き出す長尺の吹出口を有し、前記吹出口の長手方向が水平面内で前記基板の搬送方向に直交する方向に対して同じ方向に傾けられ、前記吹出口が前記基板の搬送方向の上流側に前記気体を吹き出すように設けられており、
前記複数の整流板のそれぞれは、
前記基板の搬送方向に水平面内で直交する方向における長さが、搬送される前記基板の同方向における長さより短く、
前記搬送路の下方において、前記基板の搬送方向に水平面内で直交する方向に、かつ前記第1の気体供給部または前記第2の気体供給部の前記吹出口の長手方向に沿うように前記基板の搬送方向にずらされて並べられ、
前記基板の搬送方向に対向する第1面及びその第1面の反対面である第2面を有し、
前記基板の搬送方向の下流側に倒されることで前記第面が前記処理室の底面に対向するように配置され、前記気体の流れを前記第1面に沿う流れと前記第2面に沿う流れにわけるように設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記複数の整流板は、前記処理室の前記底面に、この底面との間に隙間が存在しない状態で設けられることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1の気体供給部は、前記搬送路の上方に位置しており、
前記処理室は、
前記複数の整流板より前記基板の搬送方向の上流側に位置付けられ、前記処理室の前記底面であって前記第1の気体供給部の前記吹出口に対向する箇所に形成され、前記複数の整流板により整流された前記気体を排出する複数の排気口を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1の気体供給部は、前記搬送路の上方に位置しており、
前記処理室は、
前記複数の整流板より前記基板の搬送方向の上流側に位置付けられ、前記処理室の前記底面であって前記第1の気体供給部の前記吹出口に対向する箇所に形成され、前記複数の整流板により整流された前記気体が溜まる空間を形成する底室を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理室は、
前記底室に設けられ、前記複数の整流板により整流された前記気体を排出する複数の排気口を有することを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記底室に設けられ、前記底室内の気体が上方に戻ることを抑える抑制板を有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記底室の上方に設けられ、前記底室に向かって飛散した液を受け止める液回収板を有することを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記複数の整流板のそれぞれは、長方形の板形状に形成され、水平面内で前記基板の搬送方向に直交するように個別に設けられることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記複数の整流板のそれぞれは、各整流板の中心をつなぐ仮想線が前記吹出口の長手方向と平行になるように並べられていることを特徴とする請求項8に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶やカバーガラスなどの製造工程において用いる基板処理装置としては、処理液(例えば薬液や洗浄液など)によって基板を処理し、その後、気体の吹き付けによって基板を乾燥処理する基板処理装置が開発されている。また、気体(例えば処理ガスなど)の吹き付けによって基板を処理する基板処理装置も開発されている。このような基板処理装置は、処理室(処理槽)内で複数の回転ローラにより基板を搬送しながら、基板に気体を吹き付けて基板処理を行う。処理室には、例えばエアーナイフなどの気体を吹き付ける手段が基板搬送路の上下に備えられている。上のエアーナイフは斜め下に向かって、下のエアーナイフは斜め上に向かって気体を供給するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−161217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の処理室では、基板に吹き付ける気体の流速や流量などによって乱流が発生することがある。基板がエアーナイフ付近に搬送されてくるまでは、それぞれのエアーナイフから供給された気体が途中でぶつかり合流して、搬送路と略平行で、かつ基板搬送方向と逆方向に進行する。搬送路には基板を搬送するための搬送ローラが備えられているため、搬送路と略平行に進行していた気体はコアンダ効果によって搬送ローラの湾曲面(外周面)に沿って下方に向かう。下方に向かったエアは処理室の底部にぶつかり、乱流となる。この乱流の大部分が、処理室に搬入された搬送途中の基板の裏面にぶつかることになる。
【0005】
このため、基板の厚さが薄くなると(例えば数mmや数mm以下の厚さになると)、基板自体が軽くなることから、その自重が軽い基板は乱流によって持ち上げられ、ばたつくことがある。また、基板が乱流によって搬送路からずれることもある。この基板のバタツキや搬送ズレは基板の破損(傷なども含む)や処理不良などを引き起こす要因となる。また、基板が処理室に搬入され、エアーナイフにまで達していない段階において、乱流が発生することによって基板がばたつくと、エアーナイフに達したときに上下エアーナイフの隙間に基板がうまく入り込まず、基板が破損してしまうことがある。これらのことから、基板のバタツキ及び搬送ズレを抑えることが求められている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、基板のバタツキや搬送ズレなどの搬送不良を抑えることができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る基板処理装置は、
処理室と、
前記処理室内に設けられ、基板を搬送する搬送部と、
前記処理室内に前記基板が搬送される搬送路を挟むように前記搬送路の上下に個別に設けられ、それぞれ前記搬送路に向けて気体を吹き付ける第1の気体供給部及び第2の気体供給部と、
前記処理室内に設けられ、気体の流れを整える複数の整流板と、
を備え、
前記第1の気体供給部及び前記第2の気体供給部は、それぞれ、前記気体を吹き出す長尺の吹出口を有し、前記吹出口の長手方向が水平面内で前記基板の搬送方向に直交する方向に対して同じ方向に傾けられ、前記吹出口が前記基板の搬送方向の上流側に前記気体を吹き出すように設けられており、
前記複数の整流板のそれぞれは、
前記基板の搬送方向に水平面内で直交する方向における長さが、搬送される前記基板の同方向における長さより短く、
前記搬送路の下方において、前記基板の搬送方向に水平面内で直交する方向に、かつ前記第1の気体供給部または前記第2の気体供給部の前記吹出口の長手方向に沿うように前記基板の搬送方向にずらされて並べられ、
前記基板の搬送方向に対向する第1面及びその第1面の反対面である第2面を有し、
前記基板の搬送方向の下流側に倒されることで前記第面が前記処理室の底面に対向するように配置され、前記気体の流れを前記第1面に沿う流れと前記第2面に沿う流れにわけるように設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施の一形態によれば、基板のバタツキや搬送ズレなどの搬送不良を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す横断面図である。
図2】第1の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す縦断面図(図1のA1−A1線に位置する断面図)である。
図3】第1の実施形態に係る気体の流れを説明するための説明図である。
図4】第2の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す縦断面図である。
図5】第3の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す縦断面図である。
図6】他の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、実施の一形態に係る基板処理装置1は、基板Wを処理する処理室2と、基板Wを搬送する搬送部3と、搬送される基板Wに気体を吹き付ける気体供給ユニット4と、気体の流れを整える複数の整流板5とを備えている。なお、基板Wは水平面内の所定の搬送方向Ha(例えば図1及び図2中の右方向)に搬送される。
【0013】
処理室2は、基板Wが搬送される搬送路H(図2参照)を内蔵する筐体である。搬送路Hは処理室2の上下方向の略中央に位置している。基板Wとしては、例えばガラスなどの矩形状の基板が用いられることが多く、その基板Wの厚さは一例として0.5mm程度である。また、処理室2内に搬送される前の基板Wの両面(図2中の上下面)は、例えば洗浄液などの液体によって濡れている。なお、処理室2内にはダウンフロー(垂直層流)が生じており、また、処理室2の底面M1には、基板Wから取り除かれた液体を排出する排出口(図示せず)が形成されている。
【0014】
搬送部3は、長尺の複数の搬送ローラ3aを備えており、それらの搬送ローラ3a上に置かれた基板Wを搬送ローラ3aの回転によって搬送する。各搬送ローラ3aは回転可能に設けられ、基板Wの搬送方向Haに対して水平面内で直交するように所定間隔で並べられており、基板Wの搬送路Hを形成している。これらの搬送ローラ3aはそれぞれ複数のローラ11とそれらのローラ11を保持するシャフト12とにより構成されており、各搬送ローラ3aは互いに同期して回転する構造になっている。なお、搬送ローラ3aの配置間隔は基板Wのサイズに応じて決定されており、各搬送ローラ3aは気体供給ユニット4による基板Wに対する気体供給を妨げないように搬送路H中の気体供給位置を避けて設けられている。
【0015】
気体供給ユニット4は、搬送路Hを挟むように搬送路Hの上下に対向して一つずつ設けられた第1のエアーナイフ(第1の気体供給部)4a及び第2のエアーナイフ(第2の気体供給部)4bを備えている。第1のエアーナイフ4aは搬送路Hに向けて上方位置から気体(例えば空気や窒素ガスなど)を吐出し、第2のエアーナイフ4bは搬送路Hに向けて下方位置から気体(例えば空気や窒素ガスなど)を吐出する。この気体供給ユニット4は、第1のエアーナイフ4a及び第2のエアーナイフ4bから気体を搬送路Hに向けて吹き付け、その搬送路Hを通過する基板Wの両面を乾燥させるものである。
【0016】
第1のエアーナイフ4aは、気体を吹き出す長方形状の吹出口(長尺の吹出口)13を有しており、吹出口13が基板Wの搬送方向Haの上流側に気体を吹き出すように搬送路Hの上方位置に設けられている。詳述すると、第1のエアーナイフ4aは、図1に示すように、搬送路Hを横切ると共に、第1のエアーナイフ4a上位側の端部に対して下位側の端部が搬送方向Haの下流側に位置するように、角度θ1(例えば70度)傾けられて設けられている。さらに、第1のエアーナイフ4aは、吹出口13が下方に向けられ、搬送方向Haの上流側に向かって気体を吹き出すように配置されており、図2に示すように、第1のエアーナイフ4aにおける吹出口13と反対側の端部側が搬送方向Haの下流側に角度θ2(例えば50度以上70度以下の範囲内)傾斜して設けられている。第1のエアーナイフ4aの吹出口13と搬送中の基板Wの表面との鉛直方向の離間距離(ギャップ)Gは数mm(例えば3mm)程度となる。
【0017】
第2のエアーナイフ4bも、気体を吹き出す長方形状の吹出口(長尺の吹出口)13を有しており、吹出口13が基板Wの搬送方向Haの上流側に気体を吹き出すように搬送路Hの下方位置に設けられている。この第2のエアーナイフ4bは、第1のエアーナイフ4aと同様(第1のエアーナイフ4aと同じ方向及び同じ角度)に傾けられ、第1のエアーナイフ4aおよび第2のエアーナイフ4bの吹き出し口は対向している。
【0018】
各整流板5は、図1に示すように、それぞれ長方形の板形状に形成されており、水平面内で基板Wの搬送方向Haに直交するように搬送路Hの下方に個別に設けられている。これらの整流板5は、基板Wの搬送方向Haに所定距離ずつずらして吹出口13の長手方向に沿うように並べられている(すべて同じ距離ずつずれて配置されている)。例えば、各整流板5は、それらの中心をつなぐ仮想線Iが吹出口13の長手方向と平行になるように並べられている。各整流板5は、基板Wの幅(基板Wの搬送方向Haに水平面内で直交する方向の長さ)の全域に亘って配置されている。なお、整流板5を搬送方向Haにずらす所定距離は、図1の平面視において整流板5の右辺に下流側の隣接する整流板5の左辺が同一直線上に位置するような距離(図1の平面視における整流板5の搬送方向Haの幅)Lである。
【0019】
さらに、各整流板5は、図2に示すように、それぞれ第1面5a及びその第1面5aの反対面である第2面5bを有している。これらの整流板5は、その上端側が、基板Wの搬送方向Haの下流側に倒されて搬送路H(処理室2の底面M1)に対して所定角度θ3(例えば50度以上70度以下の範囲内)傾いており、気体の流れを第1面5aに沿う流れと第2面5bに沿う流れにわけるように処理室2の底面M1に個別に設けられている。なお、これら複数の整流板5の各傾斜角度θ3は、すべて同一の角度である。整流板5と第1のエアーナイフ4a(又は第2のエアーナイフ4b)との離間距離は、後述する乱流を遮ることが可能な距離に設定されている。なお、整流板5の材料としては、例えばポリ塩化ビニル(塩化ビニル樹脂)を用いることが可能である。
【0020】
ここで、前述の処理室2には、各整流板5により整流された気体が溜まる空間(気体の溜まり場)を形成する底室2a及びその底室2a内から気体を排出する複数の排気口2bが設けられている。
【0021】
底室2aは、全ての整流板5より基板Wの搬送方向Haの上流側であって、処理室2内において第1のエアーナイフ4aの吹出口13に対向する箇所であるコーナー部分(例えば、図1中における処理室2左角部分)に位置付けられ、処理室2の底面M1に設けられている。この底室2aは長尺の箱形状に形成されており、長手方向が搬送方向Haに水平面内で直交するように配置されている。底室2aの開口の長手方向の長さL1は、設置済の第1のエアーナイフ4a(又は第2のエアーナイフ4b)の吹出口13における基板Wの搬送方向Haに水平面内で直交する方向の長さ(設置幅)L2の半分の長さより短い(例えば基板Wの幅の半分より短い)。
【0022】
各排気口2bは、基板Wの搬送方向Haに水平面内で直交する方向に並べられ、底室2aの底面にそれぞれ形成されており、各整流板5により整流された気体を排出する。これらの排気口2bは工場などに既存の排気装置に接続管(いずれも図示せず)などを介して接続されており、処理室2内の気体は各排気口2bから吸い込まれて排出される。
【0023】
次に、前述の基板処理装置1が行う基板処理(例えば乾燥処理)について説明する。
【0024】
基板処理では、搬送部3の各搬送ローラ3aが回転し、それらの搬送ローラ3a上の基板Wは所定の搬送方向Haに搬送され、搬送路Hに沿って移動する。この搬送路H中の気体供給位置には、予めその上方から乾燥用の気体が第1のエアーナイフ4aによって吹き出されており、さらに、下方からも乾燥用の気体が第2のエアーナイフ4bによって吹き出されている。この吹出し状態で、基板Wが搬送路H中の気体供給位置、すなわち第1のエアーナイフ4aと第2のエアーナイフ4bとの間を通過すると、基板Wの上下面が気体の吹き付けによって基板Wに付着していた液体が吹き飛ばされ、基板W表面が乾燥していく。このとき、基板Wの表面(上面及び下面)に付着している液体は気体の吹き付けによって基板W表面の右上の隅から左下の隅への方向(図1の平面視)に移動するため、基板Wの上下面はそれぞれ右上の隅から左下の隅へ順次乾燥していく。
【0025】
この基板処理によれば、基板Wが搬送路H中の気体供給位置に到達するまで(乾燥処理前)、第1のエアーナイフ4aから吹き出された気体は搬送路Hの下方に向かって吹き付けられ、第2のエアーナイフ4bから吹き出された気体は搬送路Hの上方に向かって吹き付けられる。これら第1のエアーナイフ4a、第2のエアーナイフ4bからの気体は、それぞれがぶつかり、合流して基板Wの搬送路H上付近を搬送方向Haと平行かつ逆方向に進む。このとき第1のエアーナイフ4aと第2のエアーナイフ4b付近の搬送路Hには基板Wがまだ到達していないため、搬送ローラ3aのローラ11およびシャフト12が基板Wを保持することなく存在している。このため、ローラ11あるいはシャフト12付近に第1のエアーナイフ4aと第2のエアーナイフ4bからの気体が合流した気体の塊が流れてきたときに、ローラ11あるいはシャフト12の湾曲面(外周面)にコアンダ効果が生じ、ローラ11あるいはシャフト11の湾曲面に沿って、第1のエアーナイフ4a、第2のエアーナイフ4bからの気体の塊のほとんどが処理室2の下方に一気に向かっていくことになる。処理室2の下方に向かった気体は底面M1にぶつかったあと、乱流となって処理室2の上方へ向かおうとする。しかし、この乱流が処理室2の上方へ向かうのを邪魔するように整流板5が配置されているため、気体が基板Wの裏面に衝突することを抑制することができる。
【0026】
図3に示すように、第1のエアーナイフ4aと第2のエアーナイフ4bからの気体が合流した気体の塊は、各整流板5の第1面5aに沿う流れと、底面M1にぶつかった後に第2面5bにぶつかる流れとに分かれる。それぞれの気体は第1面5a及び第2面5bに沿うようにわかれて流れ、その後、処理室2の底面M1に沿うように流れやすくなる。図3では、第1面5aに沿う流れは白矢印で示し、その裏面の第2面5bに沿う流れは黒矢印で示している。ただし、図3は気体の流れのイメージを示しており、実際の流れとは異なる部分もある。第1面5aに沿って流れた気体は、処理室2の底面M1に沿うように流れやすくなり(図3中の白矢印参照)、第2面5bに沿って流れた気体は、隣接する整流板5の第1面5aに沿って流れてきた気体と混ざりつつ、処理室2の底面M1に沿うように流れやすくなる(図3中の黒矢印参照)。その後、各整流板5により整流された気体は底室2aに溜まり、その底室2a内の各排気口2bから排出される。このようにして、乱流が発生して処理室2の上方へ向かうことを抑制することが可能となるので、基板Wのバタツキ及び搬送ズレを抑えることができる。
【0027】
次いで、基板Wが搬送路H中の気体供給位置に到達してから通過するまで(乾燥処理中)、第1のエアーナイフ4aから吹き出された気体は基板Wの上面により遮られるが、第2のエアーナイフ4bから吹き出された気体は基板Wの下面により遮られ、搬送路Hの下方に向かって流れる。この気体も、整流板5が存在しない場合においては、処理室2の底にぶつかり搬送路Hに向かって反射する流れとなり、搬送路Hの下方において乱流が発生し、基板W(特に、基板Wの搬送方向Ha下流側部分)がばたつく原因となる。しかし、前述と同様(図3参照)、各整流板5により個々の第1面5a及び第2面5bに沿うようにわかれて流れるので、整流板5を介さずにダイレクトに処理室2の底面M1に衝突した場合と比べると、処理室2の底面M1に沿って流れやすくなる。第1面5aに沿って流れた気体は、処理室2の底面M1に沿うように流れやすくなり(図3中の白矢印参照)、第2面5bに沿って流れた気体は、隣接する整流板5の第1面5aに沿って流れてきた気体と混ざりつつ、処理室2の底面M1に沿うように流れやすくなる(図3中の黒矢印参照)。その後、各整流板5により整流された気体は底室2aに溜まり、その底室2a内の各排気口2bから排出される。このようにして、乱流が発生して処理室2の上方へ向かうことを抑制することが可能となるので、基板Wのバタツキ及び搬送ズレを抑えることができる。また、基板Wに付着していた液体が霧状の液体となって、乱流によって舞い上がり、基板Wの下面に再付着することを抑えることもできる。
【0028】
また、整流板5が処理室2の底面M1に設けられているため、整流板5と処理室2の底面M1との間に隙間が存在しなくなり、その隙間を気体が通り抜けることが防止される。このため、隙間を通り抜けてさらに流速を増した気体が搬送路Hに向かうような気流の発生を抑えることが可能となるので、新たな乱流の発生を抑制することができる。ただし、気流の量や速度などによっては、整流板5を処理室2の底面M1に設けずにその底面M1から浮かせた状態としても、乱流の発生を抑制することが可能な場合もある。この場合には、整流板5と処理室2の底面M1との間に隙間を生じさせても良いが、確実な乱流の発生抑制のためには整流板5を処理室2の底面M1に設けることが望ましい。
【0029】
以上説明したように、実施の一形態によれば、整流板5を搬送路Hの下方に位置付けて基板Wの搬送方向Haの下流側に倒し、気体の流れを第1面5aに沿う流れと第2面5bに沿う流れにわけるように設けることによって、気体供給ユニット4から吹き出された気体の塊が処理室2の上方へ向かうことが妨げられ、その後、第1面5a及び第2面5bに沿って流れるように整えられる。これにより、搬送路Hに向かう気流の発生を抑え、乱流の発生を抑制することが可能になるので、基板Wのバタツキや搬送ズレなどの搬送不良を抑えることができる。
【0030】
また、整流板5を処理室2の底面M1に設けることよって、整流板5と処理室2の底面M1との間に隙間が存在しなくなり、その隙間を気体が通り抜けることが防止される。これにより、隙間を通り抜けた気体が搬送路Hに向かうような気流の発生を抑え、乱流の発生を抑制することが可能になるので、基板Wのバタツキ及び搬送ズレをさらに抑えることができる。
【0031】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図4を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点(抑制板6及び液回収板7)について説明し、その他の説明は省略する。
【0032】
図4に示すように、第2の実施形態に係る基板処理装置1は、抑制板6及び液回収板7を備えている。抑制板6は、底室2aの開口を短手方向に例えば半分塞ぐように底室2aの上端に設けられており、整流板5を介して回収された底室2a内の気体が上方に戻ることを抑える。また、液回収板7は、底室2aの上方にその底室2aの開口から所定距離離されて位置付けられ、処理室2の側面M2に設けられている。この液回収板7は、搬送路Hを通過する基板Wから底室2aに向かって飛散した液をその上面で受け止めて回収する。
【0033】
なお、液回収板7により回収された液体は、例えば、処理室2の側面M2に接続された排出管(図示せず)から排出される。ただし、液回収板7に付着する液体の量が少量であれば、処理室2の側面M2に排出管を接続せず、製造停止時やメンテナンス時に布やスポンジなどの吸収体によって液回収板7から液体を拭き取ることも可能である。
【0034】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、抑制板6を設けることによって、底室2a内の気体が上方に戻ることを抑え、乱流の発生を抑制することが可能となるので、基板Wのバタツキや搬送ズレなどの搬送不良を確実に抑えることができる。
【0035】
さらに、液回収板7を設けることによって、搬送路Hを通過する基板Wから底室2aに向かって飛散した液を受け止めて回収すること可能となるので、各排気口2b内に液体が侵入することを抑制し、排気不良などの不具合に起因する乱流の発生を抑えることができる。
【0036】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について図5を参照して説明する。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態および第2の実施形態との差異点について説明し、その他の説明は省略する。
【0037】
図5に示すように第3の実施形態に係る基板処理装置1は、複数設けられる整流板のうち、搬送方向Haにおける最も上流側に位置する整流板51の傾斜角度がその他の整流板5と異なっている。整流板51の傾斜角度は第1のエアーナイフ4aおよび第2のエアーナイフ4b側に大きく傾くように(すなわち底面M1と第2面51bとの間の角度が小さくなるように)、設けられている。このように最上流側の整流板51が設けられていることにより、基板Wのバタツキをより効果的に抑えることができる。前述したとおり、基板Wが気体供給位置に達していないとき、第1のエアーナイフ4aおよび第2のエアーナイフ4bからの気体が合流した気体の塊は、複数の整流板5および整流板51によって整流される。整流板5の第1面5aに沿う流れと、第2面5bに沿う流れとに分かれ、処理室2の底面M1を沿うように流れる。加えて、第1のエアーナイフ4a、第2のエアーナイフ4bの吹出口13において、各排気口2bから最も離れた位置から吹き出される気体は、整流板51の第1面51aに沿う流れと、第2面51bに沿う流れとに分かれることになる。ここで、整流板51の第2面51bと底面M1との間の領域は、他の整流板5の第2面5bと底面M1との間の領域よりも狭くなる。これにより、整流板51の第2面51bに沿って流れる気体の流速は、整流板5の第2面5bに沿って流れる気体の流速よりも著しく高くなる。第1のエアーナイフ4aおよび第2のエアーナイフ4bの吹出口13における排気口2bから最も離れた位置から吹き出される気体についても、各排気口2bに比較的近い位置から吹き出される気体と同程度の時間をかけて各排気口2bから排出させることができるようになる。これによって、基板Wのバタツキや搬送ズレなどの搬送不良を、より効果的に抑えることができる。
【0038】
(他の実施形態)
前述の実施形態においては、排気口2bは処理室2の底面にのみある例を説明したが、これに限られない。図6は、処理室2内における搬送部3よりも上方の壁面に排気口20を有する基板処理装置1の断面図である。図6に示すように排気口20は、搬送方向Haの上流側の壁面に開口しており、図示しない排気装置によって排気されるようになっている。しかしながら、上述のとおり、基板Wが処理室2内に搬入され搬送が始まり、気体供給位置に達するまでの間は、搬送路Hの下方からの気体が処理室2の上方へ向かうのを妨げる必要がある。したがって、排気口20の排気装置によって排気を行うようにすると、処理室2内の気体の流れを底面に集めることができなくなるため、このときには排気口20の排気装置を停止させておく。基板Wが気体供給位置に達し、乾燥処理が始まると、排気口20の排気装置を作動させる。これによって第1のエアーナイフ4aから吹き出されて基板W上で反射した気体を排気する。
【0039】
以上説明したように、このような構成においても、上述した各実施形態と同様の効果が得られる。さらに、乾燥処理中における処理室全体の気流も整えることができ、乾燥処理中の基板Wのバタツキについても抑えることができる。
【0040】
前述の実施形態においては、第1のエアーナイフ4a(又は第2のエアーナイフ4b)を吹出口13の長手方向が搬送方向Haに対して水平面内で直交する状態から搬送方向Haの上流側に倒しているが、これに限るものではなく、逆の下流側に倒して設けることも可能である。この場合には、各整流板5(51)や底室2a、各排出口2bの位置は前述の実施形態に基づいて変更される。
【0041】
また、搬送路Hを移動する基板Wの位置に応じて第1のエアーナイフ4a及び第2のエアーナイフ4bのどちらか一方又は両方の流量を調整部(図示せず)により調整することも可能である。例えば、基板の先端が第1のエアーナイフ4a及び第2のエアーナイフ4bの気体供給位置に到達した場合、両方の流量を上げ、基板Wの後端が前述の気体供給位置に到達した場合、両方の流量(ゼロも含む)を下げる(一例として、基板処理中のみ気体を吹き出す)。これにより、基板Wの前端が第1のエアーナイフ4aと第2のエアーナイフ4bとの間に適切に搬送され、その後処理を行うことができる。
【0042】
また、処理室2の底面M1に底室2aを設けているが、これに限るものではなく、例えば、底室2aを設けずに処理室2の底面M1に各排気口2bを設けることも可能である。さらに、底室2aの底面に各排気口2bを設けているが、これに限るものではなく、例えば、底室2aの側面に設けることも可能である。
【0043】
また、上記の各実施形態においては、整流板5(51を含む)が4枚である例を説明したが、これに限るものではなく、第1のエアーナイフ4a(又は第2のエアーナイフ4b)の長さに応じてその数が決定されれば良く、1枚以上備えられれば良い。しかし、整流板5を複数枚備えることによって、より気体が処理室2の底面M1に沿うように流れやすくさせることができる。したがって、より基板Wのバタツキや搬送ズレなどの搬送不良を抑えることができる。
【0044】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 基板処理装置
2 処理室
2a 底室
2b 排気口
3 搬送部
4a 第1の気体供給部
4b 第2の気体供給部
5 整流板
5a 第1面
5b 第2面
6 抑制板
7 液回収板
13 吹出口
H 搬送路
Ha 搬送方向
M1 底面
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6