特許第6496014号(P6496014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6496014グアニジン含有ポリオキシアルキレン及び調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496014
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】グアニジン含有ポリオキシアルキレン及び調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/325 20060101AFI20190325BHJP
   C08G 65/02 20060101ALI20190325BHJP
   C08L 71/03 20060101ALI20190325BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20190325BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20190325BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20190325BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20190325BHJP
   C09D 171/03 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   C08G65/325
   C08G65/02
   C08L71/03
   C08G18/18
   C08G59/50
   C09D7/65
   C09D17/00
   C09D171/03
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-512422(P2017-512422)
(86)(22)【出願日】2015年5月13日
(65)【公表番号】特表2017-524061(P2017-524061A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】EP2015060592
(87)【国際公開番号】WO2015173302
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年2月15日
(31)【優先権主張番号】102014209355.4
(32)【優先日】2014年5月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100125324
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 健
(72)【発明者】
【氏名】オルガ フィーデル
(72)【発明者】
【氏名】フランク シューベルト
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フィーデル
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−504453(JP,A)
【文献】 特開2012−107230(JP,A)
【文献】 特開2002−226516(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/059159(WO,A1)
【文献】 特開平08−092054(JP,A)
【文献】 特表2013−510336(JP,A)
【文献】 特開昭63−112650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/325
C09D 7/65
C09D 17/00
C09D 171/03
C08L 71/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
櫛位置に、少なくとも1つの構成要素:
【化1】
(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、1〜30個の炭素原子を有する
、直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカル、又は6〜30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカルであり、ヘテロ原子を有していてもよい。)を有することを特徴とする高分子グアニジン基含有化合物。
【請求項2】
式(I):
Z(−X−M1m1−M2m2−M3m3−M4m4−M5m5−M6m6−J) (I)
(式中、
M1:
【化2】
M2:
【化3】
M3:
【化4】
(式中、T、T、T及びTはそれぞれ独立して、水素、又は1〜12個の炭素原子であり、任意にハロゲン分子を有していてよく、但し、T、T、T及びTは、M3がM1或いはM2と同一となるように選択されることはなく、任意にいずれの場合でもT、T、T及びTの内の2つのラジカルは3〜8員環を形成する。)、
M4:
【化5】
(式中、Yは他とは独立して、1〜30個の炭素原子であり、ヘテロ原子を有していてもよい。)、
M5:
【化6】
M6:
【化7】
(式中、Gは式:
【化8】
(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、1〜30個の炭素原子を有する
直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカル、又は6〜30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカルであり、ヘテロ原子を有していてもよい。)で表されるグアニジンラジカルである。)、
i=1〜10であり、
m1、m2、m3、m4及びm5=いずれの場合でもそれぞれ独立して、0〜500であり、
m6=1〜100であり、この際、m1とm2の和は少なくとも3でなければならず、
X=他とは独立して、O、NH、N−アルキル、N−アリール、或いはS、
Z=他とは独立して、1〜30個の炭素原子を有するi−官能性の直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカル、又は6〜30個の炭素原子を有する芳香族の炭化水素ラジカルであり、
J=他とは独立して、水素、1〜30個の炭素原子を有する直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族或いは芳香族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカル、1〜30個の炭素原子を有するカルボン酸ラジカル、又はヘテロ原子置換官能性有機飽和或いは不飽和ラジカルである。)
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(I)の指数及びラジカルが、i=1〜2,m1=0〜30、m2=3〜500、m3=0〜20、m4=0〜20、m5=0〜10、m6=1〜30、かつJ=水素、X=酸素、Y=アリルラジカルであり、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、1〜8個の炭素原子を有する直鎖状或いは分岐鎖状の炭化水素であり、T、T、T及びTはそれぞれ独立して、水素、又は2〜8個の炭素原子を有する直鎖状或いは分岐鎖状の炭化水素、但しT、T、T及びTは、M3がM1或いはM2と同一となるように選択されることはなく、Z=他とは独立して、2〜18個の炭素原子を有する一価或いは二価の直鎖状或いは分岐鎖状の飽和或いは不飽和炭化水素であることを特徴とする請求項に記載の化合物。
【請求項4】
式(I)の指数及びラジカルが、i=1〜2、m1=0〜20、m2=5〜200、m3=0〜10、m4=0〜10、m5=0〜3、m6=1〜20、かつJ=水素、X=酸素であり、R、R、R及びRはメチル基であり、Z=他とは独立して、アリル基又はブチル基であることを特徴とする請求項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1に記載のグアニジン基含有ポリマーを調製する方法であり、
第1工程(a)において、二重金属シアン触媒を用いて、式(II):
Z−(OH)i (II)
(式中、Z=他とは独立して、1〜30個の炭素原子を有するi−官能性の直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカル、又は6〜30個の炭素原子を有する芳香族の炭化水素ラジカルであり、i=1〜10である。)で表される化合物をエピクロロヒドリン、更にアルキレンオキシドと反応させ、
次いで、第2工程(b)において、該生成物を式(III):
【化9】
(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、1〜30個の炭素原子を有する
直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカル、又は6〜30個の炭素原子を有する芳香族の炭化水素ラジカルであり、ヘテロ原子を有していてもよい。)
のグアニジン化合物と反応させる方法。
【請求項6】
本発明に係る方法の工程(b)を、8〜30時間で、90〜160℃の温度で、1〜3当量のテトラメチルグアニジンを用いて実施し、塩化グアニジウムを濾過し、温度100℃、圧力1.5ミリバールで余分なテトラメチルグアニジンを蒸発させることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
任意に第3工程(c)を有し、少なくとも1のグアニジウム基を形成することによって第2工程(b)の生成物を更に転化させ、該反応が第四級化合物の形成を誘導することを特徴とする請求項5又は6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
求項1に記載のグアニジン基含有ポリマーを含む組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のグアニジン基含有ポリマーの、ポリウレタン製造用触媒としての使用。
【請求項10】
請求項1に記載のグアニジン基含有ポリマーの、エポキシ樹脂用硬化剤としての使用。
【請求項11】
請求項1に記載のグアニジン基含有ポリマーのアルコキシシリル基運搬システムとしての使用。
【請求項12】
請求項1に記載のグアニジン基含有ポリマーの、被覆物中の分散添加剤としての使用。
【請求項13】
請求項1に記載のグアニジン基含有ポリマーの、顔料中の分散添加剤としての使用。
【請求項14】
請求項1に記載のグアニジン基含有ポリマーの、被覆組成物中の分散添加剤としての使用。
【請求項15】
請求項1に記載のグアニジン基含有ポリマーの、顔料ペースト中の分散添加剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側鎖にグアニジン基を含むポリオキシアルキレン、及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明において、グアニジン(グアニジン誘導体、グアニジン含有化合物)は、2つのアミノ基をSP2炭素に結合させるイミノユニットを、少なくとも1つ含む尿素のイミノ誘導体を意味するとして理解される。グアニジン含有化合物は、アミノ酸アルギニン又は有機酸クレアチンの形で天然に存在し、商業的には筋力増強剤として利用可能である。
【0003】
グアニジンは、エポキシ樹脂用硬化剤やアルコキシル基運搬システム等に適用されるこの種の化合物の元となる有機塩基として、最も知られているものの内の1つであり(特許文献1)、かつ多数の有機反応に用いられる塩基触媒でもある。更に、グアニジン化合物の中には、殺菌効果又は殺生物効果を有するものもある(特許文献2)。
【0004】
その高塩基度により、グアニジンは実質的にプロトン化した形でのみ存在し、かつ構成要素として両極性又は親水性を向上させ、水素架橋結合を形成することができる。そのため、アルキルグアニジンは、例えばカチオン性乳化剤として化粧品部門へ進出した(特許文献3)。また、グアニジン化合物はその強度が増すことにより、肌と髪にプラスの効果を発揮する。例えば、1995年の花王株式会社の特許明細書(特許文献4)は、化粧品製剤用グアニジン誘導体について特許請求しており、その保湿効果を称賛している。特許文献5も、強度が増すことによって髪の櫛通りと柔らかさを同時に改善し、かつ傷んだ髪を補修する、シャンプー及びヘアコンディショナーの1成分として、グアニジン官能性シロキサンを記載している。これらの多方面にわたる使用可能性を背景に、更なるグアニジン基運搬化合物を開発することが非常に重要である。
【0005】
これまで、文献ではα−ω−グアニジン官能性ポリエーテル合成のみが公知されている(特許文献6)。従って、現在の先行技術には、2要素から成るグアニジン官能基を1以上有するポリマーを製造する方法であり、工程条件を単純に変化させることによってポリマーに導入されるグアニジン基の数を制御し得る方法が欠けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE 10 2013 216787
【特許文献2】EP 0534501
【特許文献3】EP 1671615
【特許文献4】US 5723133
【特許文献5】EP 1844106
【特許文献6】WO2008059159A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、グアニジン基の数が調製可能なポリマーを提供することを本発明の目的とした。
【0008】
本発明の主題事項は、請求項に記載されるように、グアニジン基含有ポリマーを提供することである。
【0009】
本発明の更なる主題事項は、本発明に係るグアニジン基含有ポリマーを調製する方法を提示することである。
【0010】
本発明の更なる主題事項は、本発明に係るグアニジン基含有ポリマーの使用、及び本発明に係る方法による製品の使用である。
【0011】
本発明に係るグアニジン基含有ポリマー、グアニジン基含有ポリマーを調製するための本発明に係る方法、並びにグアニジン基含有ポリマー及び製品の本発明に係る使用は、本発明をこれらの模範的な実施例に限定することなく、例として以下に記載される。以下において化合物の範囲、一般式、又は群が示される場合、それらは明示的に言及される化合物の単に対応する範囲又は群を包含するだけでなく、個別の値(範囲)又は個別の化合物を抽出することによって得られる化合物の部分的範囲及び下位群をも包含する。%記号が以下に示される場合、別段の指示がない限り、重量%を表す。組成物の場合、%記号は、別段の指示がない限り、組成物全体に対する割合を表す。平均値が以下で記載される場合、別段の指示がない限り、当該平均とは質量平均(重量平均)である。測定値が以下に示される場合、別段の指示がない限り、圧力101325Pa、温度23℃で確認された測定値である。
【0012】
本発明に関し、“ポリ”という文言は、分子中で1以上のモノマーから成る少なくとも3つの反復ユニットを有する化合物だけでなく、特に、分子量分布を有し、その際平均分子量が少なくとも200g/molである化合物の組成物も含む。この定義は、対象となっている技術分野において、OECD又はREACHガイドラインによるポリマーの定義を満たしていると考えられない場合であっても、そういった化合物をポリマーとして認識することが一般的であるという事情から成る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
好ましくは、本発明に係るグアニジン基含有ポリマーは、櫛位置に少なくとも1つの構成要素:
【0014】
【化1】
【0015】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1〜30個の炭素原子を有する、直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカル、又は6〜30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカルであり、ヘテロ原子を有し得る。)
を有する。
【0016】
“櫛位置”という用語は、式(Ia)において、波線で表される結合がポリエーテルの一部であり、いずれの場合も、任意に置換され得る少なくとも1のオキシアルキレン基が隣接していることを意味する。好ましくは、本発明に係るグアニジン基含有ポリマーは、末端位置において、式(Ia)の構成要素を持たない。
【0017】
好ましくは、R、R、R及びRラジカルは、それぞれ独立して、1〜30個、より好ましくは2〜8個の炭素原子を有する脂肪族の飽和又は不飽和炭化水素ラジカル、特に好ましくは、R、R、R及びRラジカルは、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ペンチル、又はヘキシルである。
【0018】
更に好ましくは、R、R、R及びRラジカルは全て同一であり、かつ上記の好適な脂肪族の飽和又は不飽和炭化水素ラジカルから選択され得る。
【0019】
更にいっそう好ましくは、R、R、R及びRラジカルは全てメチルである。
【0020】
より好適な本発明に係るグアニジン含有ポリマーは、式(I):
Z(−X−M1m1−M2m2−M3m3−M4m4−M5m5−M6m6−J) (I)
(式中、
M1:
【0021】
【化2】
【0022】
M2:
【0023】
【化3】
【0024】
M3:
【0025】
【化4】
【0026】
(式中、T、T、T及びTはそれぞれ独立して、水素、又は1〜12個の炭素原子、好ましくは2〜8個の炭素原子を有する直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族或いは芳香族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカルであり、任意にハロゲン分子を有していてよく、但し、T、T、T及びTは、M3がM1或いはM2と同一となるように選択されることはなく、任意にいずれの場合でもT、T、T及びTの内の2つのラジカルは3〜8員環を形成する。)

M4:
【0027】
【化5】
【0028】
(式中、Yは他とは独立して、1〜30個の炭素原子、好ましくは2〜15個の炭素原子を有する直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族或いは芳香族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカルであり、ヘテロ原子を有し得る。)

M5:
【0029】
【化6】
【0030】
M6:
【0031】
【化7】
【0032】
(式中、Gは式:
【0033】
【化8】
【0034】
(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して、1〜30個の炭素原子を有する直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカル、又は6〜30個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素ラジカルであり、ヘテロ原子を有し得る。)
で表されるグアニジンラジカルである。)

i=1〜10、好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3であり、
m1、m2、m3、m4及びm5=いずれの場合でもそれぞれ独立して、0〜500であり、
m6=1〜100、好ましくは1.5〜50、より好ましくは2〜40、特に好ましくは2より大きく30以下であり、この際、m1とm2の和は少なくとも3、好ましくは少なくとも5でなければならず、
X=他とは独立して、O、NH、N−アルキル、N−アリール、或いはS、好ましくは酸素であり、
Z=他とは独立して、1〜30個の炭素原子、好ましくは2〜30個の炭素原子、更に好ましくは3〜25個の炭素原子、更にいっそう好ましくは3個より多く20個以下の炭素原子、特に好ましくは4〜15個の炭素原子を有するi−官能性の直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカル、又は6〜30個の炭素原子、好ましくは6個より多く20個以下の炭素原子、特に好ましくは8〜12個の炭素原子を有する芳香族の炭化水素ラジカルであり、
J=他とは独立して、水素、1〜30個の炭素原子を有する直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族或いは芳香族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカル、1〜30個の炭素原子を有するカルボン酸ラジカル、又はヘテロ原子置換官能性有機飽和或いは不飽和ラジカルである。)
を満たす。
【0035】
ここで繰り返される指数と、表示される指数値の範囲は、実際に存在する化学構造及び/又はそれらの混合物の可能な統計分布の平均値であるとして理解されてよい。これは、そういうものとしてそれ自体繰り返される化学構造式、例えば式(I)に当てはまる。
【0036】
式(Ia)で表される構成要素と、好ましくは式(I)で表される化合物を含む本発明に係るグアニジン基含有ポリマーは、好ましくは塩化水素の脱離によって得られる二重結合を持たず、より好ましくは置換基Zにおける二重結合の他に二重結合を持たず、特に好ましくは二重結合を持たない。
【0037】
好ましくは、m1は0〜200、より好ましくは1〜50、特に好ましくは2〜30の値であるとする。
【0038】
更に好ましくは、m2は1〜400、より好ましくは2〜300、よりいっそう好ましくは3〜200、更に好ましくは4〜150、特に好ましくは5〜100の値であるとする。
【0039】
更に好ましくは、m3は0〜50、より好ましくは0より大きく30以下、特に好ましくは1〜15の値であるとする。
【0040】
更に好ましくは、m4は0〜50、より好ましくは0より大きく30以下、特に好ましくは1〜15の値であるとする。
【0041】
更に好ましくは、m5は0〜25、より好ましくは0〜15、特に好ましくは0〜6の値であるとする。
【0042】
、R、R及びRラジカルは好ましくは、それぞれ独立して、1〜8個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素であり、より好ましくは全て同一であり、特に好ましくは全てメチル基である。
【0043】
好ましくは、T、T、T及びTラジカルは、それぞれ独立して水素、又は2〜8個の炭素原子を有する直鎖状或いは分岐鎖状の炭化水素であり、但し、T、T、T及びTは、M3がM1或いはM2と同一となるように選択されることはない。
【0044】
式(Ia)で表される構成要素と、好ましくは式(I)で表される化合物を含む本発明に係るグアニジン含有ポリマーは、200〜50000g/mol、好ましくは400〜35000g/mol、特に好ましくは700〜25000g/molの重量平均分子量を有する。
【0045】
式(Ia)で表される構成要素と、好ましくは式(I)で表される化合物を含む本発明に係るグアニジン含有ポリマーは、程度の差はあれ、クロロメチル基官能化及びグアニジン基官能化され得る。指数m5とm6をもつユニットのモル分率は、合計が100%となる指数m1、m2、m3、m4、m5、及びm6をもつユニットに対し、好ましくは1〜30%、より好ましくは2〜25%、特に好ましくは3〜20%である。
【0046】
好適に存在する有機ラジカルZは、好ましくはOH基を除く、式(II):
Z−(OH) (II)
で表される化合物のラジカルである。
【0047】
式(II)で表される好適な化合物は、アルコール、ポリエテロール、フェノール、好ましくはアリルアルコール、ブタノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジル、アルコール、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、キシリトール、又はマンニトールから成る群の化合物である。
【0048】
Zラジカルは、好ましくはモル質量が15〜4983g/mol、特に41〜3000g/molである。
【0049】
好ましくは、指数iは1である。好適なモノアルコールは、n−アルカノール、好ましくはアリルアルコール、ブタノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、又は分岐鎖状のモノアルカノール、好ましくは2−エチルヘキサノールである。
【0050】
式(Ia)の構成要素を含む本発明に係るグアニジン基含有ポリマー又は本発明により作製されるグアニジン基含有ポリマー、及び好ましくは式(I)の化合物は、好ましくは透明又は不透明になり得る無色から黄褐色の製品である。
【0051】
式(I)で表される本発明に係る好適なグアニジン基含有化合物は、その指数及びラジカルが、
i=1〜2、
m1=0〜30、
m2=3〜500、
m3=0〜20、
m4=0〜20、
m5=0〜10、
m6=1〜30、かつ
J=水素、
X=酸素、
Y=アリルラジカル、
、R、R、及びRは、それぞれ独立して、1〜8個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素であり、
、T、T、及びTは、それぞれ独立して、水素、又は2〜8個の炭素原子を有する直鎖状或いは分岐鎖状の炭化水素であり、但しT、T、T、及びTは、M3がM1或いはM2と同一となるように選択されることはなく、かつ
Z=それぞれ独立して、2〜18個の炭素原子を有する一価或いは二価の直鎖状或いは分岐鎖状の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカル
であるグアニジン基含有化合物である。
【0052】
式(I)で表される本発明に係る特に好適なグアニジン基含有化合物は、その指数及びラジカルが、
i=1〜2、
m1=0〜20、
m2=5〜200、
m3=0〜10、
m4=0〜10、
m5=0〜3、
m6=1〜20、かつ
J=水素、
X=酸素、
、R、R、及びRは、メチル基であり、かつ
Z=他とは独立して、アリル基又はブチル基
であるグアニジン基含有化合物である。
【0053】
式(I)で表されるオキシアルキレンラジカルの様々なフラグメントは、統計分布に入り得る。所望のブロック数と所望の連鎖を有する構造では、統計分布はブロック状、又はランダムである。また、それらは代替的構造を有し得る。或いは、それらは鎖によって勾配を形成し得る。具体的には、様々な分布から成る群が任意に互いに続いている混合形の全てを形成し得る。統計分布は、特定の実施形態に起因する限定の対象となり得る。該限定が適用されない場合、統計分布に変化は生じない。
【0054】
本明細書中で表わされる指数と、表わされる指数の値域は、実際に存在する構造及び/又はその混合体の考えられる統計分布の平均値として理解されてよい。これも、式(I)、式(II)及び式(III)のように、それ自体正確に表されている構造式に適用される。
【0055】
分子又は分子フラグメントが1以上の立体中心を持つ場合、或いは対称性につきアイソマーに分化する場合、或いは制限された回転等の他の影響につきアイソマーに分化する場合は常に、考えられる全てのアイソマーは本発明に含まれる。アイソマーは当業者に周知である。具体的には、http://www.uni−saarland.de/fak8/kazmaier/PDF_files/vorlesungen/Stereochemie%20Strassb%20Vorlage.pdf.等の、ザールラント大学のKazmaier教授による定義を参照する。式(Ia)で表わされる構成要素を含む本発明に係るグアニジン基含有ポリマーと、好ましくは式(I)で表わされる化合物は、以下に記載される本発明に係る方法によって作製される。
【0056】
構成要素:
【0057】
【化9】
【0058】
を含むグアニジン基含有ポリマーを調製するための本発明に係る好適な方法では、第1工程(a)において、二重金属シアン触媒、好ましくはヘキサシアノコバルト酸亜鉛を用いて、式(II):
Z−(OH) (II)
(式中、Z=それぞれ独立して、1〜30個の炭素原子、好ましくは2個より多く30個以下の炭素原子、更に好ましくは3〜25個の炭素原子、更にいっそう好ましくは3個より多く20個以下の炭素原子、特に好ましくは4〜15個の炭素原子を有するi−官能性の直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカル、又は6〜30個の炭素原子、好ましくは6個より多く20個以下の炭素原子、特に好ましくは8〜12個の炭素原子を有する芳香族の炭化水素ラジカルであり、
i=1〜10,好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3である。)
で表わされる化合物を、エピクロロヒドリンと更なるアルキレンオキシドと反応させ、次いで第2工程(b)において、該生成物を式(III):
【0059】
【化10】
【0060】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、1〜30個の炭素原子を有する、直鎖状、環状或いは分岐鎖状の脂肪族の飽和或いは不飽和炭化水素ラジカル、又は6〜30個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカルであり、ヘテロ原子を有し得る。)
で表わされるグアニジン化合物と反応させる。
【0061】
好ましくは、第2工程(b)は不飽和化合物を除去せずに行う。
【0062】
アルコキシ化反応は一般的に、アルコキシ化反応において、好適な触媒の存在下で、ヒドロキシ官能化開始物質をアルキレンオキシドと反応させることによって得られる。
【0063】
そういったアルコキシ化製品を製造する方法では、例えばアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属メチレート等の塩基触媒を使用する。例えば、開始物質中の、塩基に不安定な(ベースレイベル)官能基の存在下では、アルカリ性触媒はいつも使用できるとは限らない。従って、例えばアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属メチレートを用いるエピハロヒドリンのアルコキシ化は、この場合ハロゲン原子が制御不可能な第2反応の影響を受けるため、実用的ではない。
【0064】
アルコキシ化における、HBF及び/又はBF、AlCl及びSnCl等のルイス酸との酸性触媒反が開発されてきた(DE 10 2004 007561)。酸性触媒のポリエーテル合成による不利益は、エピクロロヒドリン等の非対称オキシランの開環時における不完全な位置選択性である。これは、制御不能な方法で、部分的に第二級OH末端及び部分的に第一級OH末端を有するポリオキシアルキレン鎖の原因となる。更に、得られうるポリエーテルのモル質量は、鎖切断及び第2反応の結果として、他の触媒と比べ相対的に小さい。更に、これらの製品は高い多分散性を有する。
【0065】
二重金属シアン(DMC)触媒は、ポリエーテルを製造するための触媒として知られている。該DMC触媒のアルコキシ化は、極めて選択的かつ急速に進行し、比較的低い多分散性にしては高いモル質量を有するポリエーテルの調製を可能にする。アルコキシ化触媒としての二重金属シアン錯体の調製及び使用は公知であり、US3,427,256、US3,427,334、US3,427,335、US3,278,457、US3,278,458、及びUS3,278,459等に開示されている。亜鉛コバルトヘキサシアノ錯体等の特定のDMC触媒は、US5,470,813及びUS5,482,908に記載されている。これらの触媒の利点の1つは、その使用量の少なさである。
【0066】
本発明に係る方法の第1工程(a)では、エピクロロヒドリンに加え、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びアルキレンオキシドを用いることが好ましい。
【0067】
A3=
【0068】
【化11】
【0069】
A4=
【0070】
【化12】
【0071】
(式中、T、T、T、及びTは、それぞれ独立して、水素、又は1〜12個の炭素原子、好ましくは2〜8個の炭素原子を有する直鎖状或いは環状或いは分岐鎖状の脂肪族或いは芳香族の飽和或いは不飽和の炭化水素ラジカルであり、任意にハロゲン分子を有していてよく、但し、T、T、T及びTは、A3がエチレンオキシド又はプロピレンオキシドとなるように選択されることはなく、任意にいずれの場合でもT、T、T及びTの内の2つのラジカルが共に3〜8員環を形成し、
Yはそれぞれ独立して、1〜30個の炭素原子、好ましくは2〜15個の炭素原子を有する直鎖状或いは環状或いは分岐鎖状の脂肪族或いは芳香族の飽和或いは不飽和の炭化水素ラジカルであり、ヘテロ原子を含み得る。)。
【0072】
アルキレンオキシドは、独立して及び/又は代替的に、所望の混合物として使用され得る。
【0073】
好ましくは、第1工程(a)において、エピクロロヒドリンは、混合物中で、2〜18個の炭素原子を有する、好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、及び/又はスチレンオキシドから成る群から選択される1以上の更なるアルキレンオキシドとともに使用され、特に好ましくは混合物中でプロピレンオキシドとともに使用される。更に好ましくは、工程(a)は、60〜250℃、好ましくは90〜160℃、特に好ましくは約100〜130℃の温度で実施される。
【0074】
更に好ましくは、工程(a)は、0.02バール〜100バール、特に0.05〜20バールの圧力で実施される。
【0075】
特に好ましくは、工程(a)は、温度90〜130℃、かつ圧力0.01〜5バールで実施される。
【0076】
第1工程(a)終了後の本発明に係る方法による反応生成物は、化学的に結合された1以上の塩素原子、好ましくは2〜50個、特に好ましくは2〜40個、極めて特に好ましくは3〜25個の塩素原子を有する。
【0077】
更に該反応生成物は、重量平均モル質量が200〜50000g/mol、好ましくは400〜35000g/mol、特に好ましくは700〜25000g/molである。
【0078】
更に該反応生成物は、多分散性Mw/Mnが好ましくは1.0〜2、より好ましくは1.08〜1.8、特に好ましくは1.1〜1.6である。
【0079】
特に好適な反応生成物は、1〜20個の塩素原子を有し、重量平均モル質量が800〜7000g/molである。
【0080】
更に特に好適な反応生成物は、1〜20個の塩素原子を有し、重量平均モル質量が800〜7000g/mol、かつ多分散性が1.05〜1.6である。
【0081】
好ましくは、本発明に係る方法の第2工程(b)において、第1工程(a)の生成物をグアニジンと反応させ、R、R、R、及びRラジカルがそれぞれ独立して、1〜30個の炭素原子、より好ましくは2〜8個の炭素原子を有する脂肪族の飽和又は不飽和の炭化水素ラジカルであり、特に好ましくはR、R、R、及びRラジカルがそれぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ペンチル、又はヘキシルである。更に好ましくは、R、R、R、及びRラジカルは全て同一であり、上記の好適な脂肪族の飽和又は不飽和の炭化水素ラジカルから選択され得る。
【0082】
更に好ましくは、R、R、R、及びRラジカルは全てメチルである。
【0083】
置換は部分的に又は完全に行われ得る。完全転化の検知は、好ましくは13C−NMR法によって行われる。
【0084】
本発明に係る方法の利点の1つは、第2工程(b)での置換が、不飽和化合物を除去することなく行われる点である。EP2676986(US2013/0345318)から公知となっているように、強塩基性につき、塩化水素が脱離すれば不飽和化合物が形成されることが予期される。
【0085】
更に好ましくは、工程(b)は40〜200℃、特に好ましくは70〜160℃の温度で実施される。
【0086】
更に好ましくは、工程(b)は1〜50時間、特に好ましくは2〜30時間に渡って実施される。
【0087】
更に好ましくは、工程(b)において、コポリマー中の塩素含有量に対する反応混合物中のグアニジン基の量は、0.5〜5当量、より好ましくは1.0〜4当量、特に好ましくは1.5〜3当量である。
【0088】
更に好ましくは、工程(b)において、濾過又は抽出によって、反応過程で形成される塩を生成物から除去する。好適な抽出剤は、水、又は酸或いは塩基の水溶液である。
【0089】
更に好ましくは、工程(b)の最後に、任意に大気中の値より低い圧力を適用することによって、過剰なグアニジン化合物を留去する。更に特に好ましくは、1〜3当量のテトラメチルグアニジンを、90〜160℃の温度で、8〜30時間に渡って用いることによって、本発明に係る方法の工程(b)を実施する。塩化グアニジンを濾過し、過剰なテトラメチルグアニジンを温度100℃、圧力1.5ミリバールで留去する。
【0090】
該方法により生成されるグアニジン官能性ポリエーテルは、少なくとも1のグアニジン基を含む。それらは、重量平均分子量が少なくとも200g/mol〜50000g/mol、好ましくは400〜35000g/mol、特に好ましくは700〜25000g/molの範囲である。
【0091】
本発明に係る方法は、少なくとも1のグアニジン基を形成することにより、第2工程(b)の生成物を更に反応させ、該反応が第四級化合物の形成を誘導する第3工程(c)を任意に有する。
【0092】
本発明において、四級化は、式(I)で表わされるグアニジン基含有ポリエーテルとアルキル化剤との反応だけでなく、酸との反応も意味するとして理解されている。
【0093】
式(I)で表わされるようなグアニジン化合物のプロトン化は、pKa値と存在する全ての溶液次第であり、原理上はブレンステッド酸が該プロトン化に好適である。
【0094】
好適な酸は、例えばフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸又はアミド硫酸等の鉱酸、並びに例えばトリフルオロ酢酸、乳酸、酢酸、及びp−トルエンスルホン酸等の有機酸であり、より好ましくは有機酸、具体的には酢酸である。特に好適な酸はハロゲンフリーである。
【0095】
使用され得るアルキル化剤は、例えば塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、臭化エチル又はヨウ化エチル、及び塩化ベンジル又は臭化ベンジル等のハロゲン化ベンジルといったハロゲン化アルキル、アリール、又はアラルキルである。すなわち、例えばジメチル硫酸塩又はジエチル硫酸塩等のジ−アルキル、アリール、或いはアラルキル硫酸塩、又は例えば塩化トリメチルオキソニウム、臭化トリメチルオキソニウム、トリメチルオキソニウムテトラフルオロホウ酸塩、塩化トリエチルオキソニウム、臭化トリエチルオキソニウム、及びトリエチルオキソニウムテトラフルオロホウ酸塩等のオキソニウム塩であり、好ましくはジアルキル硫酸塩、特に好ましくはジメチル硫酸塩である。特に好適なアルキル化剤は、ハロゲンフリーである。化学量論比の四級化ポリエーテルが、使用されるアルキル化剤又は酸に対応するアニオンを含むことは当業者に周知である。
【0096】
イオン交換体を活用して該アニオンが少なくとも部分的に置換されれば利点となり得る。当業者に周知の方法で、事前にイオン交換体に通されることによりアニオンが置換される。ハロゲン含有アニオン、又はハロゲン原子を含まないアニオン用ハロゲンが特に有利である。
【0097】
四級化に関連して、ポリマーは、非変性のグアニジン基含有化合物と比較して繊維又は繊維基材への直接性が増し、また静電帯電に対する性質への影響力が増す。
【0098】
本発明の更なる主題事項は、グアニジン基を含有するアルコキシ化生成物、好ましくは本発明に係る方法により作製される式(I)の化合物である。
【0099】
本発明の更なる主題事項は、式(Ia)の構成要素を含む、本発明に係るグアニジン基含有ポリマーを含む組成物であり、好ましくは式(I)の化合物又は本発明に係る方法による生成物である。
【0100】
好ましくは、本発明に係る組成物は、乾燥剤、フロー剤、顔料及び/又は着色顔料、湿潤剤、バインダー、反応性シンナー、界面活性剤、熱活性開始剤、光開始剤、触媒、軟化剤、乳化剤、酸化防止剤、ヒドロトロープ(又はポリオール)、固形物又はフィラー、光沢剤、防虫剤、付着防止剤、核化剤、防腐剤、蛍光塗料、防火剤、帯電防止剤、膨張剤、可塑剤、香料、有効成分、保護剤、過脂肪剤、溶媒及び/又は粘土モジュレータから成るリストから選択され得る添加剤と補助剤を更に含む。好適な添加剤は顔料及び/又は着色顔料である。
【0101】
本発明に係る更なる主題事項は、式(Ia)の構成要素、好ましくは式(I)の化合物、またそれらの組成物から成る本発明に係るグアニジン基含有ポリマーの、ポリウレタンの製造における触媒としての使用、エポキシ樹脂用硬化剤としての使用、アルコキシシリル基運搬システムとしての使用、及び塩基的に触媒により可能となる生成としての使用である。
【0102】
本発明に係る更なる主題事項は、式(Ia)の構成要素、好ましくは式(I)の化合物、またそれらの組成物から成る本発明に係るグアニジン基含有ポリマーの、被覆物中、顔料中、被覆組成物中、及び顔料ペースト中の分散添加剤としての使用である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
使用する化学製品:SigmaAldrich社製N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン(99%)。Fluka社製エピクロロヒドリン(≧99%)。BASF SE社製Pluriol A 350 E。Bayer AG社製二重金属シアン触媒、及びGHC Gerling, Holz & CO Handels社製酸化エチレン。Acros Organics社製アリルグリシジルエーテル、及びMerck KGaA社製酸化ブチレン。
【0104】
GPC測定:
多分散性及び重量平均分子量Mwを測るGPC測定を、以下の測定条件下で実施した:カラムコンビネーション SDV 1000/10000Å(長さ65cm)、温度30℃、移動相としてTHF、流量1ml/分、試料濃度10g/l、RI検出器、塩素含有ポリエーテルの解析を、ポリプロピレングリコールを基準にして実施した(76〜6000g/mol)。
【0105】
塩素含有量の測定:
塩素含有量の測定を、13C−NMR法を用いて実施した。Bruker Avance 400 typeのNMR法を使用し、このためにCDCl中に試料を溶解させた。
【0106】
ヨウ素価(IN)の測定:
Deutsche Gesellschaft fur Fettwissenschaft[German Society for Fat Science]のDGF C−V 11 a (53)方法により、ヨウ素価を測定した。ここで、ヨウ化カリウムを添加することにより、試料を一臭化ヨウ素、及びヨウ素に転化される余剰分と反応させ、これを逆滴定した。
【0107】
実施例A:塩素含有ポリエーテルの調整
実施例A1:半製品PE1:
5リットル容量のオートクレーブにおいて、出発物質であるポリ(オキシエチレン)モノアリルエーテル(質量平均モル質量Mw=380g/mol)685.6gと、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛DMC触媒1.5gを導入し、撹拌しながら130℃まで加熱した。内在する全ての揮発成分を蒸留的に除去するため、該リアクターを内部圧が30ミリバールになるまで除圧した。DMC触媒を活性化させるため、酸化プロピレンの一部である60gを導入した。反応が開始され、内部圧が下がった後、まず酸化プロピレンを冷却しながら更に454g計量した。次いで、同じ条件下において、混合物中の酸化プロピレン1029gと、エピクロロヒドリン327gを最大リアクター内部圧2.9バール、温度130℃で2.5時間かけて計量した。反応後、130℃で45分間維持した。最後に、ブロックの終わりとして、酸化プロピレンを更に514g、130℃で添加した。更なる反応後、真空下において130℃で脱気工程を実施した。実質的には、無色の低粘度塩素含有アルコキシル化生成物を90℃以下まで冷却し、リアクターから排出した。GPCによると、該生成物は重量平均分子量が1556g/mol、多分散性(Mw/Mn)が1.18であり、13C−NMR法によると、該生成物は1分子当たり2molのClを含んでいた(IN=15)。
【0108】
実施例A2:半製品PE2:
5リットル容量のオートクレーブにおいて、出発物質であるポリ(オキシプロピレン)−コ−ポリ(オキシエチレン)モノアリルエーテル(POを80重量%、EOを20重量%含む)(質量平均モル質量Mw=780g/mol)
615.6gと、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛DMC触媒2.25gを初めに導入し、撹拌しながら130℃まで加熱した。内在する全ての揮発成分を蒸留的に除去するため、該リアクターを内部圧が30ミリバールになるまで除圧した。DMC触媒を活性化させるため、酸化プロピレンの一部である75gを導入した。反応が開始され、内部圧が下がった後、まず酸化プロピレンを冷却しながら更に155g計量した。次いで、同じ条件下において、混合物中の酸化プロピレン1469gと、エピクロロヒドリン439gを最大リアクター内部圧2.7バール、温度130℃で60分かけて計量した。反応後、130℃で30分間維持し、その間、リアクターの内部圧を0.5バールまで下げた。最後に、ブロックの終わりとして、酸化プロピレンを更に230g、130℃で添加した。同じ条件下での更なる反応後、脱気工程を実施した。ここで、酸化プロピレン残留物及びエピクロロヒドリン残留物等の揮発画分を、真空下において130℃で留去した。実質的には、無色の低粘度塩素含有アルコキシル化生成物を90℃以下まで冷却し、リアクターから排出した。GPCによると、該生成物は重量平均分子量が2754g/mol、多分散性(Mw/Mn)が1.28であり、13C−NMR法によると、該生成物は1分子当たり6molのClを含んでいた(lN=ヨウ素6.9g/100g)。
【0109】
実施例A3:半製品PE3:
5リットル容量のオートクレーブにおいて、出発物質であるポリ(オキシプロピレン)ジオール(OH価から算出されるモル質量Mw=767g/mol)500gと、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛DMC触媒1.3gを導入し、撹拌しながら130℃まで加熱した。内在する全ての揮発成分を蒸留的に除去するため、該リアクターを内部圧が30ミリバールになるまで除圧した。DMC触媒を活性化させるため、酸化プロピレンの一部である75gを導入した。反応が開始され、内部圧が下がった後、まず酸化プロピレンを冷却しながら更に227g計量した。次いで、同じ条件下において、混合物中の酸化プロピレン1132gと、エピクロロヒドリン360gを最大リアクター内部圧2.7バール、温度130℃で60分かけて計量した。反応後、130℃で30分間維持し、その間、リアクターの内部圧を0.5バールまで下げた。最後に、ブロックの終わりとして、酸化プロピレンを更に337g、130℃で添加した。同じ条件下での更なる反応後、脱気工程を実施した。ここで、酸化プロピレン残留物及びエピクロロヒドリン残留物等の揮発画分を、真空下において130℃で留去した。実質的には、無色の低粘度塩素含有アルコキシル化生成物を90℃以下まで冷却し、リアクターから排出した。GPCによると、該生成物は重量平均分子量が3430g/mol、多分散性(Mw/Mn)が1.3であり、13C−NMR法によると、該生成物は1分子当たり6molのClを含んでいた。
【0110】
実施例A4:半製品PE4:
5リットル容量のオートクレーブにおいて、出発物質であるオクタノール39gと、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛DMC触媒1.5gを導入し、撹拌しながら130℃まで加熱した。内在する全ての揮発成分を蒸留的に除去するため、該リアクターを内部圧が30ミリバールになるまで除圧した。DMC触媒を活性化させるため、酸化プロピレンの一部である80gを導入した。反応が開始され、内部圧が下がった後、まず混合物中のアリルグリシジルエーテル171gと酸化プロピレン174gを冷却しながら計量した。次いで、同じ条件下で、混合物中の酸化プロピレン1218gと、エピクロロヒドリン276gを最大リアクター内部圧2.7バール、温度130℃で60分かけて計量した。更に、混合物中のPO174gと、BO108gを計量した。反応後、130℃で40分間維持し、その間、リアクターの内部圧を0.5バールまで下げた。最後に、ブロックの終わりとして、酸化プロピレンを更に760g、130℃で添加した。同じ条件下での更なる反応後、脱気工程を実施した。ここで、エポキシド残留物等の揮発画分を、真空下において130℃で留去した。実質的には、無色の高粘度塩素含有アルコキシル化生成物を90℃以下まで冷却し、リアクターから排出した。GPCによると、該生成物は重量平均分子量が8764g/mol、多分散性(Mw/Mn)が1.5であり、13C−NMR法によると、該生成物は1分子当たり9.6molのClを含んでいた。
【0111】
実施例A5:半製品PE5:
5リットル容量のオートクレーブにおいて、出発物質であるPluriol A 350 E(質量平均分子量Mw=350g/molのポリ(オキシエチレン)モノメチルエーテル)396gと、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛DMC触媒1.5gを導入し、撹拌しながら130℃まで加熱した。内在する全ての揮発成分を蒸留的に除去するため、該リアクターを内部圧が30ミリバールになるまで除圧した。DMC触媒を活性化させるため、酸化エチレンの一部である40gを導入した。反応が開始され、内部圧が下がった後、初めにEOを更に209g、続いて酸化プロピレンを657g、冷却しながら計量した。次いで、同じ条件下で、混合物中の酸化プロピレン985gと、エピクロロヒドリン312gを最大リアクター内部圧2.7バール、温度130℃で60分かけて計量した。反応後、130℃で40分間維持し、その間、リアクターの内部圧を0.5バールまで下げた。最後に、ブロックの終わりとして、酸化エチレンを更に398g、130℃で添加した。同じ条件下での更なる反応後、脱気工程を実施した。ここで、エポキシド残留物等の揮発画分を、真空下において130℃で留去した。実質的には、無色で粘性のある塩素含有アルコキシル化生成物を90℃以下まで冷却し、リアクターから排出した。GPCによると、該生成物は重量平均分子量が2126g/mol、多分散性(Mw/Mn)が1.1であり、13C−NMR法によると、該生成物は1分子当たり3molのClを含んでいた。
【0112】
実施例B:塩素含有ポリエーテルとN,N,N’,N’−テトラメチルグアニジンの反応
実施例B1:
CPGパドルスターラー、還流冷却器、不活性ガス供給ライン、及び温度センターを備える多頚フラスコ内に、塩素含有ポリエーテルPE1(100g)とN,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン(TMG)63gを導入し、攪拌しながら150℃まで加熱した。反応時間が13時間を経過した後、濾過によって、粗生成物を沈殿したテトラメチルグアニジン塩酸塩から分離させ、余剰分のTMGをロータリーエバポレーターで除去した(T=110℃、p<1ミリバール)。これにより、透明な黄褐色の液体生成物を作製した。塩素が完全に置換されたこと、及び脱離による二重結合が存在しないことを、13C−NMR法を用いて示した。
【0113】
実施例B2:
CPGパドルスターラー、還流冷却器、不活性ガス供給ライン、及び温度センターを備える多頚フラスコ内に、塩素含有ポリエーテルPE2(230.9g)とN,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン(TMG)169.1gを導入し、攪拌しながら150℃まで加熱した。反応時間が26時間を経過した後、濾過によって、粗生成物を沈殿したテトラメチルグアニジン塩酸塩から分離させ、余剰分のTMGをロータリーエバポレーターで除去した(T=110℃、p<1ミリバール)。これにより、透明な茶色の液体生成物を作製した。塩素が完全に置換されたこと、及び脱離による二重結合が存在しないことを、13C−NMR法を用いて示した。
【0114】
実施例B3:
CPGパドルスターラー、還流冷却器、不活性ガス供給ライン、及び温度センターを備える多頚フラスコ内に、塩素含有ポリエーテルPE3(80g)とN,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン(TMG)60.3gを導入し、攪拌しながら150℃まで加熱した。反応時間が28時間を経過した後、濾過によって、粗生成物を沈殿したテトラメチルグアニジン塩酸塩から分離させ、余剰分のTMGをロータリーエバポレーターで除去した(T=110℃、p<1ミリバール)。これにより、透明な茶色の液体生成物を作製した。塩素が完全に置換されたこと、及び脱離による二重結合が存在しないことを、13C−NMR法を用いて示した。
【0115】
実施例B4:
CPGパドルスターラー、還流冷却器、不活性ガス供給ライン、及び温度センターを備える多頚フラスコ内に、塩素含有ポリエーテルPE4(100g)とN,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン(TMG)44gを導入し、攪拌しながら150℃まで加熱した。反応時間が30時間を経過した後、濾過によって、粗生成物を沈殿したテトラメチルグアニジン塩酸塩から分離させ、余剰分のTMGをロータリーエバポレーターで除去した(T=110℃、p<1ミリバール)。これにより、透明な茶色の液体生成物を作製した。13C−NMR法によると、該生成物は、1分子当たり塩素1.8mol、グアニジンユニット7.8molを含み、二重結合は存在しなかった。
【0116】
実施例B5:
CPGパドルスターラー、還流冷却器、不活性ガス供給ライン、及び温度センターを備える多頚フラスコ内に、塩素含有ポリエーテルPE5(100g)とN,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン(TMG)39gを導入し、攪拌しながら150℃まで加熱した。反応時間が21時間を経過した後、濾過によって、粗生成物を沈殿したテトラメチルグアニジン塩酸塩から分離させ、余剰分のTMGをロータリーエバポレーターで除去した(T=110℃、p<1ミリバール)。これにより、透明な黄褐色の液体生成物を作製した。塩素が完全に置換されたこと、及び脱離による二重結合が存在しないことを、13C−NMR法を用いて示した。
【0117】
分散特性の試験
実施例B1とB2の化合物について、分散剤として機能するための能力を試験した。
【0118】
顔料濃度を評価するには、白色顔料を作製し、練り合わせ試験を行うのが通例である。以下の製剤により、当試験に用いる白色塗料を作製した。
【0119】
【表1】
【0120】
Lau社製分散機にて1時間製粉を行った。1:1の重量比率で、ガラスビーズを混合物に添加した。
【0121】
【表2】
【0122】
希釈のため、溶解機を用いて適度なせん断速度で該混合物を15分間攪拌した。耐水性ペーパーシーブを用いてガラスビーズをふるいにかけた。
【0123】
白色顔料の作製
以下の製剤で、各色合いのペーストを含む白色顔料を作製した:
【0124】
【表3】
【0125】
スピードミキサーで、白色ペーストとカラーペーストを3000rpmで1分間混合した。次いで、該顔料を100μmの塗工用バーでコントラストカードに適用し、8分間乾燥した後、人差し指を使い、カードの下端で練り合わせた。乾燥後(約2〜3時間)、練り合わせた場所とそうでない場所の色の違い(ΔE)を、X−Rite SP62によって測定した。
【0126】
色彩測定及び色彩強度
分光光度計(SP 68、X−Rite)を使用して、作製されたカードの測色値を測定した。結果をL−a−b値10として表#20に示す。標準試料と比較して色彩強度も算出する。該カード相における顔料の分散が良好であるほど、標準試料と比較して色彩強度が高い。定義上、標準試料は100%で固定されている。
【0127】
試験は、先行技術と比較して、色深度に関する本発明に係る物質の利点を明らかにしている。