特許第6496057号(P6496057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6496057-頭皮、頭髪用ヘアケアセット及び育毛剤 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6496057
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】頭皮、頭髪用ヘアケアセット及び育毛剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20190325BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20190325BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALI20190325BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20190325BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20190325BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20190325BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20190325BHJP
   A61H 7/00 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   A61K8/9789
   A61K8/46
   A61K8/9728
   A61K8/19
   A61K8/73
   A61Q5/02
   A61Q7/00
   A61H7/00 300K
   A61H7/00 300A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-35668(P2018-35668)
(22)【出願日】2018年2月28日
【審査請求日】2018年3月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512197364
【氏名又は名称】株式会社 ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野 田 泰 平
【審査官】 向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−213733(JP,A)
【文献】 特開2001−048738(JP,A)
【文献】 特開2001−072526(JP,A)
【文献】 特開2008−127341(JP,A)
【文献】 特開2015−030670(JP,A)
【文献】 特表2007−502884(JP,A)
【文献】 特開2003−253295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00〜 8/99
A61Q 1/00〜90/00
A61K 36/00〜36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
MINTEL GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭皮、頭髪用石鹸と、育毛剤と、頭皮用マッサージ具からなる頭皮、頭髪用ヘアケアセットであって、
前記頭皮、頭髪用石鹸は、ココイルイセチオン酸ナトリウムとスルホコハク酸ラウリルジナトリウムを含み、
前記育毛剤は、ノニ果汁濾過物と、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを含む海水乾燥物と、シロキクラゲ多糖体と、を含み、
前記頭皮用マッサージ具は、直列に並んだ複数個の突出部有するものであることを特徴とする頭皮、頭髪用ヘアケアセット。
【請求項2】
頭皮、頭髪用石鹸を用いて頭皮、頭髪を洗浄した後に、頭皮、頭髪に散布する育毛剤であって、
前記育毛剤は、ノニ果汁濾過物と、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを含む海水乾燥物と、シロキクラゲ多糖体と、を含むことを特徴とする育毛剤。
【請求項3】
前記海水乾燥物は、固形分中にカルシウムイオン0.1〜3.0重量%、マグネシウムイオン0.5〜5.0重量%を含むことを特徴とする請求項に記載の育毛剤。
【請求項4】
前記海水乾燥物の含有量は、前記ノニ果汁濾過物の乾燥重量の10〜60重量%であることを特徴とする請求項又はに記載の育毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮、頭髪用ヘアケアセット及び育毛剤に係り、より詳しくは、頭皮角質層の健全な形成を促し、頭皮環境を整えることにより脱毛を防止する皮、頭髪用ヘアケアセット及び育毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、頭皮環境を悪化させる要因が増加し、それとともに頭髪が受けるダメージも著しく増加してきている。
頭皮環境を悪化させる要因としては、紫外線照射量の増大、効きすぎた冷房による頭皮の乾燥や血行不良、過剰な暖房による頭皮の皮脂の過剰分泌やそれによる毛穴詰まり、精神的なストレスによる頭皮の血管の収縮、パソコン、スマホの長時間使用による体のこりによる血行不良、頭皮の引掻きなどの過度の物理的刺激による角質剥離等が挙げられる。
これらの頭皮環境に関する悪化要因は、年々その増加のスピードを速め、若年層においても頭皮環境の悪化による薄毛等の頭髪ダメージの増加が問題となっている。
【0003】
このような頭皮環境の悪化による薄毛等の頭髪ダメージの増加に対して有力な方策は、頭皮の最外殻に位置する角質層を健康な状態に維持し、そのバリア機能を高めてやることである。
角質層は、層状に形成された角質細胞と角質細胞間を埋める細胞間脂質からなり、バリア機能に大きな影響を与えるのは、細胞間脂質の量的、質的構成と角質細胞の細胞膜の形成状態である。
【0004】
従来、頭皮のバリア機能の向上は、脂質等の添加による頭皮表面の皮脂層の補強、コレステロール、セラミド等の添加による細胞間脂質の量的補強、保湿剤の添加により細胞間脂質の保湿性を高める細胞間脂質の質的補強により行われてきた。
しかしながら、従来の外的補強では近年の頭皮環境の悪化による角質細胞構造の脆弱化に対しては十分な効果を発揮することができず、その結果、弱った土壌で植物が枯れるように、頭髪の脱毛や痩細化が進行している。このような状況から健康な頭髪とするために、健康な角質層を形成するための方策が望まれている。
【0005】
角質層は、表皮のいちばん内側の基底層において基底細胞が分裂して形成された角化細胞が脱核して角質細胞となり、細胞分裂により次々と形成される角化細胞に押し上げられて、10層ほどの積層体となったものである。押し上げられた角質細胞の最表面層は、分解酵素により角質細胞間脂質が分解されて剥がれ落ちる。
角質層は、上層に移行する過程で成熟し強靭化するが、前述のような種々の頭皮環境を悪化させる要因により未成熟の状態になるとバリア機能が著しく低下する。また、頭皮環境悪化要因により角化細胞の形成が鈍化すれば、同様にバリア機能が著しく低下する。
【0006】
このような皮膚のバリア機能の低下に対して、ヤエヤマアオキ(別名ノニ、学名Morinda Pcitrifolia)熟成果実発酵液を含み、角質層の硬質化を促進すると考えられるコラゲナーゼの活性を阻害する作用を有し、角質層の過角化を防止する皮膚機能賦活化粧料組成物が開示されている(特許文献1参照)。
また、ノニの花、蕾、果実、果汁、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮などを抽出原料とした抽出液が、角質細胞の細胞膜を裏打ちする周辺帯(CE)の構成成分や酵素のI型コラーゲン産生促進作用、フィラグリン産生促進作用、インボルクリン産生促進作用、及びトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を有し、皮膚外用剤、美容用飲食品中の成分として好適に利用可能であることが開示されている(特許文献2参照)。
【0007】
このようなノニ抽出液の効能が知られ、ノニ抽出液を含む頭皮頭髪用化粧料も提案されているが(特許文献3参照)、前述の頭皮環境の悪化による角質細胞構造の脆弱化に対して十分な効果が発揮されておらず、未だ問題解決に至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−145945号公報
【特許文献2】特開2010−090093号公報
【特許文献3】特開2001−213733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、頭皮の角質層の形成及び成熟化を健全な状態に保つことにより健康な頭髪とすることができる頭皮、頭髪のヘアケア方法を提供することにある。
また、本発明の第二の目的は、頭皮の角質層の形成及び成熟化を健全な状態に保つことにより健康な頭髪とすることができるヘアケア方法を行うための頭皮、頭皮、頭髪用ヘアケアセットを提供することにある。
また、本発明の第三の目的は、頭皮の角質層の形成及び成熟化を健全な状態に保ち、頭髪の健康な育成を助けるための育毛剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
頭皮の角化細胞の形成、角質細胞の成熟が行われるのは角質層深部であるが、従来技術が角質細胞構造の脆弱化に対して十分な効果を発揮できないのは、角質細胞構造の改善に必要な有効成分が、それを一番必要としている角質層深部に到達していないためと考えられる。
頭皮角質層表面は、皮脂と汗などの分泌液からなる皮脂膜で覆われているため、頭皮に供給した水性の有効成分が皮脂膜によって角質層深部への浸透を抑制されていると考えられる。
これに対し、ノニ果汁やノニ果実抽出液を浸透させるため、石鹸等により皮脂膜を完全に除去することが考えられる。しかしながら、頭皮の皮脂膜を完全に除去してしまうと、頭皮がノーガード状態で外部環境のストレスを受けてしまうばかりでなく、皮脂不足を補うために皮脂腺が活発に働いて皮脂が過剰に分泌され、毛穴のつまり等かえって頭皮からの水性成分の浸透性を悪化させてしまう。
【0011】
皮脂膜は、皮脂と汗などの分泌液からなるいわば乳液状態にある液状膜と考えられる。発明者らは、頭皮の皮脂膜を適度に残したうえ、皮脂膜の下に保水性の高い水性膜を形成し、そこから、ノニ果汁の水性成分を浸透させれば、角質層深部にまで水性成分を浸透させることができ、角質層の形成及び成熟化を健全な状態にすることができると考え、鋭意検討を行った。
その結果、頭髪の洗髪時に頭皮の皮脂膜を適度に残すためにココイルイセチオン酸ナトリウムとスルホコハク酸ラウリルジナトリウムを含む頭髪用石鹸を用い、更に洗髪後の頭皮にカルシウムイオン、マグネシウムイオンを含む海水乾燥物をノニ果汁成分とともに、シロキクラゲ多糖体を増粘成分として有する育毛剤を散布し、皮脂膜の下にノニ果汁成分、海水乾燥物を含む保水性の高いシロキクラゲ多糖体の水性膜を形成するようにマッサージすることにより、頭皮の角質層の形成及び成熟化を健全な状態に保ち、脱毛防止に優れた効果を発揮することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による頭皮、頭髪のヘアケア方法は、頭皮、頭髪用石鹸を用いて頭皮、頭髪を洗浄する段階と、洗浄後の頭皮、頭髪に育毛剤を散布する段階と、育毛剤散布後の頭皮をマッサージする段階と、を含む頭皮、頭髪のヘアケア方法において、前記頭皮、頭髪を洗浄する段階において用いる頭皮、頭髪用石鹸は、ココイルイセチオン酸ナトリウムとスルホコハク酸ラウリルジナトリウムを含み、前記育毛剤を散布する段階において用いる育毛剤は、ノニ果汁濾過物と、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを含む海水乾燥物と、シロキクラゲ多糖体と、を含み、前記頭皮をマッサージする段階は、直列に並んだ複数個の突出部を有するマッサージ具を用いて行うものであることを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による頭皮、頭髪用ヘアケアセットは、頭皮、頭髪用石鹸と、育毛剤と、頭皮用マッサージ具からなる頭皮、頭髪用ヘアケアセットであって、前記頭皮、頭髪用石鹸は、ココイルイセチオン酸ナトリウムとスルホコハク酸ラウリルジナトリウムを含み、前記育毛剤は、ノニ果汁濾過物と、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを含む海水乾燥物と、シロキクラゲ多糖体と、を含み、前記頭皮用マッサージ具は、直列に並んだ複数個の突出部を有するものであることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による育毛剤は、頭皮、頭髪用石鹸を用いて頭皮、頭髪を洗浄した後に、頭皮、頭髪に散布する育毛剤であって、前記育毛剤は、ノニ果汁濾過物と、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを含む海水乾燥物と、シロキクラゲ多糖体と、を含むことを特徴とする。
【0015】
前記海水乾燥物は、前記海水乾燥物の固形分中にカルシウムイオン0.1〜3.0重量%、マグネシウムイオン0.5〜5.0重量%を含むことが好ましく、前記海水乾燥物の含有量は、前記ノニ果汁濾過物の乾燥重量の10〜60重量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の頭皮、頭髪のヘアケア方法によれば、ココイルイセチオン酸ナトリウムとスルホコハク酸ラウリルジナトリウムを含む頭皮、頭髪用石鹸で洗浄することにより、適度に皮脂成分を残した洗浄が可能となり皮脂成分の過剰分泌を防止し、頭皮、頭髪の洗浄後に散布する育毛剤は、シロキクラゲ多糖体が頭皮表面に湿潤膜を形成して、ノニ果汁濾過物及び海水乾燥物の角質層深部への浸透を容易にし、育毛剤散布後のマッサージにより、頭皮の皮脂膜がシロキクラゲ多糖体の湿潤被膜に置き換わり、ノニ果汁濾過物及び海水乾燥物の角質層深部への浸透がさらに容易になる。それにより、頭皮角質層の角質不全が防止され、頭髪の脱毛、痩毛を防止することができる。
【0017】
また、本発明の頭皮、頭髪用ヘアケアセットによれば、ココイルイセチオン酸ナトリウムとスルホコハク酸ラウリルジナトリウムを含む頭皮、頭髪用石鹸で洗浄することにより、頭皮表面に適度に皮脂成分を残し、育毛剤散布後のマッサージ具を用いたマッサージにより、マッサージ具の直列に並んだ複数個の突出部により毛穴周りの皮脂膜がシロキクラゲ多糖体の湿潤被膜に置き換わり、ノニ果汁濾過物及び海水乾燥物の角質層深部への浸透がさらに容易になり、頭皮環境が整えられ頭髪の脱毛、痩毛を一層防止することができる。
本発明の育毛剤によれば、頭皮表面に形成されるシロキクラゲ多糖体の湿潤被膜を介して角質層深部に浸透したノニ果汁濾過物及び海水乾燥物により、頭皮角質層の角質不全が防止され、頭髪の脱毛、痩毛が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るマッサージ具の概略正面及び概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施形態の頭皮、頭髪のヘアケア方法は、ココイルイセチオン酸ナトリウムとスルホコハク酸ラウリルジナトリウムを含む頭皮、頭髪用石鹸を用いて頭皮、頭髪を洗浄する段階と、洗浄後の頭皮、頭髪にノニ果汁濾過物、海水乾燥物、及びシロキクラゲ多糖体を含む育毛剤を散布する段階と、育毛剤散布後の頭皮を、複数個の突出部を有するマッサージ具を用いてマッサージする段階と、を含むことを特徴とする。
【0020】
本実施形態の頭皮、頭髪を洗浄する段階に用いる頭皮、頭髪用石鹸は、ココイルイセチオン酸ナトリウムとスルホコハク酸ラウリルジナトリウムを主たる石鹸成分として含む。
頭皮、頭髪用石鹸は、ココイルイセチオン酸ナトリウムとスルホコハク酸ラウリルジナトリウムを主たる石鹸成分とすることにより、過度な皮脂の脱落を発生させずに頭皮に適度な皮脂膜を残存させ、皮脂成分を過剰に洗浄することによるその後の皮脂の過剰分泌を防止し、外界からの刺激を防止することができる。
また、頭皮、頭髪に残した適度な量の皮脂成分は、洗浄後に用いる育毛剤の頭皮での急速な乾燥を防止する役目も果たす。
【0021】
本実施形態の頭皮、頭髪を洗浄する段階の後には、リンスを用いる頭髪の処理段階を行なわないことが好ましい。
リンスに含まれる頭髪保護のためのワックス類は、洗浄後の頭皮を汚染し、育毛剤の頭皮への浸透を阻害する。頭髪保護のためには、頭皮、頭髪を洗浄する段階の前にブラッシングにより皮脂を頭髪になじませることが好ましい。ココイルイセチオン酸ナトリウムとスルホコハク酸ラウリルジナトリウムを石鹸成分として含む頭皮、頭髪用石鹸を用いれば、洗浄前に頭髪になじませた皮脂成分は洗浄により脱落することなく、頭髪の保護成分として機能させることができる。
【0022】
頭皮、頭髪を洗浄する段階の後には、頭皮、頭髪に育毛剤を散布する段階を行なう。
本実施形態の育毛剤を散布する段階で用いる育毛剤は、ノニ果汁濾過物と、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを含む海水乾燥物と、シロキクラゲ多糖体と、を含む。
本実施形態の育毛剤に用いられるノニ果汁濾過物は、ノニ(和名:ヤエヤマアオキ、学名:Morinda Pcitrifolia)の果実の圧搾液に水や1、3−ブタンジオールなどの溶剤を加えて濾過することにより得られる。
ノニ果汁濾過物は、角質細胞の周辺帯(CE)の構成成分のフィラグリン産生促進作用、インボルクリン産生促進作用、及びトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を有することが知られており、ノニ果汁濾過物の成分を角質層深層まで浸透させることができれば、角質層の形成及び成熟化を促進させることができる。
【0023】
ノニ果汁の圧搾方法は特に限定されるものではないが、通常、洗浄したノニ果実や熟成発酵させたノニ果実を油圧プレスなどにより圧搾する機械的方法により圧搾を行ない、水や1、3−ブタンジオールなどの溶剤を加えて精密濾過等で濾過することにより得ることができ、このようなノニ果汁濾過物は、市販のものを用いることができる。
【0024】
本実施形態の育毛剤に用いられる海水乾燥物は、海からくみ上げた海水のみで、蒸発法などによって海水をそのまま乾燥させたものであり、NaCl、MgCl、MgSO、CaSO、CaSO、KClのほか各種ミネラルを含む。
海水乾燥物は、上記のような多くのミネラル分を含み、保水性を有することが知られている。また、カルシウムイオンやマグネシウムイオンは、体内で酵素の働きを活性化させることも知られている。
発明者らは、上記の海水乾燥物の効果のほかに、ノニ果汁濾過物と海水乾燥物を組み合わせて用いることにより、ノニ果汁濾過物の有する角質層形成及び成熟化の促進効果を著しく高めることを見出した。
【0025】
本実施形態の育毛剤に用いる海水乾燥物は、ノニ果汁濾過物の総重量に対し10〜60重量%の量を含むことが好ましい。
ノニ果汁濾過物の総重量に対し海水乾燥物の量が10%未満であると、海水乾燥物添加による角質層を健全化し脱毛を防止する効果の促進効果が見られず、60重量%の量を超えるとかえって角質層の健全化を阻害するためか、脱毛防止効果が低下する。
【0026】
また、本実施形態の海水乾燥物は、カルシウムイオン(Ca2+)とマグネシウムイオン(Mg2+)を含む。海水乾燥物の固形分中のカルシウムイオン量は、0.1〜3.0重量%であることが好ましく、マグネシウムイオン量は、海水乾燥物固形分中0.5〜5.0重量%であることが好ましい。
カルシウムイオン量が、0.1重量%未満であると、海水乾燥物添加による角質層の健全化の促進効果が見られず、3.0重量%の量を超えると育毛剤成分の浸透を阻害するためか、かえって脱毛防止効果が低下する傾向にある。
マグネシウムイオン量についても同様に、0.5重量%未満であると、海水乾燥物添加による角質層の健全化の促進効果が見られず、5.0重量%の量を超えるとかえって育毛剤成分の浸透を阻害するためか、かえって脱毛防止効果が低下する傾向にある。
【0027】
本実施形態の育毛剤に用いられるシロキクラゲ多糖体は、シロキクラゲ(白木耳、学名Tremella fuciformis)の子実体から抽出される天然植物性多糖体(天然植物高分子)であり、マンノース、キシロース、グルクロン酸からなるムコ多糖体に属する成分であり、その平均分子量はおお よそ100万以上である。
シロキクラゲ多糖体は、水溶性の高分子量の多糖であり、優れた保水性、増粘性を有することで知られる。
発明者らは、ノニ果汁濾過物と海水乾燥物を角質層の深層に浸透させる方法について鋭意検討の結果、育毛剤にノニ果汁濾過物と海水乾燥物とともにシロキクラゲ多糖体を含有させることにより、ノニ果汁濾過物と海水乾燥物の角質層形成及び成熟化の促進効果を十分に発揮させることができることを見出した。
【0028】
これは、シロキクラゲ多糖体と共存させることにより、ノニ果汁濾過物及び海水乾燥物が角質層深層へ浸透するようになったためと推測される。
頭皮は皮脂膜で覆われているため、従来の育毛剤の水性成分は、角質層に十分に浸透する前に頭皮表面で乾燥、固着してしまい、十分な量が角質層に浸透せず、その結果、角質層深層へ浸透する水性成分の量が極めて少量となっていたものと推測される。
本実施形態の育毛剤においては、分子量が大きく角質層からは浸透しないシロキクラゲ多糖体を頭皮の皮脂膜の下に水性膜として形成させるので、そこからノニ果汁濾過物と海水乾燥物の水性成分を、頭皮表面に乾燥固着させることなく浸透させることができ、有効成分を角質層深層へ浸透させるものと考えられる。
【0029】
本実施形態の育毛剤に用いられるシロキクラゲ多糖体において、シロキクラゲの子実体からの抽出方法は、特に制限されるものではなく、シロキクラゲの子実体を抽出溶媒に浸漬した後濾過する等の方法で得ることができ、このようなシロキクラゲ多糖体は、市販のものを用いることができる。
【0030】
本実施形態の育毛剤は、ノニ果汁濾過物、海水乾燥物、シロキクラゲ多糖体に加え、ノニ果汁濾過物と海水乾燥物の浸透を援助するために、角質層からの浸透の容易な低分子量の保湿成分を含むことが好ましい。低分子量の保湿成分としては、1,2−ペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、濃グリセリンなどが挙げられる。
【0031】
本実施形態の育毛剤は、前述の成分に加え血行促進剤、抗炎症剤、老化防止剤、紫外線防御剤、抗酸化剤、保湿剤、ハーブ、香料を含むことができる。
これらの成分としては、植物由来の成分が好ましく、例えば、アシタバ由来成分、アボガド由来成分、アマチャ由来成分、アルテア由来成分、アルニカ由来成分、アロエ由来成分、アンズ由来成分、イチョウ由来成分、ウイキョウ由来成分、ウコン由来成分、ウーロン茶由来成分、エイジツ由来成分、オウゴン由来成分、オウバク由来成分、オウレン由来成分、オオムギ由来成分、オタネニンジン由来成分、オトギリソウ由来成分、オドリコソウ由来成分、オランダカラシ由来成分、カミツレ由来成分、カロット由来成分、カワラヨモギ由来成分、キョウニン由来成分、キュウリ由来成分、クチナシ由来成分、クララ由来成分、グリチルリチン酸ジカリウム(甘草由来成分)、クレマティス由来成分、クロレラ由来成分、クワ由来成分、ゲンチアナ由来成分、紅茶由来成分、ゴボウ由来成分、コメ由来成分、コンフリー由来成分、コケモモ由来成分、サイシン由来成分、サイコ由来成分、サルビア由来成分、サボンソウ由来成分、サンザシ由来成分、サンショウ由来成分、シイタケ由来成分、ジオウ由来成分、シコン由来成分、シソ由来成分、シナノキ由来成分、シャクヤク由来成分、ショウガ由来成分、ショウブ由来成分、シラカバ由来成分、スギナ由来成分、セイヨウキズタ由来成分、セイヨウサンザシ由来成分、セイヨウシナノキ由来成分、セイヨウナツユキソウ由来成分、セイヨウニワトコ由来成分、セイヨウノコギリソウ由来成分、セイヨウハッカ由来成分、セージ由来成分、ゼニアオイ由来成分、センキュウ由来成分、センブリ由来成分、ダイズ由来成分、タチジャコウソウ由来成分、ダマスクバラ由来成分、チャ由来成分、チョウジ由来成分、チガヤ由来成分、チンピ由来成分、トウキ由来成分、トウキンセンカ由来成分、トウニン由来成分、ドクダミ由来成分、トマト由来成分、ニンニク由来成分、ノバラ由来成分、バクモンドウ由来成分、パセリ由来成分、ハマメリス由来成分、ヒキオコシ由来成分、ビワ由来成分、フキタンポポ由来成分、ブクリョウ由来成分、ブッチャーブルーム由来成分、フユボダイジュ由来成分、ヘチマ由来成分、ベニバナ由来成分、ボタン由来成分、ホップ由来成分、マロニエ由来成分、ムクロジ由来成分、メリッサ由来成分、モモ由来成分、ヤエヤマアオキ由来成分、ヤグルマギク由来成分、ユーカリ由来成分、ユキノシタ由来成分、ヨクイニン由来成分、ヨモギ由来成分、ラベンダー由来成分、レタス由来成分、レンゲソウ由来成分、ローズマリー由来成分、ローマカミツレ由来成分、ワサビ由来成分、ワレモコウ由来成分等を挙げることができる。
【0032】
本実施形態のヘアケア方法は、育毛剤散布の段階の後に、適当なマッサージ具を用いた頭皮、頭髪のマッサージ段階を有する。
適当なマッサージ具を用いた頭皮、頭髪のマッサージ段階は、頭皮に散布した育毛剤の頭皮の皮脂膜と置き換え、頭皮の皮脂膜の下に育毛剤の水性膜を形成するとともに、皮脂成分及び育毛剤成分を頭髪になじませる段階である。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係るマッサージ具1の説明のための概略正面図及び概略側面図であり、(A)が概略正面図であり(B)が概略側面図である。
頭皮、頭髪のマッサージ段階において用いるマッサージ具1は、持ち手となる把手部3の下部に直列に並んだ複数個の突出部2を有する。
マッサージ具1の用い方は、育毛剤の散布後、突出部2で頭皮を軽く擦るようにマッサージする。
直列に並んだ複数個の突出部2は、頭皮において皮脂膜の下に育毛剤の水性膜を形成するとともに、皮脂成分及び育毛剤成分を頭髪になじませる働きをする。
直列に並んだ複数個の突出部2は、先端部の幅が通常の櫛の歯に比べ幅広に形成されることが、頭皮において皮脂膜の下に育毛剤の水性膜を形成するために好ましく、先端部の幅が2mm〜10mmの幅であることが好ましい。
マッサージ具1を作製する材料としては特に限定されるものではなく、ポリオレフィン系エラストマーのほかに、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアセタール等の合成樹脂、ウレタンゴム、シリコーン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、各種エラストマー等の弾性材料を用いることができる。
【0034】
皮脂膜は、皮脂と汗などの分泌液からなるいわば乳液状態にある液状膜と考えられる。育毛剤を散布したときに一般的に行われる指頭による頭皮のマッサージは、頭皮上の皮脂膜を除去して頭皮上に育毛剤成分を擦り付け、育毛剤成分の浸透を早めようとするものである。このような指頭マッサージは頭皮の柔軟性を高めるのには効果的なのだが、頭皮上に擦り付けられた育毛剤成分は頭皮深部に浸透する前に頭皮上で乾燥してしまい、育毛剤成分が十分な効果を発揮できない原因となっている。
本実施形態のマッサージ具の幅広の突出部2は、頭皮上を掻いて皮脂成分と育毛剤成分をかき混ぜることにより、比重の小さな皮脂成分が比重の大きな育毛剤成分の上になり、頭皮上に育毛剤の水性膜、皮脂膜の順に膜を形成しやすくしていると考えられる。
すなわち、本実施形態のマッサージ具1によるマッサージは、頭皮上に皮脂膜に保護された水性膜を形成させることにより、育毛剤成分の頭皮表面での乾燥を抑え、育毛剤成分の頭皮深部への浸透を促進させる効果を発揮する。
【0035】
以下、本発明のヘアケア方法及びヘアケアセット並びに育毛剤を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
〔頭皮、頭髪用石鹸Aの調製〕
ココイルイセチオン酸ナトリウム28重量%、スルホコハク酸ラウリルジナトリウム22重量%、及び下記成分を適量してロール混練した後、プロッダーで棒状に押し出して、型打機で成型して頭皮、頭髪用固形石鹸Aを得た。
その他の組成
セテアリルアルコール
コーンスターチ
グリセリン
ステアリン酸
水添ヒマシ油

トリデセス硫酸ナトリウム
石ケン素地
香料・他
【0037】
〔育毛剤Bの調製〕
ノニ果汁濾過物は、ノニ果汁20%(固形分2重量%)品を0.10重量%用い、海水乾燥物は、フランス産パウダーソルト(カルシウムイオン:0.25%、マグネシウム:3.5%)を0.01重量%用い、シロキクラゲ多糖体は、0.10重量%用いたほか、市販の下記成分を適量混合して育毛剤Bを調製した。
ンジンエキス
センブリエキス
グリチルリチン酸ジカリウム
1,2−ペンタンジオール
1,3−ブチレングリコール
濃グリセリン
アロエ液汁末
タイムエキス
セージエキス
ラベンダーエキス
ローズマリーエキス
ローズ水
エタノール
精製水
【0038】
〔マッサージ具1の作製〕
ポリプロピレンにポリオレフィン系のエラストマーを混合した材料を用い、図1に示すような6本の幅広な突出部2を有するマッサージ具1を作製した。
【0039】
〔脱毛、痩毛についての使用試験〕
本実施例における脱毛、痩毛についての効果の確認は、以下のように行った。
10名の男性パネラーが、本実施例の頭皮、頭髪用石鹸Aを用いた頭髪洗浄段階、育毛剤Bを用いた育毛剤散布段階、マッサージ具1を用いたマッサージ段階を有するヘアケアを3か月間行い、1か月ごとに脱毛、痩毛について評価した。
【0040】
脱毛についての評価は、以下の評価基準により判定した。
評価記号 評価基準
◎…これまでより著しく脱毛が減った。
〇…これまでより脱毛が減った。
△…これまでと脱毛の程度は変わらない。
×…これまでより脱毛が増えた。
【0041】
痩毛についての評価は、以下の評価基準により判定した。
評価記号 評価基準
◎…これまでより著しく痩毛が減った。
〇…これまでより痩毛が減った。
△…これまでと痩毛の程度は変わらない。
×…これまでより痩毛が増えた。
【0042】
比較として、別途の10名の男性パネラーを選定し、頭髪用石鹸Aを用い、育毛剤Bよりノニ果汁濾過物海水乾燥物及びシロキクラゲ多糖体を除いた育毛剤を用い、マッサージ具1を用いないヘアケアを3か月間実施して、脱毛、痩毛についての使用試験を実施した。
実施例、比較例の結果を表1に示す。

【0043】
【表1】
【0044】
表1に示した通り、比較例では発毛状況、痩毛状況のいずれにおいても改善状況が僅かであるのに対し、実施例では、発毛状況、痩毛状況のいずれにおいても大きな改善効果が見られた。
【0045】
本発明の頭皮、頭髪のヘアケア方法によれば、ココイルイセチオン酸ナトリウムとスルホコハク酸ラウリルジナトリウムを含む頭皮、頭髪用石鹸で洗浄することにより、適度に皮脂成分を残した洗浄が可能となり皮脂成分の過剰分泌を防止し、頭皮、頭髪の洗浄後に散布する育毛剤は、シロキクラゲ多糖体が頭皮表面に湿潤膜を形成するので、ノニ果汁濾過物及び海水乾燥物の角質層深部への浸透を容易にする。
また、育毛剤散布後のマッサージ具を用いたマッサージにより、頭皮の皮脂膜がシロキクラゲ多糖体の湿潤被膜に置き換わり、さらに、毛穴周りについても毛穴に入り込んだ皮脂塊がシロキクラゲ多糖体の湿潤被膜に置き換わり、ノニ果汁濾過物及び海水乾燥物の角質層深部への浸透がさらに容易になる。これにより、頭皮角質層の角質不全が防止され、頭髪の脱毛、痩毛を防止することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 マッサージ具
2 突出部
3 把手部
【要約】      (修正有)
【課題】頭皮の角質層の形成及び成熟化を健全な状態に保つことにより健康な頭髪とすることができる頭皮、頭髪のヘアケア方法の提供。
【解決手段】頭皮、頭髪用石鹸を用いて頭皮、頭髪を洗浄する段階と、洗浄後の頭皮、頭髪に育毛剤を散布する段階と、育毛剤散布後の頭皮をマッサージする段階と、を含む頭皮、頭髪のヘアケア方法において、前記頭皮、頭髪を洗浄する段階において用いる頭皮、頭髪用石鹸は、ココイルイセチオン酸ナトリウムとスルホコハク酸ラウリルジナトリウムを含み、前記育毛剤を散布する段階において用いる育毛剤は、ノニ果汁濾過物と、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを含む海水乾燥物と、シロキクラゲ多糖体と、を含み、前記頭皮をマッサージする段階は、直列に並んだ複数個の突出部を有するマッサージ具を用いて行うものである。
【選択図】図1
図1