【実施例】
【0027】
以下,実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが,本発明がそれらの実施例に限定されることは意図しない。
【0028】
〔実施例1〜2〕
次の表に示す組成の錠剤となる比率で各成分を用い,後述の手順に従って,実施例1及び2の口腔内崩壊錠を製造した。
【0029】
【表1】
【0030】
<製造手順>
1.実施例1
(1)薬効成分含有顆粒(顆粒A)の製造
セルトラリン塩酸塩と,D−マンニトール及びヒドロキシプロピルセルロースからなる造粒用添加剤とを混合しつつ,これに精製水を加えて造粒し,乾燥させ,整粒して素顆粒を得た。素顆粒中のセルトラリンの割合は80重量%である。この素顆粒を流動層造粒装置に投入し,これに,ヒプロメロースの水溶液にタルクを分散させて得た分散液を噴霧することにより素顆粒をコーティングし,乾燥させ,整粒して整粒末を得た。整粒末を流動層造粒装置に投入し,これに,アミノアルキルメタクリレートコポリマーEの無水エタノール溶液と精製水との混合液にタルクを分散させて得た分散液を噴霧することにより,素顆粒をコーティングし,エタノール水溶液で経路を洗浄した後,顆粒を乾燥させ,整粒して,薬効成分含有顆粒(顆粒A)を得た。
【0031】
顆粒Aにつき,安息角(°)を計測し,且つ粒度を測定して粒度分布指数を求めた。また顆粒Aコーティング前のもの(素顆粒)についても,粒度を測定して粒度分布指数を求めた。また,顆粒Aのアスペクト比を,走査型電子顕微鏡proX PREMIUM II(ジャスコインタナショナル(株))を用いて求めた。自動画像分析により粒子径と粒子形状のデータを収集し,分析した。
顆粒Aのコーティング前の素顆粒の電子顕微鏡(SEM)画像を
図1に,顆粒Aの電子顕微鏡(SEM)画像を
図2に示す。
【0032】
(2)薬効成分不含顆粒(顆粒B)
D−マンニトール,セルロース化合物,デンプン,クロスポビドン,軽質無水ケイ酸からなる顆粒成分(崩壊剤を含む)を用いて,流動層造粒により常法に従って造粒,乾燥,整粒して,薬効成分不含顆粒(顆粒B)を製造した。
【0033】
(3)混合,打錠
顆粒A,顆粒B,スクラロース,酸化チタン,軽質無水ケイ酸及び香料を混合し,これに更にステアリン酸マグネシウムを添加・混合して,12kN,14kN及び16kNの3通りの打圧でそれぞれ打錠することにより,実施例1の口腔内崩壊錠を得た。
【0034】
2.実施例2
実施例1と同じ顆粒Aを用いた。顆粒A,結晶セルロース及びクロスポビドン(崩壊剤)を混合し,これに更にステアリン酸マグネシウムを添加・混合して,8kN,10kN及び12kNの3通りの打圧でそれぞれ打錠することにより,実施例2の口腔内崩壊錠を得た。
【0035】
〔実施例3,3A〜3D,及び比較例1〕
次の表に示す組成の錠剤となる比率で各成分を用い,後述の手順に従って,実施例3及び比較例1の口腔内崩壊錠を製造した。
【0036】
【表2】
【0037】
<製造方法>
1.実施例3
(1)薬効成分含有顆粒(顆粒A)
イルべサルタンと,D−マンニトール,クロスカルメロースナトリウム,及びヒプロメロースからなる造粒用添加剤1と,スクラロース(甘味剤)とを混合して,造粒し,これに,クエン酸水和物及びヒプロメロースからなる造粒用添加剤2を水溶液として噴霧し,乾燥させ,整粒して,薬効成分含有顆粒(顆粒A)を製造した。顆粒A中のイルべサルタンの割合は,74.2重量%である。
顆粒Aにつき,安息角(°)を計測し,且つ粒度を測定して粒度分布指数を求め,更にアスペクト比も求めた。また,顆粒Aの電子顕微鏡(SEM)画像を
図3に示す。
【0038】
(2)薬効成分不含顆粒(顆粒B)
D−マンニトール,セルロース化合物,デンプン,クロスポビドン,軽質無水ケイ酸からなる顆粒成分(崩壊剤を含む)を用いて,流動層造粒により常法に従って造粒,乾燥,整粒して,薬効成分不含顆粒(B顆粒)を製造した。
【0039】
(3)混合,打錠
顆粒A,顆粒B,クロスポビドン,カルメロース,軽質無水ケイ酸及び香料を混合し,これに更にステアリン酸マグネシウムを添加・混合して,打圧13kNで打錠することにより,実施例3の口腔内崩壊錠を得た。
【0040】
2.実施例3A〜3D
製粒条件を4通りに変更した以外は実施例3と同様にして顆粒Aを得,その安息角(°)を計測し,且つ粒度を測定して粒度分布指数を求め,更にアスペクト比も求めた。この顆粒Aを用い,これに実施例3と同様に,顆粒B,クロスポビドン,カルメロース,軽質無水ケイ酸及び香料を混合し,更にステアリン酸マグネシウムを添加・混合し,但し打錠圧は6kN又及び8kNの2通りとして,それぞれ打錠することにより,実施例3A〜実施例3Dの口腔内崩壊錠を得た。
【0041】
3.比較例1
実施例3の顆粒Aと同様にして,但し,粒度分布が異なるように製粒条件を変えて,顆粒Aを製造した。顆粒Aにつき,安息角(°)を計測し,且つ粒度を測定して粒度分布指数を求め,更にアスペクト比も求めた。また,顆粒Aの電子顕微鏡(SEM)画像を
図4に示す。
【0042】
薬効成分不含顆粒(顆粒B)も実施例3と同様にして製造し,顆粒A,顆粒B及び添加剤を実施例3と同様に用いて,打圧8kNで打錠することにより,比較例1の口腔内崩壊錠を得た。
【0043】
〔実施例4〕
次の表に示す組成の錠剤となる比率で各成分を用い,後述の手順に従って,実施例4の口腔内崩壊錠を製造した。
【表3】
【0044】
<製造手順>
(1)薬効成分含有顆粒(顆粒A)の製造
プレパガリンと,トウモロコシデンプン及びポビドンからなる造粒用添加剤とを混合して流動層造粒装置に投入し,これに精製水を噴霧して造粒し,乾燥及び整粒を経て,素顆粒を得た。素顆粒中のプレガバリンの割合は79.9重量%である。素顆粒を流動層造粒装置に投入し,これに,アミノアルキルメタクリレートコポリマーEの溶液(エタノール/水)にタルクを分散させて得た分散液を噴霧してコーティングし,乾燥させ,整粒して,顆粒Aを得た。顆粒Aにつき,安息角(°)を計測し,且つ粒度を測定して粒度分布指数を求め,更にアスペクト比も求めた。また顆粒Aコーティング前のもの(素顆粒)についても,粒度を測定して粒度分布指数を求めた。
【0045】
顆粒Aのコーティング前の素顆粒の電子顕微鏡(SEM)画像を
図5に,顆粒Aの電子顕微鏡(SEM)画像を
図6に示す。
【0046】
(2)薬効成分不含顆粒(顆粒B)
D−マンニトール,セルロース化合物,デンプン,クロスポビドン,軽質無水ケイ酸からなる顆粒成分(崩壊剤を含む)を用いて,流動層造粒により常法に従って造粒し,乾燥させ,整粒して薬効成分不含顆粒(顆粒B)を製造した。
【0047】
(3)混合・打錠
顆粒A,顆粒B,D−マンニトール及びアスパルテームを混合し,これにステアリン酸マグネシウムを添加・混合して,12kN,14kN及び16kNの3通りの打圧でそれぞれ打錠することにより,実施例4の口腔内崩壊錠を得た。
【0048】
〔評価〕
各実施例及び比較例1の各口腔内崩壊錠について,各打圧での口腔内崩壊錠の硬度及び崩壊時間(日局)を,次のとおりにして測定した。
1.崩壊時間(日局)
崩壊試験器(日本薬局方準拠)を用いた。ガラス容器に37℃の水900mLを入れ,錠剤を入れたバスケット(底部が網状)を容器の水中で上下運動させ,錠剤が崩れきるまでの時間を測定した。
2.硬度
硬度計(TBH 425,ERWEKA社)を用いた。当該装置は,錠剤を順次冶具へと送り,冶具によりに錠剤の横方向から挟んで徐々に加圧して,錠剤が割れた時点の負荷(N)を測定するものである。
【0049】
各口腔内崩壊錠の測定結果を,各顆粒Aの安息角,粒度分布及び粒度分布指数,並びにアスペクト比と共に,以下の表にまとめて示す。実施例1,2及び実施例4については,併せて素顆粒の粒度分布と粒度分布指数も示す。
【0050】
【表4】
【0051】
結果に見られるように,実施例1の口腔内崩壊錠3種は,88N,92N及び120Nという高い硬度を有するにも拘わらず,それぞれ15秒,17秒及び21秒の崩壊時間という,迅速な崩壊性を示している。実施例2の口腔内崩壊錠3種も,82N,105N及び117Nという高い硬度を有していながら,それぞれ12秒,13秒及び17秒の崩壊時間という,非常に速やかな崩壊性を備えている。更には,実施例3の口腔内崩壊錠及び実施例4の口腔内崩壊錠3種も,それぞれ82N,89N,108.7N及び116.7Nという高い硬度を有しつつ,19秒,21秒,23秒及び25秒という優れた崩壊特性を示している。
【0052】
また,実施例1における水準3での硬度120N,実施例2での水準2及び3での硬度それぞれ105N及び117N,実施例4での硬度108.7N及び116.7Nと比べると,比較例1の口腔内崩壊錠は,98Nという相対的に低い硬度であるにも拘らず,崩壊時間は逆に39秒と非常に長い。このことは,比較例1の口腔内崩壊錠に比べて,実施例において打錠に供される組成物それ自体が,比較例1の構成に比べて,同等の硬度でも顕著に優れた崩壊特性を与えるものであることを示している。
【0053】
また,実施例1及び2は,同じ顆粒Aを共通に用い,一方(実施例1)ではこれに別の顆粒(崩壊剤を含む顆粒B)と滑沢剤とを組合せ,他方(実施例2)では顆粒Bの代わりに同量の添加剤(崩壊剤を含む)を粉末のまま用いて打錠したものであるが,共に優れた崩壊特性を備えている。このことは,実施例における優れた崩壊性は,顆粒Aと組み合わせる崩壊剤が顆粒(顆粒B)であるか粉末であるかに拠らず,顆粒Aの特性に起因して優れた崩壊性がもたらされるものであることを示している。
【0054】
更に,実施例の顆粒Aは何れも安息角が38°以下であり高い流動性を有すると共に,粒度分布指数が何れも3.0以下と,粒径が平均粒子径の近くに集中している度合いが高い。これに比べ,比較例1の顆粒Aは,41°という大きな安息角を有して流動性に劣り,同時に粒度分布指数が3.37と大きく,大小の粒径範囲に粒径が大きく広がった粒度分布を示している。これらのことは,顆粒Aにおける相対的に小さな安息角と小さな粒度分布指数との組合せが,実施例の口腔内崩壊錠に高い硬度と優れた崩壊性という特性をもたらすものであることを示している。
【0055】
加えて,同一組成の実施例3A〜3Dにおいて,同一打錠圧で製造した錠剤間で,顆粒Aのアスペクト比が高い方が崩壊時間が短くなる傾向が認められ,これらのうち,実施例3Dに比べて,アスペクト比が0.7以上の顆粒Aを用いた実施例3A〜3Cの方が,硬度と崩壊時間とのバランスのより優れた口腔内崩壊錠を与え得ることが分かる。