(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、ファスナ付き収納体は、開閉可能な一方と他方の一対のファスナ半部からなる開閉用のファスナをシートに取り付けて、収納体の開口を開閉可能にするものである。このファスナの取り付けに関しては、2つのタイプに分類できる。第1のタイプは、開閉可能な一方と他方の一対のファスナ半部を、上端開口を構成する対向する2面のシートのそれぞれに取り付けるタイプである。第2のタイプは、一対のファスナ半部を、収納体の一方の面を構成するシートに取り付けるタイプである。この第2のタイプは、取り付けたシートにおける、ファスナ半部とファスナ半部との間の部分に開口を設けて、開口を開くと共に、ファスナを開いて、被収納物を取り出すようにしたものである。
【0003】
従来、この第2のタイプの収納体としては、特許文献1〜5のものが知られている。これらの特許文献にあっては、ファスナ半部及び/又はシートに、カットテープを設けて、このカットテープを引っ張ることで、開封部を容易に開口することが開示されている。
また、特許文献5にあっては、カットテープの他に、線状体や開封用粗面部を設けることも開示されている。
【0004】
より詳しく説明すると、特許文献5の
図3〜
図6、
図8及び
図9には、ファスナー半部の基部とシートの両方を同時に切断できる強度を有する線状体を設けて、この線状体を引っ張ることで開封を行うものである。この線状体には、ナイロンモノフィラメント、金属線、綿糸、絹糸などを用いることができることが開示されている。
【0005】
また、特許文献5の
図1、
図2及び
図7には、開封用粗面部を有する収納体が示されている。この収納体には、特許文献5の
図2や
図7に示されるように、背シール部や突き合わせヒートシール部の上下両側に、一対のファスナ半部が固定されている。そして、背シール部の基部の上下両側、又は、突き合わせヒートシール部の基部の上下両側において、ラミネートシートの表面側に位置するフィルムに細幅の開封用粗面部が設けられている。各開封用粗面部は、背シール部又は突き合わせヒートシール部の基部における折り曲げ部に対応した部位に形成されている。各開封用粗面部は、フィルムにサンドペーパーを押し付けることでフィルムに貫通しない傷を形成することで作られる。この収納体を開封するには、背シール部又は突き合わせヒートシール部の端部を指で挟持し、背シール部又は突き合わせヒートシール部を収納体のシート面から離れる方向に引き上げ、背シール部又は突き合わせヒートシール部を折り曲げ部に沿って開封用粗面部により切断することで行うものである。
【0006】
これらの特許文献1〜5に示されたカットテープ、線状体、開封用粗面部による開封方法は、いずれも、引っ張り動作によって開封をなすものであった。具体的には、カットテープ、線状体、背シール部又は突き合わせヒートシール部の端部を指で挟持し、収納体のシート面から離れる方向に引き上げることで、カットテープ、線状体、背シール部又は突き合わせヒートシール部をファスナ半部の長手方向に沿って切断するものである。また、カットテープ、線状体、背シール部又は突き合わせヒートシール部の長手方向の端部から、引き上げなければ、その開封が困難であった。即ち、開封開始位置を、収納体の両端に、実質的に限られていた。
【0007】
さらに、シートにカットテープ、線状体を設けるものにあっては、シートとは別部材を取り付けるものであり、部品点数や製造コストの上昇を避けることができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、開閉ファスナを構成するファスナ半部の双方を、収納体の一方の面を構成するシートに取り付けるタイプのファスナ付き包装体において、開封開始動作を改善したファスナ付き包装体の提供を課題とする。
また、本発明は、開閉ファスナを構成するファスナ半部の双方を、収納体の一方の面を構成するシートに取り付けるタイプのファスナ付き包装体において、開封開始位置を、収納体の両端に限ることなく、収納体の中央においても配置することができるようにしたファスナ付き包装体の提供を課題とする。
【0010】
さらに、本発明は、比較的低コストで製造することができるファスナ付き包装体の提供を課題とする。
また、本発明は、上記の課題を解決するのに適した収納体用連続シートの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、シートと、前記シートに設けられた開閉用のファスナとを備えた収納体であって、前記ファスナは、開閉可能な一方と他方のファスナ半部を備え、前記両ファスナ半部は、互いに着脱可能に嵌合する雌雄嵌合部と、前記シートに対する固定部とを備え、前記雌雄嵌合部と前記固定部とは、共に前記ファスナの長手方向に沿って形成されたものであり、前記両ファスナ半部のそれぞれは、前記収納体の分離されていない同一面シートに対して、前記固定部によって固定されたものであり、前記同一面シートにおける前記両ファスナ半部の間に開封部が設けられ、前記開封部が切り開かれることで、前記収納体の開封がなされるようにしたファスナ付き収納体の改良に関するものである。
【0012】
本発明に係るファスナ付き収納体にあっては、前記一方のファスナ半部は、正面に前記下方側の固定部を有する基部と、前記基部の背面に設けられた前記雌雄嵌合部とを備える。また、前記他方のファスナ半部は、正面に前記上方側の固定部を有する基部と、前記基部の正面に設けられた前記雌雄嵌合部とを備える。この他方のファスナ半部の前記基部は、中間部を備えるものであり、この中間部は、前記他方のファスナ半部の前記雌雄嵌合部と前記上方側の固定部とが上下方向に距離を隔てて配置されることにより、前記雌雄嵌合部と前記固定部との間に設けられた部分である。
【0013】
前記両ファスナ半部は、前記一方のファスナ半部の前記背面と前記他方のファスナ半部の前記正面とが向き合うように、それぞれの前記固定部によって前記同一面シートに対して固定されている。そして、上下方向において、前記中間部と同じ位置を含む部分に、前記開封部が配置され、前記開封部を開くと共に前記両ファスナ半部の前記雌雄嵌合部同士の嵌合を開いて、前記収納体の開封がなされるものである。
【0014】
前記開封部は、前記同一面シートの一部を予め切断することによって、少なくとも指先が挿入できる範囲が開封されている開封済み部を備えたものとすることができる。
この開封済み部は、前記ファスナの長手方向に0.7〜4cmの長さの切り目部分と、前記ファスナの長手方向に4cmを超える長さのカットラインと、前記ファスナの長手方向と幅方向とに開口した面積を備えた開口部分との少なくとも1種であるものとして実施することができる。
【0015】
前記開封済み部の少なくとも一部は、前記一方のファスナ半部の前記下方側の固定部の間近の位置に配置されることが、前記開封済み部から使用者の指先を挿入し易くして、初期の開封動作を迅速に行うようする点から望ましい。
具体的には、前記他方のファスナ半部の前記上方側の固定部を、前記収納体の正面側から背面側へ押さえた状態で、前記収納体の背面側から、前記雌雄嵌合部付近の位置を前記収納体の正面側に押し出すことで、前記一方のファスナ半部の前記下方側の基部を正面の方に開いて、前記開封済み部の開きを大きくすることで、使用者の指先を挿入し易くすることができる。
【0016】
前記間近の位置は、特には限定されないが、前記切り目部分の少なくとも一部と前記下方側の固定部との上下方向の距離が0〜5mm、より好ましくは0〜2mmの位置とすることが適当である。また、前記切り目部分の少なくとも一部と前記上方側の固定部との上下方向の距離も小さい方が好ましいが、前記切り目部分は、前記上方側の固定部よりも、前記下方側の固定部に近い位置に、設けることが望ましい。なお、上方側の固定部と下方側の固定部との間隔は、6mm以下とすることが望ましい。
【0017】
であることを特徴とする請求項4に記載のファスナ付き収納体。
また、前記開封部は、前記同一面シートの一部を開封時に切断することによって、少なくとも指先が挿入できる範囲が開封状態となる未開封部を備えたものとしても実施することができる。この未開封部は、前記同一面シートに形成されたミシン目又はハーフカットラインとすることができる。また、前記同一面シートを、方向性を有する延伸フィルムを備えたものとして、前記同一面シートのストレートカット性を示す易カット方向が前記ファスナの長手方向に沿った方向となるように、前記同一面シートが配置されることによって、前記未開封部を形成することもできる。
【0018】
また、前記開封部は、前記同一面シートの一部を予め切断することによって、少なくとも指先が挿入できる範囲が開封されている開封済み部と、前記同一面シートの一部を開封時に切断することによって、少なくとも指先が挿入できる範囲が開封状態となる未開封部との両者を備えたものとして実施することもできる。そして、両者を連続して形成することによって、まず、開封済み部に指先を挿入し、開封済み部を大きく開くことで、これに連続する未開封部を容易に開くことができる。
【0019】
また、前記同一面シートの表面側に、前記開封部の少なくとも一部を閉じる開封シールを設けることもできる。この開封シールによって、開封部、特に開封済み部を塞ぐことにより、収納体の密閉性を向上させたり、いたずら防止の機能を発揮させたりすることができる。
【0020】
袋の密閉性を高めて、不用意にファスナ半部同士の嵌合が解除されないようにするには、前記他方のファスナ半部が仮接着部を備えたものとする。この仮接着部は、前記固定部と前記同一面シートとの接着よりも弱い接着部とすることで、密閉性と開封とを両立させることができる。
【0021】
また、前記開封部が、未開封部又は開封済み部を備えたものとし、前記同一面シートを押し込むことで開くようにすることもできる。その場合、指を前記未開封部又は前記開封済み部から前記同一面シート内に差し込み、引き裂くことで、前記開封がなされるようにしてもよい。このように、指を同一面シートへ押し込んで開く動作に対応して、前記他方のファスナ半部の前記基部は、前記中間部よりも正面側に突出する凸部を備え、前記凸部の正面が前記上方側の固定部とすることも適切である。これによって、前記中間部が前記雌雄嵌合部と前記固定部との双方よりも背面側に凹んだ凹部となる。押し込みによる初期開封動作を行う場合には、この凹部が押し込み空間として、機能する。即ち、本発明は、前記両ファスナ半部のそれぞれは、前記収納体の分離されていない同一面シートに対して、前記固定部によって固定されることにより、前記同一面シートと前記中間部との間に押し込み空間が形成される。そして、前記中間部の正面側における前記同一面シートに、前記ファスナの長手方向に沿って伸びる開封部が形成され、前記同一面シートを、前記開封部の少なくとも一部から前記押し込み空間内に押し込んで前記開封部の開封がなされるものをも提供するものである。
【0022】
従って、本発明での初期の開封動作は、前記同一面シートに予め形成された切り目部分などの開封済み部で行うものとして実施することもでき、前記同一面シートを押し込むことで開かれる前記未開封部で行うものとして実施することもできる。
なお、前記同一面シートは、収納体の一つの面をなすものとして実施すればよく、前記同一面シート自体か複数のシートを接合して構成されたものであってもよいが、接合されていない単一のシートとして実施することもできる。
【0023】
また、本発明は、前記ファスナ付き収納体を構成できるシートを複数枚分長手方向に連続して配置した連続シートと、前記連続シートに取り付けられた複数の開閉用のファスナとを備えた収納体用連続シートであって、前記ファスナは、1つの収納体を構成できる前記シート毎に前記連続シートに配置されたものであり、前記両ファスナ半部のそれぞれは、前記連続シートを前記同一面シートとして、前記固定部によって固定されることものであり、前記中間部の正面側における前記同一面シートに、前記ファスナの長手方向に沿って伸びる開封部が形成された収納体用連続シートを提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、開閉ファスナを構成するファスナ半部の双方を、収納体の一方の面を構成するシートに取り付けるタイプのファスナ付き包装体において、開封開始動作を容易になすことができるようにしたものである。
また、本発明の収納体にあっては、開封開始位置を、収納体の両端に限ることなく、収納体の中央においても配置することができるようにしたものである。
【0025】
さらに、本発明の収納体にあっては、比較的低コストで製造することができる。
また、本発明は、上記の課題を解決するのに適した収納体用連続シートを提供することができたものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。
(概要)
図1は、第1の実施の形態に係る収納体31を示すものである。この収納体31は、正面側シート32と背面側シート33との2枚の柔軟性を有するシートの周囲を熱溶着などで接着した袋体である。正面側シート32と背面側シート33とは、一層又は複数層のフィルムを備えた合成樹脂製を主体とするシートを好適に用いることができ、必要に応じて金属層や紙層を含む複合素材製のシートであってもよい。収納体31の形状は種々変更して実施することができ、襠部を有するものであってもよく、底部のシートを有するものであってもよく、さらに、一部が剛性の高い成形品で構成されたものであってもよい。正面側シート32は背面側シート33とは、別体のシート体から構成してもよく、連続した1枚のシートを折り畳んで正面と背面とに配置したものであってよい。
【0028】
この収納体31の一つの面を構成する同一面シートのうち、正面側シート32と背面側シート33との少なくとも何れか一方(この例では正面側シート32)には、開封部34が形成されている。この開封部34を挟んで、上下両側に、第1ファスナ半部11の固定部14と、第2ファスナ半部21の固定部24とが、それぞれ熱溶着などで正面側シート32に接着されている。この第1ファスナ半部11と第2ファスナ半部21とは、雌雄嵌合部13と雌雄嵌合部23とが着脱可能に嵌合して、開閉可能なファスナ10を構成する。
【0029】
以下、ファスナ10を構成する第1ファスナ半部11、第2ファスナ半部21の長手方向を左右方向(又は横方向)といい、第1ファスナ半部11、第2ファスナ半部21の幅方向を上下方向(又は縦方向)というが、これらは相対的な位置関係を示すに止まり、絶対的な位置を特定するものではない。
【0030】
(第2ファスナ半部21について)
まず、第2ファスナ半部21から説明する。第2ファスナ半部21は、通常の合成樹脂製のファスナに用いられるものと同様のもので、基部22と、基部22の背面側に設けられた雌雄嵌合部23とを備える。雌雄嵌合部23の正面側の全面あるいは幅方向の一部が固定部24を構成し、固定部24と正面側シート32の背面側とが熱溶着などの接着によって固定されている。
この例では、第2ファスナ半部21は開封部34の下方に配置されているが、上方に配置することもできる。
【0031】
(第1ファスナ半部11について)
次に、第1ファスナ半部11は、第2ファスナ半部21と嵌合する合成樹脂製のファスナ半部であり、基部12と、基部12の正面側に設けられた雌雄嵌合部13とを備える。この雌雄嵌合部13は、第2ファスナ半部21の雌雄嵌合部23と着脱可能に嵌合するものであり、第2ファスナ半部21の雌雄嵌合部23と上下方向において略同一位置に設けられたものであり、開封部34の下方に配置されている。なお、第2ファスナ半部21が開封部34の上方に配置された場合には、第1ファスナ半部11の雌雄嵌合部13も上方に配置される。
図1の例では、第2ファスナ半部21の雌雄嵌合部23が突条の雄嵌合部、第1ファスナ半部11の雌雄嵌合部13が雌嵌合部として実施されているが、
図2(A)に示すように、雌雄は逆にして実施することもでき、複数条の突条と凹溝とが互い嵌合する形状など、ファスナの雌雄嵌合部は種々変更して実施することができる。またいわゆるダブルチャックと呼ばれるように、複数の雌雄嵌合部同士を嵌合させるようにしてもよい。
【0032】
第1ファスナ半部11の基部12は、上下方向において、開封部34の上下に渡って形成されており、開封部34の上方に固定部24が形成されている。第1ファスナ半部11の固定部14は、正面側に突出した凸部15の正面側の先端面に形成されており、正面側シート32の背面側に熱溶着などの接着によって固定されている。この例では、第1ファスナ半部11の雌雄嵌合部13と第2ファスナ半部21の雌雄嵌合部23とが嵌合した状態で、第1ファスナ半部11の固定部14と第2ファスナ半部21の固定部24とが略同一高さとなるように、凸部15が正面側に突出している。これによって、後述するように、開封動作を極めて円滑に行うことができると共に、正面側シート32に対する熱溶着も確実に行うことができるものである。
【0033】
第1ファスナ半部11の基部12は、雌雄嵌合部13と固定部14との間に中間部16を備える。この中間部16は、雌雄嵌合部13及び固定部14(凸部15)に比して、背面側に凹んだ凹部となっている。これにより、中間部16と正面側シート32との間には、雌雄嵌合部13と固定部14(凸部15)との間に、押し込み空間39が形成されることになる。この中間部16並びに押し込み空間39に対応する位置であって、それらの正面側に位置する正面側シート32に、開封部34が形成されている。
【0034】
(開封部34について)
開封部34は、正面側シート32に形成されたもので、上下方向において、第1ファスナ半部11の固定部14と、第2ファスナ半部21の固定部24との間に挟まれた位置に形成されている。開封部34は、左右方向に伸びる未開封部35と、その適宜位置(この例では中央)に形成された開封済み部36とを備える。この例では、未開封部35は正面側シート32に形成されたミシン目であり、開封済み部36は正面側シート32に形成された切り目部分である。この切り目部分は、指先が入る程度の大きさで、7mm以上、好ましくは10〜40mm程度の左右長さを有するものとして実施することが適当である。切り目部分は、線状にカットされていればよく、その上下方向の幅は0mmで足りるが、数mm〜10mm程度の上下幅として実施することもできる。
【0035】
(開封動作について)
開封に際しては、まず、開封済み部36から指fを押し込み空間39内に差し込む。この例では、開封済み部36は、予めカットされた切り目部分であり、また中間部16が前述のように凹部となっているため、無理なく指fを背面側に押し込むことができる。そして、差し込んだ指fを左右に動かすことで、ミシン目の未開封部35を容易に破っていくことができる。勿論、開封済み部36に差し込んだ指で正面側シート32を摘むなどして、上下方向に引っ張る要領で未開封部35を破るようにしてもよい。いずれにしても、開封済み部36を押し込み空間39に押し込むことで、開封済み部36からの開封を極めて容易に行うことができる。
【0036】
(製造方法について)
この収納体31の製造は、極めて容易になすことができる。従来、この種のファスナ10は、ウエブ状に連続して送られる正面側シート32に対して、第1ファスナ半部11と第2ファスナ半部21とを嵌合させた状態で、第1ファスナ半部11の固定部14及び第2ファスナ半部21の固定部24が、熱溶着などで接着固定される。本発明の実施の形態では、この接着固定に先立って、正面側シート32に開封部34(未開封部35及び開封済み部36)を押し切り装置などで形成するだけで足りる。このように、予め形成された開封部34の上下両側に第1ファスナ半部11の固定部14と第2ファスナ半部21の固定部24とが位置するように、位置合わせして接着を行うだけで足りるため、製造工程の数を多大にすることもなく、低コストで、製造することができる。
【0037】
(第2の実施の形態)
図3(A)に、第2の実施の形態を示す。先の実施の形態にあっては、開封部34の未開封部35をミシン目としたものであったが、この例では、未開封部35をシートの性質を利用したストレートカット性のあるものとしている点が相違するものであり、他の点については、先の実施の形態に関する説明を適用できる。
【0038】
この実施の形態では、収納体31を構成するシートのうち、少なくとも正面側シート32が方向性を有する延伸フィルムを備えるものである。この種のシートにあっては、延伸の縦方向である1方向にストレートカット性を示すものであり、このストレートカット性を示す易カット方向40が前記ファスナの長手方向に沿った方向(左右方向)となるように、正面側シート32が配置されることによって、未開封部35が形成されたものである。従って、先の例と異なり、この実施の形態では、未開封部35は正面側シート32の他の部分とは区別できない構成となっているが、切り目部分などによって開封済み部36を形成し、前述の要領で開封済み部36から指fを押し込み空間39に差し込み、差し込んだ指fを左右に動かすことで、ストレートカット性を示す易カット方向40に未開封部35を容易に破っていくことができる。
【0039】
図示は省略するが、この未開封部35は、正面側シート32の表面から厚み方向の途中までに形成された凹溝であるハーフカットであってもよい。また、正面側シート32が複数枚のフィルムを積層したシートである場合には、その表面又は内部のフィルムを予め切断したり、同フィルムにミシン目を形成したりした弱め線を備えたシートとして実施し、その弱め線によって未開封部35を形成するようにすることもできる。
このように、未開封部35は、ファスナ10の長手方向に沿う方向に、容易に切り裂くことができる種々の手段に変更して実施することができる。
【0040】
(開封部34の変更例)
図3(B)に、開封部34の変更例を示す。先の2つの実施の形態にあっては、切り目部分による開封済み部36を設けたが、この例では、開封済み部36を設けないようにしたものであり、他の点については、先の何れの実施の形態に関する説明を適用できる。この
図3(B)の例では、未開封部35についてミシン目としているが、このミシン目よりも小さな力で開封できる最弱開封部分37を開封済み部36の代わりに設けたものである。
【0041】
最弱開封部37は、未開封部35のミシン目よりも小さな力で開封できるように、ミシン目の数を密にしたり、幅を大きくしたりしするなどして実施する。
このように、未開封部35と、開封済み部36又は最弱開封部37とを、ファスナ10の長手方向に連続して設けるることで、開封の容易性と正面側シート32の無用な開封を防止する点で好ましい。但し、指fで破ることができることを条件に、開封済み部36や最弱開封部37を設けずに、未開封部35のみで構成する(例えば、全体を均一なミシン目で構成する)ことも可能である(
図3(C)参照)。その場合には、開封部34の何れの箇所からも開封することができるが、使用者が迷わないように、矢印などで開封位置を示しておくこともできる。このような開封位置の表示は、他の例にあっても設けておくことが望ましい。
【0042】
図3(D)は、最弱開封部37についてミシン目を採用し、未開封部35についてストレートカット性を示す易カット方向40をファスナ10の長手方向とした第2の実施の形態の例を採用したものである。
図3(E)は、開封済み部36(又は最弱開封部37)について、収納体31の中央ではなく、正面側シート32の左右の一端に配置した例であり、
図3(F)は、開封済み部36を複数箇所(左右両端)に配置した例である。
このように、開封部34の構成については、その構造や数や大きさなど種々変更して実施することができ、種々の組み合わせで実施することができる。
【0043】
(第1ファスナ半部11の変更例)
第1ファスナ半部11の凸部15については、前述したように、嵌合状態の雌雄嵌合部13と雌雄嵌合部23との厚みに略等しい高さに、突出させて、その先端の固定部14と、第2ファスナ半部21の固定部24とが略同じ高さとなるようにすることが最も望ましいが、
図2(B)に示すように、両者の高さに若干の相違を設けて実施することもできる。
図2(B)の例では、凸部15の高さを、嵌合状態の雌雄嵌合部13と雌雄嵌合部23との厚みの約2分の1としているが、3分の1以上程度でもよい。また、凸部15を全く設けずに固定部14と中間部16とを同じ高さとして実施することも不可能ではないが、開封部34の押し込みを良好になす観点や、正面側シート32に対する熱溶着などの接着を良好になす観点からは、凸部15を設けて実施することが望ましい。
【0044】
(
図2(C)について)
また、前述までの実施の形態では、両ファスナ半部11、21の基部12、22の図示下端の下方への長さを略同じ長さとしていたが、両者の長さを異なるようにしてもよい。特に、
図2(C)に示すように、第1ファスナ半部11の基部12を、第2ファスナ半部21の基部22よりも下方に長く伸ばすことも好ましい。このように、ファスナ10の幅方向(
図2の上下方向)において、第1ファスナ半部11の基部12の端部に延長部17を設けて、この延長部17を、第2ファスナ半部21の基部22よりも幅方向に突出するようにしておく。これによって、両ファスナ半部11、21の基部12、22を、固定部14、12において正面側シート32に熱溶着する際に、延長部17も正面側シート32に対して、軽く熱溶着され、仮接合部18が形成される。なお、図では、仮接合部18の厚みが大きく描かれているが、実際は正面側シート32や延長部17等が厚み方向に自然と曲がるため、仮接合部18が厚み自体は、他の固定部14、24と同じでよい。但し、延長部17の厚みを他の固定部14、24と異なるように(例えば厚みを厚くして仮接合が確実に行なわれるように、もしくは、厚みを薄くして仮接合の強度を調整するように)してもよい。
【0045】
このように、延長部17による仮接合部18を設けることで、被収納物を収納した収納体31が保管中や移送中に、雌雄嵌合部13、23が外れることがあっても、仮接合部18によって収納体31の内外の連通が阻止され得る可能性が高くなる。
他方、開封に際しては、開封部34から開封され、雌雄嵌合部13、23が外される際に、第1ファスナ半部11の基部12及びその延長部17と、正面側シート32とが、離反するように図示左右に強く引っ張られるため、この延長部17の仮接合部18が外れて、収容体31の内外を連通させることができる。
【0046】
従って、この延長部17の仮接合部18は、不用意には外れないが、意図的な開封時には外れるように、適当な面積とすることが望ましい。具体的には、延長部17は3〜10mm程度の幅方向(図の上下方向)の長さがあれよいが、この数値に本発明を限定して理解されるべきではない。
【0047】
また、材質を工夫して、正面側シート32に対する接着強さを、固定部14、24を強く、延長部17を弱く接着されるようにしてもよい。例えば、延長部17を含む両ファスナ半部11、12全体をポリプロピレンなどの溶着温度の高い素材で形成し、両固定部14、24の正面側の面に、ポリエチレン等の溶着温度の低い素材のフィルムを積層するなどして配置する。そして、正面側シート32の少なくとも背面側を熱溶着温度の低い素材で構成し、ポリエチレンの溶着温度であってポリプロピレンの溶着温度未満の温度で加熱圧着することで、弱く接着した状態としてもよい。
【0048】
(
図4について)
本発明に係る収納体31を工業的に量産する場合、袋の連続製造の常法に従い、
図4に示す連続シート51の形態を採るものを製造して、この連続シート51に対して収納物を収納しながら又は収納せずに各収納体31を製造することができる。この連続シート51は、収納体31を構成できる正面側シート32(又は必要に応じて正面側シート32の背面に背面側シートを配置して左右のサイドシールを施し筒状となった2枚のシート体でもよい)を、複数枚分長手方向(
図4の上下方向)に連続して配置したものである。この例では、
図1の収納体31を連続生産できるものを示すが、他の実施の形態に係る収納体31であってもよい。この連続シート51には、各収納体31毎に、等間隔で前述の開閉用のファスナが配置され、固定部14、24で固定されている。そして、固定部14、24の間に、開封部34(未開封部35及び開封済み部36や、図示はしないが最弱開封部37)が正面側シート32に等間隔で形成されている。この連続シート51は、通常ロール状に巻回されて保管移送され、収納体31の完成工程にて、収納体31と収納体31との間の境界部分52に、袋の天部のシールと底部のシールとが施されると共に切断され、一つずつの収納体31が完成させられる。なお、連続した状態の連続シート51の境界部分52には、袋の天部のシールと底部のシールとを予め施しておかないことが一般的であるが、底部シールのみを施したり、両シールを施しておくようにしたり、種々変更して実施し得るものである。
【0049】
(
図5について)
図5は開封動作の一例を示すものである。この
図5にあっては、凸部15を設けていない場合であっても、容易に開封部34からの開封が可能な例を示したものである。
図5(A)は、
図2に示したものと同様の状態を示すものである。この例では、開封部34(特に開封済み部36)の全部又は一部が、第2ファスナ半部21の固定部24の間近の位置(具体的には0〜4mm程度の位置)に配置されている。より望ましくは、第1ファスナ半部11の固定部14よりも、第2ファスナ半部21の固定部24に近い位置に、開封済み部36を設けるようにする(
図5(D)参照)。開封済み部36が直線状の切り目部分で、固定部24と平行に設けられている場合には、開封部34(特に開封済み部36)の全部が上記の間近の位置に設けられることになる。開封済み部36が波打ったように形成されている場合(
図5(E)参照)や、図示は省略するが傾斜して設けられている場合などには、その一部が上記の間近の位置に配置されればよい。また、
図5(F)に示すように、開封済み部36が後に詳述する開口部41である場合には、開封済み部36(開口部41)の一部が、固定部24の上端よりも下方の位置に配置される場合もあり得るが、この場合に関しても、上記0mmの位置に含まれるものとする。開封済み部36(開口部41)の一部が、固定部24の上端よりも下方の位置にしても、この固定部24には第2ファスナ半部21の基部22が存在するため、実質的な開口の大きさは、開封済み部36の上辺からファスナの基部22の上端辺によって規定されることになるため、上記0mmの位置に含まれるとするのが合理的である。同様に、
図5(G)に示されるように、第1ファスナ半部11の固定部14よりも上方に開封済み部36(開口部41)の一部が存在する場合には、実質的な開口の上辺は、ファスナ半部11の基部12の下端辺によって規定されることになり、
図5(G)の例では、上下両辺が、両ファスナ半部11、21の基部12、22によって規定されることになる。
また、両ファスナ半部11、21の固定部14、24同士の位置を近づけておくことも望ましく、具体的には6mm以下程度が望ましい。
【0050】
この状態で、開封するには、まず、一方の手(例えば右手)の親指f1と人指し指f2とで収納体を前後からつまむ。より詳しくは、親指f1で固定部14を収納体の正面側から背面側へ押さえると共に、人指し指f2を横にして収納体の背面側から、雌雄嵌合部13、雌雄嵌合部23の付近を収納体の正面側に押すようにしてつまむ。この状態で、人指し指f2を押し出すようにして、親指f1を背面側に回して、こじ開けるようにして開封部34を開く。その際、開封部34(特に開封済み部36)が、基部22
(図5では固定部24の符号のみを示した)の間近の位置に配置されているため、正面側シート32が基部22によって裏打ちされた状態で腰が強くなっているため、基部22と正面側シート32とが正面の方に開く。これにより開封部34(特に開封済み部36)の開きが大きくなり、他方の手(例えば左手)の親指f3を容易に挿入することができる。従って、開封部34の開封動作、特に、初期の開封動作を今までのファスナ付き収納体とは比較にならないほど、簡単に素早く行うことができる。
【0051】
(
図6〜
図11について)
図6〜
図11は、上述の種々の構成を整理したものであり、以下、その種類毎に順次説明する。
【0052】
(
図6について)
図6(A)〜(E)は、それぞれ開封部34を図示したものである。
図6(A)は、開封部34を開封済み部36のみで構成したものである。この開封済み部36は、全体が長い切り目によって構成されているものである。なお、便宜上、4cm以下の短い切り目を切り目部分と呼び、4cmを超える長い切り目をカットラインと呼ぶ。このカットラインは、開封部34の全長を構成してもよく、
図6(B)に示すように、一部が切断されずに繋がっている部分38となっている複数のカットラインで構成してもよい。開封済み部36のカットラインが長くなり過ぎると、移送時などに開封済み部36が大きく開いてしまって雌雄嵌合部が開いてしまうおそれがあるため、繋がっている部分38を適宜間隔で設けることも好ましい。また、開封部34は、収納体10の左右両側に達するようにすることが好ましいが、収納体10の中央にのみ設けるなど、その形成位置は適宜変更して実施することができる。
【0053】
図6(C)は、前述の
図3(C)と同様、開封部34をミシン目などの未開封部35のみで構成した例である。このミシン目は、
図6(D)に示すように、平行に複数本(この例では2本)設けてもよい。また、
図6(E)に示すように、平行に複数本(この例では2本)設ける際に、ミシン目を千鳥状に配置することも望ましい。
このように、開封部34は、未開封部35と開封済み部36のうち、同一種類のみで全体を構成することもできるし、前述のように、未開封部35と開封済み部36とを組み合わせて連続して開封されるように構成することもできる。
【0054】
(
図7、
図8について)
図7及び
図8は、開封部34を未開封部35や開封済み部36などを混在させと構成する場合のパターンを示したものである。
【0055】
図7(A)は、直線状のミシン目などの未開封部35(又は、カットラインなどの開封済み部36)に対して、開口部41を連続させて設けた例を示す。これまでの説明では、開封済み部36を切り目(切り目部分又はカットライン)のように線状の開口で構成する例を示したが、この例では、開封済み部36として横方向(ファスナ10の長手方向)のみならず、縦方向(ファスナ10の幅方向)にも面状に開口している開口部41として実施しているものである。この開口部41は、正面側シート32(同一面シート)を金型などで打ち抜くなどして形成されており、直線状の未開封部35(又は開封済み部36)に対して、上下両側に開口部41を設けたものである。
【0056】
図7(B)は、1本の直線状のカットラインなどの開封済み部36に対して、上下の何れか一方に突出するように開口部41を設けたものである。なお、直線状の開封済み部36を2本平行して設ける場合には、上の直線状の開封済み部36に対して上方に突出するように開口部41を設け、下の直線状の開封済み部36に対しては下方に突出するように開口部41を設けることが自然であるが、いずれの方向に開口部41を突出させてもよい。
【0057】
図7(C)は、1本の直線状のカットラインなどの開封済み部36に対して、上下の何れか一方に突出するように開封済み部36(切り目部分)を湾曲させて設けた例である。この場合も、上記
図7(B)と同様、上下の何れか一方に開封済み部36(切り目部分)を設けることもできる他、直線状の開封済み部36を2本平行して設ける場合にも適用することができる。
【0058】
図7(D)は、1本の直線状の開封済み部36(カットライン)に対して、上下の何れか一方に突出するように未開封部35(ミシン目)を湾曲させて設けた例である。この場合も、上記
図7(B)と同様、1本の直線状の開封済み部36(カットライン)に対して、未開封部35(ミシン目)を上下何れか一方に設けることもできる他、直線状の開封済み部36(カットライン)を2本平行して設ける場合にも適用することができる。
【0059】
次に、
図8(A)〜(C)も、
図7(B)〜
図7(D)と同様であり、1本ずつを採用することもでき、上下2本を一組にして実施することもできる。
図8(A)は、半円形に打ち抜くなどした開口部41を、未開封部35(ミシン目)に対して連続して設けたものである。
図8(B)は、半円形に湾曲した開封済み部36(切り目)を、未開封部35(ミシン目)に対して連続して設けたものである。
図8(C)は、半円形に湾曲した未開封部35(ミシン目)を、直線状の未開封部35(ミシン目)に対して連続して設けたものである。この場合、湾曲した未開封部35(ミシン目)を前述の最弱開封部37として実施することもできる。
【0060】
(
図9〜
図11について)
直線上の未開封部35(又は開封済み部36)に対して、開口部41、未開封部35、開封済み部36を設ける際、これらは種々の形状のものとして実施することができるものであり、その例を
図9〜
図11に。
図9(A)は円形、
図9(B)(C)は半円形、
図9(D)はバツ印、
図9(E)は長方形、
図9(F)(G)は台形の例である。
図10(A)は6角形などの多角形、
図10(B)は鼓形状、
図10(C)(D)は平行四辺形の例である。
図11(A)(B)(C)はそれぞれ3角形の例であり、
図11(D)は矢印形の例である。
【0061】
これらの種々の形状は、変形した部分が開封開始時に指先を挿入するなどの最初の開封動作を容易になすための例であり、種々変更することができる。また、開封後のつまみとなるタブとして機能させることもできる。但し、当該部分を開封済み部36の開封済み部36や開口部41として実施した場合、移送時などに不用意に大きく開封してしまうおそれがあるため、
図11(E)に示すように、当該部分を隠すシール42を同一面シート(正面側シート32)の外側から剥離可能に貼り付けることもできる。これにより、密閉性を高めることができると共にいたずら防止の効果をも発揮することができる。このシール42は、開封開始の位置に設ける他、開封部34の全長に渡って設けるようにしてもよい。
【0062】
(
図12について)
図12は仮接合部18を設ける位置を示すものである。
図12(A)は、
図2(C)と同様、基部12の下端に仮接合部18が設けたものであり、開封部34と、雌雄嵌合部13、23と、仮接合部18との順で、収納体の収納部奥の方に近づくように並べられている。この例では、開封部34を開封した後、雌雄嵌合部13、雌雄嵌合部23の嵌合を外すことで、仮接合部18を袋の前後に大きく開いて引っ張ることができるため、仮接合部18の仮接着が強い場合でも、開封が容易になるという利点がある。
【0063】
図12(B)は、仮接合部18が、開封部34と、雌雄嵌合部13、23との間に設けられたものである。この例では、仮接合部18が開封部34に近い位置に設けられているため、外部からの力が直接雌雄嵌合部13、23に作用しないという利点がある。
【0064】
図12(C)は、仮接合部18が、雌雄嵌合部13、雌雄嵌合部23の上下に設けられているものである。この例では、より強固に雌雄嵌合部13、23を保護することができる。
以上、本発明は、上記の具体例を種々組み合わせて実施することができることはもちろん、本発明の目的を達成できることを条件に種々変更して実施することができるものである。