(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1ないし4では、ランド近傍を示す画像の全体の画素に対して輝度値に基づく処理(ラベリング処理や膨張処理等)が行われるため、演算量が多くなる。実際には、FPGA(field-programmable gate array)等のように、並列演算が可能な高価な回路が必要となり、プリント基板の検査に係るコストが増大してしまう。また、配線パターンにおいて、孔部によりランドとラインとが完全に分離するネック切れのみならず、孔部によりランドとラインとが部分的に分離する欠陥(以下、このような欠陥、および、ネック切れを「ネック欠け」と総称する。)も検出することが求められている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ネック欠けを容易に検出することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、プリント基板のパターン検査装置であって、ランドおよびラインを含む配線パターン、並びに、孔部が形成されたプリント基板を撮像した検査画像において、一の注目孔部を示す注目孔部領域の中心の座標を取得する孔部情報取得部と、前記配線パターンを示す参照パターンデータ、または、前記検査画像に基づいて、前記注目孔部が形成される注目ランドに接続する注目ラインが、前記注目ランドを始点として伸びる方向であるライン方向を特定するライン方向特定部と、前記検査画像において、前記注目孔部領域のエッジであって、前記配線パターンを示す配線パターン領域に含まれる部分を対象エッジとして、前記注目孔部領域の前記中心から前記ライン方向に伸びる線と前記注目孔部領域の前記エッジとが交差する位置に最も近接する前記対象エッジ上の点を判別点として取得する判別点取得部と、前記判別点が、前記注目ランドを示す注目ランド領域外に位置する場合、または、前記注目ラインを示す注目ライン領域内に位置する場合に、前記注目孔部によるネック欠けを検出するネック欠け検出部とを備え
、前記孔部情報取得部が、前記検査画像において、前記注目孔部領域の前記中心を基準として一定の角度間隔にて複数の角度方向を設定することにより、それぞれが一の角度方向における前記対象エッジ上の点である複数の候補点を求め、前記判別点取得部が、前記複数の候補点のうちの一の候補点を前記判別点として取得する。
請求項2に記載の発明は、プリント基板のパターン検査装置であって、ランドおよびラインを含む配線パターン、並びに、孔部が形成されたプリント基板を撮像した検査画像において、一の注目孔部を示す注目孔部領域の中心の座標を取得する孔部情報取得部と、前記配線パターンを示す参照パターンデータ、または、前記検査画像に基づいて、前記注目孔部が形成される注目ランドに接続する注目ラインが、前記注目ランドを始点として伸びる方向であるライン方向を特定するライン方向特定部と、前記検査画像において、前記注目孔部領域のエッジであって、前記配線パターンを示す配線パターン領域に含まれる部分を対象エッジとして、前記注目孔部領域の前記中心から前記ライン方向に伸びる線と前記注目孔部領域の前記エッジとが交差する位置に最も近接する前記対象エッジ上の点を判別点として取得する判別点取得部と、前記判別点が、前記注目ランドを示す注目ランド領域外に位置する場合、または、前記注目ラインを示す注目ライン領域内に位置する場合に、前記注目孔部によるネック欠けを検出するネック欠け検出部とを備え、前記検査画像において、前記注目ランド領域の中心から前記注目孔部領域の前記中心に向かう方向と、前記ライン方向とのなす角度が所定の角度以上である場合に、前記判別点取得部が、前記注目孔部に対する前記判別点の取得を行わない。
【0008】
請求項
3に記載の発明は、請求項
2に記載のパターン検査装置であって、前記孔部情報取得部が、前記検査画像において、前記注目孔部領域の前記中心を基準として一定の角度間隔にて複数の角度方向を設定することにより、それぞれが一の角度方向における前記対象エッジ上の点である複数の候補点を求め、前記判別点取得部が、前記複数の候補点のうちの一の候補点を前記判別点として取得する。
【0009】
請求項
4に記載の発明は、請求項
1または3に記載のパターン検査装置であって、前記参照パターンデータと、前記孔部の中心の座標を示す参照孔部データとを含む参照データを記憶する記憶部をさらに備え、前記ライン方向特定部が、前記参照パターンデータが示す前記配線パターンにおいて、前記参照孔部データが示す前記注目孔部の中心を前記注目ランドの中心として、前記注目ランドの前記中心から前記複数の角度方向のそれぞれにおける前記配線パターンのエッジまでの距離を取得することにより、前記ライン方向および前記注目ランド領域の半径を特定する。
【0010】
請求項
5に記載の発明は、請求項
4に記載のパターン検査装置であって、前記ネック欠け検出部が、前記参照孔部データが示す前記注目孔部の前記中心を前記注目ランド領域の中心として、前記注目ランド領域の前記中心と前記判別点との間の距離と、前記注目ランド領域の前記半径とを比較することにより、前記ネック欠けを検出する。
【0011】
請求項
6に記載の発明は、請求項
1、3、4または5に記載のパターン検査装置であって、前記孔部情報取得部が、前記対象エッジの不存在により候補点が求まらない角度方向を無候補方向として、周方向において連続する所定数以上の無候補方向の集合である無候補方向群が存在する場合に、前記注目孔部による座切れを検出する。
【0012】
請求項
7に記載の発明は、請求項
6に記載のパターン検査装置であって、前記ネック欠けが検出された前記注目孔部における前記判別点が、周方向に不連続である2つの無候補方向群に挟まれ、かつ、前記2つの無候補方向群の代表方向がなす角度が所定の角度以下である場合に、前記注目孔部によるネック切れを検出するネック切れ検出部をさらに備える。
【0014】
請求項8に記載の発明は、プリント基板のパターン検査方法であって、a)ランドおよびラインを含む配線パターン、並びに、孔部が形成されたプリント基板を撮像した検査画像において、一の注目孔部を示す注目孔部領域の中心の座標を取得する工程と、b)前記配線パターンを示す参照パターンデータ、または、前記検査画像に基づいて、前記注目孔部が形成される注目ランドに接続する注目ラインが、前記注目ランドを始点として伸びる方向であるライン方向を特定する工程と、c)前記検査画像において、前記注目孔部領域のエッジであって、前記配線パターンを示す配線パターン領域に含まれる部分を対象エッジとして、前記注目孔部領域の前記中心から前記ライン方向に伸びる線と前記注目孔部領域の前記エッジとが交差する位置に最も近接する前記対象エッジ上の点を判別点として取得する工程と、d)前記判別点が、前記注目ランドを示す注目ランド領域外に位置する場合、または、前記注目ラインを示す注目ライン領域内に位置する場合に、前記注目孔部によるネック欠けを検出する工程とを備え
、前記パターン検査方法が、e)前記a)工程の後に、前記検査画像において、前記注目孔部領域の前記中心を基準として一定の角度間隔にて複数の角度方向を設定することにより、それぞれが一の角度方向における前記対象エッジ上の点である複数の候補点を求める工程をさらに備え、前記c)工程において、前記複数の候補点のうちの一の候補点が前記判別点として取得される。
請求項9に記載の発明は、プリント基板のパターン検査方法であって、a)ランドおよびラインを含む配線パターン、並びに、孔部が形成されたプリント基板を撮像した検査画像において、一の注目孔部を示す注目孔部領域の中心の座標を取得する工程と、b)前記配線パターンを示す参照パターンデータ、または、前記検査画像に基づいて、前記注目孔部が形成される注目ランドに接続する注目ラインが、前記注目ランドを始点として伸びる方向であるライン方向を特定する工程と、c)前記検査画像において、前記注目孔部領域のエッジであって、前記配線パターンを示す配線パターン領域に含まれる部分を対象エッジとして、前記注目孔部領域の前記中心から前記ライン方向に伸びる線と前記注目孔部領域の前記エッジとが交差する位置に最も近接する前記対象エッジ上の点を判別点として取得する工程と、d)前記判別点が、前記注目ランドを示す注目ランド領域外に位置する場合、または、前記注目ラインを示す注目ライン領域内に位置する場合に、前記注目孔部によるネック欠けを検出する工程とを備え、前記検査画像において、前記注目ランド領域の中心から前記注目孔部領域の前記中心に向かう方向と、前記ライン方向とのなす角度が所定の角度以上である場合に、前記c)工程において、前記注目孔部に対する前記判別点の取得が行われない。
【0015】
請求項
10に記載の発明は、請求項
9に記載のパターン検査方法であって、e)前記a)工程の後に、前記検査画像において、前記注目孔部領域の前記中心を基準として一定の角度間隔にて複数の角度方向を設定することにより、それぞれが一の角度方向における前記対象エッジ上の点である複数の候補点を求める工程をさらに備え、前記c)工程において、前記複数の候補点のうちの一の候補点が前記判別点として取得される。
【0016】
請求項1
1に記載の発明は、請求項
8または10に記載のパターン検査方法であって、前記参照パターンデータと、前記孔部の中心の座標を示す参照孔部データとを含む参照データが予め準備されており、前記b)工程において、前記参照パターンデータが示す前記配線パターンにおいて、前記参照孔部データが示す前記注目孔部の中心を前記注目ランドの中心として、前記注目ランドの前記中心から前記複数の角度方向のそれぞれにおける前記配線パターンのエッジまでの距離を取得することにより、前記ライン方向および前記注目ランド領域の半径が特定される。
【0017】
請求項1
2に記載の発明は、請求項1
1に記載のパターン検査方法であって、前記d)工程において、前記参照孔部データが示す前記注目孔部の前記中心を前記注目ランド領域の中心として、前記注目ランド領域の前記中心と前記判別点との間の距離と、前記注目ランド領域の前記半径とを比較することにより、前記ネック欠けが検出される。
【0018】
請求項1
3に記載の発明は、請求項
8、10、11または12に記載のパターン検査方法であって、前記e)工程において、前記対象エッジの不存在により候補点が求まらない角度方向を無候補方向として、周方向において連続する所定数以上の無候補方向の集合である無候補方向群が存在する場合に、前記注目孔部による座切れが検出される。
【0019】
請求項1
4に記載の発明は、請求項1
3に記載のパターン検査方法であって、前記ネック欠けが検出された前記注目孔部における前記判別点が、周方向に不連続である2つの無候補方向群に挟まれ、かつ、前記2つの無候補方向群の代表方向がなす角度が所定の角度以下である場合に、前記注目孔部によるネック切れを検出する工程をさらに備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ネック欠けを容易に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一の実施の形態に係るパターン検査装置1の構成を示す図である。パターン検査装置1は、例えば、電子部品が実装される前のプリント基板9(プリント配線基板とも呼ばれる。)の外観を検査する。プリント基板9上には、ランドおよびラインを含む配線パターン、並びに、孔部(例えば、スルーホールやビア)が形成されている。本実施の形態では、配線パターンが形成された複数の基板を重ね合わせた多層基板が検査対象のプリント基板9とされるが、多層基板として重ね合わせられる前の各基板が検査対象のプリント基板9とされてよい。
【0024】
パターン検査装置1は、プリント基板9を撮像する装置本体2、および、パターン検査装置1の全体動作を制御するとともに、後述の演算部等を実現するコンピュータ5を備える。装置本体2は、プリント基板9を撮像して多階調の画像(のデータ)を取得する撮像部21、プリント基板9を保持するステージ22、および、撮像部21に対してステージ22を相対的に移動するステージ駆動部23を有する。撮像部21は、照明光を出射する照明部211、プリント基板9に照明光を導くとともにプリント基板9からの光が入射する光学系212、および、光学系212により結像されたプリント基板9の像を電気信号に変換する撮像デバイス213を有する。
【0025】
ステージ駆動部23はボールねじ、ガイドレール、モータ等により構成される。コンピュータ5がステージ駆動部23および撮像部21を制御することにより、プリント基板9上の所定の領域が撮像される。ステージ駆動部23に代えて、プリント基板9に対して撮像部21を相対的に移動する他の機構が設けられてもよい。
【0026】
図2は、コンピュータ5の構成を示す図である。コンピュータ5は各種演算処理を行うCPU51、基本プログラムを記憶するROM52および各種情報を記憶するRAM53を含む一般的なコンピュータシステムの構成となっている。コンピュータ5は、情報記憶を行う固定ディスク54、画像等の各種情報の表示を行うディスプレイ55、操作者からの入力を受け付けるキーボード56aおよびマウス56b(以下、「入力部56」と総称する。)、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体8から情報の読み取りを行う読取装置57、並びに、パターン検査装置1の他の構成との間で信号を送受信する通信部58をさらに含む。
【0027】
コンピュータ5では、事前に読取装置57を介して記録媒体8からプログラム80が読み出されて固定ディスク54に記憶されている。CPU51は、プログラム80に従ってRAM53や固定ディスク54を利用しつつ演算処理を実行する。
【0028】
図3は、パターン検査装置1における機能構成を示すブロック図である。
図3では、コンピュータ5のCPU51、ROM52、RAM53、固定ディスク54等により実現される機能構成を、符号5を付す破線の矩形にて囲んでいる。コンピュータ5は、演算部41および記憶部49を有する。演算部41は、孔部情報取得部411、ライン方向特定部412、判別点取得部413、ネック欠け検出部414およびネック切れ検出部415を有する。図示を省略しているが、各機能構成の動作を制御する全体制御部も演算部41により実現される。これらの構成が実現する機能の詳細については後述する。なお、これらの機能は専用の電気回路により構築されてもよく、部分的に専用の電気回路が利用されてもよい。
【0029】
記憶部49は、予め準備される参照データ491を記憶する。参照データ491は、参照画像データ492および参照孔部データ493を含む。参照画像データ492は、後述の設計データ(CADデータ)から生成される2値の参照画像を示す。参照画像は、プリント基板9上に形成すべき理想的な配線パターン(例えば、配線パターンの形成に利用されるマスクのパターンであり、以下、「参照配線パターン」という。)の領域を示す。また、参照孔部データ493は、プリント基板9に形成すべき各孔部(理想的な孔部であり、以下、「参照孔部」という。)の中心の座標および直径を示す。
【0030】
図4は、参照画像の一部を示す図である。
図4では、参照孔部73を参照画像に重ねて二点鎖線にて示している。参照配線パターン70は、多数のランド71、および、各ランド71に接続されるライン72を含む。
図4では、1つのランド71および1つのライン72のみを示す。典型的には、ランド71は円形であり、ライン72は一定の幅の線状である。ライン72の端部は、ランド71に接続する。また、参照孔部73は、ランド71の中央に配置される。参照孔部73の直径は、ランド71の直径よりも小さい。
図4では、参照孔部73の中心を符号C1を付す点にて示し、参照孔部73の直径を符号D1を付す矢印にて示す。
【0031】
本実施の形態では、参照データ491は設計データから生成される。設計データは、参照配線パターン70のエッジ(輪郭)を示すベクトルデータ、および、参照孔部データ493を含み、ランド71およびライン72を個別に特定する情報は含まない。したがって、ランド71の中心の座標および直径は未知である。一方、既述のように、参照孔部73は、ランド71の中央に配置され、参照孔部73の中心C1の座標は既知である。よって、ランド71の中心の座標は、参照孔部73の中心C1の座標と同じであると捉えることができる。
【0032】
ここで、プリント基板9の各ランドに対する孔部の位置ずれにより生じる欠陥の種類について説明する。
図5ないし
図8は、撮像部21により取得される検査画像の一部を示す図であり、プリント基板9における孔部およびランドを示す。
図5ないし
図8では、円形のランドを示すランド領域61のエッジの一部、および、ラインを示すライン領域62のエッジの一部を二点鎖線にて示している。以下の説明では、ランド領域61の一部と、ライン領域62の一部とは重複しているものとする。ライン領域62においてランド領域61と重複する端部のエッジは、直線状である。
【0033】
図5の例では、孔部を示す孔部領域63が、ランド領域61の中央に形成されている。すなわち、ランドに対する孔部の位置ずれが生じておらず、
図5は正常状態を示す。
図6ないし
図8の例では、孔部領域63が、ランド領域61の中央からずれた位置に形成されている。詳細には、孔部領域63がランド領域61のエッジと重なっており、
図6ないし
図8は、いわゆる座切れの状態を示す。なお、
図6ないし
図8の例は、厳密には、孔部の形成によりランドの一部が除去された状態を示すが、以下の説明では、ランド領域61およびライン領域62には、孔部の形成により除去された(と推定される)領域も含むものとする。
【0034】
また、
図7および
図8の例では、ランド領域61のエッジにおいて、ライン領域62と重なる部分をネックとして、ネックの一部または全部と、孔部領域63とが重なっており、
図7および
図8は、ネック欠けの状態を示す。特に、孔部領域63がネックの全部と重なる
図8は、プリント基板9上の実際のランド(ランド領域61のうち孔部領域63を除く部分)とライン(ライン領域62のうち孔部領域63を除く部分)とが分離するネック切れの状態を示す。以下に説明する検査処理では、プリント基板9上のランドにおける座切れ、ネック欠け、および、ネック切れの有無が検出される。
【0035】
図9Aおよび
図9Bは、パターン検査装置1がプリント基板9を検査する処理の流れを示す図である。パターンの検査では、まず、プリント基板9がステージ22(
図1参照)上に載置され、ステージ駆動部23により、プリント基板9上の配線パターンが撮像部21による撮像領域に配置される。そして、撮像部21により配線パターンを示す多階調の画像が検査画像として取得され、演算部41に出力される(ステップS11)。検査画像は、演算部41により、参照画像データ492が示す参照画像と位置合わせされる(ステップS12)。例えば、周知のパターンマッチングにより、検査画像と参照画像との位置合わせが行われる。
【0036】
孔部情報取得部411では、参照孔部データ493を参照することにより、検査対象の孔部のうち一の孔部が注目孔部として特定され、参照孔部データ493が示す注目孔部の中心の座標に基づいて、検査画像において注目孔部を含む領域が特定される(ステップS13)。以下の説明では、注目孔部が形成されるべきランドを「注目ランド」と呼び、当該注目ランドに接続するラインを「注目ライン」と呼ぶ。
【0037】
図10は、検査画像において注目孔部を含む領域を示す図である。孔部情報取得部411では、検査画像において、参照孔部データ493が示す注目孔部の中心C1(すなわち、注目孔部である参照孔部の中心であり、以下、「参照中心C1」という。)における画素を始点として、一の角度方向に関する測長処理が行われる。測長処理では、対象画素の輝度値と、対象画素に対して当該角度方向に隣接する隣接画素の輝度値との差(本実施の形態では、差の絶対値であり、以下、「隣接画素間の輝度差」という。)を求める処理が、当該隣接画素を次の対象画素に変更しつつ繰り返し行われる。そして、隣接画素間の輝度差が所定の閾値以上となる位置が、注目孔部の孔部領域63(以下、「注目孔部領域63」という。)のエッジを示すエッジ点P1として特定される。エッジ点P1が特定されると、次の対象画素に対する輝度差の算出は行われない。なお、隣接画素間において輝度値が補間されることにより、エッジ点P1の座標が、画素間のピッチよりも小さい単位にて求められてもよい(他の測長処理において同様)。
【0038】
本実施の形態では、注目ランドのランド領域61(以下、「注目ランド領域61」という。)、および、注目ラインのライン領域62(以下、「注目ライン領域62」という。)の平均輝度が、注目ランド領域61、注目ライン領域62および注目孔部領域63を除く領域である背景領域の平均輝度、並びに、注目孔部領域63の平均輝度よりも高い。また、背景領域の平均輝度と注目孔部領域63の平均輝度との差は僅かである。したがって、エッジ点P1は、注目孔部領域63のエッジのうち、配線パターンを示す配線パターン領域60に含まれる部分(以下、「対象エッジ631」という。)において特定される。配線パターン領域60は、注目ランド領域61および注目ライン領域62の集合である。
図10では、対象エッジ631を太い実線にて示している(対象エッジ631を参照する他の図において同様)。なお、プリント基板9における配線パターンの形成工程(フォトリソグラフィ)では、設計データに対して精度よく配線パターンを形成することが可能であり、既述のように、注目ランドの中心の座標は、参照中心C1の座標と同じであると捉えることができる。したがって、参照中心C1は、注目ランド領域61の中心であると捉えることができる。
【0039】
また、参照中心C1の画素から、例えば、参照孔部データ493が示す注目孔部の直径に相当する距離だけ離れた画素まで測長処理を行ってもエッジ点P1が特定されない場合には、当該角度方向における測長処理は終了する。この場合、測長方向である当該角度方向におけるエッジ点P1は不存在となる。
図10では、エッジ点P1が求められない角度方向を、破線の矢印A1にて示している。
【0040】
一の角度方向に対する測長処理が終了すると、参照中心C1を中心として当該角度方向に対して所定の設定角度だけ回転した方向が、次の角度方向として設定される。そして、当該角度方向に対して上記測長処理が行われ、エッジ点P1が探索される。このようにして、参照中心C1を基準として一定の設定角度間隔にて全周に亘る複数の角度方向を設定することにより、
図10に示すように、それぞれが一の角度方向における対象エッジ631上の点である複数のエッジ点P1が求められる(ステップS14)。
【0041】
図10の例では、参照中心C1の画素が注目孔部領域63に含まれるが、参照中心C1の画素が注目孔部領域63に含まれない可能性がある場合には、参照中心C1とは異なる点を基準としてエッジ点P1が求められてよい。例えば、参照中心C1を基準として、45°の角度間隔にて設定される8個の方向が定められ、各方向において参照中心C1から所定の距離(例えば、注目孔部の直径の数分の1)だけ離れた画素の輝度値が確認される。続いて、当該輝度値が比較的低い(注目孔部領域63の輝度と考えられる範囲内の)画素が特定画素として特定され、全ての特定画素を代表する代表位置(例えば平均位置)が取得される。そして、代表位置を基準として一定の設定角度間隔にて複数の角度方向を設定することにより、それぞれが一の角度方向における対象エッジ631上の点である複数のエッジ点P1が求められる。
【0042】
注目孔部領域63の対象エッジ631上の点を示す複数のエッジ点P1が求められると、当該複数のエッジ点P1の座標に基づいて、注目孔部領域63のエッジを示す仮想円の中心の座標および半径が求められる(ステップS15)。
図11では、仮想円の中心を符号C2を付す点にて示し、仮想円の半径を符号R2を付す矢印にて示す。以下の説明では、当該仮想円の中心C2を注目孔部領域63の中心として扱い、「注目孔部中心C2」と呼ぶ。ステップS15の処理は、注目孔部領域63の中心の座標および半径を取得する処理である。
【0043】
孔部情報取得部411では、ステップS14と同様に、注目孔部中心C2における画素を始点として、一の角度方向に関する測長処理が行われる。そして、
図12および
図13に示すように、隣接画素間の輝度差が所定の閾値以上となる位置が、注目孔部領域63の対象エッジ631上のエッジ点P2として特定される。後述するように、エッジ点P2は、ネック欠けの有無の判別に利用される判別点の候補であるため、以下、「候補点P2」という。候補点P2の座標は、演算部41にて記憶される。
【0044】
注目孔部中心C2の画素から、上記仮想円の半径R2に任意の長さを加えた距離(以下、「測長上限距離」という。)だけ離れた画素まで、測長処理を行っても候補点P2が特定されない場合には、当該角度方向における測長処理は終了する。この場合、当該角度方向における候補点P2は不存在として扱われ、当該角度方向が無候補方向として記憶される。無候補方向は、対象エッジ631の不存在により候補点が求まらない角度方向である。
図13では、注目孔部中心C2に対する測長上限距離の位置を符号U2を付す破線の円にて示している。また、候補点P2が求められない角度方向、すなわち、無候補方向を、破線の矢印A2にて示している。
【0045】
一の角度方向に対する測長処理が終了すると、注目孔部中心C2を基準として当該角度方向に対して所定の設定角度だけ回転した方向が、次の角度方向として設定される。そして、当該角度方向に対して上記測長処理が行われ、候補点P2が探索される。このようにして、注目孔部中心C2を基準として一定の設定角度間隔にて全周に亘る複数の角度方向を設定することにより、それぞれが一の角度方向における対象エッジ631上の点である複数の候補点P2が求められる(ステップS16)。なお、設定角度間隔は、任意に決定されてよく、例えば、上記仮想円の円周上において、注目孔部中心C2を基準とする複数の角度方向に位置する複数の点のうち、周方向に互いに隣接する2つの点間の距離が数画素となるように予め決定される。
【0046】
ステップS16では、注目孔部中心C2と候補点P2との間の距離が、上記仮想円の半径R2から任意の長さを引いた距離以下である場合には、当該候補点P2は、以降の処理において使用が禁止されることが好ましい。また、既述のように、注目孔部中心C2の画素から測長上限距離よりも離れた画素については、隣接画素間の輝度差の算出は行われない。このように、注目孔部中心C2からの距離が、仮想円の半径R2から任意の長さを引いた距離よりも大きく、かつ、測長上限距離以下である候補点P2のみを、以降の処理における使用対象とすることにより、注目孔部領域63の対象エッジ631において歪な形状となる部分を無視することが可能となる。
【0047】
孔部情報取得部411では、注目孔部中心C2を中心とする周方向において、予め設定された所定数以上(例えば、2以上)の無候補方向が連続する場合に、これらの無候補方向の集合が無候補方向群として特定される。
図13では、周方向に連続する4個の無候補方向A2の集合が、無候補方向群A0となる。無候補方向群A0が存在する
図13の例は、注目孔部領域63が注目ランド領域61のエッジと重なる座切れ状態であると判定され、注目孔部による座切れが検出される(ステップS17)。注目孔部による座切れが検出された場合には、後述のステップS18へと進む。
【0048】
無候補方向群A0が存在しない
図12の例は、座切れ状態ではないと判定される(ステップS17)。そして、検査画像において次の検査対象の孔部が存在する場合には(ステップS24)、ステップS13へと戻って次の注目孔部が特定される。検査画像において次の検査対象の孔部が存在しない場合には(ステップS24)、パターン検査装置1における処理が完了する。
【0049】
注目孔部による座切れが検出された場合に、ライン方向特定部412では、参照画像に基づいて、注目孔部が形成される注目ランドに接続する注目ラインが、当該注目ランドを始点として伸びる方向であるライン方向が特定される(ステップS18)。詳細には、
図14Aに示す参照画像において、ステップS16と同じ複数の角度方向(全周に亘る複数の角度方向)が注目孔部の参照中心C1を基準として設定される。そして、参照中心C1における画素から各角度方向に沿って並ぶ画素の輝度値が順次取得される。既述のように、参照画像は2値画像であり、参照配線パターン70に含まれる画素の輝度値(以下、「パターン輝度値」という。)と、参照配線パターン70に含まれない画素の輝度値(すなわち、背景の画素の輝度値であり、以下、「背景輝度値」という。)とが相違する。したがって、当該角度方向において取得した画素の輝度値が背景輝度値である場合には、当該画素が、当該角度方向における参照配線パターン70のエッジを示すエッジ点として特定される。なお、
図14Aの参照配線パターン70は、注目ランド71および注目ライン72を含む。
【0050】
ライン方向特定部412における好ましい処理では、各角度方向において、参照中心C1から所定の距離(例えば、注目孔部である参照孔部73の直径の半分)だけ離れた画素から、輝度値の取得が開始される。これにより、エッジ点を特定するまでの処理時間を短縮することができる。より好ましい処理では、設定された複数(全て)の角度方向において、参照中心C1から同じ距離だけ離れた画素の輝度値を順次確認する確認処理が、当該距離を1画素ずつ長くしつつ繰り返される。このとき、エッジ点が特定された角度方向は、次の確認処理から除外される。そして、ライン方向特定部412において最初に設定された角度方向(全角度方向)の個数の半分以上の角度方向に対してエッジ点が特定されると、以降の確認処理は、残りの角度方向に対して所定の設定回数だけ繰り返される。例えば、設定回数が5回に設定されている場合には、全角度方向の個数の半分以上の角度方向に対してエッジ点が特定された際における画素から、残りの各角度方向に最大で5画素だけ離れた画素まで確認処理が行われる。そして、確認処理の設定回数の繰り返しによってもエッジ点が特定されない角度方向が、ライン候補方向として決定される。
【0051】
図14Aでは、ライン候補方向を太い実線の矢印A3にて示している。
図14Aの例のように、ライン候補方向A3が1つである場合には、当該ライン候補方向A3がライン方向として特定される。また、
図14Bに示す例のように、参照中心C1を中心とする周方向において連続する複数のライン候補方向A3(以下、これらのライン候補方向A3の集合を「ライン候補方向群」という。)が取得される場合には、ライン候補方向群に含まれる複数のライン候補方向A3のうち1つのライン候補方向A3がライン方向として特定される。ライン候補方向群に含まれるライン候補方向A3の個数が奇数である場合には、当該ライン候補方向A3のうち中央のライン候補方向A3がライン方向として決定されることが好ましい。また、ライン候補方向群に含まれるライン候補方向A3の個数が偶数である場合には、当該ライン候補方向A3のうち中央近傍の2つのライン候補方向A3の一方がライン方向として決定されることが好ましい。
【0052】
さらに、
図14Cに示す例のように、周方向に不連続である複数のライン候補方向A3が取得される場合には、各ライン候補方向A3がライン方向として特定される。もちろん、周方向に不連続である複数のライン候補方向群が存在する場合には、各ライン候補方向群に含まれる1つのライン候補方向A3がライン方向として決定される。
【0053】
ライン方向特定部412では、エッジ点が求められた複数の(全ての)角度方向のそれぞれにおいて、参照中心C1の画素からエッジ点までの距離が記憶されており、当該複数の角度方向における複数の距離の中央値が、ランド71の半径として特定される。既述のように、プリント基板9における配線パターンの形成工程(フォトリソグラフィ)では、設計データに対して精度よく配線パターンを形成することが可能であるため、参照画像において求められるランド71の半径は、検査画像における注目ランド領域61の半径と捉えることが可能である。以上のように、ライン方向特定部412では、参照画像データ492が示す参照配線パターン70において、参照孔部データ493が示す注目孔部の中心C1を注目ランドの中心として、注目ランドの中心から複数の角度方向のそれぞれにおける参照配線パターン70のエッジまでの距離を取得することにより、ライン方向と共に注目ランド領域61の半径が特定される(ステップS19)。
【0054】
ライン方向および注目ランド領域61の半径が特定されると、
図15Aに示すように、検査画像において、注目ランド領域61の中心である参照中心C1から注目孔部領域63の中心である注目孔部中心C2に向かう方向A5と、ライン方向A4とのなす角度θ1が求められる。このとき、参照中心C1を基準としてライン方向A4から時計回りを正の方向、反時計回りを負の方向として、角度θ1が求められる。そして、当該角度θ1の大きさ(絶対値)が、例えば90°以上である場合には、注目孔部によるネック欠けが発生している可能性がないと判定される(ステップS20)。
【0055】
図15Aおよび
図15Bに示す例では、角度θ1の大きさが90°以上であるため、ネック欠けが発生していないと判定される。そして、検査画像において次の検査対象の孔部が存在する場合には(ステップS24)、ステップS13へと戻って次の注目孔部が特定される。検査画像において次の検査対象の孔部が存在しない場合には(ステップS24)、パターン検査装置1における処理が完了する。
【0056】
一方、上記角度θ1の大きさが90°未満である
図16Aないし
図16Dに示す例は、ネック欠けが発生している可能性があると判定され(ステップS20)、後述のステップS21へと進む。なお、
図16Bでは、参照中心C1から注目孔部中心C2に向かう方向A5とライン方向A4とのなす角度が0°である。
【0057】
判別点取得部413では、
図17Aに示すように、検査画像において、注目孔部中心C2を基準としてライン方向A4と同じ角度方向に候補点P2aが存在する場合に、当該候補点P2aが判別点として決定される(ステップS21)。
図17Bおよび
図17Cに示す例においても同様である。判別点P2aは、注目孔部領域63の対象エッジ631において、最も注目ライン領域62側に位置する候補点であると捉えることができる。なお、複数のライン方向A4が存在する場合には、各ライン方向A4に対して判別点P2aが取得される。
【0058】
一方、ライン方向A4と同じ角度方向に候補点P2が存在しない場合には、周方向においてライン方向A4に隣接する角度方向における候補点P2の存在が確認される。例えば、ステップS20にて求めた角度θ1が正である場合には、ライン方向A4に対して負の方向(参照中心C1を基準とする反時計回り)に隣接する角度方向における候補点P2の有無が確認される。そして、当該角度方向に候補点P2が存在する場合に、当該候補点P2が判別点として決定される。当該角度方向に候補点P2が存在しない場合には、当該角度方向に対して負の方向に隣接する角度方向における候補点P2の有無が確認される。上記処理は、判別点が決定されるまで繰り返される。これにより、
図17Dに示す例では、ライン方向A4に対して負の方向に位置する角度方向の候補点P2aが、判別点として決定される。なお、ステップS20にて求めた角度θ1が負である場合には、ライン方向A4に対して正の方向(参照中心C1を基準とする時計回り)に隣接する角度方向における候補点P2の有無が確認される。
【0059】
判別点取得部413における上記処理は、注目孔部中心C2からライン方向A4に伸びる線と注目孔部領域63のエッジとが交差する位置に最も近接する対象エッジ631上の候補点を判別点P2aとして取得する処理である。
【0060】
ネック欠け検出部414では、
図18Aに示すように、参照中心C1と判別点P2aとの間の距離D2が求められ、当該距離D2が、ステップS19にて取得された注目ランド領域61の半径R1と比較される。当該距離D2が、半径R1よりも大きいことが確認されることにより、
図18Aの例がネック欠けの状態であると判定され(ステップS22)、後述のステップS23へと進む。
図18Bおよび
図18Cに示す例も同様である。
【0061】
一方、
図19に示すように、当該距離D2が、半径R1以下である場合には、ネック欠けが発生していないと判定される(ステップS22)。そして、検査画像において次の検査対象の孔部が存在する場合には(ステップS24)、ステップS13へと戻って次の注目孔部が特定される。検査画像において次の検査対象の孔部が存在しない場合には(ステップS24)、パターン検査装置1における処理が完了する。
【0062】
ネック欠け検出部414における上記処理は、判別点P2aが、注目ランド領域61外に位置する場合に、注目孔部によるネック欠けを検出する処理である。なお、距離D2が大きく、かつ、既述の角度θ1(
図16A参照)の大きさが小さいほどネック欠けの度合いが大きくなるため、距離D2および角度θ1に基づいてネック欠けの度合いが分類されてもよい。
【0063】
ネック切れ検出部415では、ネック欠けが検出された注目孔部における判別点P2aの角度方向に対して、正の方向および負の方向のそれぞれにおける無候補方向群A0の有無が確認される。
図20に示すように、注目孔部中心C2を基準とする判別点P2aの角度方向に対して、正の方向および負の方向に2つの無候補方向群A0がそれぞれ存在する場合には、当該2つの無候補方向群A0のそれぞれにおける代表方向が特定される。各無候補方向群A0における代表方向は、例えば、当該無候補方向群A0に含まれる複数の角度方向における平均の方向であり、
図20では、代表方向を符号B1を付す矢印にて示している。
【0064】
そして、当該2つの無候補方向群A0の代表方向B1がなす角度θ2(ただし、角度θ2は判別点P2aの角度方向を含む角度範囲となるものである。)が、例えば180°以下である場合に、
図20がネック切れの状態であると判定される(ステップS23)。一方、
図21Aおよび
図21Bに示す例のように、判別点P2aの角度方向に対して、正の方向および負の方向の一方に無候補方向群A0が存在しない場合には、ネック切れの状態ではないと判定される。また、正の方向および負の方向に2つの無候補方向群A0がそれぞれ存在する場合であっても、当該2つの無候補方向群A0の代表方向B1がなす角度θ2が180°よりも大きい場合も、ネック切れの状態ではないと判定される。
【0065】
以上のように、ネック切れ検出部415では、判別点P2aが、周方向に不連続である2つの無候補方向群A0に挟まれ、かつ、当該2つの無候補方向群A0の代表方向B1がなす角度θ2が所定の角度以下である場合に、注目孔部によるネック切れが検出される。ネック切れの有無の判定により、注目孔部に対する検査が完了する。検査画像において次の検査対象の孔部が存在する場合には(ステップS24)、ステップS13へと戻って次の注目孔部が特定される。検査画像において次の検査対象の孔部が存在しない場合には(ステップS24)、パターン検査装置1における処理が完了する。
【0066】
以上に説明したように、パターン検査装置1では、検査画像において、一の注目孔部を示す注目孔部領域63の中心C2の座標が取得されるとともに、注目ラインが、注目ランドを始点として伸びる方向であるライン方向A4が特定される。続いて、検査画像において、注目孔部領域63の中心C2からライン方向A4に伸びる線と注目孔部領域63のエッジとが交差する位置に最も近接する対象エッジ631上の点が判別点P2aとして取得される。そして、判別点P2aが、注目ランド領域61外に位置する場合に、当該注目孔部によるネック欠けが検出される。これにより、ネック欠けを容易に検出することができる。また、ランド近傍を示す画像の全体の画素に対して輝度値に基づく処理を行う比較例のパターン検査に比べて、上記パターン検査処理では、演算量を少なくすることができる。その結果、高価な回路を用いることなく、ネック欠けを検出することができ、プリント基板9の検査に係るコストを削減することができる。
【0067】
また、検査画像において、注目孔部領域63の中心C2を基準として一定の角度間隔にて複数の角度方向を設定することにより、それぞれが一の角度方向における対象エッジ631上の点である複数の候補点P2が求められ、複数の候補点P2のうちの一の候補点が判別点P2aとして取得される。これにより、判別点P2aを容易に取得することができる。
【0068】
さらに、参照孔部データ493が示す注目孔部の中心を注目ランド領域61の中心C1として、注目ランド領域61の中心C1と判別点P2aとの間の距離D2と、注目ランド領域61の半径R1とが比較される。これにより、ネック欠けをさらに容易に検出することができる。
【0069】
ライン方向特定部412では、参照画像データ492が示す参照配線パターン70において、参照孔部データ493が示す注目孔部の中心C1を注目ランド71の中心C1として、注目ランド71の中心C1から複数の角度方向のそれぞれにおける参照配線パターン70のエッジまでの距離が取得される。これにより、ライン方向A4および注目ランド71(注目ランド領域61)の半径を容易に特定することが実現される。
【0070】
孔部情報取得部411では、周方向において連続する所定数以上の無候補方向A2の集合である無候補方向群A0の存在が確認される。これにより、注目孔部による座切れを容易に検出することができる。
【0071】
ネック切れ検出部415では、ネック欠けが検出された注目孔部における判別点P2aが、周方向に不連続である2つの無候補方向群A0に挟まれ、かつ、当該2つの無候補方向群A0の代表方向B1がなす角度が所定の角度以下であるか否かが確認される。これにより、注目孔部によるネック切れを容易に検出することができる。
【0072】
パターン検査装置1では、検査画像において、注目ランド領域61の中心C1から注目孔部領域63の中心C2に向かう方向と、ライン方向A4とのなす角度θ1が所定の角度以上である場合に、注目孔部に対する判別点P2aの取得が行われない。これにより、ネック欠けではない注目孔部に対する判別点P2aの取得に係る処理を省略することができ、パターン検査装置1におけるパターン検査を短時間にて完了することができる。
【0073】
上記パターン検査装置1では様々な変形が可能である。
【0074】
上記実施の形態では、参照画像データ492が参照配線パターンを示す参照パターンデータとして準備されるが、参照配線パターンを示すベクトルデータが参照パターンデータとして用いられてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態では、参照配線パターンを示し、孔部を示さない参照パターンデータを用いることにより、ライン方向を容易に特定することが可能となるが、プリント基板9に形成される配線パターンの精度等によっては、検査画像に基づいて、ライン方向が特定されてもよい。
【0076】
ネック欠け検出部414では、判別点P2aが、注目ラインを示す注目ライン領域62内に位置する場合に、注目孔部によるネック欠けが検出されてもよい。この場合、注目ライン領域62において注目ランド領域61と重複する端部の直線状のエッジ(
図6ないし
図8参照)がネックとして捉えられる。例えば、参照画像データが、ランドを示す画像データと、ラインを示す画像データとを個別に含む等、参照パターンデータとして、ランドとラインとを個別に示すデータが準備される場合には、判別点P2aが注目ランド領域61外に位置するか否か、または、注目ライン領域62内に位置するか否かを容易に判定することが可能である。
【0077】
パターン検査装置1の設計によっては、注目孔部領域63の中心C2を基準とする複数の角度方向を設定することなく(複数の候補点を取得することなく)、判別点が取得されてもよい。
【0078】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。