(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496209
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】回転位置検出器のロータ芯出し装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
G01D5/20 110B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-155102(P2015-155102)
(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-32487(P2017-32487A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 翔平
【審査官】
眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−2572(JP,A)
【文献】
特開2011−224730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の端面に固定された検出ロータの回転角度を検出することによって前記回転軸の回転角度を検出する回転位置検出器の組立工程において使用される回転位置検出器のロータ芯出し装置であって、
前記検出ロータを前記回転軸に固定する工程において、前記検出ロータの端面を前記回転軸の軸方向に押圧して、当該検出ロータと摩擦係合する構造体と、
前記構造体の径方向から所定の衝撃力を前記構造体に付与する衝撃力付与機構と、
前記衝撃力付与機構を前記回転軸に関して回転可能に保持し、前記衝撃力付与機構を前記回転軸に対して所定の回転角度に回転する回転テーブル機構と、
前記回転軸と前記検出ロータとの偏芯を検出する偏芯検出手段と、
前記衝撃力付与機構及び前記回転テーブル機構を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記偏芯検出手段が検出した前記偏芯に基づいて、前記偏芯が解消されるように、前記衝撃力付与機構及び前記回転テーブル機構を作動し、
前記構造体に付与される衝撃力によって前記構造体に摩擦係合した前記検出ロータの位置を調整することを特徴とする回転位置検出器のロータ芯出し装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転位置検出器のロータ芯出し装置において、
前記構造体に付与する衝撃力をFとし、その衝撃力付与後に前記検出ロータが移動した変位量をXとした場合、衝撃力Fと変位量Xとの関係をX=kF(kは定数)とし、
前記衝撃力付与機構により前記構造体に付与した衝撃力がFaであり、この衝撃力の付与による移動量がXaであるときに、Xa/Fa=kaを演算し、
前記偏芯検出手段により検出された偏芯量をXbとし、その偏芯量を修正するための衝撃力をFbとして、この衝撃力FbをXb/kaに基づき演算し、この衝撃力Fbに応じて前記衝撃力付与機構により前記構造体に衝撃力を付与することを特徴とする回転位置検出器のロータ芯出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リラクタンス型レゾルバ式回転位置検出器の検出ロータの位置決め精度、特に検出ロータの磁気中心を確保するロータ芯出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リラクタンス型レゾルバ式ロータリーエンコーダの検出ロータは外周に高精度の歯を有している。このため、薄型のロータでは歯部に外力を加えられないため芯出しができず、高精度に加工された部品の積み上げで中心位置を確保しているが、高コストとなる。芯出しの精度が低い場合には、エンコーダの出力にばらつきが生じるため、このばらつきを低減するためにも、各部品の寸法公差を厳しくする必要があり、各部品の加工コストが増大することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、検出ロータをチャックなどの把持機構を用いて把持しながら芯出しし、位置決めが完了した後に把持機構を開放するような方法で芯出しする方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−151527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の自動芯出し装置は、外周部に外力を加えて、芯出し対象を動かし中心位置を調整するため、外周部に高精度の歯部を有する検出ロータの自動芯出しは困難であった。また、チャックなどの把持機構を用いた芯出し方法では、把持機構がロータを開放する瞬間に微小にロータの位置がずれてしまうため、高精度な芯出しが行えないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転位置検出器のロータ芯出し装置は、回転軸の端面に固定された検出ロータの回転角度を検出することによって前記回転軸の回転角度を検出する回転位置検出器の組立工程において使用される回転位置検出器のロータ芯出し装置であって、前記検出ロータを前記回転軸に固定する工程において、前記検出ロータの端面を前記回転軸の軸方向に押圧して、当該検出ロータと摩擦係合する構造体と、前記構造体の径方向から所定の衝撃力を前記構造体に付与する衝撃力付与機構と、前記衝撃力付与機構を前記回転軸に関して回転可能に保持し、前記衝撃力付与機構を前記回転軸に対して所定の回転角度に回転する回転テーブル機構と、前記回転軸と前記検出ロータとの偏芯を検出する偏芯検出手段と、前記衝撃力付与機構及び前記回転テーブル機構を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記偏芯量検出手段が検出した前記偏芯に基づいて、前記偏芯が解消されるように、前記衝撃力付与機構及び前記回転テーブル機構を作動し、前記構造体に付与される衝撃力によって前記構造体に摩擦係合した前記検出ロータの位置を調整することを特徴とする。
【0007】
また、前記構造体に付与する衝撃力をFとし、その衝撃力付与後に前記検出ロータが移動した変位量をXとした場合、衝撃力Fと変位量Xとの関係をX=kF(kは定数)とし、前記衝撃力付与機構により前記構造体に付与した衝撃力がFaであり、この衝撃力の付与による移動量がXaであるときに、Xa/Fa=kaを演算し、前記偏芯検出手段により検出された偏芯量をXbとし、その偏芯量を修正するための衝撃力をFbとして、この衝撃力FbをXb/kaに基づき演算し、この衝撃力Fbに応じて前記衝撃力付与機構により前記構造体に衝撃力を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の回転位置検出器のロータ芯出し装置によれば、高精度に加工された部品の積み上げで中心位置を確保する必要がなくなり、汎用的な加工機で加工した部品で検出ロータの中心位置に調整することができる為、部品のコストダウンができる。また、チャックなどの把持機構を用いる必要もなく、回転位置検出器の芯出しを行うことができるので、外周部に高精度の歯部を有する検出ロータに対しても芯出しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】芯出し対象のロータリーエンコーダの斜視図である。
【
図2】芯出し対象のロータリーエンコーダのアキシャル方向の断面図である。
【
図6】本発明の芯出し装置の衝撃付与機構の拡大図である。
【
図7】本発明の芯出し装置の昇降機構の拡大図である。
【
図8】本発明の芯出し方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を
図1〜
図8に基づいて説明する。
図1と
図2は本発明に係るロータ芯出し装置が芯出しを行う対象を示す。また、
図3〜
図7は本発明に係るロータ芯出し装置を示す。
【0011】
本発明の実施形態として示すロータ芯出し装置が芯出しを行う対象は、ロータリーエンコーダの部品で
図1に示す検出ロータW1と回転ユニットW2である。
【0012】
検出ロータW1はレゾルバステータとの組み合わせで回転位置検出が可能な中空の歯車である。回転ユニットW2はハウジングW4と、ベアリングW5と、このベアリングW5を通して固定している回転軸W3で構成されている。また、芯出し完了後に検出ロータW1は回転軸W3に固定される。ハウジングW4は後述する偏芯検出用レゾルバステータ30を嵌め合いにより固定できる構造を持つ。
【0013】
実施するための形態例として示すロータ芯出し装置は回転ユニットW2を支持可能な支持機構5と、間接的に検出ロータW1へ衝撃力を付与する衝撃力付与機構4と、この衝撃力付与機構4から検出ロータW1へ衝撃力を伝達する押さえを昇降させる押さえ昇降機構3と、衝撃力付与機構4が載置された回転機構1を備える。このため、回転機構1を使って衝撃力付与機構4を回転することで任意の角度から衝撃を発生させることができる。
【0014】
回転機構1は中空円テーブル構造で、ベース7に固定される機構本体20と、回転中心6を中心に回転する中空軸21とを備える。中空軸21にはテーブル2が固定され、テーブル2には衝撃力付与機構4と、ハウジングW4に回転を伝えるピン8を備える。
【0015】
支持機構5は回転ユニットW2を固定できるテーパ部を先端に持つ柱状構造で、この支持機構5はベース7に固定されている。また、支持機構5は回転機構1の中空部を通る形でベース7に立設されている。
【0016】
衝撃力付与機構4はテーブル2に設置され、圧電素子により衝撃力を発生させるインパクトアクチュエータ11と、そのインパクトアクチュエータ11を軸心方向に平行移動させ先端を重り18に押し当てることのできる移動機構22を備える。
【0017】
移動機構22は1軸アクチュエータであり、リニアガイド機構にて構成している。リニアガイド機構は、テーブル2上に固定される本体24と、エア圧などによって本体24の長手方向に沿って往復運動する可動テーブル25とを備える。また、インパクトアクチュエータ11は支持構造10によって可動テーブル25に固定してある。
【0018】
インパクトアクチュエータ11は内部に圧電素子を有し、この圧電素子に電圧を加えることで長手方向へ急峻に伸長し衝撃力を発生させる機構を備える。
【0019】
押さえ昇降機構3はベース7に立てられた支持柱28に固定され、押さえ機構26と、この押さえ機構26を昇降させる昇降機構27とを備える。
【0020】
昇降機構27は支持柱28に固定される機構本体15と、上下方向に往復運動するロッド29とを備える。ロッド29には押さえ機構26が固定されている。
【0021】
押さえ機構26には、昇降機構27と、接続する円盤17と、外れ止め19が固定されている。構造体としての重り18は、円盤17と外れ止め19によって外れないようになっており、回転中心6と同軸上になっている。降下時には円盤17が重り18を押すことによって、重り18が検出ロータW1に押し付けられて、重り18と検出ロータW1とは摩擦係合する。また、この摩擦係合により、重り18はインパクトアクチュエータ11からの衝撃を検出ロータW1へ伝達する。すなわち、インパクトアクチュエータ11からの衝撃により検出ロータW1は移動する。衝撃の伝達によって重り18が動いて、この中心が回転中心6とずれるが、上昇時には外れ止め19の外径テーパ部に重り18の内径テーパ部がならうことにより再び回転中心6と重り18の中心が一致する。
【0022】
ハウジングW4に偏芯検出手段としての偏芯検出用レゾルバステータ30を嵌めあいによって固定し、検出ロータW1と偏芯検出用レゾルバステータ30との偏芯量を検出する。なお、ここでいう偏芯量とは、検出ロータW1と回転軸W3との偏芯量の他に偏芯方向も含むものである。偏芯検出用レゾルバステータ30を回転機構1により回転させることにより偏芯検出用レゾルバステータ30の中心と回転中心6との偏芯量を検出し、この偏芯量をもとに演算することで検出ロータW1と回転中心6との偏芯量を検出する。
【0023】
この装置は、制御部によって、打撃位置及び打撃力が自動的に設定されて、芯出し動作が行われる。制御部は、偏芯検出用レゾルバステータ30で得られた偏芯量と回転機構1の回転角位相との情報から、偏心量と偏芯方向を演算する。この演算結果をもとにインパクトアクチュエータ11に指令を出す。また、予め設定した収束値以内に偏芯量が収まるまで偏芯量と偏芯方向の演算とインパクトアクチュエータ11への指令を繰り返す。
【0024】
次に、前記のように構成されたロータ芯出し装置を使用した芯出し方法について
図8を用いて説明する。まず、ステップS1に示すように回転ユニットW2を支持機構5へ載置する。次にステップS2に示すように偏芯検出用レゾルバステータ30をハウジングW4へ載置する。次に、ステップS3に示すように検出ロータW1を載置する。以上が準備工程である。
【0025】
次にステップS4に示すように、自動スタートを指令する。これによって、ステップS5に示すように、押さえ機構26(ロータ押さえ)を降下させ、重り18を検出ロータW1に押し付ける状態にする。その状態でステップS6に示すように、検出ロータW1の偏芯量を偏芯検出用レゾルバステータ30にて計測する。
【0026】
次にステップS7に示すように、偏心量と偏芯方向を演算して、ステップS8に示すように、テーブル2を回転させ偏芯方向に合わせてインパクトアクチュエータ11の向きを位置決めする。そして、ステップS9に示すように、インパクトアクチュエータ11に芯出し指令を指示する。この時の芯出し指令の出力は偏芯量によって決まる。
【0027】
ここで、インパクトアクチュエータ11の出力の演算について説明する。まず、インパクトアクチュエータ11による芯出しにおいて偏芯量の変化量Xと出力Fとの関係は、次の数式1によって表される。なお、Xは偏芯量の変化量、Fはインパクトアクチュエータ11の出力、kは係数である。
X=k×F・・・数式1
このため、ステップS9では、この数式1を利用して検出ロータW1の偏芯量を変化量Xに代入し、あらかじめ設定されたパラメータを係数kとしてインパクトアクチュエータ11の出力を演算する。
【0028】
ステップS10に示すように再度、偏芯量を計測し、ステップS11に示すように偏芯量と偏芯方向を演算し、次にステップS12に示すように、偏芯量が収束値以内かを判断する。偏芯量が収束値以内であれば、芯出し動作を終了し、偏芯量が収束値に入っていなければ、ステップS13へ進む。ステップS13に進んだ場合はテーブル2の向きと偏芯方向の関係が変わっていないか判断し、変わっていない場合はステップS14へ進み、テーブル2の向きと偏芯方向の関係が変わっている場合はステップS6へ戻る
【0029】
ステップS14に進んだ場合は、前回のインパクトアクチュエータ11の出力と偏芯量の変化量を元に適切な出力を演算する。具体的に説明すると、ステップS14において、前記数式1に前回の変化量Xと出力Fを代入して新たな係数kaを求める。すなわち、ステップS9において、インパクトアクチュエータ11によって重り18に付与した前回の衝撃力がFaであり、この衝撃力Faの付与による移動量がXaであるときに、Xa/Fa=kaを演算する。
【0030】
そして、偏芯量の変化量Xと出力Fの関係式(前記数式1)を利用して、新たに求めた係数kaと衝撃付与後の検出ロータW1の偏芯量を変化量Xに代入することで最適な出力F(衝撃力Fb)を求める。すなわち、衝撃付与後に偏芯検出用レゾルバステータ30により検出された偏芯量がXbである場合、その偏芯量Xbを修正するための衝撃力Fbを前記数式1を利用(Xb/ka)して演算する。
【0031】
そして、ステップS15に示すように、演算結果の出力F(衝撃力Fb)でインパクトアクチュエータ11に芯出し指令を行う。すなわち、演算された衝撃力Fbに基づき、この衝撃力Fbに応じてインパクトアクチュエータ11によって重り18に再度衝撃力を付与する。その後は、ステップS10へ戻る。
【符号の説明】
【0032】
1 回転機構、2 テーブル、3 押さえ昇降機構、4 衝撃力付与機構、5 支持機構、6 回転中心、7 ベース、8 ピン、11 インパクトアクチュエータ、15 機構本体、17 円盤、18 重り、19 外れ止め、20 機構本体、21 中空軸、22 移動機構、24 本体、25 可動テーブル、26 押さえ機構、27 昇降機構、28 支持柱、29 ロット、30 偏芯検出用レゾルバステータ、W1 検出ロータ、W2 回転ユニット、W3 回転軸、W4 ハウジング、W5 ベアリング。