特許第6496212号(P6496212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496212
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20190325BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   B41J29/38 Z
   B41J2/01 305
   B41J2/01 401
   B41J2/01 451
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-160156(P2015-160156)
(22)【出願日】2015年8月14日
(65)【公開番号】特開2017-35863(P2017-35863A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(72)【発明者】
【氏名】山下 真祐
【審査官】 大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−012171(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0001386(US,A1)
【文献】 特開2008−173833(JP,A)
【文献】 特開2002−053246(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/090212(WO,A1)
【文献】 米国特許第07719696(US,B1)
【文献】 特開2012−056290(JP,A)
【文献】 特開平04−235576(JP,A)
【文献】 特開2008−105836(JP,A)
【文献】 特開2016−132207(JP,A)
【文献】 特開2013−199373(JP,A)
【文献】 米国特許第06164201(US,A)
【文献】 特開2002−099178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の印刷媒体に印刷する際に、その側端位置からの印刷位置を補正しつつ印刷を行う印刷装置であって、
前記印刷媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部を搬送されている前記印刷媒体に対して印刷を行う印刷部と、
前記搬送部に沿って配置され、前記印刷媒体の側端位置を検出して側端位置情報を出力する側端検出部と、
前記搬送部を構成する部材に取り付けられ、前記側端検出部によって検出される被検出部を備えた測定具と、
前記印刷媒体の搬送方向と直交する印刷領域端部と前記印刷媒体の側端との間隔を決定するための前記側端検出部の配置位置情報を基準値として記憶する基準値記憶部と、
前記側端検出部の配置位置が変位する前に、前記測定具の被検出部を検出することにより、前記側端検出部で検出された前記測定具の位置情報を変位前側端位置情報として記憶する変位前側端位置情報記憶部と、
前記側端検出部の配置位置が変位した後に、前記測定具の被検出部を検出することにより、前記側端検出部で検出された前記測定具の位置情報を変位後側端位置情報として記憶する変位後側端位置情報記憶部と、
前記変位前側端位置情報と前記変位後側端位置情報との差分を前記基準値に加算することにより、前記基準値を更新するとともに、前記印刷部による印刷の際に、更新された前記基準値に基づいて印刷位置の補正を行う制御部と、
を備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記測定具は、前記部材に対して着脱自在であることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置において、
前記測定具は、前記印刷媒体の側端位置よりも外側に所定距離だけオフセットされた位置に前記被検出部が配置されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置において、
前記測定具は、前記側端検出部から出射される光の反射を抑制する色で前記被検出部が構成されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の印刷装置において、
前記測定具は、前記部材に取り付けるための取付部と、前記取付部から前記印刷媒体の側端位置に向かって延出された延出部とを備え、
前記被検出部は、前記延出部の前記印刷媒体の側端側に取り付けられ、前記印刷媒体の側端に平行であって、前記印刷媒体の面に垂直な端面を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置において、
前記取付部は、前記部材に吸着させて取り付けるための磁石を備え、
前記側端検出部は、投光部と受光部とを備え、前記印刷媒体の側端位置であって、前記印刷媒体の面に垂直な方向に前記投光部と前記受光部とを対向させた状態でステーにより前記部材に連結されているとともに、
前記延出部は、前記ステーに当接して前記被検出部の端面が前記印刷媒体の側端に平行となるように位置決めする位置決め部を備えていることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体の側端からの位置を補正しつつ長尺状の印刷媒体に印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、インクジェット印刷装置では、連続紙を搬送しつつ、インクジェットヘッドからインク滴を吐出させて連続紙に画像を印刷させる。連続紙等の長尺状の印刷媒体の搬送では、搬送方向に直交する方向に連続紙の側端位置が変動することがある。このような状態になると、連続紙における側端からの印刷開始位置が変動する不都合が生じる。そこで、連続紙の側端位置を検出する側端検出部を配置して、連続紙の側端位置が移動した場合には、その位置情報に基づいて画像を印刷する位置をずらすものがある(例えば、特許文献1参照)。これにより、連続紙の側端位置が移動しても、印刷開始位置を側端から一定化できる。
【0003】
連続紙の側端位置のずれに応じて画像の印刷開始位置をずらすには、まず、インクジェット印刷装置の組み立て時に、側端検出部の配置位置情報を基準値として記憶させておく。なお、側端検出部は、連続紙に対して印刷を行うインクジェットヘッドとの位置関係が精度よく配置されている。そして、製品の印刷前に連続紙を搬送させ、その側端位置を側端検出部で検出する。このとき検出された側端位置と基準値とから側端が移動した位置がわかるので、その移動した位置に基づいてインクジェットヘッドによる側端における印刷開始位置を決定する。これにより、連続紙の側端が移動しても、連続紙の側端からの印刷開始位置を一定化するように印刷位置補正ができる。なお、装置の組み立て時に記憶させた基準値は、装置の運用中に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−99178号公報(図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、側端検出部の配置位置がズレないことを前提としているが、側端検出部の配置位置がずれることがある。例えば、側端検出部には、連続紙の搬送の際に生じる紙粉が付着して検出精度が低下する恐れがあるので、定期メンテナンス時に側端検出部の清掃を行うのが一般的である。その際に、意図せず側端検出部に触れてしまい、連続紙の幅方向における配置位置のズレを生じることがある。このような側端検出部の配置位置のズレが生じると、基準値がずれることになるので、連続紙の側端からの印刷開始位置を一定化する印刷位置補正を正確に行えず、印刷品質の低下を招く。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、側端検出部の配置位置のズレに応じて基準値を更新することにより、印刷媒体の側端からの印刷開始位置を一定化する印刷位置補正を正確に行うことができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、長尺状の印刷媒体に印刷する際に、その側端位置からの印刷位置を補正しつつ印刷を行う印刷装置であって、前記印刷媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部を搬送されている前記印刷媒体に対して印刷を行う印刷部と、前記搬送部に沿って配置され、前記印刷媒体の側端位置を検出して側端位置情報を出力する側端検出部と、前記搬送部を構成する部材に取り付けられ、前記側端検出部によって検出される被検出部を備えた測定具と、前記印刷媒体の搬送方向と直交する印刷領域端部と前記印刷媒体の側端との間隔を決定するための前記側端検出部の配置位置情報を基準値として記憶する基準値記憶部と、前記側端検出部の配置位置が変位する前に、前記測定具の被検出部を検出することにより、前記側端検出部で検出された前記測定具の位置情報を変位前側端位置情報として記憶する変位前側端位置情報記憶部と、前記側端検出部の配置位置が変位した後に、前記測定具の被検出部を検出することにより、前記側端検出部で検出された前記測定具の位置情報を変位後側端位置情報として記憶する変位後側端位置情報記憶部と、前記変位前側端位置情報と前記変位後側端位置情報との差分を前記基準値に加算することにより、前記基準値を更新するとともに、前記印刷部による印刷の際に、更新された前記基準値に基づいて印刷位置の補正を行う制御部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、側端検出部の配置位置情報を基準値として基準値記憶部に記憶させ、側端検出部の配置位置が変位する前に、測定具の被検出部を側端検出部によって検出し、これを変位前側端位置情報として変位前側端位置情報記憶部に記憶する。また、側端検出部の配置位置が変位した後に、測定具の被検出部を側端検出部によって検出し、これを変位後側端位置情報記憶部に変位後側端位置情報として記憶する。制御部は、変位前側端位置情報と変位後側端位置情報との差分を基準値に加算し、基準値記憶部の基準値を更新する。印刷部による印刷の際には、制御部は、更新された基準値に基づいて印刷位置の補正を行う。基準値は、側端検出部の位置のズレが補正されている。したがって、側端検出部の配置位置が変位しても、側端検出部の配置位置のズレに応じて基準値を更新するので、印刷媒体の側端からの印刷開始位置を一定化する印刷位置補正を正確に行うことができる。
【0009】
また、本発明において、前記測定具は、前記部材に対して着脱自在であることが好ましい(請求項2)。
【0010】
必要な時にだけ測定具を取り付けることができ、従来からある装置にも適用できるので、汎用性を高くできる。
【0011】
また、本発明において、前記測定具は、前記印刷媒体の側端位置よりも外側に所定距離だけオフセットされた位置に前記被検出部が配置されていることが好ましい(請求項3)。
【0012】
測定具の被検出部が印刷媒体の側端位置よりも外側に所定距離だけオフセットされているので、搬送部にある印刷媒体の側端位置が多少外側に移動した状態であっても、側端検出部によって測定具の被検出部を検出できる。したがって、印刷媒体を搬送部から取り除くなどの余分な作業を行うことなく、効率的に変位前側端位置情報及び変位後側端位置情報を記憶できる。
【0013】
また、本発明において、前記測定具は、前記側端検出部から出射される光の反射を抑制する色で前記被検出部が構成されていることが好ましい(請求項4)。
【0014】
側端検出部からの光照射が乱されないので、変位前側端位置情報及び変位後位置情報を正確に検出できる。
【0015】
また、本発明において、前記測定具は、前記部材に取り付けるための取付部と、前記取付部から前記印刷媒体の側端位置に向かって延出された延出部とを備え、前記被検出部は、前記延出部の前記印刷媒体の側端側に取り付けられ、前記印刷媒体の側端に平行であって、前記印刷媒体の面に垂直な端面を有することが好ましい(請求項5)。
【0016】
取付部から延出された延出部に取り付けられた被検出部は、印刷媒体の側端に平行であって、印刷媒体の面に垂直な端面を有するので、被検出部の位置を正確に示すことができる。したがって、変位前側端位置情報及び変位後側端位置情報を精度よく検出できる。
【0017】
また、本発明において、前記取付部は、前記部材に吸着させて取り付けるための磁石を備え、前記側端検出部は、投光部と受光部とを備え、前記印刷媒体の側端位置であって、前記印刷媒体の面に垂直な方向に前記投光部と前記受光部とを対向させた状態でステーにより前記部材に連結されているとともに、前記延出部は、前記ステーに当接して前記被検出部の端面が前記印刷媒体の側端に平行となるように位置決めする位置決め部を備えていることが好ましい(請求項6)。
【0018】
延出部の位置決め部をステーに当接させることにより、被検出部の端面が印刷媒体の側端位置と平行になるように位置決めできる。したがって、磁石の吸着で取り付ける場合であっても、測定具の部材への取付具合によって被検出部の姿勢にバラツキが生じることがないので、変位前側端位置情報及び変位後側端位置情報の繰り返し測定精度を高くできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る印刷装置によれば、側端検出部の配置位置情報を基準値として基準値記憶部に記憶させ、側端検出部の配置位置が変位する前に、測定具の被検出部を側端検出部によって検出し、これを変位前側端位置情報として変位前側端位置情報記憶部に記憶する。また、側端検出部の配置位置が変位した後に、測定具の被検出部を側端検出部によって検出し、これを変位後側端位置情報記憶部に変位後側端位置情報として記憶する。制御部は、変位前側端位置情報と変位後側端位置情報との差分を基準値に加算し、基準値記憶部の基準値を更新する。印刷部による印刷の際には、制御部は、更新された基準値に基づいて印刷位置の補正を行う。基準値は、側端検出部の位置のズレが補正されている。したがって、側端検出部の配置位置が変位しても、側端検出部の配置位置のズレに応じて基準値を更新するので、印刷媒体の側端からの印刷開始位置を一定化する印刷位置補正を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例に係るインクジェット印刷装置の全体を示す概略構成図である。
図2】インクジェットヘッドの周辺の平面図である。
図3】側端検出部による印刷位置の補正の説明に供する図である。
図4】側端検出部及びその周辺を示す斜視図である。
図5】測定具の平面図である。
図6】測定具の側面図である。
図7】印刷処理の動作を示すフローチャートである。
図8】測定具の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
図1は、実施例に係るインクジェット印刷装置の全体を示す概略構成図であり、図2は、インクジェットヘッドの周辺の平面図である。
【0022】
実施例に係るインクジェット印刷システム1は、インクジェット印刷装置3と、給紙部5と、排紙部7とを備えている。
【0023】
インクジェット印刷装置3は、シート状の連続紙WPに印刷を行う。給紙部5は、連続紙WPのロールを水平軸周りに回転可能に保持し、連続紙WPのロールから連続紙WPを巻き出してインクジェット印刷装置3に対して供給する。排紙部7は、インクジェット印刷装置3で印刷された連続紙WPを水平軸周りに巻き取る。連続紙WPの供給側を上流とし、連続紙WPの排紙側を下流とすると、給紙部5はインクジェット印刷装置3の上流側に配置され、排紙部7はインクジェット印刷装置3の下流側に配置されている。
【0024】
なお、インクジェット印刷装置3が本発明における「印刷装置」に相当し、連続紙WPが「印刷媒体」に相当する。
【0025】
インクジェット印刷装置3は、給紙部5からの連続紙WPを取り込むための駆動ローラ9を上流側に備えている。駆動ローラ9によって給紙部5から巻き出された連続紙WPは、回転自在の搬送ローラ11等に沿って下流側の排紙部7に向かって搬送される。排紙部7の上流側には、駆動ローラ13が配置されている。この駆動ローラ13は、印刷されて検査された連続紙WPを排紙部7に対して送り出す。
【0026】
インクジェット印刷装置3は、機能に応じて複数個のユニットに分割し、複数個のユニットを連結して構成されている。本実施例では、インクジェット印刷装置3は、入り口ユニット3aと、第1印刷ユニット3bと、第2印刷ユニット3cと、第2印刷ユニット3cと、乾燥ユニット3dと、出口ユニット3eとの5個のユニット3a〜3eから構成されている。
【0027】
入り口ユニット3aには、駆動ローラ9と、エッジ位置制御部15と、駆動ローラ17とが設けられている。第1印刷ユニット3bには、インク滴を吐出するインクジェットヘッド19a、19bが設けられている。第2印刷ユニット3cには、インク滴を吐出するインクジェットヘッド19c、19dが設けられている。乾燥ユニット3dには、連続紙WPに当接し、インク滴を乾燥させるヒートドラム21が設けられている。出口ユニット3eには、検査部23と、駆動ローラ13とが設けられている。
【0028】
なお、本実施例では、インクジェット印刷装置3を5個のユニット3a〜3eで構成しているが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。上述したインクジェットヘッド19a〜19dが本発明における「印刷部」に相当する。
【0029】
連続紙WPは、駆動ローラ9と、エッジ位置制御部15と、駆動ローラ17と、インクジェットヘッド19a〜19eと、ヒートドラム21と、検査部23と、駆動ローラ13の順に搬送される。エッジ位置制御部15は、連続紙WPが搬送方向と直交する方向へ蛇行すると自動で調整し、連続紙WPが正しい位置に搬送されるように制御する。但し、完全に蛇行を防止できないので、後述するように連続紙WPの側端が連続紙WPの幅方向に移動する。駆動ローラ17は、一定速度で回転し、他の駆動ローラ9,13及びヒートドラム21の回転数の基準となる。
【0030】
駆動ローラ9,13,17には、個別にニップローラ25が回転可能に設けられている。ニップローラ25は、連続紙WPの搬送力を与えている。ニップローラ25による押圧力は、例えば、エアシリンダ(不図示)で付与される。ニップローラ25は、例えば、ゴムなどの弾性体で構成される。
【0031】
インクジェットヘッド19a〜19dは、複数個の搬送ローラ11に沿って形成された搬送部27に沿って配置されている。各インクジェットヘッド19a〜19dは、上流側から順に、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインク滴を吐出する。したがって、このインクジェット印刷装置3は、4色印刷が可能になっている。
【0032】
ヒートドラム21は、インクジェットヘッド19a〜19dによって連続紙WPに付着しているインク滴を加熱して乾燥させる。ヒートドラム21は、ヒータを内蔵し、回転駆動する。検査部23は、印刷された部分に汚れや抜け等がないかを検査する。検査後の連続紙WPは、排紙部7にロール状に巻き取られる。
【0033】
上述した各インクジェットヘッド19a〜19dの上流側にあたる位置であって、搬送27に沿った位置には、それぞれ一個ずつの側端検出部29が配置されている。この側端検出部29は、連続紙WPの側端位置(搬送方向と直交する方向の端縁)を検出する機能を有する。各側端検出部29は、各インクジェットヘッド19a〜19dや搬送ローラ11等が取り付けられ、搬送部27を構成している側板31に取り付けられている。各側端検出部29は、対応する各インクジェットヘッド19a〜19dとの位置関係が精度良く取り付けられている。但し、各側端検出部29は、連続紙WPの紙粉が付着すると連続紙WPの側端位置検出精度が低下するので、定期メンテナンスを行う必要がある。その際には、定期メンテナンスの作業者が側端位置検出部29に触れると、その位置が連続紙の幅方向(搬送方向と直交する方向)に対して意図しない変位が生じることがある。側端位置検出部29は、連続紙WPの搬送方向と直交する印刷領域の端部と、連続紙WPの側端との間隔を決定するために用いられる。
【0034】
ここで、連続紙WPの側端と印刷領域の端部との間隔を決定して印刷を行う印刷位置補正の具体的な例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は、側端検出部による印刷位置の補正の説明に供する図であり、図4は、側端検出部及びその周辺を示す斜視図である。ここでは、一例として、インクジェットヘッド19aを例にとって説明するが、他のインクジェットヘッド19b〜19dでも同様である。
【0035】
まず、側端検出部29の配置位置情報を基準値として記憶する。基準値として記憶させるタイミングは、例えば、装置の組み立て時やユーザへの装置の搬入時など、製品としての印刷物の印刷を行う前である。この配置位置情報は、側端検出部29とインクジェットヘッド19aとの位置関係で規定される。例えば、図3の左に示すように、側板31に側端検出部29がステー33を介して正しく取り付けられた状態の場合の配置位置情報を「0」とし、これを基準値PSとする。そして、連続紙WPの側端位置を側端検出部29で検出した際に、その検出位置と、既知である側端検出部29とインクジェットヘッド19aとの位置関係に基づいて、連続紙WPの印刷領域PAの端部と連続紙WPの側端との間が間隔SPとなるようなインクジェットヘッド19aのノズルNz(図3中の黒塗りした部分)を決め、連続紙WPにおける印刷領域PAの印刷位置補正を行いつつ印刷を実行する。例えば、図3の右に示すように、連続紙WPの側端位置が平面視で搬送方向における左側に移動した場合には、その移動量に応じて側端検出部29による検出位置が移動するので、それに応じて印刷領域PAの端部で印刷するノズルNz(図3中で黒塗りしア部分)をずらすように印刷位置補正を行う。その結果、連続紙WPの印刷領域PAの端部と連続紙WPの側端との間隔SPが一定化される。
【0036】
なお、上述した側端検出部29は、例えば、図4に示すように連続紙WPの側端の上下に離間して配置された投光部29aと受光部29bとを有し、連続紙WPの側端に接触せずに側端の位置検出が可能な非接触透過型光センサであることが好ましい。これらの投光部29aと受光部29bは、ステー33によって連続紙WPの上方と下方とに離間して対向配置され、ステー33によって側板31に取り付けられている。投光部29aと受光部bとは、光軸が連続紙WPの面に垂直になるようにステー33で固定されている。なお、この側端検出部29によって連続紙WPの側端が検出できるのは、検出領域DAに側端が位置している場合だけである。なお、側端検出部29は、ステー33で取り付けられているものの、作業者が手などで触れると、連続紙WPの幅方向に位置がずれることがある。
【0037】
次に、上述した図4に加え、図5及び図6を参照して、測定具JGについて説明する。なお、図5は、測定具の平面図であり、図6は、測定具の側面図である。
【0038】
測定具JGは、後述する変位前側端位置情報と変位後側端位置情報とを測定するために用いられるものである。具体的な構成としては、取付部35と、延出部37と、被検出部39とを備えている。
【0039】
取付部35は、磁石41を備え、この磁石41の磁力で側板31側に取り付けられている。磁石41は、測定具JG全体を安定して側板31に固定できるだけの磁力を有し、必要な時だけ測定具JGを側板31に取り付けることができ、不要なときは測定具JGを取り外しておくことができる。磁力で測定具JGを着脱自在としているので、設計時に測定具JGを取り付けることを考慮していなかった装置にも測定具JGを容易に取り付けることができる。
【0040】
延出部37は、取付部35を挟んで側板31の反対面に基端部が取り付けられている。延出部37は、補強部43と、位置決め部45とを備えている。補強部43は、延出部37の剛性を高めるために形成されている。位置決め部45は、被検出部39の端面が連続紙WPの側端と平行となるように位置を決めるため、側端検出部29のステー33に当接される。延出部37が補強部43を備えている関係上、撓むことがないので、延出部37の先端部が取付部35よりも下がることがない。したがって、被検出部39の位置を安定的に維持できる。また、側端検出部29のステー33に位置決め部45を当接させるので、平面視で測定具JGが搬送方向にぶれることがない。したがって、測定具JGが磁石41の吸着で着脱させる取り付ける構成であっても、測定具JGの側板31への取付具合によって被検出部39の姿勢にバラツキが生じることがないので、変位前側端位置情報及び変位後側端位置情報の繰り返し測定精度を高くできる。
【0041】
被検出部39は、薄板状であって平面視L字状を呈し、側端検出部29による検出領域DAに端面EGが位置するように、延出部37の先端側に取り付けられている。また、被検出部39は、端面EGの長手方向が連続紙WPの側端に平行に、かつ、端面EGの長手方向に直交する方向が連続紙WPの面に垂直な方向に位置するように、延出部37の先端側に取り付けられている。被検出部39は、平面視における端面EGの位置が、連続紙WPの側端が移動する可能性がある側端位置の範囲のうち、隣接している側板31に近い側端位置よりも側板31に近くなるように、延出部37への取付がなされている。被検出部39は、延出部37の長手方向に長軸を有する長穴47によって延出部37の先端側にネジ止めされている。したがって、被検出部39は、延出部37の長手方向(連続紙WPの幅方向)に端面EGの位置を微調整することができる。端面EGの位置は、図4及び図5に示すように、連続紙WPの側端との距離がオフセットOVだけずらされている。このオフセットOVは、連続紙WPの側端位置によって異なるが、連続紙WPの側端位置が標準的な位置にある場合には、例えば、2mm程度である。これにより、後述するように測定具JGを取り付けて変位前側端位置情報と変位後側端位置情報とを測定する際に、連続紙WPを取り去ったり、連続紙WPの一部を破ったりする必要がないので、測定作業を容易に行うことができる。
【0042】
なお、上述した被検出部39は、つや消しの黒色で塗装されていることが好ましい。これにより、側端検出部29からの光照射が乱されないので、被検出部39の位置を正確に検出できる。また、被検出部39の端面EGは、連続紙WPの側端に平行であって、連続紙WPの面に垂直な端面を有するので、被検出部39の位置を正確に示すことができる。したがって、被検出部39の端面EGを精度よく検出できる。
【0043】
ここで図1に戻る。上述したインクジェット印刷装置3と、給紙部5と、排紙部7とは、主制御部49で統括的に制御される。主制御部49は、制御部51と、基準値記憶部53と、変位前側端位置情報記憶部55と、変位後側端位置情報記憶部57とを備えている。
【0044】
制御部51は、駆動ローラ9,13,17の回転駆動を制御し、ヒートドラム21の温度制御を行い、検査部23による検査を制御する。また、制御部51は、各側端検出部29の配置位置情報を基準値PSとして基準値記憶部45に記憶させる。さらに、各側端位置検出部29の変位前となる定期メンテナンス等の前に、測定具JGをセットした状態で変位前側端位置情報PBIを変位前側端位置情報記憶部47に記憶させ、各側端位置検出部29の変位後となる定期メンテナンス等の後に、測定具JGをセットした状態で変位後側端位置情報PAIを変位後位置情報記憶部39に記憶させる。制御部51は、変位前側端位置情報PBIと変位後側端位置情報PAIの差分を基準値PSに加算して基準値PSを更新する。印刷の際には、基準値PSに基づいて側端における印刷位置の補正を行いつつ、インクジェットヘッド19a〜19dからインク滴を吐出させて印刷を行わせる。
【0045】
次に、図7を参照して、上述したインクジェット印刷システム1における印刷位置補正処理を伴う印刷処理について説明する。なお、図7は、インクジェット印刷システムにおける印刷処理の動作を示すフローチャートである。
【0046】
ステップS1
製品となる印刷物の印刷処理を実施する前に、基準値PSを基準値記憶部45に記憶させる。
【0047】
ステップS2
制御部51は、側端検出部29によって連続紙WPの側端位置を検出した後、この検出した側端位置と基準値PSとに基づいて連続紙WPの側端における印刷位置を補正しつつ印刷処理を行う。
【0048】
ステップS3
例えば、定期メンテナンスを実施するか否かで処理を分岐する。実施する場合には、ステップS4に処理を移行する一方、実施しない場合には、ステップS2に戻って印刷処理を行う。
【0049】
ステップS4
定期メンテナンスを行う前に、制御部51は、変位前側端位置情報PBIを測定して変位前側端位置情報記憶部55に記憶させる。その際には、測定具JGを側板31に取り付けた状態で変位前側端位置情報PBIを測定する。
【0050】
なお、このステップS4は、ステップS2の前に実行するようにしてもよい。
【0051】
ステップS5
定期メンテナンスを実施する。このとき、側端検出部29の配置位置が連続紙WPの幅方向に変位することがある。
【0052】
ステップS6
定期メンテナンスを行った後に、制御部51は、変位後側端位置情報PAIを変位後側端位置情報記憶部57に記憶させる。その際には、測定具JGを側板31に取り付けた状態で変位後側端位置情報PAIを測定する。
【0053】
なお、測定具JGは、ステップS4で取り付けたままでステップS6において測定を行うようにしてもよい。その場合には、測定具JGの被検出部39が連続紙WPに接触しない高さ位置に測定具JGを取り付けるようにすればよい。
【0054】
ステップS7
制御部51は、変位前側端位置情報PBIと変位後側端位置情報PAIとの差分を基準値PSに加算して基準値PSを更新し、新たな基準値PSとして基準値記憶部53に記憶させる。
【0055】
ステップS8
制御部51は、印刷処理の有無に応じて処理を分岐する。印刷処理がある場合には、ステップS2に戻って印刷処理を行う。このとき印刷位置補正は、更新された基準値PSに基づいて行われる。一方、印刷処理がない場合には、処理を終了する。
【0056】
本実施例によると、側端検出部29の配置位置情報を基準値PSとして基準値記憶部53に記憶させ、側端検出部29の配置位置が変位する前に、測定具JGの被検出部39を側端検出部29によって検出し、これを変位前側端位置情報PBIとして変位前側端位置情報記憶部55に記憶する。また、側端検出部29の配置位置が変位した後に、測定具JGの被検出部39を側端検出部29によって検出し、これを変位後側端位置情報記憶部57に変位後側端位置情報PAIとして記憶する。制御部51は、変位前側端位置情報PBIと変位後側端位置情報PAIとの差分を基準値PSに加算し、基準値記憶部53の基準値PSを更新する。インクジェットヘッド19a〜19dによる印刷の際には、制御部51は、更新された基準値PSに基づいて印刷位置の補正を行う。基準値PSは、側端検出部29の位置のズレが補正されている。したがって、側端検出部29の配置位置が変位しても、側端検出部29の配置位置のズレに応じて基準値PSを更新するので、連続紙WPの側端からの印刷開始位置を一定化する印刷位置補正を正確に行うことができる。
【0057】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0058】
(1)上述した実施例では、測定具JGを磁石41で側板31に着脱自在としているが、本発明はこの形態に限定されない。例えば、図8の変形例に示すように、測定具JGaの取付部35に少なくとも水平方向に二箇所の突起部61を設け、側板31にその突起部61の外径に対応した内径を有する係合穴63を設けた構成としてもよい。これにより磁石41に比較して強固に固定できて姿勢変化がないので、測定精度を向上できる。
【0059】
(2)上述した実施例では、搬送部27を構成する部材として側板31に測定具JGを取り付けるようにしたが、本発明はこの形態に限定されない。本発明は、インクジェットヘッド19a〜19dとの位置関係が既知であって、基準となるものであれば、側板31以外に測定具JGを取り付けるようにしてもよい。
【0060】
(3)上述した実施例では、上述した実施例では、印刷装置としてインクジェット印刷装置3を例にとって説明したが、本発明はインクジェット印刷装置3に限定されるものではなく、レーザ式などの他の方式のものにも適用できる。
【0061】
(4)上述した実施例では、側端検出部29として非接触透過型光センサを採用しているが、反射型光センサや超音波センサなど、印刷媒体の側端位置を検出できるものであればどのようなセンサであってもよい。
【0062】
(5)上述した実施例では、印刷媒体として連続紙WPを例にとって説明したが、本発明はこの印刷媒体に限定されるものではない。例えば、フィルムなどの印刷媒体であっても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 … インクジェット印刷システム
3 … インクジェット印刷装置
5 … 給紙部
7 … 排紙部
19a〜19d … インクジェットヘッド
27 … 搬送部
29 … 側端検出部
29a … 投光部
29b … 受光部
31 … 側板
33 … ステー
PS … 基準値
PA … 印刷領域
SP … 間隔
Nz … ノズル
JG、JGa … 測定具
35 … 取付部
37 … 延出部
39 … 被検出部
41 … 磁石
43 … 補強部
45 … 位置決め部
DA … 検出領域
51 … 制御部
53 … 基準値記憶部
55 … 変位前側端位置情報記憶部
57 … 変位後側端位置情報記憶部
PBI … 変位前側端位置情報
PAI … 変位後側端位置情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8