(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、電気温水器に用いられる貯湯タンクにおいて、貯湯タンク本体にはヒーター挿入孔が形成され、該挿入孔からヒーター固定板に支持されたヒーターが貯湯タンク本体の内部に挿入される。ヒーター挿入孔の周囲に溶接されたネジ(ヒーター取付ネジ)に、ヒーター固定板に形成されたネジ孔(ヒーター取付孔)が挿通された状態でナットが締結されることで、ヒーターは貯湯タンクに固定される。
【0003】
ここで、電気温水器で使用する水の水圧が高い場合、ヒーター取付ネジの溶接部分に過度の力が加わる場合がある。この場合、ヒーターによる水の沸かし上げの繰り返しにより金属疲労が生じ、ヒーター取付ネジの溶接部分に亀裂が入り、貯湯タンクから漏水してしまう場合がある。特に、電気温水器に用いられる貯湯タンクは、貯湯タンク本体の母材が薄いため、ヒーター取付ネジの溶接部分に亀裂が入りやすい傾向にある。
【0004】
図7を用いて、より詳細に説明する。
図7は、従来の貯湯タンクを、ヒーター取付ネジにおいてヒーター固定板と垂直な方向に切断した拡大断面図である。
貯湯タンク本体110にヒーター固定板120を固定する際には、ヒーター取付孔121に、ヒーター取付ネジ111を挿通させて、ヒーター取付ネジ111にナット130をワッシャ140を介して締結させる(
図7(a))。この際に、更にナット130を強く締めこむと、ヒーター取付ネジ111の溶接部分がヒーター取付ネジ111の軸方向に引っ張られて、ヒーター取付ネジ111の溶接部分に応力がかかる(
図7(b))。ナット130を強く締めこむことで応力のかかる溶接部分は、電気温水器で使用する水の水圧が高い場合に応力がかかる部分でもあり、金属疲労によって亀裂が生じやすい。従って、ヒーター取付ネジ111へのナット130の締結においては、厳密なトルク管理が必要となり、ヒーター固定板120を貯湯タンク本体110に取り付ける際の作業工程が煩雑になる。
【0005】
このような問題に対して、貯湯タンク本体の母材を厚くすることで貯湯タンク全体を補強する対策や、ヒーター挿入孔を小さくすることでヒーター固定板の受圧面積を小さくしてヒーター取付ネジの溶接部分にかかる応力負荷を低減する対策が取られている。
【0006】
また、応力が集中する、貯湯タンク本体のヒーター取付ネジが溶接された部分の周辺にビードを形成することで補強する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。更に、環状の平板に複数のヒーター取付ネジを溶接し、この平板を貯湯タンク本体に溶接して固定することでヒーター取付ネジ周辺を補強した上で、ヒーター固定板をナットで固定する技術も知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、
図1により、貯湯タンク30を有する電気温水器1について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る貯湯タンク30を有する電気温水器1の透過斜視図である。
【0019】
図1に示すように、電気温水器1は、給水口25及び同圧給水口213を有する給水部2と、貯湯タンク30を有する貯湯部3と、給湯口43を有する給湯部4と、膨張水排出口53を有する膨張水排出部5と、略直方体状のケーシング6と、を備える。本実施形態における電気温水器1は、小型の電気温水器である。
【0020】
電気温水器1では、給水口25に接続される水道管から供給される水は、減圧弁22で減圧された後、2方に分岐される。この分岐の一方が同圧給水口213から外部に供給され、他方が貯湯部3に供給される。貯湯部3で加熱された水は、湯として貯湯タンク30に貯留される。貯湯タンク30に貯留された湯が給湯口43から外部に給湯される。また、電気温水器1は、貯湯部3において加熱の際に生じる膨張水を、膨張水排出部5の膨張水排出口53から外部に排出する。
【0021】
後段で
図2を参照して詳述するように、減圧弁22で減圧された水が、同圧給水口213から同圧給水管73を通して水栓金具7の水側に供給される。また、貯湯タンク30に貯留された湯が、給湯口43から出湯管74を通して水栓金具7の湯側に供給される。水栓金具7では、水側に供給された水と、湯側に供給された湯との混合比を内部の湯水混合弁で調節することにより所望の湯温の出湯が得られる。
【0022】
給水部2は、給水口25を有する管継手21と、減圧弁22と、第1給水管23と、第1分岐部221と、同圧給水口213を有する管継手210と、第2給水管24と、を有する。管継手21は、ケーシング6の上面に設けられる。減圧弁22は、圧力調整弁(レギュレータ)である。
【0023】
後段で
図2を参照して詳述するように、止水栓72から直圧給水管71を通して、水道水が管継手21の給水口25に供給される。給水口25に供給された相対的に高圧の水道水は、減圧弁22で低圧に調節されて第1給水管23側に流出する。
【0024】
減圧弁22の出口側に一端が接続された第1給水管23は、水平方向右向き、即ちX2方向に延びて分岐管である第1分岐部221に至る。第1分岐部221は、入口に第1給水管23の他端が接続され、一方の出口に第2給水管24が接続され、他方の出口に管継手210が接続される。
【0025】
第2給水管24は、下方、即ちZ1方向に延びて、ケーシング6の下部に至った位置からX1方向にRを描いて曲り、更にX1方向に延びている。X1方向に延びた第2給水管24の延長端には、ケーシング6のX1側の側面に露呈するようにして水抜き栓411が設けられる。
また、第2給水管24の延長端の近傍には、ケーシング6のX1側の側面に一部が露呈するようにして、後述する逃がし弁52が設けられる。
【0026】
上述した第2給水管24のR部の近傍には、この第2給水管24からの分岐管である第2分岐部222が設けられる。第2分岐部222は、第2給水管24から分岐して、ケーシング6の奥行方向、即ちY2方向に延びている。第2分岐部222の延長端は、L型に曲がった継手30aを介して貯湯タンク本体31の貯湯タンク給水口315に接続される。これにより、減圧弁22で減圧された水が、第1給水管23及び第2給水管24を通して貯湯タンク給水口315から貯湯タンク本体31に給水される。
【0027】
一方、第1分岐部221の他方の出口に接続された管継手210の上方、即ちZ2方向には、側周面に配管接続用のネジが形成された同圧給水口213が開口している。この同圧給水口213には、後段で
図2を参照して詳述するように同圧給水管73が接続される。これにより、減圧弁22で減圧され、第1給水管23を通して第1分岐部221から管継手210の同圧給水口213に至る水が、同圧給水管73を通して水栓金具7の水側に供給される。
【0028】
貯湯部3は、貯湯タンク30を有する。貯湯タンク30は、貯湯タンク本体31と、ヒーター32と、を有する。貯湯タンク30では、第2給水管24から第2分岐部222及び継手30aを経て貯湯タンク給水口315から貯湯タンク本体31の内部に供給された水がヒーター32により温められ、給湯部4の給湯口43から排出される。
【0029】
貯湯タンク本体31は、底面及び上面が水平方向に向くように配置された薄型の略円筒形状の薄肉のタンクである。貯湯タンク本体31は、内部空間39を有し、貯湯タンク給水口315と、第1配管81の端部に形成される貯湯タンク給湯口316と、を備える。
【0030】
内部空間39は、貯湯タンク本体31下部側の貯湯タンク給水口315から供給される水を貯める空間であると共に、ヒーター32により加熱された湯を貯める空間である。
【0031】
貯湯タンク本体31上部側の貯湯タンク給湯口316は、環状面31aにおける上方に形成される第1配管81の端部に形成される。第1配管81は、後述する配管接続構造8において第2配管82と接続される。第2配管82の上方は側周面に配管接続用のネジが形成された給湯口43が開口している。
【0032】
貯湯タンク給湯口316、第1配管81、及び給湯口43を有する第2配管82等が上述の給湯部4を構成している。
給湯口43には、後段で
図2を参照して詳述するように出湯管74が接続される。これにより、貯湯タンク本体31の内部空間39に貯められた湯が、第1配管81、第2配管82及び出湯管74を通して、水栓金具7の湯側に供給される。
【0033】
ヒーター32は、貯湯タンク本体31の内部空間39に収容配置される。ヒーター32は、ヒーター挿入孔(不図示)を介して外部から内部空間39に挿入配置される。ヒーター32は、内部空間39内の水を加熱する。ヒーター32は、ヒーターパイプで構成される。ヒーター32は、U字状に形成されたヒーターパイプであって、所定位置で屈曲されて形成される。
【0034】
貯湯タンク本体31には、図示しない温度調節器及び温度過昇防止器が設けられる。これら温度調節器及び温度過昇防止器は、貯湯タンク本体31内の水を適切な温度に昇温させ、且つ、過昇温を防止する。
なお、第2給水管24の末端の水抜き栓411は、メンテナンスや凍結防止のために貯湯タンク本体31内の水を抜く際に用いられる。
【0035】
膨張水排出部5は、貯湯タンク本体31の水を加熱することによって膨張した膨張水を排出するために設けられる。膨張水排出部5は、膨張水排出管51と、逃がし弁52と、膨張水排出口53と、を有する。
【0036】
逃がし弁52は安全弁であり、貯湯タンク本体31下方における既述の第2給水管24の末端近傍に設けられる。逃がし弁52は、その入口側の第2給水管24の圧力、従って、貯湯タンク本体31の内圧が所定圧を超えると開弁して、その出口側の膨張水排出管51に膨張水を排出する。貯湯タンク本体31の内圧が所定圧以下になると閉弁状態に復帰する。
なお、逃がし弁52は、ケーシング6の外側に設けられたテストピン521を備え、メンテナンス時にはこのテストピン521を操作することで強制的に開閉可能となっている。
【0037】
膨張水排出管51は、逃がし弁52の出口側に一端側が接続され、他端側が膨張水排出口53に連なる一種のホースである。
膨張水排出口53は、ケーシング6の上面に設けられ、その開口は略水平方向に向いている。膨張水排出口53の下流側には、後述する排水器具76に接続された膨張水排出ホース75が接続される。これにより、ヒーター32による加熱の際に生じた膨張水が、外部に排出される。
貯湯タンク30については、後段で詳述する。
【0038】
続けて、
図2により、電気温水器1の使用状態を説明する。
図2は、本実施形態に係る電気温水器1の使用状態を示す図である。
図2に示すように、電気温水器1は、水栓金具7が設けられた洗面器70の下方に配置される。このように、電気温水器1は、狭い空間に据え置き又は壁掛け固定されて使用される。また、電気温水器1は、壁コンセント9に電源コード90を接続し、ケーシング6の前面に設けられた電源スイッチ(不図示)をONすることで運転状態になる。
【0039】
電気温水器1の同圧給水口213に一端側が接続された同圧給水管73の他端側は、水栓金具7の水側(
図2において右側の入口)に接続される。同圧給水管73は、同圧給水口213から略鉛直に立ち上がった後、斜め右上方に延びて、再び略鉛直に延びて水栓金具7の水側に至る。この同圧給水管73には、減圧弁22により減圧された水が流通する。
【0040】
電気温水器1の給湯口43に一端側が接続された出湯管74の他端側は、水栓金具7の湯側(
図2において左側の入口)に接続される。出湯管74は、給湯口43から略鉛直に立ち上がった後、斜め右上方に延びて水栓金具7の湯側に至る。この出湯管74から水栓金具7の湯側に湯が供給される。
【0041】
水栓金具7は、例えば、シングルレバー式の湯水混合栓であり、内部に図示しない湯水混合弁を有する。湯水混合弁は、上述のように水栓金具7の水側と湯側とにそれぞれ供給される水と湯との混合比を、調節レバーの操作角度に応じて調節することにより、適温に調整された温水を吐出口7aから吐出する。
【0042】
膨張水排出口53には、後述する排水器具76に接続された膨張水排出ホース75が接続される。膨張水排出ホース75は、膨張水排出口53から略鉛直方向(
図2では上方向)に延びた後、斜め右方に延び、更に略水平方向(
図2では右方向)に延びて排水器具76に至る。この膨張水排出ホース75には、貯湯タンク本体31でヒーター32による加熱の際に生じた膨張水が流通する。
【0043】
排水器具76の下流側は、洗面器70の下部に設けられた排水管77に接続される。排水器具76の内部には、トラップ式の封水部76aが設けられる。この封水部76a内の封水により、排水管77の下流側に接続された下水管内の臭気が上昇して室内に入り込むのが防止される。
【0044】
続けて、
図3から
図5により、本実施形態に係る貯湯タンク30について説明する。
図3は、本実施形態に係る貯湯タンクの斜視図であり、
図1の貯湯タンクを矢視Aから視た図である。
図4は、本実施形態に係る貯湯タンクの拡大分解斜視図である。
図5は、本実施形態に係る貯湯タンクの斜視図であり、
図3の貯湯タンクを矢視Bから視た図である。
図3に示すように、貯湯タンク30は、貯湯タンク本体31と、ヒーター取付け部310と、ヒーター32と、ヒーター固定板33と、押さえ板40と、を備える。
【0045】
図3及び
図4に示すように、貯湯タンク本体31は、底面及び上面が水平方向に向くように配置された薄型の略円筒形状の薄肉のタンクである。貯湯タンク本体31は、内部空間39と、貯湯タンク給水口315と、貯湯タンク給湯口316と、ヒーター挿入孔311と、溝部314と、を備える。
【0046】
内部空間39は、給水口からの水を貯める空間であると共に、ヒーター32により加熱された水(湯)を貯める空間である。
貯湯タンク給水口315は、円筒形状の側面である環状面31aにおける下方側に形成される。貯湯タンク給水口315は、第2分岐部222に接続される。貯湯タンク給水口315を介して、第2分岐部222からの水が内部空間39に給水される。
貯湯タンク給湯口316は、環状面31aにおける上方に形成される。貯湯タンク給湯口316は、出湯管74に接続される。貯湯タンク給湯口316を介して、内部空間39に貯湯された湯が出湯管74に給湯される。
【0047】
ヒーター挿入孔311は、外部空間と内部空間39とを連通させる孔部である。ヒーター挿入孔311は、ヒーター32を外部から内部空間39に挿入配置するために形成される孔部である。ヒーター挿入孔311は、ヒーター32を挿入することが可能な大きさに形成され、本実施形態においては水平方向に伸びる長孔である。ヒーター挿入孔311は、円筒形状の側面である環状面31aにおける下方側に形成される。
【0048】
溝部314は、貯湯タンク本体31の外面であってヒーター挿入孔311の周縁に形成される環状の溝部である。溝部314は、後述するヒーター取付け部310よりもヒーター挿入孔311の外縁に近い位置(内側)に形成される。溝部314には、Oリング34が収容配置される。溝部314に収容配置されたOリング34は、ヒーター固定板33と共に、ヒーター挿入孔311を封止する。
【0049】
図3及び
図4に示すように、ヒーター取付け部310は、ネジ部312と、ネジ部312の一端側に形成されネジ部312よりも径が大きい鍔部313とを有する。ヒーター取付け部310は、鍔部313側の端部が貯湯タンク本体31の外面におけるヒーター挿入孔311の周辺に溶接される。本実施形態において、4つのヒーター取付け部310がヒーター挿入孔311の外側に溶接される。上述のように、4つのヒーター取付け部310は、溝部314の外側に溶接される。
【0050】
ネジ部312は、後述する押さえ板40に形成されるネジ孔431に挿通されると共に、ナット35が螺合係合(締結)される。
鍔部313は、上述の通り、ネジ部312の一端側に形成され、ネジ部312よりも径が大きい部分である。鍔部313は、ネジ部312の軸方向において所定高さの薄型の円筒形状の部分である。鍔部313は、ネジ部312側の面である受け部313aを有する。受け部313aは、平面視で円形である。受け部313aは、貯湯タンク本体31の外面から所定距離だけ離間して配置される。
【0051】
図3及び
図4に示すように、ヒーター32は、貯湯タンク本体31の内部空間39に収容配置される。ヒーター32は、ヒーター挿入孔311を介して外部から内部空間39に挿入配置される。ヒーター32は、内部空間39内の水を加熱する。
ヒーター32は、ヒーターパイプで構成される。ヒーター32は、U字状に形成されたヒーターパイプであって、所定位置で屈曲されて形成される。また、ヒーター32は、貯湯タンク本体31の外部に配置される端部321,321を有する。ヒーター32は、端部321,321において図示しない電源に接続される。ヒーター32は、通電されることにより昇温され、貯湯タンク本体31内の水を加熱する。
【0052】
図3及び
図4に示すように、ヒーター固定板33は、ヒーター32を支持して固定する固定板である。ヒーター固定板33は、矩形板状である。ヒーター固定板33は、長手方向(本実施形態において水平方向)に並ぶ2箇所においてヒーター32に貫通される。ヒーター固定板33は、ヒーター32と、溶接もしくはろうづけされることによって一体化される。
ヒーター固定板33の厚さは、ヒーター取付け部310における鍔部313の高さと同じか少し厚くなるよう形成される。即ち、ヒーター固定板33の厚さは、ネジ部312の軸方向における鍔部313の高さに対して、同等以上である。
【0053】
ヒーター固定板33は、ヒーター挿入孔311を封止する。詳細には、ヒーター固定板33は、上述のOリング34と共に、ヒーター挿入孔311を封止する。
また、ヒーター固定板33は、鍔部313におけるネジ部312側の面である受け部313aに当接しないように配置される。
【0054】
ヒーター固定板33は、3つの第2位置決め部335a、335b、336を有する。本実施形態において、第2位置決め部335a、335bは、ヒーター固定板33の垂直方向上側に、水平方向に並んで形成される。第2位置決め部335a、335bは、円状の孔部である。第2位置決め部335a、335bは、後述する押さえ板40に形成される第1位置決め部405a、405bに係合され、ヒーター32の位置を規定する。
【0055】
第2位置決め部336は、垂直方向下側に配置される水平方向に長い長孔である。第2位置決め部336は、後述する押さえ板40に形成される第1位置決め部406に係合され、ヒーター32の位置を規定する。
ここで、ヒーター固定板33の垂直方向上側に2つの円状の第2位置決め部335a、335bが形成され、垂直方向下側に1つの長孔状の第2位置決め部336が形成されているので、後述する押さえ板40に対する上下の向きを間違えて配置されることも抑制される。
【0056】
図3から
図5に示すように、押さえ板40は、ヒーター固定板33を貯湯タンク本体31に位置決め固定する部材である。押さえ板40は、ヒーター固定板33における貯湯タンク本体31と反対側に配置される。本実施形態において、押さえ板40は、樹脂製である。
【0057】
押さえ板40は、4つのネジ孔431と、3つの第1位置決め部405a、405b、406と、第3位置決め部407と、を備える。
押さえ板40は、4つのネジ部312それぞれに挿通される4つのネジ孔431を有する。ネジ孔431は、ヒーター固定板33の四方の角に形成される。押さえ板40は、ネジ孔431にネジ部312が挿通された状態においてネジ部312にナット35が締結された場合、ヒーター固定板33をヒーター挿入孔311側に押圧する。
これにより、押さえ板40により貯湯タンク本体31側に押圧固定されたヒーター固定板33は、ヒーター挿入孔311を封止する。また、これにより、ヒーター32は、内部空間39において固定される。
【0058】
また、押さえ板40は、ナット35が締結された場合、貯湯タンク本体31側の面におけるネジ孔431の周縁が鍔部313におけるネジ部312側の面である受け部313aに当接して配置される。
【0059】
第1位置決め部405a、405bは、押さえ板40の垂直方向上側に、水平方向に並んで形成される。第1位置決め部405a、405bは、円状の突部である。第1位置決め部405a、405bは、上述のヒーター固定板33に形成される第2位置決め部335a、335bに係合して、ヒーター32の位置を規定する。
【0060】
第1位置決め部406は、垂直方向下側に配置される水平方向に長い突部である。第1位置決め部406は、上述のヒーター固定板33に形成される第2位置決め部336に係合して、ヒーター32の位置を規定する。
【0061】
3つの第1位置決め部405a、405b、406は、ヒーター固定板33におけるネジ部312の軸方向に直交する平面方向における位置決めをする。ここで、押さえ板40の垂直方向上側に2つの円筒状の第1位置決め部405a、405bが形成され、垂直方向下側に1つの水平方向に長い突状の第1位置決め部406が形成されているので、上述するヒーター固定板33は、押さえ板40に対して上下の向きを間違えて配置されることも抑制される。
【0062】
第3位置決め部407は、押さえ板40における垂直方向下側の外縁から突出して形成される。第3位置決め部407は、押さえ板40が貯湯タンク本体31に対して正しい向きで取り付けられるようにするための部材である。本実施形態において、貯湯タンク本体31の外面には、押さえ板40と並んでセンサー410が配置されている。押さえ板40は、第3位置決め部407がセンサー410側に向いて配置される場合、第3位置決め部407がセンサー410に当接するよう形成される。第3位置決め部407は、押さえ板40の向き(
図5における上下の向き)が正しくない場合、センサー410に干渉して該押さえ板40が取り付けられないようにする部分である。
押さえ板40には、正しい位置及び向きでヒーター固定板33が位置決めされている。そして、押さえ板40は、第3位置決め部407により、正しい向きで貯湯タンク本体31に取り付けられる。これにより、ヒーター32は、正しい位置及び向きで内部空間39に配置される。
【0063】
貯湯タンク本体31には、図示しない温度調節器及び温度過昇防止器が設けられる。これら温度調節器及び温度過昇防止器は、貯湯タンク本体31内の水を適切な温度に昇温し、且つ、過昇温を防止する。
【0064】
続いて、
図6により、本実施形態に係る貯湯タンク30の、ネジ部312にナット35が締結された状態について、より詳細に説明する。
図6は、本実施形態に係る貯湯タンクの拡大断面図であり、貯湯タンクにおいてネジにナットが締結された状態について示す図である。
【0065】
図6に示すように、押さえ板40は、貯湯タンク本体31側におけるネジ孔431の周縁で鍔部313の受け部313aに当接している。また、ヒーター固定板33は、押さえ板40と貯湯タンク本体31の間に配置されると共に、押さえ板40により貯湯タンク本体31側に押圧されて配置される。
【0066】
鍔部313の受け部313aに押さえ板40が当接していることで、ナット35をネジ部312に締結させた際の応力が、鍔部313(受け部313a)に負荷される。これにより、ナット35をネジ部312部に締結させた際の応力が、ネジ部312が貯湯タンク本体31に溶接された箇所に直接印加されるのを防ぐことができる。なお、上述のように、ヒーター取付け部310は、ネジ部312及び鍔部313が一体の部材として構成されているので、鍔部313は溶接された箇所に比べて応力に対する耐性が強い。
【0067】
また、ヒーター固定板33と押さえ板40とは別部材で構成されているので、ヒーター固定板33からの力がヒーター取付け部310に直接的に及ぶことを抑制できる。
また、ヒーター固定板33は、押さえ板40とは別部材で構成されているので、貯湯タンク本体31側に接近配置されると共に、撓むことなく配置される。これにより、ヒーター挿入孔311に対する封止性が良好となる。
また、ヒーター固定板33が平板なので、その厚さを調整することで、押さえ板40、鍔部313、Oリング34の位置関係を簡易且つ高精度で調整することができる。
【0068】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
(1)本実施形態の貯湯タンク本体31は、貯湯可能な内部空間39を有し、外部空間と前記内部空間39とを連通させるヒーター挿入孔311が形成される貯湯タンク本体31と、ネジ部312と、前記ネジ部312の一端側に形成され前記ネジ部312よりも径が大きい鍔部313とを有し、前記鍔部313側の端部が前記貯湯タンク本体31の外面における前記ヒーター挿入孔311の周辺に溶接されるヒーター取付け部310と、前記ヒーター挿入孔311を介して前記内部空間39に挿入配置され、前記内部空間39内の水を加熱するヒーター32と、前記ヒーター32を支持して固定し、前記ヒーター挿入孔311を封止すると共に、前記鍔部313における前記ネジ部312側の面(受け部313a)に当接しないように配置されるヒーター固定板33と、前記ネジ部312に挿通されるネジ孔431を有し、前記ヒーター固定板33における前記貯湯タンク本体31と反対側に配置される押さえ板40と、を備え、押さえ板40は、前記ネジ孔431に前記ネジ部312が挿通された状態において前記ネジ部312にナット35が締結された場合、前記ヒーター固定板33を前記ヒーター挿入孔311側に押圧すると共に、前記ネジ孔431の周縁が前記鍔部313における前記ネジ部312側の面(受け部313a)に当接して配置される。
【0069】
これにより、押さえ板40におけるネジ孔431の周縁が鍔部313における受け部313aに当接して配置されるので、ナット35をネジ部312に締結させた際の応力が、鍔部313(受け部313a)に負荷される。また、これにより、ナット35をネジ部312に締結させた際の応力が、ネジ部312が貯湯タンク本体31に溶接された箇所に直接印加されるのを防ぐことができる。従って、貯湯タンク本体31の母材が薄い場合であっても、ネジ部312が貯湯タンク本体31に溶接された箇所における亀裂の発生を抑えることができる。また、鍔部313の設けられたネジ部材(ヒーター取付け部310)を貯湯タンク本体31の外面に溶接するだけでよいので、煩雑な製造工程を必要とせずに、溶接部分における亀裂の発生を十分に抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、ヒーター固定板33と押さえ板40とは別部材で構成されているので、ヒーター固定板33からの力がヒーター取付け部310に直接的に及ぶことを抑制できる。
【0071】
また、本実施形態によれば、ヒーター固定板33は、押さえ板40とは別部材で構成されているので、ヒーター固定板33の厚さだけで、押さえ板40と鍔部313(受け部313a)との当接度合いを調整できる。本実施形態によれば、例えば、ヒーター固定板33においてシビアな寸法精度が要求されない。これにより、本実施形態によれば、寸法管理のコストの低減や、歩留まり向上によるコスト低減が可能である。
【0072】
また、本実施形態によれば、押さえ板40を用いたことで、腐食防止の特殊なステンレス(例えば、SUS444)で構成されるヒーター固定板33を従来に比べて小さくできる。また、ヒーター固定板33の厚さも、鍔部313の高さを調整することで薄くすることができる。これにより、本実施形態によれば、材料コストを低減できる。
【0073】
また、本実施形態によれば、ヒーター固定板33は、押さえ板40とは別部材で構成されているので、貯湯タンク本体31側に接近配置されると共に、撓むことなく配置される。これにより、ヒーター挿入孔311に対する封止性が良好となる。
【0074】
また、本実施形態によれば、押さえ板40が鍔部313(受け部313a)に当接するよう構成される。これにより、ネジ部312の根元部分の成型度合いやワッシャ使用による応力負荷の不安定さにより生じるOリングのシール性低下を抑制できる。
【0075】
また、本実施形態によれば、ヒーター固定板33が平板なので、その厚さを調整することで、押さえ板40、鍔部313、Oリング34の位置関係を簡易且つ高精度で調整することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、押さえ板40がヒーター固定板33全体を覆っているため、ナット35をネジ部312に締結させた際の応力がヒーター固定板33の一部に偏りにくく、押さえ板40全体でヒーター固定板33を押圧するため、ヒーター固定板33が撓みにくい。また、押さえ板40が耐圧強度を十分にもつようにすれば、ヒーター固定板33を薄くすることができる。
【0077】
(2)本実施形態では、前記押さえ板40は、樹脂製である。本実施形態によれば、押さえ板40は樹脂製であるので、熱伝導率を低減させることができ、内部空間39のお湯の温度が低下することを抑制できる。これにより、本実施形態によれば、内部空間39のお湯の保温性を向上させることができ、ランニングコストを低減させることができる。また、安価な樹脂により押さえ板40を構成するため、材料コストを削減できる。
【0078】
(3)本実施形態では、ヒーター固定板33の厚さは、前記ネジ部の軸方向における前記鍔部の高さに対して、同等以上である。本実施形態によれば、ナット35をネジ部312に締結させた際の応力が、ネジ部312が貯湯タンク本体31に溶接された箇所に直接印加されるのをより確実に防ぐことができると共に、ヒーター挿入孔311に対する封止を好適にすることができる。
【0079】
(4)本実施形態では、前記押さえ板40は、1又は複数の第1位置決め部405a、405b、406を有し、前記ヒーター固定板33は、前記1又は複数の第1位置決め部405a、405b、406に係合し、又は、係合され、前記ヒーター固定板33における前記ネジ部312の軸方向に直交する平面方向における位置決めをする1又は複数の第2位置決め部335a、335b、336と、を有する。本実施形態によれば、ヒーター固定板33が押さえ板40に対して正しい位置及び向きで取り付けられるので、ヒーター32は、貯湯タンク本体31の内部空間39で正しい位置と向きで配置される。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
上記実施形態では、第1位置決め部405a、405b、406は突部であり、第2位置決め部335a、335b、336は孔部であるが、これに限定されず、第1位置決め部405a、405b、406は孔部であり、第2位置決め部335a、335b、336は突部であってもよい。