(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のハニカム成形体の製造方法では、湿式混合時の造孔材の添加量を変化させることで、ハニカム焼成体の気孔率を調整していた。しかしながら、造孔材の添加量を変化させる場合、ハニカム焼成体の気孔率を測定して所望の気孔率でなかった際に、最初の乾式混合からハニカム成形体を製造し直さなければならない。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、所望の気孔率を有するハニカム焼成体を製造することが可能な成形体密度の予測方法、及び当該成形体密度の予測方法を用いたセラミックス焼成体の製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明によれば、以下に掲げる成形体密度の予測方法、およびセラミックス焼成体の製造方法が提供される。
【0009】
[1] 無機粉末と、バインダーと、水と混練されることにより破壊される発泡樹脂
からなるマイクロカプセルを含む造孔材と、前記水とを含むセラミックス原料を混練して坏土を作製し、前記坏土を成形して成形体を作製し、前記成形体についての成形体密度を測定し、さらに、前記成形体を乾燥して乾燥体を作製し、前記乾燥体を焼成して焼成体を作製し、前記焼成体についての気孔率を測定して、前記成形体についての前記成形体密度と、前記焼成体についての前記気孔率との相関関係を求める相関関係算出工程と、前記坏土の作製に用いた前記セラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から坏土Aを作製し、前記坏土Aを成形して成形体Bを作製し、成形体Bを乾燥して乾燥体C、さらに前記乾燥体Cを焼成して所望の気孔率を有する焼成体Dを作製する場合に、前記相関関係を用いて前記焼成体Dの前記所望の気孔率に対応する前記成形体Bの前記成形体密度の予測値を算出する成形体密度予測工程と、を含む成形体密度の予測方法を用いて前記予測値を算出し、無機粉末と、バインダーと、水と混練されることにより破壊される発泡樹脂
からなるマイクロカプセルを含む造孔材と、前記水とを含むセラミックス原料を混練して前記坏土Aを作製する坏土作製工程と、前記坏土Aを押出成形して前記成形体Bを成形する成形工程と、前記成形体Bを焼成して焼成体Dを作製する焼成工程と、を有し、前記成形工程の後に、前記成形工程によって成形された前記成形体Bについて前記成形体密度予測工程で算出された前記成形体密度の前記予測値であれば前記焼成工程へと進み、前記予測値でない場合は前記予測値となるように、前記坏土Aに含まれる水の量を調整する水添加量調整工程を行い、前記水添加量調整工程を行った後は、再度前記坏土作製工程から工程を繰り返
し、前記成形体密度の測定は、前記成形体を切り取り、設定圧力30〜50N・mで押しつぶした後に、水中重量及び気中重量を測定して算出する、セラミックス焼成体の製造方法。
【0010】
[2] 前記相関関係を、一次関数[焼成体の気孔率=係数A×(成形体密度)+係数B]に近似して求める前記[1]に記載の
セラミックス焼成体の製造方法。
【0013】
[
3] 前記成形体Bの前記成形体密度を測定する成形体密度測定工程と、前記成形体密度測定工程により測定された前記成形体密度を用い、前記相関関係に基づいて焼成体Dについての気孔率を予測する気孔率予測工程と、をさらに含み、前記気孔率予測工程により予測された気孔率が前記所望の気孔率と異なる場合に、前記水添加量調整工程において前記水の量を調整する前記[
1]または[2]に記載のセラミックス焼成体の製造方法。
【0014】
[
4] 前記坏土作製工程は、前記セラミックス原料のうち、前記無機粉末と、前記バインダーと、前記造孔材と、を含む原料をバッチ処理により乾式混合する乾式混合工程と、前記乾式混合工程によって得られた乾式混合物に、前記水を含む液体を添加し、湿式混合する湿式混合工程と、前記湿式混合工程によって得られた湿式混合物を混練する混練工程と、を含み、前記水添加量調整工程は、前記混練工程で前記湿式混合物を混練する過程において、前記坏土Aに前記水を加えて調整する前記[
1]〜[3]のいずれかに記載のセラミックス焼成体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の成形体密度の予測方法は、成形体についての成形体密度と、焼成体についての気孔率との相関関係を求める相関関係算出工程と、その相関関係を用いて焼成体の所望の気孔率に対応する成形体の成形体密度の予測値を算出する成形体密度予測工程の二つの工程を含む。このため、予測された成形体密度に対応するハニカム成形体を作製すれば、所望の気孔率を有するハニカム焼成体を作製することが可能である。また、押出成形したハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を作製し、ハニカム焼成体の気孔率を確認しなくても、焼成前のハニカム成形体の成形体密度を確認して、所望の気孔率に対応する成形体密度になるようにセラミックス原料を調整することができる。
【0016】
加えて、上記の成形体密度の予測方法を用いたセラミックス焼成体の製造方法は、無機粉末と、バインダーと、造孔材と、水とを含むセラミックス原料を混練して坏土Aを作製する坏土作製工程と、坏土Aを押出成形して成形体Bを成形する成形工程と、成形体Bを焼成して焼成体Dを作製する焼成工程と、を有する。さらに、成形体Bの成形体密度の予測値となるように、坏土Aに含まれる水の量を調整する水添加量調整工程と、を含むため、気孔率を確認するためにハニカム成形体を焼成して気孔率を確認することなく、所望の気孔率を有するハニカム焼成体に対応するハニカム成形体を作製することができる。また、水添加量調整工程により、押出成形前の段階でセラミックス成形体の成形体密度を微調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0019】
1.セラミックス成形体の成形体密度の予測方法:
図1に本発明の一実施形態のセラミックス成形体の成形体密度の予測方法を示す。成形体密度の予測方法は、所望の気孔率を有するセラミックス焼成体を作製するために用いられるものであり、成形体についての成形体密度と、焼成体についての気孔率との相関関係を求める相関関係算出工程と、その相関関係を用いて焼成体の所望の気孔率に対応する成形体の成形体密度の予測値を算出する成形体密度予測工程と、を含む。相関関係算出工程は、まず、無機粉末と、バインダーと、造孔材と、水とを含むセラミックス原料を混練して坏土を作製し、その坏土を成形して成形体を作製し、その成形体についての成形体密度を測定する。さらに、その成形体を乾燥して乾燥体を作製し、乾燥体を焼成して焼成体を作製し、その焼成体についての気孔率を測定する。そして、測定した成形体についての成形体密度と、焼成体についての気孔率との相関関係を求める。また、成形体密度予測工程は、相関関係を用いて焼成体の所望の気孔率に対応する成形体の成形体密度の予測値を算出する工程である。具体的には、成形体密度予測工程は、坏土の作製に用いたセラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から坏土Aを作製し、坏土Aを成形して成形体Bを作製し、成形体Bを乾燥して乾燥体C、さらに乾燥体Cを焼成して所望の気孔率を有する焼成体Dを作製する場合に、求めた相関関係を用いて焼成体Dの所望の気孔率に対応する成形体Bの成形体密度の予測値を算出する工程である。
【0020】
(相関関係算出工程)
本発明の相関関係算出工程は、
図1に示されるように、無機粉末と、バインダーと、造孔材と、水とを含むセラミックス原料を混練して坏土を作製し、坏土を成形して成形体を作製し、成形体についての成形体密度を測定し、さらに、成形体を乾燥して乾燥体を作製し、乾燥体を焼成して焼成体を作製し、焼成体についての気孔率を測定して、成形体についての成形体密度と、焼成体についての気孔率との相関関係を求める工程である。この工程では、複数の坏土を作製し、その坏土一つ一つに対してそれぞれ成形体密度と焼成体の気孔率を測定する。
【0021】
ここで、セラミックス成形体の作製について説明する。
図1に示されるように、セラミックス成形体を作製する際には、まず、セラミックス原料から坏土を作製する。本明細書にいうセラミックス原料とは、坏土を作製するための原料のことであり、少なくとも無機粉末と、バインダーと、造孔材と、水とを含み、その他の材料としては、界面活性剤などを適宜含むことがある。
【0022】
本発明に使用できる無機粉末としては、ガラス、アルミナ、シリカ、タルク、カオリン、窒化珪素、炭化珪素、窒化
アルミニウム、ジルコニア、サイアロンなどのセラミックス粉末を挙げることができる。また、焼成によりコージェライトに変換される物質であるコージェライト化原料も好ましい。コージェライト化原料は、例えば、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ等を、焼成後の組成がコージェライトの理論組成(2MgO・2Al
2O
3・5SiO
2)となるように混合したもの等が挙げられる。なお、本発明に使用できるセラミックス原料には、上述したセラミックス粉末を1種のみ含んでもよいし、または2種以上を含んでいてもよい。但し、例えば、金属珪素(Si)−炭化珪素(SiC)焼結体の構成物質となる金属珪素も用いることができる。
【0023】
バインダーは、セラミックス成形体の成形時に坏土に流動性を付与し、焼成前のセラミックス成形体(セラミックス乾燥体)の機械的強度を維持する補強剤としての機能を果たす添加剤である。バインダーとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、又はポリビニルアルコール等を好適に用いることが出来る。
【0024】
造孔材は、セラミックス成形体を焼成する際に焼失して気孔を形成させることによって、気孔率を増大させ、高気孔率の多孔質ハニカム構造体を得るための添加剤である。従って、造孔材としては、セラミックス成形体を焼成する際に焼失する可燃物であることが好ましい。また、造孔材としては、坏土中の水やバインダーに対して難溶なもの、及び/または可溶なものを使用することができるが、本発明では、造孔材の少なくとも一部は水に対して可溶なものを含むことが好ましい。造孔材の具体例として、例えば、グラファイト、小麦粉、澱粉、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、又はポリエチレンテレフタレート等が挙げられるが、中でも、水と混練されることにより破壊される発泡樹脂を含むことが好ましい。なお、発泡樹脂は、圧力をかけることによって破壊される特性も有する。発泡樹脂としては発泡樹脂からなるマイクロカプセルを特に好適に用いることができる。発泡樹脂からなるマイクロカプセルは、中空であることから少量の樹脂の添加で高気孔率の多孔質セラミックス構造体を得られることに加え、焼成時の発熱が少なく、熱応力によるクラックの発生を低減することができる。なお、このような発泡樹脂としては、例えば松本油脂製薬株式会社製のマツモトマイクロスフェアーを好適に用いることができる。
【0025】
界面活性剤は、骨材粒子原料等の水への分散を促進し、均質な成形用配合物を得るための添加剤である。従って、分散剤としては、界面活性効果を有する物質、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を好適に用いることが出来る。
【0026】
なお、本明細書にいう坏土とは、上述したセラミックス原料を混練することにより作製できるもののことであり、また、焼成することによりセラミックス製品を作製できるもののことをいう。
【0027】
坏土を作製した後に、坏土を所望の形状に成形して成形体を作製する。坏土を成形する方法については、特に限定しないが、例えば、押出成形、
射出成形、プレス成型などを用いることができる。成形体は一つの坏土から2つ以上作製することが好ましい。作製した成形体のうち、一方の成形体を成形体密度を測定するために使用し、他方の成形体を焼成して焼成体の気孔率を測定するために使用する。
【0028】
成形体密度の測定方法について説明する。ここでは、セラミックス成形体としてハニカム成形体1を使用した際の測定方法について説明する。ハニカム成形体1とは「ハニカム形状」のセラミックス成形体である。「ハニカム形状」とは、例えば、
図5に示すハニカム成形体1のように、隔壁2によって第一の端面から第二の端面まで貫通する流体の流路となる多数のセル3が区画・形成された形状を意味する。ハニカム成形体1の全体形状については特に限定されるものではなく、例えば、
図5に示すような円柱状の他、四角柱状、三角柱状等の形状を挙げることが出来る。又、ハニカム成形体1のセル形状(セル3の形成方向に対して垂直な断面におけるセル形状)についても特に限定はされず、例えば、
図5に示すような四角形セルの他、六角形セル、三角形セル等の形状を挙げることが出来る。
【0029】
ハニカム成形体1の成形体密度の測定方法としては、まず、ハニカム成形体1を所望の形状(例えば、ハニカム成形体1の端面を150×150mmの四角形状に切り取った四角柱状)を作り、セル3の延びる方向に平行な方向に適度につぶす。これにより、セル3の一部が潰れてハニカム成形体1のセル3内の空気の一部を排出することができる。
【0030】
次に、ある程度つぶしたハニカム成形体1をトルクレンチ等を用いて押しつぶす。トルクレンチの設定圧力は30〜50N・mが好ましい。より好ましくは40N・mである。30〜50N・mの設定圧力でつぶすことにより、セル3を完全につぶすことができ、隔壁2の気孔以外に入っている空気を完全に排出することができる。これにより、後に測定する成形体密度を精度よく測定することができる。また、サンプル圧縮面圧は0.23〜0.38kgf/cm
2であることが好ましい。より好ましくは0.3kgf/cm
2である。
【0031】
押しつぶしたハニカム成形体1の6面をワイヤーを用いて切断し、直方体のブロック状に切断する。直方体の表面は全てワイヤーによる切断面であることが好ましい。サンプル容積としては、125cm
3程度のものを用いることができる。切断した成形体の直方体を、比重計を用いて水中重量及び気中重量を測定し、成形体密度を算出する。算出としては、比重計による自動算出を用いることができる。成形体密度の測定及び算出方法は、上記に限定されず、正確な成形体密度が測定される方法であれば適用することができる。
【0032】
次に、もう一方の成形体を乾燥して乾燥体を作製し、乾燥体を焼成して焼成体を作製し、焼成体についての気孔率を測定して、成形体についての前記成形体密度と、前記焼成体についての気孔率との相関関係を求める。セラミックス成形体を乾燥する方法については、特に限定されないが、例えば、室温で自然乾燥する方法(自然乾燥)、熱風を当てて乾燥する方法(熱風乾燥)、高周波エネルギーを利用して乾燥する方法(誘電乾燥)、マイクロ波を利用して乾燥する方法(マイクロ波乾燥)等を用いることができる。乾燥体を焼成する方法についても、特に限定されないが、単窯やトンネル炉等の連続炉を使用する方法がある。
【0033】
ハニカム焼成体の気孔率の測定方法としては、水銀ポロシメーター(水銀圧入法)によって測定することが好ましい。
【0034】
本発明では、略同一組成のセラミックス原料から坏土を作製するのであれば、複数の坏土の作製や、複数の焼成体の作製は、同時に行っても、異なる時に行っても良い。また、成形体の成形体密度の測定や、焼成体の気孔率の測定についても、同時に行っても異なる時に行っても良い。
【0035】
坏土中の造孔材が水と混練されることにより破壊される発泡樹脂を含む場合、坏土中の水の量は、この坏土から作製した成形体を乾燥、焼成したときの焼成体の気孔率に影響を与えている。加える水が多いと気孔率は上がり、少ないと気孔率は下がる。したがって、水の添加量を調整することにより、様々な気孔率を有する焼成体を作製することができる。
【0036】
また、成形体密度と焼成体の気孔率との間には相関関係が存在する。
図2は、セラミックス成形体の成形体密度と、その成形体の焼成後の気孔率との関係を示す図である。図中の散々する複数の点のそれぞれは、個別の坏土についての成形体密度の値、及びその坏土から作製した焼成体の気孔率の値を示す。また、この図に示したデータは、水の添加量以外は同一組成のセラミックス原料から作製した坏土についてのものである。
図2に示されたデータからは、成形体密度が高くなるにつれて焼成体の気孔率が低くなる傾向があることが確認できる。
【0037】
本発明の成形体密度の予測方法では、
図2に示されたように、この相関関係を、一次関数[焼成体の気孔率=係数A×(成形体密度)+係数B]に近似して求めることが好ましい。
図2に示した一次関数は、最小二乗法を用いて係数Aおよび係数Bを導き出している。
【0038】
なお、本発明の気孔率調整代とは、セラミックス成形体の含水率に対する気孔率の変化のことを示す。例えば、
図2に示す相関では、含水率が5%変化していると気孔率が8.8%変化している。なお、気孔率調整代は坏土となるセラミックス原料の配合等によって異なる。
【0039】
(成形体密度予測工程)
さらに、本発明の成形体密度の予測方法では、坏土の作製に用いたセラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から坏土Aを作製し、その坏土Aを成形して成形体Bを作製し、成形体Bを乾燥して乾燥体C、さらに乾燥体Cを焼成して所望の気孔率を有する焼成体Dを作製する場合に、相関関係を用いて焼成体Dの前記所望の気孔率に対応する成形体Bの成形体密度の予測値を算出する成形体密度予測工程を含む。
【0040】
図3は成形体密度予測工程のフロー図を示す。図示されたように、成形体密度と焼成体の気孔率との相関関係が求められていると、これから作製しようとする別の焼成体Dの気孔率の値が予め定まっている場合には、この気孔率の値から、相関関係に基づいて成形体密度の適正値を予測することができる。例えば、
図2に示したデータのものと略同一組成のセラミックス原料を使用する場合であれば、
図2中の一次関数[焼成体の気孔率=係数A×(成形体密度)+係数B]に、予め定まっている焼成体Dの気孔率の値を当てはめることにより、成形体Bの成形体密度の適正値を予測することができる。
【0041】
2.セラミックス焼成体の製造方法:
次に、上述の成形体密度の予測方法を利用したセラミックス焼成体の製造方法について説明する。
図4に、本発明のセラミックス焼成体の製造方法の概略構成の図を示す。セラミックス焼成体の製造方法は、成形体密度の予測方法を用いて、坏土Aから所望の気孔率を有する焼成体Dを作製するセラミックス焼成体の製造方法である。具体的には、無機粉末と、バインダーと、造孔材と、水とを含むセラミックス原料を混練して坏土Aを作製する坏土作製工程と、坏土Aを押出成形して成形体Bを成形する成形工程と、成形体Bを焼成して焼成体Dを作製する焼成工程と、を有する。そして、さらに、成形体Bの成形体密度の予測値となるように、坏土Aに含まれる水の量を調整する水添加量調整工程を含む。
【0042】
図4に示すように、本発明のセラミックス焼成体の製造方法では、予め定まった気孔率を有するハニカム焼成体を製造するために、無機粉末と、バインダーと、造孔材と、水とを含むセラミックス原料を混練して坏土Aを作製する坏土作製工程と、坏土Aを押出成形して成形体Bを成形する成形工程とを行った後に、成形体Bの成形体密度を測定することが好ましい。なお、予め定まっている気孔率から上述の成形体密度の予測方法に基づき、その気孔率に対応する成形体密度の値を予測しておくことが好ましい。その後に、測定された成形体Bの成形体密度の値が、上述の相関関係に基づいて予測された成形体密度と略同一であるか否か確認することが好ましい。成形体Bの成形体密度の値が成形体密度の予測値と略同一である場合には、坏土Aをそのまま押出成形して成形体Bを成形し、焼成して焼成体Dを作製することができる。一方、成形体Bの成形体密度の値が成形体密度の予測値と異なる場合には、水添加量調整工程を行う。
【0043】
水添加量調整工程は、混練している坏土Aに対して水を添加して調整することが好ましい。坏土中の造孔材が水と混練されることにより破壊される発泡樹脂を含む場合、坏土中の水の量は、この坏土から作製した成形体を乾燥、焼成したときの焼成体の気孔率に影響を与えている。加える水が多いと気孔率は上がり、少ないと気孔率は下がる。したがって、水添加量調整工程により水の添加量を調整することにより、焼成後に所望の気孔率を有する成形体を作製することができる。なお、本発明の水添加量調整工程は、成形体Bの成形体密度の測定値が成形体密度の予測値よりも
高い場合にのみ、用いることができる。
【0044】
水添加量調整工程の次に、水が添加され混練された坏土A(坏土A1とする。)を成形して成形体(成形体B1とする。)を成形する。そして、成形体B1の成形体密度を測定することが好ましい。成形体B1の成形体密度の測定値が成形体密度の予測値と略同一となれば、坏土A1をそのまま成形、焼成して所望の気孔率の値を有する焼成体D1を焼成することができる。一方、成形体B1の成形体密度の測定値が成形体密度の予測値と異なる場合は、再度水添加量調整工程を行い、水が添加され混連された坏土A1(坏土A2)を成形し、成形体密度を測定することが好ましい。このように成形体密度の測定値が成形体密度の予測値と略同一になるまで、水添加量調整工程、成形工程、成形体密度の測定を繰り返すことが好ましい。成形体密度の測定値が成形体密度の予測値と略同一になれば、その時点の坏土を成形し、焼成して所望の気孔率を有する焼成体を作製することができる。
【0045】
また、本発明のセラミックス焼成体の製造方法は、成形体Bの成形体密度を測定する成形体密度測定工程と、成形体密度測定工程により測定された成形体密度を用い、相関関係に基づいて焼成体Dについての気孔率を予測する気孔率予測工程と、をさらに含むことも好ましい。そして、その気孔率予測工程により予測された気孔率が所望の気孔率と異なる場合に、水添加量調整工程において水の量を調整することが好ましい。測定された成形体密度を一次関数[焼成体の気孔率=係数A×(成形体密度)+係数B]に当てはめて、焼成体の気孔率を予測することができる。この焼成体の気孔率が所望の気孔率と異なる場合には、上述した水添加量調整工程を行うことにより、気孔率の予測値を所望の気孔率と略同一にすることができる。略同一となった気孔率の予測値に対応する成形体の坏土Aを成形、焼成することにより、所望の気孔率を有する焼成体Dを製造することができる。
【0046】
なお、
図4の破線部で囲まれた枠内に坏土作製工程の概略を示している。坏土作製工程は、セラミックス原料のうち、無機粉末と、バインダーと、造孔材と、を含む原料をバッチ処理により乾式混合する乾式混合工程と、乾式混合工程によって得られた乾式混合物に、水を含む液体を添加し、湿式混合する湿式混合工程と、湿式混合工程によって得られた湿式混合物を混練する混練工程と、を含むことが好ましい。本発明の水添加量調整工程は、混練工程で湿式混合物を混練する過程において、坏土に水を加えて調整することが好ましい。混練工程で水を添加して調整することにより、成形設備を停止させずに成形体密度を調整することができる。また、水の添加方法として、混練装置に液注ポンプを取り付けて連続的に水を添加可能にすることが好ましい。以下において、坏土
作製工程について説明する。
【0047】
(坏土
作製工程)
坏土
作製工程は、乾式混合工程、湿式混合工程、混練工程をそれぞれ実施可能な構成を有するセラミックス成形体製造装置を使用して実施されることが好ましい。また、セラミックス成形体製造装置は、その機能的構成として、バッチ式の乾式混合部と、バッチ式または連続式の湿式混合部と、混練部と、押出成形部とを主に有し、混練部はその構成要素内に水を更に添加する機能を備えていることが好ましい。加えて、混練部における水の添加量を調整する機能を備えていることが好ましい。以下、坏土
作製工程の流れについて説明する。
【0048】
(乾式混合工程)
乾式混合工程は、バッチ式の乾式混合部(バッチミキサー)を用いて実施されることが好ましい。所定の配合比率で計量された複数種類の粉末状または粉体状のセラミックス粉体、造孔材及びバインダーを含む原料が乾式混合部に投入され、撹拌機構(図示しない)によってセラミックス粉体、造孔材及びバインダーが互いに均一に混じり合うように撹拌混合を行う。これにより、原料が複数種類のセラミックス粉体等が均一に分散した乾式混合物に変換される。
【0049】
(湿式混合工程)
得られた乾式混合物は、湿式混合工程に送られることが好ましい。ここで、湿式混合工程は、乾式混合物をバッチ処理または連続処理によって湿式混合を行うバッチ式または連続式の湿式混合部(バッチミキサーまたは連続ミキサー)を用いて行われることが好ましい。バッチ式の湿式混合部を用いた場合、乾式混合を行った乾式混合部をそのまま利用することができ、規定の添加量の液体を投入した後、上記撹拌機構を利用して乾式混合物と液体の混合が行われる。
【0050】
一方、連続式の湿式混合部を用いた場合は、乾式混合部によって混合された乾式混合物が予め規定された投入割合で湿式混合部に徐々に投入され、同時
に液体が投入され、撹拌機構によって湿式混合されることが好ましい。これにより、乾式混合物及び液体が均一に分散し、混合された湿式混合物に変換される。
【0051】
(混練工程)
その後、混練機を使用して混練工程が実施されることが好ましい。本実施形態の製造方法において、混練工程及び次工程の成形工程は、連続一体的に実施されることが好ましい。すなわち、セラミックス成形体製造装置において、湿式混合部から送られた湿式混合物を、混練部は混練し、更に当該混練部と連続一体的に構成された押出成形部に、処理された混練物(成形原料)が直接送り出される。そして、押出成形部の押出ダイ(口金)を通じて成形原料が押出成形される。これにより、セラミックス成形体が形成される。
【0052】
混練工程では、湿式混合工程において膨潤したバインダーがセラミックス粉体と親和する。その結果、セラミックス粉体の表面が膨潤したバインダーによってコーティングされる。これにより、湿式混合物が混練物に変換される。なお、得られた混練物は混練部の中で、当該混練物に含まれる空気を真空吸引装置を利用して吸引し脱気する脱気処理を行い、更に所定の荷重を混練物に加えることにより、混練物を圧縮し、緻密化する圧密処理が行われる。その結果、押出成形部に投入されるセラミックス粉体、造孔材及びバインダーが均一に混合され、かつ緻密化した均質連続体としての成形原料が形成される。
【0053】
連続式の湿式混合部を用いた場合には、混練部を経て押出成形部までの処理を連続一体的に実施することができる。そのため、セラミックス成形体の形成をより効率的、かつ安定して行うことができる。なお、バッチ式の湿式混合部を用いた場合でも、本発明の製造方法による十分な効果を奏することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
試料1〜3を作製した。まず、焼成後にコージェライト組成となる組成にてアルミナ、カオリン、タルク、およびシリカを配合した無機粉末[平均粒度(算術平均径)200μm]500kgに対し、有機バインダーを25kg、造孔材(松本油脂製薬株式会社製、マツモトマイクロスフェアー)25kg、水をそれぞれ148kg、162kg、162kgずつ混ぜ合わせ、坏土を作製した。試料1〜3の坏土のバッチミキサーでの湿粉含水率はそれぞれ22.8%、22.0%、20.0%であった。
【0056】
試料1〜3の坏土に対し、混練機にそれぞれ0%、1%、2%の水をさらに加えて混練した。その結果、混練後の坏土の含水率はそれぞれ22.8%、23.0%、23.0%となった。
【0057】
続いて、坏土を真空脱気後に口金を通して押出成形し、外径100.0mm、長さ100mmのハニカム成形体1を作製した。なお、1つの坏土に対しハニカム成形体1を2つ作製し、一方の成形体で成形体密度を測定し、他方の成形体はさら乾燥してハニカム乾燥体を作製し、次いでハニカム乾燥体を焼成してハニカム焼成体を作製した。
【0058】
ハニカム成形体1の成形体密度測定は、まず、セル3の延びる方向に平行な方向にある程度つぶし、ある程度つぶしたハニカム成形体1をトルクレンチ等を用いて40N・mの設定圧力で押しつぶした。押しつぶしたハニカム成形体1の6面をワイヤーを用いて切断し、5cm×5cm×5cmの直方体のブロック状に切断した。切断した成形体の直方体を、比重計を用いて水中重量及び気中重量を測定し、成形体密度を算出した。成形体密度を表1に示す。
【0059】
ハニカム焼成体の気孔率は水銀ポロシメーター(Micromeritics社製のAutoPoreIV9505)により測定した。この焼成体の気孔率を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1により、ハニカム成形体1の坏土に水を加えてハニカム成形体1の含水率が略同一となるハニカム成形体1は、その成形体密度と、焼成後の気孔率がそれぞれ略同一の値となることが分かる。