特許第6496310号(P6496310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンティング エナジー サービシーズ、インクの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496310
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】ドリルパイプの据え込み鍛造プロセス
(51)【国際特許分類】
   B21J 5/08 20060101AFI20190325BHJP
   B21C 37/16 20060101ALI20190325BHJP
   B21K 21/16 20060101ALI20190325BHJP
   B21J 9/12 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   B21J5/08 A
   B21C37/16
   B21K21/16
   B21J9/12
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-521665(P2016-521665)
(86)(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公表番号】特表2016-540642(P2016-540642A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】US2014058267
(87)【国際公開番号】WO2015053984
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年9月6日
(31)【優先権主張番号】14/501,178
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/888,631
(32)【優先日】2013年10月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512125862
【氏名又は名称】ハンティング エナジー サービシーズ、インク
【氏名又は名称原語表記】HUNTING ENERGY SERVICES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】キルビー, クレーン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】アドキンス, グレゴリー リン
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101096044(CN,A)
【文献】 国際公開第2012/150564(WO,A1)
【文献】 特開昭54−131564(JP,A)
【文献】 米国特許第05826921(US,A)
【文献】 特開昭63−149038(JP,A)
【文献】 米国特許第05517843(US,A)
【文献】 特開昭56−001241(JP,A)
【文献】 米国特許第04213322(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 5/08
B21J 9/12
B21K 21/16
B21C 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側及び外側が据え込み加工されたパイプ端部を有する非開削水平方向掘削ドリルパイプ部分を鍛造パイプとして形成する形成方法であって、
未加工パイプの対向するパイプ端部を有する部分を提供し、前記パイプ端部のうちの少なくとも選択された一方を所定の鍛造温度まで加熱するステップ、
外側テーパ面を有する外側据え込み部を形成するために、前記選択されたパイプ端部を据え込み加工してプレスするステップ、
前記外側テーパ面を移動させて内側テーパ面を有する内側据え込み部を形成するために、内側据え込み金型を使用して前記外側据え込み部をプレスするステップ、および
最終部品を製造するために、内側据え込み金型を使用して前記据え込み部を内側に据え込み鍛造するステップを含み、
前記プレスするステップは、据え込み外径および据え込み内径を有するパイプ端部を形成するために、油圧鍛造プレスを使用して油圧を加えることによって行われ、前記据え込み内径の一部は、内側ねじ穴を形成するために実質的にねじ切りされ、前記内側ねじ穴の領域の前記内径に対する前記外径の比率が約3.5以上であるとともに、
据え込みパイプの端部は、略均一な内径の第1の内径と、第2の広がった内径と、外側据え込み長さとを有し、前記第1の内径の長さは、前記外側据え込み長さの30%より長い、
形成方法。
【請求項2】
前記据え込みパイプの端部の前記第1の内径は、1.25インチ未満である、請求項に記載の形成方法。
【請求項3】
前記据え込みパイプの端部の前記第1の内径は、約0.875インチである、請求項に記載の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、ドリルパイプを形成するために金属管の両端の内側及び外側を据え込み加工するプロセス、特に、金属管が据え込み加工された水平方向掘削ドリルパイプ部分を形成するのに使用される、プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
対象となるタイプのドリルパイプを形成するのに使用される金属管は、目的の用途に応じて、外側据え込み、内側据え込み、または外側内側の両側の据え込み加工がなされた金属管両端を有する場合がある。従来の油田ドリルパイプと、いわゆる「水平方向掘削(HDD)」ドリルパイプとの間には根本的な違いがある。今日では、大半の油田ドリルパイプは、例えば、工具継手に溶着させるためにできる限り最も厚い壁にするために、内側および外側の両側の据え込み加工がなされる。水平方向掘削(HDD)ドリルパイプは、一般に、油田ドリルパイプに比べて短く、直径が小さい。また、HDDドリルパイプの場合、両端は、工具継手に溶着されずに、直接機械加工される場合がある。そのため、HDDドリルパイプの据え込み領域は、油田ドリルパイプの据え込み領域に比べて、比較的長くなる傾向がある。例えば、典型的な従来のHDDドリルパイプの部分は、パイプ部分の全長に比べて比較長い(例えば、9インチの長さ)ピン状端部を有する約10フィートの長さとしてよい。
【0003】
一般には、2つの主な金属管の据え込み鍛造プロセス、つまり、機械的衝撃プロセスと油圧据え込み鍛造プロセスとがある。衝撃プロセスは、金属管の端部を加熱することによって行われ、パイプ端部の据え込み部を形成するのに衝撃パンチが使用される。ドリルパイプの場合、据え込み領域は、その後、最終製品にするためにねじ切りされる。この衝撃プロセスは、長年にわたって、油田およびHDDの業界で使用されてきた。しかし、HDD製品を製造するための衝撃プロセスの主な欠点は、据え込み部を形成するのに使用されるプロセスが衝撃を加える性質を有することから、この方法は比較的大きな内径の管に限定されるという点である。管の直径が小さくなるほど、衝撃パンチを破損させやすくなり、他の問題を発生させる傾向がある。これらの欠点により、HDDドリルパイプの製造業者は、特定の比較的小さい内径のOEMねじ設計(例えば、Ditch Witch(商標)ねじ、または一般的なIF(商標)ねじ)のねじ切り加工を行うことができない。
【0004】
他の金属管据え込み鍛造プロセスには、据え込み部を形成するのに低速で均一な油圧を使用するプロセスがある。金型を開閉して鍛造力を付与するのに油圧式に作動する、いわゆる「密閉金型」鍛造機が知られている。一般に、金型は閉位置と開位置(最終部品が取り出され、次の作業のために次のブランクが挿入される位置)との間で十分な距離を移動する必要があるので、大きな油圧ポンピング能力が必要である。密閉金型鍛造方法は、金属部品鍛造のいくつかの業界で使用されているが、この方法は、本出願人の知る限りでは、HDD用パイプ業界ではこれまで使用されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、据え込み端部を有するHDDドリルパイプを形成する際に衝撃鍛造方法を使用することに関して上述した特定の欠点を克服することである。
【0006】
本発明の別の目的は、従来衝撃鍛造方法を使用して実現されていた場合に比べて、ねじ切り据え込み領域が比較的小さい内径であるHDD製品の製造に密閉金型鍛造方法を適応させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方法では、内側及び外側が据え込み加工されたパイプ端部を有するHDDドリルパイプを製造するのに密閉金型鍛造方法が使用される。据え込み外径および据え込み内径(据え込み内径の一部は後で内側ねじ穴を形成するのにねじ切りされる)を有するパイプ端部を形成するのに、油圧鍛造プレスを使用して油圧が加えられる。内側ねじ穴の領域の内径に対する外径の比率は、約3.0より大きく、好ましくは、約3.5以上である。鍛造は、未加工の管端部を加熱し、油圧プレスの均一および低速の油圧を使用することにより行われ、据え込み部が形成される。一般的な操作では、鋼管の一端は、据え込みおよびプレスすることによって加工されて、据え込み鍛造によって成形された外側テーパ面を有する外側据え込み部が形成される。次に、外側据え込み部は、内側テーパ面を有する内側据え込み部に向かって外側テーパ面を移動させるように内側据え込み金型によってプレスされる。その後、内側据え込み金型によって内側据え込み鍛造が施され、そのことにより所望の長さの内側テーパ面、および内側テーパ面を有する部分の始点となる屈曲部が形成される。
【0008】
密閉金型鍛造方法を使用することにより、パイプ端部の据え込み領域内の内径が非常に小さいHDD製品を形成することができ、製造業者は当業界で一般的に見られる全てのタイプのねじ接続部をねじ切りすることができる。新規なHDDドリルパイプ製品は、従来の製造技術を使用して製造することができない寸法を有する。例えば、パイプのピン状端部の外側据え込み領域は、先行技術のパイプの据え込み部が9インチにあるのに対して、約4.7インチの長さである場合がある。内径は、先行技術の衝撃鍛造パイプ端部の内径が1.25インチであるのに対して、約わずか0.875インチである場合がある。本発明のプロセスにより、製造業者は比較的厚い据え込み部を形成することができ、この場合、内径に対する外径の比率は、約3.5以上である。
【0009】
本発明のさらに別の目的、特徴、および利点は、以下の説明に中で明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明を実施するのに使用されるタイプの密閉金型鍛造機の概略斜視図である。
図1B】単純な密閉金型鍛造操作で使用されるステップの簡略図である。
図1C】単純な密閉金型鍛造操作で使用されるステップの簡略図である。
図1D】単純な密閉金型鍛造操作で使用されるステップの簡略図である。
図1E】単純な密閉金型鍛造操作で使用されるステップの簡略図である。
図2A】典型的な外側内側据え込み加工のパイプ端部を形成するのに使用されるステップの4分の1の断面図である。
図2B】典型的な外側内側据え込み加工のパイプ端部を形成するのに使用されるステップの4分の1の断面図である。
図2C】典型的な外側内側据え込み加工のパイプ端部を形成するのに使用されるステップの4分の1の断面図である。
図2D】典型的な外側内側据え込み加工のパイプ端部を形成するのに使用されるステップの4分の1の断面図である。
図3A】本発明の方法で使用される未加工管の図である。
図3B】本発明の密閉金型鍛造プロセスに関わる第1のステップを示した図である。
図3C】本発明を実施するのに使用される密閉金型鍛造プロセスにおける次の製造ステップを示した図である。
図4】本発明の方法を使用して製造されたHDDドリルパイプの部分側断面図であり、その新規な特徴を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明で示されている本発明の好適な形態、さらに本発明のさまざまな特徴および利点は、非限定的な例を参照して、以下の説明で詳述されるように、さらに十分に説明されている。周知の構成部品およびプロセスおよび製造技術の説明は、本明細書で説明されている本発明の主な特徴を不必要に不明瞭にすることがないように省略されている。後述する説明の中で使用される例は、単に、本発明を実施する方法を理解しやすくして、さらに当業者が本発明を実施することができるようにするためのものである。したがって、以下の例は、本発明の請求の範囲を制限するものと解釈すべきでない。
【0012】
本明細書の背景技術の部分で簡単に説明されているように、水平方向掘削(HDD)ドリルパイプは、いくつかの点で、油田(石油およびガス)ドリルパイプと異なる。Wikipedia(登録商標)は、傾斜掘削(非垂直坑井または孔の掘削作業)の定義を、(1)油田用傾斜掘削、(2)公共設備用傾斜掘削(HDD)、(3)一般に、石油製品を抽出するための垂直坑井ターゲットを横断する傾斜ボーリングの3つの主なグループに分けている。「非開削技術」とは、一般に、ほとんど開削する必要がなく、または連続開削する必要がなく、建設業および土木工事業の成長部門である地下建設作業に関連した一種のHDD技術のことである。「非開削技術」は、地表の交通、ビジネス、および他の活動の大きな混乱を伴わずに既存の地下インフラを新たに設置または交換または修理するのに使用することができる一群の方法、材料、および設備として定義することができる。非開削建設は、トンネル掘削、マイクロトンネル掘削(MTM)、水平方向ボーリングとしても知られている水平方向掘削(HDD)、パイプラミング(PR)、パイプジャッキング(PJ)、モーリング(moling)、水平方向オーガーボーリング(HAB)、および最小限の掘削で地下にパイプラインおよびケーブルを設置するための他の方法などの工法を含む。
【0013】
背景技術のセクションで簡単に説明したように、非開削水平方向掘削作業と従来の油田掘削作業とは異なるので、HDDドリルパイプは、油田ドリルパイプより短く、直径が小さくなる傾向がある。一般に、油田ドリルパイプが工具継手に溶着させるために内側外側の両方が据え込み加工されるのに対して、HDDドリルパイプ端部は、一般に、工具継手に溶着させずに、直接機械加工が施される。したがって、HDDパイプの据え込み領域は、油田ドリルパイプの据え込み領域に比べて、比較的長くなる傾向がある。上述したように、典型的なHDDパイプ部分は、例えば、パイプ部分の全長に比べて比較的長い(例えば、約9インチの長さ)ピン状端部を有する約10フィートの長さである。
【0014】
本発明の主な目的は、据え込み端部を有するHDDドリルパイプを形成する際に衝撃鍛造方法を使用することに関して上述した特定の欠点を克服することである。衝撃鍛造方法は、工具継手が溶着される油田ドリルパイプの場合は満足のいく結果が得られる場合があるが、非開削作業(特に、小さい内径のパイプが関係する)で使用されるタイプのHDDドリルパイプを製造する際に、さまざまな不利益を生じる。したがって、本発明は、従来の衝撃鍛造方法で実現されていた場合に比べて、ねじ切りされた据え込み領域が比較的小さい内径を有するHDD製品を製造するために、衝撃鍛造方法ではなく密閉金型鍛造方法を使用した改良製造プロセスを提供することに関する。
【0015】
図1を参照すると、図1には、本発明を実施するのに使用されるタイプの油圧式密閉金型鍛造プレスが簡略化した形で示されている。図1は、密閉金型鍛造方法を実施するのに使用される主要な部品を簡略化した形で示したに過ぎない。該プレスの構造および動作は、例えば、米国特許第4845972号明細書(Takeuchiら)、米国特許第5184495号明細書(Chunnら)、および国際公開第2012/150564号パンフレット(Camagni)に記載されており、いくつかの例が示されている。従来の油圧プレスは、長手方向軸を画定する支持構造体を備え、据え込み加工される「未加工パイプ」もしくは「管」は長手方向軸に沿って配置される。未加工管は、据え込み加工される端部が室温から一定の温度(例えば、1200℃)まで数分間加熱された後に、プレスに挿入される。パイプは、プレスに挿入された後、長手方向軸に沿った所定位置でパイプを維持する係止手段によって固定される。
【0016】
据え込み加工される端部は、据え込み材料のための完全な金型セットを形成する一対となる半金型間で密閉される。この点に関して、据え込みは、パイプの据え込み加工される端部に軸方向に入り込むパンチまたはマンドレルの動作によって行われる。特に、パンチは、第1のテーパ部を有し、その大きい方の直径はパイプの内部空洞の直径にほぼ等しい、またはパイプの内部空洞の直径より小さく、またパンチは、第2のテーパ部を有し、第2の直径部分はパイプの内径より大きく、据え込み加工されるパイプの外径にほぼ等しい。第2の円筒状部が端部に貫通することにより、金型の形状に合わせて再配置された加熱済み金属材料が局部的に圧縮される。半金型の係止手段は、パンチ貫通の間、半金型を正確な位置で維持できるようにする。パンチの動作は、通常、機械加工されるパイプが挿入され引き抜かれる側と反対側のプレスの第2の側で動作するピストンによって作動される。
【0017】
実際の据え込み操作は、1つまたは複数のステップから成る場合がある。1ステップ操作の場合、据え込みは、1つの金型と、加熱後の1つのパンチの1回の貫通とによって完成される。2ステップ操作の場合、据え込みプロセスは、第1の金型と第1のパンチとを使用して行われる第1の据え込み、および第1の据え込みの直後に第1の金型と異なる第2の金型と第1のパンチと異なる第2のパンチとを使用して行われる第2の据え込みを含む。用途に応じて、未加工パイプは、同じ端部の第3の据え込み、すなわち、3つのステップが必要になる場合があり、通常、1つまたは複数のステップは、2回目に据え込み加工される端部を加熱した後に行われる。
【0018】
従来の油圧据え込みプレスでは、金型は、プレスの支持構造体に剛性接続された適切な金型保持手段によって支持される。これらの金型保持手段は、据え込み加工される端部の周囲にある密閉位置と、半金型が分離される開放位置との間で半金型を移動させることにより冷却および潤滑が可能になる。この半金型の開放状態で、パイプはプレスに出入りすることができる。ほとんど全ての場合において、半金型はさらに開放位置でもプレスの支持構造体の実質的に内側の位置を維持する。
【0019】
図1は、上述の国際公開第2012/150564号パンフレットに記載されている既知のタイプの典型的な2ステップ式据え込みプレス11を示した図である。プレス11は、プレスの長手方向軸19に平行な縦梁17によって接続される一対の横材13、15によって形成される支持構造体を備える。プレス11は、第1のアーム23によってそれぞれ支持される一対となる上部半金型21を備え、第1のアーム23は、上部半金型21を密閉状態と開放状態との間で移動させるために、プレスの長手方向軸19上の定位置で接続された回転軸を中心として回転する。該プレス11はさらに、第2のアーム27によって支持される一対となる下部半金型25を備え、第2のアーム27は、下部半金型25を密閉位置と開放位置との間で移動させるために、プレス11の長手方向軸19上の定位置で接続された回転軸を中心として回転する。
【0020】
図1B図1Eは、プレス部品の動作を概略的に示した図である。図1Bは、未加工パイプ29の端部、上部半金型21、下部半金型25、クロスヘッド部品、および管の内径を形成するのに使用されるマンドレルもしくはパンチ35を示している。図1Cでは、未加工管29は、加熱されており、上部半金型21および下部半金型25によって係合されている。図1Dは、クロスヘッド部品33が係合した状態を示している。図1Eでは、管29の内径を形成するためにパンチ35が使用されている。
【0021】
本発明を実施するのに適した実際の機械は、SMS Meer Group(210 West Kensinger Drive,Suite 300,Cranberry Township,PA 16066)からSMS Meer Hydraulic Upsetter(商標)として市販されている。この機械は、誘導加熱ユニットおよび把持装置を含む完全な据え込み鍛造機パッケージとして提供されている。この機械は、800KWの加熱ユニットを使用して、およそ1時間当たり50本の管端部(1つの部品につき3回の据え込み作業をするとして)を製造することができる。機械は、中央に配置された管締め付け装置および可変ストローク部を有し、これらは共に、機械的据え込み鍛造機に比べると、耐衝撃性の改善に寄与する。さらに、半径方向フィンが形成されず、したがって、追加の研削が必要でなくなる。
【0022】
さらに図1A図1Eを参照すると、典型的な密閉金型鍛造操作では、未加工管は、パイプ把持装置によって、例えば、機械の右手側に配置され、例えば、3つの誘導加熱コイルを通過する。その後、未加工管は、トングによって集められ、機械の中心線へと移動される。トングは、その後、パイプを油圧据え込み鍛造機の金型の中に入れる。鍛造が行われた後、トングはパイプを金型から取り外す。部品が完成した場合、部品は冷却コンベヤへと移送される。さらに鍛造加工が必要である場合には、トングはパイプを再加熱するためにパイプを加熱コイルに戻し、それと同時に、機械は最終の鍛造加工のために別の組の工具の向きをラインに向ける。部品は、その後、最終鍛造加工されて、コンベヤに載せられる。
【0023】
図2A図2Dは、上記の米国特許第5184495号明細書に示されているような内側外側据え込み加工によってパイプ端部を形成するのに使用される実際のステップを示した図である。図2Aは、方法の第1のステップを示しており、第1のステップでは、管30の端部が金型32およびマンドレル34を使用して外側据え込み加工される。この第1のステップでは、管端部に隣接する管壁の円筒状部分36の厚さは増加し、大きい直径の円筒状部分36と管との間の移行部分を形成するように円錐状部分38が形成される。図2Bに示されている第2のステップでは、金型40がマンドレル42と結合して、円筒状部分36の厚さを増加させ、さらに円錐状部分38のテーパ角を増加させる。
【0024】
第2のステップの後、管の端部は、元の鍛造温度(約華氏2200度)まで再加熱され、その後、プロセスの第3のステップを受ける。図2Cに示されているように、この第3のステップでは、金型32(第1のステップで使用されたのと同じ金型)のみを使用して、ステップ1およびステップ2で外側に動いた金属を内側にプレスする。しかし、金型が密閉される前に、管は円筒状部分36および円錐状部分38を金型の円筒状部分に位置決めするために軸方向右側に移動される。このことにより、円筒状部分36の内径および外径より小さい内径および外径を有する円筒状部分44と、円筒状部分44の内側壁と据え込み加工されていない管壁との間に伸びる長い内側テーパ面を有する円錐状部分46とが形成される。
【0025】
図2Dに示されている最後の第4のステップでは、マンドレル48が第4のステップの金型48と結合して円筒状部分44を短くして、円筒状部分44より厚い壁および円筒状部分44より小さい内径を有する円筒状部分50および円錐状部分46より長い内側テーパ面を有する円錐状部分52を形成する。
【0026】
上記説明は、油田パイプの外側内側据え込み端部を有する部分に関して説明したものである。しかし、油田パイプ用に示されている据え込み領域の寸法は、HDDの用途には適していない。図3A図3Cは、比較的小さい直径のHDDドリルパイプを製造するために油圧密閉金型鍛造方法を使用して得られた結果を示した図である。「比較的小さい直径」とは、約1.5インチ未満の内径を意味する。
【0027】
図3Aは、加熱前の未加工管を示した図である。図3Bは、第1の据え込み部を形成するために管が加熱され、その後、第1の組の金型の中に配置された結果を示した図である。第1の組の金型によって形成された面は、番号54、56でそれぞれ示されている。第1のマンドレルによって形成された面は、番号58で示されている。図3Cは、第2の据え込み部を形成する第2の組の金型によって形成された面を番号60、62でそれぞれ示した図である。第2のマンドレルによって形成された内側面は、番号64で示されている。
【0028】
図3Cを参照すると、比率Φ/Φは、パイプの内側ねじ穴の領域の内径に対する外径の比率である。比較的長い据え込み部の典型的な機械的パンチ鍛造操作では、Φ/Φの比率が約3.5未満、例えば、場合によって、2.4である場合に、満足のいく結果が得られることは理解されるであろう。本発明の密閉金型鍛造方法は、Φ/Φの比率が2.5より大きい、好ましくは、3.0より大きい、最も好ましくは、約3.5であり、場合によっては、さらにそれ以上である場合に、比較的長い据え込み部を製造することができる。比較的「長い」据え込み部とは、図3C内の長さDが長さEの30%を超える長さのことである。
【0029】
図4は、本発明の方法に従って形成されたHDDドリルパイプの実際の鍛造部の断面図である。後でねじ切りされる内径の領域は、図4では、Φで示された領域である。例示的な寸法は、以下の表Iに示されている。
【表1】
【0030】
上述の例のΦ/Φの比率は、「約」もしくはおよそ3.5である、すなわち、3.43であることに留意されたい。これが、「約3.5」の記述から本出願人が意図することである。いずれにせよ、本発明の方法によって実現される比率は、上述の例で示されているように、約2.4である先行技術の比率よりも大きくなる。この例は、特定のHDDドリルパイプに適用した場合の本発明の方法の原理を説明するための例に過ぎないことは理解できるであろう。しかし、特定の寸法は、製造される特定のHDDドリルパイプに応じて変化することになる。
【0031】
本発明は、複数の利点を有する。本発明の密閉金型鍛造方法は、HDDドリルパイプ、特に、比較的小さい内径を有するパイプを形成する改良方法を提供する。3/4インチ未満の内径は、製造設備を解体および損傷することなく実現可能である。製造の自動化により、およそ1時間当たり50本のパイプ端部(1つの部品につき3回の据え込み作業をするとして)を製造することができる。密閉金型鍛造機は、中央に配置された管締め付け装置および可変ストローク部を有し、これらは共に、機械的据え込み鍛造機に比べると、耐衝撃性の改善に寄与する。さらに、半径方向フィンが形成されず、したがって、追加の研削が必要でなくなる。本発明の改良プロセスは、より厚い据え込み部を製造することができ、内径に対する外径の比率は約3.5、またはそれ以上とすることができる。据え込み部内側をより小さい直径にすることができるので、HDDドリルパイプ製造業者は、現在、従来の機械的衝撃鍛造作業では実現不可能な継手を含む全てのタイプの必要な継手をねじ切りすることができる。
【0032】
本発明は、1つの形態のみ示されているが、本発明はこの形態に限定されず、本発明の精神から逸脱せずに種々の変更および修正が可能である。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4