特許第6496319号(P6496319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496319
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】グリコペプチド組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20190401BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20190401BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20190401BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20190401BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20190401BHJP
   C07K 9/00 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   C07K7/06ZNA
   A61K38/08
   A61K8/64
   A61P17/16
   A61Q19/08
   C07K9/00
【請求項の数】22
【全頁数】66
(21)【出願番号】特願2016-538700(P2016-538700)
(86)(22)【出願日】2014年12月9日
(65)【公表番号】特表2017-505290(P2017-505290A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】CA2014051190
(87)【国際公開番号】WO2015085421
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年11月30日
(31)【優先権主張番号】61/914,309
(32)【優先日】2013年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516170978
【氏名又は名称】サセックス リサーチ ラボラトリーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ケネス ブラディー
(72)【発明者】
【氏名】ソー,レミック
(72)【発明者】
【氏名】ヴキック,ヴァーニャ
【審査官】 星 功介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−524487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列:パルミトイル−X1−Lys−X2−X3−Lys−X4−OHを有する5個又は6個のアミノ酸のグリコシル化オリゴペプチドであって、式中:
X1は、存在しないか、グリコシル化側鎖を有するSer、又は、グリコシル化側鎖を有するAsnであり;
X2は、Thr、グリコシル化側鎖を有するThr、グリコシル化側鎖を有するAsn、又はグリコシル化側鎖を有するSerであり;
X3は、Thr又はグリコシル化側鎖を有するThrであり;
X4は、Ser又はグリコシル化側鎖を有するSerであり、
X1、X2、X3及びX4のうちの少なくとも1つは、グリコシル化側鎖を有するアミノ酸であり、
それぞれのグリコシル化側鎖は、独立して、グルコース、N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、マンノース、マルトース、ラクトース、ラムノース、セロビオース、キシロース、及びフコースからなる群から選択される炭水化物でグリコシル化されており、
炭水化物のそれぞれのヒドロキシル基は、独立して、OHであるか、又はアセチル化されている
グリコシル化オリゴペプチド。
【請求項2】
前記炭水化物のヒドロキシル基が全てアセチル化されている、請求項1に記載のグリコシル化オリゴペプチド。
【請求項3】
前記炭水化物のヒドロキシル基が全てアセチル化されていない、請求項1に記載のグリコシル化オリゴペプチド。
【請求項4】
X1が存在しない、請求項1〜3のいずれか一項に記載のグリコシル化オリゴペプチド。
【請求項5】
2がグリコシル化側鎖を有するThrである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のグリコシル化オリゴペプチド。
【請求項6】
前記グリコシル化側鎖がグルコース、マンノース又はマルトースでグリコシル化されている、請求項5に記載のグリコシル化オリゴペプチド。
【請求項7】
X1、X3及びX4のアミノ酸がグリコシル化されていない、請求項5又は6に記載のグリコシル化オリゴペプチド。
【請求項8】
X4がグリコシル化側鎖を有するSerである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のグリコシル化オリゴペプチド。
【請求項9】
前記グリコシル化側鎖が、グルコース、ガラクトース又はマルトースでグリコシル化されている、請求項8に記載のグリコシル化オリゴペプチド。
【請求項10】
1、X2及びX3のアミノ酸がグリコシル化されていない、請求項8又は9に記載のグリコシル化オリゴペプチド。
【請求項11】
3がグリコシル化側鎖を有するThrである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のグリコシル化オリゴペプチド。
【請求項12】
1、X2及びX4アミノ酸がグリコシル化されていない、請求項11に記載のグリコシル化オリゴペプチド。
【請求項13】
配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドであって、式中、Thrが過アセチル化β−グルコースでグリコシル化されたトレオニンであるグリコシル化オリゴペプチド(配列番号4)。
【請求項14】
配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドであって、式中、Thrが過アセチル化α−マンノースでグリコシル化されたトレオニンであるグリコシル化オリゴペプチド(配列番号5)。
【請求項15】
配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドであって、式中、Thrが過アセチル化β−マルトースでグリコシル化されたトレオニンであるグリコシル化オリゴペプチド(配列番号6)。
【請求項16】
配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドであって、式中、Serが過アセチル化β−ガラクトースでグリコシル化されたセリンであるグリコシル化オリゴペプチド(配列番号7)。
【請求項17】
配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドであって、式中、Serが過アセチル化β−グルコースでグリコシル化されたセリンであるグリコシル化オリゴペプチド(配列番号8)。
【請求項18】
配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドであって、式中、Thrが過アセチル化β−マルトースでグリコシル化されたトレオニンであるグリコシル化オリゴペプチド(配列番号9)。
【請求項19】
配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドであって、式中、Serが過アセチル化β−マルトースでグリコシル化されたセリンであるグリコシル化オリゴペプチド(配列番号10)。
【請求項20】
配列番号12〜48のいずれか1つに記載の配列を有するグリコシル化オリゴペプチド。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載のグリコシル化オリゴペプチドを少なくとも1つ含む化粧品又は皮膚薬剤組成物。
【請求項22】
スキンケア組成物であって:
a)請求項1〜20のいずれか一項に記載の、安全かつ有効な量のグリコシル化オリゴペプチド;
b)落屑活性物質、抗ニキビ活性物質、にきび薬、ビタミンA化合物、ビタミンB化合物、ビタミンC化合物、ビタミンE化合物、カロチノイド、レチノイド、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド及びヘキサペプチド並びにこれらの誘導体、ヒドロキシ酸、ラジカル捕捉剤、キレーター、抗炎症剤、局所麻酔剤、日焼け活性物質、皮膚美白剤、日焼け防止剤、抗セルライト剤、フラボノイド、抗菌活性物質、皮膚治癒剤、抗真菌活性物質、ファルネソール、フィタントリオール、アラントイン、グルコサミン、ヒアルロン酸並びにこれらの混合物からなる群から選択される安全かつ有効な量の、少なくとも1種類の追加のスキンケア活性物質;
c)皮膚科学的に許容される担体
を含むスキンケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書に組み込まれる、2013年12月10日出願の米国仮特許出願第61/914,309号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、化粧品及び皮膚医薬用の組成物並びに化粧品及び皮膚医薬の用途で使用するための、5〜6個のアミノ酸からなるオリゴペプチドのグリコシル化に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚の老化の懸念は、皮膚科及び美容医療の分野において重要性が増している。皮膚の老化は、コラーゲン、エラスチン及びフィブロネクチンを含む細胞外マトリックス(ECM)成分の減少によって部分的に引き起こされる複雑なプロセスである(Callaghan,TM and Wilhelm,KP(2008)Int J.Cosmet.Sci.30:313−322)。I型コラーゲンは、最も豊富な種類のコラーゲンであり、構造的完全性、細胞接着及び遊走、組織リモデリング並びに創傷治癒において機能する(Trojanowska,M.et al.,(1998)J.Mol.Med.76:266−267;Chiquet,M.et al.,(1996)Biochem.Cell Biol.74:737−744)。1993年に、I型プロコラーゲンのカルボキシル末端由来のペンタペプチド(KTTKSとしても知られているLys−Thr−Thr−Lys−Ser、配列番号1)は、ECM生成を促進することが示された(Katayama,K.et al.,(1993)J.Biol.Chem.268:9941−9944)。ヒト肺線維芽細胞を用いたインビトロモデルでは、このペンタペプチドは、I型及びIII型コラーゲン並びにフィブロネクチンの合成増加を介してECMタンパク質を著しく増強することが見出された。
【0004】
前述のインビトロデータは、このペンタペプチドのコラーゲン及びフィブロネクチンの合成を刺激する能力を実証したが、その正味電荷が経皮浸透の問題となった。ペプチドの活性、安定性を増強し、親油性を高めるために、Lintnerら(Lintner (2003)米国特許第6,620,419号)は、このペンタペプチドを16炭素脂肪酸のパルミチン酸とコンジュゲートし、パルミトイルKTTKS(Pal−KTTKS、配列番号2)を作製した。この脂肪酸修飾により、KTTKS単独と比較して、皮膚を横切る送達がより効果的になった(Lintner,K(2002)Ann Dermatol Venereol 129:1S 105;Mas−Chamberlin,C.et al.,(2002)Ann Dermatol Venereol 129:1S 456;Tsai,TC及びHantash,BM(2008)Clin Med 2:1−20)。パルミトイル−KTTKSは、化粧剤として開発された最初のオリゴペプチドの1つであり、現在は化粧剤Matrixyl(商標)(セデルマSAS)中の有効成分である。Pal−KTTKSは、皮膚の局所治療のためのスキンケア組成物を形成するために、スキンケアに有効で、皮膚科学的に許容される担体で製剤化された(The Proctor and Gamble社)。得られた組成物は、特に、シワの形成に対する、及び他の皮膚の老化の影響に対する皮膚治療に有利であることが見出されている(Robinson(2002)米国特許第6,492,326号)。該Pal−KTTKSは、特定の条件下で線維芽細胞の生存率を減少させることが見出されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
線維芽細胞からのECMタンパク質の産生及び分泌を促進することができる代替オリゴペプチドを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、本発明は、配列:パルミトイル−X1−Lys−X2−X3−Lys−X4−OHを有する5又は6個のアミノ酸のグリコシル化オリゴペプチドを提供し、式中、X1は、存在しないか、グリコシル化側鎖を有するSer、又は、グリコシル化側鎖を有するAsnであり;X2は、Thr、グリコシル化側鎖を有するThr、グリコシル化側鎖を有するAsn、又はグリコシル化側鎖を有するSerであり;X3は、Thr又はグリコシル化側鎖を有するThrであり;X4は、Ser又はグリコシル化側鎖を有するSerであり:X1、X2、X3及びX4のうちの少なくとも1つは、グリコシル化側鎖を有するアミノ酸であり、それぞれのグリコシル化側鎖は、独立して、グルコース、N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、マンノース、マルトース、ラクトース、ラムノース、セロビオース、キシロース、及びフコースからなる群から選択される炭水化物でグリコシル化されており、炭水化物のそれぞれのヒドロキシル基は、独立して、OHであるか、又はアセチル化されている。このグリコシル化ペプチドの配列は配列番号3で定義されている。
【0007】
炭水化物の水酸基は、全てアセチル化されていてよい。
【0008】
炭水化物の水酸基は、全てアセチル化されていなくてよい。
【0009】
X1のアミノ酸は存在しなくてよい。
【0010】
好ましくは、アミノ酸の少なくとも1つは、マルトース、グルコース、ガラクトース、又はマンノースでグリコシル化されている。
【0011】
X2のアミノ酸は、グリコシル化側鎖を有するThrであってよい。このグリコシル化側鎖は、グルコース又はマルトースでグリコシル化されてよい。X1、X3及びX4のアミノ酸は、全てグリコシル化されなくてよい。
【0012】
X4のアミノ酸は、グリコシル化側鎖を有するSerであってよい。このグリコシル化側鎖は、グルコース又はガラクトースでグリコシル化されてよい。X1、X2及びX3アミノ酸のアミノ酸は、全てのグリコシル化されなくてよい。
【発明の効果】
【0013】
具体例では、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドが提供され、式中、Thrは、過アセチル化β−グルコースでグリコシル化されたトレオニンである(配列番号4)。
【0014】
本発明に係る別の代表的なオリゴペプチドは、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有し、式中、Thrは、過アセチル化α−マンノースでグリコシル化されたトレオニンである(配列番号5)。
【0015】
別の具体例では、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドが提供され、式中、Thrは、過アセチル化β−マルトースでグリコシル化されたトレオニンである(配列番号6)。
【0016】
さらに別の具体例では、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドが提供され、式中、Serは、過アセチル化β−ガラクトースでグリコシル化されたセリンである(配列番号7)。
【0017】
さらに別の具体例では、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドが提供され、式中、Serは、過アセチル化β−グルコースでグリコシル化されたセリンである(配列番号8)。
【0018】
さらに別の具体例では、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドが提供され、式中、Thrは、過アセチル化β−マルトースでグリコシル化されたトレオニンである(配列番号9)。
【0019】
さらに別の具体例では、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドが提供され、式中、Serは、過アセチル化β−マルトースでグリコシル化されたセリンである(配列番号10)。
【0020】
別の態様では、本発明は、上記の少なくとも1つのグリコシル化オリゴペプチドを含む化粧品用又は皮膚薬剤用の組成物を提供する。
【0021】
別の態様において、本発明は、個体において細胞により細胞外マトリックスタンパク質の分泌を増加させる方法を提供する。本方法は、個人に上記の組成物を局所投与することを含む。細胞外マトリックスタンパク質は、エラスチン、フィブロネクチン、又はコラーゲンであってよい。
【0022】
さらに別の態様において、本発明は、細胞による細胞外マトリックスタンパク質の分泌を増加させるための、上記のグリコシル化オリゴペプチドの使用を提供する。細胞外マトリックスタンパク質は、エラスチン、フィブロネクチン、又はコラーゲンであってよい。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は、以下のものを含むスキンケア組成物を提供する:(a)安全かつ有効な量の上記のグリコシル化オリゴペプチド、(b)落屑活性物質、抗ニキビ活性物質、ビタミンB化合物、レチノイド、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド及びヘキサペプチド並びにこれらの誘導体、ヒドロキシ酸、ラジカル捕捉剤、キレーター、抗炎症剤、局所麻酔剤、日焼け活性物質、皮膚美白剤、抗セルライト剤、フラボノイド、抗菌活性物質、皮膚治癒剤、抗真菌活性物質、ファルネソール、フィタントリオール、アラントイン、グルコサミン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、安全かつ有効な量の少なくとも1種類の追加のスキンケア活性物質、並びに(c)皮膚科学的に許容される担体。
【0024】
本明細書に開示するペプチドは、単独で又は互いに組み合わせて、溶液、分散液、エマルジョンの形態で使用されるか;マクロカプセル、マイクロカプセルもしくはナノカプセル、リポソーム又はカイロミクロンなどのベクターに封入されるか;マクロ粒子、マイクロ粒子もしくはナノ粒子中に含まれるか;マイクロスポンジ中に含まれるか;又は粉末有機ポリマー、タルク、ベントナイトもしくは別の無機物支持体上に吸着され得る。
【0025】
本明細書に開示するペプチドは、単独で又は互いに組み合わせて、生薬製剤;水中油型エマルジョン;油中水型エマルジョン;ミルク;ローション;ゲル化、増粘化、界面活性化もしくは乳化したポリマー、ポマード、ローション、キャピラリー、シャンプー、石鹸、パウダー、スティック、ペンシル、スプレー又はボディオイルで使用することができる。
【0026】
本明細書に開示するペプチドは、単独で又は互いに組み合わせて、抽出脂質、合成脂質、ゲル化、増粘化、界面活性化もしくは乳化したポリマー、水溶性もしくは脂溶性の有効成分、野菜エキス、組織抽出物、海洋エキス、太陽光フィルター、又は抗酸化剤などの従来使用されている任意の他の成分と共に使用することができる。
【0027】
本明細書に開示するペプチドは、単独で又は互いに組み合わせて、治癒、水和を促進するため、あるいは特にシワの形成もしくは悪化に対する、又は自然な皮膚老化もしくは加速された皮膚老化(皮膚病(heliodermia)、もしくは汚染など)に対するスキンケアのために化粧品用途で使用することができる。
【0028】
本明細書に開示するペプチドは、単独で又は互いに組み合わせて、化粧品用薬剤又は皮膚医薬用薬剤を調製するために使用されてよい。該ペプチド又はその薬剤は、治癒、水和を促進するため、あるいは特にシワの形成もしくは悪化に対する、又は自然な皮膚老化もしくは加速された皮膚老化(皮膚病(heliodermia)、もしくは汚染など)に対するスキンケアのために使用することができる。
【0029】
本明細書に開示するペプチドは、単独で又は互いに組み合わせて、いくつかの追加のスキンケア活性物質と共に使用することができる。代表的なスキンケア活動としては、創傷治癒、ストレッチマーク、乾癬、皮膚癌、皮膚炎、湿疹の出現の減少が挙げられる。
【0030】
本発明の他の態様及び特徴は、添付の図面と併せて、以下の特定の実施形態の説明を検討することにより当業者に明らかになるであろう。
【0031】
本発明の実施形態を、これから添付の図面を参照しながら、単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1A】ヒト皮膚線維芽細胞の治療後48時間の時点でのエラスチン分泌に対する代表的なグリコペプチドの有効性を対照の%として比較したグラフである。
図1B】ヒト皮膚線維芽細胞の治療後72時間の時点でのエラスチン分泌に対する代表的なグリコペプチドの有効性を対照の%として比較したグラフである。
図2A】ヒト皮膚線維芽細胞の治療後48時間の時点でのフィブロネクチン分泌に対する代表的なグリコペプチドの有効性を対照の%として比較したグラフである。
図2B】ヒト皮膚線維芽細胞の治療後72時間の時点でのフィブロネクチン分泌に対する代表的なグリコペプチドの有効性を対照の%として比較したグラフである。
図3A】代表的な化合物GP001−1(配列番号4)のHPLCプロファイルを示すグラフである。
図3B】代表的な化合物GP001−1(配列番号4)の質量分析を示すグラフである。
図4A】代表的な化合物GP002−3(配列番号8)のHPLCプロファイルを示すグラフである。
図4B】代表的な化合物GP002−3(配列番号8)の質量分析を示すグラフである。
図5A】GP002−7(配列番号7)のHPLCプロファイルを示すグラフである。
図5B】GP002−7(配列番号7)の質量分析を示すグラフである。
図6A】代表的な化合物GP003−9(配列番号6)のHPLCプロファイルを示すグラフである。
図6B】代表的な化合物GP003−9(配列番号6)の質量分析を示すグラフである。
図7A】代表的な化合物GP004−3(配列番号9)のHPLCプロファイルを示すグラフである。
図7B】代表的な化合物GP004−3(配列番号9)の質量分析を示すグラフである。
図8A】代表的な化合物GP004−4(配列番号10)のHPLCプロファイルを示すグラフである。
図8B】代表的な化合物GP004−4(配列番号10)の質量分析を示すグラフである。
図9】6種の代表的なグリコペプチド(GP001−1、GP002−3、GP002−7、GP003−9、GP004−3及びGP004−4)、並びに非グリコシル化Pal−KTTKS参照ペプチドの細胞形態に対する効果を示す位相コントラスト画像を示す。
図10A】48時間後の細胞生存率に対する6種の代表的なグリコペプチド(GP001−1、GP002−3、GP002−7、GP003−9、GP004−3及びGP004−4)、並びに非グリコシル化Pal−KTTKS参照ペプチドの効果を比較した(MTTアッセイによって測定した場合の)グラフである。
図10B】72時間後の細胞生存率に対する6種の代表的なグリコペプチド(GP001−1、GP002−3、GP002−7、GP003−9、GP004−3及びGP004−4)、並びに非グリコシル化Pal−KTTKS参照ペプチドの効果を比較した(MTTアッセイによって測定した場合の)グラフである。
図11A】ヒト皮膚線維芽細胞の処理後72時間の時点でのエラスチン分泌に対する6種の代表的なグリコペプチド(GP001−1、GP002−3、GP002−7、GP003−9、GP004−3及びGP004−4)、並びに非グリコシル化Pal−KTTKS参照ペプチドの有効性を対照の%として比較したグラフである。
図11B】ヒト皮膚線維芽細胞の処理後72時間の時点でのフィブロネクチン分泌に対する6種の代表的なグリコペプチド(GP001−1、GP002−3、GP002−7、GP003−9、GP004−3及びGP004−4)、並びに非グリコシル化Pal−KTTKS参照ペプチドの有効性を対照の%として比較したグラフである。
図12】ヒト皮膚線維芽細胞の処理後72時間の時点での総コラーゲン分泌に対する3種の代表的なグリコペプチド(GP003−9、GP004−3及びGP004−4)、並びに非グリコシル化Pal−KTTKS参照ペプチドの有効性を対照の%として比較したグラフである。
図13】ヒト皮膚(ヒト表皮ケラチノサイト及びヒト皮膚線維芽細胞で構成される)のインビトロ3Dモデルにおける処理後72時間の時点での対照の%として比較したエラスチン分泌に対する代表的なグリコペプチドGP003−9、及び非グリコシル化Pal−KTTKS参照ペプチドの有効性を示すグラフである。
図14】代表的なグリコペプチドGP003−9、及び非グリコシル化Pal−KTTKS参照ペプチドの形態に対する効果を示す、ヒト皮膚(ヒト表皮ケラチノサイト及びヒト皮膚線維芽細胞で構成される)のインビトロ3Dモデルのヘマトキシリン&エオシン染色切片の顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
グリコシル化と呼ばれる、特定の側鎖への炭水化物の共有結合によるタンパク質及びペプチドの翻訳後修飾は、タンパク質及びペプチドの機能を調節するのに重要なプロセスとして浮上している。
【0034】
このプロセスは、細胞型、グリコシル化の部位及び炭水化物鎖(グリカン)のサイズに応じて変化するように、細胞内で高度に調節されている。ヒトでは、タンパク質のグリコシル化の最も一般的な部位は、次の糖類:グルコース(Glc)、フコース(Fuc)、ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)及びシアル酸(Sia)によりアスパラギン残基(N−グリコシル化)並びにセリン残基及びトレオニン残基(O−グリコシル化)で生じる。グリコシル化には、次の糖類:ラクトース(Lac)、ラムノース(Rha)、セロビオース(Cel)、及びキシロース(Xyl)によるグリコシル化も含まれ得る。
【0035】
タンパク質のグリコシル化は、タンパク質の結合及び有効性を増加させ得る。例えば、コラーゲンのグリコシル化は、コラーゲンがウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体関連タンパク質(uPARAP/Endo180)などの膜受容体のレシチンドメインに結合するのを可能にする。ペプチドのグリコシル化は、結果として生じるペプチドの安定性も増加させ得る。
【0036】
炭水化物は、皮膚の主要構成成分の1つであり、皮膚の恒常性において役割を果たしている。炭水化物は、主に受容体のリガンド及び外部メッセージのコンダクターとして作用し、かつ隣接細胞との相互作用のために皮膚細胞上で見られる。炭水化物は、細胞の増殖及び分化、タンパク質合成に関わり、かつ組織の作り及び構造にも関与し得る。
【0037】
老化のプロセスでは、還元糖の存在が増加している。糖化は、タンパク質又は脂質分子に共有結合している内因性又は外因性の過剰な還元糖の結果として生じる天然の細胞プロセスである。糖化は、コラーゲン、フィブロネクチン及びエラスチンなどの細胞外タンパク質の架橋の増加をもたらし、糖を生物学的に機能不全にさせる。糖化は、皮膚ECMに糖化最終産物(AGE)と呼ばれる架橋の形成を可能にし、これらの生体分子の正常な機能を破壊する。糖化は、酵素の作用を制御することなく偶発的に発生し、シワの形成に関与することが示されている。還元糖は、老化プロセスを促進していると当技術分野で考えられている。グリコシル化は、糖化の有害なプロセスと混同されるべきではない。
【0038】
本発明に係るグリコシル化ペプチドは、グリコシル化ペプチドの安定性を高めること、老化プロセスの遅延においてその有効性を高めること、又はその両方が可能である。本発明に係るグリコシル化ペプチドは、例えば、ECMのタンパク質分解を減少させるか、又はECMタンパク質生合成を誘導することができる。代表的なECMタンパク質には、エラスチン、フィブロネクチン及びコラーゲンが含まれる。
【0039】
一般に、本発明は、配列パルミトイル−X1−Lys−X2−X3−Lys−X4−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドを提供し、式中、X1は存在しないか、又はグリコシル化側鎖を有するSerであるか、又はグリコシル化側鎖を有するAsnであり;X2は、Thr、グリコシル化側鎖を有するThr、グリコシル化側鎖を有するAsn、又はグリコシル化側鎖を有するSerであり;X3は、Thr、又はグリコシル化側鎖を有するThrであり;X4は、Ser又はグリコシル化側鎖を有するSerである。X1、X2、X3及びX4のうちの少なくとも1つは、グリコシル化側鎖を有するアミノ酸である。それぞれのグリコシル化側鎖は、独立して、グルコース、N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、マンノース、マルトース、ラクトース、ラムノース、セロビオース、キシロース、及びフコースからなる群から選択される炭水化物でグリコシル化されている。炭水化物の各ヒドロキシル基は、独立して、OHであるか、又はアセチル化されている。グリコシル化ペプチドの配列は配列番号3で定義されている。
【0040】
いくつかの例において、炭水化物の全ての水酸基がアセチル化されている。アセチル化ヒドロキシル基を有するオリゴ糖は、細胞膜透過性を向上させることができる。このような改善された透過性は、皮膚を横切る送達を改善することができる。
【0041】
本発明に係る好ましいオリゴペプチドは、N末端パルミトイル基を有する。N末端パルミトイル基を有するオリゴペプチドは、細胞膜透過性を向上させることができる。このような改善された透過性は、皮膚を横切る送達を改善することができる。好ましくは、本発明に係るオリゴペプチドは、X1が存在しない5個のアミノ酸を有する。
【0042】
いくつかの好ましいオリゴペプチドにおいて、X2は、グリコシル化側鎖を有するThrである。このグリコシル化側鎖は、グルコース、マンノース又はマルトースでグリコシル化されている。残りのアミノ酸は、好ましくは、グリコシル化されていない。
【0043】
別の好ましいオリゴペプチドにおいて、X3はグリコシル化側鎖を有するThrである。このグリコシル化側鎖は、マルトースでグリコシル化されている。残りのアミノ酸は、好ましくは、グリコシル化されていない。
【0044】
さらに他の好ましいオリゴペプチドにおいて、X4は、グリコシル化側鎖を有するSerである。このグリコシル化側鎖は、グルコース、ガラクトース又はマルトースでグリコシル化されている。残りのアミノ酸は、好ましくは、グリコシル化されていない。
【0045】
本発明に係る1つの代表的なオリゴペプチドは、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有し、Thrは、過アセチル化β−グルコースでグリコシル化されたトレオニンである(配列番号4)。
【0046】
本発明に係る別の代表的なオリゴペプチドは、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有し、Thrは、過アセチル化α−マンノースでグリコシル化されたトレオニンである(配列番号5)。
【0047】
本発明に係るさらに別の代表的なオリゴペプチドは、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有し、Thrは、過アセチル化β−マルトースでグリコシル化されたトレオニンである(配列番号6)。
【0048】
本発明に係るさらに別の代表的なオリゴペプチドは、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有し、Serは、過アセチル化βガラクトースでグリコシル化されたセリンである(配列番号7)。
【0049】
本発明に係るさらなる代表的なオリゴペプチドは、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有し、Serは、過アセチル化β−グルコースでグリコシル化されたセリンである(配列番号8)。
【0050】
さらなる具体例では、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドが提供され、Thrは、過アセチル化β−マルトースでグリコシル化されたトレオニンである(配列番号9)。
【0051】
さらに別の具体例では、配列:パルミトイル−Lys−Thr−Thr−Lys−Ser−OHを有するグリコシル化オリゴペプチドが提供され、Serは、過アセチル化β−マルトースでグリコシル化されたセリンである(配列番号10)。
【0052】
上にまとめた代表的なグリコシル化オリゴペプチドなどの、本発明に係るグリコシル化オリゴペプチドは、非グリコシル化Pal−KTTKSと比較して有効性の増強、毒性の減少、又はその両方を示すことができる。
【0053】
有効性の増強とは、本発明の文脈では、次のキット:フィブロネクチン(Takara、MK115)、エラスチン(Uscn Life Science社、E91337Hu)及び総コラーゲン(Chondrex社、9062)を用いて測定した場合、非グリコシル化Pal−KTTKSと比較して、インビトロでのヒト皮膚線維芽細胞培養物中のエラスチン、フィブロネクチン又は総コラーゲンの分泌のより大きい誘導を指す。
【0054】
スキンケア製品として使用され、有効な製剤のために、グリコシル化ペプチドは、好ましくは、製剤中で安定であり、実質的に皮膚内への吸収性があり、かつ目的物に対して生物学的に活性がなければならない。
【0055】
本明細書で使用する用語「安全かつ有効な量」は、正の利点、好ましくは良好なケラチン組織の外観を著しく誘導するか、又は本明細書に開示する利点を独立して又は組み合わせて含む利点を感じるのに十分な化合物もしくは組成物の量であるが、重篤な副作用を回避する、すなわち、当業者の健全な判断の範囲内で合理的な損益比を提供するには十分に低い量を意味する。
【0056】
本明細書で使用する用語「たるみ」は、皮膚エラスチンの減少、皮膚エラスチンへの損傷、皮膚エラスチンへの変化、及び/又は皮膚エラスチン中の異常の結果として生じる皮膚の弛緩、緩み、又はそのような状態を意味する。
【0057】
本明細書で使用する用語「平滑化」及び「軟化」は、その感触が改善されるようにケラチン組織の表面を変化させることを意味する。
【0058】
「皮膚の老化の兆候」には、全ての外見的、触覚的症状だけでなく、皮膚の老化による他のマクロ又はミクロの効果が含まれるが、これらに限定されない。そのような兆候は、内因性の要因もしくは外因性の要因、例えば、加齢による老化及び/もしくは環境破壊によって誘導されるか、又は引き起こされ得る。これらの兆候は、シワ及び粗い深いシワ、皮膚の線、割れ目、隆起、大きな孔(例えば、汗腺管、皮脂腺、もしくは毛包などの付属器構造に関連する)、又は凹凸や粗さ、皮膚の弾力性の損失(機能的皮膚エラスチンの損失及び/もしくは不活性化)、たるみ(眼の領域及び顎の腫れを含む)、皮膚の堅さの喪失、皮膚のツッパリ感の喪失、変形からの皮膚の反動の喪失、変色(目の下の円を含む)、シミ、血色の悪さ、年齢によるシミもしくはそばかすなどの色素過剰の皮膚領域、角化症、異常な分化、過剰角化、弾力繊維症、コラーゲン分解、並びに角質層、真皮、表皮、皮膚血管系(例えば、毛細血管拡張症もしくはクモ状血管)、及び下層組織、特に、皮膚に近接した組織内の他の組織学的変化を含むが、これらに限定されないプロセスから生じ得る。
【0059】
本発明に係るグリコシル化ペプチドは、皮膚の質感及び色の不連続性を含む、哺乳類の皮膚の視覚的及び/又は触覚的な不連続性を治療で調節するのに有用であり得る。例えば、孔の見かけの直径は減少し、開口部に最も近い組織の見かけの高さは付属器内(interadnexal)の皮膚の見かけの高さに近づき、皮膚の色調/色はより均一になり、線及び/もしくはシワの長さ、深さ、並びに/又は他の寸法は減少する。
【0060】
本発明によるグリコシル化ペプチドは、皮膚の状態を調節するのに、特にケラチン組織の状態を調節するのにも有用であり得る。皮膚の状態、すなわち、哺乳類、特にヒトの皮膚の状態の調節は、体の内部及び/又は外部の要因によって誘発されるか、又は引き起こされ得る状態が原因で必要とされる場合が多い。例としては、環境破壊、(紫外線を含む)放射線被曝、加齢による老化、閉経状態(例えば、閉経後の皮膚の変化)、ストレス、病気などが挙げられる。例えば、「皮膚の状態の調整」は、皮膚の状態の予防的調節及び/又は治療的調節を含み、以下の利点のうちの1以上を含み得る:皮膚萎縮を減少させるための皮膚の肥厚(すなわち、皮膚の表皮及び/又は真皮及び/又は皮下(例えば、皮下脂肪もしくは筋肉)の層の構築、爪及び毛軸のケラチン層にも適用できる)、真皮−表皮の境界線の畳み込み(乳頭間隆起としても知られている)の増加、弾力繊維症、たるみ、変形からの皮膚の反動の喪失などの皮膚の弾力性の喪失(機能的皮膚エラスチンの欠乏、損害及び/又は不活性化)の防止;目の下の円などの非メラニン皮膚変色の防止、シミ(例えば、酒さに起因する、例えば、不均一な赤色着色)(以下では、「赤斑」と呼ぶ)、血色の悪さ(淡い色)、毛細血管拡張症又はクモ状血管によって引き起こされる変色の防止。
【0061】
本明細書で使用する場合、皮膚の状態の予防的調整には、皮膚の視覚的及び/もしくは触覚的不連続性(例えば、視覚的又は感触によって検出され得る皮膚の質感の凹凸)の遅延、最小化並びに/又は防止が含まれる。
【0062】
本明細書で使用する場合、皮膚の状態の予防的調整には、皮膚の不連続性の改善、例えば、減少、最小化及び/又は除去が含まれる。
【0063】
本発明に係るグリコシル化ペプチドは、皮膚の外観及び/又は感触を改善するのにも有用であり得る。例えば、本発明に係る組成物は、皮膚への組成物の適用後に皮膚外観における視覚的即時改善を提供することによって、皮膚状態の外観を制御するのに有用であり得る。一般的に、粒子状物質をさらに含む本発明の組成物は、視覚的即時改善を提供するのに最も有用であろう。
【0064】
本発明の組成物は、安定性、著しい(消費者が許容できない)皮膚刺激がないこと、及び良い美学を含む追加の利点を提供することができる。
【0065】
本発明の組成物は安定している。本発明に係るグリコシル化ペプチドを含む、本明細書で使用する成分は、組成物中で安定であり、互いに適合性があり、かつナイアシンアミド、フィタントリオール、ファルネソール、ビサボロール、及びサリチル酸などの他のスキンケア活性物質と適合性がある。したがって、ナイアシンアミドなどの追加のスキンケア活性物質とのオリゴペプチドの組み合わせを含有する組成物は、添加剤及び/又は相乗的な皮膚の利点を提供することができる。さらに、結果として得られるスキンケア組成物は、良好な製品安定性及び適度に長い貯蔵寿命を有する。
【0066】
少なくとも1種類の追加のスキンケア活性物質と組み合わせて得られる、本発明に係るグリコシル化ペプチドを含有する組成物は、良い美学を有する。良い美学の例としては、(i)明るく、ベタベタしない、(ii)皮膚に滑らかな、絹のような感触を与え、(iii)簡単に広がり、かつ/又は(iv)迅速に吸収される贅沢なクリーム及びローションなどの組成物が挙げられる。良い美学の他の例としては、消費者に許容される外観を有し(すなわち、不快な臭い又は変色が存在しない)、かつ良好な皮膚感触を提供する組成物が挙げられる。
【0067】
好ましい例では、スキンケア製品は、グリコシル化ペプチドを該組成物の重量で約0.01%〜約50%含む。より好ましい例では、該スキンケア製品は、グリコシル化ペプチドを該組成物の重量で約0.05%〜約20%含む。さらにより好ましい例では、該スキンケア製品は、グリコシル化ペプチドを該組成物の重量で約0.1%〜約10%含む。
【0068】
本発明のグリコシル化オリゴペプチドは、少なくとも1種類の追加の成分を用いて製剤化することができる。該組成物がヒトのケラチン組織と接触する場合、追加成分は、ケラチン組織への適用に適していなければならず、すなわち、該組成物に組み込まれた場合、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などがなく、かつ健全な医学的判断の範囲内にあって、ヒトのケラチン組織と接触させて使用するのに適する。CTFA化粧品成分ハンドブック、第2版(1992)には、本発明の組成物に使用するのに適する、スキンケア産業で一般的に使用されている非限定的で多種多様な化粧品及び医薬品成分が記載されている。これらの構成要素のクラスの例としては、研磨剤、吸収剤、芳香剤、顔料、着色料/着色剤などの美的成分、精油、皮膚感覚剤、収斂剤など(例えば、丁子油、メントール、カンファー、ユーカリ油、オイゲノール、乳酸メンチル、マンサク留出物)、抗ニキビ剤、固化防止剤、消泡剤、抗菌剤(例えば、ヨードプロピルブチルカルバメート)、酸化防止剤、結合剤、生物学的添加物、緩衝剤、増量剤、キレート剤、化学添加剤、着色剤、化粧品収斂剤、化粧品用殺生物剤、変性剤、薬物収斂剤、外用鎮痛剤、フィルム形成剤もしくは物質、例えば、該組成物のフィルム形成特性及び持続性を補助するためのポリマー(例えば、エイコセンとビニルピロリドンのコポリマー)、不透明化剤、pH調整剤、噴射剤、還元剤、皮膚漂白及び美白剤(例えば、ヒドロキノン、コウジ酸、アスコルビン酸、マグネシウムアスコルビルホスフェート、アスコルビルグルコサミン)、皮膚コンディショニング剤(例えば、湿潤剤及び閉塞性の湿潤剤を含む湿潤剤)、皮膚の鎮静剤及び/又は治癒剤(例えば、パンテノール及び誘導体(例えば、エチルパンテノール)、アロエベラ、パントテン酸及びその誘導体、アラントイン、ビサボロール、及びグリチルリチン酸二カリウム)、皮膚処理剤、増粘剤、並びにビタミン類及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0069】
ファルネソール
本発明の局所用組成物は、安全かつ有効な量のファルネソールを含有してよい。ファルネソールは、スクアレン及びステロール類、とりわけコレステロールの生合成における前駆体及び/又は中間体として作用すると考えられている天然物質である。ファルネソールは、タンパク質の修飾及び調節(例えば、タンパク質のファルネシル化)にも関与しており、ファルネソールに応答する細胞核内受容体が存在する。
【0070】
化学的には、ファルネソールは、[2E,6E]−3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−1−オールであり、本明細書で使用する「ファルネソール」は、そのような異性体及び互変異性体を含む。ファルネソールは、例えば、ファルネソール(Dragoco社、10ゴードン・ドライブ、ニュージャージー州トトワの異性体混合物)及びトランス−トランス−ファルネソール(Sigma Chemical社、私書箱14508、ミズーリ州セントルイス)の名で市販されている。
【0071】
本発明の組成物中に存在する場合、該組成物は、好ましくは、ファルネソールを該組成物の重量で約0.001%〜約50%、より好ましくは約0.01%〜約20%、さらにより好ましくは約0.1%〜約15%、さらにより好ましくは約0.1%〜約10%、さらにより好ましくは約0.5%〜約5%、かつさらにより好ましくは約1%〜約5%含有する。
【0072】
フィタントリオール
本発明の局所用組成物は、安全かつ有効な量のフィタントリオールを含有してよい。フィタントリオールは、3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカン−1,2,3−トリオールとして知られる化学物質の一般名である。フィタントリオールは、BASF(1609ビドルアベニュー、ミシガン州ワイアンドット)から市販されている。例えば、フィタントリオールは、クモ状脈管/赤斑治療剤、暗い円/腫れぼったい目の補修剤、黄ばみ補修剤、たるみ治療剤、かゆみ止め薬、皮膚の肥厚剤、細孔減少剤、油/光沢低減剤、炎症後色素沈着の補修剤、創傷治癒薬、抗セルライト剤として有用であり、シワ及び細い線を含む皮膚の質感を調整する。
【0073】
本発明の組成物において、フィタントリオールは、該組成物の重量で好ましくは約0.001%〜約50%、より好ましくは約0.01%〜約20%、さらにより好ましくは約0.1%〜約15%、さらにより好ましくは約0.2%〜約10%、さらにより好ましくは約0.5%〜約10%、かつさらにより好ましくは約1%〜約5%の量で含まれる。
【0074】
落屑活性物質
該組成物の重量で、より好ましくは約0.1%〜約10%、さらにより好ましくは約0.2%〜約5%、好ましくは約0.5%〜約4%の安全かつ有効な量の落屑活性物質を、本発明の組成物に添加してよい。落屑活性物質は、本発明の皮膚外観の利点を向上させる。例えば、落屑活性物質は、皮膚の質感(例えば、滑らかさ)を改善する傾向がある。本明細書で使用するのに適する1種類の落屑系は、スルフヒドリル化合物及び双性イオン性界面活性剤を含有しており、参照により本明細書に組み込まれるBissettの米国特許第5,681,852号に記載されている。本明細書で使用するのに適する別の落屑系は、サリチル酸及び双性イオン性界面活性剤を含有しており、参照により本明細書に組み込まれるBissettの米国特許第5,652,228号に記載されている。これらの出願に記載されているような双性イオン性界面活性剤も、本明細書では落屑剤として有用であり、セチルベタインが特に好ましい。
【0075】
抗ニキビ活性物質
本発明の組成物は、安全かつ有効な量の1種以上の抗ニキビ活性物質を含有してよい。有用な抗ニキビ活性物質の例としては、レゾルシノール、硫黄、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、エリスロマイシン、亜鉛などが挙げられる。適切な抗ニキビ活性物質のさらなる例は、1997年3月4日に発行されたMcAteeらの米国特許第5,607,980号にさらに詳細に記載されている。
【0076】
抗シワ活性物質/抗萎縮活性物質
本発明の組成物は、安全かつ有効な量の1種以上の抗シワ活性物質又は抗萎縮活性物質をさらに含有してよい。本発明の組成物に使用するのに適する代表的な抗シワ/抗萎縮活性物質としては、硫黄含有D及びLアミノ酸並びにこれらの誘導体及び塩、特に、N−アセチル誘導体が挙げられ、その好ましい例はとしては、特にケラチン組織状態、例えば、皮膚状態を調節する際に本発明のケラチン組織の外観の利点を増強するN−アセチル−L−システイン;チオール類、例えば、エタンチオール;ヒドロキシ酸(例えば、乳酸及びグリコール酸などのアルファ−ヒドロキシ酸もしくはサリチル酸などのベータ−ヒドロキシ酸及びオクタノイル誘導体などのサルチル酸誘導体)、フィチン酸、リポ酸;リゾホスファチジン酸、皮膚落屑剤(例えば、フェノールなど)、ビタミンB化合物及びレチノイド類が挙げられる。
【0077】
a)ビタミンB化合物
本発明の組成物は、安全かつ有効な量のビタミンB化合物を含有してよい。ビタミンB化合物は、同時係属中の1997年4月11日出願の米国出願第08/834,010(1997年10月30日公開の国際公開WO97/39733A1に相当する)に記載されているような皮膚の状態を調節するのに特に有用である。ビタミンB化合物が本発明の組成物中に存在する場合、該組成物は、ビタミンB化合物を、該組成物の重量で、約0.01%〜約50%、より好ましくは約0.1%〜約10%、さらにより好ましくは約0.5%〜約10%、さらにより好ましくは約1%〜約5%、かつさらにより好ましくは約2%〜約5%含む。
【0078】
本明細書で使用する「ビタミンB化合物」は、式:
【化1】
(式中、Rは、−CONH(すなわち、ナイアシンアミド)、−COOH(すなわち、ニコチン酸)又は−CHOH(すなわち、ニコチニルアルコール);それらの誘導体;及び前述のいずれかの塩である)
を有する化合物を意味する。
【0079】
前述のビタミンB化合物の代表的な誘導体としては、ニコチン酸非血管拡張性エステル(例えば、トコフェリルニコチネート)、ニコチニルアミノ酸類、カルボン酸のニコチニルアルコールエステル類、ニコチン酸N−オキシド及びナイアシンアミドN−オキシドを含むニコチン酸エステル類が挙げられる。
【0080】
適切なビタミンB化合物の例は、当技術分野で周知であり、いくつかの供給元、例えば、Sigma Chemical社(ミズーリ州セントルイス)、ICN Biomedicals社(カリフォルニア州アービン)及びAldrich Chemical社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から市販されている。
【0081】
ビタミン化合物類は、実質的に純粋な物質として、又は天然(例えば、植物)供給源からの適切な物理的及び/又は化学的単離により得られる抽出物として含まれてよい。
【0082】
b)レチノイド類
本発明の組成物は、レチノイドを含有してよい。本明細書で使用する「レチノイド」は、ビタミンAの全ての天然及び/又は合成類似体又は皮膚においてビタミンAの生物学的活性を有するレチノール様化合物、並びにこれらの化合物の幾何異性体及び立体異性体を含む。レチノイドは、好ましくはレチノール、レチノールエステル(例えば、レチニルパルミテート、レチニルアセテート、レチニルプロピオネートを含むレチノールのC〜C22アルキルエステル類)、レチナール、及び/又はレチノイン酸(全トランスレチノイン酸及び/又は13−シス−レチノイン酸を含む)、より好ましくはレチノイン酸以外のレチノイド類である。これらの化合物は、当技術分野で周知であり、いくつかの供給元、例えば、Sigma Chemical社(ミズーリ州セントルイス)、及びBoerhinger Mannheim社(インディアナ州インディアナポリス)から市販されている。本明細書で有用である他のレチノイド類は、1987年6月30日発行のParishらの米国特許第4,677,120号、1989年12月5日発行のParishらの米国特許第4,885,311号、1991年9月17日発行のPurcellらの米国特許第5,049,584号、1992年6月23日発行のPurcellらの米国特許5,124,356号、及び1992年9月22日発行されたPurcellらの再発行米国特許第34,075号に記載されている。他の適切なレチノイド類としては、トコフェリルレチノエート[レチノイン酸(トランス又はシス)トコフェロールエステル、アダパレン{6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸}、及びタザロテン(エチル−6−[2−(4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)−エチニル]ニコチネート)が挙げられる。好ましいレチノイド類としては、レチノール、レチニルパルミテート、レチニルアセテート、レチニルプロピオネート、レチナール及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0083】
レチノイドは、実質的に純粋な物質として、又は天然(例えば、植物)供給源からの適切な物理的及び/又は化学的単離により得られる抽出物として含まれ得る。レチノイドは、好ましくは実質的に純粋、より好ましくは本質的に純粋である。
【0084】
本発明に係る組成物は、安全かつ有効な量のレチノイドを含むことができ、その結果、得られる組成物は、ケラチン組織の状態を調節するのに、好ましくは、皮膚の視覚的及び/又は触覚的不連続性を調整するのに、さらに好ましくは、皮膚の老化の兆候を調節するのに、さらにより好ましくは、皮膚の老化に関連する皮膚の質感における視覚的及び/又は触覚的不連続性を調節するのに安全かつ有効である。該組成物は、好ましくは、レチノイドを約0.005%〜約2%、より好ましくは0.01%〜約2%含有する。レチノールは、好ましくは約0.01%〜約0.15%の量で使用され、レチノールエステル類は、好ましくは約0.01%〜約2%(例えば、約1%)の量で使用され、レチノイン酸は、好ましくは約0.01%〜約0.25%の量で使用され、トコフェリルレチノエート、アダパレン、及びタザロテンは、好ましくは約0.01%〜約2%の量で使用される。
【0085】
本発明の組成物は、レチノイド及びビタミンB化合物の両方を含有する場合、レチノイドは、好ましくは上記の量で使用され、ビタミンB化合物は、好ましくは約0.1%〜約10%、より好ましくは約2%〜約5%の量で使用される。
【0086】
(c)ヒドロキシ酸
本発明の組成物は、安全かつ有効な量のヒドロキシ酸を含有してよい。本発明の組成物に使用するのに好ましいヒドロキシ酸は、サリチル酸及びサリチル酸誘導体を含む。本発明の組成物中に存在する場合、サリチル酸は、好ましくは約0.01%〜約50%、より好ましくは約0.1%〜約20%、さらにより好ましくは約0.1%〜約10%、さらにより好ましくは約0.5%〜約5%、かつさらにより好ましくは約0.5%〜約2%の量で使用される。
【0087】
ペプチド類
ジペプチド、トリペプチド、及びテトラペプチド並びにこれらの誘導体を含むが、これらに限定されない追加のペプチド類が、安全かつ有効な量で本発明の組成物に含まれてよい。本明細書で使用する「ペプチド」は、天然に存在するペプチド及び合成ペプチドの両方を指す。ペプチドを含有する天然及び市販の組成物も本明細書で有用である。
【0088】
本明細書で使用するのに適するジペプチドとしては、カルノシン(β−ala−his)が挙げられる。本明細書で使用するのに適するトリペプチドとしては、gly−his−lys、arg−Lys−arg、his−gly−glyが挙げられる。好ましいトリペプチド及びその誘導体としては、BiopeptideCL(登録商標)(フランスのSederma社から市販されている100ppmのパルミトイル−gly−his−lys)として購入することができるパルミトイル−gly−his−lys;ペプチドCK(arg−lys−arg);ペプチドCK+(ac−arg−lys−arg−NH);及びSigma社(ミズーリ州セントルイス)からラミンとして市販されているhis−gly−glyの銅誘導体が挙げられる。本明細書で使用するのに適するテトラペプチドとしては、ペプチドE、arg−ser−arg−lys(配列番号11)が挙げられる。
【0089】
好ましくは、追加のペプチドは、パルミトイル−gly−his−lys、ベータ−ala−his、これらの誘導体、及びこれらの組み合わせから選択される。より好ましくは、追加のペプチドは、パルミトイル−gly−his−lys、これらの誘導体、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0090】
本発明の組成物に含まれる場合、追加のペプチドは、該組成物の重量で、好ましくは約1×10−6%〜約10%、より好ましくは約1×10−6%〜約0.1%、さらにより好ましくは約1×10−5%〜約0.01%の量で含まれる。ペプチドのCarnosine(登録商標)を含む特定の実施形態において、該組成物は、かかるペプチドを該組成物の重量で、好ましくは約0.1%〜約5%含有する。ペプチド含有組成物Biopeptide CL(登録商標)が含まれる他の実施形態において、得られる組成物は、好ましくは、Biopeptide CL(登録商標)を該組成物の重量で約0.1%〜約10%含有する。
【0091】
抗酸化剤/ラジカルスカベンジャー
本発明の組成物は、安全かつ有効な量の抗酸化剤/ラジカルスカベンジャーを含んでよい。抗酸化剤/ラジカルスカベンジャーは、角質層内で増加したスケーリング又は質感の変化を引き起こし得るUV照射に対する保護、並びに皮膚の損傷を引き起こし得る他の環境因子に対する保護を提供するのに特に有用である。
【0092】
安全かつ有効な量の酸化防止剤/ラジカルスカベンジャーを、本発明の組成物に、好ましくは該組成物の約0.1%〜約10%、より好ましくは約1%〜約5%添加してよい。
【0093】
アスコルビン酸(ビタミンC)及びその塩、脂肪酸のアスコルビルエステル類、アスコルビン酸誘導体類(例えば、マグネシウムアスコルビルホスフェート、ナトリウムアスコルビルホスフェート、アスコルビルソルベート)、トコフェロール(ビタミンE)、ソルビン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロールの他のエステル類、ブチル化ヒドロキシ安息香酸(butylated hydroxy benzoic acids)及びこれらの塩、6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸(商品名Trolox(登録商標)で市販されている)、没食子酸及びそのアルキルエステル類、特に没食子酸プロピル、尿酸及びその塩及びアルキルエステル類、ソルビン酸及びその塩、リポ酸、アミン類(例えば、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、アミノ−グアニジン)、スルフヒドリル化合物類(例えば、グルタチオン)、ジヒドロキシフマル酸及びその塩、リシンピドレート、アルギニンピロレート、ノルジヒドログアイアレチン酸、バイオフラボノイド類、クルクミン、リジン、メチオニン、プロリン、スーパーオキシドジスムターゼ、シリマリン、茶抽出物、ブドウの皮/種子抽出物、メラニン、及びローズマリー抽出物などの抗酸化剤/ラジカルスカベンジャーを使用してよい。好ましい抗酸化剤/ラジカルスカベンジャーは、トコフェロールソルベート及びトコフェロールの他のエステル類、より好ましくはソルビン酸トコフェロールから選択される。例えば、局所用組成物中の、本発明に適用できるトコフェロールソルベートの使用については、1989年7月11日発行のDonald L.Bissett,Rodney D.Bush及びRanjit Chatterjeeの米国特許第4,847,071号に記載されている。
【0094】
キレーター類
本発明の組成物は、安全かつ有効な量のキレーター又はキレート剤も含んでよい。本明細書で使用する「キレーター」又は「キレート剤」は、金属イオンが容易に化学反応に関与できない、又は化学反応を触媒できないように錯体を形成することによって系から金属イオンを除去できる活性薬剤を意味する。キレート剤の含有は、過剰なスケーリング又は皮膚の質感の変化に関与し得るUV照射に対する保護及び皮膚損傷を引き起こし得る他の環境要因に対する保護を提供するのに特に有用である。
【0095】
安全かつ有効な量のキレート剤を、本発明の組成物に、好ましくは該組成物の約0.1%〜約10%、より好ましくは約1%〜約5%添加してよい。本明細書に有用である代表的なキレーターは、1996年1月30日発行のBissettらの米国特許第5,487,884号;1995年10月31日公開のBushらの国際公開番号91/16035;及び1995年10月31日公開Bushらの国際公開番号91/16034に開示されている。本発明の組成物に有用な好ましいキレーター類は、フリルジオキシム、フリルモノオキシム、及びこれらの誘導体である。
【0096】
フラボノイド類
本発明の組成物は、必要に応じてフラボノイド化合物を含有してよい。フラボノイドは、米国特許第5,686,082号及び同第5,686,367号に広く開示されており、両方とも参照により本明細書に組み込まれる。本発明での使用に適するフラボノイド類としては、非置換フラバノン類、一置換フラバノン類、及びこれらの混合物から選択されるフラバノン類;非置換カルコン類、一置換カルコン類、二置換カルコン類、三置換カルコン類、及びこれらの混合物から選択されるカルコン類;非置換フラボン類、一置換フラボン類、二置換フラボン類、及びこれらの混合物から選択されるフラボン類;1種以上のイソフラボン類;非置換クマリン類、一置換クマリン類、二置換クマリン類、及びこれらの混合物から選択されるクマリン類;非置換クロモン類、一置換クロモン類、二置換クロモン類、及びこれらの混合物から選択されるクロモン類;1種以上のジクマロール類;1種以上のクロマノン類;1種以上のクロマノール類;これらの異性体(例えば、シス/トランス異性体);並びにこれらの混合物が挙げられる。本明細書で使用する用語「置換」は、フラボノイドの1個以上の水素原子が、独立して、ヒドロキシル、C1〜C8アルキル、C1〜C4アルコキシル、及びO−グリコシドなど又はこれらの置換基の混合物で置換されているフラボノイド類を意味する。
【0097】
適切なフラボノイドの例としては、非置換フラバノン、モノ−ヒドロキシフラバノン類(例えば、2’−ヒドロキシフラバノン、6−ヒドロキシフラバノン、7−ヒドロキシフラバノンなど)、モノ−アルコキシフラバノン類(例えば、5−メトキシフラバノン、6−メトキシフラバノン、7−メトキシフラバノン、4’−メトキシフラバノンなど)、非置換カルコン(特に非置換トランス−カルコン)、モノ−ヒドロキシカルコン類(例えば、2’−ヒドロキシカルコン、4’−ヒドロキシカルコンなど)、ジ−ヒドロキシカルコン類(例えば、2’,4−ジヒドロキシカルコン、2’,4’−ジヒドロキシカルコン、2,2’−ジヒドロキシカルコン、2’,3−ジヒドロキシカルコン、2’,5’−ジヒドロキシカルコンなど)、及びトリ−ヒドロキシカルコン類(例えば、2’,3’,4’−トリヒドロキシカルコン、4,2’,4’−トリヒドロキシカルコン、2,2’,4’−トリヒドロキシカルコンなど)、非置換フラボン、7,2’−ジヒドロキシフラボン、3’,4’−ジヒドロキシナフトフラボン、4’−ヒドロキシフラボン、5,6−ベンゾフラボン、及び7,8−ベンゾフラボン、非置換イソフラボン、ダイゼイン(7,4’−ジヒドロキシイソフラボン)、5,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラボン、大豆イソフラボン類(大豆から抽出された混合物)、非置換クマリン、4−ヒドロキシクマリン、7−ヒドロキシクマリン、6−ヒドロキシ−4−メチルクマリン、非置換クロモン、3−ホルミルクロモン、3−ホルミル−6−イソプロピルクロモン、非置換ジクマロール、非置換クロマノン、非置換クロマノール、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
非置換フラバノン、メトキシフラバノン類、非置換カルコン、2’,4−ジヒドロキシカルコン、及びこれらの混合物が本明細書での使用に好ましい。非置換フラバノン、非置換カルコン(特にトランス異性体)、及びこれらの混合物がより好ましい。
【0099】
これらは、合成物質であり得るか、又は天然源(例えば、植物)からの抽出物として得ることができる。天然源物質は、さらに誘導体化することもできる(例えば、天然源からの抽出後に調製されるエステル又はエーテル誘導体)。本明細書で有用なフラボノイド化合物は、いくつかの供給元、例えば、Indofine Chemical社(ニュージャージー州サマービル)、Steraloids社(ニューハンプシャー州ウィルトン)、及びAldrich Chemical社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から市販されている。
【0100】
上記フラボノイド化合物の混合物も使用してよい。
【0101】
本明細書に記載のフラボノイド化合物は、本発明に係る組成物中に、好ましくは約0.01%〜約20%、より好ましくは約0.1%〜約10%、かつさらにより好ましくは約0.5%〜約5%の濃度で存在する。
【0102】
抗炎症剤
安全かつ有効な量の抗炎症剤を、本発明の組成物に、好ましくは該組成物の約0.1%〜約10%、より好ましくは約0.5%〜約5%添加してよい。抗炎症剤は、本発明の皮膚外観の利点を向上させ、例えば、かかる薬剤は、より均一で許容される皮膚の色調又は色に寄与する。かかる薬剤は効力が大きく異なるので、該組成物中に使用される抗炎症剤の正確な量は、利用される特定の抗炎症剤に依存する。
【0103】
ヒドロコルチゾン、ヒドロキシトリアムシノロン、アルファ−メチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタゾン、酢酸デソキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、ジフロラゾンジアセテート、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル(flucortine butylester)類、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(fluprednylidene)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド(flucetonide)、フルドロコルチゾン、ジフルオロゾンジアセテート、フルラドレノロン、フルドロコルチゾン、ジフルロゾンジアセテート、フルラドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン及びそのエステル類のバランス、クロロプレドニゾン、酢酸クロロプレドニゾン、クロコルテロン、クレスシノロン、ジクロリゾン、ジフルプレドナート(diflurprednate)、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタローン、フルペロロン、フルプレドニソロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、プロピオン酸ヒドロコルチゾンシクロペンチル、ヒドロコルタメート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロン、及びこれらの混合物などのコルチコステロイド類を含むがこれらに限定されないステロイド性抗炎症剤を使用してよい。使用するのに好ましいステロイド系抗炎症剤はヒドロコルチゾンである。
【0104】
該組成物で有用である抗炎症剤の第二のクラスには、非ステロイド性抗炎症剤が含まれる。このグループに包含される様々な化合物は、当業者に周知である。非ステロイド性抗炎症剤等の化学構造、合成、副作用などの詳細な開示については、抗炎症薬及び抗リウマチ薬(Anti−inflammatory and Anti−Rheumatic Drugs)、K.D.Rainsford、I−III巻、CRCプレス、Boca Raton、(1985)、及び抗炎症薬、化学と薬理学(Anti−inflammatory Agents, Chemistry and Pharmacology)、1、R.A.Scherrerら、アカデミックプレス、ニューヨーク(1974)を含む標準的なテキストを参照することができる。
【0105】
本発明に係る組成物に有用な特定の非ステロイド性抗炎症剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
【0106】
1)ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカム、及びCP−14,304などのオキシカム類;
【0107】
2)アスピリン、ジサルシド、ベノリレート、トリリサート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサル、及びフェンドサルなどのサリチル酸塩;
【0108】
3)ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパック、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、ゾメピラック、クリンダナク、オキセピナク、フェルビナク、及びケトロラクなどの酢酸誘導体類;
【0109】
4)メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、及びトルフェナム酸などのフェナム酸塩;
【0110】
5)イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミクロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、及びチアプロフェンなどのプロピオン酸誘導体類;並びに
【0111】
6)フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾン、及びトリメタゾンなどのピラゾール類。
【0112】
これらの非ステロイド性抗炎症剤の混合物、並びにこれらの薬剤の皮膚科学的に許容される塩類及びエステル類も使用してよい。例えば、エトフェナメート、フルフェナム酸誘導体は、局所適用に特に有用である。非ステロイド性抗炎症剤のうち、イブプロフェン、ナプロキセン、フルフェナム酸、エトフェナメート、アスピリン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ピロキシカム及びフェルビナクが好ましい。イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、エトフェナメート、アスピリン及びフルフェナム酸がより好ましい。
【0113】
最後に、いわゆる「天然の」抗炎症剤は、本発明の方法において有用である。かかる薬剤は、天然供給源(例えば、植物、菌類、微生物の副産物)からの適切な物理的及び/又は化学的単離によって抽出物として適切に取得され得るか、又は合成的に調製することができる。例えば、キャンデリラワックス、ビサボロール(例えば、アルファ−ビサボロール)、アロエベラ、植物ステロール類(例えば、フィトステロール)、マンジスタ(manjistha)(アカネ属、特にルビアコルディフォリアの植物から抽出される)、及びグガル(guggal)(コンミフォラ属の植物、特にコミフォラムクルから抽出される)、コーラ抽出物、カモミール、ムラサキツメクサ抽出物、及びムチヤギ抽出物を使用してよい。
【0114】
本明細書で有用なさらなる抗炎症剤としては、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、及びこれらの誘導体(例えば、塩類及びエステル類)を含むカンゾウ(植物の属/種Glycyrrhiza glabra)ファミリーの化合物が挙げられる。前述の化合物の適切な塩としては、金属塩及びアンモニウム塩が挙げられる。適切なエステル類としては、酸のC〜C24、好ましくはC10〜C24、より好ましくはC16〜C24飽和又は不飽和エステル類が挙げられる。前述の具体例としては、油溶性カンゾウ抽出物、グリチルリチン及びグリチルレチン酸そのもの、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸モノカリウム、グリチルリチン酸二カリウム、1−β−グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、及び3−ステアリルオキシ−グリチルレチン酸、及び3−スクシニルオキシ−β−グリチルレチン酸二ナトリウムが挙げられる。グリチルレチン酸ステアリルが好ましい。
【0115】
抗セルライト剤
本発明の組成物は、安全かつ有効な量の抗セルライト剤を含んでもよい。適切な薬剤としては、キサンチン化合物類(例えば、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン、及びアミノフィリン)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0116】
局所麻酔剤
本発明の組成物は、安全かつ有効な量の局所麻酔剤を含んでもよい。局所麻酔薬の例としては、ベンゾカイン、リドカイン、ブピバカイン、クロルプロカイン、ジブカイン、エチドカイン、メピバカイン、テトラカイン、ジクロニン、ヘキシルカイン、プロカイン、コカイン、ケタミン、プラモキシン、フェノール、及びその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0117】
日焼け活性物質
本発明の組成物は、日焼け活性物質を含んでよい。存在する場合、該組成物は、人工日焼け活性物質としてのジヒドロキシアセトンを該組成物の重量で約0.1%〜約20%、より好ましくは約2%〜約7%、かつさらにより好ましくは約3%〜約6%含有することが好ましい。
【0118】
DHA又は1,3−ジヒドロキシ−2−プロパノンとしても知られているジヒドロキシアセトンは、ホワイト〜オフホワイトの結晶性粉末である。この物質は、化学式C及び以下の化学構造
【化2】
で表すことができる。
【0119】
該化合物は、単量体及び二量体の混合物として存在することができ、二量体が固体結晶状態で優勢である。加熱又は溶融時には、二量体を分解して、単量体を得る。二量体形態の単量体形態へのこの変換も水溶液中で生じる。ジヒドロキシアセトンは、酸性pH値でより安定であることも知られている。メルクインデックス、第10版、エントリー3167、463ページ(1983)及び「化粧品のためのジヒドロキシアセトン(Dihydroxyacetone for Cosmetics)」、メルクテクニカルブリテン、03−304 110、319 897、180 588を参照されたい。
【0120】
皮膚美白剤
本発明の組成物は、皮膚美白剤を含有してよい。使用される場合、該組成物は、好ましくは、皮膚美白剤を、該組成物の重量で好ましくは約0.1%〜約10%、より好ましくは約0.2%〜約5%、さらに好ましくは約0.5%〜約2%含有する。適切な皮膚美白剤としては、コウジ酸、アルブチン、アスコルビン酸及びこれらの誘導体(例えば、マグネシウムアスコルビルホスフェート又はナトリウムアスコルビルホスフェート)、並びに抽出物(例えば、桑抽出物、胎盤抽出物)を含む、当技術分野で知られているものが挙げられる。本明細書での使用に適する皮膚美白剤は、1995年6月12日出願のPCT出願番号米国特許出願第95/07432号に相当するHillebrandの名前でのPCT公開番号95/34280;及び1995年8月9日公開のPCT公開番号95/23780に相当するKvalnes、Mitchell A.DeLong、Barton J.Bradbury、Curtis B.Motley、及びJohn D.Carterの名前で出願した同時係属米国出願第08/390,152号に記載のものも挙げられる。
【0121】
皮膚沈静及び皮膚治癒用活性物質
本発明の組成物は、皮膚沈静又は皮膚治癒用活性物質を含んでよい。本明細書での使用に適する皮膚鎮静又は皮膚治癒用活性物質としては、パントテン酸誘導体(パンテノール、デクスパンテノール、エチルパンテノールを含む)、アロエベラ、アラントイン、ビサボロール、及びグリチルリチン酸二カリウムが挙げられる。安全かつ有効な量の皮膚鎮静又は皮膚治癒用活性物質を、本発明の組成物に、好ましくは形成される組成物の重量で約0.1%〜約30%、より好ましくは約0.5%〜約20%、さらにより好ましくは約0.5%〜約10%添加してよい。
【0122】
a)ビサボロール
本発明の局所用組成物は、安全かつ有効な量のビサボロールも含んでよい。ビサボロールは、以下の構造
【化3】
を有する天然の不飽和単環式テルペンアルコールである。
【0123】
ビサボロールは、カモミールエキス/油の主要な活性成分である。ビサボロールは、合成(d,1−α−異性体又は(+/−)−α−異性体)もしくは天然((−)−α−異性体)起源であり得、本質的に純粋な化合物又は化合物の混合物(例えば、カモミールなどの天然源からの抽出物)として使用することができる。ビサボロールのアルファ形(a−ビサボロール)は、スキンコンディショニング剤又は沈静剤として様々な化粧品で使用されている。本明細書で使用する「ビサボロール」には、カモミール抽出物又は油並びにこれらの異性体及び互変異性体が含まれる。適切なビサボロール化合物は、Dragoco社(ニュージャージー州トトワ)からアルファ−ビサボロール天然(alpha−bisabolol natural)の商品名で天然物質として、かつFluka社(ウィスコンシン州ミルウォーキー)からアルファ−ビサボロールの商品名で合成物質として市販されている。
【0124】
本発明の組成物において、該組成物は、ビサボロールを、該組成物の重量で好ましくは約0.001%〜約50%、より好ましくは約0.01%〜約20%、さらにより好ましくは約0.01%〜約15%、さらにより好ましくは約0.1%〜約10%、さらにより好ましくは約0.1%〜約5%含有する。
【0125】
抗菌及び抗真菌活性物質
本発明の組成物は、抗菌又は抗真菌活性物質を含有してよい。かかる活性物質は、微生物を破壊し、微生物の発生を予防するか、又は微生物の病原作用を防止することが可能である。安全かつ有効な量の抗菌又は抗真菌活性物質を、本発明の組成物に好ましくは約0.001%〜約10%、より好ましくは約0.01%〜約5%、かつさらにより好ましくは約0.05%〜約2%添加してよい。
【0126】
抗菌及び抗真菌活性物質の例としては、βラクタム薬、キノロン薬、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、アミカシン、2,4−4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’−トリクロロバニリド(trichlorobanilide)、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェノキシイソプロパノール、ドキシサイクリン、カプレオマイシン、クロルヘキシジン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クリンダマイシン、エタンブトール、イセチオン酸ヘキサミジン、メトロニダゾール、ペンタミジン、ゲンタマイシン、カナマイシン、リネオマイシン、メタサイクリン、メテナミン、ミノサイクリン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ミコナゾール、塩酸テトラサイクリン、エリスロマイシン、亜鉛エリスロマイシン、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシンステアレート、硫酸アミカシン、塩酸ドキシサイクリン、硫酸カプレオマイシン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、塩酸クロルテトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン、塩酸クリンダマイシン、塩酸エタンブトール、塩酸メトロニダゾール、塩酸ペンタミジン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸カナマイシン、リネオマイシン塩酸塩、メタサイクリン塩酸塩、馬尿酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、塩酸ミノサイクリン、硫酸ネオマイシン、硫酸ネチルマイシン、硫酸パロモマイシン、硫酸ストレプトマイシン、硫酸トブラマイシン、塩酸ミコナゾール、ケトコナゾール、塩酸アマンファジン(amanfadine)、硫酸アマンファジン、オクトピロックス、パラクロロメタキシレノール、ナイスタチン、トルナフタート、亜鉛ピリチオン及びクロトリマゾールが挙げられる。
【0127】
本明細書で有用な活性物質の好ましい例としては、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、3−ヒドロキシ安息香酸、グリコール酸、乳酸、4−ヒドロキシ安息香酸、アセチルサリチル酸、2−ヒドロキシブタン酸、2−ヒドロキシペンタン酸、2−ヒドロキシヘキサン酸、シス−レチノイン酸、トランス−レチノイン酸、レチノール、フィチン酸、N−アセチル−L−システイン、リポ酸、アゼライン酸、アラキドン酸、過酸化ベンゾイル、テトラサイクリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ヒドロコルチゾン、アセトミノフェン、レゾルシノール、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェノキシイソプロパノール、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’−トリクロロカルバニリド、オクトピロックス、塩酸リドカイン、クロトリマゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール、硫酸ネオマイシン、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
【0128】
日焼け止め活性物質
紫外線への曝露は、角質層の過度のスケーリング及び質感変化をもたらし得る。したがって、本発明の組成物は、必要に応じて日焼け止め活性物質を含有してよい。本明細書で使用する「日焼け止め活性物質」には、日焼け止め剤及び物理的日焼け止めの両方が含まれる。適切な日焼け止め活性物質は、有機又は無機であってよい。
【0129】
本明細書で有用な無機日焼け止め剤としては、以下の金属酸化物が挙げられる;平均一次粒径が約15nm〜約100nmの二酸化チタン、平均一次粒径が約15nm〜約150nmの酸化亜鉛、平均一次粒径が約15nm〜約150nmの酸化ジルコニウム、平均一次粒径が約15nm〜約500nmの酸化鉄、及びこれらの混合物。本明細書で使用する場合、無機日焼け止め剤は、該組成物の重量で約0.1%〜約20%、好ましくは約0.5%〜約10%、より好ましくは約1%〜約5%の量で存在する。
【0130】
多種多様な従来の有機日焼け止め活性物質が本明細書での使用に適する。Sagarinらの化粧品科学と技術(Cosmetics Science and Technology)(1972)の第VIII章、189ページ以降に多数の適切な活性物質が開示されている。特定の適切な日焼け止め活性物質としては、例えば、p−アミノ安息香酸、その塩類及びその誘導体類(エチル、イソブチル、グリセリルエステル類;p−ジメチルアミノ安息香酸);アントラニレート(すなわち、O−アミノ安息香酸塩;メチル、メンチル、フェニル、ベンジル、フェニルエチル、リナリル、テルピニル、及びシクロヘキセニルエステル類);サリチレート(アミル、フェニル、オクチル、ベンジル、メンチル、グリセリル、及びジプロピレングリコールエステル類);桂皮酸誘導体類(メンチル及びベンジルエステル類、a−フェニルシンナモニトリル;ブチルシンナモイルピルベート);ジヒドロキシ桂皮酸誘導体類(ウンベリフェロン、メチルウンベリフェロン、メチルアセトウンベリフェロン);トリヒドロキシ桂皮酸誘導体類(エスクレチン、メチルエスクレチン、ダフネチン、及びグルコシド、エスクリン及びダフニン);炭化水素類(ジフェニルブタジエン、スチルベン);ジベンザルアセトン及びベンザルアセトフェノン;ナフトールスルホン酸塩(2−ナフトール−3,6−ジスルホン酸ナトリウム塩及び2−ナフトール−6,8−ジスルホン酸ナトリウム塩);ジ−ヒドロキシナフトエ酸及びその塩類;o−及びp−ヒドロキシビフェニルジスルホン酸塩;クマリン誘導体類(7−ヒドロキシ、7−メチル、3−フェニル);ジアゾール(2−アセチル−3−ブロモインダゾール、フェニルベンゾオキサゾール、メチルナフトオキサゾール、様々なアリールベンゾチアゾール類);キニーネ塩(重硫酸塩、硫酸塩、塩化物、オレイン酸塩、及びタンニン酸塩)キノリン誘導体類(8−ヒドロキシキノリン塩、2−フェニルキノリン);ヒドロキシ−又はメトキシ−置換ベンゾフェノン類;尿酸及びビオルル酸;タンニン酸及びその誘導体類(例えば、ヘキサエチルエーテル);(ブチルカルボトール)(6−プロピルピペロニル)エーテル;ヒドロキノン;ベンゾフェノン類(オキシベンゼン、スリソベンゾン、ジオキシベンゾン、ベンゾレゾルシノール、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、オクタベンゾン;4−イソプロピルジベンゾイルメタン;ブチルメトキシジベンゾイルメタン;エトクリレン;オクトクリレン;[3−(4’−メチルベンジリデンボマン−2−オン)、テレフタリリデンジカンファースルホン酸及び4−イソプロピル−ジ−ベンゾイルメタンが挙げられる。
【0131】
これらのうち、2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート(PARSOL MCXとして市販されている)、4,4’−t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン(PARSOL 1789として市販されている)、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチル−p−アミノ安息香酸、ジガロイルトリオレエート、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、エチル−4−(ビス(ヒドロキシプロピル))アミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシルサリチレート、グリセリル−p−アミノベンゾエート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルサリチレート、メチルアントラニレート、p−ジメチルアミノ安息香酸又はアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−p−ジメチルアミノベンゾエート、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、2−(p−ジメチルアミノフェニル)−5−スルホニックベンゾキサゾ酸(sulfonicbenzoxazoic acid)、オクトクリレン、及びこれらの化合物の混合物が好ましい。
【0132】
該組成物に有用なより好ましい有機日焼け止め活性物質としては、2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、オクチルジメチル−p−アミノ安息香酸、オクトクリレン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0133】
1990年6月26日発行のSabatelliの米国特許第4,937,370号、及び1991年3月12日発行のSabatelli & Spirnakの米国特許第4,999,186に開示されているものなどの日焼け止め活性物質も該組成物中で特に有用である。本明細書に開示される日焼け止め剤は、単一分子中に、異なる紫外線放射吸収スペクトルを示す2つの異なる発色団部分を有する。発色団部分の1方はUVB照射範囲において主に吸収し、他方はUVA放射線範囲において強く吸収する。
【0134】
このクラスの日焼け止め剤の好ましいメンバーは、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンの4−N,N−(2−エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル;4−ヒドロキシジベンゾイルメタンとのN,N−ジ−(2−エチルヘキシル)−4−アミノ安息香酸エステル;4−ヒドロキシジベンゾイルメタンとの4−N,N−(2−エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル;2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノンの4−N,N−(2−エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル;4−(2−ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタンの4−N,N−(2−エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル;2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノンのN,N−ジ−(2−エチルヘキシル)−4−アミノ安息香酸エステル;及び4−(2−ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタンのN,N−ジ−(2−エチルヘキシル)−4−アミノ安息香酸エステル並びにこれらの混合物である。
【0135】
特に好ましい日焼け止め活性物質としては、4,4’−t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、及びオクトクリレンが挙げられる。
【0136】
典型的には、該組成物の重量で約1%〜約20%、より典型的には約2%〜約10%の安全かつ有効な量の有機日焼け止め活性物質が使用される。正確な量は、選択された日焼け止め剤又は複数の日焼け止め剤及び所望の太陽光線保護指数(SPF)に依存して変化する。
【0137】
粒子状物質
本発明の組成物は、粒子状物質、好ましくは、金属酸化物を含有してよい。これらの粒子は、コーティングされるか又はコーティングされない、荷電しているか、又は無電荷であり得る。荷電した粒子状物質は、参照により本明細書に組み込まれるHaらの米国特許第5,997,887号に開示されている。本明細書で有用な粒子状物質としては、オキシ塩化ビスマス、酸化鉄、雲母、硫酸バリウム及びTiOで処理した雲母、シリカ、ナイロン、ポリエチレン、タルク、スチレン、ポリプロピレン、エチレン/アクリル酸コポリマー、セリサイト、酸化アルミニウム、シリコーン樹脂、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、セルロースアセテート、二酸化チタン、ポリメチルメタクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0138】
無機粒子状物質、例えば、TiO、ZnO、又はZrOは、いくつかの供給元から市販されている。適切な粒子状物質の一例としては、U.S.Cosmetics社から入手可能な物質(TRONOX TiOシリーズ、SAT−T CR837、ルチルTiO)が挙げられる。好ましくは、粒子状物質は、該組成物の重量で約0.01%〜約2、より好ましくは約0.05%〜約1.5%、さらにより好ましくは約0.1%〜約1%のレベルで該組成物中に存在している。
【0139】
コンディショニング剤
本発明の組成物は、湿潤剤、保湿剤、又は皮膚コンディショナーから選択されるコンディショニング剤を含有してよい。これらの様々な物質を用いることができ、それぞれは、該組成物の重量で約0.01%〜約20%、より好ましくは約0.1%〜約10%、さらにより好ましくは約0.5%〜約7%のレベルで存在することができる。これらの物質には、グアニジン;尿素;グリコール酸及びグリコール酸塩(例えば、アンモニウム及び第四級アルキルアンモニウム);サリチル酸;乳酸及び乳酸塩(例えば、アンモニウム及び第四級アルキルアンモニウム)、様々な形態のいずれかのアロエベラ(例えば、アロエベラゲル);ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオール、ブタントリオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、及びヘキシレングリコールなどの多価アルコール類;ポリエチレングリコール類;糖類(例えば、メリビオース)及びデンプン;糖及びデンプン誘導体類(例えば、アルコキシル化グルコース、フルクトース、グルコサミン);ヒアルロン酸;ラクトアミドモノエタノールアミン;アセトアミドモノエタノールアミン;パンテノール;アラントイン;及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。1990年12月11日発行のOrrらの米国特許第4,976,953号に記載のプロポキシル化グリセロール類も本明細書で有用である。
【0140】
糖及び関連物質の様々なC〜C30モノエステル類並びにポリエステル類も有用である。これらのエステル類は、糖又はポリオール部分及び1以上のカルボン酸部分から誘導される。かかるエステル物質については、1977年1月25日発行のJandacekの米国特許第2,831,854号、同第4,005,196号;1977年1月25日発行のJandacekの米国特許第4,005,195号、1994年4月26日発行のLettonらの米国特許第5,306,516号、1994年4月26日発行のLettonらの米国特許第5,306,515号、1994年4月26日発行のLettonらの米国特許第5,305,514号、1989年1月10日発行のJandacekらの米国特許第4,797,300号、1976年6月15日発行のRizziらの米国特許第3,963,699号、1985年5月21日発行のVolpenheinの米国特許第4,518,772号、1985年5月21日発行のVolpenheinの米国特許第4,517,360号に記載されている。
【0141】
好ましくは、コンディショニング剤は、尿素、グアニジン、スクロースポリエステル、パンテノール、デクスパンテノール、アラントイン、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0142】
構造剤
本明細書の組成物、特にそのエマルジョンは、構造剤を含有してよい。構造剤は、本発明の水中油型エマルジョンにおいて特に好ましい。理論によって限定されないが、構造剤は、該組成物の安定性に寄与するレオロジー特性を該組成物に提供するのに役立つと考えられている。例えば、構造剤は、液晶ゲルネットワーク構造の形成を補助する傾向がある。構造剤は、乳化剤又は界面活性剤としても機能することができる。好ましい組成物は、1種以上の構造剤を約0.1%〜約20%、より好ましくは約0.1%〜約10%、さらにより好ましくは約0.5%〜約9%含有する。
【0143】
好ましい構造剤は、HLBが約1〜約8であり、融点が少なくとも約45℃である薬剤である。適切な構造剤としては、飽和C14〜C30脂肪族アルコール、約1〜約5モルのエチレンオキシドを含有する飽和C16〜C30脂肪族アルコール、飽和C16〜C30ジオール類、飽和C16〜C30モノグリセロールエーテル、飽和C16〜C30ヒドロキシ脂肪酸、C14〜C30ヒドロキシル化飽和脂肪酸及びC14〜C30非ヒドロキシル化飽和脂肪酸、C14〜C30飽和エトキシル化脂肪酸、約1〜約5モルのエチレンオキシドジオールを含有するアミン類及びアルコール類、モノグリセリド含量が少なくとも40%であるC14〜C30飽和グリセリルモノエステル、約1〜約3個のアルキル基及び約2〜約3個の飽和グリセロール単位を有するC14〜C30飽和ポリグリセロールエステル、C14〜C30グリセリルモノエーテル、約1〜約5モルのエチレンオキシドとのC14〜C30飽和エトキシル化ソルビタンモノ/ジエステル、C14〜C30飽和メチルグルコシドエステル、C14〜C30飽和スクロースモノ/ジエステル、約1〜約5モルのエチレンオキシドとのC14〜C30飽和エトキシル化メチルグルコシドエステル、平均1〜2個のグルコース単位を有するC14〜C30飽和ポリグルコシド、並びに融点が少なくとも約45℃であるこれらの混合物が挙げられる。
【0144】
本発明の好ましい構造剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸、平均約1〜約5個のエチレンオキシド単位を有するステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、平均約1〜約5個のエチレンオキシド単位を有するセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、及びこれらの混合物から選択される。本発明のより好ましい構造剤は、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、平均約2個のエチレンオキシド単位を有するステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(ステアレス−2)、平均約2個のエチレンオキシド単位を有するセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、及びこれらの混合物から選択される。さらにより好ましい構造剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアレス−2、及びこれらの混合物から選択される。
【0145】
増粘剤(増粘剤及びゲル化剤を含む)
本発明の組成物は、1種以上の増粘剤を、該組成物の重量で好ましくは約0.1%〜約5%、より好ましくは約0.1%〜約4%、さらにより好ましくは約0.25%〜約3%含有することができる。
【0146】
非限定的な増粘剤のクラスには、以下から選択されるものが含まれる:
【0147】
a)カルボン酸ポリマー類
これらのポリマーは、アクリル酸、置換アクリル酸、これらのアクリル酸及び置換アクリル酸の塩類並びにこれらのアクリル酸及び置換アクリル酸のエステル類から誘導される1以上のモノマーを含有する架橋化合物であり、架橋剤は、2個以上の炭素−炭素二重結合を含有し、かつ多価アルコールから誘導される。本発明で有用なポリマー類は、1992年2月11日発行のHaffeyらの米国特許第5,087,445号;1985年4月5日発行のHuangらの米国特許第4,509,949号;1957年7月2日発行のBrownの米国特許第2,798,053号;及びCTFA国際化粧品成分辞典、第4版、1991年、12及び80ページにより完全に記載されている。
【0148】
本明細書で有用な市販のカルボン酸ポリマーの例としては、スクロース又はペンタエリトリトールのアリルエーテル類で架橋されたアクリル酸のホモポリマーであるカルボマーが挙げられる。カルボマー類は、B.F.Goodrich社からCarbopol(登録商標)900シリーズ(例えば、Carbopol(登録商標)954)として入手可能である。さらに、他の適切なカルボン酸ポリマー剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの短鎖(すなわち、C1−4アルコール)エステル類の1種のうちの1種以上のモノマー類とのC10 〜30アルキルアクリレートのコポリマーが挙げられ、この架橋剤は、スクロース又はペンタエリスリトールのアリルエーテルである。これらのコポリマーは、アクリレート/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマーとして知られており、B.F.Goodrich社からCarbopol(登録商標)1342、Carbopol(登録商標)1382、ペミュレンTR−1、及びペミュレンTR−2として市販されている。換言すれば、本明細書で有用なカルボン酸ポリマー増粘剤の例としては、カルボマー類、アクリレート類/C10〜30アルキルアクリレートクロスポリマー類、及びこれらの混合物から選択される。
【0149】
b)架橋ポリアクリレートポリマー類
本発明の組成物は、必要に応じて増粘剤又はカチオン性及び非イオン性ポリマーの両方を含むゲル化剤として有用な架橋ポリアクリレートポリマー類を含有することができ、カチオン性物質が一般的に好ましい。有用な架橋非イオン性ポリアクリレートポリマー類及び架橋カチオン性ポリアクリレートポリマー類の例としては、1992年3月31日発行のHaweらの米国特許第5,100,660号;1989年7月18日発行のHeardの米国特許第4,849,484号;1989年5月30日発行のFarrarらの米国特許第4,835,206号;1986年12月9日発行のGloverらの米国特許第4,628,078号;1986年7月8日発行のFlesherらの米国特許第4,599,379号;及び1987年7月15日公開のFarrarらのEP228,868に記載のものが挙げられる。
【0150】
c)ポリアクリルアミドポリマー類
本発明の組成物は、必要に応じて、ポリアクリルアミドポリマー類、特に、置換されている分枝又は非分枝ポリマーを含む非イオン性ポリアクリルアミドポリマー類を含むことができる。これらのポリアクリルアミドポリマーの中でより好ましいのは、Seppic社(ニュージャージー州フェアフィールド)からセピゲル(Sepigel)305という商品名で入手可能な、CTFA指定の、ポリアクリルアミドとイソパラフィンとラウレス−7の非イオン性ポリマーである。
【0151】
本明細書で有用な他のポリアクリルアミドポリマーとしては、アクリルアミドのマルチブロックコポリマーとアクリル酸と置換されたアクリルアミド及び置換アクリル酸が挙げられる。市販されているこれらのマルチブロックコポリマーの例としては、Lipo Chemicals社(ニュージャージー州パターソン)のHypan SR150H、SS500V、SS500W、SSSA100Hが挙げられる。
【0152】
d)多糖類
多種多様な多糖類が本明細書で有用である。「多糖類」は、糖(すなわち、炭水化物)の繰り返し単位の主鎖を含有するゲル化剤を指す。多糖類のゲル化剤の非限定的な例としては、セルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートカルボキシレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、微結晶性セルロース、セルロース硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。アルキル置換セルロースも本明細書で有用である。これらのポリマーの中で、セルロースポリマーのヒドロキシ基はヒドロキシアルキル化(好ましくは、ヒドロキシエチル化又はヒドロキシプロピル化)されて、ヒドロキシアルキル化セルロースを形成し、次いで、エーテル結合を介してC10〜C30の直鎖又は分枝鎖アルキル基で修飾される。典型的には、これらのポリマーは、ヒドロキシアルキルセルロースとC10〜C30の直鎖又は分枝鎖アルコールのエーテルである。本明細書で有用なアルキル基の例としては、ステアリル、イソステアリル、ラウリル、ミリスチル、セチル、イソセチル、ココイル(すなわち、ココナッツツ油のアルコールに由来するアルキル基)、パルミチル、オレイル、リノレイル、リノレニル、リシノレイル、ベヘニル、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。アルキルヒドロキシアルキルセルロースエーテル類の中で好ましいのは、セチルアルコールとヒドロキシエチルセルロースのエーテルである、CTFA指定の物質のセチルヒドロキシエチルセルロースである。この物質は、Aqualon社(デラウェア州ウィルミントン)からNatrosol(登録商標)CSプラスという商品名で販売されている。
【0153】
他の有用な多糖類としては、3単位毎に(1−6)結合グルコースと(1−3)結合グルコース単位の直鎖であるスクレログルカン類が挙げられ、この市販例としては、Michel Mercier Products社(ニュージャージー州マウンテンサイド)のClearogel(商標)CS11である。
【0154】
e)ガム類
本明細書で有用な他の増粘剤及びゲル化剤は、主に天然源から誘導される物質が含まれる。これらのゲル化剤ゴムの非限定的な例としては、アカシア、寒天、アルギン、アルギン酸、アルギン酸アンモニウム、アミロペクチン、アルギン酸カルシウム、カルシウムカラギーナン、カルニチン、カラギーナン、デキストリン、ゼラチン、ジェランガム、グアーガム、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヘクトライト、ヒアルロン酸、水和シリカ、ヒドロキシプロピルキトサン、ヒドロキシプロピルグアー、カラヤゴム、ケルプ、ローカストビーンガム、ナットゴム、アルギン酸カリウム、カリウムカラギーナン、アルギン酸プロピレングリコール、スクレロチウムガム、カルボキシメチルデキストランナトリウム、ナトリウムカラギナン、トラガカントゴム、キサンタンゴム、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0155】
本発明の好ましい組成物には、カルボン酸ポリマー類、架橋ポリアクリレートポリマー類、ポリアクリルアミドポリマー類、及びこれらの混合物から選択され、より好ましくは、カルボン酸ポリマー類、ポリアクリルアミドポリマー類、及びこれらの混合物から選択される増粘剤が含まれる。
【0156】
皮膚科学的に許容される担体
本発明の局所用組成物は、皮膚科学的に許容される担体も含有する。本明細書で使用する語句「皮膚科学的に許容される担体」は、担体が、ケラチン組織への局所適用に適し、良好な美的特性を有し、本発明の活性物質及び任意の他の成分と適合性があり、いかなる不都合な安全性又は毒性の懸念も生じないことを意味する。担体の安全かつ有効な量は、該組成物の約50%〜約99.99%、好ましくは約80%〜約99.9%、より好ましくは約90%〜約98%、かつさらにより好ましくは約90%〜約95%である。
【0157】
担体は、多種多様な形態であり得る。例えば、水中油型、油中水型、水中油中水型、及び水中シリコーン中油型のエマルジョンを含むが、これらに限定されないエマルジョン担体が本明細書で有用である。
【0158】
好ましい担体は、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、及びシリコーン中水型エマルジョンなどのエマルジョンを含む。当業者によって理解されるように、所与の成分は、該組成物中の成分の水への溶解度/分散性に依存して、水又は油/シリコーン相のいずれかに主に分布する。水中油型エマルジョンが特に好ましい。
【0159】
本発明に係るエマルジョンは、一般的に、上記の溶液及び脂質又は油を含有する。脂質類及び油類は、動物、植物、又は石油から誘導されてもよく、天然又は合成(すなわち、人造)であってもよい。好ましいエマルジョンはグリセリンなどの保湿剤も含有する。エマルジョンは、さらに、好ましくは、担体の重量に基づいて、乳化剤を約0.01%〜約10%、より好ましくは約0.1%〜約5%含有する。乳化剤は、非イオン性、アニオン性又はカチオン性であってよい。適切な乳化剤は、例えば、1973年8月28日発行のDickertらの米国特許第3,755,560号;1983年12月20日発行のDixonらの米国特許第4,421,769号;及びMcCutcheonの洗剤及び乳化剤、北米版、317〜324ページ(1986)に開示されている。
【0160】
エマルジョンは、ケラチン組織への適用時に泡立ちを最小限に抑えるための消泡剤も含有してよい。消泡剤には、かかる使用について当技術分野で周知の高分子量シリコーン類及び他の物質が含まれる。
【0161】
適切なエマルジョンは、所望の製品形態に応じて広範囲の粘度を有してよい。好ましい代表的な低粘度のエマルジョンは、約50センチストークス以下、より好ましくは約10センチストークス以下、さらにより好ましくは約5センチストークス以下の粘度を有する。
【0162】
好ましいシリコーン中水型及び水中油型エマルジョンを以下でより詳細に記載する。
【0163】
A)シリコーン中水型エマルジョン
シリコーン中水型エマルジョンは、連続シリコーン相及び分散水相を含有する。
【0164】
(1)連続シリコーン相
本発明の好ましいシリコーン中水型エマルジョンは、連続シリコーン相の重量で約1%〜約60%、好ましくは約5%〜約40%、より好ましくは約10%〜約20%含有する。連続シリコーン相は、後述する不連続水相を含有するか、又は囲む外部相として存在する。
【0165】
連続シリコーン相は、ポリオルガノシロキサンオイルを含有する。好ましいシリコーン中水型エマルジョン系は、酸化的に安定なビヒクルをレチノイドに提供するように製剤化される。これらの好ましいエマルジョンの連続シリコーン相は、オルガノポリシロキサン油を約50重量%〜約99.9重量%及び非シリコーン油を約50重量%未満含有する。特に好ましい実施形態において、連続シリコーン相は、連続シリコーン相の重量でポリオルガノシロキサンオイルを少なくとも約50%、好ましくは約60%〜約99.9%、より好ましくは約70%〜約99.9%、さらにより好ましくは約80%〜約99.9%含有し、かつ連続シリコーン相の重量で非シリコーン油を最大約50%、好ましくは約40%未満、より好ましくは約30%未満、さらにより好ましくは約10%未満、かつさらにより好ましくは約2%未満含有する。これらの好ましいエマルジョン系は、低濃度のポリオルガノシロキサン油を含有する同等の油中水型エマルジョンよりも酸化安定性を長期間にわたってレチノイドに提供する。該組成物中の選択されたレチノイドの酸化安定性をさらに高めるように、連続シリコーン相中の非シリコーン油の濃縮は最小化されるか、又は完全に回避される。このタイプのシリコーン中水型エマルジョンは、1997年6月19日公開のPCT出願WO97/21423に記載されている。
【0166】
該組成物に使用するためのオルガノポリシロキサンオイルは、揮発性シリコーン類、不揮発性シリコーン類、又は揮発性シリコーン類と不揮発性シリコーン類の混合物であってよい。この文脈で使用する用語「不揮発性」は、周囲条件下で液体であり、約100℃又はそれを超える引火点(圧力の1気圧下)を有するシリコーン類を指す。この文脈で使用する用語「揮発性」は、他の全てのシリコーン油類を指す。適切なオルガノポリシロキサン類は、広範囲の揮発性及び粘度に及ぶ様々なシリコーン類から選択することができる。適切なオルガノポリシロキサン油類の例としては、ポリアルキルシロキサン類、環式ポリアルキルシロキサン類、及びポリアルキルアリールシロキサン類が挙げられる。
【0167】
本明細書の組成物に有用なポリアルキルシロキサン類には、粘度が25℃で約0.5〜約1,000,000センチストークスであるポリアルキルシロキサン類が含まれる。かかるポリアルキルシロキサン類は、一般化学式RSiO[RSiO]SiRで表すことができ、式中、Rは、1〜約30個の炭素原子を有するアルキル基であり(好ましくは、Rはメチル又はエチル、より好ましくはメチルである;また、混合アルキル基が同じ分子内で使用することができる)、xは、約10,000,000以上に及び得る所望の分子量を達成するように選択される0〜約10,000の整数である。市販のポリアルキルシロキサン類には、ジメチコン類としても知られているポリジメチルシロキサン類が含まれ、例として、General Electric社から販売されているVicasil(登録商標)シリーズ及びDow Corning社から販売されているDow Corning(登録商標)200シリーズが挙げられる。適切なポリジメチルシロキサン類の具体例としては、粘度が0.65センチストークスで沸点が100℃のDow Corning(登録商標)200流体、粘度が10センチストークスで沸点が200℃を超えるDow Corning(登録商標)225流体、並びにそれぞれ、粘度が50、350、及び12,500センチストークスで沸点が200℃を超えるDow Corning(登録商標)200流体が挙げられる。適切なジメチコン類には、化学式(CHSiO[(CHSiO][CHRSiO]Si(CHで表されるものが含まれ、式中、Rは、約2〜約30個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキルであり、x及びyはそれぞれ、約10,000,000以上に及び得る所望の分子量を達成するように選択される1以上の整数である。これらのアルキル置換ジメチコン類の例としては、セチルジメチコン及びラウリルジメチコンが挙げられる。
【0168】
該組成物に使用するのに適する環状ポリアルキルシロキサン類としては、化学式[SiR−O]で表されるものが挙げられ、式中、Rはアルキル基であり(好ましくは、Rはメチル又はエチルであり、より好ましくはメチルである)、nは約3〜約8の整数であり、より好ましくは、nは約3〜約7の整数であり、さらに好ましくは、nは約4〜約6の整数である。Rがメチルである場合、これらの物質は、典型的にはシクロメチコン類と呼ばれる。市販のシクロメチコン類には、主としてシクロメチコンテトラマー(すなわち、n=4)を含有する、粘度が2.5センチストークスで沸点が172℃のDow Corning(登録商標)244流体、主としてシクロメチコンペンタマー(すなわち、n=5)を含有する、粘度が2.5センチストークスで沸点が178℃のDow Corning(登録商標)344流体、主としてシクロメチコンテトラマーとシクロメチコンペンタマー(すなわち、n=4と5)の混合物を含有する粘度が4.2センチストークスで沸点が205℃のDow Corning(登録商標)245流体、並びに主としてシクロメチコンテトラマーとシクロメチコンペンタマーとシクロメチコンヘキサマー(すなわち、n=4、5と6)の混合物を含有する粘度が4.5センチストークスで沸点が217℃のDow Corning(登録商標)345流体が含まれる。
【0169】
一般化学式[(CHSiO1/2[SiOに相当するポリマー物質であるトリメチルシロキシシリケートなどの物質も有用であり、式中、xは約1〜約500の整数であり、yは約1〜約500の整数である。市販のトリメチルシロキシシリケートは、ジメチコンとの混合物として、Dow Corning(登録商標)593流体として販売されている。
【0170】
ジメチコノール類も該組成物に使用するのに適する。これらの化合物は、化学式RSiO[RSiO]SiROH及びHORSiO[RSiO]SiROHで表すことができ、式中、Rはアルキル基であり(好ましくは、Rはメチル又はエチルであり、より好ましくはメチルである)、xは所望の分子量を達成するように選択される、0〜約500の整数である。市販のジメチコノール類は、典型的には、ジメチコン又はシクロメチコンとの混合物(例えば、Dow Corning(登録商標)1401、1402、及び1403流体)として販売されている。
【0171】
ポリアルキルアリールシロキサン類も該組成物での使用に適する。25℃で、粘度が約15〜約65センチストークスであるポリメチルフェニルシロキサン類が特に有用である。
【0172】
ポリアルキルシロキサン類、アルキル置換ジメチコン類、シクロメチコン類、トリメチルシロキシシリケート類、ジメチコノール類、ポリアルキルアリールシロキサン類、及びこれらの混合物から選択されるオルガノポリシロキサン類が本明細書で使用するのに好ましい。ポリアルキルシロキサン類及びシクロメチコン類が本明細書での使用により好ましい。ポリアルキルシロキサン類の中で、ジメチコン類が好ましい。
【0173】
上述したように、連続シリコーン相は、1以上の非シリコーン油類を含有してよい。該組成物中の選択されたレチノイドの酸化安定性をさらに高めるように、連続シリコーン相における非シリコーン油の濃度は、好ましくは、最小化されるか、又は完全に回避される。適切な非シリコーン油類は、圧力が約1気圧下で約25℃以下の融点を有する。連続シリコーン相での使用に適する非シリコーン油類の例としては、油中水型エマルジョン、例えば、鉱油、植物油、合成油、半合成油などの形態で、局所パーソナルケア製品の化学分野で周知のものが挙げられる。
【0174】
(2)分散水相
本発明の局所用組成物は、分散水相を約30%〜約90%、より好ましくは約50%〜約85%、かつさらにより好ましくは約70%〜約80%含有する。エマルジョン技術において、用語「分散相」は、当業者に周知の用語であり、相が、連続相中に懸濁され、連続相によって囲まれている小さい粒子又は液滴として存在することを意味する。分散相は、内相又は不連続相としても知られている。分散水相は、上記の連続シリコーン相に懸濁され、連続シリコーン相によって囲まれた小さな水性粒子又は液滴の分散系である。
【0175】
水相は、水、又は水と1種以上の水溶性成分もしくは水分散性成分の組み合わせであり得る。かかる成分の非限定的な例としては、増粘剤、酸、塩基、塩、キレート剤、ガム、水溶性又は水分散性アルコール及びポリオール、緩衝剤、防腐剤、日焼け止め剤、及び着色剤などが挙げられる。
【0176】
本発明の局所用組成物は、典型的には、分散水相中の水を該組成物の重量で約25%〜約90%、好ましくは約40%〜約80%、より好ましくは約60%〜約80%含有する。
【0177】
(3)水相を分散させるための乳化剤
本発明のシリコーン中水型エマルジョンは、好ましくは乳化剤を含有する。好ましい実施形態において、該組成物は、乳化剤を該組成物の重量で約0.1%〜約10%、より好ましくは約0.5%〜約7.5%、さらにより好ましくは約1%〜約5%含有する。乳化剤は、連続シリコーン相内に水相を分散させ、懸濁するのを助ける。
【0178】
多種多様な乳化剤を本明細書で用いて、好ましいシリコーン中水型エマルジョンを形成することができる。既知の又は従来の乳化剤を該組成物で使用することができるが、選択された乳化剤は本発明の組成物の成分と化学的及び物理的に適合性があり、所望の分散特性を提供することを条件とする。適切な乳化剤としては、局所用パーソナルケア製品に使用するための、当業者に周知のシリコーン乳化剤、非シリコン含有乳化剤、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、これらの乳化剤は、約14以下、より好ましくは約2〜約14、かつさらにより好ましくは約4〜約14のHLB値を有する。これらの範囲外のHLB値を有する乳化剤は、これらの範囲内にある、該組成物に有効な加重平均HLBを達成するために他の乳化剤と組み合わせて使用することができる。
【0179】
シリコーン乳化剤が好ましい。多種多様なシリコーン乳化剤が本明細書で有用である。これらのシリコーン乳化剤は、典型的には、シリコーン系界面活性剤として当業者に周知でもある、有機修飾されているオルガノポリシロキサン類である。有用なシリコーン乳化剤としては、ジメチコンコポリオール類が挙げられる。これらの物質は、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖、これらの鎖の混合物、及びエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの両方に由来する部分を含有するポリエーテル鎖などのポリエーテル側鎖を含むように修飾されたポリジメチルシロキサン類である。他の例としては、アルキル修飾ジメチコンコポリオール、すなわち、C2〜C30ペンダント側鎖を含有する化合物が挙げられる。さらに他の有用なジメチコンコポリオール類は、様々なカチオン性、アニオン性、両性、及び双性イオン性のペンダント部分を有する物質を含む。
【0180】
本明細書で有用なジメチコンコポリマー乳化剤は、以下の一般構造によって説明することができる:
【化4】
式中、C〜C30直鎖、分枝鎖、又は環状のアルキル基であり、Rは、−(CH−O−(CHCHRO)−H及び−(CH−O−(CHCHRO)−(CHCHRO)−Hからなる群から選択され、式中、nは、3から約10の整数であり;R及びRは、R及びRが同時に同一ではないようにH及びC〜C直鎖又は分枝鎖アルキルからなる群から選択され;m、o、x及びyは、当該分子が約200〜約10,000,000の全体分子量を有するように選択され、m、o、x及びyは、m及びoが両方同時にゼロではないように独立して0以上の整数から選択され、かつzは、独立して1以上の整数から選択される。これらのコポリオール類の位置異性体を得ることができることが認識される。R基及びR基を含有するR部分について上に示した化学表示は、限定するものではないが、便宜上、このようなものとして示されている。
【0181】
厳密にはジメチコンコポリオール類としては分類されないが、前の段落の構造で示したようなシリコーン界面活性剤も本明細書で有用であり、式中、Rは、−(CH−O−Rであり、式中、Rは、カチオン性、アニオン性、両性、又は双性イオン性部分である。
【0182】
本明細書で乳化剤として有用なジメチコンコポリオール類及び他のシリコーン界面活性剤の非限定的な例として、ペンダントポリエチレンオキシド側鎖を有するポリジメチルシロキサンポリエーテルコポリマー、ペンダントポリプロピレンオキシド側鎖を有するポリジメチルシロキサンポリエーテルコポリマー、ペンダント混合ポリエチレンオキシド側鎖とポリプロピレンオキシド側鎖を有するポリジメチルシロキサンポリエーテルコポリマー、ペンダント混合ポリ(エチレン)(プロピレン)オキシド側鎖を有するポリジメチルシロキサンポリエーテルコポリマー、ペンダントオルガノベタイン側鎖を有するポリジメチルシロキサンポリエーテルコポリマー、ペンダントカルボン酸側鎖を有するポリジメチルシロキサンポリエーテルコポリマー、ペンダント第四級アンモニウム側鎖を有するポリジメチルシロキサンポリエーテルコポリマー、並びにペンダントC〜C30直鎖、分枝鎖、又は環状のアルキル部分を含有する前述のコポリマーのさらなる修飾物が挙げられる。本明細書で有用な、Dow Corning社から販売されている市販のジメチコンコポリオール類の例としては、Dow CoRning(登録商標)190、193、Q2−5220、2501Wax、2−5324流体、及び3225Cが挙げられる(この後者の物質はシクロメチコンとの混合物として販売されている)。セチルジメチコンコポリオールは、ポリグリセリル−4−イソステアレート(及び)ヘキシルラウレートとの混合物として市販されており、ABIL(登録商標)WE−09という商品名で販売されている(Goldschmidtから入手可能である)。セチルジメチコンコポリオールは、ヘキシルラウレート(及び)ポリグリセリル−3−オレエート(及び)セチルジメチコンとの混合物としても市販されており、ABIL(登録商標)WS−08という商品名で販売されている(Goldschmidtから入手可能である)。ジメチコンコポリオール類の他の非限定的な例としては、ラウリルジメチコンコポリオール、ジメチコンコポリオールアセテート、ジメチコンコポリオールアジパート、ジメチコンコポリオールアミン、ジメチコンコポリオールベヘネート、ジメチコンコポリオールブチルエーテル、ジメチコンコポリオールヒドロキシステアレート、ジメチコンコポリオールイソステアレート、ジメチコンコポリオールラウレート、ジメチコンコポリオールメチルエーテル、ジメチコンコポリオールホスフェート、及びジメチコンコポリオールステアレートが挙げられる。国際化粧品成分辞典、第5版、1993を参照されたい。
【0183】
本明細書で有用なジメチコンコポリオール乳化剤は、例えば、1990年10月2日発行のFigueroa,Jr.らの米国特許第4,960,764号;1989年8月30日公開のSanoGueiraの欧州特許EP 330,369;G.H.Dahmsらの「シリコーンコポリオール類によって提供される新製剤の可能性(New Formulation Possibilities Offered by Silicone Copolyols)」、Cosmetics & Toiletries、110巻、91〜100ページ、1995年3月;M.E.Carlottiらの「W/O−Sエマルジョンの最適化及びエステル構造と乳化特性との間の定量的関係の調査(Optimization of W/O−S Emulsions And Study Of The Quantitative Relationships Between Ester Structure And Emulsion Properties)、J.Dispersion Science And Technology,13(3),315−336(1992);P.Hameyer「化粧品の油中水型エマルジョン調製物中の有機及び有機シリコーン乳化剤の比較技術調査(Comparative Technological Investigations of OrganiC and Organosilicone Emulsifiers in Cosmetic Water−in−Oil Emulsion Preparations)」、HAPPI 28(4)、88〜128ページ(1991);J.Smid−Korbarらの「エマルジョン中のシリコーン界面活性剤の効率性及び使いやすさ(Efficiency and usability of silicone surfactants in emulsions)、Provisional Communication International Journal of Cosmetic Science,12,135−139(1990);並びにD.G.Krzysikらの「油中水型システムのための新しいシリコーン乳化剤(A New Silicone Emulsifier For Water−in−Oil Systems)、Drug and Cosmetic Industry,146巻(4)28〜81ページ(1990年4月)に記載されている。
【0184】
本明細書で有用な非シリコーン含有乳化剤には、糖エステル類及びポリエステル類、アルコキシル化糖エステル類及びポリエステル類、C〜C30脂肪族アルコールのC〜C30脂肪酸エステル類、C〜C30脂肪族アルコールのC〜C30脂肪酸エステルのアルコキシル化誘導体類、C〜C30脂肪族アルコールのアルコキシル化エーテル類、C〜C30脂肪酸のポリグリセリルエステル類、C〜C30ポリオールエステル類、C〜C30ポリオールエーテル類、アルキルホスフェート類、ポリオキシアルキレン脂肪族エーテルホスフェート類、脂肪酸アミド類、アシルラクチレート類、石鹸、及びこれらの混合物などの様々な非イオン性及びアニオン性乳化剤がある。他の適切な乳化剤は、例えば、Allured Publishing社によって出版されたMcCutcheonの洗剤及び乳化剤、北米版(1986);1991年4月30日発行のCiottiらの米国特許第5,011,681号;1983年12月20日発行のDixonらの米国特許第4,421,769号;1973年8月28日発行のDickertらの米国特許第3,755,560号に記載されている。
【0185】
これらの非シリコーン含有乳化剤の非限定的な例としては、ポリエチレングリコール20ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)、ポリエチレングリコール5大豆ステロール、ステアレス−20、セテアレス−20、PPG−2メチルグルコースエーテルジステアレート、セテス−10、ポリソルベート80、リン酸セチル、セチルリン酸カリウム、セチルリン酸ジエタノールアミン、ポリソルベート60、ステアリン酸グリセリル、PEG−100ステアレート、ポリオキシエチレン20ソルビタントリオレエート(ポリソルベート85)、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン4ラウリルエーテルナトリウムステアレート、ポリグリセリル−4−イソステアレート、ヘキシルラウレート、ステアレス−20、セテアレス−20、PPG−2メチルグルコースエーテルジステアレート、セテス−10、ジエタノールアミンセチルホスフェート、グリセリルステアレート、PEG−100ステアレート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0186】
B)水中油型エマルジョン
他の好ましい局所用担体としては、連続水相及びその中に分散された疎水性の、水不溶性の相(「油相」)を有する水中油型エマルジョンが挙げられる。適切な水中油型エマルジョン担体の例は、1991年12月17日発行のTurner,D.J.らの米国特許第5,073,371号、及び1991年12月17日発行のTurner,D.J.らの米国特許第5,073,372号に記載されている。構造剤、親水性界面活性剤及び水を含有する特に好ましい水中油型エマルジョンについては以下に詳細に記載されている。
【0187】
(1)構造剤
好ましい水中油型エマルジョンは、液晶ゲルネットワーク構造の形成を補助する構造剤を含有する。理論によって限定されないが、構造剤は、組成物の安定性に寄与するレオロジー特性を該組成物に提供するのに役立つと考えられている。構造剤は、乳化剤又は界面活性剤としても機能することができる。好ましい組成物は構造剤を、該組成物の重量で約0.5%〜約20%、より好ましくは約1%〜約10%、さらにより好ましくは約1%〜約5%含有する。
【0188】
本発明の好ましい構造剤としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸、エチレンオキシド単位が平均約1〜約21個であるステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、エチレンオキシド単位が平均約1〜約5個であるセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明のより好ましい構造剤は、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレンオキシド単位が平均約2個であるステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(ステアレス−2)、エチレンオキシド単位が平均約21個であるステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(ステアレス−21)、エチレンオキシド単位が平均約2個であるセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、及びこれらの混合物から選択される。さらにより好ましい構造剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアレス−2、ステアレス−21、及びこれらの混合物から選択される。
【0189】
(2)親水性界面活性剤
好ましい水中油型エマルジョンは、水相に疎水性物質を分散させることができる少なくとも1種類の親水性界面活性剤を(局所担体の重量パーセントで)約0.05%〜約10%、好ましくは約1%〜約6%、かつより好ましくは約1%〜約3%含有する。界面活性剤は、少なくとも、水に分散するのに十分な親水性でなければならない。
【0190】
好ましい親水性界面活性剤は、非イオン性界面活性剤から選択される。本明細書で有用な非イオン性界面活性剤には、長鎖アルコール類、例えば、C8〜30アルコール類と糖又はデンプンポリマー、すなわち、グリコシドとの縮合生成物として広く定義することができるものがある。これらの化合物は、式(S)−O−Rで表すことができ、式中、Sは、グルコース、フルクトース、マンノース、及びガラクトースなどの糖部分であり;nは約1〜約1000の整数であり、RはC8〜30アルキル基である。アルキル基を誘導することができる長鎖アルコール類の例としては、デシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、及びオレイルアルコールなどが挙げられる。これらの界面活性剤の好ましい例としては、Sがグルコース部分であり、RはC8〜20アルキル基であり、nは約1〜約9の整数であるものが挙げられる。これらの界面活性剤の市販例としては、デシルポリグルコシド(Henkel社からAPG 325 CSとして入手可能)及びラウリルポリグルコシド(Henkel社からAPG 600CS及び625 CSとして入手可能)が挙げられる。
【0191】
他の有用な非イオン性界面活性剤としては、脂肪酸とアルキレンオキシドの縮合生成物(すなわち、脂肪酸のアルキレンオキシドエステル類)が挙げられる。これらの物質は、一般式RCO(X)OHを有し、式中、RはC10〜30アルキル基であり、Xは−OCHCH−(すなわち、エチレングリコールもしくはオキシドから誘導される)又は−OCHCHCH−(すなわち、プロピレングリコールもしくはオキシドから誘導される)であり、かつnは約6〜約200の整数である。他の非イオン性界面活性剤としては、2モルの脂肪酸とアルキレンオキシドの縮合生成物(すなわち、脂肪酸のアルキレンオキシドジエステル類)が挙げられる。これらの物質は、一般式RCO(X)OOCRを有し、式中、RはC10〜30アルキル基であり、Xは−OCHCH−(すなわち、エチレングリコールもしくはオキシドから誘導される)、又は−OCHCHCH−(すなわち、プロピレングリコールもしくはオキシドから誘導される)、かつnは約6〜約100の整数である。他の非イオン性界面活性剤は、脂肪族アルコールとアルキレンオキシドの縮合生成物(すなわち、脂肪族アルコールのアルキレンオキシドエーテル類)である。これらの物質は、一般式R(X)OR’を有し、式中、RはC10〜30アルキル基であり、Xは−OCHCH−(すなわち、エチレングリコールもしくはオキシドから誘導される)又は−OCHCHCH−(すなわち、プロピレングリコールもしくはオキシドから誘導される)であり、nは約6〜約100の整数であり、かつR’はHもしくはC10〜30アルキル基である。さらに他の非イオン性界面活性剤としては、脂肪酸と脂肪族アルコールの両方とアルキレンオキシドの縮合生成物である[すなわち、ポリアルキレンオキシド部分が一端は脂肪酸でエステル化され、他端は脂肪族アルコールでエーテル化されている(すなわち、エーテル結合を介して連結されている)]。これらの物質は、一般式RCO(X)OR’を有し、式中、R及びR’はC10〜30アルキル基であり、Xは−OCHCH(すなわち、エチレングリコールもしくはオキシドから誘導される)又は−OCHCHCH−(プロピレングリコールもしくはオキシドから誘導される)、かつnは約6〜約100の整数である。これらのアルキレンオキシドから誘導される非イオン性界面活性剤の非限定的な例としては、セテス−6、セテス−10、セテス−12、セテアレス−6、セテアレス−10、セテアレス−12、ステアレス−6、ステアレス−10、ステアレス−12、ステアレス−21、PEG−6ステアレート、PEG−10ステアレート、PEG−100ステアレート、PEG−12ステアレート、PEG−20グリセリルステアレート、PEG−80グリセリルタローエート(glyceryl tallowate)、PEG−10グリセリルステアレート、PEG−30グリセリルココエート、PEG−80グリセリルココエート、PEG−200グリセリルタローエート、PEG−8ジラウレート、PEG−10ジステアレート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0192】
さらに他の有用な非イオン性界面活性剤としては、以下の構造式に対応するポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤が挙げられる:
【化5】
式中、Rは、H、C〜Cアルキル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、好ましくはC〜Cアルキル、より好ましくはメチル又はエチル、最も好ましくはメチルであり;Rは、C〜C31アルキル又はアルケニル、好ましくはC〜C19アルキル又はアルケニル、より好ましくはC〜C17アルキル又はアルケニル、最も好ましくはC11〜C15アルキル又はアルケニルであり、Zは、少なくとも3個のヒドロキシル基が鎖に直接結合している直鎖状ヒドロカルビル鎖を有するポリヒドロキシヒドロカルビル部分、又はそのアルコキシル化(好ましくはエトキシル化又はプロポキシル化)誘導体である。Zは、好ましくは、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、及びこれらの混合物からなる群から選択される糖部分である。上記の構造に対応する特に好ましい界面活性剤は、ココナッツツアルキルN−メチルグルコシドアミドである(すなわち、RCO−部分は、ココナッツツ油脂肪酸から誘導される)。ポリヒドロキシ脂肪酸アミド類を含有する組成物を製造するプロセスは、例えば、Thomas Hedley & Co.社によって1959年2月18日公開の英国特許明細書809,060;1960年12月20日発行のE.R.Wilsonの米国特許第2,965,576号;1955年3月8日発行のA.M.Schwartzの米国特許第2,703,798号;及び1934年12月25日発行のPiggottの米国特許第1,985,424号に開示されており、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0193】
非イオン性界面活性剤の中で、ステアレス−21、セテアレス−20、セテアレス−12、スクロースココエート、ステアレス−100、PEG−100ステアレート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが好ましい。
【0194】
本明細書で使用するのに適する他の非イオン性界面活性剤としては、糖エステル類及びポリエステル類、アルコキシル化糖エステル類及びポリエステル類、C1〜C30脂肪族アルコールのC1〜C30脂肪酸エステル類、C1〜C30脂肪族アルコールのC1〜C30脂肪酸エステルのアルコキシル化誘導体類、C1〜C30脂肪族アルコールのアルキル化エーテル類、C1〜C30脂肪酸のポリグリセリルエステル類、ポリオールのC1〜C30エステル類、ポリオールのC1〜C30エーテル類、アルキルホスフェート、ポリオキシアルキレン脂肪族エーテルホスフェート類、脂肪酸アミド類、アシルラクチレート類、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの乳化剤の非限定的な例としては、ポリエチレングリコール20ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)、ポリエチレングリコール5大豆ステロール、ステアレス−20、セテアレス−20、PPG−2メチルグルコースエーテルジステアレート、セテス−10、ポリソルベート80、セチルホスフェート、カリウムセチルホスフェート、ジエタノールアミンセチルホスフェート、ポリソルベート60、ステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレン20ソルビタントリオレエート(ポリソルベート85)、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン4ラウリルエーテルナトリウムステアレート、ポリグリセリル−4イソステアレート、ヘキシルラウレート、PPG−2メチルグルコースエーテル5ジステアレート、PEG−100ステアレート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0195】
本明細書で有用な非イオン性界面活性剤の別のグループは、ソルビタン又はソルビトール脂肪酸エステルとスクロース脂肪酸エステルの混合物に基づく脂肪酸エステル混合物であり、それぞれの場合において、脂肪酸は、好ましくはC〜C24、より好ましくはC10〜C20である。好ましい脂肪酸エステル乳化剤は、ソルビタン又はソルビトールC16〜C20脂肪酸エステルとスクロースC10〜C16脂肪酸エステル、特にソルビタンステアレートとスクロースココエートの混合物である。これは、Arlatone2121という商品名でICI社から市販されている。
【0196】
本明細書で有用な他の適切な界面活性剤としては、様々なカチオン性、アニオン性、双性イオン性、及び両性界面活性剤が挙げられ、これらは、当技術分野で周知であり、以下でより完全に説明する。例えば、McCutcheonの洗剤及び乳化剤、北米15版(1986)、Allured Publishing Corporation社出版;1991年4月30日発行のCiottiらの米国特許第5,011,681号;1983年12月20日発行のDixonらの米国特許第4,421,769号;1973年8月28日発行のDickertらの米国特許第3,755,560号を参照されたく、これら4つの参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で有用な親水性界面活性剤には、単一の界面活性剤、又は適切な界面活性剤の任意の組み合わせが含まれ得る。選択される正確な界面活性剤(又は複数の界面活性剤)は、存在する該組成物及び他の成分のpHに依存する。
【0197】
カチオン性界面活性剤、特にジアルキル第四級アンモニウム化合物も本明細書で有用であり、これらの例は、米国特許第5,151,209号;同第5,151,210号;同第5,120,532号;同第4,387,090号;同第3,155,591号;同第3,929,678号;同第3,959,461号;McCutcheonの洗剤及び乳化剤、(北米版1979)、M.C.Publishing Co.社;及びSchwartzらの界面活性剤、それらの化学と技術(Surface Active Agents,Their Chemistry and Technology)、ニューヨーク:Interscience Publishers社、1949に記載されており、その説明は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で有用なカチオン性界面活性剤としては、以下の式を有するものなどのカチオン性のアンモニウム塩が挙げられる:
【化6】
式中、Rは、約12〜約30個の炭素原子を有するアルキル基、又は約12〜約30個の炭素原子を有する芳香族基、アリール基又はアルカリール基であり;R、R、及びRは、独立して、水素、約1〜約22個の炭素原子を有するアルキル基、又は約12〜約22個の炭素原子を有する芳香族基、アリール基又はアルカリール基から選択され;Xは、好ましくは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、メチル硫酸塩、エチル硫酸塩、トシラート、乳酸塩、クエン酸塩、グリコール酸塩、及びこれらの混合物から選択される任意の適合性アニオンである。さらに、R、R、R、及びRのアルキル基は、エステル結合及び/もしくはエーテル結合、又はヒドロキシ基もしくはアミノ基の置換基も含むことができる(例えば、アルキル基は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール部分を含むことができる)。
【0198】
さらに好ましくは、Rは、約12〜約22個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、H又は約1〜約22個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、R及びRは、独立して、H又は約1〜約3個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、かつXは前述のとおりである。
【0199】
さらにより好ましくは、Rは、約12〜約22個の炭素原子を有するアルキル基であり、R、R及びRは、H又は約1〜約3個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、かつXは前述のとおりである。
【0200】
あるいは、他の有用なカチオン性乳化剤としては、アミノアミド類が挙げられ、上記の構造において、Rは、あるいは、RCONH−(CHであり、Rは、約12〜約22個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつnは、約2〜約6、より好ましくは約2〜約4、かつさらにより好ましくは約2〜約3の整数である。これらのカチオン性乳化剤の非限定的な例としては、ステアラミドプロピルPG−ジモニウムクロリドホスフェート、ベヘンアミドプロピルPGジモニウムクロリド、ステアラミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェート、ステアラミドプロピルジメチル(ミリスチルアセテート)塩化アンモニウム、ステアラミドプロピルジメチルセテアリルアンモニウムトシレート、ステアラミドプロピルジメチルアンモニウムクロリド、ステアラミドプロピルジメチルアンモニウムラクテート、及びこれらの混合物が挙げられる。特に好ましいのは、ベヘンアミドプロピルPGジモニウムクロリドである。
【0201】
第4級アンモニウム塩のカチオン界面活性剤の非限定的な例としては、セチルアンモニウムクロリド、セチルアンモニウムブロミド、ラウリルアンモニウムクロリド、ラウリルアンモニウムブロミド、ステアリルアンモニウムクロリド、ステアリルアンモニウムブロミド、セチルジメチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルアンモニウムブロミド、ラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルセチルジタロージメチルアンモニウムクロリド、ジセチルアンモニウムクロリド、ジセチルアンモニウムブロミド、ジラウリルアンモニウムクロリド、ジラウリルアンモニウムブロミド、ジステアリルアンモニウムクロリド、ジステアリルアンモニウムブロミド、ジセチルメチルアンモニウムクロリド、ジセチルメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルメチルアンモニウムクロリド、ジラウリルメチルアンモニウムブロミド、ジステアリルメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルメチルアンモニウムブロミド、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。さらなる第四級アンモニウム塩としては、C12〜C30アルキル炭素鎖がタロー脂肪酸又はココナッツ脂肪酸から誘導されるものが挙げられる。用語「タロー」は、一般にC16〜C18の範囲のアルキル鎖の混合物を有するタロー脂肪酸から誘導されるアルキル基(通常、水素化タロー脂肪酸)を指す。用語「ココナッツツ」は、一般にC12〜C14の範囲のアルキル鎖の混合物を有するココナッツツ脂肪酸から誘導されるアルキル基を指す。これらのタロー及びココナッツツ源から誘導される第四級アンモニウム塩の例としては、ジタロージメチルアンモニウムクロリド、ジタロージメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジ(水素化タロー)ジメチルアンモニウムクロリド、ジ(水素化タロー)ジメチルアンモニウムアセテート、ジタロージプロピルアンモニウムホスフェート、ジタロージメチルアンモニウムニトレート、ジ(ココナッツアルキル)ジメチルアンモニウムクロリド、ジ(ココナッツアルキル)ジメチルアンモニウムブロミド、タローアンモニウムクロリド、ココナッツツアンモニウムクロリド、ステアラミドプロピルPG−ジモニウムクロリドホスフェート、ステアラミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェート、ステアラミドプロピルジメチル(ミリスチルアセテート)アンモニウムクロリド、ステアラミドプロピルジメチルセテアリルアンモニウムトシレート、ステアラミドプロピルジメチルアンモニウムクロリド、ステアラミドプロピルジメチルアンモニウムラクテート、及びこれらの混合物が挙げられる。エステル結合を有するアルキル基を有する第四級アンモニウム化合物の例としては、ジタローイルオキシエチルジメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0202】
より好ましいカチオン性界面活性剤としては、ベヘンアミドプロピルPGジモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジミリスチルジメチルアンモニウムクロリド、ジパルミチルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ステアラミドPG−ジモニウムクロリドホスフェート、ステアラミドプロピルエチルジアンモニウムエトサルフェート、ステアラミドプロピルジメチル(ミリスチルアセテート)アンモニウムクロリド、ステアラミドプロピルジメチルセテアリルアンモニウムトシレート、ステアラミドプロピルジメチルアンモニウムクロリド、ステアラミドプロピルジメチルアンモニウムラクテート、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
【0203】
さらにより好ましいカチオン性界面活性剤としては、ベヘンアミドプロピルPGジモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジミリスチルジメチルアンモニウムクロリド、ジパルミチルジメチルアンモニウムクロリド、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
【0204】
カチオン性界面活性剤と構造剤の好ましい組み合わせは、ベヘンアミドプロピルPGジモニウムクロリド及び/又はベヘニルアルコールであり、特にこのような組み合わせがイオン性及び/又は高度に極性のある溶剤を含む場合は、この比は、好ましくは物理的及び化学的安定性を維持し、高めるように最適化される。この組み合わせは、酸化亜鉛及びメトキシケイヒ酸オクチルなどの日焼け止め剤の送達のために特に有用である。
【0205】
様々なアニオン性界面活性剤も本明細書で有用である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、1975年12月30日発行のLaughlinらの米国特許第3,929,678号を参照されたい。アニオン性界面活性剤の非限定的な例としては、アルコイルイセチオネート、並びにアルキル及びアルキルエーテルサルフェートが挙げられる。アルコイルイセチオネート類は、典型的には、式RCO−OCHCHSOMを有し、式中、Rは、約10〜約30個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンなどの水溶性カチオンである。これらのイセチオネート類の非限定的な例としては、アンモニウムココイルイセチオネート、ナトリウムココイルイセチオネート、ナトリウムラウロイルイセチオネート、ナトリウムステアロイイセチオネート、及びこれらの混合物から選択されるアルコイルイセチオネート類が挙げられる。
【0206】
アルキル及びアルキルエーテルサルフェートは、典型的には、それぞれ式ROSOM及びRO(CO)SOMを有し、式中、Rは、約10〜約30個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、xは約1〜約10であり、Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム及びトリエタノールアミンなどの水溶性カチオンである。別の適切なクラスのアニオン性界面活性剤としては、一般式R−SO−Mの有機硫酸反応生成物の水溶性塩が挙げられ、式中、Rは、約8〜約24、好ましくは約10〜約16個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基を含む群から選択され、Mはカチオンである。さらに他のアニオン性合成界面活性剤としては、スクシナメート、約12〜約24個の炭素原子を有するオレフィンスルホネート、及びβ−アルキルオキシアルカンスルホネートとして指定されるクラスが挙げられる。これらの物質の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0207】
本明細書で有用な他のアニオン性物質としては、典型的には約8〜約24個の炭素原子、好ましくは約10〜約20個の炭素原子を有する脂肪酸の石鹸(すなわち、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム又はカリウム塩)である。石鹸を製造する際に使用される脂肪酸は、例えば、植物又は動物由来のグリセリド(例えば、パーム油、ヤシ油、大豆油、ヒマシ油、タロー、ラードなど)などの天然の供給源から得ることができる。これらの脂肪酸は合成で調製することもできる。石鹸については、米国特許第4,557,853号により詳細に記載されている。
【0208】
両性及び双性イオン性界面活性剤も本明細書で有用である。本発明の組成物に使用できる両性及び双性イオン性界面活性剤の例は、脂肪族第二級及び第三級アミンの誘導体として広く説明されているものであり、その中の脂肪族ラジカルが直鎖又は分枝鎖であり得、脂肪族置換基の1つが約8〜約22個の炭素原子(好ましくは、C〜C18)を含有し、1つはアニオン性水可溶化基、例えば、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、又はホスホネートを含有する。例としては、式RN[CHCOM]及びRNH(CHCOMのアルキルイミノアセテート類、イミノジアルカノエート類及びアミノアルカノエート類が挙げられ、式中、mは1〜4であり、RはC〜C22アルキル又はアルケニルであり、Mは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属アンモニウム、又はアルカノールアンモニウムである。イミダゾリニウム及びアンモニウム誘導体も含まれる。適切な両性界面活性剤の具体例としては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2,658,072号の教示に従ってイセチオン酸ナトリウムとドデシルアミンの反応により調製したものなどのナトリウム3−ドデシルアミノプロピオネート、ナトリウム3−ドデシルアミノプロパンスルホネート、N−アルキルタウリン類;その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2,438,091号の教示に従って生成されるものなどのN−高級アルキルアスパラギン酸;及び「ミラノール」という商標名で販売されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2,528,378号に記載されている生成物が挙げられる。有用な両性界面活性剤の他の例としては、(Mona社からMonaquat PTCとして市販されている)コアミドプロピル(coamidopropyl)PG−ジモニウムクロリドホスフェートなどのホスフェートが挙げられる。
【0209】
本明細書で有用な他の両性又は双性イオン性界面活性剤としてはベタイン類が挙げられる。ベタイン類の例としては、ココジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルカルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルアルファカルボキシエチルベタイン、セチルジメチルカルボキシメチルベタイン、セチルジメチルベタイン(Lonza社からLonzaine 16SPとして入手可能)、ラウリルビス−(2−ヒドロキシエチル)カルボキシメチルベタイン、ステアリルビス−(2−ヒドロキシプロピル)カルボキシメチルベタイン、オレイルジメチルガンマ−カルボキシプロピルベタイン、ラウリルビス−(2−ヒドロキシプロピル)アルファ−カルボキシエチルベタイン、ココジメチルスルホプロピルベタイン、ステアリルジメチルスルホプロピルベタイン、ラウリルジメチルスルホエチルベタイン、ラウリルビス−(2−ヒドロキシエチル)スルホプロピルベタイン、並びにアミドベタイン類及びアミドスルホベタイン類(式中、RCONH(CHラジカルは、ベタインの窒素原子に結合している)、オレイルベタイン(Henkel社から両性ベルベテックスOLB−50として入手可能)、及びコカミドプロピルベタイン(Henkel社からベルベテックスBK−35及びBA−35として入手可能)などの高級アルキルベタイン類が挙げられる。
【0210】
他の有用な両性及び双性イオン界面活性剤としては、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン(Rhone−Poulenc社からMirataine CBSとして入手可能)などのスルタイン類及びヒドロキシスルタイン類、並びに式RCON(CH)CHCHCOMに対応するアルカノイルサルコシネートが挙げられ、式中、Rは、約10〜約20個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、Mは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム及びトリアルカノールアミン(例えば、トリエタノールアミン)などの水溶性カチオンであり、その好ましい例としてはナトリウムラウロイルサルコシネートが挙げられる。
【0211】
(3)水
好ましい水中油型エマルジョンは、水を局所用担体の重量で約25%〜約98%、好ましくは約65%〜約95%、より好ましくは約70%〜約90%含有する。
【0212】
疎水相は連続水相中に分散されている。疎水相は、水中シリコーン型エマルジョンを参照して本明細書に記載したシリコーンを含むがこれらに限定されない、当技術分野で周知の水不溶性又は部分的に水溶性の物質、並びにエマルジョンを参照して上述したような他の油及類び脂質類を含んでよい。
【0213】
ローション及びクリームを含むが、これらに限定されない本発明に係る局所用組成物は、皮膚科学的に許容される皮膚軟化剤を含有してよい。かかる組成物は、皮膚軟化剤を好ましくは約1%〜約50%含有する。本明細書で使用する「皮膚軟化剤」は、乾燥の予防又は軽減、並びに皮膚の保護に有用な物質を指す。様々な適切な皮膚軟化剤が知られており、本明細書で使用されてよい。参照により本明細書に組み込まれるSagarinの化粧品科学技術、第2版、1巻、32〜43ページ(1972)は、皮膚軟化剤として適する多数の物質の例を含む。好ましい皮膚軟化剤はグリセリンである。グリセリンは、好ましくは約0.001〜約30%、より好ましくは約0.01〜約20%、さらにより好ましくは約0.1〜約10%、例えば、5%の量で使用される。
【0214】
本発明に係るローション及びクリームは、一般に、溶液担体系及び1種以上の皮膚軟化剤を含有する。ローション及びクリームは、典型的には、皮膚軟化剤を約1%〜約50%、好ましくは約1%〜約20%;水を約50%〜約90%、好ましくは約60%〜約80%;並びに上記の量でペンタペプチド及び/もしくはペンタペプチド誘導体並びに追加のスキンケア活性物質(又は複数の活性物質)を含有する。クリームは、一般に皮膚軟化剤のレベルがより高いため又は増粘剤のレベルがより高いためにローションよりも濃い。
【0215】
本発明の軟膏は、動物又は植物油の単一担体基剤もしくは半固体炭化水素(油性);水を吸収してエマルジョンを形成する吸収軟膏基剤;又は水溶性担体、例えば、水溶性の溶液担体を含有してよい。軟膏は、参照により本明細書に組み込まれるSagarinの化粧品、科学と技術(Cosmetics,Science and Technology)、第2版、1巻、72〜73(1972)に記載のものなどの増粘剤、及び/又は皮膚軟化剤をさらに含有してよい。例えば、軟膏は、皮膚軟化剤を約2%〜約10%;増粘剤を約0.1%〜約2%;上記の量でペンタペプチド及び/又はペンタペプチド誘導体並びに追加のスキンケア活性物質(又は複数の活性物質)を含有してよい。
【0216】
洗浄に有用な本発明に係る組成物(「清浄剤」)は、例えば、上記の適切な担体を用いて製剤化され、好ましくは、上記の量のペンタペプチド及び/又はペンタペプチド誘導体並びに追加のスキンケア活性物質(又は複数の活性物質)に加えて、皮膚科学的に許容される界面活性剤を約1%〜約90%、より好ましくは約5%〜約10%含有する。界面活性剤は、適切には、アニオン性、非イオン性、双性イオン性、両性及び両性電解質の界面活性剤、並びにこれらの界面活性剤の混合物から選択される。かかる界面活性剤は、洗浄技術分野の当業者に周知である。可能な界面活性剤の非限定的な例としては、イソセテス−20、メチルココイルタウリン酸ナトリウム、ナトリウムメチルオレオイルタウレート、及びラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。本明細書で有用な代表的な界面活性剤については、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる1989年1月24日発行のKowczらの米国特許第4,800,197号を参照されたい。本明細書で有用な追加の様々な界面活性剤の例については、Allured Publishing社出版のMcCutcheonの洗剤及び乳化剤、北米版(1986)に記載されている。洗浄組成物は、必要に応じて、これらの当該技術分野で確立されたレベルで、従来の洗浄組成物に使用される他の物質を含有することができる。
【0217】
洗浄組成物の物理的形状は重要ではない。該組成物は、例えば、トイレットバー、液体、シャンプー、バスジェル、ヘアコンディショナー、ヘアトニック、ペースト又はムースとして製剤化することができる。シャンプーなどのリンスオフ洗浄組成物は、皮膚及び頭皮上に十分なレベルの活性物質を堆積するのに適切な送達システムを必要とする。好ましい送達システムは、不溶性複合体の使用を含む。かかる送達システムのより完全な開示については、1989年5月30日発行のBarfordらの米国特許第4,835,148号を参照されたい。
【0218】
本明細書で使用する用語「ファンデーション」は、ローション、クリーム、ゲル、ペースト、及びケーキなどを含むがこれらに限定されない液体、半液体、半固体、又は固体の皮膚化粧品を指す。典型的には、ファンデーションは、特定の外観を提供するために、顔の上などの皮膚の広い領域にわたって使用される。ファンデーションは、典型的には、口紅、頬紅、及びパウダーなどのカラー化粧品の接着ベースを提供するために使用され、皮膚の欠点を隠し、皮膚に滑らかで平な外観を付与する傾向がある。本発明のファンデーションは、皮膚科学的に許容される担体を含み、油、着色剤、顔料、皮膚軟化剤、香料、ワックス、及び安定剤などの従来の成分を含んでよい。本明細書で使用するのに適する代表的な担体及びかかる他の成分については、例えば、1996年10月31日公開のCanterらのPCT出願WO 96/33689及び1994年8月3日発行の英国特許GB 2274585に記載されている。
【0219】
組成物の調製
本発明の方法に有用な組成物は、一般に、局所用組成物を製造する当該技術分野で知られているような従来の方法により調製される。かかる方法は、典型的には、加熱、冷却、及び真空の適用などの有無にかかわらず、比較的均一な状態への1以上の工程で成分を混合することを含む。
【0220】
皮膚の状態を調節する方法
本発明の組成物は、哺乳類の皮膚状態を調節するのに有用である。ケラチン組織状態のかかる調節は、予防的及び治療的調節を含むことができる。例えば、かかる調整方法は、ケラチン組織の肥厚(すなわち、皮膚の表皮及び/又は真皮の層、該当する場合には爪及び毛軸のケラチン層の構築)、並びに哺乳類の皮膚の萎縮の予防及び/又は遅延、哺乳類の皮膚上のクモ状血管及び/又は赤斑の出現の予防及び/又は遅延、哺乳類の眼の下のくまの出現の予防及び/又は遅延、哺乳類の皮膚の血色の悪さの予防及び/又は遅延、哺乳類の皮膚のたるみの予防及び/又は遅延、哺乳類の唇、毛髪及び爪の軟化及び/又は平滑化、哺乳類の皮膚のかゆみの予防及び/又は軽減、皮膚の質感(例えば、シワ及び細い線)の調節、皮膚の色(例えば赤み、そばかす)の改善を対象とする。
【0221】
ケラチン組織状態の調節は、安全かつ有効な量の本発明の組成物をケラチン組織に局所適用することを含む。適用される組成物の量、適用頻度及び使用期間は、例えば、存在するか又は発生することが予想されるケラチン組織の損傷レベルを考慮すると、所与の組成物中のペンタペプチド及び/又はペンタペプチド誘導体並びに追加のスキンケア活性物質(複数可)のレベル、並びに所望の調節レベルに依存して大きく変化する。
【0222】
好ましい実施形態において、該組成物は、慢性的に皮膚に適用される。「慢性局所適用」とは、対象の生涯の間、好ましくは少なくとも約1週間、より好ましくは少なくとも約1ヶ月、さらにより好ましくは少なくとも約3ヶ月、さらにより好ましくは少なくとも6ヶ月、かつさらにより好ましくは少なくとも約1年間の期間、長期間にわたる該組成物の継続的な局所適用を意味する。利点は、様々な最大使用期間(例えば、5、10又は20年)後に得られるが、慢性適用は対象の生涯にわたって継続することが好ましい。典型的な適用は、かかる長期間にわたって1日当たり約1回程度であるが、適用率は、1週間に約1回から1日に約3回又はそれ以上と変化させることができる。
【0223】
広い範囲の量の本発明の組成物を用いて、皮膚の外観を提供し、かつ/又は効果を感じることができる。典型的には、適用ごとに使用される本発明の組成物の量は、該組成物1mg/皮膚cmで、約0.1m/cm〜約10mg/cmである。特に有用な適用量は、約1mg/cm〜約2mg/cmである。
【0224】
ケラチン組織の状態の調節は、好ましくは、スキンローション、クリーム、ゲル、フォーム、軟膏、ペースト、エマルジョン、スプレー、コンディショナー、トニック、化粧品、口紅、ファンデーション、マニキュア、又はアフターシェーブなどの形態で組成物を適用することによって実施され、好ましくは、いくらかの審美、予防、治療又はその他の利点のために、皮膚又は他のケラチン構造上に残ることが意図される(すなわち、「リーブオン」組成物)。該組成物を皮膚に適用した後、少なくとも約15分間、より好ましくは少なくとも約30分、さらにより好ましくは少なくとも約1時間、さらにより好ましくは少なくとも数時間、例えば、最大約12時間皮膚上に残る。顔、毛髪、及び/又は爪の外側部分の全ての部分、例えば、顔、唇、下眼領域、まぶた、頭皮、首、胴体、腕、手、脚、足、爪、足の爪、、頭皮毛髪、睫毛、眉毛などを治療することができる。該組成物は、指で又は道具もしくは装置(例えば、パッド、綿ボール、アプリケーターペン、及びスプレーアプリケーターなど)で適用することができる。
【0225】
少なくとも最小レベルのペンタペプチド及び/又はペンタペプチド誘導体並びに追加のスキンケア活性物質(又は複数の活性物質)に対する皮膚の連続暴露を確保するための別のアプローチは、例えば、顔に適用されるパッチの使用によって化合物を適用することである。かかるアプローチは、より集中的な治療を必要とする問題の皮膚領域(例えば、顔のカラスの足領域、しかめ面ライン、及び目尻の下など)に特に有用である。パッチは、閉塞性、半閉塞性又は非閉塞性であり得、接着性又は非接着性であり得る。ペンタペプチド及び/又はペンタペプチド誘導体並びに追加のスキンケア活性物質(又は複数の活性物質)の組成物は、パッチ内に含まれるか、又はパッチの適用前に皮膚に適用することができる。パッチは、Wuらの米国特許第5,821,250号、同第5,981,547号、及び同第5,972,957号に記載のものなどの、発熱反応のための化学的開始剤などの追加の活性成分も含むことができる。パッチは、夜療法の形態として、好ましくは少なくとも約5分間、より好ましくは少なくとも約15分、より好ましくは少なくとも約30分、さらにより好ましくは少なくとも約1時間、さらに好ましくは夜間、皮膚上に放置される。
【0226】
説明の目的のための以下の記載では、実施例の完全な理解を提供するために多くの詳細が記載されている。しかし、これらの特定の詳細は必要とされないことは当業者には明らかであろう。
【0227】
実施例
物質及び方法
グリコシル化Pal−KTTKS誘導体のための一般的な合成手順
Pal−KTTKS配列に基づいて、過アセチル化と脱アセチル化の両方の形態の様々な糖類(Glc、Gal、GlcNAc、GalNAc、Man、Mai、Lac、Rha、Cel、Xyl、Fuc)で全ての可能な部位をグリコシル化することにより、同様に改変したペンタペプチドの4つのグループを作製した。その後、これらの合成化合物を、インビトロでヒト皮膚線維芽細胞培養物上でのエラスチン、フィブロネクチン及び総コラーゲンの分泌を調べ、(ヒト表皮ケラチノサイト及びヒト真皮線維芽細胞で構成される)ヒトの皮膚のインビトロ3Dモデルにおけるエラスチン分泌及び組織学を調べることにより毒性及び生物活性について試験した。同様に改変して作製したペプチドの4つのグループについて、HPLC及び質量分析によって化学的同定を行った。
【0228】
グループ1の改変は、該Pal−KTTKS配列内の2つの中間トレオニンのいずれか一方又は両方における、過アセチル化又は脱アセチル化の形態のグルコース、N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、又はそれらの組み合わせによるグリコシル化を伴った。
【0229】
グループ2の改変は、該Pal−KTTKS配列内の末端セリンにおける、過アセチル化又は脱アセチル化の形態のグルコース、N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミンによるグリコシル化を伴った。
【0230】
グループ3の改変は、該Pal−KTTKS配列内の第1のトレオニンにおける、過アセチル化又は脱アセチル化形態のマンノース又はマルトースによるグリコシル化を伴った。グループ3の改変は、該Pal−KTTKS配列内の第1のトレオニンのセリン置換も含み、このセリンは、過アセチル化又は脱アセチル化形態のグルコースでグリコシル化されている。グループ3の改変は、該Pal−KTTKS配列内の第1のトレオニンのアスパラギン置換も含み、このアスパラギンは、過アセチル化又は脱アセチル化形態のグルコースによりグリコシル化されている。グループ3の改変は、該Pal−KTTKS配列のN末端におけるアスパラギンアミノ酸の付加も含み、このアスパラギンは、過アセチル化又は脱アセチル化形態のグルコースによりグリコシル化されている。
【0231】
グループ4の改変は、該Pal−KTTKS配列内の第1もしくは第2のトレオニン、又は該Pal−KTTKS配列内の末端セリンにおける、過アセチル化形態のガラクトース、マルトース、ラクトース、ラムノース、セロビオース、キシロース又はフコースによるグリコシル化を伴った。
【0232】
全ての化学試薬は、試薬又はHPLC等級として商業的供給業者から入手し、さらに精製することなく使用した。ジクロロメタン(DCM)は、水素化カルシウム(CaH)から蒸留により乾燥させた。特に断りのない限り、全ての反応を室温で行った。グリコペプチド合成に使用した全ての非グリコシル化Fmoc保護アミノ酸は、Novabiochem社(EMD Millipore社)から入手した。グリコペプチド合成に使用した全てのグリコシル化Fmoc保護アミノ酸(グリコアミノ酸又はグリコシル化アミノ酸)は、Sussex Research Laboratories社(オタワ、カナダ)から市販されている(http://www.sussex−research.com/products/glycoamino−acids/all−glycoamino−acids/)。プレロードレジン(H−L−Ser(t−Bu)−2−Cl−トリチル樹脂)は、Matrix Innovation社(ケベック、カナダ)から購入した。標準樹脂(Novabiochem社、2−クロロトリチルクロリド樹脂)は、EMD Millipore社から入手した。パルミチン酸(純度>99%)を、Sigma Aldrich社から購入した。
【0233】
Phenomenex Luna C18カラム:粒径5μm、分析カラム250×4.60mmを用いて、805マノメータモジュール(最大圧力60MPa)、811Cダイナミックミキサー、305ポンプ及びUV/VIS−155検出器を装備したギルソンクロマトグラフにて逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を行った。勾配は、それぞれ移動相A及びB(水/TFA(100/0.1)及びアセトニトリル/TFA(100/0.1)からなる。グリコペプチド類を、214nmでのUV検出を用いて、1mL/分の流速で40分かけて、2〜70%の移動相Bの直線勾配によりカラムから溶出した。Phenomenex Luna C18カラム:粒径10μm、半分取カラム250×21.20mmを用いて、ギルソンクロマトグラフ(805マノメータモジュール、最大圧力60MPa、811Cダイナミックミキサー、305ポンプ、UV/VIS−155検出器)にて分取HPLCを行った。移動相A及びBは、それぞれ(水/TFA(100/0.1)及びアセトニトリル/TFA(100/0.1)からなっていた。214nmでのUV検出を用いて、10mL/分の流速で、35分間での2〜70%の移動相Bの直線勾配によりグリコペプチドを不純物から分離した。
【0234】
マイクロマスZQシングル四重極質量分析計を用いてエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)にてペプチド試料分析を行った。
【0235】
過アセチル化トレオニングリコシル化オリゴペプチドの合成の一般手順
標準的なFmoc固相ペプチド合成(SPPS)法を使用してCS Bio CS136XT自動合成機にてグリコペプチドを合成した。プレロードレジンのH−L−Ser(t−Bu)−2−Cl−トリチル樹脂(0.133g、0.1ミリモル)を反応容器に入れた。Fmoc保護アミノ酸(0.4ミリモル)、Fmoc保護グリコアミノ酸(0.4ミリモル)又はパルミチン酸(0.4ミリモル)をDMF5mLに溶解し、DMF中でのHBTU(0.4ミリモル)及びDIPEA(0.6ミリモル)を用いた活性化によってカップリング反応を行った。Fmoc脱保護は、DMF中の20%ピペリジン溶液を用いて行った。ペプチドアセンブリ完了後、樹脂を、DMF(3×5mL)、続いてDCM(3×5mL)で洗浄し、その後、3時間、高真空下で乾燥させた。その後、乾燥樹脂を、各0.1ミリモル樹脂について試薬K(TFA:水:フェノール:チオアニソール=8.5:0.5:0.5:0.5)10mLにより室温で3時間処理した。粗グリコペプチド生成物を冷エチルエーテルから沈殿させ、RP−HPLCで精製し、凍結乾燥して、白色粉末としてグリコペプチドを80〜100mg得た。グリコペプチドの分子量をMSによって確認し、純度を分析用RP−HPLCによって測定した。
【0236】
脱アシル化グリコシル化オリゴペプチドの合成の一般手順
無水MeOH(5mL)中のPal−KTTKS−[OH]又はPal−KTTKS−[OH](それぞれ0.05ミリモル)の溶液に、無水メタノール中のナトリウムメトキシド(1M)を滴下し、pHを約10に調整した。この反応混合物を室温で1時間撹拌し、その後、酢酸(pH約4.0)で中和した。溶媒を真空中で除去した。粗脱保護グリコペプチドをRP−HPLCで精製し、凍結乾燥して、目的グリコペプチドを白色粉末として典型的には30〜40mg得た。
【0237】
過アセチル化セリングリコシル化オリゴペプチドの合成の一般手順
プレロードされたH−L−Ser(糖)−2−Cl−トリチル樹脂の合成:無水DCM(5mL_)中のFmoc−Ser(糖)−OH(0.3ミリモル)の溶液を、遠心分離管中の2−クロロトリチル樹脂(0.4g、0.3ミリモル)に添加した。15分後、DIPEA(87μl、0.5ミリモル)を添加した。混合物を30分間シェーカー上で攪拌し、その後、DIPEA(120μl、0.75ミリモル)を添加した。この混合物をさらに3時間シェーカー上で放置した。エンドキャップに、メタノール(0.4mL)を添加し、この混合物をさらに30分間撹拌した。樹脂を、多孔質ディスクを取り付けたガラス漏斗に移し、DMF(2×5mL)、その後、DCM(2×5mL)、最後にMeOH(3×5mL)で洗浄した。この樹脂を真空下で一晩乾燥させ、グリコペプチドのFmoc−SPPS合成でさらに使用するためのプレロードされたH−L−Ser(糖)−2−Cl−トリチル樹脂を得た。
【0238】
セリングリコシル化グリコペプチドを、標準的なFmoc固相ペプチド合成法により、CS Bio CS136XT自動合成装置にて合成した。プレロードレジン(H−L−Ser(糖)−2−Cl−トリチル樹脂(0.1ミリモル))を反応容器に入れた。Fmoc保護アミノ酸(DMF5mLに溶解した0.4ミリモル)を、HBTU(0.4ミリモル)及びDIPEA(0.6ミリモル)を用いた活性化を利用して結合させた。N−末端パルミチン酸(DMF5mLに溶解した0.4ミリモル)を同様に結合させた。Fmoc保護基を、DMF中20%ピペリジン溶液を用いて除去した。ペプチドアセンブリ後、樹脂をDMF(3×5mL)、続いて、DCM(3×5mL)で洗浄し、その後、3時間、高真空下で乾燥させた。乾燥樹脂に試薬K(TFA:水:フェノール:チオアニソール=8.5:0.5:0.5:0.5)10mLを添加した。その後、混合物を室温で3時間振盪した。粗製グリコペプチドを冷エチルエーテルから沈殿させ、RP−HPLCで精製し、凍結乾燥して、目的グリコペプチドを白色粉末として120〜150mg得た。生成物グリコペプチドの分子量をMSにより確認し、純度を分析用HPLCによって評価した。
【化7】
【0239】
Pal−KT(Ac−β−Glc)TKS−[OH](GP001−1)の代表的な合成
グリコペプチドGP001−1を、H−L−Ser(t−Bu)−2−Cl−トリチル樹脂(133.3mg、0.1ミリモル)上で標準的なFmoc−SPPS法及び以下の一般的な手順を用いて、CS−Bio CS136XT自動合成装置にて合成した。最初のアミノ酸のFmoc−Lys(Boc)−OH(187.4mg、0.4ミリモル)を、DMF(5mL)中のHBTU(128.4mg、0.4ミリモル)及びDIPEA(104.5μl、0.6ミリモル)を用いてプレロードレジンに結合させた。後続のFmocアミノ酸及びパルミチン酸を同様に結合させた。Fmoc−Thr(AC−β−Glc)−OH(0.270mg、0.4ミリモル)を、第3のカップリング反応に使用した。固相合成後に、このグリコペプチドを試薬K(10mL)で樹脂から切断した。得られた粗グリコペプチドを分取RP−HPLCにより精製し、白色粉末としてPal−KT(Ac−β−Glc)TKS−OH、GP001−1(70mg、62%)を得た。ESI−MS:m/z:C539319の計測値;1132.34;実測値:1133.1[M+H]。分析用RP−HPLCによって測定した場合、純度は95.6%であった。
【0240】
Pal−KT(β−Glc)−TKS−[OH](GP001−2)の代表的な合成
上記の一般的な手順で説明したように、グリコペプチドGP001−1(65mg、0.05ミリモル)を、無水メタノール5mLに溶解し、メタノール中のナトリウムメトキシドを添加することにより脱保護し、白色粉末として目的の脱アセチル化グリコペプチドGP001−2を32mg得た。ESI−MS:m/z:C458515の計測値;964.19;実測値:965[M+H]。分析用HPLCにより、純度は99%であった。
【0241】
Pal−KT(Ac−β−Mal)TKS−[OH](GP003−9)の代表的な合成
グリコペプチドGP003−9を、H−L−Ser(t−Bu)−2−Cl−トリチル樹脂(133.3mg、0.1ミリモル)上で標準的なFmoc−SPPS法及び以下の一般的な手順を用いて、CS−Bio CS136XT自動合成機にて合成した。最初のアミノ酸のFmoc−Lys(Boc)−OH(187.4mg、0.4ミリモル)を、DMF(5mL)中のHBTU(128.4mg、0.4ミリモル)及びDIPEA(104.5μL、0.6ミリモル)を用いてプレロードレジンに結合させた。後続のFmocアミノ酸を同様の方法で結合させた。Fmoc−Thr(Ac−β−Mal)−OH(0.372mg、0.4ミリモル)を第3のカップリング反応に使用した。固相合成後に、グリコペプチドを試薬K(10mL)で樹脂から切断した。得られた粗グリコペプチドを分取RP−HPLCにより精製し、白色粉末としてPal−KT(Ac−β−Mal)TKS−OH、GP003−9(90mg、63%収率)を得た。ESI−MS:m/z:C6510927の計測値;1420.59;実測値:1420.7[M+H]。分析用RP−HPLCにより測定した場合、純度は99.1%であった。
【0242】
Pal−KTTKS(Ac−β−Glc)−[OH](GP002−3)の代表的な合成
a)Fmoc−Ser(Ac4−β−Glc)−OH(0.3ミリモル)を、上記の一般的な手順により、2−クロロトリチル樹脂(0.4g、0.3ミリモル)にロードした。乾燥させたプレロードレジンを、その後のステップでさらに処理することなく使用した。
【0243】
b)グリコペプチドGP002−3を、上記で説明したように調製し、プレロードレジン上での標準的なFmoc固相ペプチド合成法により、CS Bio CS136XT自動合成装置上で合成した。固相合成の後に、グリコペプチドを、試薬K(10mL)を使用して樹脂から切断した。得られた粗グリコペプチドを分取HPLCによって精製し、白色粉末としてPal−KTTKS(Ac4−β−Glc)−OH、GP002−3(136mg、40%)を得た。ESI−MS:m/z:C539319についての計算値;1132.34;実測値:1132.[M+H]。純度は、分析用RP−HPLCにより99.6%であった。
【0244】
PaKTTKS(Ac−β−Gal)−[OH](GP002−7)の代表的な合成
a)Fmoc−Ser(Ac4−β−Gal)−OH(0.3ミリモル)を、上記の一般的な手順により、2−クロロトリチル樹脂(0.4g、0.3ミリモル)上にロードした。乾燥させたプレロードレジンを、その後の工程でさらに処理することなく使用した。
【0245】
b)グリコペプチドGP002−7を、上記で説明したように調製し、プレロードレジン上での標準的なFmoc固相ペプチド合成法により、CS Bio CS136XT自動合成装置上で合成した。固相合成の後に、グリコペプチドを、試薬K(10mL)を用いて樹脂から切断した。得られた粗グリコペプチドを分取RP−HPLCにより精製し、白色粉末として目的ペプチドのPal−KTTKS(Ac4−β−Gal)−OH、GP002−7(140mg、41%)を得た。ESI−MS:m/z:C539319についての計算値1132.34;実測値:1132.5[M+H]。純度は、分析用HPLCで99.6%であった。
【0246】
Pal−KTT(Ac−β−Mal)KS−[OH](GP004−3)の代表的な合成
グリコペプチドGP004−3を、H−L−Ser(t−Bu)−2−Cl−トリチル樹脂(133.3mg、0.1ミリモル)上での標準的なFmoc−SPPS法及び以下の一般的な手順を用いて、CS−Bio CS136XT自動合成装置上で合成した。最初のアミノ酸のFmoc−Lys(Boc)−OH(179.6mg、0.4ミリモル)を、DMF(5mL)中のHBTU(126.3mg、0.4ミリモル)及びDIPEA(104.5μl、0.6ミリモル)を用いてプレロードレジンに結合させた。後続のFmoc−アミノ酸を同様の方法で結合させた。Fmoc−Thr(Ac−β−Mal)−OH(0.383mg、0.4ミリモル)を第2のカップリング反応に用いた。固相合成後に、グリコペプチドを試薬K(10mL)で樹脂から切断した。得られた粗グリコペプチドを分取RP−HPLCにより精製し、白色粉末としてPal−KT(Ac−β−Mal)TKS−OH、GP004−3(26mg、収率18%)を得た。ESI−MS:m/z:C6510927についての計算値1420.59;実測値:1420.7[M+H]。分析用RP−HPLCにより測定した場合、純度は98.5%であった。
【0247】
Pal−KTTKS(Ac−β−Mal)−[OH](GP004−4)の代表的な合成
a)Fmoc−Ser(Ac7−β−Mal)−OH(0.3ミリモル)を、上記の一般的な手順により、2−クロロトリチル樹脂(0.4g、0.3ミリモル)にロードした。乾燥させたプレロードレジンを、その後のステップでさらに処理することなく使用した。
【0248】
b)グリコペプチドGP004−4を、上記のように調製したプレロードレジン上での標準的なFmoc固相ペプチド合成法により、CS Bio CS136XT自動合成装置上で合成した。固相合成後に、グリコペプチドを、試薬K(10mL)を用いて樹脂から切断した。得られた粗グリコペプチドを分取HPLCにより精製し、白色粉末としてPal−KTTKS(Ac7−β−Mal)−[OH]、GP004−4(102mg、24%)を得た。ESI−MS:m/z:C6510927についての計算値;1420.59;実測値:1420.7[M+H]。純度は、分析用RP−HPLCにより97.8%であった。
【0249】
略語:
Ac アセチル
Ac4−β−Glc 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド
Ac4−β−Gal 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシド
Ac7−β−Mal 2,2’,3,3’,4’,6,6’−ヘプタ−O−β−D−マルトピラノシド
Cel D−セロビオース
Cl 塩素
Gal D−ガラクトース
GalNAc N−アセチル−D−ガラクトサミン
Clc D−グルコース
GlcNAc N−アセチル−D−グルコサミン
DCM ジクロロメタン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
Fuc L−フコース
HBTU N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート
Lac D−ラクトース
Mal D−マルトース
Man D−マンノース
MeOH メタノール
Pal パルミトイル
Rha L−ラムノース
t−Bu tert−ブチル
TFA トリフルオロ酢酸
Xyl D−キシロース
【0250】
質量分析
LC−MSシステム(HPLC:Waters Alliance 2795)上に、水に溶解したペプチド試料(2〜5μl)を注入することによりペプチドの質量スペクトルを得た。移動相A及びBのそれぞれについての移動相は、水:ギ酸(100:0.1)及びアセトニトリル:ギ酸(100:0.1)からなっていた。流量は、50:50(移動相A:移動相B)の組成物を用いて0.2mL/分に設定した。2.0分の実行時間にわたって正と負の両方のモードで1秒間に100〜1800amuをスキャンするように質量分析計(質量スペクトル:Waters Micromass ZQ)を設定した。質量スペクトルは、TICクロマトグラムから抽出した。
【0251】
ECM ELISAアッセイ
KMST−6細胞(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団、JCRB0433)を、12ウェル組織培養処理プレート(Falcon社、353043)に完全培地中7,000細胞/mlで播種した。完全培地は以下のものからなる:MEM/EBSS(Hyclone社、SH30024.01)、10%熱不活性化FBS(Gibco社、10082−147)、1% L−グルタミン(Hyclone社、SH30031.01)、1% ヌクレオシド(800mg/L アデノシン、850mg/L グアニジン、730mg/L シチジン、730mg/L ウリジン及び240mg/L チミジン)、1% ペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone社、SV30010)、1% ピルビン酸ナトリウム(Hyclone社、SH30239.01)、1% 非必須アミノ酸(Hyclone社、SH30238.01)及び0.04% ゲンタマイシン(Gibco社、15710−064)。細胞を、処理前に2日間増殖させた。培地を吸引し、細胞を1×PBS(Fisher社、SH30256.01)で洗浄し、50μg/mLのアスコルビン酸ナトリウム(Sigma社、A4034)及び80μg/mLのβ−アミノプロピオンフマル酸塩(Sigma社、A3134)を補充した無血清培地中5μΜ(1mL/ウェル)グリコペプチド、参照物質(Pal−KTTKS、CPC Scientific社、822197)、及び対照(DMSO、Fisher社、BP231−100)で処理した。処理した細胞を、48時間及び72時間、37℃、5%COでインキュベートした。各時点で、各処理からの培地を収集し、4℃で15分間、1500RPMで遠心分離した。上清を収集し、細胞外マトリックスタンパク質の定量化のために−80℃で保存した。以下のキットを、ECMタンパク質:フィブロネクチン(Takara、MK115)及びエラスチン(Uscnライフサイエンス社、E91337Hu)の定量化のために使用した。細胞を回収し、250μLの溶解バッファー(20mM Tris−HCl(Sigma社、T1503)、137mMの NaCl(Sigma社、S9888)、2mM EDTA(Fisher社、BP118)、1% IGEPAL(Sigma社、I8896)、10%グリセロール(Sigma社、G5516)、100μM PMSF(Fisher社、36978)及び10μg/mL ロイペプチン(Sigma−Aldrich社、L2884))で溶解した。それらを冷容器に入れ、30分間、プレートシェーカー(Lab−Line Instruments、3595)上に置いた。溶解物を4℃で5分間、10,000gで遠心分離した。上清を収集し、タンパク質定量(BioRad、500−0112)のために使用した。
【0252】
細胞の形態
KMST−6細胞(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団、JCRB0433)を、12ウェル組織培養処理プレート(Falcon社、353043)に完全培地中7,000細胞/mlで播種した。完全培地は以下のものからなる:MEM/EBSS(Hyclone社、SH30024.01)、10% 熱不活性化FBS(Gibco社、10082−147)、1% L−グルタミン(Hyclone社、SH30031.01)、1%ヌクレオシド(800mg/L アデノシン、850mg/L グアニジン、730mg/L シチジン、730mg/L ウリジン及び240mg/L チミジン)、1% ペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone社、SV30010)、1% ピルビン酸ナトリウム(Hyclone社、SH30239.01)、1% 非必須アミノ酸(Hyclone社、SH30238.01)及び0.04%ゲンタマイシン(Gibco社、15710−064)。細胞を、処理前に2日間増殖させた。培地を吸引し、細胞を1×PBS(Fisher社、SH30256.01)で洗浄し、50μg/mLのアスコルビン酸ナトリウム(Sigma社、A4034)及び80μg/mLのβ−アミノプロピオンフマル酸塩(Sigma社、A3134)を補充した無血清培地中5μΜ グリコペプチド(GP001−1、GP002−3、GP002−7、GP003−9、GP004−3及びGP004−4)、参照物質(Pal−KTTKS、CPC scientific社、822197)、及び対照(DMSO、Fisher社、BP231−100)で処理した。処理した細胞を48時間及び72時間、37℃、5%COでインキュベートした。各時点で、画像をオリンパス社製Opti−Tech Scientific Microscope(10倍の倍率でのLumenera、Infinity 2カメラ)で撮影し、細胞のサイズ及び形態の変化を記録した。
【0253】
細胞生存率MTTアッセイ
KMST−6細胞(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団、JCRB0433)を、完全培地中7,000細胞/mLで播種した。完全培地は以下のものからなる:MEM/EBSS(Hyclone社、SH30024.01)、10% 熱不活性化FBS(Gibco社、10082−147)、1% L−グルタミン(Hyclone社、SH30031.01)、1%ヌクレオシド(800mg/L アデノシン、850mg/L グアニジン、730mg/L シチジン、730mg/L ウリジン及び240mg/L チミジン)、1% ペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone社、SV30010)、1% ピルビン酸ナトリウム(Hyclone社、SH30239.01)、1% 非必須アミノ酸(Hyclone社、SH30238.01)及び0.04%ゲンタマイシン(Gibco社、15710−064)。細胞を、処理前に2日間増殖させた。培地を吸引し、細胞を1×PBS(Fisher社、SH30256.01)で洗浄し、50μg/mLのアスコルビン酸ナトリウム(Sigma社、A4034)及び80μg/mLのβ−アミノプロピオンフマル酸塩(Sigma社、A3134)を補充した無血清培地中5μΜ グリコペプチド(GP001−1、GP002−3、GP002−7、GP003−9、GP004−3及びGP004−4)、参照物質(Pal−KTTKS、CPC scientific社、822197)、及び対照(DMSO、Fisher社、BP231−100)で処理した。処理した細胞を48時間及び72時間、37℃、5%COでインキュベートした。各時点で、全てのウェルに色素溶液(Promega社、G4102)を15μL添加することによりMTTアッセイを行った。細胞を2〜4時間インキュベートした。この間、生きている細胞は、色素溶液のMTTテトラゾリウム成分をホルマザン生成物に変換する。その後、ホルマザン生成物を可溶化するために、可溶化/停止溶液(Promega社、G4101)を培養ウェルに添加した。吸光度を570nmでマイクロプレートリーダー(Molecular Devices社、SpectraMax M2e)を用いて測定した。発明者らは、対照と比較した場合に50%未満である細胞生存率として毒性を定義した。
【0254】
総コラーゲンアッセイ
KMST−6細胞(財団法人ヒューマンサイエンス振興財団、JCRB0433)を、60mm組織培養処理プレートに完全培地中7,000細胞/mLで播種した。完全培地は以下のものからなっていた:MEM/EBSS(Hyclone社、SH30024.01)、10% 熱不活性化FBS(Gibco社、10082−147)、1% L−グルタミン(Hyclone社、SH30031.01)、1%ヌクレオシド(800mg/L アデノシン、850mg/L グアニジン、730mg/L シチジン、730mg/L ウリジン及び240mg/L チミジン)、1% ペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone社、SV30010)、1% ピルビン酸ナトリウム(Hyclone社、SH30239.01)、1% 非必須アミノ酸(Hyclone社、SH30238.01)及び0.04%ゲンタマイシン(Gibco社、15710−064)。細胞を、処理前に2日間増殖させた。細胞を1×PBS(Fisher社、SH30256.01)で洗浄し、50μg/mLのアスコルビン酸ナトリウム(Sigma社、A4034)及び80μg/mLのβ−アミノプロピオンフマル酸塩(Sigma社、A3134)を補充した無血清培地中5μΜ グリコペプチド(GP003−9、GP004−3、GP004−4)、参照物質(Pal−KTTKS、CPC scientific社、822197)、及び対照(DMSO、Fisher社、BP231−100)で処理した。処理した細胞を48時間及び72時間、37℃、5%COでインキュベートした。各時点で、各処理からの培地を収集し、4℃で15分間、1500RPMで遠心分離した。上清を収集し、細胞外マトリックスタンパク質の定量化のために−80℃で保存した。以下のキット:シリウスレッドコラーゲン検出キット(Chondrex社、9062)を、総コラーゲンの定量化のために使用した。細胞を回収し、溶解緩衝液(20mM Tris−HCl(Sigma社、T1503)、137mM NaCl(Sigma社、S9888)、2mM EDTA(Fisher社、BP118)、1% IGEPAL(Sigma社、I8896)、10%グリセロール(Sigma社、G5516)、100μΜ PMSF(Fisher社、36978)及び10μg/mL ロイペプチン(Sigma社、L2884))で溶解した。それらを冷容器に入れ、30分間オービタルシェーカー(VWR、89032−088)上に置いた。細胞溶解物を4℃で5分間、10,000gで遠心分離した。上清を収集し、タンパク質定量(BioRad、500−0112)のために使用した。
【0255】
ヒト3Dインビトロ皮膚モデル
MatTek社製 EpiDermFT(商標)ヒト3Dインビトロ皮膚モデルをMatTek社(米国マサチューセッツ州アッシュランド)によって生成した。3D皮膚モデルは、それぞれ新生児包皮組織及び成人の皮膚に由来する正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)及び正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)から構成されている。組織診断により、8〜12細胞層に加えて、基底層、有棘層及び顆粒層を含む角質層が明らかになった。組織は、細孔径0.4μm、直径1.2cm及び表面積1.0cmのCostar社製Snapwell(商標)単一ウェル組織培養プレートインサート中の気液界面で成長させた。組織の維持のために、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、上皮成長因子、インスリン、ヒドロコルチゾン、5μg/mL ゲンタマイシン、0.2μg/mlのアムホテリシンB及びフェノールレッドを含む無血清EFT−400−ASY培地を用いた。
【0256】
エラスチン評価
組織を1%PBSで2回すすぎ、5μΜ GP003−9、参照物質(PaL−KTTKS、CPC scientific社、822197)、及び対照(DMSO、Fisher社、BP231−100)で処理した。処理後72時間の時点で、上清を分離し、エラスチンELISA分析(Cedarlane社、SE9133Hu)のために−80℃で維持した。1:50試料希釈を用いて、製造業者のプロトコルに従ってELISAを行った。
【0257】
総タンパク質定量のために、組織を1%PBSですすぎ、冷組織タンパク質抽出試薬(Pierce社、78510)を添加した。組織を、手持ちペレット乳棒を用いて約1分間均質化した。全ての試料を4℃で10分間、16000gで遠心分離した。遠心分離後、上清を収集し、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce社、23227)を用いてタンパク質濃度を決定した。
【0258】
組織学的処理
組織を1%PBSで2回すすぎ、5μΜ GP003−9、参照物質(PaL−KTTKS、CPC scientific社、822197)、及び対照(DMSO、Fisher社、BP231−100)で処理した。処理後72時間の時点で、組織を一晩、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、翌日に1%PBSに移した。その後、組織は(断面を提供するために)二分し、段階的エタノールシリーズで脱水し、パラフィンに包埋した。5ミクロン切片を調製し、組織学的観察に使用するためのヘマトキシリン&エオシンで染色した。
【0259】
統計分析
一方向Anova統計手法を用いて、3つ以上の試料の平均を比較した。ボンフェローニ多重比較検定により、対照又は参照物質でのグリコペプチド処理間の差の比較が可能になった。p<0.05にp値を設定することによって統計的有意性を導いた(データ分析は、基本的な統計的検定、データ編成及び科学グラフの性能を有効にするグラフパッドプリズム6、scientific社製ソフトウェアを用いて取得した)。
【0260】
以下の実施例で、本明細書に記載の特定の組成物を作製し、かつ本明細書に記載の方法を実行するいくつかの代表的な方法について説明する。これらの実施例は、例示の目的のみのためであり、本明細書に記載の組成物及び方法の範囲を限定することを意味するものではないことを理解されたい。
【0261】
実施例1
改変ペプチドの4つのバッチを作製し、前述のように、化学的同一性をHPLC及び質量分析によって確認した。合計で44種の異なるグリコペプチドを作製し、表1A及び表1Bに示す。
【0262】
【表1】
【表2】
【0263】
細胞外マトリックスタンパク質の分泌に対する効果を決定するために、個々のグリコペプチド5μΜを、ヒト皮膚線維芽細胞(KMST−6)と共にインキュベートした。対照試料の細胞をDMSO(Fisher社、BP231−100)で処理した。前述のように、上清を(2つの時点、処理後48時間及び72時間)処理細胞から収集し、ELISAキット(フィブロネクチン(Takara社、MK115)、エラスチン(Uscnライフサイエンス社、E91337Hu)を用いて、その後の細胞外マトリックスタンパク質の定量のために−80℃で保存した。総細胞タンパク質の決定のために、処理細胞を収集し、溶解した。溶解物を遠心分離し、上清を収集した後、タンパク質定量(BioRad社、500−0112)のために使用した。ELISAプレートを、450nmの吸光度でプレートリーダー(Molecular Devices社)上で読み取り、SoftMax Proソフトウェアを用いて、生成した4パラメータフィット標準曲線から導き出される目的のタンパク質のμg/ml値を計算した。分泌タンパク質のそれぞれのμg/mlを1ウェル当たりの総タンパク質に正規化した。このデータを、少なくとも3つの独立した実験からの正規化値を平均化し、100%に設定した処理対照と比較した%として表すことによって分析した(表2〜5)。一方向ANOVA(P<0.05)を用いて統計的有意性を調べ、「」は、対照と比較した場合の統計的有意性を表し、「#」は参照物質と比較した場合の統計的有意性を表す。
【0264】
以下の表は、ヒト皮膚線維芽細胞の処理後のエラスチン分泌(表2及び表3、それぞれ48時間及び72時間の時点)、並びにフィブロネクチン分泌(表4及び表5、それぞれ48時間及び72時間の時点)に対する全44種のグリコペプチドの有効性を示す。これらの結果のグラフを表1A及び表1B(それぞれ48時間及び72時間の時点でのエラスチン分泌)並びに表2A及び表2B(それぞれ48時間及び72時間の時点でのフィブロネクチン分泌)に示す。これらの結果から、グリコシル化ペプチド処理した線維芽細胞は、対照処理した線維芽細胞を上回るECM分泌(エラスチン及びフィブロネクチン)の増加を示したことがわかる。
【0265】
【表3】
【0266】
【表4】
【0267】
【表5】
【0268】
【表6】
【0269】
この最初のスクリーンから、6種のグリコペプチド:GP001−1(Pal−KT(Ac−Glc)TKS−OH)、GP002−3((Pal−KTTKS(Ac−Glc)−OH)、GP002−7(Pal−KTTKS(Ac−Gal)−OH)、GP003−9(Pal−KT(Ac−β−Mal)TKS−OH)、GP004−3(Pal−KTT(Ac−β−Mal)KS−OH)及びGP004−4(Pal−KTTKS(Ac−β−Mal)は、有効性(ECM分泌)の増加を示し、さらなる開発のために特定した。
【0270】
GP001−1(Pal−KT(Ac−β−Glc)TKS−OH)−物質:グリコペプチド(β−GlcペプチドPerAc);分子量:1132;外観:白色の凍結乾燥固体;純度(HPLC)>95%(図3A)、質量分析法(ESI POS):確認[M+H]=1132.5及び[M+2H]=567(図3B)。
【0271】
GP002−3((Pal−KTTKS(Ac−β−Glc)−OH)−物質:グリコペプチド(β−GlcペプチドPerAc);分子量1132;外観:白色の凍結乾燥固体;純度(HPLC)>99.6%(図4A);質量分析(ESI POS):確認[M+H]=1132.5(図4B)。
【0272】
GP002−7(Pal−KTTKS(Ac−β−GAL)−OH)−物質:グリコペプチド(β−GlcペプチドPerAc);分子量:1132;外観:白色の凍結乾燥固体;純度(HPLC)>100%(図5A)。質量分析(ESI POS):確認[M+H]=1132.4(図5B)。
【0273】
GP003−9(Pal−KT(Ac−β−Mal)TKS−OH)−物質:グリコペプチド(β−マルトースペプチドPerAc);分子量:1420;外観:白色の凍結乾燥固体;純度(HPLC)>97%(図6A)。質量分析(ESI POS):確認[M+H]=1420.7(図6B)。
【0274】
GP004−3(Pal−KTT(Ac−β−Mal)KS−OH)−物質:グリコペプチド(β−マルトースペプチドPerAc);分子量:1420;外観:白色の凍結乾燥固体;純度(HPLC)>95%(図7A)。質量分析(ESI POS):確認[M+H]=1420.8(図7B)。
【0275】
GP004−4(Pal−KTTKS(Ac−β−Mal)−OH)−物質:グリコペプチド(β−マルトースペプチドPerAc);分子量:1420;外観:白色の凍結乾燥固体;純度(HPLC)>95%(図8A);質量分析(ESI POS):確認[M+H]=1420.7(図8B)。
【0276】
これらの6種のグリコシル化ペンタペプチドを、参照物質ペンタペプチドPal−KKTKSと比較して、インビトロ毒性試験(細胞の生存率及び形態)に供した。
【0277】
細胞形態及びサイズに対する影響を決定するために、前述のように、5μΜの6種の代表的なグリコペプチドをヒト皮膚線維芽細胞(KMST−6)に適用した。参照ペンタペプチドはPal−KTTKS(CPC scientific社、822197)であり、対照試料細胞をDMSO(Fisher社、BP231−100)で処理した。形態学的画像は、対照及びグリコペプチドで処理した細胞と比較して、参照物質が目に見えて細胞生存率を妨害し、細胞のコンフルエンスの減少があったことを示した。対照的に、位相コントラスト形態を通して観察されるように、試験した6種のグリコペプチドのどれも、いかなる毒性の形態も示さなかった(図9)。重要なことには、MTTアッセイによって測定されるとおり、5μΜ濃度で試験した全てのグリコペプチドの90%がいかなる毒性の形態も示さなかった(データ示さず)。
【0278】
毒性の尺度として細胞生存率に対する影響を決定するために、前述したように、5μΜの6種の代表的なグリコペプチドをヒト皮膚線維芽細胞(KMST−6)に適用した。参照ペンタペプチドはPal−KTTKS(CPC scientific社、822197)であり、対照試料の細胞をDMSO(Fisher社、BP231−100)で処理した。前述したように、処理細胞を、48時間(図10A)及び72時間(図10B)、37℃、5%COでインキュベートした。各時点で、全てのウェルに色素溶液(Promega社、G4102)を15μL添加することによってMTTアッセイを行った。生細胞が色素溶液のMTTテトラゾリウム成分をホルマザン生成物に変換する間、細胞を2〜4時間インキュベートした。その後、ホルマザン生成物を可溶化するために、可溶化/停止溶液(Promega社、G4101)を培養ウェルに添加した。吸光度を570nmでマイクロプレートリーダー(Molecular Devices社、SpectraMax M2e)を用いて測定した。3つ以上の独立した実験を行い、一方向ANOVA(p<0.05)を用いて統計的有意性を決定した。毒性は、対照と比較した場合、細胞生存率は50%未満であると定義した。試験した6種のグリコペプチドのうちの1種のみが、いずれかの時点での細胞生存率に対する効果を示した(図10A及び10B)。対照的に、非グリコシル化参照ペンタペプチドは、対照と比較して48時間及び72時間の時点で細胞生存率の有意な減少を示した(図10B)。重要なことには、MTTアッセイによって測定されるとおり、5μΜ濃度で試験した全グリコペプチドの90%がいかなる毒性の形態も示さなかった(データ示さず)。
【0279】
グリコペプチドの毒性プロフィールをさらに特徴付け、調べるために、試験グリコペプチドGP003−9、GP004−3及びGP004−4について追加実験を行った(データ示さず)。ヒト皮膚線維芽細胞(KMST−6)を、48時間及び72時間の時点で5μΜのグリコペプチド、参照物質(Pal−KTTKS、CPC scientific社、822197)及び対照(DMSO、Fisher社、BP231−100)で処理した。以下の毒性アッセイを行った:1)細胞代謝活性の測定のための細胞生存率(CellTiter96(登録商標)水性一溶液(MTS)比色アッセイ、Promega社、G3580);2)全細胞集団あたりの生細胞の測定のためのLIVE/DEAD(登録商標)生存率/細胞毒性キット(Molecular Probes社、、L−3224);3)a)総生細胞数を得るための細胞数及びb)インタクトなDNAを有する細胞を定量化するためのDNA含量(PureLink(登録商標)ゲノムDNAミニキット、Invitrogen社、K182002)を測定することによる細胞増殖;最後に4)細胞死を受けている細胞の測定のためのアポトーシス/壊死(アネキシンV Alexa Fluor(登録商標)488&ヨウ化プロピジウム、Molecular Probes社、V13241を有する死細胞アポトーシスキット)。実行した全ての追加実験において、追加のインビトロ毒性試験に供した3種のグリコペプチドでは毒性は観察されなかった。
【0280】
細胞外マトリックスタンパク質分泌に対する影響を確認するために、ヒト皮膚線維芽細胞(KMST−6)を5μΜのグリコペプチド[GP001−1(Pal−KT(Ac−Glc)TKS−OH)、GP002−3((Pal−KTTKS(Ac−Glc)−OH)、GP002−7(Pal−KTTKS(Ac−Gal)−OH)、GP003−9(Pal−KT(Ac−β−Mal)TKS−OH)、GP004−3(Pal−KTT(Ac−β−Mal)KS−OH)及びGP004−4(Pal−KTTKS(Ac−β−Mal)−OH)]、参照物質(Pal−KTTKS、CPC scientific社、822197)、又はビヒクル対照(DMSO、Fisher社、BP231−100)で72時間処理した。3回以上の独立した実験を行った。一方向ANOVA(P<0.05)を用いて統計的有意性を調べ、「」は、対照と比較した場合の統計的有意性を表し、「#」は参照物質と比較した場合の統計的有意性を表す。
【0281】
【表7】
【0282】
GP001−1、GP002−3、GP002−7、GP003−9、GP004−3及びGP004−4の全ては、エラスチン分泌(表6及び図11A)及びフィブロネクチン分泌(表6及び図11B)において対照と比較して高い生物活性を誘導した。しかし、グリコペプチドGP002−3(189%、p<0.0001)、GP003−9(151%、P<0.0001)及びGP004−3(252%、P<0.0001)は、参照ペプチドと比較してエラスチン分泌を有意に増加させたが、GP002−3(222%、P<0.0001)、GP002−7(107%、P<0.04)、GP003−9(184%、P<0.0001)及びGP004−3(285%、P<0.0001)は、対照と比較してエラスチン分泌を有意に増加させた。さらに、GP004−3(50%、P<0.02)及びGP004−4(65%、P<0.0007)は、参照物質と比較してフィブロネクチン分泌を有意に増加させたが、GP002−3(35%、P<0.01)、GP003−9(40%、P<0.0004)、GP004−3(68%、P<0.0003)及びGP004−4(83%、P<0.0001)は、対照と比較してフィブロネクチン分泌を有意に増加させた。最後に、GP003−9、GP004−3及びGP004−4は、総コラーゲンについて試験した唯一のグリコペプチドであり、結果は、これら全てが対照と比較してそれぞれ25%(P<0.004)、31%(P<0.0008)及び24%(P<0.005)総コラーゲン分泌を有意に増加させ、GP004−3(21%、P<0.01)が参照ペプチドと比較して総コラーゲン分泌を有意に増加させた(表6及び図12)ことを示した。
【0283】
(正常ヒト表皮ケラチノサイト及び正常ヒト皮膚線維芽細胞で構成される)3Dヒトインビトロ皮膚モデルであるMatTek社製EpiDermFT(商標)を用いて、ヒトの皮膚上の代表的なグリコシル化ペプチド(GP003−9)の影響をさらに調べた。組織を、前述したように、5μΜのGP003−9、参照物質(Pal−KTTKS、CPC scientific社、822197)、又はビヒクル対照(DMSO、Fisher社、BP231−100)で処理した。処理後72時間の時点で、上清を収集し、エラスチン分泌について分析した。図13は、GP003−9が、3Dヒト皮膚モデルにおいて非グリコシル化参照ペプチド又は対照と比較してエラスチン分泌を約1.5倍増加させたことを示している。あるいは、5μΜのGP003−9、参照物質(Pal−KTTKS、CPC scientific社、822197)、又はビヒクル対照(DMSO、Fisher社、BP231−100)で処理した組織を、組織学的評価のためにパラフィン包埋して、切片を作製し、その後、ヘマトキシリン&エオシンで染色した。図14は、GP003−9が3Dヒト皮膚モデルの組織学に対して有害な影響を与えなかったことを示している。
【0284】
上記の実施例は、例示のみを意図している。添付の特許請求の範囲によってのみ定義される範囲から逸脱することなく、当業者なら特定の実施例に対して変更、改変及び変形を行うことができる。

図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]