(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スラブの全体組成100重量%を基準として、C:0.01%〜0.1%、Si:2.0%〜4.0%、Mn:0.01%〜0.30%、Al:0.005%〜0.040%、Sn:0.005%〜0.20%、S:0.0005%〜0.020%、Se:0.0005%〜0.020%、P:0.005%〜0.1%、N:0.0005%〜0.015%、Ti:0.0001%〜0.020%、V:0.0001%〜0.020%、Nb:0.0001%〜0.020%、および、B:0.0001%〜0.020%を含み、残部はFeおよびその他不純物からなるスラブを加熱した後、熱間圧延して熱延板を製造する段階と、
前記熱延板を焼鈍する段階と、
熱延板焼鈍が完了した鋼板を冷却した後、冷間圧延して冷延板を製造する段階と、
前記冷延板を脱炭焼鈍後に浸窒焼鈍するか、脱炭焼鈍および浸窒焼鈍を同時に実施する段階と、
前記脱炭焼鈍および浸窒焼鈍が完了した鋼板を最終焼鈍する段階とを含むが、
前記熱間圧延して熱延板を製造する段階において、熱間圧延終了温度は、850℃以上であり、
前記熱延板を製造する段階の後、熱延板を巻取る段階をさらに含み、熱延板の巻取温度は、600℃以下であり、
前記熱延板焼鈍する段階は、鋼板を昇温させる昇温段階と、昇温が完了した後に鋼板を一次均熱する段階と、一次均熱が完了した鋼板を冷却した後、二次均熱する段階と、二次均熱が完了した鋼板を冷却する段階とを含み、
前記昇温段階は、15℃/秒以上の昇温速度で一次均熱温度まで昇温し、
前記一次均熱する段階は、均熱温度1000℃〜1150℃で実施し、前記二次均熱する段階は、均熱温度700℃〜1050℃で実施するが、一次均熱温度と二次均熱温度との差は、20℃以上であり、一次均熱が完了した鋼板を冷却する時、冷却速度は、10℃/秒以上であり、二次均熱が完了した鋼板を200℃以下の温度に冷却するが、冷却速度は、20℃/秒以上であり、
前記浸窒焼鈍後、鋼板の総窒素含有量が0.0180〜0.0250重量%である、
方向性電磁鋼板の製造方法。
スラブの全体組成100重量%を基準として、C:0.01%〜0.1%、Si:2.0%〜4.0%、Mn:0.01%〜0.30%、Al:0.005%〜0.040%、Sn:0.005%〜0.20%、S:0.0005%〜0.020%、Se:0.0005%〜0.020%、P:0.005%〜0.1%、N:0.0005%〜0.015%、Ti:0.0001%〜0.020%、V:0.0001%〜0.020%、Nb:0.0001%〜0.020%、および、B:0.0001%〜0.020%を含み、
Cr:0.001%〜0.20%、Ni:0.001%〜0.20%、Cu:0.001%〜0.90%、Mo:0.002%〜0.1%、Sb:0.005%〜0.20%、Bi:0.0005%〜0.1%、Pb:0.0001%〜0.02%、As:0.0001%〜0.02%、またはこれらの組み合わせをさらに含み、
残部はFeおよびその他不純物からなるスラブを加熱した後、熱間圧延して熱延板を製造する段階と、
前記熱延板を焼鈍する段階と、
熱延板焼鈍が完了した鋼板を冷却した後、冷間圧延して冷延板を製造する段階と、
前記冷延板を脱炭焼鈍後に浸窒焼鈍するか、脱炭焼鈍および浸窒焼鈍を同時に実施する段階と、
前記脱炭焼鈍および浸窒焼鈍が完了した鋼板を最終焼鈍する段階とを含むが、
前記熱間圧延して熱延板を製造する段階において、熱間圧延終了温度は、850℃以上であり、
前記熱延板を製造する段階の後、熱延板を巻取る段階をさらに含み、熱延板の巻取温度は、600℃以下であり、
前記熱延板焼鈍する段階は、鋼板を昇温させる昇温段階と、昇温が完了した後に鋼板を一次均熱する段階と、一次均熱が完了した鋼板を冷却した後、二次均熱する段階と、二次均熱が完了した鋼板を冷却する段階とを含み、
前記昇温段階は、15℃/秒以上の昇温速度で一次均熱温度まで昇温し、
前記一次均熱する段階は、均熱温度1000℃〜1150℃で実施し、前記二次均熱する段階は、均熱温度700℃〜1050℃で実施するが、一次均熱温度と二次均熱温度との差は、20℃以上であり、一次均熱が完了した鋼板を冷却する時、冷却速度は、10℃/秒以上であり、二次均熱が完了した鋼板を200℃以下の温度に冷却するが、冷却速度は、20℃/秒以上であり、
前記浸窒焼鈍後、鋼板の総窒素含有量が0.0180〜0.0250重量%である、
方向性電磁鋼板の製造方法。
前記スラブに含まれているTi、V、Nb、およびB成分の総含有量は、スラブの全体組成100重量%を基準として、0.0004%〜0.043%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
前記スラブに含まれているTi、V、Nb、およびB成分の総含有量は、スラブの全体組成100重量%を基準として、0.0004%〜0.040%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。また、本発明の他の実施形態は、方向性電磁鋼板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブの全体組成100重量%を基準として、N:0.0005%〜0.015%、Ti:0.0001%〜0.020%、V:0.0001%〜0.020%、Nb:0.0001%〜0.020%、および、B:0.0001%〜0.020%を含み、残部はFeおよびその他不純物を含むスラブを加熱した後、熱間圧延して熱延板を製造する段階と、前記熱延板を焼鈍する段階と、熱延板焼鈍が完了した鋼板を冷却した後、冷間圧延して冷延板を製造する段階と、前記冷延板を脱炭焼鈍後に浸窒焼鈍するか、脱炭焼鈍および浸窒焼鈍を同時に実施する段階と、前記脱炭焼鈍および浸窒焼鈍が完了した鋼板を最終焼鈍する段階とを含む。
【0006】
前記熱延板焼鈍する段階は、鋼板を昇温させる昇温段階と、昇温が完了した後に鋼板を一次均熱する段階と、一次均熱が完了した鋼板を冷却した後、二次均熱する段階とを含み、前記昇温段階は、15℃/秒以上の昇温速度で一次均熱温度まで昇温するものであってもよい。
【0007】
前記一次均熱する段階は、均熱温度1000℃〜1150℃で実施するものであってもよい。
【0008】
前記一次均熱する段階は、5秒以上均熱処理するものであってもよい。
【0009】
前記二次均熱する段階は、均熱温度700℃〜1050℃で実施するが、一次均熱温度と二次均熱温度との差は、20℃以上であってもよい。
【0010】
一次均熱が完了した鋼板を冷却する時、冷却速度は、10℃/秒以上であってもよい。
【0011】
熱延板焼鈍が完了した鋼板を冷却する時、200℃以下の温度に冷却するが、冷却速度は、20℃/秒以上であってもよい。
【0012】
前記二次均熱する段階は、1秒以上均熱処理するものであってもよい。
【0013】
前記熱間圧延して熱延板を製造する段階において、熱間圧延終了温度は、850℃以上であってもよい。
【0014】
前記熱延板を製造した後、熱延板を巻取る段階をさらに含み、熱延板の巻取温度は、600℃以下であってもよい。
【0015】
前記冷間圧延時の圧下率は、80%以上であってもよい。(ここで、圧下率は、(圧延前の鋼板の厚さ−圧延後の鋼板の厚さ)/(圧延前の鋼板の厚さ)である)
【0016】
前記冷間圧延は、1パスの圧延によって最終厚さまで冷間圧延するか、中間焼鈍を含む2パス以上の圧延によって最終厚さまで冷間圧延するが、前記冷間圧延中の最小1パスは、150℃〜300℃で実施するものであってもよい。
【0017】
前記スラブは、スラブの全体組成100重量%を基準として、C:0.01%〜0.1%、Si:2.0%〜4.0%、Mn:0.01%〜0.30%、Al:0.005%〜0.040%、Sn:0.005%〜0.20%、S:0.0005%〜0.020%、Se:0.0005%〜0.020%、および、P:0.005%〜0.1%をさらに含んでもよい。
【0018】
前記スラブに含まれているTi、V、Nb、およびB成分の総量は、重量%で、0.0001%〜0.040%であってもよい。
【0019】
前記スラブは、スラブの全体組成100重量%を基準として、Cr:0.001%〜0.20%、Ni:0.001%〜0.20%、Cu:0.001%〜0.90%、Mo:0.002%〜0.1%、Sb:0.005%〜0.20%、Bi:0.0005%〜0.1%、Pb:0.0001%〜0.02%、As:0.0001%〜0.02%、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0020】
本発明の一実施形態に係る方向性電磁鋼板は、電磁鋼板の全体組成100重量%を基準として、N:0.0005%〜0.015%、Ti:0.0001%〜0.020%、V:0.0001%〜0.020%、Nb:0.0001%〜0.020%、および、B:0.0001%〜0.020%を含み、残部はFeおよびその他不純物を含む。また、前記Ti、V、Nb、およびB成分の総量は、重量%で、0.0001%〜0.043%であってもよい。具体的には、前記Ti、V、Nb、およびB成分の総量は、重量%で、0.0001%〜0.040%であってもよい。
【0021】
前記方向性電磁鋼板において、電磁鋼板の全体組成100重量%を基準として、Ti窒化物に存在するTiの含有量は0.0001重量%以上であり、V窒化物に存在するVの含有量が0.0001重量%以上であり、Nb窒化物に存在するNbの含有量が0.0001重量%以上であり、B窒化物に存在するBの含有量が0.0001重量%以上であってもよい。
【0022】
また、Ti、V、Nb、B、またはこれらの組み合わせである窒化物が結晶粒界に偏析していてよい。
【0023】
さらに、前記電磁鋼板は、電磁鋼板の全体組成100重量%を基準として、C:0.01%〜0.1%、Si:2.0%〜4.0%、Mn:0.01%〜0.30%、Al:0.005%〜0.040%、Sn:0.005%〜0.20%、S:0.0005%〜0.020%、Se:0.0005%〜0.020%、および、P:0.005%〜0.1%をさらに含んでもよい。
【0024】
また、前記電磁鋼板は、電磁鋼板の全体組成100重量%を基準として、Cr:0.001%〜0.20%、Ni:0.001%〜0.20%、Cu:0.001%〜0.90%、Mo:0.002%〜0.1%、Sb:0.005%〜0.20%、Bi:0.0005%〜0.1%、Pb:0.0001%〜0.02%、As:0.0001%〜0.02%、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態によれば、Ti、B、V、Nb、またはこれらの組み合わせである窒化物は微細に析出させて、方向性電磁鋼板製造工程中のインヒビターとして用いることができる。
【0026】
また、本発明の一実施形態によれば、磁性に優れ、鉄損が低い方向性電磁鋼板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付した図面と共に詳細に後述する実施形態を参照すれば明確になるであろう。しかし、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現可能であり、単に本実施形態は、本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によってのみ定義される。明細書全体にわたって同一の参照符号は同一の構成要素を指し示す。
【0028】
したがって、いくつかの実施形態において、よく知られた技術は本発明が曖昧に解釈されるのを避けるために具体的に説明されない。別の定義がなければ、本明細書で使用される全ての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解できる意味で使用されるはずである。明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。また、単数形は、文章で特に言及しない限り、複数形も含む。
【0029】
また、特に言及しない限り、%は、重量%を意味する。
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法を説明する。
【0031】
まず、スラブの全体組成100重量%を基準として、N:0.0005%〜0.015%、Ti:0.0001%〜0.020%、V:0.0001%〜0.020%、Nb:0.0001%〜0.020%、および、B:0.0001%〜0.020%を含み、残部はFeおよびその他不純物を含むスラブを準備する。
【0032】
前記スラブに含まれているTi、V、Nb、およびB成分の総量は、重量%で、0.0001%〜0.040%であってもよい。
【0033】
前記スラブは、重量%で、C:0.01%〜0.1%、Si:2.0%〜4.0%、Mn:0.01%〜0.30%、Al:0.005%〜0.040%、Sn:0.005%〜0.20%、S:0.0005%〜0.020%、Se:0.0005%〜0.020%、および、P:0.005%〜0.1%をさらに含んでもよい。
【0034】
前記スラブは、重量%で、Cr:0.001%〜0.20%、Ni:0.001%〜0.20%、Cu:0.001%〜0.90%、Mo:0.002%〜0.1%、Sb:0.005%〜0.20%、Bi:0.0005%〜0.1%、Pb:0.0001%〜0.02%、As:0.0001%〜0.02%、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0035】
まず、成分限定の理由について説明する。
【0036】
Nは、窒化物を形成してインヒビターとして作用する元素である。0.015%超過時、熱延後の工程で窒素拡散による表面欠陥をもたらすことがあり、0.0005%未満であれば、窒化物の形成が少なくて結晶粒の大きさが粗大になって一次再結晶粒の大きさの制御が難しくなり、不安定な二次再結晶をもたらすことがある。
【0037】
Tiは、本発明の一実施形態において、窒化物を形成してインヒビターとして作用する元素である。Ti含有量が0.0001%未満であれば、インヒビターとして結晶成長抑制効果が低下し、0.02%超過であれば、抑制力が強くて二次再結晶が起こらなくなり、純化焼鈍後にもTiNが多量存在して磁性を低下させることがある。
【0038】
Vは、本発明の一実施形態において、窒化物を形成してインヒビターとして作用する元素である。V含有量が0.0001%未満であれば、インヒビターとして結晶成長抑制効果が低下し、0.02%超過であれば、炭化物を形成して磁性を低下させることがある。
【0039】
Nbは、本発明の一実施形態において、窒化物を形成してインヒビターとして作用する元素である。Nb含有量が0.0001%未満であれば、インヒビターとして結晶成長抑制効果が低下し、0.02%超過であれば、炭化物を形成して磁性を低下させることがある。
【0040】
Bは、本発明の一実施形態において、窒化物を形成してインヒビターとして作用する元素である。B含有量が0.0001%未満であれば、インヒビターとして結晶成長抑制効果が低下し、0.02%超過であれば、炭化物を形成して磁性を低下させることがある。
【0041】
Cは、0.01%以上添加され、オーステナイト相変態を促進し、方向性電磁鋼板の熱延組織を均一にし、冷間圧延時、Goss方位の結晶粒形成を促進する。0.10%超過時、微細な熱延組織の形成で一次再結晶粒が微細になって粗大なカーバイドを形成し、セメンタイトを形成して組織に不均一をもたらすことがある。
【0042】
Siは、電磁鋼板の比抵抗を増加させて鉄心損失を低下させる役割を果たす。Si含有量が2.0%未満であれば、比抵抗が減少して鉄損特性が劣化し、4.0%超過時、鋼の脆性が大きくなって冷間圧延が極めて難しくなり得る。
【0043】
Mnは、比抵抗を増加させて鉄損を減少させる効果もあり、Sと反応してMnS析出物を形成することによって、一次再結晶粒の成長をインヒビターとして使用されたりする。Mnが0.01%未満であれば、熱間圧延時、亀裂現象を抑制しにくく、比抵抗増加効果もわずかであり得る。0.3%超過時、Mn酸化物が形成されて表面品質を低下させることがある。
【0044】
Alは、AlNを形成してインヒビターとして作用する。Al含有量が0.005%未満の場合には、インヒビターとしての抑制力が不足し、0.04%超過の場合には、析出物が粗大に成長してインヒビターとしての役割を果たせないことがある。
【0045】
Snは、結晶粒界の移動を妨げ、Goss方位の結晶粒生成を促進する。Snが0.005%未満であれば、結晶粒界の移動を妨げる効果を示しにくく、0.2%超過時、鋼板の脆性が大きくなり得る。
【0046】
Sは、硫化物を形成してインヒビターの役割を果たす。本発明の一実施形態では、補助的なインヒビターとして役割が可能である。Sが0.0005%未満であれば、MnSの形成が難しく、0.02%超過時、二次再結晶を困難にし、熱間圧延時、高温亀裂現象をもたらすことがある。
【0047】
Seは、Mnと反応してMnSe析出物を形成してインヒビターの役割を果たすことができる。Seが0.0005%未満であれば、MnSeを形成しにくく、0.02%超過時、二次再結晶を困難にし、熱間圧延時、高温亀裂現象をもたらすことがある。
【0048】
Pは、インヒビターの役割が可能であり、集合組織の側面で{110}<001>集合組織を改善する効果がある。Pの含有量が0.005%未満であれば、インヒビターの役割を果たせず、0.1%超過時、脆性が増加して圧延性が劣化することがある。
【0049】
Ti、V、Nb、およびB成分の総量が0.001%未満であれば、インヒビターとして結晶成長抑制効果が低下し、0.043%超過時、炭窒化物が粗大化して磁性が低下することがある。
【0050】
また、本発明の一実施形態において、Cr:0.001%〜0.20%、Ni:0.001%〜0.20%、Cu:0.001%〜0.90%、Mo:0.002%〜0.1%、Sb:0.005%〜0.20%、Bi:0.0005%〜0.1%、Pb:0.0001%〜0.02%、As:0.0001%〜0.02%、またはこれらの組み合わせをスラブ中にさらに含むことで、Goss方位結晶粒を増加させ、表面品質を安定化させることができる。
【0051】
前記スラブを加熱した後、熱間圧延して熱延板を製造する。
【0052】
前記スラブを加熱する温度は、1050℃〜1250℃であってもよい。
【0053】
また、本発明の一実施形態では、Ti、V、Nb、B、またはこれらの組み合わせである窒化物をインヒビターとして用いるために、熱間圧延終了温度は、850℃以上であってもよい。より具体的には850〜930℃であってもよい。熱間圧延終了温度が850℃未満であれば、熱間圧延負荷が増加し、Ti、V、Nb、およびB成分が鋼中に炭素および窒素と反応して粗大な炭化物あるいは窒化物を形成してインヒビター効果が低下することがある。
【0054】
さらに、本発明の一実施形態では、Ti、V、Nb、B、またはこれらの組み合わせである窒化物をインヒビターとして用いるために熱延板を製造した後、熱延板を巻取る場合、巻取温度は600℃以下の温度で巻取ることができる。より具体的には530〜600℃であってもよい。巻取温度が600℃超過であれば、Ti、V、Nb、およびB成分が粗大な炭化物を形成してインヒビター効果が低下することがある。
【0055】
製造された熱延板は、熱延板焼鈍を実施する。
【0056】
本発明の一実施形態では、Ti、V、Nb、B、またはこれらの組み合わせである窒化物をインヒビターとして用いるために、下記の熱延板焼鈍方法を提供することができる。
【0057】
本発明の一実施形態において、熱延板焼鈍する段階は、鋼板を昇温させる昇温段階と、昇温が完了した後に鋼板を一次均熱する段階と、一次均熱が完了した鋼板を冷却した後、二次均熱する段階とを含む。
【0058】
前記昇温段階は、15℃/秒以上の昇温速度で熱延板の巻取温度以下から一次均熱温度まで昇温することができる。より具体的には30〜50℃/秒であってもよい。昇温速度が15℃/秒未満であれば、昇温過程で炭化物あるいは窒化物が形成される。
【0059】
また、前記一次均熱温度は、1000℃〜1150℃であってもよい。1000℃未満の場合、炭化物や窒化物が再固溶せずに析出および成長しやすく、これは、二次再結晶を困難にする。1150℃超過であれば、熱延板の再結晶粒の結晶成長が粗大になって適切な一次再結晶微細組織を形成しにくくなり得る。
【0060】
さらに、一次均熱段階において、均熱維持時間は、5秒以上であってもよい。5秒未満の場合、炭化物および窒化物が再固溶する時間が不足して、必要とする析出物構造を確保しにくくなり得る。
【0061】
前記二次均熱する段階は、均熱温度700℃〜1050℃であってもよい。700℃未満の場合には、窒化物のほか、炭化物も共に形成されて均一な一次再結晶微細組織を生成しにくいことがある。1050℃超過時、Ti、V、Nb、B成分が析出せずに固溶状態で存在し、冷間圧延時に炭化物を形成して均一な一次再結晶微細組織を確保しにくくなり得る。
【0062】
また、二次均熱段階において、均熱維持時間は、1秒以上であってもよい。1秒未満の場合は、Ti、V、Nb、B、またはこれらの組み合わせである窒化物が析出しにくくなり得る。
【0063】
さらに、一次均熱温度と二次均熱温度との差は、20℃以上であってもよい。
【0064】
昇温および一次均熱処理によって固溶しているTiN、VN、NbN、BN析出物の形成元素が微細で均一な析出のためには析出駆動力が必要であり、このような析出駆動力は、一次均熱温度と二次均熱温度との温度差となる。一次均熱温度と二次均熱温度との差は20℃未満であれば、析出駆動力が不足して、TiN、VN、NbN、およびBN析出現象が起こりにくくなり得る。したがって、冷間圧延工程において、Ti、V、Nb、B成分が炭化物を形成する問題が発生し得る。
【0065】
また、一次均熱が完了した鋼板を冷却する時の冷却速度は、10℃/秒以上であってもよい。より具体的には25〜100℃/秒であってもよい。10℃/秒未満であれば、析出駆動力が低下してTiN、VN、NbN、BN析出現象が起こりにくくなり得る。
【0066】
さらに、二次均熱が完了した鋼板を冷却する時、20℃/秒以上の冷却速度で200℃以下の温度まで冷却することができる。より具体的には25〜200℃/秒であってもよい。冷却速度が20℃/秒未満であれば、冷却過程でTi、V、Nb、およびBの窒化物が粗大に析出して最終磁気特性を劣化させることがある。
【0067】
熱延板焼鈍が完了した鋼板は、冷間圧延して冷延板を製造する。
【0068】
前記冷間圧延は、1パスの圧延によって最終厚さまで冷間圧延するか、2パス以上の圧延によって最終厚さまで冷間圧延することができる。2パス以上の圧延によって最終厚さまで冷間圧延する場合、各パスの間に1回以上の中間焼鈍を実施することができる。
【0069】
また、前記冷間圧延時の最小1パスは、150℃〜300℃で実施することができる。150℃以上で冷間圧延を実施すると、固溶炭素による加工硬化でGoss方位の二次再結晶核の生成が向上して磁束密度を高めることができる。しかし、300℃超過時、固溶炭素による加工硬化効果が弱くなって、Goss方位の二次再結晶核の発生がわずかになり得る。
【0070】
さらに、前記冷間圧延時の圧下率は、80%以上であってもよい。ここで、圧下率は、(圧延前の鋼板の厚さ−圧延後の鋼板の厚さ)/(圧延前の鋼板の厚さ)である。80%未満であれば、Goss方位の集積度が低くて磁束密度が低下することがある。
【0071】
冷間圧延が完了した冷延板は、脱炭焼鈍後に浸窒焼鈍する。あるいは、脱炭焼鈍および浸窒焼鈍を同時に実施することができる。脱炭焼鈍時、20℃/秒以上の速度で700℃以上の温度まで昇温することができる。昇温速度が20℃/秒未満の場合には、Goss方位の一次再結晶粒の形成がわずかで磁束密度が劣化することがある。
【0072】
NH
3ガスによって浸窒焼鈍を実施し、浸窒焼鈍によってAlN、(Al、Si)N;(Al、Si、Mn)N;またはTi、V、Nb、またはBを含む複合窒化物が形成される。
【0073】
脱炭焼鈍および浸窒焼鈍が完了すると、最終焼鈍を実施する。
【0074】
最終焼鈍時、1000℃以上に昇温した後、長時間均熱焼鈍して二次再結晶を起こして{110}<001>Goss方位の集合組織が形成され、この時、Ti、V、Nb、B、またはこれらの組み合わせである窒化物がインヒビターとして作用する。
【0075】
また、最終焼鈍時、昇温区間では、窒素と水素の混合ガスに維持して、粒子成長抑制剤の窒化物を保護して二次再結晶がよく発達できるようにし、二次再結晶が完了した後には、水素雰囲気で長時間維持して不純物を除去することができる。
【0076】
以下、本発明の一実施形態に係る方向性電磁鋼板について説明する。
【0077】
本発明の一実施形態に係る方向性電磁鋼板は、重量%で、N:0.0005%〜0.015%、Ti:0.0001%〜0.020%、V:0.0001%〜0.020%、Nb:0.0001%〜0.020%、および、B:0.0001%〜0.020%を含み、残部はFeおよびその他不純物を含む。また、前記Ti、V、Nb、およびB成分の総量は、重量%で、0.0001%〜0.040%であってもよい。
【0078】
前記方向性電磁鋼板において、Ti窒化物に存在するTiの含有量は0.0001重量%以上であり、V窒化物に存在するVの含有量が0.0001重量%以上であり、Nb窒化物に存在するNbの含有量が0.0001重量%以上であり、B窒化物に存在するBの含有量が0.0001重量%以上であってもよい。さらに、Ti、V、Nb、B、またはこれらの組み合わせである窒化物が結晶粒界に偏析していてよい。これは、本発明の一実施形態において、Ti、V、Nb、B、またはこれらの組み合わせである窒化物が二次再結晶焼鈍過程でインヒビターとして作用したからである。
【0079】
また、前記電磁鋼板は、重量%で、C:0.01%〜0.1%、Si:2.0%〜4.0%、Mn:0.01%〜0.30%、Al:0.005%〜0.040%、Sn:0.005%〜0.20%、S:0.0005%〜0.020%、Se:0.0005%〜0.020%、および、P:0.005%〜0.1%をさらに含んでもよい。
【0080】
さらに、前記電磁鋼板は、重量%で、Cr:0.001%〜0.20%、Ni:0.001%〜0.20%、Cu:0.001%〜0.90%、Mo:0.002%〜0.1%、Sb:0.005%〜0.20%、Bi:0.0005%〜0.1%、Pb:0.0001%〜0.02%、As:0.0001%〜0.02%、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0081】
方向性電磁鋼板の成分限定の理由は、スラブの成分限定の理由で説明したので、それ以上の詳細な説明は省略する。
【0082】
以下、実施例を通じて詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0083】
<実施例1>
重量%で、C:0.055%、Si:3.3%、Mn:0.12%、Al:0.024%、S:0.0050%、Se:0.0030%、N:0.0050%、P:0.03%、および、Sn:0.06%を含み、Ti、V、Nb、および、Bを表1のように含み、残部Feとその他不可避に添加される不純物を含有するスラブを1150℃の温度に加熱した後、熱間圧延した。
【0084】
熱間圧延時、900℃で圧延を終了して、最終厚さ2.3mmの熱延板を製造した後、冷却して、550℃で巻取った。
【0085】
以降、熱延板を25℃/秒の昇温速度で一次均熱温度:1080℃まで加熱して30秒維持した後、15℃/秒の冷却速度で二次均熱温度:900℃まで冷却してから120秒間維持し、20℃/秒の冷却速度で常温まで冷却した。
【0086】
以降、鋼板を酸洗した後、0.23mmの厚さに1回冷間圧延するが、冷間圧延中の鋼板温度は220℃となるようにした。以降、冷延板を、865℃の温度で、水素、窒素、および、アンモニアの混合ガス雰囲気で155秒間維持して、鋼板の総窒素含有量が0.0200重量%となるように脱炭および窒化処理を同時に実施した。
【0087】
次に、鋼板に焼鈍分離剤のMgOを塗布してコイル状に二次再結晶の高温焼鈍を実施した。高温焼鈍中、1200℃まで昇温時、25体積%N
2および75体積%H
2の混合ガス雰囲気とし、1200℃到達後には、100体積%H
2雰囲気で10時間維持後に徐冷した。それぞれの合金成分系に対する二次再結晶の高温焼鈍後の磁気的特性(W
17/50、B
8)を測定した値は表1の通りである。
【0088】
【表1】
【0089】
前記表1から確認できるように、本発明の一実施形態に係る成分系の電磁鋼板の磁気的特性に優れていることが分かる。
【0090】
<実施例2>
重量%で、C:0.051%、Si:3.2%、Mn:0.09%、Al:0.026%、S:0.0040%、Se:0.0020%、N:0.006%、P:0.05%、Sn:0.05%、Ti:0.0080%、V:0.0051%、Nb:0.0035%、および、B:0.0035%を含み、残部Feとその他不可避に添加される不純物を含有するスラブを1150℃の温度まで加熱した後、熱間圧延した。その後、表2のように熱間圧延終了温度および巻取温度を異ならせて、厚さ2.3mmの熱延板を製造した。前記熱延板を25℃/秒以上の昇温速度で一次均熱温度:1080℃まで加熱して30秒維持した後、15℃/秒の冷却速度で二次均熱温度:900℃まで冷却してから120秒間維持し、20℃/秒の冷却速度で常温まで冷却した。
【0091】
以降、鋼板を酸洗した後、0.23mmの厚さに冷間圧延し、冷間圧延中の鋼板の温度は200℃となるようにした。冷延板を50℃/秒の昇温率で昇温して、860℃の温度で、水素、窒素、および、アンモニアの混合ガス雰囲気で180秒間維持して、鋼板の総窒素含有量が0.0210重量%となるように脱炭および窒化処理を同時に実施した。次に、鋼板に焼鈍分離剤を塗布してコイル状に二次再結晶焼鈍を実施した。高温焼鈍は1200℃まで25体積%:N
2および75体積%:H
2の混合ガス雰囲気で昇温し、1200℃到達後には、100体積%:H
2ガスで20時間維持後に徐冷した。
【0092】
【表2】
【0093】
前記表2に示しているように、熱間圧延終了温度が850℃未満の場合、Al、Ti、V、Nb、Bの窒化物形成が促進されて、均一な一次再結晶形成が妨げられ、安定した二次再結晶による優れた磁気特性の確保が難しかった。また、巻取温度が600℃以上の場合には、Al、Ti、V、Nb、Bなどの炭窒化物形成の可能性が高まることによって、二次再結晶が不安定で優れた磁気特性の確保が難しかった。
【0094】
<実施例3>
重量%で、C:0.058%、Si:3.4%、Mn:0.15%、Al:0.028%、S:0.0030%、Se:0.0050%、N:0.008%、P:0.03%、Sn:0.08%、Ti:0.0050%、V:0.0050%、Nb:0.0150%、および、B:0.0035%を含み、残部Feとその他不可避に添加される不純物を含有するスラブを1150℃の温度に加熱した後、熱間圧延した。熱間圧延時、880℃で圧延を終了し、厚さ2.6mmの熱延板を製造した後、530℃で巻取った。
【0095】
以降、熱延板焼鈍時、表3のように、昇温速度、一次均熱温度、二次均熱温度を変更して熱延板焼鈍を実施した。一次均熱が完了した後、一次均熱温度から二次均熱温度への冷却速度、および二次均熱温度が完了してから常温までの冷却速度は30℃/秒とした。
【0096】
以降、鋼板を0.27mmの厚さに1回冷間圧延し、冷間圧延中の鋼板温度は180℃となるようにした。
【0097】
以降、常温から100℃/秒の昇温率で均熱温度870℃まで昇温した後、水素および窒素雰囲気で脱炭焼鈍した後に、水素、窒素、および、アンモニアの混合ガス雰囲気中で窒化処理して、鋼板の総窒素含有量が0.0180重量%となるようにした。次に、鋼板に焼鈍分離剤のMgOを塗布してコイル状に巻取った後、1200℃まで25体積%N
2および75体積%H
2の混合ガス雰囲気で昇温した後、1200℃到達後には、100体積%H
2雰囲気で20時間維持後に徐冷した。
【0098】
【表3】
【0099】
表3に示されているように、熱延板焼鈍時、15℃/秒未満と昇温率が低い場合、昇温中にAl、Ti、V、Nb、Bの炭窒化物が微細に析出する傾向が増加して二次再結晶が不安定になり、加熱温度が1150℃以上と高かったり、あるいは1000℃未満と低い場合、熱間圧延時、微細析出したAl、Ti、V、Nb、Bの窒化物の固溶がうまく行われず、二次再結晶も不安定になる。一方、加熱および均熱温度との差が20℃未満の場合と均熱温度が1050℃以上と高い場合には、Al、Ti、V、Nb、Bの窒化物の再析出が起こらずに固溶している状態で存在する。この場合、冷間圧延および脱炭焼鈍工程で炭窒化物を形成することによって、一次再結晶微細組織を小さくして優れた磁気特性を確保できる二次再結晶形成を不安定にする。また、均熱温度が700℃未満の場合、Al、Ti、V、Nb、Bの窒化物と共に炭化物形成の可能性が高まることによって、二次再結晶が不安定になって磁性が劣化する。
【0100】
<実施例4>
重量%で、C:0.048%、Si:3.2%、Mn:0.10%、Al:0.032%、S:0.0030%、Se:0.0030%、N:0.0080%、P:0.07%、Sn:0.03%、Ti:0.0100%、V:0.0030%、Nb:0.0050%、および、B:0.0025%を含み、残部Feとその他不可避に添加される不純物を含有するスラブを1150℃の温度に加熱した後、熱間圧延した。
【0101】
熱間圧延時、860℃で圧延を終了して、最終厚さ2.0mmの熱延板を製造した後、冷却して、500℃で巻取った。
【0102】
以降、熱延板を25℃/秒の昇温速度で一次均熱温度1120℃まで加熱して60秒維持した後、表4に示された冷却速度(一次冷却速度)で二次均熱温度900℃まで冷却してから120秒間維持し、表4に示された冷却速度(二次冷却速度)で常温まで冷却して熱延板焼鈍をした。
【0103】
以降、鋼板を酸洗した後、0.30mmの厚さに1回冷間圧延するが、冷間圧延中の鋼板温度は250℃となるようにした。
【0104】
以降、冷延板を875℃の温度で水素、窒素、および、アンモニアの混合ガス雰囲気で200秒間維持して、鋼板の総窒素含有量が0.0250重量%となるように脱炭および窒化処理を同時に実施した。
【0105】
次に、鋼板に焼鈍分離剤のMgOを塗布してコイル状に二次再結晶の高温焼鈍を実施した。高温焼鈍中、1200℃まで昇温時、25体積%N
2および75体積%H
2の混合ガス雰囲気とし、1200℃到達後には、100体積%H
2雰囲気で10時間維持後に徐冷した。
【0106】
【表4】
【0107】
表4のように、一次冷却速度が10℃/秒未満の場合、熱延板焼鈍時、加熱段階で固溶したAl、Ti、V、Nb、B成分が微細な窒化物を形成するための析出駆動力が低下する。したがって、固溶状態で熱延板焼鈍が完了すると、冷間圧延と脱炭焼鈍工程時、微細なAl、Ti、V、Nb、Bの炭窒化物を形成することによって、一次再結晶組織を微細にして二次再結晶が不安定になる。また、二次冷却速度が20℃/秒未満の場合には、均熱帯から常温に冷却が徐々に行われ、冷却過程でAl、Ti、V、Nb、Bの炭窒化物が粗大に形成される可能性が高まり、これは、二次再結晶の形成を不安定にして最終磁気特性を劣化させる。
【0108】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。
【0109】
そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるあらゆる変更または変更された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。