特許第6496429号(P6496429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6496429アセチルサリチル酸誘導体の結晶及びその調製方法と用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496429
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】アセチルサリチル酸誘導体の結晶及びその調製方法と用途
(51)【国際特許分類】
   C07C 219/14 20060101AFI20190325BHJP
   C07C 213/10 20060101ALI20190325BHJP
   A61K 31/235 20060101ALI20190325BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20190325BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20190325BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20190325BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20190325BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190325BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   C07C219/14
   C07C213/10
   A61K31/235
   A61P3/10
   A61P29/00
   A61P25/04
   A61P25/06
   A61P35/00
   A61P9/00
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-567519(P2017-567519)
(86)(22)【出願日】2016年3月7日
(65)【公表番号】特表2018-508581(P2018-508581A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】CN2016075753
(87)【国際公開番号】WO2016155468
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2017年9月20日
(31)【優先権主張番号】201510151946.2
(32)【優先日】2015年4月1日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517330069
【氏名又は名称】浙江越甲▲薬▼▲業▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲ジン▼
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03365483(US,A)
【文献】 特表2009−542797(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/139161(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104276962(CN,A)
【文献】 Journal of the American Chemical Society,1959年,81,pp.1986-1991
【文献】 塩路雄作,固形製剤の製造技術,東京:シーエムシー出版,2003年 1月27日,普及版,pp. 9, 12-13,ISBN 4-88231-783-4
【文献】 Pharmaceutical Research,1995年,12(7),pp.945-954
【文献】 溶剤ハンドブック,株式会社講談社,1985年 9月 1日,第47〜51頁
【文献】 Chemistry & Industry,1989年,(16),pp.527-529
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学構造が式Iに示され、結晶の粉末X線回折(XRPD)スペクトルにおいて、下記の2θ角:11.0°±0.2°、20.6°±0.2°、25.1°±0.2°、8.2°±0.2°、16.5°±0.2°、13.4°±0.2°、25.4°±0.2°に特徴的ピークを有する、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶。
【化1】
【請求項2】
前記結晶の粉末X線回折(XRPD)スペクトルにおいて、さらに下記の2θ角:10.8°±0.2°に特徴的ピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
前記結晶の粉末X線回折(XRPD)スペクトルにおいて、さらに下記の2θ角:22.8°±0.2°、30.4°±0.2°、19.2°±0.2°、17.6°±0.2°、10.6°±0.2°、23.0°±0.2°、35.7°±0.2°、27.9°±0.2°、18.2°±0.2°、24.8°±0.2°、22.1°±0.2°に特徴的ピークを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の結晶。
【請求項4】
前記結晶の赤外吸収スペクトルにおいて、2988.0cm−1、2974.6cm−1、2953.7cm−1、2889.1cm−1、1725.9cm−1、1759.1cm−1、1605.6cm−1、1576.1cm−1、1484.0cm−1、1448.2cm−1、1389.9cm−1、1068.7cm−1、1087.1cm−1、757.0cm−1、及び2487.3cm−1〜2563.4cm−1の範囲に吸收ピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の結晶。
【請求項5】
化学構造が式Iに示され、結晶が直方晶型であり、単結晶X線回折によって測定する場合、格子定数が:a=16.01ű0.01Å、b=7.17ű0.01Å、c=28.86ű0.01Å、α=β=γ=90°である、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の結晶。
【化2】
【請求項6】
単結晶X線回折によって測定する場合、前記結晶はさらに下記特徴を有することを特徴とする、請求項5に記載の結晶。
−結晶学空間群:Pbca;
−単位格子体積:V=3311.4ű1.0Å
−結晶サイズ:0.211×0.176×0.112mm
−結晶密度:1.267mg/m
−格子内非対称単位数:8;
−単位格子中の電子数:F(0000)=1344。
【請求項7】
下記の工程を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の調製方法。
(1)2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を無水アセトニトリルと混合し、原料を完全に溶解させて、溶液を得る;
(2)溶液を0〜30℃に冷却し、請求項1〜6のいずれかに記載の2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を析出させる。
【請求項8】
前記2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料と無水アセトニトリルの最終の質量体積比は1:2〜1:20w/vであることを特徴とする、請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
前記2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料と無水アセトニトリルの最終の質量体積比は1:4〜1:10w/vであることを特徴とする、請求項8に記載の調製方法。
【請求項10】
前記溶解工程において加熱する必要があることを特徴とする、請求項7に記載の調製方法。
【請求項11】
前記溶解工程において無水アセトニトリルを還流させるまで加熱する必要があることを特徴とする、請求項10に記載の調製方法。
【請求項12】
溶液を4〜25℃に冷却し、結晶を析出させることを特徴とする、請求項7に記載の調製方法。
【請求項13】
アセチルサリチル酸適応症を治療する薬物を調製するための、請求項1〜6のいずれかに記載の2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の使用。
【請求項14】
前記アセチルサリチル酸によって治療できる適応症は、風邪による発熱、頭痛、神経痛、筋肉痛、月経痛、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、痛風症、がん、糖尿病、糖尿病合併症、心脳血管疾患、脳卒中の予防、虚血性心疾患の予防、一過性脳虚血の予防、心筋塞栓の予防、不整脈の発症率と死亡率の低減からなる群から選ばれるものである、請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学製薬分野に関し、特に、アセチルサリチル酸誘導体である2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の結晶及びその調製方法と用途に関する。
【背景技術】
【0002】
アスピリンはアセチルサリチル酸とも言われ、1853年に初めて合成され、1899年に臨床治療に適用されるようになった。アスピリンは多種の薬物的効能を有し、血管を拡張させることで短期間内に頭痛緩和効果を奏するので、解熱鎮痛に用いることができる。アスピリンはリウマチ熱を治療する一番好ましい薬物であり、その投与により、解熱し、炎症を軽減させ、関節の症状を好転させ、血沈を下げることができる。リウマチ性関節炎(rheumatic arthritis)以外に、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)の治療にも用いられ、症状を改善でき、さらなる治療に備える。また、アスピリンは骨関節炎、強直性脊椎炎、若年性関節炎および他の非リウマチ性炎症による筋骨格痛疾患に用いられる場合にも、症状を緩和できる。アスピリンは血小板凝集に対して抑制作用を有することから、血栓形成を防ぐことができ、臨床で一過性脳虚血発作、心筋梗塞、心房細動、人工心臓弁又は他の手術後の血栓形成の予防に用いられるし、不安定狭心症の治療にも用いられる。アスピリンは、皮膚粘膜リンパ節症候群(川崎病)の軽減にも用いられる。研究により、アスピリンが結腸癌、直腸癌、食道癌などの予防において役割を果たすこともさらに見出された。従って、アスピリンの治療上の用途は非常に大切である。
【0003】
しかしながら、アスピリンの経口投与により、胃腸管の有害反応が発生しやすい。主に消化不良、胃・十二指腸出血、胃潰瘍および胃炎などの症状がある。従って、研究者はアスピリンの投与による胃腸管の有害反応を軽減又は回避するように、他の投与経路のアスピリン誘導体に対する研究を試み続けている。
【0004】
中国特許CN101484415Bには、治療において、経皮投与によって生体内に入り、通常のアスピリンの経口投与による胃腸管の有害反応を回避する水溶性アスピリンプロドラッグ(アセチルサリチル酸誘導体)が開示された。
【0005】
しかしながら、上記特許には、水溶性アスピリンプロドラッグの化合物の結晶型について何も開示されなかった。固形薬物結晶型の研究は、薬物の調製・貯蔵における安定性のコントロールにとって有利である。結晶型の特徴に応じて製剤プロセスを決定し、固形薬物製剤の性能を改善することで、生産される各バッチ間の製剤学的同等性を有効に保証できる。従って、化合物の結晶型の獲得は、薬物の品質を保証するための重要な手段である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許CN101484415B
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は初めて、アセチルサリチル酸誘導体である2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を提供する。
【0008】
本発明のもう一つの目的は、前記2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の調製方法を提供することである。
【0009】
本発明のさら一つの目的は、前記2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の用途を提供することである。
【0010】
本発明の四つ目の目的は、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を含む医薬組成物を提供することである。
【0011】
本発明の第一は、化学構造が式Iに示され、結晶の粉末X線回折(XRPD)スペクトルにおいて、下記の2θ角:11.0°±0.2°、20.6°±0.2°、25.1°±0.2°、8.2°±0.2°、16.5°±0.2°、13.4°±0.2°、25.4°±0.2°に特徴的ピークを有する、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を提供する。
【0012】
【化1】
【0013】
もう一つの好ましい例において、前記結晶の粉末X線回折(XRPD)スペクトルにおいて、さらに下記の2θ角:10.8°±0.2°に特徴的ピークを有する。
【0014】
もう一つの好ましい例において、前記結晶の粉末X線回折(XRPD)スペクトルにおいて、さらに下記の2θ角:22.8°±0.2°、30.4°±0.2°、19.2°±0.2°、17.6°±0.2°、10.6°±0.2°、23.0°±0.2°、35.7°±0.2°、27.9°±0.2°、18.2°±0.2°、24.8°±0.2°、22.1°±0.2°に特徴的ピークを有する。
【0015】
もう一つの好ましい例において、前記結晶の赤外吸収スペクトルにおいて、2988.0cm−1、2974.6cm−1、2953.7cm−1、2889.1cm−1、1725.9cm−1、1759.1cm−1、1605.6cm−1、1576.1cm−1、1484.0cm−1、1448.2cm−1、1389.9cm−1、1068.7cm−1、1087.1cm−1、757.0cm−1、及び2487.3cm−1〜2563.4cm−1の範囲に吸收ピークを有する;より好ましくは、前記結晶は図1に示す赤外スペクトルを有する。
【0016】
本発明の第二は、化学構造が式Iに示され、結晶が直方晶型であり、単結晶X線回折によって測定する場合、格子定数が:a=16.01ű0.01Å、b=7.17ű0.01Å、c=28.86ű0.01Å、α=β=γ=90°である、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を提供する。
【0017】
【化2】
【0018】
もう一つの好ましい例において、単結晶X線回折によって測定する場合、前記結晶はさらに下記特徴を有する:
−結晶学空間群:Pbca;
−単位格子体積:V=3311.4ű1.0Å
−結晶サイズ:0.211×0.176×0.112mm
−結晶密度:1.267mg/m
−格子内非対称単位数:8;
−単位格子中の電子数:F(0000)=1344。
【0019】
本発明の第三は、下記の工程を含む、本発明で提供される前記2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の調製方法を提供する:
(1)2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を無水アセトニトリルと混合し、原料を完全に溶解させ、溶液を得る;
(2)溶液を0〜30℃に冷却し、本発明で提供される前記2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を析出させる。
【0020】
もう一つの好ましい例において、前記2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料と無水アセトニトリルの最終の質量体積比は1:2〜1:20w/vである;より好ましくは1:4〜1:10w/vである。
【0021】
もう一つの好ましい例において、前記溶解過程にとって、加熱する必要がある;より好ましくは、前記溶解過程にとって、無水アセトニトリルを還流させるまで加熱する必要がある。
【0022】
もう一つの好ましい例において、工程(2)で析出する結晶を濾過、乾燥する;前記濾過方法において吸引濾過を採用する;前記乾燥において真空乾燥を採用し、より好ましくは真空回転乾燥を採用する。
【0023】
もう一つの好ましい例において、溶液を4〜25℃に冷却し、結晶を析出させる。
【0024】
本発明の第四は、アセチルサリチル酸適応症を治療する薬物を調製するための、本発明で提供される前記2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の用途を提供する。
【0025】
もう一つの好ましい例において、前記アセチルサリチル酸適応症は、風邪による発熱、頭痛、神経痛、筋肉痛、月経痛、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、痛風症、がん、糖尿病、糖尿病合併症、心脳血管疾患、脳卒中の予防、虚血性心疾患の予防、一過性脳虚血の予防、心筋塞栓の予防、不整脈の発症率と死亡率の低減からなる群から選ばれるものである。
【0026】
もう一つの好ましい例において、前記薬物の剤型は経口投与剤型若しくは経皮投与剤型である;より好ましくは経口液剤、カプセル剤、錠剤、溶液、エマルジョン、軟膏、ラテックス、ゲル剤型からなる群から選ばれるものである。
【0027】
本発明の第五は、治療有効量の本発明で提供される前記2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供する。
【0028】
もう一つの好ましい例において、前記医薬組成物の剤型は経口投与剤型若しくは経皮投与剤型である;より好ましくは、前記医薬組成物の剤型は経口液剤、カプセル剤、錠剤、溶液、エマルジョン、軟膏、ラテックス、ゲル剤型からなる群から選ばれるものである。
【0029】
本発明の第六は、治療有効量の本発明で提供される前記2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶と、薬学的に許容される担体とを混合して、医薬組成物を得る工程を含む、医薬組成物の調製方法を提供する。
【0030】
それにより、本発明は2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の新規結晶を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明にかかる2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の赤外吸収スペクトルを示す。
図2図2は、本発明にかかる2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の単結晶X線回折による構造図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の同定と性質
本発明で提供される2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶について、多種の手段とデバイスでその性質を研究した。
【0033】
「粉末X線回折(XRPD)」は、現在で結晶構造(すなわち結晶型)を測定する場合によく使われる試験方法である。粉末X線回折装置を用いると、X線が結晶を透過するとき一連の回折スペクトルが生じ、該スペクトルにおいて、各回折線およびそれらの強度はそれぞれ所定の構造の原子団で決められるため、それらにより結晶の具体的な結晶型構造を確定できる。
【0034】
結晶の粉末X線回折を測定する方法は、本分野で既知である。本発明にかかる2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶は特定の結晶形態を有し、粉末X線回折(XRPD)スペクトルにおいて特定の特徴的ピークを有する。具体的に言えば、本発明にかかる2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の粉末X線回折(XRPD)スペクトルにおいて、下記の2θ角:11.0°±0.2°、20.6°±0.2°、25.1°±0.2°、8.2°±0.2°、16.5°±0.2°、13.4°±0.2°、25.4°±0.2°に特徴的ピークを有する;一つの好ましい実施形態において、該スペクトルにおいて、さらに下記の2θ角:10.8°±0.2°に特徴的ピークを有する;一つのより好ましい実施形態において、該スペクトルにおいて、さらに下記の2θ角:22.8°±0.2°、30.4°±0.2°、19.2°±0.2°、17.6°±0.2°、10.6°±0.2°、23.0°±0.2°、35.7°±0.2°、27.9°±0.2°、18.2°±0.2°、24.8°±0.2°、22.1°±0.2°に特徴的ピークを有する;より好ましくは、前記2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の粉末X線回折結果の詳細なデータは表1に示すものであり、適用される計測パラメータは下記のものを含む。
計測条件:Cu−Kα;
管電圧/管電流:40kV/40mA;
スキャン角度:3.0221°〜44.9861°
【0035】
【表1A】
【表1B】
【0036】
本発明にかかる2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶は、赤外スペクトル法(IR)によって計測することもでき、その測定方法は本分野で既知である。該結晶の赤外スペクトルにおいて、2988.0cm−1、2974.6cm−1、2953.7cm−1、2889.1cm−1、1725.9cm−1、1759.1cm−1、1605.6cm−1、1576.1cm−1、1484.0cm−1、1448.2cm−1、1389.9cm−1、1068.7cm−1、1087.1cm−1、757.0cm−1、及び2487.3cm−1〜2563.4cm−1の範囲に吸收ピークを有する。好ましくは図1と基本的に一致する赤外スペクトルを有する。
【0037】
「単結晶X線回折」は、単結晶によるX線の回折効果を利用して、結晶構造を測定する実験方法である。本発明で提供される2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶は、単結晶X線回折によって測定する場合、下記の主要特徴を含む:
−直方晶型;
−格子定数:a=16.01ű0.01Å、b=7.17ű0.01Å、c=28.86ű0.01Å、α=β=γ=90°。
【0038】
一つの好ましい実施形態において、単結晶X線回折によって測定される2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶は、さらに下記の主要特徴を含む:
−結晶学空間群:Pbca;
−単位格子体積:V=3311.4ű1.0Å
−結晶サイズ:0.211×0.176×0.112mm
−結晶密度:1.267mg/m
−格子内非対称単位数:8;
−単位格子中の電子数:F(0000)=1344。
【0039】
もう一つの好ましい実施形態において、前記2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の単結晶X線回折による構造図は、図2と基本的に一致する。
【0040】
一つのより好ましい実施形態において、前記単結晶X線回折で設定されるデータ収集の角度範囲は1.895°〜25.997°である。
【0041】
本発明で提供される2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩晶には、純度が高く(99.3%)、安定性が良いなどの利点がある。
【0042】
2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の調製方法
本発明にかかる2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を得るために、本発明者らは何回も試したが、結晶の効果はいずれも望ましくなかった。具体的な結果は以下の通りであった:
(a)2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を10g取り、ジクロロメタンを20〜30ml加えて完全に溶解させ、攪拌条件下でn−ヘキサン又は石油エーテル溶液をゆっくり加えると、白色固体がゆっくり析出したが、固体の結晶型は望ましくなかった。
(b)2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を10g取り、ジクロロメタンを5mL〜15mL加え、1時間加熱還流して原料を完全に溶解させ、室温までゆっくり冷却すると、固体は析出せず、−20℃の凍結条件下で24時間以上置くと、固体は少量に析出したが、固体の結晶型は望ましくなかった。
(c)2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を10g取り、エタノールを25ml加えて溶解させ、50℃に加熱して原料をゆっくり溶解させ、室温まで冷却すると、固体は析出せず若しくは少量に析出した。
【0043】
本発明者らは選択・最適化し続けた結果、結晶効果が良く且つ効率が高い2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の調製方法を確立した。前記方法は下記の工程を含む:
工程1:2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を無水アセトニトリルと混合し、原料を完全に溶解させ、溶液を得る;
工程2:溶液を冷却し、白色結晶を析出させる。
【0044】
前記工程1において、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を無水アセトニトリルと混合した後、還流温度に加熱し、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を完全に溶解させる;2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料と加えられる無水アセトニトリルの最終の質量体積比の範囲は1:2〜1:20w/vである;好ましくは1:4〜1:10w/vである。
【0045】
一つの実施形態において、加熱条件下で無水アセトニトリルと2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を連続に加え、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料が完全に溶解するまで攪拌して混合して、溶液を得る。
【0046】
前記工程2において、溶液を0〜30℃に冷却する;好ましくは4〜25℃に冷却する。
【0047】
一つの好ましい実施形態において、工程2で得られる白色結晶を濾過、乾燥する。前記濾過方法において吸引濾過を採用する;前記乾燥において真空乾燥を採用し、より好ましくは真空回転乾燥を採用する。
【0048】
本発明で提供される前記調製方法にかかる2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料は、本分野の通常の方法により獲得することができ、これらの方法にかかるパラメータは、当業者が有限回の試験により決定できるものである。前記の原料を獲得する方法は下記のものを含むが、それらに限定されない:
(1)アスピリンを原料として、触媒の作用下で塩化チオニルと反応させ、o−アセチルサリチロイルクロリドを得た後、ジエチルアミノエタノールと反応させ、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステルを生成し、最後に塩化水素ガスと反応させ、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を得る。反応スキームは式IIIに示す。ただし、前記塩化チオニルとの反応工程において、前記触媒はN,N−ジメチルホルムアミド、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンから選ばれるものであるが、それらに限定されなく、より好ましい反応温度の範囲は40℃〜60℃であり、より好ましいアスピリンと塩化チオニルの当量比は1:1.1である。前記ジエチルアミノエタノールとの反応工程において、より好ましいジエチルアミノエタノールとアセチルサリチロイルクロリドの反応当量比は1:1であり、より好ましい反応温度の範囲は10℃〜30℃であり、より好ましい反応時間は2〜6時間であり、より好ましくは、ジエチルアミノエタノールとの反応が完了した後、メチル−t−ブチルエーテルを抽出溶媒として、溶液pHを塩基性に(好ましくはpH7.1〜10.0に、より好ましくはpH8.0〜9.0に)調節し、氷浴で抽出する。前記塩化水素ガスとの反応工程において、より好ましくは反応液のpH範囲がpH3.0〜4.0になるように、必要に応じて塩化水素ガスの導入量を制御する。
【0049】
【化3】
【0050】
(2)アスピリンを原料として、脱水剤の作用下でジエチルアミノエタノールと脱水し、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステルを生成し、その後に塩化水素ガスと反応させ、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を得る。反応スキームは式IVに示す。ただし、アスピリンとジエチルアミノエタノールの反応工程において、前記脱水剤はN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)から選ばれるものであるが、それらに限定されない。ただし、反応温度、反応時間および触媒などの条件を調整することで、最終生成物の収率を高めることができる。各工程に必要な反応温度、反応時間、触媒の要否および選択などの条件は、当業者が有限回の試験により決定できる。
【0051】
【化4】
【0052】
(3)アスピリンを原料として、触媒の作用下でジエチルアミノブロモエタンと反応させ、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステルを生成し、その後に塩化水素ガスと反応させ、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を得る。反応スキームは式Vに示す。ただし、前記アスピリンとジエチルアミノブロモエタンの反応工程において、使用される触媒は炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジンから選ばれるものであるが、それらに限定されない。ただし、反応温度、反応時間および触媒などの条件を調整することで、最終生成物の収率を高めることができる。各工程に必要な反応温度、反応時間、触媒の要否および選択などの条件は、当業者が有限回の試験により決定できる。
【0053】
【化5】
【0054】
2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の用途及びその組成物
中国特許CN101484415Bの開示内容によれば、本発明で調製される2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩は、経口若しくは経皮投与することで、アセチルサリチル酸(アスピリン)適応症を何でも治療でき、通常のアスピリンによる胃腸管の副作用を軽減させるように、経皮投与することが好ましい。本発明で調製される2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶は、貯蔵・適用しやすく、且つ純度が高い(99.3%)ので、原薬としてアセチルサリチル酸が有効に作用できる各種の疾患を予防又は治療するための薬物を提供又は調製できる。ただし、前記アセチルサリチル酸が有効に作用できる疾患は、風邪による発熱、頭痛、神経痛、筋肉痛、月経痛、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、痛風症、がん、糖尿病、糖尿病合併症、心脳血管疾患、脳卒中の予防、虚血性心疾患の予防、一過性脳虚血の予防、心筋塞栓の予防、不整脈の発症率と死亡率の低減からなる群から選ばれるものである。
【0055】
従って、本発明はさらに、本発明にかかる2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を含む医薬組成物であって、治療有効量の2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物に関する。
【0056】
本文で用いられるように、用語「含有する」或いは「含む」は「含める」、「基本的に・・・からる」および「・・・からなる」を含む。用語「治療有効量」とは、ヒト及び/又は動物に機能や活性があり、且つヒト及び/又は動物にとって受けられる量である。
【0057】
本文で用いられるように、用語「薬学的に許容される」とは、ヒト及び/又は動物に適用する場合、過度の不良な副反応(例えば毒性、刺激とアレルギー反応)がない、すなわち、合理的なベネフィット/リスク比を持つ物質である。用語「薬学的に許容される担体」とは、治療剤の投与のための担体で、各種の賦形剤と希釈剤を含む。この用語は、それ自身が必要な活性成分ではなく、且つ使用後過度の毒性がない薬剤担体を示す。適切な担体は本分野の当業者に良く知られている。「レミントンの薬学」(Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Pub. Co.,N.J. 1991)には、薬学的に許容される賦形剤に係わる十分な検討が見られる。
【0058】
好ましくは、前記の「薬学的に許容される担体」は充填剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、沸騰、矯味剤、コーティング材、賦形剤、或いは徐放剤から選ばれる。組成物において、薬学的に許容される担体は液体、例えば水、塩水、グリセリンやエタノールを含んでも良い。さらに、これらの担体には、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、沸騰剤、湿潤剤や乳化剤、矯味剤、pH緩衝物質などの補助物質が存在してもよい。通常、これらの物質を無毒で、不活性で、薬学的に許容される水性担体媒体に配合することができる。
【0059】
また、本発明にかかる医薬組成物の剤型は、経口投与剤型および経皮投与剤型、例えば経口液剤、カプセル剤、錠剤、溶液、エマルジョン、軟膏、ラテックス、ゲル剤型などが好ましい。
【0060】
本発明で述べられた上述の特徴、或は実施例で述べられる特徴は、任意に組み合わせてもよい。本明細書で開示された全ての特徴は任意の組成物の様態と併用してもよく、明細書で開示された各特徴はいずれも、同様、同等或いは類似の目的を果たす代わりの特徴により置換されてもよい。したがって、特に説明しない限り、開示された特徴は、同等または類似の特徴の一般的なシリーズの一例に過ぎない。
【0061】
本発明の主な利点は、以下の通りである。
1、安定した2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を初めて獲得し、該化合物から薬物を調製する時の品質制御を保証するための重要な手段になる。
2、本発明で提供される2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の調製方法は、エネルギー消費が低く、収率が安定し、産業上で生産しやすい。
【0062】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いるもので、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常、通常の条件、或いはメーカーの薦めの条件で行われた。別の説明がない限り、すべての百分率、比率、比例或いは部は、重量で計算される。
【0063】
本発明における重量体積百分率の単位は当業者にとって熟知で、例えば100mLの溶液における溶質の重量を指す。
【0064】
別途に定義しない限り、文中に使用されるすべての専門・科学用語は、本分野の熟練者によく知られる意味と同じである。また、記載される内容に類似或は同等の方法及び材料はいずれも本発明に使用することができる。文中に記載の好ましい実施形態及び材料は例示だけのためである。
【実施例】
【0065】
実施例1
2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の調製
a.2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を調製する
トルエンを溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミドを触媒として、反応温度50℃の条件下で、アスピリンを塩化チオニルと当量比1:1.1で2時間反応させ、反応でo−アセチルサリチロイルクロリドを生成した;次に、ジエチルアミノエタノールをアシル化産物であるo−アセチルサリチロイルクロリドと当量比1:1で反応させ、反応温度を25℃とし、時間を4時間とし、反応で2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステルを生成した;メチル−t−ブチルエーテルで水相を抽出し、水相を取って氷浴で塩基性に調節した;さらに酢酸イソプロピルを抽出剤として水相を抽出し、酢酸イソプロピル相を取った;塩形成過程において酢酸イソプロピルを溶媒として行い、その後、反応液のpHが3.5程度になるように、塩化水素ガスの導入量を厳格に制御した。反応終了後、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を得た。
【0066】
b.2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を調製する
加熱還流の条件下で、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料に無水アセトニトリルを連続に加え、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩が完全に溶解するまで攪拌して混合した。ただし、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料と無水アセトニトリルの最終の質量体積比を1:4とした。25℃にゆっくり冷却し、白色結晶を析出させ、吸引濾過後、固体の真空回転乾燥を行った。
【0067】
実施例2
2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の粉末X線回折による測定
実施例1で得られた2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を取り、粉末X線回折を行い、使用した計測デバイスは:Panalytical X’Pert Powder粉末X線回折装置;計測条件:Cu−Kα;管電圧/管電流:40kV/40mA;スキャン角度:3.0221°〜44.9861°;スキャンステップ幅:0.0260°;射出スリット:0.2177;テスト温度:25℃。得られたデータは表1に示す。
【0068】
【表2A】
【表2B】
【0069】
実施例3
2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の単結晶X線回折による測定
実施例1で得られた2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を取り、単結晶X線回折を行い、使用したデバイスはBruker SMART APEX CCD単結晶回折装置;テスト温度:293K;スキャン波長:0.71073Å;吸収補正因子:0.243mm−1;データ収集の角度範囲:1.895°〜25.997°;回折指標範囲:−17<=h<=19、−8<=k<=8、−24<=l<=35。構造図は図2に示す。得られた特徴的なデータ表現は以下の通りであった:
−直方晶型;
−格子定数:a=16.0138Å、b=7.1652Å、c=28.8590Å、α=β=γ=90°。
−結晶学空間群:Pbca;
−単位格子体積:V=3311.4Å
−結晶サイズ:0.211×0.176×0.112mm
−結晶密度:1.267mg/m
−格子内非対称単位数:8;
−単位格子中の電子数:F(0000)=1344。
【0070】
実施例4
2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の調製
a.2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を調製する
アスピリンを原料として、トリクロロメタンを溶媒として、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドを脱水剤として(アスピリンとN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドの当量比は1:2)、ジエチルアミノエタノールと当量比1:1.2で反応させ、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステルを生成し、その後に塩化水素ガスを導入し、反応過程において、pHがpH3.0程度になるように、塩化水素ガスの導入量を厳格に制御した。反応により、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料を得た。
【0071】
b.2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を調製する
加熱条件下で、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料に無水アセトニトリル溶液を連続に加え、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩が完全に溶解するまで攪拌して混合し、ただし、2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩の粗製原料と無水アセトニトリルの最終の質量体積比を1:10とした。4℃にゆっくり冷却し、白色結晶を析出させ、吸引濾過後、固体の真空回転乾燥を行った。
【0072】
実施例5
2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の赤外吸収スペクトルの測定
実施例4で得られた2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を取り、赤外吸収スペクトルの測定を行い、使用したデバイスはNicolet iZ10フーリエ変換赤外スペクトロメーターであった。臭化カリウム錠剤法を使用した;サンプルスキャン回数:32;バックグランドスキャン回数:32;解像度:4.000;サンプリングゲイン:1.0;移動鏡速度:0.6329。得られた赤外吸収スペクトルは図1に示す。
【0073】
実施例6
2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶の安定性試験
実施例1で得られた2−(ジエチルアミノ)エチル2−アセトキシ安息香酸エステル塩酸塩結晶を取り、25℃±2℃条件下で置き、それぞれ0ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月にサンプリングし、pH値、関連物質と含有量を検出した。ただし、pH値は、サンプルを約1.0g取り、水を50mL加え、10分間振動し、濾過し、最初の濾液の次の濾液を10mL取り、pHメーターで検出したものである;関連物質と含有量はいずれも高速液体クロマトグラフィで検出した(外部標準法)。結果に示されたように、本発明にかかる結晶は25℃±2℃条件下で12ヶ月置いても、その安定性がとても優れた。具体的なデータは表2に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
以上の説明は本発明の好ましい実施例だけで、本発明の実質の技術内容の範囲を限定するものではなく、本発明の実質の技術内容は広義的に出願の請求の範囲に定義され、他の人が完成した技術実体或いは方法は、出願の請求の範囲に定義されたものとまったく同じものであれば、或いは効果が同等の変更であれば、いずれもその請求の範囲に含まれるとみなされる。
図1
図2