(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
以下、
図1から
図13を参照して、本発明の第1の実施形態に係る空調装置100について説明する。
【0011】
まず、
図1から
図3を参照して、空調装置100の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、空調装置100は、冷媒が循環する冷凍サイクル2と、温水が循環する温水サイクル4と、空調に利用される空気が通過するHVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)ユニット5と、空調装置100の動作を制御する制御部としてのコントローラ10と、を備える。
【0013】
空調装置100は、冷暖房可能なヒートポンプシステムである。空調装置100は、車両(図示省略)に搭載されて車室(図示省略)内の空調を行う。例えば、冷媒にはHFO−1234yfが用いられ、温水には不凍液が用いられる。
【0014】
冷凍サイクル2は、圧縮機としてのコンプレッサ21と、温水−冷媒熱交換器としての水冷コンデンサ22と、室外熱交換器23と、受液器24と、内部熱交換器30と、蒸発器としてのエバポレータ25と、膨張弁としての温度式膨張弁26と、絞り機構としての固定絞り27と、固定絞り27をバイパスする冷媒が流れるバイパス路20aと、バイパス路20aを開閉する第2流路切換弁29と、これらを冷媒が循環可能となるように接続する冷媒流路20と、を備える。冷媒流路20には、第1流路切換弁28が設けられる。
【0015】
コンプレッサ21は、ガス状(気相)冷媒を吸入し圧縮する。これにより、ガス状冷媒は高温高圧になる。
【0016】
水冷コンデンサ22は、暖房運転時に、コンプレッサ21を通過した後の冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。水冷コンデンサ22は、コンプレッサ21によって高温高圧となった冷媒と温水サイクル4を循環する温水との間で熱交換を行い、冷媒の熱を温水に伝達する。水冷コンデンサ22にて凝縮した冷媒は、固定絞り27へと流れる。
【0017】
水冷コンデンサ22は、コンプレッサ21にて圧縮された冷媒の熱を用いて、温水サイクル4を循環する温水を介して、車室内に導かれて空調に用いられる空気を加熱する。ここでは、水冷コンデンサ22と温水サイクル4とが、車室内に導かれる空気を加熱する加熱器に相当する。これに代えて、
図2に示すように、温水サイクル4を設けずに、コンプレッサ21にて圧縮された冷媒がヒータコア42に直接導かれるようにしてもよい。この場合、ヒータコア42が加熱器に相当する。
【0018】
室外熱交換器23は、例えば車両のエンジンルーム(電気自動車においてはモータルーム)内に配置され、冷媒と外気との間で熱交換を行う。室外熱交換器23は、冷房運転時には凝縮器として機能し、暖房運転時には蒸発器として機能する。室外熱交換器23には、車両の走行や室外ファン6の回転によって、外気が導入される。
【0019】
図3に示すように、室外熱交換器23は、冷媒が導入される冷媒入口23aと、冷媒入口23aと比較して高い位置に設けられ冷媒が導出される冷媒出口23bと、を有する。即ち、室外熱交換器23では、冷媒は、下から導入されて内部を上昇し上から導出される。これにより、暖房運転時には、室外熱交換器23にて外気と冷媒とが熱交換する際に、室外熱交換器23内の未蒸発冷媒(湿り度が高い冷媒)が導出され難く、外気からの吸熱量が増える。
【0020】
受液器24は、室外熱交換器23の下流に位置し、室外熱交換器23からの冷媒を導入し、液状(液相)冷媒とガス状冷媒とに気液分離させる。受液器24は、液状冷媒を貯留する貯液部24aと、液状冷媒をエバポレータ25に導く出口と、ガス状冷媒をコンプレッサ21に導く出口と、を有する。
図1では、概念図のため省略しているが、ガス状冷媒をコンプレッサ21に導く通路は、回路内に含まれるオイルの戻りが可能なように構成されている。
【0021】
受液器24は、暖房運転時には、室外熱交換器23から流入するガス状冷媒をコンプレッサ21に導く。受液器24からコンプレッサ21へは、分離したガス状冷媒のみが流れる。受液器24は、冷房運転時には、室外熱交換器23から流入する液状冷媒を貯留し、液状冷媒の一部を内部熱交換器30と温度式膨張弁26とを介してエバポレータ25に導く。受液器24からエバポレータ25へは、分離した液状冷媒のみが流れる。
【0022】
受液器24と温度式膨張弁26との間には、差圧弁31が設けられる。差圧弁31は、内部熱交換器30の上流に設けられる。差圧弁31は、差圧弁31の上流側の圧力が設定圧力を超えると開く。この設定圧力は、暖房運転時には差圧弁31が開かず、冷房運転時にのみ差圧弁31が開くような圧力に予め設定される。差圧弁31が設けられることによって、暖房運転時に受液器24から温度式膨張弁26を介してエバポレータ25に冷媒が流れることを防止できる。よって、エバポレータ25が凍結することや、冷媒流路20内を流れる潤滑用オイルがエバポレータ25に貯留されることが防止される。なお、差圧弁31を、内部熱交換器30と温度式膨張弁26との間に設けてもよい。
【0023】
エバポレータ25は、HVACユニット5内に配置される。エバポレータ25は、冷凍サイクル2の運転モードが冷房モード若しくは除湿暖房モードである場合に、車室に導かれる空気の熱を冷媒に吸収させて冷媒を蒸発させる。エバポレータ25にて蒸発した冷媒は、内部熱交換器30を介してコンプレッサ21へと流れる。
【0024】
温度式膨張弁26は、内部熱交換器30とエバポレータ25との間に配置され、室外熱交換器23から受液器24及び内部熱交換器30を介して導かれた液状冷媒を減圧膨張させる。温度式膨張弁26は、エバポレータ25を通過した冷媒の温度、即ちガス状冷媒の過熱度に応じて開度を自動的に調節する。
【0025】
エバポレータ25の負荷が増加した場合には、ガス状冷媒の過熱度が増加する。そうすると温度式膨張弁26の開度が大きくなって過熱度を調節する様に冷媒量が増加する。一方、エバポレータ25の負荷が減少した場合には、ガス状冷媒の過熱度が減少する。そうすると温度式膨張弁26の開度が小さくなって過熱度を調節する様に冷媒量が減少する。このように、温度式膨張弁26は、エバポレータ25を通過したガス状冷媒の温度をフィードバックして、ガス状冷媒が適切な過熱度となるように開度を調節する。
【0026】
内部熱交換器30は、温度式膨張弁26の上流の冷媒とエバポレータ25の下流の冷媒との間で、温度差を利用して熱交換させる。
【0027】
固定絞り27は、水冷コンデンサ22と室外熱交換器23との間に配置され、コンプレッサ21にて圧縮されて水冷コンデンサ22にて凝縮した冷媒を減圧膨張させる。固定絞り27には、例えば、オリフィスやキャピラリーチューブが用いられる。固定絞り27の絞り量は、予め使用頻度の高い特定の運転条件に対応するように設定される。
【0028】
固定絞り27に代えて、例えば、
図2に示すように、少なくとも全開と所定の絞り状態とを有し、段階的に又は無段階に開度を調節できる電気式絞り機構としての電磁絞り弁127を可変絞り(絞り機構)として用いてもよい。この場合、バイパス路20aを設ける必要はない。電磁絞り弁127は、冷房運転時には、冷媒の流れを絞らないように調節され、暖房運転時には、冷媒の流れを絞るように調節される。
【0029】
第1流路切換弁28は、開閉によって冷媒の流れを切り換える。第1流路切換弁28は、コントローラ10によって制御されるソレノイドを有する電磁弁である。
【0030】
冷房運転時には、第1流路切換弁28が閉じられる。これにより、室外熱交換器23にて凝縮した冷媒は、受液器24に流入し、差圧弁31の上流側の圧力が設定圧力を超えて、液状冷媒が内部熱交換器30,温度式膨張弁26,及びエバポレータ25を通過してコンプレッサ21に導かれる。一方、暖房運転時には、第1流路切換弁28が開かれる。これにより、室外熱交換器23にて蒸発した冷媒は、受液器24に流入し、第1流路切換弁28を通過してコンプレッサ21に導かれる。よって、暖房運転時には、冷媒は、内部熱交換器30,温度式膨張弁26,及びエバポレータ25をバイパスして流れる。
【0031】
第2流路切換弁29は、開閉によって冷媒の流れを切り換える。第2流路切換弁29は、コントローラ10によって制御されるソレノイドを有する電磁弁である。
【0032】
冷房運転時には、第2流路切換弁29が開かれる。これにより、コンプレッサ21によって圧縮された冷媒は、水冷コンデンサ22を通過した後、固定絞り27をバイパスして室外熱交換器23へ流入する。一方、暖房運転時には、第2流路切換弁29が閉じられる。これにより、コンプレッサ21によって圧縮された冷媒は、水冷コンデンサ22及び固定絞り27を通過して室外熱交換器23へ流入する。
【0033】
温水サイクル4は、ポンプとしてのウォータポンプ41と、ヒータコア42と、補助加熱器としての温水ヒータ43と、水冷コンデンサ22と、これらを温水が循環可能となるように接続する温水流路40と、を備える。
【0034】
ウォータポンプ41は、温水流路40内の温水を循環させる。
【0035】
ヒータコア42は、HVACユニット5内に配置され、暖房運転時に、ヒータコア42を通過する空気と温水との熱交換によって、空調に用いられる空気を加熱する。
【0036】
温水ヒータ43は、車室に導かれる空気の加熱を補助する。温水ヒータ43は、内部にヒータ(図示省略)を有し、外部動力を用いて温水を加熱する。ヒータには、例えば、シーズヒータやPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータが用いられる。
【0037】
温水ヒータ43に代えて、例えば、車室に導かれる空気を直接加熱する空気式ヒータ(図示省略)、又は車両の内燃機関としてのエンジン(図示省略)の排熱を使用して車室に導かれる空気を加熱する温水式熱交換器(図示省略)を用いてもよい。また、温水ヒータ43、空気式ヒータ、及び温水式熱交換器のいずれか一つを単体で用いてもよく、これらを任意に組み合わせて用いてもよい。
【0038】
HVACユニット5は、空調に利用する空気を冷却又は加熱する。HVACユニット5は、ブロワ52と、エアミックスドア53と、これらを空調に利用する空気が通過可能となるように囲うケース51と、を備える。HVACユニット5内には、エバポレータ25とヒータコア42とが配置される。ブロワ52から送風された空気は、エバポレータ25内を流れる冷媒との間、及びヒータコア42内を流れる温水との間で熱交換を行う。
【0039】
ブロワ52は、HVACユニット5内に空気を送風する送風機である。
【0040】
エアミックスドア53は、HVACユニット5内に配置されたヒータコア42を通過する空気の量を調整する。エアミックスドア53は、ヒータコア42のブロワ52側に設置される。エアミックスドア53は、暖房運転時にヒータコア42側を開き、冷房運転時にヒータコア42側を閉じる。エアミックスドア53の開度によって、空気とヒータコア42内の温水との間の熱交換量が調節される。
【0041】
空調装置100には、冷媒温度検出器としての室外熱交換器出口温センサ12と、蒸発器温度検出器としてのエバポレータ温度センサ13と、外気温度検出器としての外気温センサ15と、が設置されている。
【0042】
室外熱交換器出口温センサ12は、室外熱交換器23の出口に設けられて冷媒流路20内の冷媒の温度を検出する。室外熱交換器出口温センサ12は、室外熱交換器23を通過した冷媒の温度を検出する。
【0043】
外気温センサ15は、室外熱交換器23に取り込まれて通過する前の外気の温度を検出する。
【0044】
エバポレータ温度センサ13は、HVACユニット5内におけるエバポレータ25の空気流れ下流側に設置され、エバポレータ25を通過した空気の温度を検出する。なお、エバポレータ温度センサ13は、エバポレータ25に直接設置されてもよい。
【0045】
コントローラ10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などによって構成されるマイクロコンピュータである。コントローラ10を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。コントローラ10は、ROMに記憶されたプログラムをCPUによって読み出すことで、空調装置100に各種機能を発揮させる。
【0046】
コントローラ10は、冷凍サイクル2の制御を実行するようにプログラムされている。コントローラ10には、室外熱交換器出口温センサ12と、エバポレータ温度センサ13と、外気温センサ15と、からの信号が入力される。なお、コントローラ10には、図示しない他のセンサからの信号が入力されてもよい。
【0047】
コントローラ10は、入力された信号に基づいて、冷凍サイクル2の制御を実行する。即ち、コントローラ10は、
図1に破線で示すように、コンプレッサ21の出力を設定すると共に、第1流路切換弁28及び第2流路切換弁29の開閉制御を実行する。また、コントローラ10は、図示しない出力信号を送信することで、温水サイクル4及びHVACユニット5の制御を実行する。
【0048】
また、コントローラ10は、室外熱交換器23に着霜が発生したことを判定する着霜判定部18を有する。
【0049】
着霜判定部18は、室外熱交換器23の出口における冷媒の温度と外気温とがかい離している場合に、室外熱交換器23にて冷媒と外気とが熱交換を充分に行えず、着霜が発生していると判定する。
【0050】
具体的には、着霜判定部18は、外気温センサ15の検出温度と室外熱交換器出口温センサ12の検出温度とを比較し、両者の温度差が室外熱交換器23に着霜の発生し得る着霜温度差以上になっていることを判定する。着霜判定部18は、外気温センサ15の検出温度と室外熱交換器出口温センサ12の検出温度との温度差が着霜温度差以上になっている状態の経過時間に基づいて、室外熱交換器23に着霜が発生したことを判定する。
【0051】
次に、
図4から
図6を参照して、空調装置100の各空調運転モードについて説明する。
【0052】
<冷房運転>
冷房運転時には、冷凍サイクル2は、冷房モードに切り換えられる。冷房モードでは、冷凍サイクル2内の冷媒は、
図4に太実線で示すように循環する。
【0053】
コントローラ10は、第1流路切換弁28を閉じた状態にすると共に、第2流路切換弁29を開いた状態にする。
【0054】
コンプレッサ21で圧縮されて高温高圧になった冷媒は、水冷コンデンサ22及び第2流路切換弁29を通って、室外熱交換器23へと流れる。このとき、温水サイクル4内の温水は循環していないので、水冷コンデンサ22では、殆ど熱交換は行われない。また、冷媒は、固定絞り27をバイパスしてバイパス路20aを通過する。固定絞り27に代えて電磁絞り弁127(
図2参照)を設ける場合には、電磁絞り弁127は、冷媒の流れを絞らないように調節される。
【0055】
室外熱交換器23へ流れた冷媒は、室外熱交換器23に導入される外気と熱交換を行い冷却された後、受液器24にて気液分離される。これにより、受液器24に液状冷媒が貯留される。受液器24の下流側に接続される温度式膨張弁26には、受液器24から液状冷媒の一部が内部熱交換器30を介して流通する。
【0056】
その後、液状冷媒は、温度式膨張弁26で減圧膨張してエバポレータ25へ流通し、エバポレータ25を通過する際に空調に利用する空気の熱を吸収することで蒸発する。エバポレータ25にて蒸発したガス状冷媒は、内部熱交換器30を通過し再びコンプレッサ21へと流れる。
【0057】
即ち、冷房モードでは、水冷コンデンサ22は、コンプレッサ21が吐出した高圧冷媒が通過し、室外熱交換器23には、水冷コンデンサ22を通過した高圧冷媒が流入し、受液器24は、室外熱交換器23から導出された冷媒をガス状冷媒と液状冷媒に分離させて液状冷媒を貯留し、温度式膨張弁26は、受液器24から導かれる液状冷媒を減圧膨張させ、エバポレータ25は、温度式膨張弁26にて減圧膨張した低圧冷媒と車室へ導かれる空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させ、コンプレッサ21には、ガス状冷媒が導かれる。
【0058】
ここで、受液器24から内部熱交換器30に流通する液状冷媒は、高圧の流体であり、受液器24にて気液分離されることで、過冷却度がほぼ0℃の略飽和液状態となっている。一方、エバポレータ25から内部熱交換器30に流通するガス状冷媒は、温度式膨張弁26を通過する際に減圧膨張して低温の流体になっている。そのため、液状冷媒は、内部熱交換器30を流通する際に低温のガス状冷媒との間で熱交換を行い、ガス状冷媒により過度に冷却されて飽和液状態から過冷却度をもった過冷却状態となる。また、ガス状冷媒は、内部熱交換器30を流通する際に、液状冷媒によって加熱されることで過熱度を持った加熱状態となる。
【0059】
エバポレータ25にて冷媒によって冷却された空気は、HVACユニット5の下流に流されて冷房風として用いられる。
【0060】
<暖房運転>
暖房運転時には、冷凍サイクル2は、ヒートポンプ暖房モードに切り換えられる。暖房運転時には、いわゆる外気吸熱ヒートポンプ運転が実行される。ヒートポンプ暖房モードでは、冷凍サイクル2内の冷媒及び温水サイクル4内の温水は、
図5に太実線で示すように循環する。
【0061】
コントローラ10は、第1流路切換弁28を開いた状態にすると共に、第2流路切換弁29を閉じた状態にする。
【0062】
コンプレッサ21で圧縮され高温になった冷媒は、水冷コンデンサ22へと流れる。水冷コンデンサ22へ流れた冷媒は、水冷コンデンサ22の内部で温水を加熱し、固定絞り27を通って減圧膨張することで低温となって、室外熱交換器23へと流れる。
【0063】
室外熱交換器23へ流れた冷媒は、室外熱交換器23に導入される外気との間で熱交換した後、受液器24へと流れて気液分離される。そして、受液器24で気液分離された冷媒のうちガス状冷媒が、第1流路切換弁28を通って再びコンプレッサ21へと流れる。このように、ヒートポンプ暖房モードでは、受液器24には液状冷媒が貯留されて、ガス状冷媒がコンプレッサ21に導かれる。
【0064】
即ち、ヒートポンプ暖房モードでは、水冷コンデンサ22は、コンプレッサ21が吐出した高圧冷媒と車室へ導かれる空気とを温水サイクル4を介して熱交換させ、固定絞り27は、水冷コンデンサ22から導出された冷媒を減圧膨張させ、室外熱交換器23には、固定絞り27にて減圧膨張した冷媒が流入し、受液器24は、室外熱交換器23から導出された低圧冷媒をガス状冷媒と液状冷媒とに分離させ、コンプレッサ21には、ガス状冷媒が導かれる。
【0065】
一方、水冷コンデンサ22で冷媒によって加熱された温水は、循環してヒータコア42に流れ、ヒータコア42の周囲の空気を加熱する。加熱された空気は、HVACユニット5の下流側に流されることで、暖房風として用いられる。
【0066】
なお、水冷コンデンサ22で冷媒が充分に温水を加熱できない場合には、外気吸熱ヒートポンプ運転と併用して又は独立して温水ヒータ43を運転させることによって温水を加熱してもよい。
【0067】
<除湿暖房運転>
除湿暖房運転時には、冷凍サイクル2は、第1運転モードとしてのヒートポンプ暖房モードと第2運転モードとしての除湿暖房モードとに交互に切り換えられる。暖房運転時及び除湿暖房運転時が、固定絞り27で冷媒の流れが絞られ、ヒータコア42で放熱する運転状態に該当する。ヒートポンプ暖房モードは、暖房運転の場合と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。除湿暖房モードでは、冷凍サイクル2内の冷媒及び温水サイクル4内の温水は、
図6に太実線で示すように循環する。
【0068】
コントローラ10は、第1流路切換弁28を閉じた状態にすると共に、第2流路切換弁29を閉じた状態にする。
【0069】
コンプレッサ21で圧縮され高温になった冷媒は、水冷コンデンサ22へと流れる。水冷コンデンサ22へ流れた冷媒は、水冷コンデンサ22の内部で温水を加熱し、固定絞り27を通過して減圧膨張することで低温となって、室外熱交換器23へと流れる。固定絞り27に代えて電磁絞り弁127(
図2参照)を設ける場合には、電磁絞り弁127は、冷媒の流れを絞るように調節される。
【0070】
室外熱交換器23へ流れた冷媒は、室外熱交換器23に導入される外気との間で熱交換した後、受液器24にて気液分離される。そして、ヒートポンプ暖房モードにて受液器24内に貯留された液状冷媒と、受液器24で気液分離された液状冷媒とが、内部熱交換器30を介して流通する。このように、除湿暖房モードでは、受液器24に貯留された液状冷媒がエバポレータ25に導かれる。
【0071】
その後、液状冷媒は、温度式膨張弁26で減圧膨張してエバポレータ25へ流通し、エバポレータ25を通過する際に空調に利用する空気の熱を吸収することで蒸発する。エバポレータ25にて蒸発したガス状冷媒は、内部熱交換器30を通過し再びコンプレッサ21へと流れる。
【0072】
即ち、除湿暖房モードでは、水冷コンデンサ22は、コンプレッサ21が吐出した高圧冷媒と車室へ導かれる空気とを熱交換させ、固定絞り27は、水冷コンデンサ22から導出された冷媒を減圧膨張させ、室外熱交換器23には、固定絞り27にて減圧膨張した中間圧冷媒が流入し、受液器24は、室外熱交換器23から導出された冷媒をガス状冷媒と液状冷媒に分離させ、温度式膨張弁26は、受液器24から導かれる液状冷媒を減圧膨張させ、エバポレータ25は、温度式膨張弁26にて減圧膨張した低圧冷媒と車室へ導かれる空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させ、コンプレッサ21には、ガス状冷媒が導かれる。
【0073】
HVACユニット5の下流に流れる空気は、エバポレータ25にて除湿され、ヒータコア42にて加熱されることで、除湿暖房風として用いられる。
【0074】
なお、水冷コンデンサ22で冷媒が充分に温水を加熱できない場合には、外気吸熱ヒートポンプ運転と併用して又は独立して温水ヒータ43を運転させることによって温水を加熱してもよい。
【0075】
このように、固定絞り27で冷媒の流れが絞られ、ヒータコア42で放熱する運転状態において、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとが切り換えられる。ヒートポンプ暖房モードでは、暖房運転を実行しながら、室外熱交換器23から導かれる冷媒のうち液状冷媒が受液器24に貯留される。除湿暖房モードでは、ヒートポンプ暖房モードで受液器24に貯留された液状冷媒がエバポレータ25に導かれる。よって、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを切り換えることで、暖房運転を実行しながら受液器24に液状冷媒を貯留し、その液状冷媒を用いて除湿を行うことができる。したがって、暖房状態を維持しながら除湿を行う除湿暖房運転を実行することができる。
【0076】
また、除湿暖房モードでは、冷媒が温度式膨張弁26を通過するように第1流路切換弁28が切り換えられると共に固定絞り27を通過するように第2流路切換弁29が切り換えられる。
図7に示すように、除湿暖房モードでは、コンプレッサ21にて圧縮された冷媒は、水冷コンデンサ22にて熱交換した後、固定絞り27を通過して圧力が低下する。そして、冷媒は、室外熱交換器23にて熱交換した後、温度式膨張弁26にて更に圧力が低下する。即ち、固定絞り27が冷媒の流れを絞るので、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとで共に室外熱交換器23内の冷媒の圧力が水冷コンデンサ22内の冷媒の圧力よりも低くなっている。
【0077】
よって、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを切り換える場合は、固定絞り27を通過して冷媒の圧力がある程度低下した状態で第1流路切換弁28を開閉する。即ち、第1流路切換弁28を開閉する際の第1流路切換弁28の上流と下流との圧力差が小さいので、ヒートポンプ暖房モードと冷房モードとを切り換える場合と比較して、圧力変動幅及び温度変動幅が小さい。よって、冷凍サイクル2内の冷媒の経路の切り換えに起因する音の発生が抑制される。
【0078】
更に、空調装置100は、暖房運転時に室外熱交換器23から流入するガス状冷媒をコンプレッサ21に導き、冷房運転時に室外熱交換器23から流入する液状冷媒を膨張弁に導く受液器24を備える。そのため、ヒートポンプ暖房モードから除湿暖房モードに切り換えるために、第1流路切換弁28を開閉して冷凍サイクル2内の冷媒の流れを切り換える際には、受液器24から温度式膨張弁26へ液状冷媒が導かれるので、音が発生しにくい。
【0079】
以上より、除湿暖房運転を実行する際に冷凍サイクル2内の冷媒の経路の切り換えに起因する音の発生を抑制することができる。
【0080】
なお、第1流路切換弁28は、閉弁時に完全に閉じられるのではなく、微小な冷媒の流れが生じるものであってもよい。この微小な冷媒の流れによって、第1流路切換弁28の開閉時の冷媒の流量変動が抑えられるので、音が発生しにくい。
【0081】
また、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとは、5秒から70秒の周期で交互に切り換えられる。
図8は、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを交互に切り換えた場合に、エバポレータ25におけるHVACユニット5内を流れる空気の流れ方向に対して垂直な面の複数の点(例えば4行×5列の20点)の温度変化量を計測した結果を示すものである。
図8中のプロットは、異なる試験条件で計測した温度変化量であり、
図8中の曲線は、各計測値の平均値をとったものである。エバポレータ25を通過した空気の温度変化量の適正範囲は、T
1[℃]以下である。
【0082】
図8に示すように、切換周期が5〜70秒の場合に、エバポレータ25の温度変化量が適正範囲内にある。切換周期が5秒より短い場合には、除湿暖房モードに切り換えられた後、エバポレータ25が充分に冷える前のタイミングで再びヒートポンプ暖房モードに切り換えられる。一方、切換周期が70秒より長い場合には、除湿暖房モードに切り換えられた後、エバポレータ25が冷え過ぎて一部が凍結するおそれがある。
【0083】
図9に示すように、5〜70秒の適正な切換周期である場合には、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとは、エバポレータ25を通過した空気の温度が予め設定された適正な温度変化量の範囲内にて変動するように交互に切り換えられる。
【0084】
よって、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを、5秒から70秒の周期で交互に切り換える場合には、エバポレータ25を通過した空気の温度が予め設定された適正範囲内にて変動するので、エバポレータ25の凍結を回避しつつ、充分な除湿性能を発揮できる。また、このとき、
図9に示すように、ヒータコア42を通過した空気の平均温度もまた適正な温度範囲に維持されるので、暖房性能が低下することもない。したがって、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを、5秒から70秒の周期で交互に切り換えることで、除湿暖房運転を実行することが可能である。
【0085】
なお、第1流路切換弁28を開閉してヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを切り換える際に、コンプレッサ21を停止させると、切り換え後にコンプレッサ21を起動する際の高低圧力差が大きいので、コンプレッサ21の起動トルクが大きくなる。そのため、第1流路切換弁28を開閉する際には、コンプレッサ21を停止させないことが望ましい。
【0086】
また、望ましくは、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとは、12秒から55秒の周期で交互に切り換えられる。エバポレータ25を通過した空気の温度変化量の望ましい範囲は、T
1より小さいT
2[℃]以下である。
図8に示すように、切換周期が12〜55秒の場合に、エバポレータ25の温度変化量が望ましい範囲内にある。
【0087】
この場合、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを、5秒から70秒の周期で交互に切り換える場合と比較して、除湿暖房モードに切り換えられた後、エバポレータ25が充分に冷える前のタイミングで再びヒートポンプ暖房モードに切り換えられることが更に防止される。また、除湿暖房モードに切り換えられた後、エバポレータ25が冷え過ぎて一部が凍結することが更に防止される。
【0088】
より望ましくは、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとは、15秒から50秒の周期で交互に切り換えられる。エバポレータ25を通過した空気の温度変化量のより望ましい範囲は、T
2より更に小さいT
3[℃]以下である。
図8に示すように、切換周期が15〜50秒の場合に、エバポレータ25の温度変化量がより望ましい範囲内にある。
【0089】
この場合、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを、12秒から55秒の周期で交互に切り換える場合と比較して、除湿暖房モードに切り換えられた後、エバポレータ25が充分に冷える前のタイミングで再びヒートポンプ暖房モードに切り換えられることが更に防止される。また、除湿暖房モードに切り換えられた後、エバポレータ25が冷え過ぎて一部が凍結することが更に防止される。
【0090】
なお、空調装置100の起動時に除湿暖房運転を実行する場合には、最初に冷凍サイクル2をヒートポンプ暖房モードに切り換える。例えば、コールドスタート時に空調装置100を起動した際には、受液器24に液状冷媒が充分に貯留されていないことがある。そのため、最初にヒートポンプ暖房モードで冷凍サイクル2を運転することで、受液器24に液状冷媒を貯留できる。
【0091】
次に、
図10から
図12を参照して、除湿暖房運転時における、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとの切り換えの変形例について説明する。この変形例では、エバポレータ25の温度(エバポレータ25を通過した空気の温度)T
Eに基づいて冷凍サイクル2の運転モードを切り換える。
【0092】
図10では、横軸が、エバポレータ25の温度T
E[℃]であり、縦軸が、冷凍サイクル2の運転モードである。
【0093】
図10に示すように、コントローラ10は、冷凍サイクル2が除湿暖房モード運転である状態で、エバポレータ25の温度T
Eが第1設定温度T
E1[℃]以下になった場合には、冷凍サイクル2をヒートポンプ暖房モードに切り換える。一方、コントローラ10は、冷凍サイクル2がヒートポンプ暖房モードである状態で、エバポレータ25の温度T
Eが第2設定温度T
E2[℃]以上になった場合には、冷凍サイクル2を除湿暖房モードに切り換える。
【0094】
ここで、第1設定温度T
E1と第2設定温度T
E2とは、予め設定される値である。第2設定温度T
E2は、第1設定温度T
E1と比較して高く設定される。例えば、第1設定温度T
E1は、1℃に設定され、第2設定温度T
E2は、4℃に設定される。
【0095】
これにより、エバポレータ25の温度が、第1設定温度T
E1と第2設定温度T
E2との間で変動するので、エバポレータ25の凍結を回避しつつ、充分な除湿性能を発揮できる。したがって、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを、エバポレータ25の温度T
Eが第1設定温度T
E1と第2設定温度T
E2との間で変動するように交互に切り換えることで、除湿暖房運転を実行することが可能である。
【0096】
図11では、横軸が時間t[秒]であり、縦軸がエバポレータ25の温度T
Eである。
【0097】
図11に示すように、冷凍サイクル2が除湿暖房モードである場合には、エバポレータ25を通過する冷媒によって、エバポレータ25の温度T
Eは下降する。一方、冷凍サイクル2がヒートポンプ暖房モードである場合には、エバポレータ25にて熱交換を行う空気の熱によって、エバポレータ25の温度T
Eは上昇する。
【0098】
即ち、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを交互に切り換えることで、エバポレータ25の温度T
Eは、周期的に上昇と下降とを繰り返すように変化する。
【0099】
しかしながら、冷凍サイクル2が除湿暖房モードである場合に、エバポレータ25を通過する冷媒が不足すると、エバポレータ25の温度が徐々に上昇して、第1設定温度T
E1以下の温度まで下がらなくなるおそれがある。この場合、冷凍サイクル2の運転モードが、除湿暖房モードのまま切り換わらなくなる。
【0100】
そこで、コントローラ10は、エバポレータ25の温度を下げるために、
図12に示す制御を実行する。コントローラ10は、
図12に示すルーチンを、例えば10ミリ秒ごとの一定時間隔で繰り返し実行する。
【0101】
ステップS11では、コントローラ10は、冷凍サイクル2の運転モードが除湿暖房モードであるか否かを判定する。ステップS11にて、除湿暖房モードであると判定された場合には、ステップS12に移行する。一方、ステップS11にて、除湿暖房モードでないと判定された場合には、そのままリターンして処理を抜ける。
【0102】
ステップS12では、コントローラ10は、エバポレータ温度センサ13から入力される信号に基づいて、エバポレータ25の温度T
Eを検出する。
【0103】
ステップS13では、コントローラ10は、ステップS12にて検出したエバポレータ25の温度T
Eが、第1設定温度T
E1+α[℃]以上であるか否かを判定する。即ち、ステップS13では、エバポレータ25の温度T
Eが、目標値である第1設定温度T
E1とαだけ剥離しているか否かを判定する。αは、例えば2℃に予め設定される。
【0104】
ステップS13にて、エバポレータ25の温度T
Eが第1設定温度T
E1+α以上であると判定された場合には、ステップS14に移行して時間tをカウントアップする。一方、ステップS13にて、エバポレータ25の温度T
Eが第1設定温度T
E1+α以上でない、即ち第1設定温度T
E1+αより低いと判定された場合には、ステップS15に移行して時間tをリセットする。
【0105】
ステップS16では、コントローラ10は、時間tが設定時間t
p以上であるか否かを判定する。設定時間t
pは、例えば60秒に予め設定される。ステップS16にて、時間tが設定時間t
p以上であると判定された場合には、ステップS17に移行する。一方、ステップS16にて、時間tが設定時間t
p以上でない、即ち時間tは設定時間t
pを経過していないと判定された場合には、ステップS18に移行する。
【0106】
ステップS17では、受液器24からエバポレータ25へ液状冷媒が充分に流通していないので、受液器24に液状冷媒を貯留するために、コントローラ10は、第3運転モードとしての冷房モードにて冷凍サイクル2を運転する。このとき、車室に導かれる空気の温度が目標温度と比較して低くなる場合には、温水ヒータ43によって加熱された温水を用いて、エバポレータ25を通過して冷却された空気を加熱(リヒート)する。
【0107】
このように、空調装置100では、除湿暖房モードにて、エバポレータ25の温度T
Eが第1設定温度T
E1より低くならない状態が継続した場合には、一時的に冷房モードに切り換えられる。具体的には、空調装置100は、除湿暖房モードにて、エバポレータ温度センサ13が検出した温度が第1設定温度T
E1とα以上剥離している状態が継続する時間が設定時間t
p以上となった場合に、一時的に冷房モードに切り換えられる。
【0108】
また、エバポレータ25の温度T
Eが第1設定温度T
E1より低くならない場合に代えて、温度の代用特性の冷媒圧力に基づいて、除湿暖房モードから一時的に冷房モードに切り換えられるようにしてもよい。
【0109】
よって、エバポレータ25の温度T
Eが第1設定温度T
E1より低い温度まで下がらなくなったとしても、冷凍サイクル2の運転モードが、除湿暖房モードのまま切り換えられなくなることはなく、除湿可能な状態に移行させることができる。
【0110】
その後、コントローラ10は、エバポレータ25の温度T
Eが第1設定温度T
E1より充分に低い温度に下がるまで冷房モードによる運転を継続する。その後、コントローラ10は、冷凍サイクル2を除湿暖房モードに切り換える。これにより、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを交互に切り換えることによる除湿暖房運転を実行することができる。
【0111】
これに代えて、コントローラ10は、エバポレータ25の温度T
Eが、第1設定温度T
E1−β以下であるか否かを判定し、第1設定温度T
E1よりもβ[℃]以上低くなった場合に、冷凍サイクル2を除湿暖房モードに切り換えてもよい。
【0112】
なお、空調装置100では、冷凍サイクル2をヒートポンプ暖房モードから冷房モードに切り換える場合には、直接切り換えるのではなく、一旦、除湿暖房モードに切り換えてから冷房モードに切り換える。
【0113】
除湿暖房モードでは、エバポレータ25に冷媒が流れているので、除湿暖房モードから冷房モードに切り換える場合には、第2流路切換弁29を切り換えるだけでよい。このとき、エバポレータ25における冷媒の流れには変化がない。また、除湿暖房モードでは、固定絞り27の上流と下流との圧力差は、ヒートポンプ暖房モードの場合と比較して小さい。よって、ヒートポンプ暖房モードから冷房モードに切り換える場合に、除湿暖房モードを経由することで、冷凍サイクル2の運転モードを円滑に切り換えることができる。
【0114】
次に、
図13を参照して、除湿暖房モードを利用した室外熱交換器23の除霜について説明する。
【0115】
ヒートポンプ暖房モードにて暖房運転を行った場合、室外熱交換器23の温度が低下して表面に着霜が発生することがある。この場合、コンプレッサ21にて圧縮した冷媒をそのまま室外熱交換器23に導くいわゆるホットガスサイクルにて除霜を行うのが一般的である。
【0116】
特に、EV(Electric Vehicle:電動車両)やPHEV(Plug−in Hybrid Electric Vehicle:プラグインハイブリッド車両)のように外部電源から充電可能な車両の場合には、外部電源を接続して充電を行っている際に、ホットガスサイクルにて除霜を行うことができる。
【0117】
しかしながら、外部電源からの充電ができないHEV(Hybrid Electric Vehicle:ハイブリッド車両)などでは、航続可能距離が比較的長いこともあり、走行中に室外熱交換器23に着霜が発生して、暖房性能が低下するおそれがある。
【0118】
そこで、コントローラ10は、走行中に室外熱交換器23に発生した着霜を取り除くために、
図13に示す制御を実行する。コントローラ10は、
図13に示すルーチンを、例えば10ミリ秒ごとの一定時間隔で繰り返し実行する。
【0119】
ステップS21では、着霜判定部18は、外気温センサ15の検出温度と室外熱交換器出口温センサ12の検出温度とを比較し、両者の温度差が室外熱交換器23に着霜の発生し得る着霜温度差以上になっていることを判定する。着霜判定部18は、外気温センサ15の検出温度と室外熱交換器出口温センサ12の検出温度との温度差が着霜温度差以上になっている状態の経過時間に基づいて、室外熱交換器23に着霜が発生したことを判定する。
【0120】
ステップS21にて、室外熱交換器23に着霜が発生したと判定された場合には、ステップS22に移行する。一方、ステップS21にて、室外熱交換器23の着霜が取り除かれて、除霜が必要ない状態になったと判定された場合には、ステップS25に移行する。
【0121】
ステップS22では、HVACユニット5が、車室外の空気を取り入れて空調に用いる外気導入モードであるか否かを判定する。
【0122】
ステップS22にて、外気導入モードであると判定された場合には、ステップS23に移行する。一方、外気導入モードでない、即ち、HVACユニット5が、車室内の空気を循環させる内気循環モードであると判定された場合には、ステップS24に移行する。
【0123】
ステップS23では、HVACユニット5を、外気導入モードから、車室外の空気に車室内の空気を混ぜて空調に用いる半内気モードに切り換える。ここでは、車室外の空気と車室内の空気とが1:1となるように、即ち車室内に導かれる空気の50%が内気循環となるように切り換える。外気導入モードのままでは、エバポレータ25の負荷が低いので、低圧圧力が低下し、室外熱交換器23の温度も低下して除霜できないおそれがある。これに対して、半内気モードでは、エバポレータ25の負荷を高めることで、室外熱交換器23の温度を上昇させることができる。
【0124】
ステップS24では、冷凍サイクル2を除湿暖房モードに切り換えて運転を実行する。このとき、除湿暖房モードへの切り換えは、上述した除湿暖房運転とは関係なく行われる。
【0125】
以上のように、着霜判定部18が室外熱交換器23に着霜が発生したと判定した場合に、冷凍サイクル2は、ヒートポンプ暖房モードから除湿暖房モードに切り換えられる。また、HVACユニット5が車室外の空気を取り入れて空調に用いる外気導入モードである場合には、車室外の空気に車室内の空気を混ぜて空調に用いる半内気モードに切り換えられる。このように、HVACユニット5を半内気モードに切り換えた状態で、冷凍サイクル2を除湿暖房モードで運転することによって、室外熱交換器23に発生した着霜を取り除くことができる。
【0126】
また、外気導入モードから半内気モードに切り換えても、車室内の乗員に大きな違和感はない。よって、除霜運転を実行していることを乗員に意識させずに、室外熱交換器23に発生した着霜を取り除くことができる。
【0127】
ステップS25からステップS27では、ステップS21にて、室外熱交換器23の着霜が取り除かれて、除霜が必要ない状態になったと判定されたので、除霜運転を終了する制御を実行する。
【0128】
ステップS25では、HVACユニット5が、半内気モードであるか否かを判定する。
【0129】
ステップS25にて、半内気モードであると判定された場合には、ステップS26に移行する。一方、半内気モードでない、即ち、内気循環モードであると判定された場合には、ステップS27に移行する。
【0130】
ステップS26では、ステップS23にて半内気モードに切り換えたHVACユニット5を、外気導入モードに復帰させる。そして、ステップS27では、ステップS24にて除湿暖房モードに切り換えた冷凍サイクル2を、ヒートポンプ暖房モードに復帰させる。これにより、車室内の乗員の所望の空調モードに戻すことができる。
【0131】
以上の第1の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0132】
空調装置100は、冷媒を圧縮するコンプレッサ21と、冷媒と外気との間で熱交換を行う室外熱交換器23と、車両の車室に導かれる空気の熱を冷媒に吸収させることで冷媒を蒸発させるエバポレータ25と、車室に導かれる空気をコンプレッサ21にて圧縮された冷媒の熱を用いて加熱するヒータコア42と、室外熱交換器23の下流に配置され、室外熱交換器23から導かれる冷媒を液状冷媒とガス状冷媒とに分離させて液状冷媒を貯留する受液器24と、ヒータコア42と室外熱交換器23との間に設けられ、冷媒を減圧膨張させる固定絞り27と、室外熱交換器23とエバポレータ25との間に設けられ、室外熱交換器23を通過した冷媒を減圧膨張させる温度式膨張弁26と、を備え、固定絞り27で冷媒の流れが絞られ、ヒータコア42で放熱する運転状態において、受液器24に液状冷媒を貯留してガス状冷媒がコンプレッサ21に導かれるヒートポンプ暖房モードと、受液器24に貯留された液状冷媒をヒータコア42に導く除湿暖房モードと、が切り換えられる。
【0133】
この構成によれば、固定絞り27で冷媒の流れが絞られ、ヒータコア42で放熱する運転状態において、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとが切り換えられる。ヒートポンプ暖房モードでは、暖房運転を実行しながら、室外熱交換器23から導かれる冷媒のうち液状冷媒が受液器24に貯留される。除湿暖房モードでは、ヒートポンプ暖房モードで受液器24に貯留された液状冷媒がエバポレータ25に導かれる。よって、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを切り換えることで、暖房運転を実行しながら受液器24に液状冷媒を貯留し、その液状冷媒を用いて除湿を行うことができる。したがって、暖房状態を維持しながら除湿を行う除湿暖房運転を実行することができる。
【0134】
また、空調装置100の起動時に、固定絞り27で冷媒の流れが絞られ、水冷コンデンサ22で放熱する運転を行う際には、ヒートポンプ暖房モードにて運転を開始する。
【0135】
この構成によれば、例えば、コールドスタート時に空調装置100を起動した際に、最初にヒートポンプ暖房モードで冷凍サイクル2を運転することで、受液器24に液状冷媒を貯留できる。
【0136】
また、受液器24は、後述する第2の実施形態の第1受液器241と第2受液器242とが、液状冷媒が貯留される貯液部24aを共有するように一体に構成され、暖房運転時には室外熱交換器23から流入するガス状冷媒をコンプレッサ21に導き、冷房運転時には室外熱交換器23から流入する液状冷媒をエバポレータ25に導く。
【0137】
ここで、除湿を行うために冷凍サイクル2をヒートポンプ暖房モードから冷房モードに切り換える場合には、ヒートポンプ暖房モードと冷房モードとでは、冷媒が異なる経路を循環する。そのため、ヒートポンプ暖房モードと冷房モードとにおける各経路間の冷媒の圧力の相違によって、冷媒の経路を切り換える際に音が発生するおそれがある。
【0138】
これに対して、空調装置100では、暖房運転時に室外熱交換器23から流入するガス状冷媒をコンプレッサ21に導き、冷房運転時に室外熱交換器23から流入する液状冷媒を温度式膨張弁26に導く受液器24が設けられる。そのため、ヒートポンプ暖房モードから除湿暖房モードに切り換えるために冷凍サイクル2内の冷媒の流れを切り換える際には、第1流路切換弁28の前後の圧力差が小さく、ヒートポンプ暖房モード時に貯留された液状冷媒が受液器24から温度式膨張弁26へ導かれるので、音が発生しにくい。
【0139】
また、空調装置100は、冷媒を圧縮するコンプレッサ21と、冷媒と外気との間で熱交換を行う室外熱交換器23と、車両の車室に導かれる空気の熱を冷媒に吸収させることで冷媒を蒸発させるエバポレータ25と、車室に導かれる空気をコンプレッサ21にて圧縮された冷媒の熱を用いて加熱するヒータコア42と、室外熱交換器23とエバポレータ25との間に設けられ、室外熱交換器23を通過した冷媒を減圧膨張させる温度式膨張弁26と、コンプレッサ21と室外熱交換器23との間に設けられ、コンプレッサ21によって圧縮された冷媒を減圧膨張させる固定絞り27と、液状冷媒とガス状冷媒とを分離させ、暖房運転時には室外熱交換器23から流入するガス状冷媒をコンプレッサ21に導き、冷房運転時には室外熱交換器23から流入する液状冷媒を温度式膨張弁26に導く受液器24と、暖房運転時に温度式膨張弁26及びエバポレータ25をバイパスするように冷媒の流路を切り換える第1流路切換弁28と、冷房運転時に固定絞り27をバイパスするように冷媒の流路を切り換える第2流路切換弁29と、を備え、除湿暖房運転時には、冷媒が温度式膨張弁26及びエバポレータ25をバイパスするように第1流路切換弁28を切り換えると共に固定絞り27を通過するように第2流路切換弁29を切り換えるヒートポンプ暖房モードと、冷媒が温度式膨張弁26及びエバポレータ25を通過するように第1流路切換弁28を切り換えると共に固定絞り27を通過するように第2流路切換弁29を切り換える除湿暖房モードと、が交互に切り換えられる。
【0140】
ヒートポンプ暖房モードでは、水冷コンデンサ22は、コンプレッサ21が吐出した高圧冷媒と車室へ導かれる空気とを温水サイクル4を介して熱交換させ、固定絞り27は、水冷コンデンサ22から導出された冷媒を減圧膨張させ、室外熱交換器23には、固定絞り27にて減圧膨張した冷媒が流入し、受液器24は、室外熱交換器23から導出された低圧冷媒をガス状冷媒と液状冷媒とに分離させ、コンプレッサ21には、ガス状冷媒が導かれる。
【0141】
一方、除湿暖房モードでは、水冷コンデンサ22は、コンプレッサ21が吐出した高圧冷媒と車室へ導かれる空気とを温水サイクル4を介して熱交換させ、固定絞り27は、水冷コンデンサ22から導出された冷媒を減圧膨張させ、室外熱交換器23には、固定絞り27にて減圧膨張した中間圧冷媒が流入し、受液器24は、室外熱交換器23から導出された冷媒をガス状冷媒と液状冷媒に分離させ、温度式膨張弁26は、受液器24から導かれる液状冷媒を減圧膨張させ、エバポレータ25は、温度式膨張弁26にて減圧膨張した低圧冷媒と車室へ導かれる空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させ、コンプレッサ21には、ガス状冷媒が導かれる。
【0142】
この構成によれば、除湿暖房運転時には、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとが交互に切り換えられる。除湿暖房モードでは、冷媒が温度式膨張弁26を通過するように第1流路切換弁28が切り換えられると共に固定絞り27を通過するように第2流路切換弁29が切り換えられる。ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを切り換える場合は、ヒートポンプ暖房モードと冷房モードとを切り換える場合と比較して、圧力変動幅及び温度変動幅が小さい。したがって、除湿暖房運転を実行する際に冷凍サイクル2内の冷媒の経路の切り換えに起因する音の発生を抑制することができる。
【0143】
また、空調装置100は、室外熱交換器23とエバポレータ25との間に設けられ、室外熱交換器23を通過した冷媒を減圧膨張させる膨張弁を備え、膨張弁は、エバポレータ25を通過した冷媒の温度に応じて開度が調節される温度式膨張弁26である。
【0144】
この構成によれば、冷凍サイクル2を冷房モード若しくは除湿暖房モードで運転する場合に、ガス状冷媒のみをコンプレッサ21に導くことができるので、コンプレッサ21の上流にアキュムレータを更に設ける必要がない。
【0145】
また、温度式膨張弁26及びエバポレータ25の上流の冷媒と下流の冷媒との間で熱交換を行う内部熱交換器30を更に備える。
【0146】
この構成によれば、受液器24から導かれる液状冷媒は、内部熱交換器30を流通する際に低温のガス状冷媒との間で熱交換を行い、ガス状冷媒により過度に冷却されて飽和液状態から過冷却度をもった過冷却状態となる。よって、内部熱交換器30が設けられることで、液状冷媒が温度式膨張弁26へ導かれやすくなる。
【0147】
また、空調装置100は、冷房運転時にエバポレータ25に導かれる冷媒の圧力が設定圧力を超えると開く差圧弁31を更に備える。
【0148】
この構成によれば、暖房運転(ヒートポンプ暖房モード)時に受液器24から温度式膨張弁26を介してエバポレータ25に冷媒が流れることを防止できる。よって、エバポレータ25が凍結することや、冷媒流路20内を流れる潤滑用オイルがエバポレータ25に貯留されることが防止される。
【0149】
また、室外熱交換器23は、冷媒が導入される冷媒入口23aと、冷媒入口23aと比較して高い位置に設けられ冷媒が導出される冷媒出口23bと、を有する。
【0150】
この構成によれば、暖房運転時には、室外熱交換器23にて外気と冷媒とが熱交換する際に、室外熱交換器23内の未蒸発冷媒(湿り度が高い冷媒)が導出され難く、外気からの吸熱量が増える。
【0151】
また、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとは、エバポレータ25を通過した空気の温度が予め設定された適正範囲内にて変動するように交互に切り換えられる。
【0152】
また、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとは、5秒から70秒の周期で交互に切り換えられる。
【0153】
これらの構成によれば、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを、5秒から70秒の周期で交互に切り換える場合には、エバポレータ25を通過した空気の温度が予め設定された適正範囲内にて変動するので、エバポレータ25の凍結を回避しつつ、充分な除湿性能を発揮できる。また、このとき、ヒータコア42を通過した空気の平均温度もまた適正な温度範囲に維持されるので、暖房性能が低下することもない。したがって、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを、5秒から70秒の周期で交互に切り換えることで、除湿暖房運転を実行することが可能である。
【0154】
また、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとは、12秒から55秒の周期で交互に切り換えられる。
【0155】
また、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとは、15秒から50秒の周期で交互に切り換えられる。
【0156】
これらの構成によれば、エバポレータ25を通過した空気の温度が予め設定された望ましい範囲、若しくはより望ましい範囲にて変動するので、エバポレータ25の凍結を回避しつつ、より充分な除湿性能を発揮できる。
【0157】
また、除湿暖房モードにて、エバポレータ25の温度T
Eが第1設定温度T
E1以下である場合に、ヒートポンプ暖房モードに切り換えられ、除湿暖房モードにて、エバポレータ25の温度が第1設定温度T
E1と比較して高く設定される第2設定温度T
E2以上である場合に第2運転モードに切り換えられる。
【0158】
この構成によれば、エバポレータ25の温度が、第1設定温度T
E1と第2設定温度T
E2との間で変動するので、エバポレータ25の凍結を回避しつつ、充分な除湿性能を発揮できる。したがって、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを、エバポレータ25の温度T
Eが第1設定温度T
E1と第2設定温度T
E2との間で変動するように交互に切り換えることで、除湿暖房運転を実行することが可能である。
【0159】
また、空調装置100は、固定絞り27が冷媒の流れを絞らない状態で、エバポレータ25にて冷媒を蒸発させると共に受液器24への液状冷媒の貯留を促進する冷房モードを更に有し、除湿暖房モードにて、エバポレータ25の温度T
Eが前記第1設定温度T
E1より低くならない状態が継続した場合には、冷房モードに切り換えられる。
【0160】
また、空調装置100は、エバポレータ25の温度を検出するエバポレータ温度センサ13を更に備え、除湿暖房モードにて、エバポレータ温度センサ13が検出した温度が第1設定温度T
E1とα以上剥離している場合に、冷房モードに切り換えられる。
【0161】
また、空調装置100は、エバポレータ25の温度を検出するエバポレータ温度センサ13を更に備え、除湿暖房モードにて、エバポレータ温度センサ13が検出した温度が第1設定温度T
E1と剥離している時間が設定時間t
p以上となった場合に、冷房モードに切り換えられる。
【0162】
これらの構成によれば、エバポレータ25の温度T
Eが第1設定温度T
E1以下の温度まで下がらなくなったとしても、冷凍サイクル2の運転モードが、除湿暖房モードのまま切り換えられなくなることはなく、除湿可能な状態に移行させることができる。
【0163】
また、空調装置100では、固定絞り27が冷媒の流れを絞らない状態で、エバポレータ25にて冷媒を蒸発させると共に受液器24への液状冷媒の貯留を促進する冷房モードを更に有し、ヒートポンプ暖房モードから冷房モードに切り換える際には、除湿暖房モードを経由する。
【0164】
この構成によれば、除湿暖房モードでは、エバポレータ25に冷媒が流れているので、除湿暖房モードから冷房モードに切り換える場合には、第2流路切換弁29を切り換えるだけでよい。このとき、エバポレータ25における冷媒の流れには変化がない。また、除湿暖房モードでは、固定絞り27の上流と下流との圧力差は、ヒートポンプ暖房モードの場合と比較して小さい。よって、ヒートポンプ暖房モードから冷房モードに切り換える場合に、除湿暖房モードを経由することで、冷凍サイクル2の運転モードを円滑に切り換えることができる。
【0165】
また、空調装置100は、室外熱交換器23に着霜が発生したことを判定する着霜判定部18を更に備え、着霜判定部18が室外熱交換器23に着霜が発生したと判定した場合に、ヒートポンプ暖房モードから除湿暖房モードに切り換えられる。
【0166】
また、空調装置100は、着霜判定部18が室外熱交換器23に着霜が発生したと判定したときに、車室外の空気を取り入れて空調に用いる外気導入モードである場合には、車室外の空気に車室内の空気を混ぜて空調に用いる半内気モードに切り換えられる。
【0167】
これらの構成によれば、着霜判定部18が室外熱交換器23に着霜が発生したと判定した場合に、冷凍サイクル2は、ヒートポンプ暖房モードから除湿暖房モードに切り換えられる。また、HVACユニット5が車室外の空気を取り入れて空調に用いる外気導入モードである場合には、車室外の空気に車室内の空気を混ぜて空調に用いる半内気モードに切り換えられる。このように、HVACユニット5を半内気モードに切り換えた状態で、冷凍サイクル2を除湿暖房モードで運転することによって、室外熱交換器23に発生した着霜を取り除くことができる。
【0168】
(第2の実施形態)
以下、
図14から
図16を参照して、本発明の第2の実施形態に係る空調装置200について説明する。以下に示す各実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0169】
図14に示すように、空調装置200は、単一の受液器24に代えて、第1受液器241と第2受液器242とを別々に備える点で、第1の実施形態に係る空調装置100とは相違する。
【0170】
第1受液器241は、室外熱交換器23の下流に配置される。第1受液器241は、室外熱交換器23から導かれる冷媒を液状冷媒とガス状冷媒とに分離させる。第1受液器241は、液状冷媒を貯留する第1貯液部241aを有する。
【0171】
第2受液器242は、コンプレッサ21の上流に配置される。第2受液器242は、冷媒流路20を流れる冷媒を一時的に溜めると共に、ガス状冷媒と液状冷媒とに気液分離する。第2受液器242は、液状冷媒を貯留する第2貯液部242aを有する。第2受液器242からは、分離したガス状冷媒のみがコンプレッサ21へと流れる。
【0172】
このように、本実施形態では、室外熱交換器23の下流に位置し、室外熱交換器23からの冷媒が導入され、液状冷媒とガス状冷媒とに気液分離させて液相冷媒を貯留する二つの貯液部241a,242aが設けられる。第1貯液部241aは、冷媒を気液分離させて液状冷媒を導出する出口を有し、第2貯液部242aは、冷媒を気液分離させてガス状冷媒を導出する出口を有する。
【0173】
ヒートポンプ暖房モードでは、室外熱交換器23から導かれる冷媒は、第2貯液部242aに導かれて、ガス状冷媒がコンプレッサ21に導かれるが、このとき、室外熱交換器23からの冷媒のうち液状冷媒の一部が、第1貯液部241aに導かれて貯留される。
【0174】
一方、除湿暖房モードでは、室外熱交換器23から導かれる冷媒は、第1貯液部241aに導かれ、液状冷媒が内部熱交換器30と温度式膨張弁26とを介してエバポレータ25に導かれる。そして、エバポレータ25から導出された冷媒は、第2貯液部242aを経由して、ガス状冷媒がコンプレッサ21に導かれる。
【0175】
除湿暖房運転時には、冷凍サイクル2は、第1運転モードとしてのヒートポンプ暖房モードと第2運転モードとしての除湿暖房モードとに交互に切り換えられる。ヒートポンプ暖房モードでは、冷凍サイクル2内の冷媒及び温水サイクル4内の温水は、
図15に太実線で示すように循環する。除湿暖房モードでは、冷凍サイクル2内の冷媒及び温水サイクル4内の温水は、
図16に太実線で示すように循環する。
【0176】
図15に示すように、ヒートポンプ暖房モードでは、コントローラ10は、第1流路切換弁28を開いた状態にすると共に、第2流路切換弁29を閉じた状態にする。
【0177】
コンプレッサ21で圧縮され高温になった冷媒は、水冷コンデンサ22へと流れる。水冷コンデンサ22へ流れた冷媒は、水冷コンデンサ22の内部で温水を加熱し、固定絞り27を通って減圧膨張することで低温となって、室外熱交換器23へと流れる。
【0178】
室外熱交換器23へ流れた冷媒は、室外熱交換器23に導入される外気との間で熱交換した後、第1流路切換弁28を通って第2受液器242へ流れ、第2受液器242で気液分離された冷媒のうちガス状冷媒が、再びコンプレッサ21へと流れるが、このとき、室外熱交換器23からの冷媒の一部が、第1貯液部241aに導かれて貯留される。
【0179】
一方、水冷コンデンサ22で冷媒によって加熱された温水は、循環してヒータコア42に流れ、ヒータコア42の周囲の空気を加熱する。加熱された空気は、HVACユニット5の下流側に流されることで、暖房風として用いられる。
【0180】
図16に示すように、除湿暖房モードでは、コントローラ10は、第1流路切換弁28を閉じた状態にすると共に、第2流路切換弁29を閉じた状態にする。
【0181】
コンプレッサ21で圧縮され高温になった冷媒は、水冷コンデンサ22へと流れる。水冷コンデンサ22へ流れた冷媒は、水冷コンデンサ22の内部で温水を加熱し、固定絞り27を通って減圧膨張することで低温となって、室外熱交換器23へと流れる。
【0182】
室外熱交換器23へ流れた冷媒は、室外熱交換器23に導入される外気との間で熱交換した後、第1受液器241にて気液分離される。そして、ヒートポンプ暖房モードにて第1受液器241内に貯留された液状冷媒と、第1受液器241にて気液分離された液状冷媒とが、内部熱交換器30を介して流通する。このように、除湿暖房モードでは、第1受液器241に貯留された液状冷媒がエバポレータ25に導かれる。
【0183】
その後、液状冷媒は、温度式膨張弁26で減圧膨張してエバポレータ25へ流通し、エバポレータ25を通過する際に空調に利用する空気の熱を吸収することで蒸発する。エバポレータ25にて蒸発したガス状冷媒は、内部熱交換器30を通過し、第2受液器242を介して再びコンプレッサ21へと流れる。
【0184】
HVACユニット5の下流に流れる空気は、エバポレータ25にて除湿され、ヒータコア42にて加熱されることで、除湿暖房風として用いられる。
【0185】
このように、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、固定絞り27で冷媒の流れが絞られ、ヒータコア42で放熱する運転状態において、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとが切り換えられる。ヒートポンプ暖房モードでは、暖房運転を実行しながら、液状冷媒が第1受液器241に貯留される。除湿暖房モードでは、ヒートポンプ暖房モードで第1受液器241に貯留された液状冷媒がエバポレータ25に導かれる。よって、ヒートポンプ暖房モードと除湿暖房モードとを切り換えることで、暖房運転を実行しながら第1受液器241に液状冷媒を貯留し、その液状冷媒を用いて除湿を行うことができる。したがって、暖房状態を維持しながら除湿を行う除湿暖房運転を実行することができる。
【0186】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【解決手段】空調装置100は、コンプレッサ21と、室外熱交換器23と、車両の車室に導かれる空気の熱を冷媒に吸収させるエバポレータ25と、車室に導かれる空気をコンプレッサ21にて圧縮された冷媒を用いて加熱するヒータコア42と、室外熱交換器23の下流に配置され、室外熱交換器23から導かれる冷媒を気液分離させてガス状冷媒を貯留する受液器24と、ヒータコア42と室外熱交換器23との間に設けられ、冷媒を減圧膨張させる固定絞り27と、を備え、固定絞り27で冷媒の流れが絞られ、ヒータコア42で放熱する運転状態において、受液器24に液状冷媒を貯留してガス状冷媒がコンプレッサ21に導かれるヒートポンプ暖房モードと、受液器24に貯留された液状冷媒をヒータコア42に導く除湿暖房モードと、が切り換えられる。