特許第6496495号(P6496495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496495
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】自動工具交換装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/04 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   B25J15/04 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-120141(P2014-120141)
(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公開番号】特開2015-231658(P2015-231658A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】表 信宏
(72)【発明者】
【氏名】西尾 英樹
【審査官】 松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−127072(JP,A)
【文献】 特開平05−301186(JP,A)
【文献】 特開平05−301187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構及び複数の係止機構を有する第1ユニットと、
前記複数の係止機構のそれぞれに対応する複数の係止部を有する第2ユニットとを備え、
前記第1ユニットに設けられた突起部を前記第2ユニットに設けられた孔に挿入したとき、前記突起部内の前記複数の係止機構が前記対応する係止部のそれぞれに対して係止状態となることで、前記第1ユニットと前記第2ユニットとが相互に連結される、自動工具交換装置であって、
前記複数の係止機構は、それぞれ、前記突起部の前記孔への挿入方向と直交する直交方向に沿った回動軸を中心として回動可能に、前記突起部に支持されており、
前記駆動機構は、前記挿入方向と前記挿入方向とは反対の反対方向とに進退可能なヘッド部材と、前記ヘッド部材と接続された一端部及び前記一端部よりも前記挿入方向の下流において前記突起部に収容された他端部を有する下部出力部と、前記直交方向に沿った揺動軸を中心として揺動可能に前記下部出力部の前記他端部に連結された上部出力部とを有し、
前記上部出力部における前記挿入方向及び前記直交方向の双方と直交する方向の両側面に、前記複数の係止機構のそれぞれと係合する複数の凹部が設けられており、
前記ヘッド部材の進退により前記複数の凹部が移動することで、対応する前記凹部に挿入された尖り部をそれぞれ有する前記複数の係止機構が、前記回動軸を中心として回動し、前記突起部の外部に突出した位置又は前記突起部の内部に収容された位置を取ることで、前記対応する係止部のそれぞれに対して係止状態又は係止解除状態となることを特徴とする、自動工具交換装置。
【請求項2】
前記上部出力部は、前記直交方向に延びる連結ピンにより前記下部出力部に対して揺動可能に連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の自動工具交換装置。
【請求項3】
前記上部出力部において、前記挿入方向の上流端にある始端部と、前記挿入方向の下流端にある終端部との間に前記複数の凹部が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動工具交換装置。
【請求項4】
前記複数の係止機構は、それぞれ、前記尖り部と、前記尖り部の反対側に設けられた、前記対応する係止部と当接する係合部とを有し、前記係合部が前記対応する係止部と当接することによって、前記対応する係止部に対して係止状態となることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動工具交換装置。
【請求項5】
前記複数の係止機構は、それぞれ、前記尖り部と前記係合部との間に設けられた直線部をさらに有し、
前記下部出力部は、前記複数の係止機構を前記係止解除状態に維持するために前記複数の係止機構の前記直線部と接触する拡径部を有することを特徴とする、請求項に記載の自動工具交換装置。
【請求項6】
前記ヘッド部材及び前記下部出力部が、前記挿入方向に移動するとき、前記複数の係止機構が回動することによって、前記突起部の内部に前記複数の係止機構が収容されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動工具交換装置。
【請求項7】
前記下部出力部は、前記上部出力部の前記下部出力部に対する揺動角度範囲を規制する係合機構を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項記載の自動工具交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種産業用ロボットに適用される自動工具交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業用ロボットに適用される自動工具交換装置(Auto Tool Changer)として、ロボットの操作手段に接続される第1ユニットと、種々の工具が取り付けられる少なくとも1つの第2ユニットとを備え、第2ユニットを第1ユニットに着脱可能に連結したものが知られている。当該装置において、第1ユニットは駆動機構及び係止機構を有し、第2ユニットは係止機構に対応する係止部を有する。駆動機構により係止機構を駆動し、係止機構を係止部に対して係止状態又は係止解除状態とする。1つの駆動機構で1つの係止機構を駆動する場合、複数の係止機構を駆動するためには、係止機構の数に対応する数の駆動機構が必要になる。係止機構の数に対応する数の駆動機構を備えた自動工具交換装置は、駆動機構の数の分、寸法が大きくなるという問題がある。
【0003】
上記問題を解決するため、本願の出願人は、例えば特許文献1に示すように、1つの駆動機構で3つ以上の係止機構を駆動することができる自動工具交換装置を提案している。しかしながら、特許文献1の自動工具交換装置は、高中負荷用ロボットに好適な構成であり、使用時に加わる大きな荷重に耐え得る高強度で複雑な構造を有するため、製造コストが高く、寸法が大きくなるという問題がある。低負荷用ロボットに適用される自動工具交換装置は、低可搬重量に対応した簡素な構造が必要である。
【0004】
ここで、図4を参照し、上述のように1つの駆動機構で3つ以上の係止機構を駆動することができる自動工具交換装置の一例について説明する。当該一例に係る自動工具交換装置601は、高中負荷用ロボットに好適な構成であり、一端面604aに突起部640が形成されるとともに他端面604bにロボットアーム等の操作部が取り付けられる第1ユニット604と、一端面605aに溶接器具等の各種工具が取り付けられるとともに突起部640を挿入可能な孔650を有する第2ユニット605とを備えている。第1ユニット604と第2ユニット605とは、カム機構(係止機構)646とロックピン(係止部)651との当接(即ち、カム機構646がロックピン651に対して係止状態となること)によって、相互に連結される。
【0005】
第1ユニット604は、シリンダ部644、ピストン(駆動機構)645、一対の弾性部材648、及び、カム機構(係止機構)646を有する。第2ユニット605は、孔650内に、カム機構646に対応するロックピン(係止部)651を有する。ピストン645は、カム機構646と係合する凹部が設けられたピストン出力部647を含む。ピストン645によりカム機構646を駆動し、カム機構646を対応するロックピン651に対して係止状態又は係止解除状態とする。
【0006】
第1ユニット604と第2ユニット605との連結動作は、以下のとおりである。まず、図4(a)に示すように、第1ユニット604と第2ユニット605との各外周部の位置を相互に合わせる。このとき、ロボットアーム(図示略)からシリンダ部644にエアが供給されている。そして、このエアの供給に伴う圧力によって、ピストン645が図4(a)中の白抜き矢印の方向610に移動する。また、この移動に伴い、一対の弾性部材648が上記方向610に付勢(圧縮)される。
【0007】
次に、図4(b)において、突起部640を孔650に挿入した状態で、シリンダ部644の弾性部材648側の空間に、第1ユニット604と第2ユニット605との連結用のエアが供給される。これによって、当該空間の内圧が増加すると、安全機構として機能する各弾性部材648に、図4(a)中の白抜き矢印の方向610と反対の方向の復元力が生じる。そして、上記空間の内圧力及び各弾性部材648の復元力に応じて、ピストン645が上記反対の方向に移動する。この移動に伴い、カム機構646が、図4(b)で反時計回り(太線矢印の方向620)に回動し、ロックピン651と当接することによって、ロックピン651に対して係止状態となる。これによって、カム機構646が突起部640の孔650への挿入方向と反対方向に移動することが規制され、第1ユニット604と第2ユニット605との連結が完了する。
【0008】
自動工具交換装置601においては、1つのピストン645の進退により、3つ以上のカム機構646を回動させることができる。また、ピストン出力部647における凹部の終端側の境界周面に、当該境界周面に対する滑動が可能な環状滑動体649が設けられている。環状滑動体649の境界周面に対する滑動により、カム機構646やロックピン651に加工誤差がある場合や、装置601の使用中にカム機構646やロックピン651に摩耗が生じた場合においても、カム機構646とロックピン651との均等な当接・係止状態を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3177814号公報
【特許文献2】特開2012−250327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図4の自動工具交換装置601は、使用時に加わる大きな荷重に耐え得る高強度で複雑な構造を有するため、製造コストが高く、寸法が大きくなるという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、低可搬重量に対応した簡素な構造を有し、製造コストを低減でき、かつ、寸法を小さく抑えることができる、自動工具交換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る自動工具交換装置は、駆動機構及び複数の係止機構を有する第1ユニットと、前記複数の係止機構のそれぞれに対応する複数の係止部を有する第2ユニットとを備え、前記第1ユニットに設けられた突起部を前記第2ユニットに設けられた孔に挿入したとき、前記突起部内の前記複数の係止機構が前記対応する係止部のそれぞれに対して係止状態となることで、前記第1ユニットと前記第2ユニットとが相互に連結される、自動工具交換装置であって、前記複数の係止機構は、それぞれ、前記突起部の前記孔への挿入方向と直交する直交方向に沿った回動軸を中心として回動可能に、前記突起部に支持されており、前記駆動機構は、前記挿入方向と前記挿入方向とは反対の反対方向とに進退可能なヘッド部材と、前記ヘッド部材と接続された一端部及び前記一端部よりも前記挿入方向の下流において前記突起部に収容された他端部を有する下部出力部と、前記直交方向に沿った揺動軸を中心として揺動可能に前記下部出力部の前記他端部に連結された上部出力部とを有し、前記上部出力部における前記挿入方向及び前記直交方向の双方と直交する方向の両側面に、前記複数の係止機構のそれぞれと係合する複数の凹部が設けられており、前記ヘッド部材の進退により前記複数の凹部が移動することで、対応する前記凹部に挿入された尖り部をそれぞれ有する前記複数の係止機構が、前記回動軸を中心として回動し、前記突起部の外部に突出した位置又は前記突起部の内部に収容された位置を取ることで、前記対応する係止部のそれぞれに対して係止状態又は係止解除状態となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低可搬重量に対応した簡素な構造を有し、製造コストを低減でき、かつ、寸法を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る自動工具交換装置を構成する第1ユニットと第2ユニットとが連結される前の状態を示す側断面図である。
図2】(a)は、第1ユニットと第2ユニットとの連結のために各カム機構を駆動する前の状態を示す側断面図であり、(b)は、第1ユニットと第2ユニットとが連結された状態を示す側断面図である。
図3】第1ユニットと第2ユニットとが連結されるときのピストンと各カム機構の動作を示す図である。
図4】従来の自動工具交換装置を構成する第1ユニットと第2ユニットとの連結動作を示す図であって、(a)は、第1ユニットと第2ユニットとが連結される前の状態を示す側断面図であり、(b)は、第1ユニットと第2ユニットとが連結された状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る自動工具交換装置100は、ロボットアーム(図示略)と工具(図示略)との間に取り付けられるものであり、他端面400bにロボットアームが着脱可能な第1ユニット400と、一端面500aに工具が着脱可能な第2ユニット500とを有する。第1ユニット400と第2ユニット500とは、相互に連結可能である。
【0017】
ロボットアームは、第1ユニット400との間で、エアの給排気を行うことが可能である。ピストン(駆動機構)450は、この給排気に応じて、後述する2つのカム機構460を回動させるための駆動力を生成する。工具は、第2ユニット500を予め取り付けられたものが複数用意され、棚上に配置されている。そして、工具が取り付けられた各第2ユニット500のうち、作業に応じて1つの第2ユニット500が選択され、選択された第2ユニット500と第1ユニット400とを着脱可能に連結することによって、ロボットアームに所定の作業をさせることが可能となっている。
【0018】
第1ユニット400と第2ユニット500との接合面には、電気、空気、油、水等の経路の接続用のコネクタが具備されている。当該コネクタを適正に接続させるために、第1ユニット400と第2ユニット500との位置決めをする必要がある。このため、第2ユニット500は、2つの位置決め用孔560(図1では、1つだけ示す。)を有し、第1ユニット400は、2つの位置決め用孔560のそれぞれに挿入される2本の位置決め用ピン410(図1では、1本だけ示す。)を有する。
【0019】
(第1ユニット400の構成)
図1に示すように、第1ユニット400は、外周部400cが略円柱状に形成されており、他端面400bと反対側の一端面400aの中央部から突出する突起部440を有する。突起部440は、椀型の略円柱状に形成されている。
【0020】
また、第1ユニット400は、シリンダ蓋420、シリンダ部430、シリンダ部430に収容されたピストン(駆動機構)450、突起部440の内部から突起部440の外部に突出可能な2つのカム機構(係止機構)460、及び、ロボットアームとシリンダ部430との間においてエアの供給又は排出を行うためのポート405a,405bを有する。なお、各カム機構460の一部は、突起部440に形成された凹状の収容空間440aに収容されており、ピストン450の一部は、突起部440に形成された略円柱状の収容空間440bに収容されている。
【0021】
ピストン450は、ヘッド部材450a、ヘッド部材450aと接続された下部ピストン(下部出力部)450b、及び、下部ピストン450bに対して揺動可能に連結された上部ピストン(上部出力部)480を有する。
【0022】
下部ピストン450bは、ナット等の締結部材465によって、ヘッド部材450aと一体化されている。下部ピストン450bは、円柱状の摺動部材455内に配置され、摺動部材455の内周面に対して摺動する。下部ピストン450bは、ヘッド部材450aと接続された一端部とは反対側の(上部ピストン480と連結された)他端部に、1つの拡径部470aを有する。
【0023】
上部ピストン480は、下部ピストン450bと同軸上にあり、連結ピン475により下部ピストン450bに対して揺動可能に連結されている。上部ピストン480は、始端側拡幅部480a、終端側拡幅部480b、及び、2つの凹部480cを有する。上部ピストン480の始端部(ヘッド部材450a及び下部ピストン450bに近い側の端部)に始端側拡幅部480aが形成され、上部ピストン480の終端部(ヘッド部材450a及び下部ピストン450bから遠い側の端部)に終端側拡幅部480bが形成され、上部ピストン480の始端部と終端部との間に2つの凹部480cが形成されている。始端側拡幅部480a、終端側拡幅部480b及び2つの凹部480cは、始端部から終端部に向けて、一定の間隔をおいて設けられている。各凹部480cの断面はC型である。
【0024】
各カム機構460は、各凹部480cに挿入される尖り部460a、尖り部460aの反対側に設けられた係合部460b、及び、尖り部460aと係合部460bとの間に設けられた直線部460cを有する。係合部460bは円弧面で構成され、直線部460cは略平坦な面で構成されている。各カム機構460は、突起部440の突出方向と垂直な方向に延びる支持ピン490により、突起部440に支持されている。各カム機構460は、尖り部460aが凹部480cに挿入された状態(係合した状態)で、支持ピン490を中心として回動可能である。カム機構460は、第1ユニット400の周方向に略180°毎に設けられている。2つのカム機構(図1に示す上側及び下側のカム機構)460は、互いに同じ構成である。
【0025】
図1に示すように、各ポート405a,405bは、エアチューブ(図示略)を介してロボットアーム(図示略)に接続されている。これにより、ロボットアームと第1ユニット400との間で、エアの給排気が可能となっている。そして、ピストン450は、各ポート405a,405bへのエアの供給又は各ポート405a,405bからのエアの排出に応じて、第1ユニット400の軸方向に沿って移動可能である。そして、この移動に伴い、各凹部480cに係合したカム機構460が支持ピン490を中心としてそれぞれ回動する。
【0026】
(第2ユニット500の構成)
図1に示すように、第2ユニット500は、外周部500bが第1ユニット400の外周部400cと同じく略円柱状に形成されている。第2ユニット500の一端面500aには、工具(図示略)が着脱可能に取り付けられる。
【0027】
第2ユニット500は、突起部440を挿入可能な孔550、2つのカム機構460に対応する2つのロックピン(係止部)510、及び、位置決め用ピン410を挿入可能な位置決め用孔560を有する。孔550は、突起部440と略同一形状を有する。位置決め用孔560は、位置決め用ピン410と対応する位置に形成されている。
【0028】
(第1ユニット400及び第2ユニット500の連結動作)
以下、図1及び図2を参照しながら、第1ユニット400及び第2ユニット500の連結動作について説明する。
【0029】
まず、図1に示すように、第1ユニット400と第2ユニット500との各外周部400c,500bの位置を相互に合わせる。このとき、ロボットアームから第1ユニット400のシリンダ部430に向けて、ポート405aを介して、エアが供給されている。そして、このエアの供給に伴う圧力(駆動力)によって、ピストン450が、シリンダ蓋420から離れる方向(図1中の白抜き矢印の方向200)に移動する。この移動に伴い、下側のカム機構460は支持ピン490を中心として図1で時計回り(太線矢印の方向300)に回動し、上側のカム機構460は支持ピン490を中心として図1で反時計回りに回動し、2つのカム機構460は対応する収容空間440aにそれぞれ収容される。このとき、直線部460cは、拡径部470a及び始端側拡幅部480aと接触した状態に維持される。
【0030】
図2(a)は、第1ユニット400が図1に示す方向200に移動することにより、突起部440が孔550に挿入され、第2ユニット500の第1ユニット400側の他端面500cが第1ユニット400の一端面400aと接触した状態である。すなわち、図2(a)は、連結のために各カム機構460を駆動する前の状態を示す。
【0031】
その後、突起部440が孔550に挿入された状態で、シリンダ部430からポート405aを介してロボットアームに向けてエアが排出されるとともに、ロボットアームからポート405bを介してシリンダ部430に向けてエアが供給される。このエアの給排気に伴う駆動力に応じて、ピストン450が、図2(b)中の黒塗り矢印の方向(シリンダ蓋420に近づく方向)350に移動する。
【0032】
この移動に伴い、各カム機構460において、直線部460cと始端側拡幅部480aとの接触状態が解除される。さらに、下側のカム機構460が支持ピン490を中心として図2(b)で反時計回り(太線矢印の方向380)に回動し、上側のカム機構460が支持ピン490を中心として図2(b)で時計回りに回動することによって、係合部460bとロックピン510とが当接する。これにより、各カム機構460が対応するロックピン510に対して係止状態となる。
【0033】
これによって、各カム機構460が突起部440の孔550への挿入方向(図1の方向200)と反対方向に移動することが規制されるとともに、第2ユニット500の他端面500cが第1ユニット400の一端面400aと接触することにより、第1ユニット400と第2ユニット500との連結が完了する。
【0034】
(連結時の上部ピストン480と各カム機構460の動作)
図3は、第1ユニット400と第2ユニット500とが連結される時の上部ピストン480と各カム機構460の動作を示す図である。
【0035】
図3に示すように、各カム機構460は、尖り部460aが始端側拡幅部480aと係合すること(凹部480cに配置されること)、及び、直線部460cが拡径部470aと接触することにより、ロックピン510に対する係止解除状態を維持する。このとき、各カム機構460の中心線K40は、下部ピストン450bの中心線K35と略平行である。
【0036】
上部ピストン480は、連結ピン475を中心として、下部ピストン450bに対して揺動する。ここで、下部ピストン450bは、連結ピン475を支持する部分に、切込み底面(係合機構)470bを有する。上部ピストン480の下部ピストン450bに対する揺動角度範囲K30は、切込み底面470bと、上部ピストン480における始端側拡幅部480aの角部485a、485bとの係合により、規制されている。これにより、各カム機構460が係止解除状態の位置から回動を開始し、尖り部460aが終端側拡幅部480bに接触することが確実に行われる。また、各カム機構460が対応するロックピン510に対して係止状態となる際、2つのカム機構460が対応するロックピン510と同時に当接するように、上部ピストン480が連結ピン475を中心として下部ピストン450bに対して揺動する。
【0037】
次に、自動工具交換装置100の使用時の状態について説明する。
【0038】
自動工具交換装置100によると、上部ピストン480が連結ピン475を中心として下部ピストン450bに対して揺動することができる。すなわち、上部ピストン480は、連結ピン475を中心として、収容空間440a側に揺動する。
【0039】
各カム機構460が対応するロックピン510と当接する際、上部ピストン480が連結ピン475を中心として下部ピストン450bに対して揺動可能である。そのため、カム機構460やロックピン510に加工誤差がある場合や、装置100の使用中にカム機構460やロックピン510に摩耗が生じた場合においても、カム機構460とロックピン510との均等な当接・係止状態を確保することができる。
【0040】
具体的には、係止状態にあるカム機構460とロックピン510との間に隙間が生じた場合、ピストン450の作用により上部ピストン480が下方(上部ピストン480から下部ピストン450bに向かう方向)に変位しようとする力によって、当該隙間がなくなり、上部ピストン480の下方への変位が不能な状態となるように、上部ピストン480が連結ピン475を中心として下部ピストン450bに対して揺動可能である。
【0041】
すなわち、本実施形態では、上部ピストン480が下部ピストン450bに対して揺動することにより、カム機構460やロックピン510の加工誤差又は摩耗を補償し、カム機構460とロックピン510との均等な当接・係止状態を確保することができる。つまり、構成部材の加工誤差や摩耗を補償することができ、第1ユニット400と第2ユニット500との適正な連結状態を長期に亘って維持することができる。
【0042】
以上に述べたように、本実施形態によれば、低可搬重量に対応した簡素な構造を有し、製造コストを低減でき、かつ、寸法を小さく抑えることができる。本実施形態に係る自動工具交換装置100は、低負荷用ロボットに好適な構成である。
【0043】
また、各カム機構460のそれぞれを係合する凹部480cが設けられており、各カム機構460と直接接触する上部ピストン480が、下部ピストン450bと一体ではなく下部ピストン450bとは別の部材として、下部ピストン450bと連結されており、下部ピストン450bから分離可能である。このため、上部ピストン480が摩耗等によって交換が必要になった際には、上部ピストン480を下部ピストン450bから分離して交換すればよく、ピストン450全体を交換する必要がない。したがって、上部ピストン480が下部ピストン450bと一体として構成されている場合に比べ、自動工具交換装置100の部品コストを低減できる。
【0044】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0045】
・上記実施形態では、ロボットアームと第1ユニット400との間でエアの給排気を行うことによって、カム機構460を回動させるが、ロボットアームと第1ユニット400との間で液体の供給又は排出を行うことによって、カム機構460を回動させてもよく、或いは、モーター、ソレノイド等を用いた駆動機構によって、カム機構460を回動させてもよい。
・上記実施形態では、第1ユニット400の外周部400cと第2ユニット500の外周部500bとが略円柱状であるが、各外周部の形状は適宜変更可能である。
・上記実施形態では、突起部440が椀型の略円柱状であるが、突起部440の形状は適宜変更可能である。同様に、突起部440を挿入可能な孔550の形状も、突起部440の形状に応じて適宜変更してよい。
【符号の説明】
【0046】
100 自動工具交換装置
400 第1ユニット
405a,405b ポート
410 位置決め用ピン
420 シリンダ蓋
430 シリンダ部
440 突起部
440a,440b 収容空間
450 ピストン(駆動機構)
450a ヘッド部材
450b 下部ピストン(下部出力部)
455 摺動部材
460 カム機構(係止機構)
460a 尖り部
460b 係合部
460c 直線部
465 締結部材
470a 拡径部
470b 切込み底面(係合機構)
475 連結ピン
480 上部ピストン(上部出力部)
480a 始端側拡幅部
480b 終端側拡幅部
480c 凹部
485a,485b 角部
490 支持ピン
500 第2ユニット
510 ロックピン(係止部)
550 孔
560 位置決め用孔
K30 揺動角度範囲
K35,K40 中心線
図1
図2
図3
図4