(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベース部材または前記装着面の少なくとも一方に、円筒状または円柱状の複数の突起部が二次元的に配列して立設されており、前記凸部は前記突起部により構成され、前記凹部は隣接する前記突起部の周囲の間隙により構成されている請求項3に記載の逆止弁。
弁座と、前記弁座に対して接近または離間する方向に直線的に往復揺動して前記弁座を開閉自在に閉止する弁体と、を備えるリフト式の逆止弁における前記弁体に着脱可能に装着して用いられる封止体であって、
前記弁体に着脱可能に装着されるベース部材と、前記弁座と前記弁体とを気密または液密に封止するパッキン部材と、が一体化されたカートリッジ構造をなしており、
前記弁体と前記ベース部材との境界面を含む位置に、前記弁体と前記ベース部材とが離間して対向する分離開始部が設けられており、前記分離開始部に治工具を挿入することにより前記ベース部材が前記弁体から分離されることを特徴とする、逆止弁用封止体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各図面において、対応する構成要素には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。本明細書では上下方向を規定して説明する場合があるが、これは構成要素の相対関係を説明するために便宜的に設定するものであり、本発明にかかる製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0013】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態の逆止弁100の閉状態を示す縦断面図である。なお、弁体30の弁軸31に沿って切った逆止弁100の断面を縦断面図と呼称する。
図2は、逆止弁100の開状態を示す縦断面図である。弁体30は流体Fに押し上げられて弁座20から離間している。
図3(a)は、逆止弁100における閉状態の弁体30の近傍を示す拡大図であり、
図3(b)は弁体30の斜視図である。
図4(a)は弁体30の斜視図であり、
図4(b)は封止体10の斜視図である。
【0014】
はじめに、本実施形態の逆止弁100および封止体10の概要について説明する。
【0015】
本実施形態の逆止弁100はリフト式であり、弁座20と、この弁座20に対して接近または離間する方向に直線的に往復揺動して弁座20を開閉自在に閉止する弁体30と、を備えている。弁体30は、弁座20と弁体30とを気密または液密に封止する封止体10を備えている。封止体10は、弁体30に着脱可能に装着されるベース部材12と、弁座20と弁体30とを気密または液密に封止するパッキン部材14と、が一体化されたカートリッジ構造をなしている。
【0016】
すなわち、本実施形態の封止体10は、リフト式の逆止弁100における弁体30に着脱可能に装着して用いられる逆止弁用封止体である。逆止弁100は、上述のように弁座20と、この弁座20に対して接近または離間する方向に直線的に往復揺動して弁座20を開閉自在に閉止する弁体30と、を備えている。そして本実施形態の封止体10は、弁体30に着脱可能に装着されるベース部材12と、弁座20と弁体30とを気密または液密に封止するパッキン部材14と、が一体化されたカートリッジ構造をなしている。
【0017】
ここで、封止体10がカートリッジ構造をなすとは、それぞれ必要な機能を有するベース部材12およびパッキン部材14が封止体10として一体に構成され、ベース部材12およびパッキン部材14がまとめて交換可能であることをいう。
【0018】
次に、本実施形態について詳細に説明する。
【0019】
逆止弁100は、弁座20に対して弁体30が接近または離間する方向に直線的に往復揺動するリフト式の弁である。逆止弁100により逆流が規制される流体Fは、水等の液体または空気等の気体である。
図1に示す閉状態で弁体30はバネ体22に付勢されて弁座20に押し付けられており、本実施形態の逆止弁100は、いわゆるスモレンスキ式である。バネ体22による付勢力により、逆止弁100は高い止水性を得ることができる。本実施形態の逆止弁100は、いわゆるフート弁として揚送ポンプ(図示せず)の一次側に用いることにより、止水性と逆流防止機能を活用して、揚水管における落水を良好に防止することができる。
【0020】
逆止弁100は、液体または気体を流通させる流路に設けられ、弁体30の一次側と二次側との差圧が所定の最低作動圧力(クラッキング圧)を超えているときに、
図2に示すように弁体30は開状態となって流体Fを流通させる。弁体30の一次側と二次側との差圧が負または最低作動圧力以下となった場合、
図1に示すように弁体30は閉状態となって流体Fの流通は遮断される。
【0021】
逆止弁100は、弁座20および弁体30を収容する弁箱50を備えている。弁箱50は、流体Fが流入する一次側弁筒51、流体Fが流出する二次側弁筒52、および弁体30の弁軸31を保持するキャップ部53を備えている。一次側弁筒51には一次側鍔部54が設けられ、二次側弁筒52には二次側鍔部55が設けられており、配管類(図示せず)に対して弁箱50はネジなどの緊締具(図示せず)を用いて固定される。
【0022】
キャップ部53は弁箱50に対して着脱可能に装着されて弁体30の背後側を封止する。キャップ部53は弁箱50に対してヘルール継手56によって解除可能に締結されている。ヘルール継手56を解除してキャップ部53を弁箱50から取り外すことにより、弁体30やバネ体22の清掃や交換が可能となる。キャップ部53の略中央には直筒部57が立設されている。直筒部57は筒状をなし、弁体30の弁軸31を摺動可能に嵌合させるための凹部を有している。本実施形態の弁軸31は非円形の横断面を有し、直筒部57の凹部の横断面は弁軸31に対応する非円形をなしている。これにより、弁軸31は直筒部57に対して回転することなく軸方向に進退移動する。直筒部57の周囲にはバネ体22が装着されており、弁体30を弁座20に向けて付勢する。
【0023】
逆止弁100における流体Fの流路方向は特に限定されず、一次側弁筒51と二次側弁筒52とが一直線状をなすストレート型でもよく、または一次側弁筒51と二次側弁筒52とが互いに交差するアングル型でもよい。
【0024】
以下、本実施形態ではアングル型である逆止弁100を例示する。一次側弁筒51と二次側弁筒52との交差角度は特に限定されないが、本実施形態の逆止弁100においては直角である。これにより、弁体30に向かって流入する流体Fの流入方向D1と弁体30を通過して二次側弁筒52に向かう流体Fの通過方向D2とは互いに交差し、流体Fの流路は屈曲する。
【0025】
一次側弁筒51のうち弁箱50の内部に位置する内側の端面が、逆止弁100における弁座20を構成している。本実施形態の弁座20は、一次側弁筒51の軸心方向(
図1における上下方向)に対して斜めに傾斜している。
図2に示すように、弁座20のうち二次側弁筒52に近接する側、すなわち屈曲する流路の内側が弁箱50に深い位置に突出しており、二次側弁筒52から遠い側、すなわち屈曲する流路の外側が弁箱50に対して浅い位置に後退している。弁座20は平坦な傾斜面をなしている。一次側弁筒51の軸心に直交する横断面に対して、弁座20は15度以上かつ22.5度以下の角度で交差している。以下、弁座20および弁体30のうち、屈曲する流路の内側を前縁側と呼称し、屈曲する流路の外側を後縁側と呼称する場合がある。
【0026】
図3(a)に示すように、弁軸31は、弁体30の背面30cより起立して一体形成されている。弁体30および弁軸31は、たとえばポリ塩化ビニルなどの耐食性の合成樹脂材料で作成することができる。
図1に示す閉状態および
図2に示す開状態で、弁軸31の周囲に装着されたバネ体22は弁体30の背面30cを弾力的に付勢している。背面30cは弁軸31の軸心方向(
図3(a)における上下方向)に対して直交している。
【0027】
弁体30は、封止体10が装着される装着面32を有している。弁体30のうち弁座20に対向する前面が装着面32にあたる。装着面32は、背面30cに対して斜めに傾斜した平面状をなしている。弁体30の前縁側にあたる前端部30aは、後縁側にあたる後端部30bよりも薄肉に形成されている。
【0028】
装着面32には封止体10が設けられている。封止体10は、ベース部材12の一方面にパッキン部材14が積層されて一体に構成されている。パッキン部材14とベース部材12とは、接着剤や両面テープなどの粘着体により接合されている。接着剤としては、たとえばアクリル樹脂エマルジョン接着剤やエチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤などの耐水性の合成系接着剤を用いることができる。また、両面テープとしては、シート基材の両面にアクリル系粘着剤などの耐水性の合成樹脂系粘着剤が塗布されたものを用いることができる。ベース部材12の他方面(上面13:
図4(b)参照)には凸部16が突出して形成されている。
【0029】
パッキン部材14は、逆止弁100の閉状態で弁体30と弁座20とで押圧されて弁座20を止水する部材である。本実施形態のパッキン部材14は、独立気泡の発泡樹脂材料で作成されたシート体である。パッキン部材14は平坦で均一な厚さを有している。パッキン部材14が発泡樹脂材料で作成されていることで、変形性がよく弁座20を良好に止水する。また、パッキン部材14を構成する発泡樹脂材料が独立気泡を有し連続気泡を実質的に有していないことにより、パッキン部材14の内部を通じて逆止弁100の一次側と二次側とが互いに連通することがなく水密性に優れる。
【0030】
封止体10は、パッキン部材14が弁座20と平行になるように弁体30に取り付けられている。本実施形態の封止体10は、ベース部材12およびパッキン部材14がそれぞれ平板状をなし、封止体10は全体として弁座20と平行に配置されている。そして、弁体30の装着面32も弁座20と平行であり、流入する流体Fに対して斜めに傾斜している。これにより、封止体10は、流体Fを流入方向D1から通過方向D2に転向させる転向面として機能する。逆止弁100は、封止体10が斜めに傾斜していることで、一次側弁筒51を通じて弁箱50に流入する流体Fの流動方向を二次側弁筒52に向かって滑らかに転向させることができる。これにより逆止弁100の圧力損失(損失水頭)を低減することができる。
【0031】
ベース部材12は、封止体10を弁体30の装着面32に対して着脱可能に装着する部材である。本実施形態ではベース部材12と弁体30とが凹凸嵌合する態様を例示する。
図4(a)および
図4(b)に示すように、ベース部材12および装着面32には、互いに凹凸嵌合する凹部34または凸部16がそれぞれ形成されている。より具体的には、ベース部材12の上面13に凸部16が突出して形成され、弁体30の装着面32に凹部34が形成されている。ベース部材12の上面13を弁体30の装着面32に合わせるようにして、ベース部材12は弁体30に取り付けられる。凸部16の突出方向は上面13の法線方向である。
【0032】
ベース部材12と弁体30とが凹凸嵌合することで、長期間に亘って封止体10を使用してパッキン部材14が損耗した場合でも、ベース部材12を弁体30から確実に取り外して封止体10を廃棄することができる。一方、封止体10を装着面32に対して接着剤で貼り付けて固定する場合には、封止体10を装着面32から取り外すことが困難であり、パッキン部材14が損耗した場合には弁体30の全体を廃棄して交換する必要がある。本実施形態のように封止体10をカートリッジ構造として弁体30に対して凹凸嵌合させて着脱可能とすることで、廃棄する部材を低減することができる。
【0033】
図3(a)に示すように、弁座20および弁体30の装着面32は、弁体30の揺動方向(同図の上下方向)に対して傾斜している。弁座20は楕円の環状をなし、弁体30の装着面32は楕円形状をなしている。そしてパッキン部材14は、弁体30の揺動方向に向かってベース部材12から起立して形成された斜筒状をなしている。斜筒状とは、円柱形状をその軸に対して傾斜する平行な2枚の平面で切断した形状である。すなわちパッキン部材14は、ベース部材12の厚み方向ではなく、弁体30の揺動方向と平行に立ち上がっている。これにより、パッキン部材14は、弁体30の揺動方向に見た厚み寸法が均一である。閉状態の逆止弁100で、弁体30はバネ体22から揺動方向に付勢力を受け、パッキン部材14は弁座20からその反力を受ける。このとき、パッキン部材14が弁体30の揺動方向と平行に立ち上がっていることで、弁座20から受ける反力がパッキン部材14の周囲の全体に対して均一に負荷され、パッキン部材14の止水性が良好となる。
【0034】
したがって、本実施形態の逆止弁100においては、パッキン部材14の立ち上がり方向が一次側弁筒51の軸心方向と一致するように封止体10の向きを合わせて弁体30に装着する必要がある。このため、
図4(a)、
図4(b)を参照して後述するように、ベース部材12に分離開始部42bを形成し、弁体30に分離開始部42aを形成して、分離開始部42aおよび分離開始部42bを一致させてベース部材12を弁体30に装着するとよい。
【0035】
また、本実施形態の逆止弁100では、弁座20および封止体10が流体Fに対して斜めに傾斜しており、封止体10は流体Fを転向させる。このため、
図2に示す開状態で、封止体10はパッキン部材14の表面(
図2における下面)に沿って流体Fから剪断力を受ける。ベース部材12の凸部16と弁体30の凹部34とが凹凸嵌合していることで、この剪断力によって封止体10が装着面32に沿ってずれることが防止される。
【0036】
図4(a)および
図4(b)に示すように、弁体30およびベース部材12には、複数の凹部34および凸部16がそれぞれ二次元的に配列して形成されている。これにより、上記の剪断力を複数の凸部16で分散して受け止めることができるため、封止体10が装着面32に沿ってずれることが更に良好に防止される。凹部34および凸部16の具体的な配列態様は特に限定されない。本実施形態では格子状に整列して配列された態様を例示するが、これに代えて、凹部34および凸部16は千鳥状に配列されていてもよい。また、凹部34と凸部16とが対応する位置に形成されているかぎり、不規則なパターンに配置されていてもよい。
【0037】
本実施形態の凹凸嵌合構造について更に詳細に説明する。ベース部材12の上面13または弁体30の装着面32の少なくとも一方には、円筒状または円柱状の複数の突起部17、35が二次元的に配列して立設されている。本実施形態では、ベース部材12の上面13および弁体30の装着面32の両方に、それぞれ複数の突起部17、35が形成されている態様を例示する。なお、後述する第四実施形態のように、ベース部材12の上面13または弁体30の装着面32の一方には単数の突起部(符号略)を形成してもよい。本実施形態の凸部16は突起部17により構成されている。凹部34は、隣接する突起部35の周囲の間隙により構成されている。言い換えると、隣接する突起部35どうしの間隙の内接円は、凸部16を嵌合させる凹部34として機能する。また、装着面32には、複数の突起部35を取り囲む領域に矩形凹部36が削成されている。ベース部材12の凸部16を嵌合させる凹部34は、この矩形凹部36の周壁と突起部35との間隙にも形成されている。矩形凹部36は、装着面32に形成された浅底の彫り込み部である。
【0038】
凹部34は凸部16よりも僅かに小さく形成され、凸部16を圧入して嵌合させる。これにより、ベース部材12と弁体30とを強固に固定することができる。凹部34および凸部16は、ベース部材12および弁体30とそれぞれ一材一体形成されている。このため、ベース部材12および弁体30には高い機械強度を得ることができ、凸部16の圧入時に凸部16や突起部35を破損することがない。ベース部材12および弁体30は、切削加工または射出成形により作成することができる。
【0039】
ベース部材12に形成された突起部17(凸部16)は中実の円柱状をなし、装着面32の矩形凹部36の内側に形成された突起部35は、円形凹部35aを有する中空の円筒状をなしている。このように、突起部17(凸部16)または突起部35の一方を中空の円筒状とすることで、突起部17(凸部16)を凹部34に圧入するにあたり、円筒状の当該一方(本実施形態では突起部35)を微小に変形させることができる。このため、高い嵌合力を得ることができる。
【0040】
本実施形態では、矩形凹部36や円筒状または円柱状の突起部17、35といった単純形状で凹凸嵌合が実現されるため、高い加工精度で容易にベース部材12および弁体30を作成することができる。
【0041】
凸部16を凹部34に圧入してベース部材12と弁体30とを高い嵌合力で固定することに伴い、本実施形態のベース部材12および弁体30には互いを分離するための分離開始部42が設けられている。
【0042】
具体的には、
図3(b)に示すように、弁体30とベース部材12との境界面40を含む位置に、弁体30とベース部材12とが離間して対向する分離開始部42が設けられている。分離開始部42に治工具110を挿入することにより、ベース部材12は弁体30から分離される。
【0043】
境界面40は、すなわち弁体30の装着面32およびベース部材12の上面13である。境界面40と接続された位置に分離開始部42を設けることで、治工具110で分離開始部42に負荷する力によってベース部材12と弁体30とを分離することができる。
【0044】
治工具110としては、マイナスドライバーなどの汎用工具を用いてもよく、または分離開始部42に適合する形状に形成された専用工具を用いてもよい。
【0045】
図4(a)に示すように、弁体30の装着面32には前端部30aに近接する側の周縁に一方の分離開始部42aが形成されている。分離開始部42aは、装着面32のうち周縁を含む一部領域に、弁体30の厚み方向に浅く彫り込み形成された凹部である。また、
図4(b)に示すように、ベース部材12の上面13の周縁に、他方の分離開始部42bが形成されている。分離開始部42bは、上面13のうち周縁を含む一部領域に、ベース部材12の厚み方向に浅く彫り込んで形成された凹部である。言い換えると、分離開始部42aおよび42bは、弁体30の装着面32およびベース部材12の上面13の周縁から、それぞれ径方向の内側に向かって入り込む凹部である。
【0046】
ベース部材12を弁体30に嵌合させた状態で、分離開始部42aと分離開始部42bとの少なくとも一部同士が対向する。これにより、治工具110を分離開始部42に挿入して、梃子の原理によりベース部材12と弁体30とをこじ開けるようにして分離することができる。
【0047】
また、上述したように本実施形態の封止体10は、パッキン部材14の立ち上がり方向が一次側弁筒51の軸心方向と一致するように、封止体10を所定の向きに合わせて弁体30に装着する。分離開始部42aおよび分離開始部42bは、封止体10と弁体30との向き合わせの指標として機能する。
【0048】
なお、本実施形態ではベース部材12と弁体30の両方に分離開始部42a、42bを形成することを例示するが、これに限られない。ベース部材12または弁体30の一方(たとえば弁体30)のみに分離開始部42を形成してもよい。この場合、封止体10と弁体30との向き合わせをするための指標を、弁体30およびベース部材12の周面などに別途設けるとよい。また、本実施形態では、ベース部材12および弁体30の周面から径方向の内側に向かう凹状の分離開始部42を例示したが、これに限られない。分離開始部42は、ベース部材12および弁体30の周面から径方向の外側に向かって突出する一対の対向する突片でもよい。かかる一対の突片の間に治工具110を挿入することでも、ベース部材12と弁体30とを分離することができる。
【0049】
また、本実施形態では、複数個の突起部35を矩形状に二次元的に配列し、これらを取り囲む矩形凹部36を矩形に形成することを例示したが、本発明はこれに限られない。複数個の突起部35を、たとえば三角形状や六角形状に配置してもよい。
【0050】
以下、ベース部材12と弁体30との凹凸嵌合構造が異なる他の実施形態について説明する。第一実施形態の逆止弁100と重複する説明は適宜省略する。
【0051】
<第二実施形態>
図5(a)は第二実施形態の弁体30および封止体10の縦断面図である。
図5(b)は
図5(a)の拡大図である。
図6(a)は第二実施形態の弁体30の斜視図である。
図6(b)は第二実施形態の封止体10の斜視図である。
【0052】
本実施形態の100においては、凸部16が永久磁石18で構成されており、この永久磁石18と磁気吸着する磁性体37が凹部34に配置されている点で第一実施形態と相違する。磁性体37は、凹部34の底面39に固着されている。
【0053】
永久磁石18は円柱状をなし、その下端側の一部がベース部材12に埋設されている。具体的には、ベース部材12に浅い凹部を形成し、かかる凹部に永久磁石18を挿入するとともに、接着剤を用いて永久磁石18とベース部材12とを固着するとよい。または、永久磁石18の下端側にネジ溝を形成し、ベース部材12に対して螺合固定してもよい。
【0054】
永久磁石18の上端側はベース部材12の上面13よりも突出して凸部16を構成している。永久磁石18の突出方向は上面13の法線方向である。本実施形態では、
図6(b)に示すように3個の永久磁石18がベース部材12の上面13に約120度間隔で等間隔に離間して環状に配置されている。永久磁石18としては、ネオジム磁石をニッケルメッキなどの防錆処理したものを用いることができる。
【0055】
図6(a)に示すように、弁体30の装着面32には、3個の永久磁石18に対応する位置に凹部34が形成されている。また、
図5(b)に示すように、凹部34の内部に磁性体37が固着されている。磁性体37は、鉄などの磁性金属または永久磁石であり、永久磁石18と磁気吸着する。磁性体37に永久磁石を用いる場合は、永久磁石18と同様にネオジム磁石をニッケルメッキなどの防錆処理したものを用いることができ、永久磁石18と磁性体37とは異なる磁極が対向するように配置する。磁性体37の厚み寸法は凹部34の深さ寸法よりも小さい。このため、凹部34の底面39に磁性体37を固着した状態で、凹部34は凹状に形成されている。かかる凹部34に、ベース部材12の上面13から突出する永久磁石18(凸部16)が嵌合する。
【0056】
本実施形態の逆止弁100によれば、凸部16が凹部34に凹凸嵌合するため、流体F(
図2参照)から受ける剪断力に起因して封止体10が装着面32に沿ってずれることが防止される。さらに、永久磁石18と磁性体37とが磁気吸着するため、ベース部材12と弁体30との着脱が確実かつ容易に行われる。
【0057】
本実施形態の弁体30およびベース部材12においても、境界面40(弁体30の装着面32およびベース部材12の上面13)を含む位置に分離開始部42が設けられて弁体30とベース部材12とは局所的に離間して対向している。このため、永久磁石18と磁性体37との磁気吸着が強力であっても、治工具110(
図3(b)参照)を分離開始部42に挿入するなどしてベース部材12と弁体30とを分離することが可能である。
【0058】
本実施形態の封止体10は、斜筒状ではなく、装着面32に対して面直方向に立ち上がる楕円形の板状である点で第一実施形態(
図3(a)参照)と相違する。すなわち、ベース部材12およびパッキン部材14は、装着面32の面直方向にみた厚み寸法が均一である。
【0059】
<第三実施形態>
図7(a)は第三実施形態の弁体30および封止体10の縦断面図である。
図7(b)は
図7(a)の拡大図である。ただし、
図7(a)および
図7(b)においては、シート材料38と強弱両面シート44の厚み寸法を強調して図示している。
図8(a)は第三実施形態の弁体30の斜視図である。
図8(b)は第三実施形態の封止体10の斜視図である。便宜上、
図8(a)ではシート材料38を凹部34の底面39から分離して図示し、
図8(b)では強弱両面シート44を凸部16の頂面19から分離して図示している。シート材料38および強弱両面シート44は、破線矢印で示すように凹部34の底面39および凸部16の頂面19にそれぞれ接合されている。
【0060】
本実施形態の凸部16は板状をなし、1個の凸部16がベース部材12の上面13に突出形成されている点で第一実施形態と相違する。凸部16の頂面19は平坦に形成されている。凹部34は、凸部16に対応する形状にて弁体30の装着面32に浅く彫り込み形成されている。
【0061】
凹部34または凸部16は、ベース部材12および装着面32の略全体に形成されている。略全体とは、少なくとも50%以上の面積であることを意味する。
【0062】
凸部16と凹部34とは凹凸嵌合するだけでなく、強弱両面シート44によって互いに接合されている。すなわち、凸部16の頂面19または凹部34の底面39の少なくとも一方に、強弱両面シート44の強粘着面45が貼付されている。具体的には、凸部16の頂面19に強弱両面シート44の強粘着面45が貼付されている。そして、強弱両面シート44の弱粘着面46は、凹部34の底面39に粘着して接合される。
【0063】
強弱両面シート44としては、予めシート状に形成された粘着材を用いてもよく、またはテープ状に形成された、いわゆる両面テープを用いてもよい。なお、凸部16の頂面19と凹部34の底面39の両方にそれぞれ強弱両面シート44を貼付し、各強弱両面シート44の弱粘着面46同士を互いに接合してもよい。
【0064】
強弱両面シート44の強粘着面45は弱粘着面46よりも単位面積あたりの粘着力が強く、強粘着面45は凸部16の頂面19に対して実質的に剥離不可に接合されている。そして、弱粘着面46は剥離可能であり、かかる弱粘着面46を用いて凸部16と凹部34とを接合する。
【0065】
弁体30とベース部材12とは、境界面40(弁体30の装着面32およびベース部材12の上面13)を含む位置に分離開始部42が設けられて局所的に離間して対向している。これにより、封止体10を長期間使用してパッキン部材14が損耗した場合などには、分離開始部42に治工具110(
図3(b)参照)を挿入してベース部材12を弁体30から引き剥がすことができる。
【0066】
本実施形態の凹部34は、全体として略矩形状をなし、かつ拡張凹部34aが部分的に形成された非回転対称形に形成されている。凸部16は、凹部34に対応する嵌め合い形状をなし、拡張凸部16aが部分的に形成された非回転対称形の略矩形状に形成されている。これにより、封止体10は、拡張凸部16aと拡張凹部34aとが嵌合する向きでのみ弁体30に対して装着される。このため、上述のように封止体10を所定の向きに合わせて弁体30に装着するにあたり、作業者が過って異なる向きで封止体10を弁体30に装着する不具合が防止される。
【0067】
強弱両面シート44は、拡張凸部16aを含めて凸部16の頂面19の全体に貼付されていてもよく、または凸部16のうち拡張凸部16aを除く領域に貼付されていてもよい。
【0068】
強弱両面シート44の強粘着面45を弁体30の凹部34に良好に接合するため、凹部34の底面39には研磨処理を施すか、または平滑な他部材を装着するとよい。本実施形態の逆止弁100では、凸部16の頂面19または凹部34の底面39のうち、強弱両面シート44が貼付されていない他方(本実施形態では凹部34の底面39)に、この底面39よりも平滑なシート材料38が被着されている。シート材料38は十分な接着強度で凹部34の底面39に接合されている。
【0069】
シート材料38は、弁体30と同種または異種の樹脂材料で作成することができる。一例として、ポリ塩化ビニルやポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性の合成樹脂材料を例示することができる。シート材料38の厚み寸法は凹部34の深さ寸法よりも小さく、好ましくは凹部34の深さ寸法の二分の一未満とするとよい。これにより凹部34は、凸部16を嵌合させるための十分な深さを有することができる。
【0070】
弁体30に凹部34を形成するにあたっては、切削加工による切削痕や射出成形による金型や突出しピン等の痕跡が底面39に僅かに形成されることが一般的であり、底面39に高い平滑性を得ることは困難である。これに対し、平坦なシート状に成形されるシート材料38は表面を容易に平滑に成形することができる。このため、本実施形態のように底面39にシート材料38を被着することで、強弱両面シート44の弱粘着面46と弁体30との密着性を容易に向上することができる。
【0071】
本実施形態で用いるシート材料38は略矩形状をなし、凹部34の拡張凹部34aに対応する拡張部を有していない。凹部34の底面39に接合されたシート材料38を弁体30から剥離する場合に、拡張凹部34aから治工具110(
図3(b)参照)をシート材料38と底面39との間に挿入することができる。これにより、弁体30をメンテナンスする際にシート材料38を容易に交換することができる。
【0072】
<第四実施形態>
図9(a)は第四実施形態の弁体30の斜視図である。
図9(b)は第四実施形態の封止体10の斜視図である。
図10は第四実施形態の弁体30および封止体10の縦断面図である。
【0073】
本実施形態の逆止弁100は、ベース部材12または装着面32の一方に、円筒状または円柱状の複数の突起部が二次元的に配列して立設され、他方には単数の突起部が形成されている点で第一実施形態と相違する。具体的には、弁体30の装着面32の略中央に一個の突起部35が形成され、封止体10のベース部材12の上面13には4個の凸部16(突起部17)が矩形格子状に配置されている。
【0074】
装着面32に形成された突起部35は、円形凹部35aを有する中空の円筒状をなしている。また、弁体30の装着面32には、突起部35の周囲を取り囲むようにして矩形凹部36が形成されている。矩形凹部36の四隅と突起部35との間に、凹部34がそれぞれ形成されている。言い換えると、弁体30の装着面32には、1個の突起部35の周囲に4個の凹部34が矩形格子状に形成されている。
【0075】
封止体10の4個の凸部16(突起部17)は、装着面32の4個の凹部34にそれぞれ嵌合する。本実施形態のように、ベース部材12または装着面32の一方の突起部17を単数とすることで、高い加工精度で弁体30を作成することができ、凸部16と突起部17とを良好に密着して嵌合させることができる。
【0076】
第四実施形態では、突起部35の周囲かつ矩形凹部36の四隅に4個の凹部34を形成することを例示したが、本発明はこれに限られない。矩形凹部36に代えて、三角形または六角形などの非矩形の多角形状の凹部としてもよい。
【0077】
図10に示すように、本実施形態のパッキン部材14は、略中央が厚く膨出し、周縁が薄肉に形成されている点で第一実施形態と相違する。パッキン部材14の略中央の膨出部15は、より具体的には封止体10における後縁側、すなわち斜め傾斜する弁座20が流入側に浅く後退している方の側(
図10における右側)に形成されている。膨出部15は弁座20に対して三次元的に密着してこれを塞栓するため、本実施形態の逆止弁100によれば良好な止水性が得られる。パッキン部材14の略中央に膨出部15を形成することで、流体F(
図1参照)は膨出部15で分流され、楕円の環状の弁座20に沿って弁体30に押圧力を付与する。このため、弁体30に不測の横力が発生せず弁軸31に沿って真っ直ぐに弁体30をリフトさせることができる。また、膨出部15をパッキン部材14の中央よりも後縁側に形成することで、屈曲する流路の外側で流体F(
図2参照)がより減速されて弁体30に負荷される高い圧力を膨出部15で良好に受け止めることができる。
【0078】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0079】
上述の実施形態ではアングル型の逆止弁100を例示したが、本発明はこれに限られない。逆止弁100はストレート型でもよい。ストレート型の場合、弁座20、封止体10および弁体30の装着面32を、流体Fの流入側にあたる一次側弁筒51の軸心に対して直交して正対するように形成するとよい。かかる場合、パッキン部材14の形状は、斜筒状ではなくベース部材12の厚み方向に起立する直筒状とするとよい。そして、ベース部材12と弁体30との凹凸嵌合構造および分離開始部42については、上述の実施形態で説明したものを採用することができる。
【0080】
また、上記各実施形態では封止体10が平坦な板状である態様を例示したが、本発明はこれに限られない。逆止弁100がアングル型である場合、封止体10は、弁座20から離間する方向に向かって凸形状をなす湾曲形状でもよい。
【0081】
第三実施形態では板状の凸部16を凹部34に凹凸嵌合させるとともに強弱両面シート44により凸部16の頂面19と凹部34の底面39とを粘着して接合することを説明したが、これに限られない。強弱両面シート44の使用は任意であり、凸部16と凹部34との凹凸嵌合のみで封止体10を弁体30に装着してもよい。逆に、第一実施形態の複数の凸部16の頂面にそれぞれ強弱両面シートの強粘着面45(
図8(b)参照)を被着し、弁体30の凹部34に対して弱粘着面46(同上)を粘着させてもよい。
【0082】
本発明の封止体10および逆止弁100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0083】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)弁座と、前記弁座に対して接近または離間する方向に直線的に往復揺動して前記弁座を開閉自在に閉止する弁体と、を備えるリフト式の逆止弁であって、前記弁体は、前記弁座と前記弁体とを気密または液密に封止する封止体を備え、前記封止体が、前記弁体に着脱可能に装着されるベース部材と、前記弁座と前記弁体とを気密または液密に封止するパッキン部材と、が一体化されたカートリッジ構造をなしていることを特徴とする逆止弁。
(2)前記弁体と前記ベース部材との境界面を含む位置に、前記弁体と前記ベース部材とが離間して対向する分離開始部が設けられており、前記分離開始部に治工具を挿入することにより前記ベース部材が前記弁体から分離される上記(1)に記載の逆止弁。
(3)前記弁体は、前記封止体が装着される装着面を有し、前記ベース部材および前記装着面に、互いに凹凸嵌合する凹部または凸部がそれぞれ形成されている上記(1)または(2)に記載の逆止弁。
(4)前記凹部または前記凸部が、前記ベース部材および前記装着面の略全体に形成されている上記(3)に記載の逆止弁。
(5)複数の前記凹部および前記凸部がそれぞれ二次元的に配列して形成されている上記(3)または(4)に記載の逆止弁。
(6)前記ベース部材または前記装着面の少なくとも一方に、円筒状または円柱状の複数の突起部が二次元的に配列して立設されており、前記凸部は前記突起部により構成され、前記凹部は隣接する前記突起部の周囲の間隙により構成されている上記(5)に記載の逆止弁。
(7)前記凹部および前記凸部が、前記ベース部材および前記弁体とそれぞれ一材一体形成されている上記(3)から(6)のいずれか一項に記載の逆止弁。
(8)前記パッキン部材が、独立気泡の発泡樹脂材料で作成されたシート体である上記(3)から(7)のいずれか一項に記載の逆止弁。
(9)前記弁座および前記弁体の前記装着面は、前記弁体の揺動方向に対して傾斜しており、前記パッキン部材は、前記弁体の前記揺動方向に向かって前記ベース部材から起立して形成された斜筒状をなしており、前記凹部および前記凸部が非回転対称形に形成されている上記(8)に記載の逆止弁。
(10)前記凸部が永久磁石で構成されており、前記永久磁石と磁気吸着する磁性体が前記凹部に配置されている上記(3)から(9)のいずれか一項に記載の逆止弁。
(11)前記凸部の頂面または前記凹部の底面の少なくとも一方に、強弱両面シートの強粘着面が貼付されている上記(3)から(9)のいずれか一項に記載の逆止弁。
(12)前記凸部の前記頂面または前記凹部の前記底面の他方に、前記底面よりも平滑なシート材料が被着されている上記(11)に記載の逆止弁。
(13)弁座と、前記弁座に対して接近または離間する方向に直線的に往復揺動して前記弁座を開閉自在に閉止する弁体と、を備えるリフト式の逆止弁における前記弁体に着脱可能に装着して用いられる封止体であって、前記弁体に着脱可能に装着されるベース部材と、前記弁座と前記弁体とを気密または液密に封止するパッキン部材と、が一体化されたカートリッジ構造をなしていることを特徴とする、逆止弁用封止体。