【実施例】
【0018】
(実施例1)
本発明に係る壁固定具の実施例1を
図1〜
図5において、説明する。
図1(a)に示すように、浴室における防水パン1の周縁に、複数の壁パネル2(本実施例1では2つの壁パネル)が、防水パン1の周縁に設けられた立設部3(
図1(b)参照)に位置決めされて固定される。
【0019】
壁パネル2は、
図1(c)に示すように、石膏ボード6と、石膏ボード6の浴室側の面および上面を覆う薄い金属板7(金属製の化粧板)と、壁パネル2の側端部に配置された中空状の柱材8と、から構成されている。
【0020】
柱材8は、
図1(c)にその水平断面を示すが、水平断面が矩形状に形成され中空部9を有する。柱材8は、石膏ボード6の側端に配置された状態で、壁パネル2の金属板7の側端部11に巻かれるようにして固定されている。
【0021】
本発明に係る壁固定具14は、壁パネル2を防水パン1の周縁に設けられた立設部3に位置決めして固定するものである。防水パン1の立設部3の前面には、壁パネル2を、立設部3の長手方向における所定の位置に取り付けるために、壁固定具14の固定位置の目印となる上下方向のケガキ線(図示せず)が付されている。
【0022】
壁固定具14は、その構成を
図2〜5に示すが、防水パン1の周縁に設けられた立設部3に引っ掛けて固定される床嵌合部15と、壁パネル2の柱材8の後面壁10を挟み込んで保持する挟持部16と、床嵌合部15と挟持部16を繋ぐ連結部17と、を備えている。
【0023】
床嵌合部15は、
図2(b)および
図3(b)に示すように、後壁21、頂壁22および前壁23を備えており、垂直断面で略∩型に形成されている。前壁23は、防水パン1の立設部3の前面に当接し、その横幅方向の中央において頂壁22から下方に延びるスリット24を備え、正面視して全体として略U字型に形成されている(
図2(a)参照)。
【0024】
このスリット24は、その中心又はその側縁に、防水パン1の立設部3に付されたケガキ線に合わせることで、立設部3に壁固定具14を引っ掛けて固定する位置を決めることができる。従って、スリット24の横幅は、少なくともスリット24を通してケガキ線を正面から確認できる程度の横幅が必要である。
【0025】
床嵌合部15の後壁21は、立設部3の後面に当接し、抜け止め部25が形成されている。より詳細には、抜け止め部25は、
図2(b)、
図3(b)に示すように、後壁21の下端部から、立設部3に向かって上方に傾斜し、その上部26が尖った略三角形状に形成されている。
【0026】
挟持部16は、前壁31、底壁32および後壁33を備え、垂直断面が略U字型に形成されている。壁パネル2を壁固定具14で防水パン1に固定する際には、前壁31と後壁33の間の挟持スペース34内に、壁パネル2の柱材8の後面壁10を受け入れて挟持する(
図5(b)参照)。
【0027】
図3(b)に示すように、挟持部16の前壁31の上端側には、上方に向かって前方に傾斜した折り返し部38が形成されている。
【0028】
床嵌合部15と挟持部16を繋ぐ連結部17は、正面視して左右に形成されている(
図2(a)、
図3(a)参照)。連結部17は、床嵌合部15の頂壁22の上面から挟持部16の後壁33の上端部に向かって形成され、連結部17には下方に向かって(挟持部16の後壁33の上端部に向かって)前方へ傾斜する傾斜面39が設けられている。
【0029】
換言すると、連結部17は、床嵌合部15の頂壁22の上面から、壁固定具14で保持される壁パネル2に近づくに従って下方へ傾斜する傾斜面39が設けられている。この傾斜面39と挟持部16の前壁31の折り返し部38によって、挟持スペース34は、上方に向けて拡開される構成となり、壁パネル2を降ろしながら、その中空状の柱材8の後面壁10を挟持部16に挿入して挟持させる際に、それぞれガイド面として機能する。
【0030】
壁固定具14は、突張部40を備えている。突張部40は、挟持部16の後壁33から壁パネル2と反対方向である後方に向けて延びるように形成されており、壁固定具14を立設部3に引っ掛けると、立設部3と当接する。この実施例1では、突張部40は、
図2〜5に示すように、挟持部16の後壁33の左右側端から後方に向けて折り曲げられるようにして形成されている。
【0031】
(作用)
以上の構成から成る実施例1の壁固定具14の作用を、その使用によって防水パン1に壁パネル2を固定する手順等とともに説明する。壁固定具14により、防水パン1に壁パネル2を位置決めして固定する際には、まず、壁固定具14を防水パン1の立設部3に取り付ける。
【0032】
そのために、壁固定具14のスリット24の中心又は左右いずれかの側縁を、防水パン1の立設部3に付されたケガキ線に合わせる。そして、
図4および
図5に示すように、壁固定具14の床嵌合部15を防水パン1の立設部3に嵌合して引っ掛ける。
【0033】
このように、壁固定具14を立設部3に引っ掛けると、挟持部16から後方に延びる突張部40は、防水パン1の立設部3の前面に当接し、尖った抜け止め部25の上部は防水パン1の立設部3の後面に食い込む。
【0034】
次に、防水パン1の立設部3に引っ掛けられた壁固定具14に、壁パネル2を取り付ける。具体的には、壁パネル2を防水パン1の挟持部16の上方に配置し、柱材8の後面壁10の下端部を、挟持部16の前壁31の折り返し部38と連結部17の傾斜面39との間に位置させる。
【0035】
そして、
図5(a)に示すように、柱材8の下端部を挟持部16の前壁31の折り返し部38と連結部17の傾斜面39によって案内させながら柱材8を降ろしていき、壁固定具14の挟持部16の挟持スペース34内に挿入し、
図5(b)に示すように、挟持部16で挟み込んで保持する。これによって、壁パネル2は、壁固定具14で下から受け止められてしっかりと保持される。
【0036】
壁固定具14の床嵌合部15の前壁23に、スリット24を設けたので、その中心又は左右いずれかの側縁を、防水パン1の立設部3に付されたケガキ線を合わせることによって、立設部3に壁固定具14を引っ掛けて固定する位置を簡単かつ正確に合わせることができ、その結果、壁固定具14で固定される壁パネル2の位置も所定の位置に正確に取り付けることが可能となる。
【0037】
床嵌合部15の後壁21に上部26が尖った抜け止め部25を上方に向けて前方に傾斜して設けたので、壁固定具14の床嵌合部15を防水パン1の立設部3に対して下方に押し込んで嵌合させることにより、抜け止め部25の上部26が防水パン1の立設部3の後面に食い込み、床嵌合部15は防水パン1の立設部3しっかりと嵌合し、壁固定具14が防水パン1の立設部3から抜け落ちるようなことが防止できる。
【0038】
壁固定具14は、挟持部16の前壁31には上方に向けて前方へ傾斜した折り返し部38が形成されており、連結部17には下方に向けて前方に傾斜面39した傾斜面39が形成されているので、壁パネル2の柱材8の後壁10をその下端から壁固定具14の挟持部16内に挿入し挟み込む際に、折り返し部38と傾斜面39で案内されるので、作業が容易となる。
【0039】
そして、床嵌合部15を防水パン1の立設部3に引っ掛かけた状態では、挟持部16から後方に延びる突張部40は、防水パン1の立設部3の前面に当接する。これによって、先行技術における課題であった壁固定具14の前後方向への移動やずれは抑制される。
【0040】
(
参考例)
本発明に係る壁固定具の
参考例を
図6および
図7において、説明する。この
参考例の壁固定具50は、樹脂で一体成形されたものであり、その構成は実施例1の壁固定具14と略同様である。
【0041】
壁固定具50は、実施例1の壁固定具14と同様に、
図6および
図7に示すように、防水パン1の周縁に設けられた立設部3に引っ掛けて固定される床嵌合部51と、壁パネル2の柱材8の後面壁10を挟み込んで保持する挟持部52と、床嵌合部51と挟持部52を繋ぐ連結部53を備えている。床嵌合部51の後壁54は、立設部3の後面に食い込む抜け止め部55が形成されている。
【0042】
壁固定具50は、
図6および
図7に示すように、挟持部52の後壁56から壁パネル2と反対方向である後方に向けて延びて、立設部3と当接する突張部61を備えている。この
参考例の突張部61は、その後端部は、実施例1の突張部40のように自由端ではなく、
図7(b)に示すように、床嵌合部51の前壁62に結合している点では構成は若干相違するが、立設部3に対して突っ張り、壁固定具50の前後方向への移動やずれを抑制するという機能では同じである。
【0043】
壁固定具50の作用、効果は、実施例1の壁固定具14と同じである。壁パネル2を壁固定具50で防水パン1に位置決めして固定する場合は、まず、
図7(a)、(b)に示すように、壁固定具50を防水パン1の立設部3に取り付ける。
【0044】
そして、壁パネル2を、その柱材8の下端部から、挟持部52の前壁57の上端側に形成された傾斜面58と連結部53に形成された傾斜面63によって案内させながら降ろし、壁固定具50の挟持部52内に挿入し、挟み込んで保持する。このようにして、柱材8を壁固定具50の挟持部52で挟持すると、壁パネル2は、壁固定具50で下から受け止められてしっかりと保持される。
【0045】
なお、この
参考例の壁固定具50では実施例1の壁固定具14のようにスリット24は形成されていないが、予め床嵌合部51の前壁62の側面を防水パン1の立設部3に付したケガキ線に合わせるようにして、壁固定具50を立設部3に取り付ける位置の位置決めをすればよい。
【0046】
以上、本発明に係る固定具を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。