(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持部は、前記支持部に対して相対的に移動可能に設けられ、少なくとも前記複数の吸着部を保持する第1の位置と、前記吸着部の保持を解除する第2の位置との間で移動可能な移動部を有する、請求項1乃至請求項4のいずれか一つの保持装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、第1の実施の形態について、
図1乃至
図4を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、実施形態に係る構成要素や、当該要素の説明について、複数の表現を併記することがある。当該構成要素及び説明について、記載されていない他の表現がされることは妨げられない。さらに、複数の表現が記載されない構成要素及び説明について、他の表現がされることは妨げられない。
【0011】
図1は、第1の実施の形態に係るチャック1とワーク2とを示す断面図である。チャック1は、保持装置の一例であり、例えば、ハンド及びハンドチャックとも称され得る。ワーク2は、物体の一例であり、例えば、対象物及び被保持物とも称され得る。
【0012】
図面に示されるように、本明細書において、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。以下の説明は、Z軸が鉛直方向に沿うものとして記載される。なお、Z軸は鉛直方向に対して傾斜しても良い。
【0013】
図1に示すように、チャック1は、ベース11と、複数のシャフト12と、ロック機構13と、ポンプ14とを有する。シャフト12は、吸着部の一例であり、ノズルとも称され得る。ロック機構13は、保持部の一例である。ポンプ14は、吸引部及び送出部の一例である。
【0014】
ベース11は、支持壁21と、取付壁22と、複数の接続柱23とを有する。支持壁21は、支持部の一例であり、略四角形の板状の部材である。なお、支持壁21はこれに限らず、円形のような他の形状であっても良い。
【0015】
支持壁21は、外面31と、内面32と、複数の挿通孔33とを有する。外面31は、Z軸に沿う方向(
図1における下方)に向く略平坦な面である。内面32は、外面31の反対側に位置し、Z軸に沿う方向(
図1における上方)に向く略平坦な面である。
【0016】
複数の挿通孔33は、Z軸に沿う方向に延び、外面31から内面32に亘って設けられた円形の孔である。複数の挿通孔33は、格子点状(マトリクス状)に配置される。なお、挿通孔33の形状及び配置はこれに限らず、例えば、複数の挿通孔33は同心円状に配置されても良い。
【0017】
取付壁22は、支持壁21からZ軸に沿う方向(
図1における上方)に離間して配置される。取付壁22は、支持壁21の内面32と向かい合う。複数の接続柱23は、支持壁21を取付壁22に取り付ける。接続柱23は、支持壁21と取付壁22との間の距離を保つ。
【0018】
取付壁22に、接続管35が取り付けられる。接続管35は、例えば可撓性の管であり、ポンプ14に接続される。言い換えると、ポンプ14は、接続管35を介して、ベース11の取付壁22に接続される。
【0019】
複数のシャフト12は、互いに同一形状に形成された、略円柱状の部材である。なお、シャフト12はこれに限らず、他の形状であっても良く、互いに異なる形状を有しても良い。シャフト12は、先端部41と、基端部42と、第1の管部43とを有する。先端部41は、一方の端部の一例である。基端部42は、他方の端部の一例である。第1の管部43は、通路の一例である。
【0020】
先端部41は、Z軸に沿う方向(
図1における下方)に向くとともに、先細るように形成される。なお、先端部41はこれに限らない。先端部41は、シャフト12の最も端に位置する部分(端面)のみならず、当該端面を含むシャフト12の一部である。
【0021】
複数のシャフト12は、それぞれの先端部41から基端部42に向かって延びる。言い換えると、シャフト12は、先端部41及び基端部42が向く方向(Z軸に沿う方向)に延びる。
【0022】
基端部42は、先端部41の反対側に位置する。基端部42は、シャフト12が延びる方向(Z軸に沿う方向)に対して直交する方向に張り出したフランジ状に形成される。なお、基端部42はこれに限らない。
【0023】
第1の管部43は、シャフト12の内部に設けられ、シャフト12が延びる方向(Z軸に沿う方向)に延びる孔である。第1の管部43は、第1の開口部43aと、第2の開口部43bとを有する。第1の開口部43aは、第1の管部43の一方の端部であり、シャフト12の先端部41に開口する。第2の開口部43bは、第1の管部43の他方の端部であり、シャフト12の基端部42に開口する。すなわち、第2の開口部43bは、第1の開口部43aに通じている。
【0024】
複数のシャフト12は、支持壁21の対応する挿通孔33にそれぞれ通される。これにより、支持壁21は、複数のシャフト12を、それぞれのシャフト12が延びる方向へ個別に移動可能に支持する。言い換えると、シャフト12は、他のシャフト12に対して独立してZ軸に沿う方向に移動可能である。支持壁21は、複数のシャフト12を、平行に移動可能に支持する。なお、支持壁21はこれに限らず、例えば、複数のシャフト12を放射状のような、互いに異なる方向に移動可能に支持しても良い。
【0025】
シャフト12が挿通孔33に通されることで、複数のシャフト12は、格子点状に配置される。言い換えると、シャフト12は、シャフト12が延びる方向(Z軸に沿う方向)に対して交差する方向(X軸及びY軸に沿う方向)に並べて配置される。
【0026】
挿通孔33に通されたシャフト12は、支持壁21の外面31から突出する。言い換えると、シャフト12は、ベース11から外部に向かって突出する。基端部42のようなシャフト12の一部は、支持壁21の内面32からも突出する。
【0027】
シャフト12の先端部41は、支持壁21よりも、外面31が向く方向(
図1における下方)に位置する。シャフト12の基端部42は、支持壁21よりも、内面32が向く方向(
図1における上方)に位置する。
【0028】
シャフト12が支持壁21の外面31から最大限突出すると、シャフト12の基端部42は、支持壁21の内面32に当接する(引っかかる)。このため、基端部42は、シャフト12が支持壁21から脱落することを抑制する。
【0029】
図2は、第1の実施形態のチャック1の一部である複数のシャフト12と、ロック機構13と、支持壁21とを示す斜視図である。
図3は、第1の実施形態のチャック1を示す平面図である。
【0030】
図2に示すように、ロック機構13は、支持壁21の外面31に面して配置される。言い換えると、ロック機構13は、支持壁21の外側に配置される。なお、ロック機構13の位置はこれに限らず、支持壁21の内面32に面して配置されても良い。
【0031】
ロック機構13は、複数のブロック51と、複数のバネ52と、複数のプレート53と、二つのスライドバー54とを有する。ブロック51及びバネ52は、制動部の一例である。バネ52は、弾性部の一例である。プレート53及びスライドバー54は、移動部の一例である。
【0032】
ブロック51は、例えば合成ゴムによって作られ、略直方体状に形成される。なお、ブロック51の材料及び形状はこれに限らない。複数のブロック51は、対応するシャフト12の外周面12aに、例えばX軸に沿う方向から面するように配置される。
【0033】
ブロック51は、溝51aをそれぞれ有する。溝51aは、例えば略V字型の切欠きである。なお、溝51aの形状はこれに限らない。溝51aは、シャフト12の外周面12aに面する位置に設けられ、シャフト12が延びる方向(Z軸に沿う方向)に沿って延びる。
【0034】
バネ52は、例えば圧縮バネである。なお、弾性部はこのようなバネ52に限らず、例えば弾性変形可能なブロック51の一部が弾性部の一例であっても良い。バネ52は、ブロック51の、溝51aが設けられた面の反対側の面に取り付けられる。
【0035】
複数のプレート53は、Y軸に沿う方向にそれぞれ延びる。プレート53は、Y軸に沿う方向に並ぶ複数のシャフト12の列の、各シャフト12の外周面12aに面するように配置される。言い換えると、プレート53は、Y軸に沿う方向に並ぶ複数のシャフト12の二つの列の間に配置される。なお、このように配置された複数のプレート53はX軸に沿う方向に並べられるが、端に位置するプレート53は、Y軸に沿う方向に並ぶ複数のシャフト12の一つの列に面する。
【0036】
プレート53は、第1の支持壁53aと、第2の支持壁53bとを有する。第2の支持壁53bは、Z軸に沿う方向に延びる。第1の支持壁53aは、Z軸に沿う方向における第2の支持壁53bの中央部分から、対応する複数のシャフト12の列に向かって、X軸に沿う方向に延びる。第1及び第2の支持壁53a,53bにより、プレート53の断面は略T字形状を呈する。なお、プレート53の形状はこれに限らない。
【0037】
プレート53の第1の支持壁53aに、複数のブロック51がX軸に沿う方向に移動可能に取り付けられる。例えば、ブロック51に設けられた溝に、第1の支持壁53aが嵌め込まれる。
【0038】
バネ52は、プレート53の第2の支持壁53bと、対応するブロック51との間に配置される。上述のように、バネ52の一方の端部はブロック51の、溝51aが設けられた面の反対側の面に取り付けられる。バネ52の他方の端部は、第2の支持壁53bに支持される。これにより、バネ52は、ブロック51を対応するシャフト12に向かって押す。
【0039】
二つのスライドバー54は、X軸に沿う方向に並べられた複数のプレート53の端部にそれぞれ接続される。言い換えると、二つのスライドバー54の間に、複数のプレート53が配置される。
【0040】
スライドバー54は、ベース11に対して、X軸に沿う方向に移動可能に支持される。スライドバー54が移動することにより、プレート53に取り付けられた複数のブロック51及びバネ52も、スライドバー54とともに移動する。
【0041】
スライドバー54は、プレート53に取り付けられた複数のブロック51を、X軸に沿って制動位置と解除位置とに移動させることが可能である。制動位置は、第1の位置の一例である。解除位置は、第2の位置の一例である。
【0042】
制動位置において、複数のブロック51の溝51aが、対応するシャフト12に接触する。バネ52は、ブロック51を対応するシャフト12に押し付ける。これにより、ブロック51とシャフト12との間で摩擦が生じる。ブロック51に溝51aが設けられることで、ブロック51とシャフト12との接触面積が大きくなり、ブロック51とシャフト12との間の摩擦力も大きくなる。
【0043】
さらにバネ52は、ブロック51を介して、シャフト12を、当該シャフト12が挿入された支持壁21の挿通孔33の内面に弾性的に押し付ける。これにより、シャフト12が、ブロック51と支持壁21の挿通孔33の内面とによって挟持される。言い換えると、X軸に沿う方向において、シャフト12の一方の側端部がブロック51に支持され、シャフト12の他方の側端部が支持壁21に支持される。スライドバー54が制動位置に移動すると、ブロック51が、支持壁21のシャフト12を支持する部分に向かって移動させられる。
【0044】
上記のようにバネ52がブロック51をシャフト12に押し付けることで、ベース11に対するシャフト12の相対的な移動が制限される。すなわち、スライドバー54が制動位置に移動することで、ロック機構13は複数のシャフト12を保持する。
【0045】
複数のバネ52が、ブロック51を対応するシャフト12にそれぞれ押し付ける。すなわち、複数のブロック51は、それぞれのシャフト12のベース11に対する移動を制限する。
【0046】
一方、解除位置において、複数のブロック51が対応するシャフト12から離間する。このため、ブロック51による、ベース11に対するシャフト12の移動の制限が解除される。言い換えると、ロック機構13によるシャフト12の保持が解除される。すなわち、複数のブロック51が解除位置にある状態において、複数のシャフト12は、ベース11に対して相対的に移動可能である。なお、シャフト12がベース11に対して相対的に移動可能であれば、解除位置にあるブロック51がシャフト12に接触しても良い。
【0047】
図1に示すように、複数のシャフト12の基端部42に、チューブ61がそれぞれ接続される。チューブ61は、例えば合成ゴムによって作られた可撓性の管である。なお、チューブ61の材料はこれに限らない。チューブ61は、対応するシャフト12がベース11に対して移動する場合に、シャフト12の移動に追従して撓むことができる。
【0048】
複数のチューブ61は、ベース11の取付壁22を介して、接続管35に接続される。すなわち、複数のシャフト12は、チューブ61及び接続管35を介して、ポンプ14に接続される。
【0049】
ポンプ14は、空気のような気体の吸引及び送出が可能である。例えば、ポンプ14は、接続管35及び複数のチューブ61を介して、シャフト12の第1の管部43から空気を吸引する。このとき、シャフト12の先端部41がワーク2のような物体に接触し、第1の開口部43aが当該物体に塞がれると、第1の管部43が減圧される。これにより、シャフト12の先端部41にワーク2のような物体が吸着する。
【0050】
ポンプ14が気体を送出し、又は減圧状態を解除すると、第1の管部43の圧力が上昇する。これにより、シャフト12の先端部41によるワーク2のような物体の吸着が解除され、当該物体がシャフト12の先端部41から取り外し可能となる。
【0051】
以下に、本実施形態のチャック1の作用の一例を説明する。チャック1の作用は、以下に説明される物に限らない。まず、スライドバー54が移動させられることで、複数のブロック51が解除位置に移動させられる。これにより、複数のシャフト12の保持が解除され、複数のシャフト12がベース11に対して移動可能となる。
【0052】
次に、複数のシャフト12が、支持壁21の外面31から最大限突出させられる。支持壁21は、シャフト12が重力により移動可能なように、シャフト12を支持する。このため、シャフト12の先端部41が下方に向くようにチャック1が配置されることで、シャフト12は重力によって移動する。なお、シャフト12は、チャック1のユーザによって手で移動させられても良い。また、シャフト12をベース11から突出する方向に押すバネが、ベース11に設けられても良い。
【0053】
次に、ワーク2の保持される面2aに、複数のシャフト12の先端部41が面するように、チャック1が移動させられる。チャック1は、例えばロボットアームに取り付けられ、当該ロボットアームによって移動させられる。なお、チャック1はこれに限らず、例えば、チャック1のユーザによって移動させられても良い。
【0054】
図1に示すように、本実施形態のチャック1は、例えばシャフト12の先端部41が下方に向く状態で移動させられる。これにより、例えば重力によって、シャフト12がベース11に対してさらに移動することが抑制される。なお、チャック1の姿勢はこれに限らない。例えば、チャック1の移動中に、ロック機構13のブロック51がシャフト12の移動を制限する場合、チャック1はどのような姿勢で移動しても良い。
【0055】
ワーク2の面2aは、例えば、複雑な自由曲面のような曲率変化を有している。本実施形態において、ワーク2は、面2aが上方に向く状態で配置される。なお、ワーク2はこれに限らず、例えば平坦な面2aを有しても良い。
【0056】
図4は、第1の実施形態の複数のシャフト12がワーク2に接触した状態のチャック1を示す断面図である。シャフト12の先端部41がワーク2の面2aに面したチャック1は、ワーク2に向かって、例えば下方に移動させられる。
【0057】
チャック1が移動すると、複数のシャフト12の先端部41が、ワーク2の面2aにそれぞれ接触する。ブロック51が解除位置にあるため、シャフト12はベース11に対して移動可能である。このため、チャック1が移動するに従って、先端部41がワーク2の面2aに接触したシャフト12は、ベース11に対して
図4における上方へ移動する。
【0058】
チャック1が所定の距離だけ下方に移動すると、全てのシャフト12の先端部41がワーク2の面2aに接触し、全てのシャフト12がベース11に対して移動する。この状態で、チャック1の移動が停止する。なお、先端部41がワーク2の面2aに接触しないシャフト12があっても良い。
【0059】
次に、スライドバー54が移動させられることで、複数のブロック51が制動位置に移動させられる。これにより、複数のブロック51が対応するシャフト12に押し付けられ、ベース11に対するシャフト12の移動が制限される。複数のシャフト12は、ワーク2の面2aの形状に応じた位置で固定される。言い換えると、複数のシャフト12の先端部41が、ワーク2の面2aに倣った形状を形成する。
【0060】
次に、ポンプ14が空気を吸引する。複数のシャフト12の第1の開口部43aは、ワーク2の面2aによって塞がれる。このため、ポンプ14が空気を吸引することで、第1の管部43が減圧され、ワーク2が複数のシャフト12の先端部41に吸着する。これにより、ワーク2がチャック1に保持される。
【0061】
ワーク2を保持したチャック1が移動し、例えばワーク2が載置された台から上方に離れたとしても、ワーク2は複数のシャフト12の先端部41に吸着されたままである。さらに、ブロック51がシャフト12のベース11に対する移動を制限しているため、ベース11に対するシャフト12の位置も固定されたままである。
【0062】
上述の説明において、シャフト12は、ワーク2に接触させられることでベース11に対して移動し、ブロック51によってベース11に対する位置を固定される。しかし、これに限らず、シャフト12は最初からワーク2の面2aに対応する位置に配置されても良い。
【0063】
例えば、ワーク2を保持する前に、チャック1は、ワーク2の面2aと同一形状の面を有するマスターワークに向かって移動させられる。複数のシャフト12がマスターワークの面(2a)に対応する位置に移動した状態で、複数のブロック51がベース11に対するシャフト12の移動を制限する。これにより、複数のシャフト12はワーク2の面2aに対応する位置に配置される。
【0064】
このように、複数のシャフト12がワーク2の面2aに対応する位置に配置されたチャック1は、同一種類のワーク2を保持する場合、シャフト12の位置を固定したままで良い。言い換えると、複数のシャフト12がワーク2の面2aに対応する位置に配置されたチャック1は、ワーク2を保持する度にブロック51を解除位置に移動させなくて良い。
【0065】
第1の実施の形態に係るチャック1において、支持壁21は、複数のシャフト12を、それぞれのシャフト12が延びる方向へ個別に移動可能に支持する。ロック機構13は、支持壁21に対する複数のシャフト12の移動を制限する。ロック機構13は、シャフト12を支持壁21に対して移動可能にする状態と、シャフト12の支持壁21に対する移動を制限する状態と、に切り替え可能である。各シャフト12の先端部41がワーク2に接触するように移動させられることで、複数のシャフト12はワーク2の形状に応じた位置に配置される。この状態で、ロック機構13が複数のシャフト12の移動を制限することで、ワーク2を吸着可能なシャフト12の先端部41の位置が、ワーク2の形状に応じた位置に固定される。複数のシャフト12がこのように配置されることで、全てのシャフト12が先端部41にワーク2を吸着できる。これにより、チャック1は、例えば爪によりワーク2を把持する場合に比べて、形状や大きさが異なるより多くの種類のワーク2を保持できる。
【0066】
このようなチャック1によれば、例えば複数のシャフト12の先端部41をワーク2に押し付けることで、複数のシャフト12の先端部41がワーク2の形状に応じた位置に容易に配置される。例えば、ワーク2の形状が複雑な自由曲面のような曲率変化を有していたとしても、シャフト12の先端部41の位置がワーク2の形状に応じた位置に容易に配置される。これにより、保持対象であるワーク2に応じてチャック1を交換する必要が無くなり、ワーク2に応じて保持装置を交換する場合に比べ、作業時間が短縮される。さらに、シャフト12の先端部41の位置がワーク2の形状に応じた位置に配置されるため、シャフト12がワーク2を歪ませることが抑制される。
【0067】
さらに、複数のシャフト12の先端部41が一つのワーク2(マスターワーク)に対応した位置に固定されるため、チャック1が複数回に亘ってワーク2の保持を行ったとしても、チャック1はワーク2(ワーク)をほぼ同一の位置で保持できる。これにより、例えば、保持されたワーク2が搬送される間に障害物に接触することが抑制されたり、目視検査時に位置が変わることが抑制されてより正確な検査が可能となったりする。
【0068】
支持壁21は、複数のシャフト12を平行に移動可能に支持する。これにより、複数のシャフト12の移動方向が異なる場合に比べ、チャック1が小型化されやすい。さらに、例えば複数のシャフト12の先端部41をワーク2に押し付けることで、複数のシャフト12が滑らかに移動可能となる。したがって、複数のシャフト12の先端部41がワーク2の形状に応じた位置により容易に配置される。
【0069】
ロック機構13は、それぞれのシャフト12の支持壁21に対する移動を制限する複数のブロック51及びバネ52を有する。これにより、例えばシャフト12の寸法にばらつきがあったとしても、ロック機構13がシャフト12の支持壁21に対する位置をより確実に固定できる。
【0070】
バネ52は、シャフト12を支持壁21の挿通孔33の内面に弾性的に押し付ける。シャフト12がブロック51と支持壁21とに挟持されることで、シャフト12の支持壁21に対する相対的な移動が制限される。これにより、シャフト12及びブロック51に、寸法のばらつきや摩耗が生じたとしても、ロック機構13がシャフト12の支持壁21に対する位置をより確実に固定できる。
【0071】
プレート53に複数のブロック51が取り付けられ、当該プレート53が取り付けられたスライドバー54は、支持壁21に対して相対的に移動可能に設けられる。スライドバー54は、複数のブロック51によりシャフト12を保持する制動位置と、シャフト12の保持を解除する解除位置と、の間で移動可能である。これにより、容易且つ一時に、ロック機構13がシャフト12を保持する状態と、シャフト12の保持が解除された状態との間の切り替えが可能となる。
【0072】
シャフト12は、先端部41に開口された第1の管部43から気体を吸引することで、当該先端部41にワーク2を吸着させることが可能である。これにより、例えば磁性のようなワーク2の性質にかかわらず、チャック1がワーク2を保持することができる。
【0073】
支持壁21は、シャフト12が重力により移動可能なように複数のシャフト12を支持する。これにより、チャック1の構造が簡単になり、例えばチャック1の製造コストが低減される。
【0074】
複数のシャフト12が格子点状に配置される。これにより、例えばシャフト12が一列に配置される場合に比べ、複数のシャフト12の先端部41の位置が、よりワーク2の形状に応じた位置に配置され得る。
【0075】
本実施形態において、ロック機構13は、それぞれのシャフト12の支持壁21に対する移動を制限する複数のブロック51及び複数のバネ52を有する。しかし、ロック機構13は、複数のシャフト12の支持壁21に対する移動を制限する、例えばゴムのような部材を有しても良い。
【0076】
以下に、第2の実施の形態について、
図5を参照して説明する。なお、以下の複数の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0077】
図5は、第2の実施の形態に係るシャフト12の一部を示す断面図である。
図5に示すように、第2の実施形態のシャフト12の先端部41は、取付部71と、可動部材72とを有する。取付部71は、ベース部の一例である。可動部材72は、先端部の一例である。
【0078】
取付部71は、シャフト12の端部に設けられた略球状の部分である。取付部71に、第1の管部43が開口された部分である第3の開口部71aが設けられる。第3の開口部71aは、第2の開口部43bに通じる。第3の開口部71aは、
図5のように下方に向いて開口しても良いし、他の方向に向いて開口しても良い。
【0079】
可動部材72は、嵌合部72aと、第2の管部72bとを有する。第2の管部72bは、第1の管部43とともに通路の一例を形成する。嵌合部72aは、略球状の凹部である。嵌合部72aに、取付部71が嵌め込まれる。これにより、可動部材72は、取付部71に揺動可能(移動可能)に支持される。
【0080】
第2の管部72bは、第1の管部43よりも径が大きい孔である。第2の管部72bの一方の端部は、嵌合部72aに接続される。これにより、第2の管部72bは、嵌合部72aに嵌め込まれた取付部71の第3の開口部71aに連通する。第2の管部72bの他方の端部は、第1の開口部43aを形成する。このため、第2の管部72bは、取付部71の第3の開口部71aと、第1の開口部43aとを接続する。これにより、第1の開口部43aは、第2の管部72b及び第3の開口部71aを介して、第2の開口部43bに通じる。
【0081】
可動部材72が取付部71に対して揺動することで、第1の開口部43aの向きが変化する。可動部材72が取付部71に対して揺動しても、第2の管部72bは、取付部71の第3の開口部71aに連通したままである。このため、可動部材72が取付部71に対して揺動しても、第1の開口部43aは第2の開口部43bに通じたままであり、ポンプ14は第1の開口部43aから空気を吸引できる。
【0082】
第2の実施形態のチャック1において、第1の管部43が開口された可動部材72が、取付部71に移動可能に支持される。これにより、シャフト12は、第1の開口部43aの向きを変化させることが可能である。例えば、シャフト12の先端部41がワーク2に接触することで、ワーク2の面2aの形状に応じて第1の開口部43aの向きが変化する。第1の開口部43aの向きがワーク2に応じて変化することで、シャフト12は、先端部41に、より確実にワーク2を吸着することができる。
【0083】
なお、第1の開口部43aの向きを変化可能な先端部41は、上記のものに限らない。例えば、先端部41は、べローズ(蛇腹)状に形成されることで、第1の開口部43aの向きを変化可能であっても良い。
【0084】
以下に、第3の実施の形態について、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、第3の実施の形態に係るチャック1とワーク2とを示す断面図である。
図6に示すように、第3の実施形態のベース11は、接続柱23の代わりに、側壁81を有する。側壁81は、支持壁21と取付壁22との間に設けられる。
【0085】
第3の実施形態のベース11は、シリンダの一例である。支持壁21、取付壁22、及び側壁81によって、ベース11の内部に部屋Cが形成される。部屋Cは、ベース11の外部に対して気密な、密閉された部分である。
【0086】
支持壁21は、複数のパッキン85を有する。複数のパッキン85は、複数の挿通孔33に設けられる。パッキン85は、挿通孔33と、当該挿通孔33に通されたシャフト12との間の隙間を閉塞する。これにより、支持壁21は、シャフト12を、部屋Cの気密状態を保ちつつ、シャフト12の延びる方向に往復運動可能に支持する。
【0087】
接続管35は、接続口87を有する。接続口87は、取付壁22に接続された接続管35の一方の端部に設けられ、取付壁22に開口する。これにより、ポンプ14は、ベース11の部屋Cに接続される。
【0088】
複数のシャフト12の基端部42は、部屋Cの中に配置される。第3の実施形態の第2の開口部43bは、チューブ61に接続される代わりに、部屋Cに開口する。このため、ポンプ14は、接続管35、部屋C、及び第2の開口部43bを介して、第1の開口部43aに接続される。
【0089】
ポンプ14が気体を吸引すると、気体が、複数のシャフト12の第2の開口部43bから部屋Cに流入する。部屋Cの気体は、接続口87から接続管35を通り、ポンプ14に吸引される。
【0090】
一方、ポンプ14が気体を送出すると、気体が、接続管35を通り、接続口87から部屋Cに流入する。このように、ポンプ14は、部屋Cに空気を送出可能である。部屋Cの気体は、複数のシャフト12の第2の開口部43bに流入する。
【0091】
図7は、第3の実施形態のシャフト12の一部を示す断面図である。
図7に示すように、シャフト12は、逆止弁91を有する。逆止弁91は、シャフト12の第1の管部43に設けられる。逆止弁91は、シャフト12の先端部41に配置されるが、他の位置に配置されても良い。
【0092】
逆止弁91は、例えば、収容部92と、ボール93とを有する。収容部92は、第1の管部43の一部であり、第1の管部43の他の部分よりも径が大きい。ボール93は、第1の管部43よりも径が大きい球体であり、収容部92に収容される。収容部92の径は、ボール93の径よりも大きい。
【0093】
収容部92は、テーパ部92aと、凸部92bとを有する。テーパ部92aは、第1の開口部43aに向かう収容部92の一方の端部に設けられ、第1の開口部43aに向かって先細る部分である。テーパ部92aの端部の径は、ボール93の径よりも小さい。凸部92bは、第2の開口部43bに向く収容部92の他方の端部に設けられ、ボール93に向かって突出する。
【0094】
このような逆止弁91は、第1の開口部43aから第2の開口部43bに向かって流れる気体を通す。言い換えると、逆止弁91は、第1の管部43の、先端部41側からの気体の流れを許容する。一方、逆止弁91は、第2の開口部43bから第1の開口部43aに向かって流れる気体を遮断する。言い換えると、逆止弁91は、第1の管部43の、先端部41側への気体の流れを制限する。
【0095】
例えば、
図7の矢印に示すように、例えばポンプ14によって第1の開口部43aから気体が吸引されると、当該気体の流れによってボール93がテーパ部92aから離れ、凸部92bによって支持される。これにより、ボール93と、収容部92を含む第1の管部43との間に隙間が生じ、第1の開口部43aから第2の開口部43bに向かって流れる気体が通ることが可能となる。
【0096】
一方、ポンプ14によって第2の開口部43bから気体が第1の管部43に送出されると、当該気体の流れによってボール93がテーパ部92aに押し付けられる。これにより、
図7の二点鎖線で示すように、ボール93が収容部92を含む第1の管部43を閉塞し、第2の開口部43bから第1の開口部43aに向かって流れる気体が遮断される。
【0097】
以上のような第3の実施形態のチャック1は、複数のシャフト12を支持壁21の外面31から最大限突出させる際、ポンプ14から部屋Cに空気を送出する。これにより、空気が部屋Cからそれぞれのシャフト12の第2の開口部43bに流入する。
【0098】
逆止弁91は、第2の開口部43bから第1の開口部43aに向かって流れる気体を遮断する。このため、ポンプ14から部屋Cに送出された空気が逆止弁91で遮断され、部屋Cの圧力が上昇する。部屋Cの圧力が上昇すると、シャフト12がベース11の外部に向かって押され、支持壁21の外面31から突出する方向に移動する。シャフト12は、基端部42が支持壁21の内面32に当接するまで移動させられる。これにより、シャフト12が支持壁21の外面31から最大限突出させられる。
【0099】
第3の実施形態のチャック1において、ベース11に往復運動可能に支持されたシャフト12に、第1の管部43の、先端部41側からの気体の流れを許容し、第1の管部43の、先端部41側への気体の流れを制限する逆止弁91が設けられる。シャフト12の第1の管部43に、先端部41側へ流れる気体が流入されると、シャフト12が気体の圧力に押され、支持壁21から突出する方向に移動させられる。このような第1の管部43の、先端部41側への気体の流れにより、複数のシャフト12が支持壁21から突出する方向に移動させられる。したがって、複数のシャフト12を、支持壁21から突出する位置に配置することが容易となる。このように移動した複数のシャフト12の先端部41をワーク2に押し付けることで、複数のシャフト12の先端部41がワーク2の形状に応じた位置に容易に配置される。
【0100】
上述の各実施形態において、チャック1は、ポンプ14によって第1の開口部43aから気体を吸引させること(減圧)により、シャフト12の先端部41にワーク2を吸着させる。しかし、チャック1はこれに限らない。
【0101】
例えば複数のシャフト12の先端部41に、電磁石がそれぞれ設けられても良い。チャック1は、当該電磁石を励起させることで、ワーク2をシャフト12の先端部41に吸着することが可能である。
【0102】
上述の本発明の実施形態は、発明の範囲を限定するものではなく、発明の範囲に含まれる一例に過ぎない。本発明のある実施形態は、上述の実施形態に対して、例えば、具体的な用途、構造、形状、作用、及び効果の少なくとも一部について、発明の要旨を逸脱しない範囲において変更、省略、及び追加がされたものであっても良い。