(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属軸が歯車と接合する面に対して連続波レーザー光を照射して凹凸を含む粗面を形成する工程が、請求項1または2記載の前記金属軸の軸方向に1本のラインを形成するように照射した後、一旦レーザー光の照射を停止して、周方向に間隔おいてレーザー光を照射し、これを繰り返す工程に替えて、前記金属軸の軸方向に1本のラインを形成するように照射した後、レーザー光の照射を停止することなくジクザクのラインを形成するように連続照射する工程であり、
連続波レーザーの照射速度が2,000〜15,000mm/secであり、
レーザー出力が250〜2000W、レーザービーム径(スポット径)が10〜100μmであり、
前記レーザー出力とスポット面積(π×〔スポット径/2〕2)から求められるエネルギー密度(W/μm2)が0.2〜10W/μm2の範囲になるようにレーザー光を連続照射する工程であり、
前記凹凸を含む粗面の深さが前記金属軸の表面から50〜500μmである、請求項1または2記載の軸一体型歯車の製造方法。
金属軸が歯車と接合する面に対して連続波レーザー光を照射して凹凸を含む粗面を形成する工程が、請求項1または2記載の前記金属軸の軸方向に1本のラインを形成するように照射した後、一旦レーザー光の照射を停止して、周方向に間隔おいてレーザー光を照射し、これを繰り返す工程に替えて、前記金属軸の軸方向に1本のラインを形成するように照射した後、一旦レーザー光の照射を停止して、周方向に間隔おいてレーザー光を照射し、これを繰り返した後、連続波レーザーを固定した状態で、前記金属軸を周方向に回転させながら照射することで、軸方向と周方向の両方向に交差するように連続波レーザー光を連続照射する工程であり、
連続波レーザーの照射速度が2,000〜15,000mm/secであり、
レーザー出力が250〜2000W、レーザービーム径(スポット径)が10〜100μmであり、
前記レーザー出力とスポット面積(π×〔スポット径/2〕2)から求められるエネルギー密度(W/μm2)が0.2〜10W/μm2の範囲になるようにレーザー光を連続照射する工程であり、
前記凹凸を含む粗面の深さが前記金属軸の表面から50〜500μmである、請求項1または2記載の軸一体型歯車の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<軸一体型歯車>
軸一体型歯車1は、
図1に示すとおり、金属軸10と、金属軸10に対して接合された歯車20を有しているものである。
歯車20は、合成樹脂(熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂)、熱可塑性エラストマーおよびゴムからなる構成材料(以下「歯車構成材料」という)から選ばれるものからなる。
金属軸10は、歯車20と接合される前には、
図2に示すとおり、金属軸10の歯車20との接合面15が、金属軸10の面が溶融して形成された凹凸を含む粗面16を有している。
凹凸を含む粗面16は、接合面15において形成された溝や多数の独立した孔のほか、孔同士が連結されて大きな孔になったものが多数存在している部分であり、場合により、溶融した金属が溝や孔の周囲に盛り上がった状態で固化したものを含んでいてもよい。
接合面15の凹凸を含む粗面16は、連続波レーザー光またはパルス波レーザー光の照射により形成されたものが好ましい。
図1に示す軸一体型歯車1は、金属軸10の接合面15の凹凸を含む粗面16の溝や孔に溶融状態の歯車構成材料が入り込んだり、凹凸を含む粗面16を溶融状態の歯車構成材料が覆ったりした後で固化することで、金属軸10と歯車20が接合されたものである。
【0014】
また、
図1に示す軸一体型歯車1は、さらに接合面15の凹凸を含む粗面を覆う接着剤層を有しており、前記接着剤層と前記歯車が接合されたものにすることもできる。
前記接着剤層は、金属軸10の接合面15の凹凸を含む粗面16の溝や孔に接着剤が入り込み、凹凸を含む粗面16を接着剤が覆うことで形成されている。
歯車20は、前記接着剤層を介して、金属軸10と接合されている。
【0015】
本発明の軸一体型歯車は、平歯車、すぐばかさ歯車、ウォームギヤ、ハイボイドギヤ、はすば歯車、はすばかさ歯車、曲がり歯かさ歯車、やまば歯車、ねじ歯車、フェースギヤなどとして使用することができる。
本発明の軸一体型歯車は、自動車の燃料ポンプやオイルポンプなどに使用する内接型ギヤポンプのインナーローター用として好適である。
内接型ギヤポンプは、アウターローターとインナーローターの組み合わせからなるものであり、歯を内周に有するアウターローター内に、前記アウターローターの歯に噛み合う歯を外周に有しているインナーローターが配置されたものである。
【0016】
<軸一体型歯車の製造方法>
次に、
図1に示す軸一体型歯車1の製造方法を説明する。
初めの工程にて、金属軸10が歯車20と接合する面15に対してレーザー光を照射して凹凸を含む粗面16を形成する。
凹凸を含む粗面16の深さは、金属軸10の接合面15から約50μm〜約500μmの範囲が好ましいが、前記範囲に制限されるものではない。
凹凸を含む粗面16が形成されることで、接合面15は、例えば指で触ったときにはざらざらした感触のある表面状態になっている。
図2では、金属軸10の中間部分に凹凸を含む粗面16が形成されているが、形成位置は特に制限されるものではない。
また、
図2では、金属軸10の一箇所のみに凹凸を含む粗面16が形成されているが、2箇所以上に形成されていてもよい。
なお、金属軸10は、冷間圧造、切削加工などの方法によって、Dカット、小判、四角、六角などに加工する必要はなく、断面が円形のものをそのまま使用することができる。
【0017】
金属軸10で使用する金属は、軸一体型歯車1の用途に応じて選択することができるものであり、鉄、ステンレス、チタン、それらを含む合金などを使用することができ、それら以外の金属として、銅、マグネシウム、アルミニウム、それらを含む合金なども使用することができる。
【0018】
レーザー光は、連続波レーザーまたはパルス波レーザーを使用して照射することができる。
【0019】
まず、連続波レーザーを使用する方法を説明する。
連続波レーザーの照射速度は、2000mm/sec以上が好ましく、2000〜20,000mm/secがより好ましく、2,000〜18,000mm/secがさらに好ましく、2,000〜15,000mm/secが特に好ましい。
連続波レーザーの照射速度が前記範囲であると、加工速度を高めることができ(即ち、加工時間を短縮することができ)、金属軸10と歯車20の接合強度も高いレベルに維持することができる。
【0020】
連続波レーザー光を照射するときは、
図2に示すように、金属軸10の長さ方向に連続波レーザー光を照射する方法を適用することができる。
図2は、軸方向に1本のラインを形成するように照射した後、一旦レーザー光の照射を停止して、周方向に間隔をおいて再度レーザー光を照射することを繰り返した状態を示している。また、レーザー光の照射を途中で停止することなく、ジクザクのラインを形成するように連続照射することもできる。
その他、連続波レーザーを固定した状態で、金属軸10を周方向に回転させながら照射する方法を適用することができ、長さ方向と周方向の両方向に交差するように連続波レーザー光を照射することができる。
連続波レーザー光は、複数回連続照射して1本の直線または1本の曲線を形成することもできる。
同じ連続照射条件であれば、1本の直線または1本の曲線を形成するための照射回数(繰り返し回数)が増加すると接合面15における凹凸を含む粗面16の溝や孔の深さが大きくなったり、溝や孔同士が連結して複雑な構造になったりすることから、前記溝や孔内部に歯車構成材料が侵入することで金属軸10と歯車20の結合力が高くなる。
【0021】
連続波レーザー光の連続照射は、例えば次のような条件で実施することができる。
出力は4〜4000Wが好ましく、50〜2500Wがより好ましく、100〜2000Wがさらに好ましく、250〜2000Wがさらに好ましい。
ビーム径(スポット径)は5〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましく、10〜100μmがさらに好ましく、11〜80μmがさらに好ましい。
さらに出力とスポット径の組み合わせの好ましい範囲は、レーザー出力とレーザー照射スポット面積(π×〔スポット径/2〕
2)から求められるエネルギー密度(W/μm
2)より選択することができる。
エネルギー密度(W/μm
2)は、0.1W/μm
2以上が好ましく、0.2〜10W/μm
2がより好ましく、0.2〜6.0W/μm
2がさらに好ましい。
エネルギー密度(W/μm
2)が同じであるとき、出力(W)が大きい方がより大きなスポット面積(μm
2)に対してレーザー照射できることになるため、処理速度(1秒当たりのレーザー照射面積;mm
2/sec)が大きくなり、加工時間も短くすることができる。
波長は300〜1200nmが好ましく、500〜1200nmがより好ましい。
焦点位置は-10〜+10mmが好ましく、−6〜+6mmがより好ましい。
【0022】
連続波レーザーの照射速度、レーザー出力、レーザービーム径(スポット径)およびエネルギー密度との好ましい関係は、連続波レーザーの照射速度が2,000〜15,000mm/secであり、レーザー出力が250〜2000W、レーザービーム径(スポット径)が10〜100μmであり、前記レーザー出力とスポット面積(π×〔スポット径/2〕
2)から求められるエネルギー密度(W/μm
2)が0.2〜10W/μm
2の範囲である。
【0023】
連続波レーザーは公知のものを使用することができ、例えば、YVO4レーザー、ファイバーレーザー(好ましくはシングルモードファイバーレーザー)、エキシマレーザー、炭酸ガスレーザー、紫外線レーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He−Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザーを使用することができる。これらの中でもエネルギー密度が高められることから、ファイバーレーザーが好ましく、特にシングルモードファイバーレーザーが好ましい。
【0024】
連続波レーザーを照射した後の接合面15を含む金属軸10の表層部は、例えば、
図3(a)、
図4(a)〜(c)に示すようになっている。
なお、「金属軸10の表層部」は、表面から開放孔(幹孔または枝孔)の深さ程度までの部分であり、表面から約50μm〜約500μmの範囲である。
なお、1本の直線への照射回数が10回を超える回数である場合には、粗面化のレベルをより高めることができ、金属軸10と歯車20の接合強度を高めることができるが、合計照射時間が長くなる。このため、目的とする軸一体型歯車1の接合強度と製造時間との関係を考慮して、1本の直線への照射回数を決めることが好ましい。1本の直線への照射回数が10回を超える回数であるとき、好ましくは10回超〜50回以下、より好ましくは15〜40回、さらに好ましくは20〜35回である。
【0025】
接合面15を含む金属軸10の表層部は、
図3、
図4に示すように、接合面15側に開口部31のある開放孔30を有している。
開放孔30は、厚さ方向に形成された開口部31を有する幹孔32と、幹孔32の内壁面から幹孔32とは異なる方向に形成された枝孔33からなる。枝孔33は、1本または複数本形成されていてもよい。
なお、軸一体型歯車1において金属軸10と歯車20の接合強度が維持できるのであれば、開放孔30の一部が幹孔32のみからなり、枝孔33がないものでもよい。
【0026】
接合面15を含む金属軸10の表層部は、
図3、
図4に示すように、接合面15側に開口部のない内部空間40を有している。
内部空間40は、トンネル接続路50により開放孔30と接続されている。
【0027】
接合面12を含む金属軸10の表層部は、
図3(b)に示すように、複数の開放孔30が一つになった開放空間45を有していてもよいし、開放空間45は、開放孔30と内部空間40が一つになって形成されたものでもよい。一つの開放空間45は、一つの開放孔30よりも内容積の大きなものである。
なお、多数の開放孔30が一つになって溝状の開放空間45が形成されていてもよい。
【0028】
図示していないが、
図4(a)に示すような2つの内部空間40同士がトンネル接続路50で接続されていてもよいし、
図3(b)に示すような開放空間45と、開口孔30、内部空間40、他の開放空間45がトンネル接続路50で接続されていてもよい。
【0029】
内部空間40は、全てが開放孔30および開放空間45の一方または両方とトンネル接続路50で接続されているものであるが、軸一体型歯車1において金属軸10と歯車20の接合強度が維持できるのであれば、内部空間40のうちの一部が開放孔30および開放空間45と接続されていない閉塞状態の空間であってもよい。
【0030】
このようにレーザー光を連続照射したときに
図3、
図4で示されるような開放孔30、内部空間40などが形成される詳細は不明であるが、レーザー光を連続照射したとき、金属軸10の表面に一旦は孔や溝が形成されるが、溶融した金属が盛り上がって蓋をしたり、堰き止めたりする結果、開放孔30、内部空間40、開放空間45が形成されるものと考えられる。
また、同様に開放孔30の枝孔33やトンネル接続路50が形成される詳細も不明であるが、一旦形成された孔や溝の底部付近に滞留した熱によって、孔や溝の側壁部分が溶融する結果、幹孔32の内壁面が溶融して枝孔33が形成され、さらに枝孔33が延ばされてトンネル接続路50が形成されるものと考えられる。
【0031】
次に、パルス波レーザーを使用する方法を説明する。
パルス波レーザーの照射は、特開2013−52669号公報、特開2014−18995号公報、特開2014−51040号公報、特開2014−51041号公報、特開2014−65288号公報、特開2014−166693号公報、特開2014−193569号公報に記載の方法により実施することができる。
【0032】
次の工程では、凹凸を含む粗面16が形成された金属軸10の接合面15を含む部分と歯車構成材料からなる歯車20を一体化させる。
接着剤を使用しないときは、次の工程を実施する。
前工程においてレーザー光が照射された金属軸10の凹凸を含む粗面16が形成された接合面15を含む部分を金型内に配置して、前記歯車20となる歯車構成材料を射出成形若しくはプレス成形(トランスファー成形も含む)して接合させる工程。
接着剤を使用するときは、次の工程を実施する。
前工程においてレーザー光が照射された金属軸10の接合面15に接着剤を塗布し、凹凸を含む粗面16の溝や孔などの内部に接着剤を入り込ませ、さらに接合面15も接着剤で覆って接着剤層を形成した後、歯車20を嵌め込んで固定する方法、または
前工程においてレーザー光が照射された金属軸10の接合面15に接着剤を塗布し、凹凸を含む粗面16の溝や孔などの内部に接着剤を入り込ませ、さらに接合面15も接着剤で覆って接着剤層を形成した後、前記接着剤層を形成した金属軸10の接合面15を含む部分を金型内に配置して、歯車20となる歯車構成材料(熱可塑性エラストマーまたはゴム)を射出成形若しくはプレス成形(トランスファー成形も含む)して接合させる方法を適用することができる。接着剤は、公知の熱可塑性接着剤などを使用することができる。
なお、熱硬化性樹脂(プレポリマー)を使用したときは、後工程において加熱などをすることで熱硬化させる。
【0033】
この工程で使用する歯車20の樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムを使用することができる。
熱可塑性樹脂は、軸一体歯車1の用途に応じて公知の熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。例えば、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂(PA6、PA66等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン単位を含む共重合体、ポリエチレン、エチレン単位を含む共重合体、ポリプロピレン、プロピレン単位を含む共重合体、その他のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を挙げることができる。
【0034】
熱硬化性樹脂は、用途に応じて公知の熱硬化性樹脂から適宜選択することができる。例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタンを挙げることができる。
【0035】
熱可塑性エラストマーは、用途に応じて公知の熱可塑性エラストマーから適宜選択することができる。例えば、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーを挙げることができる。
【0036】
これらの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーには、公知の各種添加剤として、難燃剤、可塑剤、各種安定剤、各種充填材などを配合することができるほか、公知の繊維状充填材を配合することができる。
公知の繊維状充填材としては、炭素繊維、無機繊維、金属繊維、有機繊維等を挙げることができる。
炭素繊維は周知のものであり、PAN系、ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等のものを用いることができる。
無機繊維としては、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維等を挙げることができる。
金属繊維としては、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる繊維を挙げることができる。
有機繊維としては、ポリアミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維、ジアミンとジカルボン酸のいずれか一方が芳香族化合物である半芳香族ポリアミド繊維、脂肪族ポリアミド繊維)、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエステル繊維(全芳香族ポリエステル繊維を含む)、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維などの合成繊維や天然繊維(セルロース系繊維など)や再生セルロース(レーヨン)繊維などを用いることができる。
【0037】
これらの繊維状充填材は、繊維径が3〜60μmの範囲のものを使用することができるが、これらの中でも、例えば金属軸10の接合面15が粗面化されて形成される孔の開口径より小さな繊維径のものを使用することが好ましい。繊維径は、より望ましくは5〜30μm、さらに望ましくは7〜20μmである。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー100質量部に対する繊維状充填材の配合量は5〜250質量部が好ましい。より望ましくは、25〜200質量部、さらに望ましくは45〜150質量部である。
【0038】
ゴムとしては、エチレン‐プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン‐プロピレン‐ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン‐オクテンコポリマー(EOM)、エチレン‐ブテンコポリマー(EBM)、エチレン‐オクテンターポリマー(EODM)、エチレン‐ブテンターポリマー(EBDM)などのエチレン‐α‐オレフィンゴム;
エチレン/アクリル酸ゴム(EAM)、ポリクロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム(NBR)、水添NBR (HNBR)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)、エピクロルヒドリン(ECO)、ポリブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(合成ポリイソプレンを含む) (NR)、塩素化ポリエチレン(CPE)、ブロム化ポリメチルスチレン‐ブテンコポリマー、スチレン‐ブタジエン‐スチレン(S‐B‐S)およびスチレン‐エチレン‐ブタジエン‐スチレン(S‐E‐B‐S)ブロックコポリマー、アクリルゴム(ACM)、エチレン‐酢酸ビニルエラストマー(EVM)、およびシリコーンゴムなどを使用することができる。
【0039】
ゴムには、必要によりゴムの種類に応じた硬化剤を含有させるが、その他、公知の各種ゴム用添加剤を配合することができる。ゴム用添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、老化防止剤、シランカップリング剤、補強剤、難燃剤、オゾン劣化防止剤、充填剤、プロセスオイル、可塑剤、粘着付与剤、加工助剤などを使用することができる。
【実施例】
【0040】
実施例1、比較例1〜4
実施例1は、
図5(a)に示す金属軸(SUS304)10(外径6mm,長さ40mm)の長さ方向中間位置の接合面15の全面(6×π×4mm
2の広さ範囲)に対して、下記の条件でシングルモードファイバーレーザーを使用してレーザー光を連続照射した。レーザー光は、金属軸10を回転させながら軸方向に照射した。このとき、1回の照射後に15ms停止して次の照射を実施し、これを繰り返して合計で5850回照射して5850本のラインを形成した。
波形:連続波
出力(W):274
波長(nm):1070
スポット径(μm):11
エネルギー密度(W/μm
2):3.49
レーザー照射速度(mm/sec):7500
合計ライン本数:5850
回転速度:5.3r/m
合計加工時間(s):175
【0041】
図6(a)、(b)は、実施例1の金属軸の接合面に連続波レーザー光を照射した後のSEM写真(
図6(a)が100倍、
図6(b)が200倍)である。接合面に凹凸が形成されて粗面化されたことが確認できる。
比較例1、2は、ローレット加工(転造方式)により接合面15に綾目模様を形成したものである。比較例1の綾目模様の深さは60μm、比較例2の綾目模様の深さは30μmであり、いずれも隣接する凹部間隔は582μmである。
比較例3は、
図7(b)に示すとおり、接合面15がDカット形状に加工された金属軸(SUS304)、比較例4は、
図7(c)に示すとおり、接合面15が小判形状に加工された金属軸(SUS304)を使用した。
【0042】
実施例1、比較例1〜4の金属軸を使用して、下記の条件で射出成形して、各例の軸一体型歯車1を得た。
モジュール:1.0
圧力角:20度
歯数:14
図1中のX6mm、Y=16mm、Z=5mm
【0043】
<射出成形>
樹脂:ポリオキシメチレン(POM)樹脂(ジュラコンM90-44,ポリプラスチック(株)製)
樹脂温度:200℃
金型温度:80℃
射出成形機:ソディック製 TR40EH2
ゲート数:3
【0044】
実施例および比較例の軸一体型歯車を使用して、JGMA規格(JGMA 116−02)の両歯面かみあい試験機を使用して、両歯面全かみあい誤差(μm)と両歯面1ピッチかみあい誤差(μm)を試験した。それぞれ3点を試験して、平均値を示した。
(両歯面全かみあい誤差)
親歯車と成形歯車(実施例および比較例の軸一体型歯車)をかみあわせて1回転させたときの中心間距離の最大と最小の差(全体のうねり)を測定した。誤差が小さいほど、歯車の偏心が小さく、真円度が大きい(真円に近い)ことを示す。
(両歯面1ピッチかみあい誤差)
親歯車と成形歯車(実施例および比較例の軸一体型歯車)をかみあわせて1回転中の1ピッチ間における最大の誤差(一つ一つの山の高さの誤差)を測定した。
【0045】
<接合強度>
実施例および比較例の軸一体型歯車1における金属軸10と歯車20との接合強度を次の方法で測定した。
図8(a)に示すとおり、軸一体型歯車1の金属軸10の一端側10aを
図7(c)と同形状に加工した。
次に、
図8(b)に示すとおり、別途作製した治具60で歯車20が回転しないように固定した。
次に、
図8(b)において、金属軸10の一端側10aをトルクレンチ(ヘッド交換式ダイヤル形トルクレンチ CDB100N×15D−S(L'=415mm);(株)東日製作所)で固定した状態で金属軸10の周方向にねじり、歯車20から金属軸10がはずれたときの強度を接合強度(N)とした。それぞれ3点を試験して、平均値を示した。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例の軸一体型歯車は、公知の方法により製造された歯車と比べて、成形精度が高かった。
金属軸の加工時間なども考え合わせると、実施例と比較例の違いは非常に大きなものがある。
なお、等級はJGMA規格(JGMA 116−02)で規定されているものであり、小さい方が高品質であることを示している。
また、実施例の軸一体型歯車は、金属軸と歯車の接合強度が高いため、耐久性にも優れていることが確認できた。
【0048】
実施例2
実施例1と同じ金属軸を使用して、下記の条件で射出成形して、実施例1と同じ形状および寸法の軸一体型歯車1を得た。
【0049】
<射出成形>
樹脂:長繊維強化樹脂(プラストロンPA66-GF60〔PA6640質量%、ガラス繊維60質量%〕,ダイセルポリマー(株)製)
樹脂温度:280℃
金型温度:80℃
射出成形機:ソディック製 TR40EH2
ゲート数:3
【0050】
その結果、実施例1と同程度の4級品が得られた。また、上記と同様の接合強度試験の結果、接合強度は16.6Nであった。