特許第6496566号(P6496566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6496566疎水化処理された球状メタチタン酸粒子、トナー用外添剤、トナー用スペーサー及びトナー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496566
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】疎水化処理された球状メタチタン酸粒子、トナー用外添剤、トナー用スペーサー及びトナー
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/04 20060101AFI20190325BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   C01G23/04 Z
   G03G9/097 374
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-22464(P2015-22464)
(22)【出願日】2015年2月6日
(65)【公開番号】特開2016-145124(P2016-145124A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2018年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237075
【氏名又は名称】富士チタン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081536
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 巌
(72)【発明者】
【氏名】岡島 雅尋
(72)【発明者】
【氏名】三浦 篤士
(72)【発明者】
【氏名】岡田 均
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−126239(JP,A)
【文献】 特開2015−138209(JP,A)
【文献】 特開2006−276062(JP,A)
【文献】 特開2011−154278(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0092818(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00−23/08
G03G 9/00−9/113
G03G 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折において、2θ=24.0〜26.5°の範囲にて最大強度を示す回折角での半値幅が0.35〜0.70°である、平均粒子径0.12〜0.3μmの疎水化処理された疎水性球状メタチタン酸粒子。
【請求項2】
X線回折において、2θ=24.0〜26.5°の範囲にて最大強度を示す回折角での半値幅が0.45〜0.60°である、平均粒子径0.12〜0.3μmの疎水化処理された疎水性球状メタチタン酸粒子。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の疎水性球状メタチタン酸粒子からなるトナー用外添剤。
【請求項4】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の疎水性球状メタチタン酸粒子からなるトナー用スペーサー。
【請求項5】
請求項に記載のトナー用外添剤を外添してなるトナー。
【請求項6】
請求項に記載のトナー用スペーサーを外添してなるトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水化処理された球状メタチタン酸粒子及び当該球状メタチタン酸粒子の用途に関する。詳しくは、樹脂粉末に添加した際の表面上での分散性に優れ、また、その粒子径から樹脂粉末に対するスペーサーとして有効に機能し、かつ、樹脂内部に埋没することなく長期にわたり流動性を付与することが可能な疎水化処理された球状メタチタン酸粒子、トナー用外添剤、トナー用スペーサー及びトナーに関する。より詳しくは、複写機やレーザープリンター等に使用される電子写真用トナーの外添剤として有用な疎水化処理された球状メタチタン酸粒子、トナー用外添剤、トナー用スペーサー及びトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザープリンター等の電子写真技術における現像剤に使用されるトナーには、流動性の付与や帯電効率の向上、帯電量の制御等を目的に外添剤が広く使用されている。かかる外添剤としては、平均粒子径が0.01〜0.05μm程度の疎水化処理された金属酸化物が一般的であり、その金属酸化物としてはシリカ、アルミナ、酸化チタン、メタチタン酸、酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム等があげられ、中でもシリカが最も好適に使用されている。
例えば、平均粒子径が100nm(0.1μm)以下、実施例では25〜50nmの、メタチタン酸とシラン化合物の反応によって得られるチタン化合物が濃度変化、カブリなどを防止する外添剤として用いられている(特許文献1、0020、0030)。
また、平均粒子径が2〜100nm(0.002〜0.1μm)、実施例では全て35nmの、シラン化合物で疎水化処理されたメタチタン酸が流動性付与などの外添剤として用いられている(特許文献2、0032、0058)。
【0003】
しかし、近年、電子写真の高速化及び省電力化を目的とするトナー樹脂の小粒径化並びに低融点化に伴い、トナー樹脂粉末に対しスペーサーとして有効に働き、かつ、トナー内部に埋没せず流動付与特性を長期にわたり維持することが新たに外添剤に対し求められるようになって来ている。上記特許文献1、2の化合物では粒子径が小さ過ぎて、このようなスペーサーとしては機能しないことから、当該スペーサー機能を発揮する外添剤としては疎水化処理された平均粒径が0.05μmからサブミクロンのサイズを有する、シリカあるいは樹脂粉末が実質的に使用されている。
【0004】
しかしながら、スペーサーとしてのシリカは、低温低湿環境下では帯電性が高くなりすぎる、いわゆるチャージアップにより画像濃度の低下や画像ムラを引き起こすという課題を有している。この課題を解消するものとしては大粒径シリカに加えアルミナを併用する外添剤構成が、また、特定の比表面積を有する気相法シリカが夫々提案されているが、前者は外添剤を構成する材料が多いため、帯電性、流動性、環境安定性他、需要なトナー特性をバランスさせることが難しく、後者は製造条件を高度に制御することによって得られる微粒シリカの凝集体であって製法上その合成に安定性を欠くものである(特許文献3、4)。
【0005】
また、樹脂粉末は基本的に融点が低いことよりトナー樹脂と融着してしまい、逆にトナー凝集の橋渡しになり、スペーサーとしては問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−304961号
【特許文献2】特開2002−148849号
【特許文献3】特開2000−81723号
【特許文献4】特開2012−27142号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、スペーサー機能を発揮すると同時に、他のトナー特性をも満足する疎水化処理された球状メタチタン酸粒子、トナー用外添剤、トナー用スペーサー及びトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に掲げるものである。
1.平均粒子径0.12〜0.3μmの疎水化処理された球状メタチタン酸粒子。
2.X線回折において、2θ=24.0〜26.5°の範囲にて最大強度を示す回折角での半値幅が0.35〜0.70°であることを特徴とする1に記載の疎水性球状メタチタン酸粒子。
3.X線回折において、2θ=24.0〜26.5°の範囲にて最大強度を示す回折角での半値幅が0.45〜0.60°であることを特徴とする2に記載の疎水性球状メタチタン酸粒子。
4.上記1〜3に記載の疎水性球状メタチタン酸粒子からなるトナー用外添剤。
5.上記1〜3に記載の疎水性球状メタチタン酸粒子からなるトナー用スペーサー。
6.上記4に記載のトナー用外添剤を外添してなるトナー。
7.上記5に記載のトナー用スペーサーを外添してなるトナー。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の特徴を有する球状メタチタン酸粒子、トナー用外添剤、トナー用スペーサー及びトナーを提供することができる。
1.シリカより摩擦帯電量の安定性に優れる。
2.球状であることからトナー粒子表面の分散性に優れる。
3.メタチタン酸であることから顔料級サイズでありながら、着色性が抑えられている。
4.顔料級サイズであることより、スペーサー剤として有効に機能する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例7で得られた疑似トナーのSEM写真。
図2】実施例9で得られた疑似トナーのSEM写真。
図3】比較例5で得られた疑似トナーのSEM写真。
図4】比較例8で得られた疑似トナーのSEM写真。
【0011】
分散性評価では、流動化剤用メタチタン酸を含むとスペーサー用メタチタン酸の分散状態が識別できないため、上記写真では流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーにてトナー母体上での分散性を観察した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第一の態様である球状メタチタン酸粒子は、平均粒子径が0.12〜0.3μmであり、疏水化処理されていることを特徴としている。
メタチタン酸粒子は、酸化チタン製造プロセスの1種である硫酸法において硫酸チタニル溶液を熱加水分解することで生成するが、通常その生成物はX線回折パターンからscherrer式用い計算すると数nmサイズのコロイド粒子である。塗料、インキ、プラスチック等に白色顔料として用いられる酸化チタンは当該メタチタン酸を焼成し粉砕することにより製造されるが、その粒子サイズは白色顔料として好適とされる0.2〜0.4μmとするため焼成条件及び粉砕条件を調整している。
【0013】
本発明ではメタチタン酸の段階で顔料級サイズとするため、次のような工程を踏まえる。即ち、熱加水分解により得られたコロイド粒子状のメタチタン酸の1部を新たな硫酸チタニル溶液に添加した上で熱加水分解させることで、当該コロイド粒子状メタチタン酸を核としその表面に新たに反応生成するメタチタン酸を成長させる。反応終了後のメタチタン酸の粒子サイズは、添加するコロイド粒子状メタチタン酸の添加量で調整するが好ましくは平均粒子径として0.12〜0.3μm、より好ましくは0.15〜0.29μmが、さらに好ましくは0.16〜0.22μmである。0.12μmに満たない場合はスペーサー機能が不十分となり、0.3μmを超えると遊離しやすくなると同時に、メタチタン酸といえども顔料的な特性が発現し、トナーとしての色調に影響を及ぼす。なお、核となるコロイド粒子状メタチタン酸上での新たなメタチタン酸の生成かつ成長は特定の結晶軸方向に偏ることはなく、最終的に得られる顔料級メタチタン酸の形骸は球状である。本発明において球状とは球状に近似する形状をも含み、真球状の他に、歪んだ球状、一部欠けた球状、扁平状の球状なども含まれる。
【0014】
本発明の球状メタチタン酸粒子は結晶構造的にはアナターズ型であるが、その後の熱処理条件によりアナターゼとしての結晶化度は変わってくる。
通常、100〜500℃、好ましくは100〜300℃で熱処理するのが良い。
その結晶化度については特に限定するものではないが、環境安定性並びに顔料としての機能発現を抑制する観点から、X線回折において、2θ=24.0〜26.5°の範囲にて最大強度を示す回折角での半値幅が0.35〜0.70°であることが好ましく、同半値幅が0.45〜0.60°であればさらに好ましい。
【0015】
このようにして得られた顔料級サイズのメタチタン酸は形骸こそ顔料級の球状粒子であるが、コロイド粒子の集合体であるため比表面積としては大きな値を有することから、環境による水分の吸脱着が著しい。そのため、疎水化処理が必須要件となる。この疎水化処理にあたって用いる有機物は、疎水性を発現するものであれば特に限定されることなく各種のものを用いることができるが、トナーにしたときの流動性、帯電性能の環境安定性を考慮すると、アルコキシシラン、シランカップリング剤、シラザン、シリコーンオイル、ステアリン酸金属塩などがあげられ、特にアルコキシシラン、シランカップリング剤、シラザン、シリコーンオイルなどの含ケイ素有機物が好ましく、とりわけ、アルコキシシラン、シランカップリング剤などが好ましい。上記アルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどがあげられ、シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系シラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ系シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのメタクリロキシ系シラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系シランなどがあげられる。また、シラザンとしては、例えば、ヘキサメチルジシラザンなどがあげられ、シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのストレートシリコーンオイルや、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルなどがあげられ、ステアリン酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどがあげられる。そして、これらの有機物は、それぞれ単独で用いることもできるし、また、2種以上併用することもできる。
【0016】
上記有機物の酸化チタンに対する処理量としては、5〜50質量%(酸化チタン100質量部に対して有機物5〜50質量部)が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。有機物による処理量が5質量%に満たない場合は、疎水性が充分に発現せず、そのため、流動性が悪く、かつ帯電性能の環境安定性が悪く、また、50質量%を超える場合には、酸化チタン粒子同士の凝集を促し、その結果として流動性が悪くなる傾向がある。
【0017】
上記有機物で酸化チタンを疎水化処理する方法としては、乾式法、湿式法のいずれの方法も採用することができるが、処理の均一性という点からは湿式法が好ましい。湿式法には水系で行う方法と非水系で行う方法とがあるが、水系では処理剤(疎水化処理のための有機物)の溶解性の点から使用できる処理剤が制限されるため、処理剤選択の自由度が高い非水系での処理がより好ましい。また、酸化チタンの凝集を解し、処理の均一性を高める点から、強力な分散をかけながら処理することが好ましい。
【0018】
本発明の第2の態様であるトナー用外添剤またはトナー用スペーサーは、同第1の態様である疎水性球状メタチタン酸粒子より成ることを特徴としており、同メタチタン酸粒子をそのまま用いることができる。
【0019】
また、本発明の第3の態様であるトナーは、同第2の態様であるトナー用外添剤またはトナー用スペーサーを含むことを特徴としている。
【0020】
トナーとしては磁性一成分、非磁性一成分、2成分のいずれのトナーにも使用でき、また、トナーの構成成分に関しても、既知のものを任意に使用することができる。例えば、結着樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、スチレンアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂やこれらの誘導体あるいはこれらの混合物を用いることができる。また、着色剤としては、マグネタイト、カーボンブラック等の顔料やフタロシアニン銅系シアン色材、アゾ系イエロー色材、アゾ系マゼンタ色材、キナクリドン系マゼンタ色材等の公知の染料を用いることができる。また、荷電調整剤やオフセット防止剤等が含まれていても構わない。
【0021】
本発明では、本発明のトナー用外添剤またはトナー用スペーサー以外に、粒子径が小さい公知の濃度変化、カブリなどを防止したり、流動性を付与することを目的とする外添剤を併用することができる。
【0022】
本発明における疎水性球状メタチタン酸粒子のトナー粒子への添加量(外添量)としては、スペーサー機能を発揮し、かつ、同時に添加される他の外添剤による機能を損ねないとの観点から、トナー粒子100質量部に対して0.01〜2.5質量部が好ましく、0.1〜2.0質量部であることがより好ましい。
【実施例】
【0023】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
なお、以下において評価項目とするメタチタン酸粒子の平均粒子径、半値幅、並びに疎水化処理後のトナー外添剤として疎水化度、吸湿水分、流動性の測定方法は次のとおりである。
【0025】
<平均粒子径>
メタチタン酸粉末を透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影し、その写真上で2000個以上の粒子を対象に画像解析することによって平均粒子径を求めた。
【0026】
<半値幅>
メタチタン酸粉末を試料ホルダーにガラス板にて平面状に押し付けたものをX線回折装置(リガク社製RINT UltimaIII)にセットし、アナターゼの最高強度線である(101)回折X線を測定する。走査範囲は2θ=24.0〜26.5°、走査ステップは0.005°、発散スリット及び散乱スリット幅は2/3°、ソーラースリットは5°とした。なお、光源はCu管球であり、出力は40kV、40mAに設定した。得られたX線回折パターンから最大強度を示す回折角での半値幅を読み取った。
【0027】
< 疎水化度>
所定比のエタノール−水混合液(0/100〜100/0、5刻み)を予め夫々50mL準備する。マグネティックスターラーで撹拌しながら疎水化処理されたメタチタン酸を0.20g加え、5分間で全量湿潤したときの混合液のエタノール比率をその試料の疎水化度とする。なお、環境安定性を勘案すれば疎水化度は35%以上とする必要がある。
【0028】
<吸湿水分>
疎水化処理されたメタチタン酸1.0gをシャーレーに入れ、温度20℃、湿度50%RHに設定した恒温恒湿器に15時間保存する。当該試料を105℃で2時間乾燥させた際の減量分を吸湿水分とする。なお、環境安定性を勘案すれば吸湿水分量は1.3%以下とする必要がある。
【0029】
<帯電量>
20mLのガラス容器に鉄粉キャリア19.8gと疎水化処理されたメタチタン酸粉末0.2gを入れ、所定の温度及び湿度に設定した恒温恒湿器に24時間保存する。ガラス容器を取出した後に蓋をし、ペイントシェーカーにて30分間振とうする。振とう後、混合サンプル1gを採取し、ブローオフ帯電量測定装置(東芝ケミカル社製TB−200型)で60秒間窒素ブローした後の値を帯電量とした。
高温高湿(HH)環境:35℃、85%RH
低温低湿(LL)環境:10℃、30%RH
LL−HHが環境安定性の指標であり、この値は小さい方が好ましい。
【0030】
<流動性>
アイカ工業製ポリマービーズ「GSM−0753S」をトナーの母体に見立て、疎水化処理されたメタチタン酸の添加率を1.0質量%とし、ミキサーにて1分間混合処理することで得られた疑似トナーについて、ホソカワミクロン社製パウダテスタ「PT−N」によって測定したゆるみ見かけ密度(g/cm)並びに固め見かけ密度(g/cm)から求めた圧縮度(%)を流動性の指標とした。なお、標準を35%以下とし、低いほど流動性は良好である。
【0031】
[A液(硫酸チタニル溶液)の作製]
イルメナイト鉱石を硫酸に溶解して得られた硫酸チタニル溶液を液組成としてTiO濃度43g/L、HSO濃度160g/Lとなるように調整する。
【0032】
[B液(核となるコロイド粒子状メタチタン酸)の作製]
A液を撹拌しながら加温し沸点に到達したらその状態を維持させる。加水分解率として40〜45%となった時点を終点とする。
【0033】
冷却後、ろ過により沈殿生成物を取り除いた液に対し分析を行ったところ、未分解TiO濃度は23.5g/L、コロイド状メタチタン酸としてのTiO濃度は19.5g/Lであった。
【0034】
実施例1
A液を6L、B液3.2Lとする配合比にて混合、オートクレーブにて130℃にて2時間加水分解反応させた。
【0035】
加水分解反応により得られた生成物をろ過水洗し、120℃にて3時間乾燥させたものについてX回折により結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0036】
実施例2
A液を6.9L、B液2.3Lとする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0037】
実施例3
A液を5.4L、B液3.8Lとする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0038】
実施例4
A液を8.5L、B液0.7Lとする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0039】
実施例5
加水分解反応時の温度を100℃及び乾燥温度を100℃とする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0040】
実施例6
加水分解反応時の温度を150℃及び乾燥温度を250℃とする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0041】
比較例1
A液を8.8L、B液0.4Lとする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0042】
比較例2
A液を4.7L、B液4.5Lとする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0043】
比較例3
乾燥温度を90℃とする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0044】
比較例4
乾燥温度を130℃とし、さらに500℃にて熱処理する以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0045】
流動化剤用メタチタン酸の調製
A液を4.0L、B液5.2Lとする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。表1に各特性示すが、平均粒子径は0.08μmであった。
【0046】
当該メタチタン酸を150g/Lの水スラリーとし70℃まで加温した後、当該メタチタン酸100重量部に対しデシルトリメトキシシラン10重量部及びジメチルポリシロキサン10重量部に相当するエチルアルコール溶解液を添加し、同温度で90分間熟成した。
【0047】
表面処理されたメタチタン酸をろ過により回収し、150℃にて乾燥した後パルベライザーにて粉砕し流動化剤とした。
【0048】
実施例7
実施例1で得られたメタチタン酸を150g/Lの水スラリーとし70℃まで加温した後、当該メタチタン酸100重量部に対しデシルトリメトキシシラン10重量部及びジメチルポリシロキサン10重量部に相当するエチルアルコール溶解液を添加し、同温度で90分間熟成する。
【0049】
表面処理されたメタチタン酸をろ過により回収、150℃にて乾燥した後パルベライザーにて粉砕した。得られた表面処理後のメタチタン酸の物性を表2に示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、かつ、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。
【0050】
さらに、アイカ工業製ポリマービーズ「GSM−0753S」を疑似トナー母体とし、当該表面処理後のメタチタン酸並びに流動化剤用メタチタン酸を夫々1.0質量%添加し、ミキサーにて1分間混合処理し作製した疑似トナーについて流動性を評価したところ、表2に示すように良好であった。また、同ポリマービーズに当該表面処理後のメタチタン酸のみを1.0質量%添加し作製した疑似トナーについてSEM画像を撮影したところ、図1にあるようにメタチタン酸がトナー母体上で均一に分散していた。
【0051】
実施例8
実施例2で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、かつ、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。また、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて、流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーにて流動性を評価、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーにてトナー母体上での分散性を観察したが、表2に示すように何れも良好であった。
【0052】
実施例9
実施例3で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、かつ、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。さらに、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーを作製したが、表2に示すように流動性は良好であり、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーにおけるトナー母体上での分散性も図2にあるように良好であった。
【0053】
実施例10
実施例4で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、かつ、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。また、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて、流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーにて流動性を評価、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーにてトナー母体上での分散性を観察したが、表2に示すように何れも良好であった。
【0054】
実施例11
実施例5で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、かつ、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。また、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて、流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーにて流動性を評価、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーにてトナー母体上での分散性を観察したが、表2に示すように何れも良好であった。
【0055】
実施例12
実施例6で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、かつ、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。また、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて、流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーにて流動性を評価、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーにてトナー母体上での分散性を観察したが、表2に示すように何れも良好であった。
【0056】
比較例5
比較例1で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分については良好なレベルであったが、環境安定性に欠くものであった。また、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーを作製したが、表2に示すように流動性に問題を有し、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーのSEM画像を撮影したが、図3にあるように遊離が著しくトナー母体上にほとんど定着せず、スペーサーとしての機能を発揮できないものであった。
【0057】
比較例6
比較例2で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度は一定のレベルであったが、高い吸湿水分量を示し、かつ、環境安定性に欠くものであった。さらに、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナー作製したが、トナー母体上での分散性は良好ながら、粒子径が小さいことによりスペーサーとしての機能が不十分であり、その結果、表2に示すように流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーでは流動性に問題を有するものであった。
【0058】
比較例7
比較例3で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度は一定のレベルであったが、高い吸湿水分量を示し、かつ、環境安定性に欠くものであった。
【0059】
比較例8
比較例4で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。しかし、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーを作製したが、表2に示すように流動性に問題を有し、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーのSEM画像を撮影したが、図4にあるように遊離分も含めトナー母体上の分散性が不十分であり、スペーサーとしての機能を発揮できないものであった。
【0060】
比較例9
平均粒子径0.15μmのシリカ粒子に対し、実施例7と同様の方法にて表面処理されたシリカを作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分については良好なレベルであったが、低温低湿環境下での帯電性が高くすぎ、環境安定性に欠くものであった。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】
図1
図2
図3
図4