【実施例】
【0023】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
なお、以下において評価項目とするメタチタン酸粒子の平均粒子径、半値幅、並びに疎水化処理後のトナー外添剤として疎水化度、吸湿水分、流動性の測定方法は次のとおりである。
【0025】
<平均粒子径>
メタチタン酸粉末を透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影し、その写真上で2000個以上の粒子を対象に画像解析することによって平均粒子径を求めた。
【0026】
<半値幅>
メタチタン酸粉末を試料ホルダーにガラス板にて平面状に押し付けたものをX線回折装置(リガク社製RINT UltimaIII)にセットし、アナターゼの最高強度線である(101)回折X線を測定する。走査範囲は2θ=24.0〜26.5°、走査ステップは0.005°、発散スリット及び散乱スリット幅は2/3°、ソーラースリットは5°とした。なお、光源はCu管球であり、出力は40kV、40mAに設定した。得られたX線回折パターンから最大強度を示す回折角での半値幅を読み取った。
【0027】
< 疎水化度>
所定比のエタノール−水混合液(0/100〜100/0、5刻み)を予め夫々50mL準備する。マグネティックスターラーで撹拌しながら疎水化処理されたメタチタン酸を0.20g加え、5分間で全量湿潤したときの混合液のエタノール比率をその試料の疎水化度とする。なお、環境安定性を勘案すれば疎水化度は35%以上とする必要がある。
【0028】
<吸湿水分>
疎水化処理されたメタチタン酸1.0gをシャーレーに入れ、温度20℃、湿度50%RHに設定した恒温恒湿器に15時間保存する。当該試料を105℃で2時間乾燥させた際の減量分を吸湿水分とする。なお、環境安定性を勘案すれば吸湿水分量は1.3%以下とする必要がある。
【0029】
<帯電量>
20mLのガラス容器に鉄粉キャリア19.8gと疎水化処理されたメタチタン酸粉末0.2gを入れ、所定の温度及び湿度に設定した恒温恒湿器に24時間保存する。ガラス容器を取出した後に蓋をし、ペイントシェーカーにて30分間振とうする。振とう後、混合サンプル1gを採取し、ブローオフ帯電量測定装置(東芝ケミカル社製TB−200型)で60秒間窒素ブローした後の値を帯電量とした。
高温高湿(HH)環境:35℃、85%RH
低温低湿(LL)環境:10℃、30%RH
LL−HHが環境安定性の指標であり、この値は小さい方が好ましい。
【0030】
<流動性>
アイカ工業製ポリマービーズ「GSM−0753S」をトナーの母体に見立て、疎水化処理されたメタチタン酸の添加率を1.0質量%とし、ミキサーにて1分間混合処理することで得られた疑似トナーについて、ホソカワミクロン社製パウダテスタ「PT−N」によって測定したゆるみ見かけ密度(g/cm
3)並びに固め見かけ密度(g/cm
3)から求めた圧縮度(%)を流動性の指標とした。なお、標準を35%以下とし、低いほど流動性は良好である。
【0031】
[A液(硫酸チタニル溶液)の作製]
イルメナイト鉱石を硫酸に溶解して得られた硫酸チタニル溶液を液組成としてTiO
2濃度43g/L、H
2SO
4濃度160g/Lとなるように調整する。
【0032】
[B液(核となるコロイド粒子状メタチタン酸)の作製]
A液を撹拌しながら加温し沸点に到達したらその状態を維持させる。加水分解率として40〜45%となった時点を終点とする。
【0033】
冷却後、ろ過により沈殿生成物を取り除いた液に対し分析を行ったところ、未分解TiO
2濃度は23.5g/L、コロイド状メタチタン酸としてのTiO
2濃度は19.5g/Lであった。
【0034】
実施例1
A液を6L、B液3.2Lとする配合比にて混合、オートクレーブにて130℃にて2時間加水分解反応させた。
【0035】
加水分解反応により得られた生成物をろ過水洗し、120℃にて3時間乾燥させたものについてX回折により結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0036】
実施例2
A液を6.9L、B液2.3Lとする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0037】
実施例3
A液を5.4L、B液3.8Lとする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0038】
実施例4
A液を8.5L、B液0.7Lとする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0039】
実施例5
加水分解反応時の温度を100℃及び乾燥温度を100℃とする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0040】
実施例6
加水分解反応時の温度を150℃及び乾燥温度を250℃とする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0041】
比較例1
A液を8.8L、B液0.4Lとする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0042】
比較例2
A液を4.7L、B液4.5Lとする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0043】
比較例3
乾燥温度を90℃とする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0044】
比較例4
乾燥温度を130℃とし、さらに500℃にて熱処理する以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。当該メタチタン酸の平均粒子径並びに半値幅を表1に示す。
【0045】
流動化剤用メタチタン酸の調製
A液を4.0L、B液5.2Lとする以外は実施例1と同様の方法で得られた加水分解生成物を、X線回折によりその結晶型を確認したところアナターゼ型であり、メタチタン酸と同定された。表1に各特性示すが、平均粒子径は0.08μmであった。
【0046】
当該メタチタン酸を150g/Lの水スラリーとし70℃まで加温した後、当該メタチタン酸100重量部に対しデシルトリメトキシシラン10重量部及びジメチルポリシロキサン10重量部に相当するエチルアルコール溶解液を添加し、同温度で90分間熟成した。
【0047】
表面処理されたメタチタン酸をろ過により回収し、150℃にて乾燥した後パルベライザーにて粉砕し流動化剤とした。
【0048】
実施例7
実施例1で得られたメタチタン酸を150g/Lの水スラリーとし70℃まで加温した後、当該メタチタン酸100重量部に対しデシルトリメトキシシラン10重量部及びジメチルポリシロキサン10重量部に相当するエチルアルコール溶解液を添加し、同温度で90分間熟成する。
【0049】
表面処理されたメタチタン酸をろ過により回収、150℃にて乾燥した後パルベライザーにて粉砕した。得られた表面処理後のメタチタン酸の物性を表2に示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、かつ、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。
【0050】
さらに、アイカ工業製ポリマービーズ「GSM−0753S」を疑似トナー母体とし、当該表面処理後のメタチタン酸並びに流動化剤用メタチタン酸を夫々1.0質量%添加し、ミキサーにて1分間混合処理し作製した疑似トナーについて流動性を評価したところ、表2に示すように良好であった。また、同ポリマービーズに当該表面処理後のメタチタン酸のみを1.0質量%添加し作製した疑似トナーについてSEM画像を撮影したところ、
図1にあるようにメタチタン酸がトナー母体上で均一に分散していた。
【0051】
実施例8
実施例2で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、かつ、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。また、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて、流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーにて流動性を評価、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーにてトナー母体上での分散性を観察したが、表2に示すように何れも良好であった。
【0052】
実施例9
実施例3で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、かつ、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。さらに、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーを作製したが、表2に示すように流動性は良好であり、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーにおけるトナー母体上での分散性も
図2にあるように良好であった。
【0053】
実施例10
実施例4で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、かつ、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。また、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて、流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーにて流動性を評価、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーにてトナー母体上での分散性を観察したが、表2に示すように何れも良好であった。
【0054】
実施例11
実施例5で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、かつ、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。また、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて、流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーにて流動性を評価、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーにてトナー母体上での分散性を観察したが、表2に示すように何れも良好であった。
【0055】
実施例12
実施例6で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、かつ、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。また、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて、流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーにて流動性を評価、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーにてトナー母体上での分散性を観察したが、表2に示すように何れも良好であった。
【0056】
比較例5
比較例1で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分については良好なレベルであったが、環境安定性に欠くものであった。また、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーを作製したが、表2に示すように流動性に問題を有し、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーのSEM画像を撮影したが、
図3にあるように遊離が著しくトナー母体上にほとんど定着せず、スペーサーとしての機能を発揮できないものであった。
【0057】
比較例6
比較例2で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度は一定のレベルであったが、高い吸湿水分量を示し、かつ、環境安定性に欠くものであった。さらに、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナー作製したが、トナー母体上での分散性は良好ながら、粒子径が小さいことによりスペーサーとしての機能が不十分であり、その結果、表2に示すように流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーでは流動性に問題を有するものであった。
【0058】
比較例7
比較例3で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度は一定のレベルであったが、高い吸湿水分量を示し、かつ、環境安定性に欠くものであった。
【0059】
比較例8
比較例4で得られたメタチタン酸を使用する以外は実施例7と同様の方法にて、表面処理されたメタチタン酸を作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分とも良好なレベルであり、帯電性についても環境に依らず安定した数値であった。しかし、当該表面処理されたメタチタン酸を用い実施例7と同様の方法にて流動化剤用メタチタン酸を含む疑似トナーを作製したが、表2に示すように流動性に問題を有し、かつ、流動化剤用メタチタン酸を含まない疑似トナーのSEM画像を撮影したが、
図4にあるように遊離分も含めトナー母体上の分散性が不十分であり、スペーサーとしての機能を発揮できないものであった。
【0060】
比較例9
平均粒子径0.15μmのシリカ粒子に対し、実施例7と同様の方法にて表面処理されたシリカを作製した。表2にその物性を示すが、疎水化度、吸湿水分については良好なレベルであったが、低温低湿環境下での帯電性が高くすぎ、環境安定性に欠くものであった。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】