特許第6496568号(P6496568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496568
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】建造物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   E04H9/02 301
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-29378(P2015-29378)
(22)【出願日】2015年2月18日
(65)【公開番号】特開2016-151141(P2016-151141A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】室野 剛隆
(72)【発明者】
【氏名】本山 紘希
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−344324(JP,A)
【文献】 特開2001−011939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の水平方向において相対移動不可能に連結された2つの部位を含む建造物本体と、
前記建造物本体の、前記水平方向の一方側及び他方側へ傾く変形のうち前記一方側へ傾く変形についてのみ、当該変形に伴う前記2つの部位同士の移動を規制する第1ストッパと、
を有しており、
前記第1ストッパは、前記一方側へ傾く変形に伴って互いに離反するとともに前記他方側へ傾く変形に伴って互いに近接する前記2つの部位に両端が接続された可撓性部材を含み、
前記可撓性部材は、外乱及び揺れがないときに、自重以下の張力しか生じていない、緩んだ状態である
建造物。
【請求項2】
前記建造物本体は、
前記水平方向において互いに離れて立設された2つの立設部材と、
前記2つの立設部材に架け渡され、前記2つの立設部材それぞれに対して前記水平方向において移動不可能に連結された被支持部材と、を含み、
前記可撓性部材は、一端が前記被支持部材に接続され、他端が前記2つの立設部材のうちの一つに接続されている
請求項に記載の建造物。
【請求項3】
前記可撓性部材は、前記一端から、下方へ、且つ、前記水平方向の前記他方側へ延び、前記他端に至る
請求項に記載の建造物。
【請求項4】
所定の水平方向において相対移動不可能に連結された2つの部位を含む建造物本体と、
前記建造物本体の、前記水平方向の一方側及び他方側へ傾く変形のうち前記一方側へ傾く変形についてのみ、当該変形に伴う前記2つの部位同士の移動を規制する第1ストッパと、
を有しており、
前記第1ストッパは、前記一方側へ傾く変形に伴って互いに近接するとともに前記他方側へ傾く変形に伴って互いに離反する前記2つの部位の間に位置し、前記2つの部位の一方に対して離反可能な剛性部材を含む
造物。
【請求項5】
前記剛性部材は、遊間を介して前記他方の部位と対向している
請求項に記載の建造物。
【請求項6】
前記建造物本体は、
前記水平方向において互いに離れて立設された2つの立設部材と、
前記2つの立設部材に架け渡され、前記2つの立設部材それぞれに対して前記水平方向において移動不可能に連結された被支持部材と、を含み、
前記剛性部材は、前記被支持部材に前記水平方向及び鉛直方向に移動不可能に連結されるとともに前記2つの立設部材のうちの一つと対向し、又は、前記2つの立設部材のうちの一つに前記水平方向及び鉛直方向に移動不可能に連結されるとともに前記被支持部材に対向している
請求項又はに記載の建造物。
【請求項7】
前記剛性部材は、前記被支持部材に前記水平方向及び鉛直方向に移動不可能に連結され、前記被支持部材の下方に位置するとともに前記2つの立設部材のうちの前記一つに対して前記水平方向の前記他方側に位置し、前記2つの立設部材のうちの前記一つと対向している
請求項に記載の建造物。
【請求項8】
所定の水平方向において相対移動不可能に連結された2つの部位を含む建造物本体と、
前記建造物本体の、前記水平方向の一方側及び他方側へ傾く変形のうち前記一方側へ傾く変形についてのみ、当該変形に伴う前記2つの部位同士の移動を規制する第1ストッパと、
前記一方側及び前記他方側へ傾く変形のうち前記他方側へ傾く変形についてのみ、当該変形に伴う前記建造物本体内の2つの部位同士の移動を規制し、規制を開始するときの前記建造物本体の変形量が前記第1ストッパよりも大きい第2ストッパと、
を有する建造物。
【請求項9】
前記建造物本体及び前記第1ストッパを含む建造物全体として、前記一方側へ傾く変形に対する強度が前記他方側へ傾く変形に対する強度よりも高い
請求項1〜のいずれか1項に記載の建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等の揺れに対する対策が施された土木構造物(例えば橋)又は建築物(例えば家屋若しくはビル)等の建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
地震等が生じたときに、建造物の倒壊(崩壊)を抑制するための技術が種々提案されている。例えば、木造建築物において、柱と柱との間に斜めに筋交いを設ける技術が知られている(例えば特許文献1)。また、例えば、木造建築物において、柱と桁(梁)との連結部に連結を強化する金具を固定する技術が知られている(例えば特許文献2)。
【0003】
また、橋梁として、熱膨張等による破損を抑制するために、上部構造物(橋桁など)がすべり支承によって下部構造物(橋脚又は橋台)に支持されているものがある。このような橋梁においては、上部構造物が下部構造物から落下するおそれがある。そこで、支承付近において上部構造物と下部構造物とに両端が接続された可撓性部材(チェーンなど)が設けられることがある(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−255334号公報
【特許文献2】特開2008−138493号公報
【特許文献3】特開2012−012867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地震による建造物の崩壊を防ぐための(耐震のための)設計法乃至は設計基準は、過去にない、大規模な地震乃至は地震による被害等が生じるたびに見直され、改善されている。しかし、裏を返せば、地震による建造物の崩壊を防ぐという設計思想の技術は、過去にない大規模な地震等の想定外の事象(不確実性)に対して脆弱である。従って、不確実性に対する対策が施された建造物が提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る建造物は、所定の水平方向において相対移動不可能に連結された2つの部位を含む建造物本体と、前記建造物本体の、前記水平方向の一方側及び他方側へ傾く変形のうち前記一方側へ傾く変形についてのみ、当該変形に伴う前記2つの部位同士の移動を規制する第1ストッパと、を有する。
【0007】
好適には、前記第1ストッパは、前記一方側へ傾く変形に伴って互いに離反するとともに前記他方側へ傾く変形に伴って互いに近接する前記2つの部位に両端が接続された可撓性部材を含む。
【0008】
好適には、前記可撓性部材は、緩んだ状態である。
【0009】
好適には、前記建造物本体は、前記水平方向において互いに離れて立設された2つの立設部材と、前記2つの立設部材に架け渡され、前記2つの立設部材それぞれに対して前記水平方向において移動不可能に連結された被支持部材と、を含み、前記可撓性部材は、一端が前記被支持部材に接続され、他端が前記2つの立設部材のうちの一つに接続されている。
【0010】
好適には、前記可撓性部材は、前記一端から、下方へ、且つ、前記水平方向の前記他方側へ延び、前記他端に至る。
【0011】
好適には、前記第1ストッパは、前記一方側へ傾く変形に伴って互いに近接するとともに前記他方側へ傾く変形に伴って互いに離反する前記2つの部位の間に位置し、前記2つの部位の一方に対して離反可能な剛性部材を含む。
【0012】
好適には、前記剛性部材は、遊間を介して前記他方の部位と対向している。
【0013】
好適には、前記建造物本体は、前記水平方向において互いに離れて立設された2つの立設部材と、前記2つの立設部材に架け渡され、前記2つの立設部材それぞれに対して前記水平方向において移動不可能に連結された被支持部材と、を含み、前記剛性部材は、前記被支持部材に前記水平方向及び鉛直方向に移動不可能に連結されるとともに前記2つの立設部材のうちの一つと対向し、又は、前記2つの立設部材のうちの一つに前記水平方向及び鉛直方向に移動不可能に連結されるとともに前記被支持部材に対向している。
【0014】
好適には、前記剛性部材は、前記被支持部材に前記水平方向及び鉛直方向に移動不可能に連結され、前記被支持部材の下方に位置するとともに前記2つの立設部材のうちの前記一つに対して前記水平方向の前記他方側に位置し、前記2つの立設部材のうちの前記一つと対向している。
【0015】
好適には、前記一方側及び前記他方側へ傾く変形のうち前記他方側へ傾く変形についてのみ、当該変形に伴う前記建造物本体内の2つの部位同士の移動を規制し、規制を開始するときの前記建造物本体の変形量が前記第1ストッパよりも大きい第2ストッパを更に有する。
【0016】
好適には、前記建造物本体及び前記第1ストッパを含む建造物全体として、前記一方側へ傾く変形に対する強度が前記他方側へ傾く変形に対する強度よりも高い。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成によれば、建造物の倒壊の方向に指向性を持たせることができる。その結果、例えば、想定外の地震によって建造物が倒壊したとしても、その倒壊による更なる被害を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)及び図1(b)は本発明の複数の実施形態に共通の設計思想及び意義を説明するための模式的な正面図。
図2図2(a)及び図2(b)は本発明の第1実施形態に係る建造物の要部を示す模式的な正面図。
図3図3(a)〜図3(c)は第1実施形態の第1ストッパ及びその周辺を拡大して示す模式的な正面図。
図4】本発明の第2実施形態に係る建造物の要部を示す模式的な正面図。
図5図5(a)及び図5(b)は本発明の第3実施形態に係る建造物の要部を示す模式的な正面図。
図6図6(a)〜図6(c)は第3実施形態の第1ストッパ及びその周辺を拡大して示す模式的な正面図。
図7】本発明の第4実施形態に係る建造物の要部を示す模式的な正面図。
図8図8(a)〜図8(f)は本発明の第5実施形態〜第8実施形態並びに第1変形例及び第2変形例に係る建造物の要部を模式的に示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、第2実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と同一又は類似する構成については、既に説明した実施形態の構成に付した符号と同一の符号を付し、また、説明を省略することがある。また、第2実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と対応(類似)する構成について、既に説明した実施形態の構成に付した符号と異なる符号を付しても、特に断りがない事項については、既に説明した実施形態の構成と同様である。
【0020】
実施形態の説明に用いる図面は、基本的に正面図のみであり、紙面右側、紙面左側及び紙面左右方向を単に右側、左側及び左右方向ということがある。
【0021】
<実施形態の設計思想及び意義>
図1(a)及び図1(b)は、後述する複数の実施形態に共通の設計思想及び意義を説明するための模式的な正面図である。
【0022】
まず、本発明の実施形態は、建造物の倒壊(崩壊)を前提としている。すなわち、本発明の実施形態に係る建造物の要部は、建造物の崩壊を防ぐためのものではなく、建造物の崩壊が生じたときに、被害の縮小及び/又は復旧の早期化を図るためのものである。従来の地震工学では、このような崩壊を前提とした地震対策はなされていない。
【0023】
図1(a)及び図1(b)に示した建造物1又は3(以下、1のみ符号を参照することがある。)は、例えば、土木構造物又は建築物である。土木構造物は、例えば、鉄道若しくは高速道路のための地上の橋梁である。建築物は、例えば、一般家屋若しくはビルである。このような建造物1の左側に、例えば、道路5、又は、建造物1よりも小規模な建造物(不図示)が隣接し、その道路5等には人7が存在する蓋然性が高いと仮定する。また、建造物1の右側には、そのような建造物は隣接せず、人が存在する蓋然性は低いと仮定する。
【0024】
このような状況においては、矢印y1及び想像線(2点鎖線)で示すように、建造物1は、左側に倒壊するよりも右側に倒壊することが望まれる。その方が、例えば、周囲の人的被害が少なくて済む。また、例えば、倒壊後、道路5によって、建造物1の復旧用の道路若しくはスペースを確保できる。また、例えば、道路5が被災地域へ緊急輸送を行うための緊急輸送道路として設定されている場合においては、緊急輸送道路の閉塞が回避される。
【0025】
そこで、本発明の実施形態に係る建造物は、その倒壊に指向性を有するように構成される。以下では、その具体的な構造について述べる。なお、倒壊すべき方向は、いずれの方向でもよいが、簡単のために、以下の複数の実施形態全てにおいて、紙面左右方向の右側に設定されている。
【0026】
<第1実施形態>
図2(a)及び図2(b)は、第1実施形態に係る建造物11の要部を示す模式的な正面図である。図2(a)は、地震が生じていない状態を示し、図2(b)は、倒壊すべき方向へ建造物11が傾いている状態を示している。
【0027】
建造物11は、建造物本体13と、建造物本体13の倒壊の方向を制御するための1以上の第1ストッパ15(ワンウェイガイダー)とを有している。
【0028】
建造物本体13は、図1を参照して説明した建造物1又は3に相当する。建造物本体13は、例えば、左右方向において互いに離れて立設された2つの立設部材17と、2つの立設部材17に架け渡された被支持部材19と、を含んでいる。なお、建造物本体13は、上記以外にも、2つの立設部材17に傾斜する筋交い等の部材を含んでいてもよい。
【0029】
立設部材17は、例えば、柱、又は、左右方向に面する壁である。被支持部材19は、例えば、桁、梁、又は、板状部材である。立設部材17及び被支持部材19の材料は、剛性を有する(可撓性でない)ものであればよく、例えば、木材、石材若しくは金属又はこれらの組み合わせである。立設部材17及び被支持部材19は、建造物本体13の外部(又は内部)から視認可能な部材であってもよいし、他の部材に囲まれたり、他の部材(材料)に埋設されたりして視認不可能な部材であってもよい。
【0030】
立設部材17は、例えば、基礎9上に立設されている。なお、基礎9は、建造物11の一部として捉えられてもよい。基礎9と立設部材17との間には、他の部材(例えば土台)が介在してよい。
【0031】
基礎9と2つの立設部材17とは連結され、2つの立設部材17と被支持部材19とは連結されている。連結は、移動(平行移動)を拘束するものであればよい。例えば、連結は、移動及び回転の双方が堅固に規制される、いわゆる剛接合であってもよいし、移動が規制されるものの回転は(比較的)許容されるピン接合であってもよい。ただし、ピン接合を含む場合においては、建造物本体13全体として連結部(滑節)回りの回転が規制される必要がある。
【0032】
上記の連結は、公知の各種の方法によってなされてよく、例えば、釘、ボルト(及びナット)、ほぞ及びほぞ穴、付属金具、接着、溶接、埋設、又は、これらの組み合わせによってなされてよい。なお、図では、被支持部材19が立設部材17上に載置されている。ただし、被支持部材19の端面が立設部材17の側面に当接するなどしてもよい。
【0033】
第1ストッパ15は、例えば、概略長尺状の部材であり、2つの立設部材17のそれぞれに設けられている。なお、第1ストッパ15は、2つの立設部材17の一方のみに設けられていてもよい。第1ストッパ15は、立設部材17と被支持部材19との連結部付近において、立設部材17に対して、建造物本体13が倒壊すべきでない方向(左側)に位置している。
【0034】
なお、立設部材17及び被支持部材19と同様に、第1ストッパ15は、建造物本体13の外部(又は内部)から視認可能に設けられていてもよいし、他の部材に囲まれることなどにより視認不可能に設けられていてもよい。
【0035】
図3(a)〜図3(c)は、第1ストッパ15及びその周辺を拡大して示す模式的な正面図である。図3(a)は、地震前の状態を示し、図3(b)は、倒壊すべきでない方向へ建造物11が傾いている状態を示し、図3(c)は、倒壊すべき方向へ建造物11が傾いている状態を示している。
【0036】
第1ストッパ15は、可撓性部材21を含んで構成されている。可撓性部材21は、例えば、ロープ又はチェーンである。ロープは、金属からなるもの(いわゆるワイヤ)であってもよいし、繊維からなるものであってもよい。なお、可撓性部材21は、紙面貫通方向に広がる平面状のもの(例えば網状若しくはシート状)のものであってもよい。
【0037】
可撓性部材21は、一端が被支持部材19に接続され、他端が立設部材17に接続されている。また、可撓性部材21は、被支持部材19から、下方へ、且つ、倒壊すべき方向(右側)へ延びている。なお、可撓性部材21は、平面視において、倒壊が制御される方向(左右方向)に平行である必要はなく、ある程度の角度(例えば45°未満)で傾斜していてもよい。
【0038】
可撓性部材21の両端の接続は、適宜な方法によってなされてよい。図示の例では、図3(a)に符号を示すように、可撓性部材21の両端それぞれに、被支持部材19又は立設部材17に固定された固定ブロック23と、固定ブロック23と可撓性部材21の端部とを紙面貫通方向(倒壊が制御される方向に直交する水平方向)の軸回りに相対回転可能に連結する軸支機構25とが設けられている場合を例示している。なお、この接続の例、及び、第1ストッパ15は可撓性部材21が主たる部材である点から理解されるように、第1ストッパ15(可撓性部材21)の建造物本体13に対する接続は、移動が規制されれば、回転が許容されるものであってよい。
【0039】
なお、背景技術の欄において述べたように、橋梁においては、上部構造物の落下を防止するために、チェーン等を含む落下防止部材が利用されている。この落下防止部材が、第1ストッパ15として利用されてもよい。
【0040】
可撓性部材21は、例えば、緩みを有するように両端が建造物本体13に接続されている。従って、可撓性部材21は、風等の外乱がなく、また、地震等の揺れが生じていない状態においては、自重以上の張力を生じていない。なお、逆説的であるが、本実施形態において、緩みがある状態とは、外乱等がない状態において自重以下の張力しか生じていない状態であり、緩み(直線に対する湾曲)を明確に目視できなくてもよい(もちろん目視できれば緩みがあることは明らかである。)。
【0041】
図2(a)に示すように、通常の状態(地震前)において、基礎9、2つの立設部材17及び被支持部材19は、長方形を構成している。そして、図2(b)に示すように、地震により水平方向の力が加えられると、建造物本体13は、長方形が平行四辺形になるように変形しつつ傾く。具体的には、2つの立設部材17は、その力の方向へ互いに概ね同等の量で傾き、また、被支持部材19は、力の方向及び下方へ移動するも、傾斜は、立設部材17に比較してあまり生じない。
【0042】
図3(b)に示すように、倒壊すべきでない方向へ建造物本体13が変形しつつ傾くときは、第1ストッパ15と被支持部材19との接続位置と、第1ストッパ15と立設部材17との接続位置とは離れる。この際、第1ストッパ15が張力を生じることにより、上記の両接続位置の離反が規制され、ひいては、倒壊すべきでない方向への建造物本体13の倒壊が抑制される。
【0043】
一方、図3(c)に示すように、倒壊すべき方向へ建造物本体13が変形しつつ傾くときは、上記とは逆に、第1ストッパ15と被支持部材19との接続位置と、第1ストッパ15と立設部材17との接続位置とは近接する。この際、第1ストッパ15は撓むだけであり、上記の両接続位置の近接を規制しない。ひいては、建造物本体13は、倒壊すべきでない方向よりも、倒壊すべき方向へ倒壊しやすくなっている。
【0044】
なお、図2及び図3では、上記の作用の理解を容易にするために、部材間の連結部が滑節であるかのように建造物本体13の変形を図示している。ただし、連結部が剛節であっても、部材の曲げ変形、及び/又は、現実的には剛節といえども回転が生じることなどから、上記と同様の作用は生じ得る。
【0045】
また、本実施形態とは異なり、被支持部材19が左右方向において立設部材17の1つ又は2つに対して移動可能である(連結部がすべり支点である)と仮定する。この場合、立設部材17が倒壊すべきでない方向(左側)に傾斜しても、第1ストッパ15の張力によって被支持部材19が引き寄せられ、被支持部材19が立設部材17に対して右側にずれるので、建造物本体13の倒壊は進行してしまう。従って、例えば、背景技術の欄において述べた、上部構造物の落下を防止するためのチェーンを有する橋梁は、本実施形態の建造物11における上述の作用を生じない。
【0046】
第1ストッパ15の両端の接続位置は、適宜に設定されてよい。例えば、第1ストッパ15の配置範囲を小さくする観点からは、両端の接続位置は、被支持部材19と立設部材17との連結部に近いことが好ましい。一方、例えば、張力に対して建造物本体13の変形を規制するモーメントを大きくする観点からは、両端の接続位置は、被支持部材19と立設部材17との連結部から離れていることが好ましい。従って、状況に応じて適宜に設定されてよい。
【0047】
第1ストッパ15の強度(例えば破断に至る力によって判断されてよい)は、建造物本体13の倒壊の指向性に影響を及ぼすように、建造物本体13の強度に対して適宜に設定されてよい。ただし、第1ストッパ15は、耐震設計のように建造物本体13の倒壊を完全に防止することを意図したものではなく、あくまで左右方向における相対的な倒壊しにくさを実現できればよいので、耐震用の補強部材(例えば筋交い)ほどの強度は有していなくてもよい(当該強度を有していてもよい)。例えば、第1ストッパ15は、その配置数にもよるが、筋交いほどの強度があれば、倒壊の指向性に影響を及ぼすことができ、また、筋交いほどの強度未満とされてもよい。
【0048】
緩みの量は、第1ストッパ15による変形の規制が開始されるときの建造物本体13の変形量を規定する。すなわち、緩みの量が大きければ、規制が開始されるときの変形量は大きくなる。緩みの量は、適宜に設定されてよい。ただし、緩みの量の最大値は、倒壊の指向性に影響を及ぼし得る値とされる。例えば、建造物本体13の変形量(振幅)がある程度まで大きくなると、倒壊すべきでない方向へ変形した建造物本体13がその反対方向へ復帰することは困難である。従って、そのような変形量に至る前に規制が開始されるように、建造物本体13の強度等に基づいて緩み量は設定される。
【0049】
建造物本体13は、例えば、概ね左右対称の構造とされることなどにより、右側への倒壊の蓋然性と左側への倒壊の蓋然性とは同等である。従って、建造物本体13及び第1ストッパ15を含む建造物11全体としては、倒壊すべきでない方向よりも倒壊すべき方向へ倒壊しやすくなっている。
【0050】
また、建造物本体13の構造のみで、左右方向において一方側よりも他方側へ倒壊しやすくなっている場合がある。このような場合、第1ストッパ15は、倒壊しやすい側が倒壊すべき側に一致する建造物本体13において、その指向性を強くするために設けられてもよいし、倒壊しやすい側が倒壊すべでない側に一致する建造物本体13において、倒壊しやすい側への倒壊を低減するために設けられてもよい。後者において、建造物本体13及び第1ストッパ15を含む建造物11全体は、倒壊すべきでない側よりも倒壊すべき側へ倒壊しやすくなっていることが好ましいが、第1ストッパ15によって倒壊すべきでない側への倒壊の蓋然性が減じられているだけでもよい。
【0051】
建造物11全体としての倒壊の指向性(傾く変形に対する強度の左右間の相対比較)は、例えば、シミュレーション計算、若しくは、実験に基づく類推から可能である。ただし、建造物本体13が概ね左右対称の構造であれば、計算乃至は実験を行わなくても、第1ストッパ15によって付与された倒壊の指向性によって判断できる。
【0052】
以上のとおり、本実施形態では、建造物11は、建造物本体13と、第1ストッパ15とを有している。第1ストッパ15は、建造物本体13の、所定の水平方向(紙面左右方向)の一方側及び他方側へ傾く変形(倒壊に至る変形)のうち一方側(左側、倒壊すべきでない方向)へ傾く変形についてのみ、当該変形に伴う建造物本体13内の2つの部位(本実施形態では被支持部材19の端部及び立設部材17の上部)同士の移動(本実施形態では離反)を規制する。この規制される2つの部位は、左右方向において移動不可能に連結された部位(部材)である。
【0053】
従って、図3を参照して説明したように、建造物11の倒壊に指向性を持たせることができる。これにより、図1を参照して説明したように、想定外の規模の地震など、不確実性に対しても被害の抑制及び/又は早期の回復等を図ることができる。別の観点では、第1ストッパ15は、耐震性のための補強部材(例えば筋交い)のように、建造物本体13の倒壊自体を抑制するものではないことから、想定外の地震が生じたときに破損しない強度を有している必要はなく、建造物本体13が左右方向のいずれに倒壊しやすいかに影響を及ぼす程度の強度を有していればよい。その結果、例えば、想定外の規模の地震が生じたからといって、第1ストッパ15の強度及び数等を見直す必要性は極めて低い。
【0054】
また、本実施形態では、第1ストッパ15は、建造物本体13内の左側(倒壊すべきでない方向)へ傾く変形に伴って互いに離反するとともに右側へ傾く変形に伴って互いに近接する2つの部位(被支持部材19及び立設部材17)に両端が接続された可撓性部材21を含む。
【0055】
従って、可撓性部材21の両端を建造物本体13に接続する簡便な構造で、倒壊の指向性を実現できる。その結果、例えば、コストを抑えることができ、また、既存の建造物本体13に対する取り付けも容易である。また、例えば、建造物本体13が左右方向だけでなく紙面貫通方向及び紙面上下方向に揺れても、可撓性を有していることから破損のおそれは低く、左右方向における倒壊の指向性を付与する機能を維持できる。また、例えば、第1ストッパ15が立設部材17に力を及ぼす位置及び面積は、接続用の部材(固定ブロック23)によって規定され、一定且つ広範囲にしやすく、後述する第3実施形態に比較して、第1ストッパ15が立設部材17の損傷に及ぼす影響を予測しやすい。
【0056】
また、本実施形態では、可撓性部材21は、緩んだ状態である。
【0057】
従って、例えば、第1ストッパ15は、地震が生じていない状態においては、建造物本体13の強度に殆ど影響を及ぼさない。また、例えば、倒壊までには至らない地震において、耐震設計で想定された損傷(曲げ破壊、せん断破壊)とは異なる損傷が生じるおそれが低減される。その結果、例えば、建造物本体13の設計自体は従来の設計と同様でよく、従来の耐震のための設計に混乱乃至は複雑化を招くおそれは低い。また、例えば、既存の建造物本体13に対して第1ストッパ15を取り付けても、その耐震性が変化するおそれは低い。さらに、第1ストッパ15自体も、地震前において又は小規模な地震において張力(自重又は風等による軽微なものを除く)が付与されないことから、大規模な地震前に破損するおそれが低く、長期に亘って信頼性が維持される。
【0058】
また、本実施形態では、建造物本体13は、左右方向において互いに離れて立設された2つの立設部材17と、2つの立設部材17に架け渡され、2つの立設部材17それぞれに対して左右方向に移動不可能に連結された被支持部材19と、を含む。可撓性部材21は、一端が被支持部材19に接続され、他端が2つの立設部材17のうちの一つに接続されている。
【0059】
従って、例えば、立設部材17間に第1ストッパ15を設ける場合(後述する図8(b)参照)に比較して、第1ストッパ15を小型化できる。また、例えば、立設部材17の下部と基礎9との間に第1ストッパ15を設ける場合(後述する図8(c)参照)に比較して、建造物本体13の下部に第1ストッパ15のためのスペースは不要である。また、例えば、地震による傾斜が大きくなりやすい立設部材17の上部において変形を抑制できる。
【0060】
また、本実施形態では、可撓性部材21は、被支持部材19に接続された一端から、下方へ、且つ、左右方向の右側(倒壊すべき方向)へ延び、立設部材17に接続された他端に至る。
【0061】
従って、例えば、可撓性部材21を立設部材17から被支持部材19に垂れさせる場合(後述する図8(d)参照)に比較して、立設部材17を被支持部材19の上方へ突出させる必要はなく、多くの種類の建造物に対して適用可能である。すなわち、汎用性が高い。
【0062】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係る建造物31の要部を示す模式的な正面図である。
【0063】
建造物31は、第1実施形態の建造物11に加えて、第2ストッパ16を有している点のみが建造物11と相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0064】
第2ストッパ16の構造は、例えば、図3に示した第1ストッパ15の構造と同様である。すなわち、第2ストッパ16は、例えば、図3に示した、可撓性部材21、固定ブロック23及び軸支機構25を有している。また、第2ストッパ16は、例えば、図2に示した第1ストッパ15と同様に、一端が被支持部材19に接続され、他端が立設部材17に接続されている。また、被支持部材19から、下方へ、且つ、左右方向に延びて、立設部材17に至っている。従って、第2ストッパ16は、第1ストッパ15と同様に、建造物本体13の傾きに伴う被支持部材19と立設部材17との離反を規制可能である。
【0065】
ただし、第2ストッパ16は、左右方向(倒壊が制御される方向)において、第1ストッパ15とは反対側に設けられている。すなわち、被支持部材19から、左右方向の左側(倒壊すべきでない方向)に延びて、立設部材17に至っている。従って、第2ストッパ16は、第1ストッパ15とは逆に、倒壊すべき方向への建造物本体13の変形を規制する。
【0066】
また、第2ストッパ16は、例えば、両端の接続位置が立設部材17に関して第1ストッパ15の両端の接続位置と線対称の位置とされており、また、緩みの量が第1ストッパ15よりも大きくされている。従って、第2ストッパ16は、被支持部材19と立設部材17との離反の規制を開始する(自重を超える張力を発揮し始める)ときの建造物本体13の変形量が、第1ストッパ15よりも大きい。
【0067】
なお、緩みの量は、例えば、接続位置間の距離(直線距離)とストッパの長さとの差によって判断されてよい。また、建造物本体13の変形量は、例えば、立設部材17の地震前の状態に対する傾斜角(鉛直方向に対する傾斜角)によって判断されてよい。
【0068】
以上のとおり、本実施形態では、建造物31は、第2ストッパ16を有し、第2ストッパ16は、左右方向へ傾く変形のうち左側(倒壊すべき方向)へ傾く変形についてのみ、変形に伴う建造物本体13内の2つの部位(被支持部材19及び立設部材17)同士の移動(本実施形態では離反)を規制し、第1ストッパ15よりも規制を開始するときの建造物本体13の変形が大きい。
【0069】
従って、第1ストッパ15及び第2ストッパ16は、左右方向における倒壊を抑制しつつ、倒壊の指向性を付与する。すなわち、これらの部材は、耐震性に寄与しつつ、耐震性とは別の概念の効果に寄与する。その結果、全体として小型且つ効率的に地震に備えることができる。
【0070】
<第3実施形態>
図5(a)及び図5(b)は、第3実施形態に係る建造物41の要部を示す模式的な正面図(図2(a)及び図2(b)に相当する図)である。
【0071】
第1実施形態の第1ストッパ15は、部材間の離反を規制した。これに対して、本実施形態の第1ストッパ45は、部材間の近接を規制する。具体的には、以下のとおりである。
【0072】
第1ストッパ45は、例えば、立設部材17と被支持部材19との接合部付近に設けられたブロック状の剛性部材である。なお、第1ストッパ45が2つの立設部材17の一方のみ又はそれぞれに設けられてよいことは、第1実施形態と同様である。
【0073】
第1ストッパ45は、例えば、被支持部材19の下方において、被支持部材19に固定されている。すなわち、第1ストッパ45は、被支持部材19に対して移動(平行移動)及び回転が規制されている。固定は、公知の各種の方法によってなされてよい。例えば、釘、ボルト及びナット、接着、溶接、又は、これらの組み合わせによってなされてよい。なお、後述する作用から理解されるように、第1ストッパ45は、被支持部材19に対して移動が規制されればよいから、回転可能であってもよい。
【0074】
また、第1ストッパ45は、立設部材17に対して倒壊すべき方向(右側)に位置し、立設部材17と左右方向において対向している。ただし、第1ストッパ45は、立設部材17に対しては固定されていない。すなわち、第1ストッパ45は、立設部材17から抵抗力を受けずに離反可能である。より具体的には、例えば、第1ストッパ45は、遊間47(図5(a))を介して立設部材17に対向している。
【0075】
第1ストッパ45の形状は適宜に設定されてよい。例えば、第1ストッパ45の形状は、既に述べたように、ブロック状(塊状)であり、より具体的には、例えば、被支持部材19及び立設部材17に面する平面を有する立方体、直方体若しくは三角柱、又は、鉛直若しくは水平な円柱形である。なお、図5では、直方体状の第1ストッパ45を示し、後述する図6では、三角柱の第1ストッパ45を示している。このようなブロック状の形状であれば、後述するように第1ストッパ45に圧縮力が加えられたときに第1ストッパ45の変形等が抑制される。
【0076】
第1ストッパ45の材料も適宜に設定されてよい。なお、実施形態の説明において、剛性(剛性部材)の語は、第1ストッパ15の可撓性(可撓性部材)に対する対義語として用いられており、その意味は、広く解釈されてよい。具体的には、後の作用の説明から理解されるように、剛性部材は、圧縮力を発揮できればよい。例えば、剛性部材は、木材、石材、金属又はこれらの組み合わせ等からなる狭義の剛性部材に限定されず、弾性材料(例えば硬質若しくは軟質のゴム)、粘弾性材料(例えば特定の種類のゴム又は樹脂)、又は、これら材料からなる部材と狭義の剛性部材との組み合わせによって構成されてもよい。
【0077】
図6(a)〜図6(c)は、第1ストッパ45及びその周辺を拡大して示す模式的な正面図(図3(a)〜図3(c)に相当する図)である。
【0078】
第1実施形態において述べたように、また、図5(b)に示すように、建造物本体13に水平方向の力が加えられると、建造物本体13は、基礎9、2つの立設部材17及び被支持部材19により構成された長方形が平行四辺形になるように変形しつつ傾く。
【0079】
図6(b)に示すように、倒壊すべきでない方向へ建造物本体13が変形しつつ傾くときは、立設部材17と被支持部材19とは近接する。この際、第1ストッパ45は、立設部材17に当接する。すなわち、第1ストッパ45は、被支持部材19と立設部材17とに挟まれる。これにより、立設部材17と被支持部材19との近接が規制され、ひいては、倒壊すべきでない方向への建造物本体13の倒壊が抑制される。
【0080】
一方、図6(c)に示すように、倒壊すべき方向へ建造物本体13が変形しつつ傾くときは、上記とは逆に、立設部材17と被支持部材19とは離反する。この際、第1ストッパ45は、立設部材17に固定されていないので、立設部材17から離れるだけであり、立設部材17と被支持部材19との離反を規制しない。ひいては、建造物本体13は、倒壊すべきでない方向よりも、倒壊すべき方向へ倒壊しやすくなっている。
【0081】
なお、第1実施形態と同様に、図示とは異なり、被支持部材19及び立設部材17等の連結部が剛節であっても、上記と同様の作用は生じ得る。
【0082】
第1ストッパ45の大きさは、適宜に設定されてよい。例えば、建造物41の小型化の観点からは、第1ストッパ45は小さいことが好ましい。一方、第1ストッパ45、被支持部材19、立設部材17に加えられる圧縮力を小さくする観点、又は、圧縮力の作用する位置を被支持部材19と立設部材17との連結部から離してモーメントを大きくする観点からは、第1ストッパ45は大きくされることが好ましい。
【0083】
第1ストッパ45の強度(例えば圧壊に至る力によって判断されてよい)は、第1実施形態と同様に適宜に設定されてよい。例えば、筋交いに加えられる軸方向の力と同等の大きさの圧縮力に耐えられる強度とされてよい。ただし、第1実施形態と同様に、第1ストッパ45は、その配置される数等にもよるが、筋交いほどの強度は不要である。
【0084】
遊間47の大きさ(例えば左右方向の距離若しくは連結部回りの角度)は、第1ストッパ45による規制が開始されるときの建造物本体13の変形量を規定する。すなわち、遊間47が大きければ、規制が開始されるときの変形量は大きくなる。遊間47の大きさも、緩みの量と同様に、倒壊の指向性に影響を及ぼし得る範囲内(倒壊すべきでない方向に傾いた建造物本体13が倒壊すべき方向へ復帰できる変形量に対応する大きさ以下)で適宜に設定されてよい。
【0085】
以上のとおり、本実施形態では、第1実施形態と同様に、建造物41は、建造物本体13の、所定の水平方向(紙面左右方向)の一方側及び他方側へ傾く変形(倒壊に至る変形)のうち一方側(左側、倒壊すべきでない方向)へ傾く変形についてのみ、当該変形に伴う建造物本体13内の2つの部位(本実施形態では被支持部材19の端部及び立設部材17の上部)同士の移動(本実施形態では近接)を規制する第1ストッパ45と、を有している。
【0086】
従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。すなわち、建造物11の倒壊に指向性を持たせることができる。その結果、例えば、不確実性に対しても被害の抑制及び/又は早期の回復等を図ることができる。また、例えば、想定外の地震の発生によって第1ストッパ45の強度及び数等の見直しの必要性が生じる蓋然性も極めて低い。
【0087】
また、本実施形態では、第1ストッパ45は、建造物本体13内の左側(倒壊すべきでない方向)へ傾く変形に伴って互いに近接するとともに右側(倒壊すべき方向)へ傾く変形に伴って互いに離反する2つの部位(立設部材17及び被支持部材19)の間に位置し、2つの部位の一方(立設部材17)に対して離反可能な剛性部材を含む。
【0088】
従って、剛性部材を固定するだけの簡便な構造で、倒壊の指向性を実現できる。その結果、例えば、コストを抑えることができ、また、既存の建造物本体13に対する取り付けも容易である。また、例えば、第1実施形態の第1ストッパ15は、破断すると、部材間の離反を規制する機能を完全に失うが、第1ストッパ45は、破損したとしても、部材間(本実施形態では被支持部材19及び立設部材17)に挟まれている限り、部材間の近接を規制し得る。なお、既に述べたように、第1実施形態は、例えば、本実施形態に比較して、第1ストッパ15が立設部材17に力を及ぼす位置及び面積を一定且つ広範囲にしやすい。
【0089】
また、本実施形態では、第1ストッパ45(剛性部材)は、遊間を介して他方の部位(立設部材17)と対向している。
【0090】
従って、第1実施形態の第1ストッパ15が緩みを有していることによる効果と同様の効果が奏される。例えば、耐震設計で想定された損傷に及ぼす影響が低減され、耐震設計に混乱乃至は複雑化を招くおそれは低く、また、既存の建造物本体13に対して第1ストッパ45を取り付けても、その耐震性が変化するおそれは低い。さらに、第1ストッパ45自体も、大規模な地震前に小規模な地震等によって破損するおそれが低く、長期に亘って信頼性が維持される。剛性部材が建造物本体13に当接していると、その当接位置が建造物本体13の破損の起点になりやすいが、そのようなおそれも減じられる。
【0091】
また、本実施形態では、建造物本体13は、左右方向において互いに離れて立設された2つの立設部材17と、2つの立設部材17に架け渡され、2つの立設部材17それぞれに対して左右方向において移動不可能に連結された被支持部材19と、を含む。第1ストッパ45(剛性部材)は、被支持部材19に左右方向及び鉛直方向に移動不可能に連結され、2つの立設部材17のうちの一つと対向し、又は、2つの立設部材17のうちの一つに左右方向及び鉛直方向に移動不可能に連結され、被支持部材19に対向している(本実施形態では前者)。
【0092】
従って、例えば、立設部材17間に第1ストッパ45を設ける場合(不図示)に比較して、第1ストッパ45を小型化できる。また、例えば、立設部材17の下部と基礎9との間に第1ストッパ45を設ける場合(不図示)に比較して、建造物本体13の下部に第1ストッパ45のためのスペースは不要である。また、例えば、地震による傾斜が大きくなりやすい立設部材17の上部において変形を抑制できる。
【0093】
また、本実施形態では、第1ストッパ45(剛性部材)は、被支持部材19に左右方向及び鉛直方向に移動不可能に連結され、被支持部材19の下方に位置するとともに2つの立設部材17のうちの一つに対して左右方向の右側(倒壊すべき方向)に位置し、立設部材17と対向している。
【0094】
従って、例えば、第1ストッパ45を被支持部材19の上方に位置させる場合(不図示)に比較して、立設部材17を被支持部材19の上方へ突出させる必要はなく、多くの種類の建造物に対して適用可能である。すなわち、汎用性が高い。
【0095】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態に係る建造物51の要部を示す模式的な正面図である。
【0096】
第2実施形態(図4)は、第1実施形態に対して、第1ストッパ15の構造と同様の構造で、第1ストッパ15よりも緩みの量が大きい第2ストッパ16を設けたものであった。これと同様に、本実施形態は、第3実施形態に対して、第1ストッパ45の構造と同様の構造で、第1ストッパ45よりも遊間47が大きい第2ストッパ46を設けたものである。具体的には、以下のとおりである。
【0097】
建造物41は、第1ストッパ45に加えて、第2ストッパ46を有し、第2ストッパ46は、左右方向へ傾く変形のうち左側(倒壊すべき方向)へ傾く変形についてのみ、当該変形に伴う建造物本体13内の2つの部位(被支持部材19及び立設部材17)同士の移動(本実施形態では近接)を規制し、第1ストッパ45よりも規制を開始するときの建造物本体13の変形が大きい。
【0098】
従って、第2実施形態と同様に、第1ストッパ45及び第2ストッパ46は、左右方向における倒壊を抑制しつつ、倒壊の指向性を付与する。すなわち、これらの部材は、耐震性に寄与しつつ、耐震性とは別の概念の効果に寄与する。その結果、全体として小型且つ効率的に地震に備えることができる。
【0099】
<第5実施形態〜第8実施形態、並びに、第1変形例及び第2変形例>
図8(a)〜図8(f)は、第5実施形態〜第8実施形態、並びに、第1変形例及び第2変形例に係る建造物の要部を模式的に示す正面図である。
【0100】
図8(a)に示す第5実施形態に係る建造物61では、第1ストッパ45(剛性部材)は、立設部材17に固定され、被支持部材19に対して対向している。この構成においても、倒壊の指向性が実現される。
【0101】
図8(b)に示す第6実施形態に係る建造物71では、第1ストッパ15(可撓性部材)は、下方側が上方側に対して倒壊すべき方向(右側)に位置するように、その両端が2つの立設部材17に接続されている。この構成においても、倒壊の指向性が実現される。
【0102】
図8(c)に示す第7実施形態に係る建造物81では、第1ストッパ15(可撓性部材)は、一端が立設部材17に接続され、他端が基礎9に接続され、立設部材17から、倒壊すべき方向(右側)に延びつつ、基礎9へ至っている。この構成においても、倒壊の指向性が実現される。
【0103】
図8(d)に示す第8実施形態に係る建造物91では、第1ストッパ15(可撓性部材)は、第1実施形態と同様に、一端が立設部材17に接続され、他端が被支持部材19に接続されている。ただし、立設部材17の被支持部材19よりも上方に位置する部分から、倒壊すべき方向(右側)に延びつつ、被支持部材19に至っている。この構成においても、倒壊の指向性が実現される。
【0104】
図8(e)に示す第1変形例に係る建造物101では、2つの立設部材17の内側にのみ、第1ストッパ15(可撓性部材)及び第2ストッパ16(可撓性部材)が設けられている。この構成においても、倒壊の指向性及び耐震補強が実現される。
【0105】
図8(f)に示す第2変形例に係る建造物111では、2つの立設部材17の外側にのみ、第1ストッパ15(可撓性部材)及び第2ストッパ16(可撓性部材)が設けられている。この構成においても、倒壊の指向性及び耐震補強が実現される。
【0106】
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0107】
上述した実施形態及び変形例は、適宜に組み合わされてよい。
【0108】
例えば、第1ストッパ15(可撓性部材)及び第1ストッパ45(剛性部材)が、共に一の建造物本体13に設けられてもよいし、共に同一の部材(例えば1本の立設部材17)に対して設けられてもよい。同様に、例えば、第2ストッパ16(可撓性部材)及び第2ストッパ46(剛性部材)が混在してもよいし、第1ストッパ15(可撓性部材)及び第2ストッパ46(剛性部材)が混在してもよいし、第1ストッパ45(剛性部材)及び第2ストッパ16(可撓性部材)が混在してもよい。
【0109】
また、例えば、図8(b)〜図8(f)においては、可撓性部材(第1ストッパ15及び第2ストッパ16)を示したが、可撓性部材に代えて、剛性部材(第1ストッパ45及び第2ストッパ46)が設けられてもよい。ただし、可撓性部材の配置位置と剛性部材の配置位置とは、第1実施形態(図2)と第3実施形態(図5)との比較から理解されるように、左右方向において互いに逆である。また、図8(b)において可撓性部材に代えて剛性部材を設ける場合、剛性部材は、筋交いのような形状にされるなど、固定位置と、対向位置とが高さ方向において異なる必要がある。図8(c)〜図8(f)において可撓性部材に代えて剛性部材を設ける場合、第3実施形態と図8(a)との比較から理解されるように、剛性部材は、当該剛性部材を挟む2部材のいずれに固定及び非固定とされてもよい。
【0110】
また、例えば、第1〜第4実施形態のように、立設部材17の上部と被支持部材の下部との間において近接及び/又は離反を規制することに加えて、図8(b)〜図8(d)に示した他の部材又は位置における近接及び/又は離反の規制が行われてもよい。いずれか2つ以上が適宜に互いに組み合わされてよい。
【0111】
可撓性部材及び剛性部材のいずれを用いるか、また、いずれの部材間において近接又は離反を規制するかによって、ストッパの取り付け位置は異なる。一方、建造物本体の構成によって、ストッパを設けるスペースを確保しやすい位置は異なる。従って、建造物本体の構成に基づいて、いずれかの態様が選択されてもよい。
【0112】
建造物本体の構成は、実施形態において説明したものに限定されない。例えば、建造物本体は、トラス構造によって構成され、鉛直な立設部材等を有していなくてもよい。なお、トラス構造であっても、現実には、連結された部材(部位)同士の移動が生じるから、本発明を適用できる。
【0113】
実施形態では、(基礎9を含まない狭義の)建造物本体13(立設部材17)は、基礎9上に連結され、ひいては、地面に対して固定的とされた。ただし、狭義の建造物本体は、免震装置を介して地面に対して水平方向に移動可能とされていてもよい。なお、この場合も、通常、少なくとも2つの立設部材の下部は、免震支承の上部構造を介して互いに移動不可能に連結されている。また、建造物本体13は、地面に固定される場合、立設部材17が地中に埋設されることなどによって固定されてもよい。
【0114】
ストッパによって移動(近接又は離間)が規制される2つの部位(部材)は、実施形態に例示したものに限定されない。例えば、2つの部材は、柱及び筋交いであってもよいし、基礎及び被支持部材であってもよい。また、2つの部材は、2階建て建造物の2階部分の部材であってもよい。この場合、1階部分の桁又は梁は、実施形態の基礎に相当する。また、2つの部位は、倒壊の方向が制御される方向に平行な同一線上に位置していなくてもよい。
【0115】
また、ストッパによって移動が規制される2つの部位(部材)は、倒壊が制御される方向における相対移動が不可能に、直接に又は間接に連結されていればよい。従って、例えば、長さ方向において下部構造物と上部構造物とが相対移動可能とされている橋梁であっても、幅方向において下部構造物と上部構造物との移動が規制されており、且つ、幅方向の倒壊の方向を制御可能にストッパが設けられていれば、本願発明に含まれる。
【0116】
ストッパを構成する可撓性部材は、緩んでいなくてもよい。同様に、ストッパを構成する剛性部材は、建造物本体との間に遊間を有していなくてもよい(接触していてもよい)。ストッパは、建造物本体の傾く変形を規制するときに衝撃を生じないように構成されていてもよい。例えば、ストッパは、弾性部材(例えばゴム又はばね)及び/又は粘弾性部材(粘弾性材料からなる部材又は空気式ダンパー)を含んで構成され、これらの部材によって張力又は圧縮力を吸収してもよい。
【0117】
第1ストッパ及び第2ストッパの規制が開始されるときの変形量を互いに異ならせる方法は、緩み又は遊間を互いに異ならせる方法に限定されない。例えば、可撓性部材の場合においては、緩みの定義にもよるが、緩みが同等であっても、両端の取付位置によって規制が開始されるときの変形量は変えることができる。同様に、剛性部材に場合においては、例えば、立設部材との左右方向の最短距離が同じであっても、その最短距離の位置(高さ)によって規制が開始されるときの変形量は変えることができる。
【符号の説明】
【0118】
11…建造物、13…建造物本体、15…第1ストッパ、17…立設部材、19…被支持部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8