特許第6496570号(P6496570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496570
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】冷却貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20190325BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20190325BHJP
   F25B 47/02 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   F25D11/00 101B
   F25B1/00 341G
   F25B1/00 341T
   F25B1/00 351T
   F25B1/00 351U
   F25B47/02 D
   F25B47/02 510H
   F25B1/00 361D
   F25B47/02 H
   F25B47/02 560
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-32890(P2015-32890)
(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-156518(P2016-156518A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2018年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西尾 正行
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/038364(WO,A1)
【文献】 特開平05−332658(JP,A)
【文献】 実開昭58−002584(JP,U)
【文献】 特開2012−154534(JP,A)
【文献】 特開2006−153341(JP,A)
【文献】 特開2009−063238(JP,A)
【文献】 特開2005−121309(JP,A)
【文献】 特開平10−259982(JP,A)
【文献】 特開2016−211754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00−31/00
F25B 1/00
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍庫としても冷蔵庫としても使用可能な冷却貯蔵庫であって、
回転速度が可変の圧縮機を有する冷却機と、
冷凍域から冷蔵域までの範囲で庫内設定温度の設定を受け付ける設定受付部と、
当該冷却貯蔵庫を制御する制御部と、
庫内温度を検出する庫内温度センサと、
を備え、
前記制御部は、前記庫内温度センサによって検出された庫内温度が前記庫内設定温度に対して第1の温度以上低下すると前記圧縮機の回転を停止させ、停止時間が最低停止時間以上に達し、且つ、庫内温度が前記庫内設定温度に対して第2の温度以上上昇すると前記圧縮機の回転を再開させ、
前記最低停止時間には、冷凍庫用の最低停止時間と、前記冷凍庫用の最低停止時間より短い冷蔵庫用の最低停止時間とがあり、
前記制御部は、前記庫内設定温度が0℃近傍の基準温度未満の場合は前記最低停止時間を前記冷凍庫用の最低停止時間に切り替え、前記基準温度以上の場合は前記冷蔵庫用の最低停止時間に切り替える、冷却貯蔵庫。
【請求項2】
請求項に記載の冷却貯蔵庫であって、
前記冷却機を構成している蒸発器に付着した霜を除霜する除霜ヒータを備え、
前記蒸発器の除霜方式には、前記圧縮機を停止させ、前記除霜ヒータによって前記蒸発器を加熱するヒータデフロスト方式と、前記圧縮機を停止させる一方、前記除霜ヒータによる加熱は行わないオフサイクルデフロスト方式とがあり、
前記制御部は、前記庫内設定温度が前記基準温度未満の場合は前記蒸発器の除霜方式を前記ヒータデフロスト方式に切り替え、前記基準温度以上の場合は前記オフサイクルデフロスト方式に切り替える、冷却貯蔵庫。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載の冷却貯蔵庫であって、
庫内温度を検出する庫内温度センサと、
外気温度を検出する外気温度センサと、
当該冷却貯蔵庫の開口縁部を加熱する結露防止ヒータと、
を備え、
前記制御部は、庫内温度と外気温度との差に対応する通電率が定義されている通電率設定から前記庫内温度センサによって検出された庫内温度と前記外気温度センサによって検出された外気温度との差に対応する通電率を取得し、前記結露防止ヒータの通電率を当該取得した通電率に変更し、
前記通電率設定には、冷凍庫用の通電率設定と、庫内温度と外気温度との差に対して前記冷凍庫用の通電率設定とは異なる通電率が定義されている冷蔵庫用の通電率設定とがあり、
前記制御部は、前記庫内設定温度が前記基準温度未満の場合は前記冷凍庫用の通電率設定に切り替え、前記基準温度以上の場合は前記冷蔵庫用の通電率設定に切り替える、冷却貯蔵庫。
【請求項4】
冷凍庫としても冷蔵庫としても使用可能な冷却貯蔵庫であって、
回転速度が可変の圧縮機を有する冷却機と、
冷凍域から冷蔵域までの範囲で庫内設定温度の設定を受け付ける設定受付部と、
当該冷却貯蔵庫を制御する制御部と、
庫内温度を検出する庫内温度センサと、
を備え、
前記圧縮機の制御方式には、
庫内温度が前記庫内設定温度まで低下すると庫内温度が前記庫内設定温度に維持される回転速度で回転させる冷凍庫用の制御方式と、
庫内温度が前記庫内設定温度まで低下しても庫内温度が前記庫内設定温度より低下する回転速度で回転させ、前記庫内温度センサによって検出された庫内温度が前記庫内設定温度に対して第1の温度以上低下すると回転を停止させるか又は回転速度を遅くし、庫内温度が前記庫内設定温度に対して第2の温度以上上昇すると回転を再開させる冷蔵庫用の制御方式と、
があり、
前記制御部は、前記庫内設定温度が0℃近傍の基準温度未満の場合は前記圧縮機の制御方式を前記冷凍庫用の制御方式に切り替え、前記基準温度以上の場合は前記冷蔵庫用の制御方式に切り替える、冷却貯蔵庫。
【請求項5】
請求項に記載の冷却貯蔵庫であって、
前記冷却機によって冷却された冷気を庫内に循環させる庫内ファンであって、回転速度を低速と高速とに切り替え可能な庫内ファンを備え、
前記庫内ファンの制御方式には、
庫内温度が前記庫内設定温度まで低下するまで高速で回転させ、前記庫内設定温度まで低下すると低速で回転させる冷凍庫用の制御方式と、
前記圧縮機が停止するまで高速で回転させ、前記圧縮機が停止している間、前記庫内ファンを停止させるか又は低速で回転させ、前記圧縮機の回転が再開されると高速で回転させる冷蔵庫用の制御方式と、
があり、
前記制御部は、前記圧縮機の制御方式を前記冷凍庫用の制御方式に切り替えた場合は前記庫内ファンの制御方式も前記冷凍庫用の制御方式に切り替え、前記圧縮機の制御方式を前記冷凍庫用の制御方式に切り替えた場合は前記庫内ファンの制御方式も前記冷蔵庫用の制御方式に切り替える、冷却貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
冷凍庫としても冷蔵庫としても使用可能な冷却貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍庫としても冷蔵庫としても使用可能な冷却貯蔵庫が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の冷蔵庫は回転速度が可変の圧縮機としてインバータ圧縮機を備え、インバータ圧縮機の回転数可変域を大きくすることで冷凍室を冷蔵温度帯に設定したり、冷蔵室を冷凍温度帯に設定したりできるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−106454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷凍庫としても冷蔵庫としても使用可能な冷却貯蔵庫では、冷凍庫として使用される場合のために、冷蔵庫のみとして使用される冷却貯蔵庫の冷却機より冷却能力の高い冷却機が用いられる。しかしながら、冷却機の冷却能力が高いと、冷却貯蔵庫が冷蔵庫として使用される場合に不都合がある。従来はこのような不都合について検討されていなかった。
【0005】
本明細書では、冷却貯蔵庫を冷凍庫としても冷蔵庫としても使用する場合の不都合を低減する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する冷却貯蔵庫は、冷凍庫としても冷蔵庫としても使用可能な冷却貯蔵庫であって、回転速度が可変の圧縮機を有する冷却機と、冷凍域から冷蔵域までの範囲で庫内設定温度の設定を受け付ける設定受付部と、当該冷却貯蔵庫を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記庫内設定温度が0℃近傍の基準温度未満の場合は当該冷却貯蔵庫の制御を冷凍庫用の制御に切り替え、前記基準温度以上の場合は冷蔵庫用の制御に切り替える。
【0007】
冷却貯蔵庫が冷凍庫として使用される場合のために冷却能力の高い冷却機を用いた場合、冷却貯蔵庫が冷蔵庫として使用される場合にも冷凍庫用の制御をそのまま適用すると適切に制御されないという不都合がある。
上記の冷却貯蔵庫によると、庫内設定温度が0℃近傍の基準温度未満の場合は冷凍庫用の制御に切り替え、基準温度以上の場合は冷蔵庫用の制御に切り替えて冷却貯蔵庫を制御するので、冷凍庫として使用される場合も冷蔵庫として使用される場合も冷却貯蔵庫を適切に制御できる。これにより、冷却貯蔵庫を冷凍庫としても冷蔵庫としても使用する場合の不都合を低減できる。
【0008】
また、上記の冷却貯蔵庫は、庫内温度を検出する庫内温度センサを備え、前記制御部は、前記庫内温度センサによって検出された庫内温度が前記庫内設定温度に対して第1の温度以上低下すると前記圧縮機の回転を停止させ、停止時間が最低停止時間以上に達し、且つ、庫内温度が前記庫内設定温度に対して第2の温度以上上昇すると前記圧縮機の回転を再開させ、前記最低停止時間には、冷凍庫用の最低停止時間と、前記冷凍庫用の最低停止時間より短い冷蔵庫用の最低停止時間とがあり、前記制御部は、前記庫内設定温度が前記基準温度未満の場合は前記最低停止時間を前記冷凍庫用の最低停止時間に切り替え、前記基準温度以上の場合は前記冷蔵庫用の最低停止時間に切り替えてもよい。
【0009】
上記の冷却貯蔵庫によると、庫内温度を「庫内設定温度−第1の温度」から「庫内設定温度+第2の温度」までの範囲にほぼ維持できる。ところで、圧縮機の回転を停止させた場合、その後に回転を再開させるときに冷却機内の圧力が不均一だと起動不良が起きることがある。このため、冷却機内の圧力が均一になるよう最低停止時間を長くすることが望ましい。しかしながら、冷蔵庫として使用される場合は最低停止時間が長いと庫内温度が上がり過ぎてしまう虞がある。
上記の冷却貯蔵庫によると、庫内設定温度が基準温度未満の場合は最低停止時間を冷凍庫用の最低停止時間に切り替え、基準温度以上の場合は冷蔵庫用の最低停止時間に切り替えるので、冷凍庫として使用される場合は起動不良をより確実に抑制しつつ、冷蔵庫として使用される場合に庫内温度が上がり過ぎてしまうことを抑制できる。
【0010】
また、上記の冷却貯蔵庫は、前記冷却機を構成している蒸発器に付着した霜を除霜する除霜ヒータを備え、前記蒸発器の除霜方式には、前記圧縮機を停止させ、前記除霜ヒータによって前記蒸発器を加熱するヒータデフロスト方式と、前記圧縮機を停止させる一方、前記除霜ヒータによる加熱は行わないオフサイクルデフロスト方式とがあり、前記制御部は、前記庫内設定温度が前記基準温度未満の場合は前記蒸発器の除霜方式を前記ヒータデフロスト方式に切り替え、前記基準温度以上の場合は前記オフサイクルデフロスト方式に切り替えてもよい。
【0011】
冷却貯蔵庫が冷凍庫として使用される場合は庫内温度が低いので霜を確実に溶かすためにヒータデフロスト方式によって除霜することが望ましい。これに対し、冷蔵庫として使用される場合は庫内温度が高いので、圧縮機の回転が停止して庫内温度が上昇すれば十分に霜が溶ける。にもかかわらず除霜ヒータによって霜を溶かすと電力の無駄となる。
上記の冷却貯蔵庫によると、庫内設定温度が基準温度未満の場合はヒータデフロスト方式に切り替え、基準温度以上の場合はオフサイクルデフロスト方式に切り替えるので、冷凍庫として使用される場合により確実に除霜しつつ、冷蔵庫として使用される場合に除霜の際の消費電力を抑制できる。
【0012】
また、上記の冷却貯蔵庫は、庫内温度を検出する庫内温度センサと、外気温度を検出する外気温度センサと、当該冷却貯蔵庫の開口縁部を加熱する結露防止ヒータと、を備え、前記制御部は、庫内温度と外気温度との差に対応する通電率が定義されている通電率設定から前記庫内温度センサによって検出された庫内温度と前記外気温度センサによって検出された外気温度との差に対応する通電率を取得し、前記結露防止ヒータの通電率を当該取得した通電率に変更し、前記通電率設定には、冷凍庫用の通電率設定と、庫内温度と外気温度との差に対して前記冷凍庫用の通電率設定とは異なる通電率が定義されている冷蔵庫用の通電率設定とがあり、前記制御部は、前記庫内設定温度が前記基準温度未満の場合は前記冷凍庫用の通電率設定に切り替え、前記基準温度以上の場合は前記冷蔵庫用の通電率設定に切り替えてもよい。
【0013】
冷却貯蔵庫が冷凍庫として使用される場合と冷蔵庫として使用される場合とでは庫内温度と外気温度との差が同じであっても結露のし易さが異なる。このため、冷蔵庫として使用される場合も冷凍庫として使用される場合と同じ通電率にすると、開口縁部が過剰に加熱されて電力の無駄となったり、逆に加熱が足りずに結露を防止しきれなかったりしてしまう。
上記の冷却貯蔵庫によると、庫内設定温度が基準温度未満の場合は冷凍庫用の通電率設定に切り替え、基準温度以上の場合は冷蔵庫用の通電率設定に切り替えるので、冷凍庫として使用される場合も冷蔵庫として使用される場合も、開口縁部が過剰に加熱されて電力の無駄となったり、逆に加熱が足りずに結露を防止しきれなかったりしてしまうことを抑制できる。
【0014】
また、上記の冷却貯蔵庫は、庫内温度を検出する庫内温度センサを備え、前記圧縮機の制御方式には、庫内温度が前記庫内設定温度まで低下すると庫内温度が前記庫内設定温度に維持される回転速度で回転させる冷凍庫用の制御方式と、庫内温度が前記庫内設定温度まで低下しても庫内温度が前記庫内設定温度より低下する回転速度で回転させ、前記庫内温度センサによって検出された庫内温度が前記庫内設定温度に対して第1の温度以上低下すると回転を停止させるか又は回転速度を遅くし、庫内温度が前記庫内設定温度に対して第2の温度以上上昇すると回転を再開させる冷蔵庫用の制御方式と、があり、前記制御部は、前記庫内設定温度が前記基準温度未満の場合は前記圧縮機の制御方式を前記冷凍庫用の制御方式に切り替え、前記基準温度以上の場合は前記冷蔵庫用の制御方式に切り替えてもよい。
【0015】
圧縮機の回転/停止を切り替える回数が多いとエネルギー効率が低下する。庫内温度が庫内設定温度に維持される回転速度で圧縮機を回転させると庫内温度が庫内設定温度に対して第1の温度以上低い温度まで低下し難くなるので、回転/停止が切り替えられる回数を減らすことができる。これによりエネルギー効率を向上させることができる。
ただし、冷蔵庫として使用される場合は冷却貯蔵庫の断熱扉が開閉される回数が多いので、断熱扉が開閉されたときに庫内温度を速やかに低下させるために、庫内温度が庫内設定温度より低下する回転速度で圧縮機を回転させることが望ましい。
上記の冷却貯蔵庫によると、庫内設定温度が基準温度未満の場合は圧縮機の制御方式を冷凍庫用の制御方式に切り替え、基準温度以上の場合は冷蔵庫用の制御方式に切り替えるので、冷凍庫として使用される場合にエネルギー効率を向上させつつ、冷蔵庫として使用される場合に庫内温度を速やかに低下させることができる。
【0016】
また、上記の冷却貯蔵庫は、前記冷却機によって冷却された冷気を庫内に循環させる庫内ファンであって、回転速度を低速と高速とに切り替え可能な庫内ファンを備え、前記庫内ファンの制御方式には、庫内温度が前記庫内設定温度まで低下するまで高速で回転させ、前記庫内設定温度まで低下すると低速で回転させる冷凍庫用の制御方式と、前記圧縮機が停止するまで高速で回転させ、前記圧縮機が停止している間、前記庫内ファンを停止させるか又は低速で回転させ、前記圧縮機の回転が再開されると高速で回転させる冷蔵庫用の制御方式と、があり、前記制御部は、前記圧縮機の制御方式を前記冷凍庫用の制御方式に切り替えた場合は前記庫内ファンの制御方式も前記冷凍庫用の制御方式に切り替え、前記圧縮機の制御方式を前記冷凍庫用の制御方式に切り替えた場合は前記庫内ファンの制御方式も前記冷蔵庫用の制御方式に切り替えてもよい。
【0017】
庫内温度が庫内設定温度に維持される回転速度で圧縮機を回転させる場合は、庫内温度が庫内設定温度まで低下した後も庫内ファンを速い回転速度で回転させたままにすると、庫内温度が庫内設定温度よりも低下してしまう虞がある。一方、庫内温度が庫内設定温度より低下する回転速度で圧縮機を回転させる場合は、庫内温度が庫内設定温度まで低下したときに庫内ファンの回転速度を遅くすると、庫内温度が庫内設定温度に対して第1の温度以上低い温度まで低下し難くなってしまう。
上記の冷却貯蔵庫によると、庫内温度が庫内設定温度に維持される回転速度で圧縮機を回転させる場合は、庫内温度が庫内設定温度まで低下すると庫内ファンの回転速度を遅くするので、庫内温度が庫内設定温度よりも低下してしまうことを抑制できる。一方、庫内温度が庫内設定温度より低下する回転速度で圧縮機を回転させる場合は、庫内温度が庫内設定温度まで低下しても庫内ファンを速い回転速度のまま回転させるので、庫内温度を庫内設定温度に対して第1の温度以上低い温度まで低下させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書で開示する冷却貯蔵庫によれば、冷却貯蔵庫を冷凍庫としても冷蔵庫としても使用する場合の不都合を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1に係る冷却貯蔵庫の正面図
図2図1に示すA−A線の断面図
図3】冷却貯蔵庫の電気的構成を示すブロック図
図4】冷凍庫用の制御を説明するためのグラフ
図5】冷蔵庫用の制御を説明するためのグラフ
図6】実施形態2に係る冷却貯蔵庫の電気的構成を示すブロック図
図7】ヒータデフロスト方式を説明するためのグラフ
図8】オフサイクルデフロスト方式を説明するためのグラフ
図9】実施形態3に係る冷却貯蔵庫の電気的構成を示すブロック図
図10】冷凍庫用の通電率設定と冷蔵庫用の通電率設定との違いを示すグラフ
図11】実施形態4に係る冷凍庫用の制御を説明するためのグラフ
図12】冷蔵庫用の制御を説明するためのグラフ
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図5に基づいて説明する。以降の説明において上下方向、及び、左右方向とは図1に示す上下方向、及び、左右方向のことをいい、前後方向とは図2に示す前後方向のことをいう。
【0021】
(1)冷却貯蔵庫の全体構成
図1を参照して、実施形態1に係る冷却貯蔵庫1の全体構成について説明する。冷却貯蔵庫1は業務用の4ドア式のものであり、前面開口の断熱箱体からなる貯蔵庫本体10を備えている。貯蔵庫本体10には前面開口を開閉する観音開き式の左右一対の断熱扉12が上下に二組取り付けられている。また、貯蔵庫本体10の下面には貯蔵庫本体10を支持する4つの脚部13が取り付けられている。
【0022】
貯蔵庫本体10の上には上側が開放された機械室11が設けられている。機械室11には制御部40(図3参照)や冷却ユニット30(図2参照)などが収容されている。また、機械室11の前面には操作部14が設けられている。操作部14は設定受付部の一例である。
【0023】
(2)冷却貯蔵庫の内部構造
図2に示すように、貯蔵庫本体10の左側の内壁面20、及び、後側の内壁面21には棚受部材22が固定されている。また、貯蔵庫本体10の図示しない右側の内壁面にも棚受部材22が固定されている。これらの棚受部材22には上下方向に複数の段部が設けられており、それらの段部によって棚網23が多段に支持されている。また、貯蔵庫本体10の天井壁10Aには略矩形の開口10Bが形成されている。
【0024】
冷却ユニット30は冷却機を構成するインバータ圧縮機31、凝縮器32、蒸発器33、及び、キャピラリチューブ(図示せず)を断熱性のユニット台35に取り付けることによってユニット化したものである。インバータ圧縮機31は回転速度が可変の圧縮機の一例である。
具体的には、インバータ圧縮機31、凝縮器32、及び、キャピラリチューブはユニット台35の上面に取り付けられており、蒸発器33はユニット台35の下面に取り付けられている。また、ユニット台35の下面には庫内温度を検出するための庫内温度センサ36が取り付けられている。
【0025】
ユニット台35は貯蔵庫本体10の天井壁10Aに形成されている開口10Bより一回り大きい略矩形に形成されており、開口10Bを塞ぐように天井壁10Aの上に配置されている。蒸発器33はユニット台35の下面に取り付けられているので機械室11には収容されておらず、天井(天井壁10A及びユニット台35)とダクト部37とによって構成される空気循環路に収容されている。
【0026】
ダクト部37は底壁37Aと底壁37Aの左右の縁部から上に向かって略平行に立ち上がる図示しない一対の側壁とを有しており、蒸発器33を下から覆うように貯蔵庫本体10の天井に掛止されている。ダクト部37は天井との間に空気循環路を形成するためのものであるとともに、蒸発器33に付着した霜が溶けた水である除霜水を受けるためのものである。
【0027】
ダクト部37の前側には吸込口が形成されており、その吸込口に上から庫内ファン38が嵌合装着されている。庫内ファン38が回転すると庫内の空気が空気循環路に吸い込まれ、蒸発器33によって冷却される。底壁37Aは後端が貯蔵庫本体10の後側の壁10Cまで達しておらず、蒸発器33によって冷却された空気は底壁37Aと後側の壁10Cとの間の隙間から庫内に吹き出される。
【0028】
底壁37Aの後端からは除霜水を排水するための排水溝37Bが後側に向かって延びている。排水溝37Bの先端部は貯蔵庫本体10の後側の壁10Cに形成されている排水用の穴に挿入されており、ダクト部37によって受けられた除霜水はその穴から庫外に排水される。
【0029】
(3)冷却貯蔵庫の電気的構成
次に、図3を参照して、冷却貯蔵庫1の電気的構成について説明する。制御部40には操作部14、庫内温度センサ36、及び、インバータ圧縮機31を駆動するインバータ回路42が接続されている。
【0030】
制御部40はCPU40A、ROM40B、RAM40Cなどを備えている。CPU40AはROM40Bに記憶されているプログラムを実行することによって冷却貯蔵庫1の各部を制御する。ROM40BにはCPU40Aによって実行されるプログラムや制御に用いる各種の設定値などが記憶されている。RAM40Cは制御部40が各種の処理を実行するための主記憶装置として用いられる。
【0031】
操作部14は、庫内設定温度などの各種の設定値をユーザが設定するための操作ボタンや、庫内温度などの冷蔵庫に関する各種の情報を表示するための表示装置を備えて構成されている。本実施形態では庫内設定温度を冷凍域から冷蔵域までの広い範囲(例えば−25℃〜+5℃)で設定することができる。なお、操作部14はタッチパネルによって構成されてもよい。
【0032】
(4)制御部による温度制御
図4に示すように、制御部40は冷却貯蔵庫1の電源がオンにされると、5分などの予め決められている時間待機した後、インバータ圧縮機31の回転を開始させる。そして、制御部40は庫内温度の経時変化が理想の温度カーブに沿うようにインバータ圧縮機31の回転速度を制御する。
【0033】
具体的には、制御部40は庫内温度センサ36によって所定のサンプリング時間ごとに庫内温度を検出し、前回検出した庫内温度と今回検出した庫内温度との差である実際の温度降下度Scを算出する。そして、制御部40は算出した庫内温度Scと理想の温度カーブにおける温度降下度の目標値Acとを比較し、実際の温度降下度Scが目標値Acより小さい場合はインバータ圧縮機31の回転速度を速くし、大きい場合は回転速度を遅くする。
【0034】
そして、庫内温度が庫内設定温度に対して第1の温度以上低下すると、制御部40は庫内温度がそれ以上低下しないようにするためにインバータ圧縮機31の回転を停止させる。なお、インバータ圧縮機31の回転を停止させたとき、庫内ファン38については回転を停止させてもよいし、回転させたままであってもよい。本実施形態では回転を停止させるものとする。
【0035】
インバータ圧縮機31の回転を停止させると庫内温度が徐々に上昇する。制御部40はインバータ圧縮機31の回転を停止させたときからの経過時間(停止時間)が最低停止時間(図4では7分)に達し、且つ、庫内温度が庫内設定温度より第2の温度以上高くなるとインバータ圧縮機31の回転を再開させる。
【0036】
例えば庫内設定温度が「−5℃」であり、第1の温度が「2℃」であり、第2の温度が「4℃」であるとする。この場合、制御部40は庫内温度が「−7℃(=−5℃−2℃)」に達するとインバータ圧縮機31の回転を停止させる。そして、制御部40は停止時間が最低停止時間に達したとき、庫内温度が「−1℃(=−5℃+4℃)」以上であればその時点でインバータ圧縮機31の回転を再開させ、「−1℃」に達していなければ「−1℃」に達するまで待ってインバータ圧縮機31の回転を再開させる。これにより庫内温度がほぼ「−1℃」から「−7℃」の範囲に維持される。
【0037】
ここで、停止時間が最低停止時間に達しないとインバータ圧縮機31の回転を再開させない理由は、インバータ圧縮機31の回転を再開したときに起動不良が起き難くなるようにするためである。インバータ圧縮機31は冷却機内の圧力が不均一であると起動不良が起きることがある。インバータ圧縮機31をある程度長い時間(最低停止時間)停止させると圧力がより均一になるので、起動不良が起き難くなる。そのため、制御部40は最低停止時間に達しないと回転を再開させない。
【0038】
(5)制御部による最低停止時間の切り替え
起動不良をより確実に起き難くするためには最低停止時間を長くすることが望ましい。しかしながら、最低停止時間を長くすると、冷凍庫として使用される場合には食材に影響のない程度の庫内温度の上昇であっても、冷蔵庫として使用される場合には庫内温度が上がり過ぎて食材に影響してしまうことがある。
【0039】
そこで、制御部40は、冷却貯蔵庫1の電源がオンにされたとき、あるいはユーザが操作部14で庫内設定温度を設定したとき、庫内設定温度と0℃近傍の基準温度とを比較することにより、冷却貯蔵庫1が冷凍庫として使用されるか冷蔵庫として使用されるかを判断する。例えば基準温度が0℃であるすると、制御部40は庫内設定温度が0℃以上の場合は冷蔵庫として使用されると判断し、0℃未満の場合は冷凍庫として使用されると判断する。
【0040】
そして、制御部40は、冷凍庫として使用されると判断した場合は最低停止時間を冷凍庫用の最低停止時間に切り替え、冷蔵庫として使用されると判断した場合は冷凍庫用の最低停止時間より短い冷蔵庫用の最低停止時間に切り替える。
具体的には例えば、制御部40は冷凍庫として使用されると判断した場合は図4に示すように最低停止時間を7分に切り替え、冷蔵庫として使用されると判断した場合は図5に示すように最低停止時間を5分に切り替える。なお、これらの最低停止時間は一例であり、最低停止時間はこれらに限定されるものではない。
【0041】
(6)実施形態の効果
以上説明した実施形態1に係る冷却貯蔵庫1によると、庫内設定温度が基準温度未満の場合は最低停止時間を冷凍庫用の最低停止時間に切り替え、基準温度以上の場合は冷凍庫用の最低停止時間より短い冷蔵庫用の最低停止時間に切り替えるので、冷凍庫として使用される場合は冷蔵庫として使用される場合よりも起動不良を確実に抑制しつつ、冷蔵庫として使用される場合に庫内温度が上がり過ぎてしまうことを抑制できる。これにより、冷却貯蔵庫1を冷凍庫としても冷蔵庫としても使用する場合の不都合を低減できる。
【0042】
<実施形態2>
次に、実施形態2を図6ないし図8によって説明する。
冷却機を運転すると蒸発器33に霜が付着して熱交換率が低下する。そのため、実施形態2に係る冷却貯蔵庫1は蒸発器33を加熱する除霜ヒータ44(図6参照)を備えている。
【0043】
ところで、冷却貯蔵庫1が冷凍庫として使用される場合は庫内温度が低いので、霜を確実に溶かすために除霜ヒータ44によって蒸発器33を加熱することが望ましい。これに対し、冷蔵庫として使用される場合は冷凍庫として使用される場合に比べて庫内温度が高いので、蒸発器33に霜が付着してもインバータ圧縮機31の回転が停止して庫内温度が上昇すれば十分に霜が溶ける。にもかかわらず除霜ヒータ44によって霜を溶かすと電力の無駄となる。
そこで、実施形態2に係る制御部40は、冷却貯蔵庫1が冷蔵庫として使用される場合と冷蔵庫として使用される場合とで除霜方式を切り替える。
【0044】
(1)冷却貯蔵庫の電気的構成
図6に示すように、実施形態2に係る冷却貯蔵庫1は、実施形態1に係る冷却貯蔵庫1の構成に加えて、蒸発器33の温度を検出する蒸発器温度センサ43、及び、蒸発器33を加熱する除霜ヒータ44を備えている。蒸発器温度センサ43及び除霜ヒータ44は蒸発器33に取り付けられている。
【0045】
(2)除霜方式
次に、除霜方式について説明する。ここでは除霜ヒータ44を用いて除霜する方式をヒータデフロスト方式といい、除霜ヒータ44を用いずに除霜する方式をオフサイクルデフロスト方式という。
【0046】
(2−1)ヒータデフロスト方式
先ず、図7を参照して、ヒータデフロスト方式について説明する。ヒータデフロスト方式では、制御部40は庫内温度が庫内設定温度に対して第1の温度以上低下してインバータ圧縮機31の回転を停止させたとき、除霜ヒータ44をオンにする。除霜ヒータ44をオンにすると蒸発器33が加熱されて霜が溶ける。
【0047】
そして、制御部40は蒸発器温度センサ43によって蒸発器33の温度を監視し、蒸発器33の温度が予め設定されている終了検知温度(本実施形態では3℃)まで上昇すると除霜ヒータ44をオフにする。その後、制御部40は蒸発器33に付着した水分を水切りするために一定時間待機した後、インバータ圧縮機31の回転を再開させる。
【0048】
(2−2)オフサイクルデフロスト方式
次に、図8を参照して、オフサイクルデフロスト方式について説明する。オフサイクルデフロスト方式では、制御部40は庫内温度が庫内設定温度に対して第1の温度以上低下してインバータ圧縮機31の回転を停止させたとき、除霜ヒータ44をオンにしない。すなわち、オフサイクルデフロスト方式では除霜ヒータ44による蒸発器33の加熱は行われない。
【0049】
そして、制御部40は、蒸発器温度センサ43によって蒸発器33の温度を監視し、蒸発器33の温度が予め設定されている終了検知温度(本実施形態では3℃)まで上昇するとインバータ圧縮機31の回転を再開させる。
【0050】
(3)制御部による除霜方式の切り替え
制御部40は、庫内設定温度と0℃近傍の基準温度とを比較し、庫内設定温度が基準温度未満の場合は冷凍庫として使用されると判断してヒータデフロスト方式に切り替える。一方、庫内設定温度が基準温度以上の場合は、制御部40は冷蔵庫として使用されると判断してオフサイクルデフロスト方式に切り替える。
【0051】
(4)実施形態の効果
以上説明した実施形態2に係る冷却貯蔵庫1によると、庫内設定温度が基準温度未満の場合は蒸発器33の除霜方式をヒータデフロスト方式に切り替え、基準温度以上の場合はオフサイクルデフロスト方式に切り替えるので、冷凍庫として使用される場合により確実に除霜しつつ、冷蔵庫として使用される場合に除霜の際の消費電力を抑制できる。
【0052】
<実施形態3>
次に、実施形態3を図9ないし図10によって説明する。
庫内温度と外気温度とに差があると貯蔵庫本体10の開口縁部に結露が生じる。結露が生じるとその結露した水が床に落ちることが問題となることがある。そのため、実施形態3に係る冷却貯蔵庫1は結露防止ヒータ46(図9参照)によって開口縁部を加熱することによって結露を防止する。
【0053】
ところで、庫内温度と外気温度との差によらず結露防止ヒータ46に常に一定の通電率で通電すると、庫内温度と外気温度との差が小さい場合、言い換えると結露が生じ難い場合に無駄に加熱されることになり、電力の無駄となる。
【0054】
そこで、実施形態3では庫内温度と外気温度との差に応じた通電率が定義されている通電率設定がROM40Bに記憶されている。そして、制御部40は通電率設定から庫内温度と外気温度との差に対応する通電率を取得し、結露防止ヒータ46の通電率を当該取得した通電率に変更する。
【0055】
ただし、冷却貯蔵庫1が冷凍庫として使用される場合と冷蔵庫として使用される場合とでは、庫内温度と外気温度との差が同じであっても結露のし易さが異なる。このため、例えば冷凍庫として使用される場合に合わせて通電率を定義し、冷蔵庫として使用される場合もその通電率をそのまま用いたとすると、冷蔵庫として使用される場合に開口縁部が過剰に加熱されて電力の無駄となったり、逆に加熱が足りずに結露を防止しきれなかったりしてしまう。
【0056】
そこで、実施形態3に係る冷却貯蔵庫1は冷凍庫用の通電率設定と冷蔵庫用の通電率設定とがROM40Bに記憶されており、制御部40は冷却貯蔵庫1が冷凍庫として使用される場合と冷蔵庫として使用される場合とで通電率設定を切り替える。
【0057】
(1)冷却貯蔵庫の電気的構成
図9に示すように、実施形態3に係る冷却貯蔵庫1は、実施形態1に係る冷却貯蔵庫1の構成に加えて、庫外の温度を検出する外気温度センサ45、及び、前述した結露防止ヒータ46を備えている。外気温度センサ45は貯蔵庫本体10の外部に設けられており、結露防止ヒータ46は貯蔵庫本体10の前面開口の縁部の裏側に取り付けられている。
また、実施形態3に係るROM40Bには冷凍庫用の通電率設定及び冷蔵庫用の通電率設定が記憶されている。
【0058】
(2)通電率設定
図10を参照して、冷凍庫用の通電率設定と冷蔵庫用の通電率設定との違いについて説明する。図10において縦軸は見かけ上のヒータ容量[W]である。見かけ上のヒータ容量[W]は以下の式1によって求められたものである。
【0059】
見かけ上のヒータ容量[W]=本来のヒータ容量[W]×通電率[%] ・・・ 式1
【0060】
図10において実線51は冷凍庫用の通電率設定に切り替えた場合の見かけ上のヒータ容量[W]を示しており、点線52は冷蔵庫用の通電率設定に切り替えた場合の見かけ上のヒータ容量[W]を示している。図10に示すように本実施形態では庫内温度と外気温度との差が30[K]〜50[K]付近では冷蔵庫用の通電率設定の方が高い通電率が定義されており、それ以外では冷凍庫用の通電率設定の方が高い通電率が定義されている。
【0061】
(3)制御部による通電率設定の切り替え
制御部40は、庫内設定温度と0℃近傍の基準温度とを比較し、庫内設定温度が基準温度未満の場合は冷凍庫として使用されると判断して冷凍庫用の通電率設定に切り替える。一方、庫内設定温度が基準温度以上の場合は、制御部40は冷蔵庫として使用されると判断して冷蔵庫用の通電率設定に切り替える。
【0062】
(4)実施形態の効果
以上説明した実施形態3に係る冷却貯蔵庫1によると、庫内設定温度が基準温度未満の場合は冷凍庫用の通電率設定に切り替え、基準温度以上の場合は冷蔵庫用の通電率設定に切り替えるので、冷凍庫として使用される場合も冷蔵庫として使用される場合も、開口縁部が過剰に加熱されて電力の無駄となったり、逆に加熱が足りずに結露を防止しきれなかったりしてしまうことを抑制できる。
【0063】
<実施形態4>
次に、実施形態4を図11ないし図12によって説明する。
インバータ圧縮機31の回転/停止を切り替える回数が多いとエネルギー効率が低下する虞がある。庫内温度が庫内設定温度まで低下するとそれ以降は庫内温度が庫内設定温度に維持される回転速度(庫内温度が庫内設定温度より低下する回転速度より遅い回転速度)でインバータ圧縮機31を回転させると、庫内温度が庫内設定温度より第1の温度以上低い温度まで低下し難くなるので、回転/停止が切り替えられる回数を減らすことができる。これによりエネルギー効率を向上させることができる。
【0064】
しかしながら、一般に冷蔵庫は断熱扉12の開閉回数が多いので、断熱扉12が開閉されて庫内温度が上昇したときに速やかに庫内温度を下げるために、庫内温度が庫内設定温度まで低下しても庫内温度が庫内設定温度より低下する回転速度(庫内温度が庫内設定温度に維持される回転速度より速い回転速度)でインバータ圧縮機31を回転させることが望ましい。また、冷蔵庫の場合はインバータ圧縮機31を遅い回転速度で回転させると蒸発器33への着霜が増加して熱交換率が低下し、それに伴って消費電力が増加してしまう虞がある。その意味でも、冷蔵庫の場合はインバータ圧縮機31を速い回転速度で回転させることが望ましい。
【0065】
これに対し、一般に冷凍庫は断熱扉12の開閉回数が少ないので、エネルギー効率を向上させるためにインバータ圧縮機31の停止をなるべく避けることが望ましい。つまり、冷凍庫の場合は庫内温度が庫内設定温度に維持される回転速度(庫内温度が庫内設定温度より低下する回転速度より遅い回転速度)でインバータ圧縮機31を回転させることが望ましい。
そこで、実施形態4に係る制御部40は、冷却貯蔵庫1が冷凍庫として使用される場合と冷蔵庫として使用される場合とでインバータ圧縮機31の制御方式を切り替える。
【0066】
また、庫内温度が庫内設定温度より低下する回転速度でインバータ圧縮機31を回転させる場合は、庫内温度が庫内設定温度まで低下したときに庫内ファン38の回転速度を遅くすると、庫内温度が庫内設定温度に対して第1の温度以上低い温度まで低下し難くなってしまう。一方、庫内温度が庫内設定温度に維持される回転速度でインバータ圧縮機31を回転させる場合は、庫内温度が庫内設定温度まで低下した後も庫内ファン38を速い回転速度で回転させたままにすると、庫内温度が庫内設定温度よりも低下してしまう虞がある。
【0067】
そこで、制御部40は、冷却貯蔵庫1が冷凍庫として使用される場合と冷蔵庫として使用される場合とで庫内ファン38の制御方式も切り替える。
【0068】
(1)冷却貯蔵庫の電気的構成
実施形態4に係る冷却貯蔵庫1の電気的構成は実施形態1に係る冷却貯蔵庫1の構成と実質的に同一であるが、実施形態4に係る庫内ファン38は回転速度を高速と低速とに切り替え可能に構成されている。
【0069】
(2)インバータ圧縮機の制御方式
次に、インバータ圧縮機31の冷凍庫用の制御方式、及び、冷蔵庫用の制御方式について説明する。
【0070】
(2−1)冷凍庫用の制御方式
先ず、図11を参照して、インバータ圧縮機31の冷凍庫用の制御方式について説明する。冷凍庫用の制御方式では、制御部40は庫内温度が庫内設定温度まで低下すると温度降下度Scが0となるように回転速度を制御する温度降下度0の制御方式によって低回転数による継続的な運転を行う。
【0071】
具体的には、制御部40は冷却貯蔵庫1の電源がオンにされると、5分などの予め決められている時間待機した後、インバータ圧縮機31の回転を開始させ、実施形態1と同様に温度降下度Scと目標値Acとの差に応じてインバータ圧縮機31の回転速度を制御する。そして、制御部40は庫内温度が庫内設定温度まで低下するとインバータ圧縮機31を庫内温度が庫内設定温度に維持される回転速度で回転させる。このため、庫内温度が庫内設定温度まで低下すると温度降下度Scはほぼ0になる。
【0072】
ここで、図11において、庫内温度が庫内設定温度まで低下した後に一時的に庫内温度が高くなっている理由は、冷却貯蔵庫1の断熱扉12が開閉されたからである。断熱扉12が開閉されると庫内温度が高くなるが、庫内温度が庫内設定温度に維持される回転速度でインバータ圧縮機31が回転していることにより、庫内温度が庫内設定温度まで再び低下する。
【0073】
(2−2)冷蔵庫用の制御方式
次に、図12を参照して、インバータ圧縮機31の冷蔵庫用の制御方式について説明する。冷蔵庫用の制御方式では、制御部40は庫内温度が庫内設定温度まで低下しても温度降下度Scが0より大きくなるように回転速度を制御する温度降下度非0の制御によって高回転数による断続的な運転を行う。
【0074】
具体的には、制御部40は冷却貯蔵庫1の電源がオンにされると、5分などの予め決められている時間待機した後、インバータ圧縮機31を回転させ、実施形態1と同様に温度降下度Scと目標値Acとの差に応じてインバータ圧縮機31の回転速度を制御する。そして、制御部40は庫内温度が庫内設定温度まで低下してもインバータ圧縮機31を庫内温度が庫内設定温度より低下する回転速度で回転させる。このため、庫内温度が庫内設定温度まで低下した後も温度降下度Scは0より大きくなる。
【0075】
そして、制御部40は庫内温度が庫内設定温度に対して第1の温度以上低下するとインバータ圧縮機31の回転を停止させる。インバータ圧縮機31の回転を停止させると庫内温度が徐々に上昇する。制御部40は庫内温度が庫内設定温度に対して第2の温度以上上昇すると再びインバータ圧縮機31を回転させる。これを繰り返すことによって庫内温度が「庫内設定温度−第1の温度」から「庫内設定温度+第2の温度」までの範囲にほぼ維持される。
【0076】
(3)庫内ファンの制御方式
次に、庫内ファン38の冷凍庫用の制御方式、及び、冷蔵庫用の制御方式について説明する。
【0077】
(3−1)冷凍庫用の制御方式
先ず、図11を参照して、庫内ファン38の冷凍庫用の制御方式について説明する。制御部40は、冷却貯蔵庫1の電源がオンにされると、5分などの予め決められている時間待機した後、庫内温度を庫内設定温度まで下げるために庫内ファン38を高速で回転させる。そして、制御部40は庫内温度が庫内設定温度まで低下すると、庫内温度がそれ以上低下してしまわないようにするために庫内ファン38の回転速度を低速に切り替える。
【0078】
また、制御部40は、庫内ファン38を低速で回転させているとき、断熱扉12が開閉されることによって庫内温度が高くなると、庫内温度を下げるために庫内ファン38の回転速度を高速にする。具体的には、制御部40は庫内温度センサ36によって検出された庫内温度が庫内設定温度に対して0.5K(ケルビン)以上高くなると庫内ファン38の回転速度を高速にする。そして、制御部40は庫内温度が庫内設定温度まで低下すると庫内ファン38の回転速度を低速に戻す。
【0079】
(3−2)冷蔵庫用の制御方式
次に、図12を参照して、庫内ファン38の冷蔵庫用の制御方式について説明する。制御部40は、冷却貯蔵庫1の電源がオンにされると、5分などの予め決められている時間待機した後、庫内温度を庫内設定温度より第1の温度以上低い温度まで下げるために庫内ファン38を高速で回転させる。そして、制御部40は庫内温度が庫内設定温度に対して第1の温度以上低下すると庫内ファン38を停止させる。そして、制御部40は庫内ファン38を停止させたときから2分が経過すると水切りのために庫内ファン38を低速で回転させ、庫内温度が庫内設定温度に対して第2の温度以上上昇すると庫内ファン38を再び高速で回転させる。
【0080】
(4)制御部による制御方式の切り替え
制御部40は、庫内設定温度と基準温度とを比較し、庫内設定温度が基準温度未満の場合は冷凍庫として使用されると判断してインバータ圧縮機31の制御方式及び庫内ファン38の制御方式を冷凍庫用の制御方式に切り替える。一方、基準温度以上の場合は、制御部40は冷蔵庫として使用されると判断してインバータ圧縮機31の制御方式及び庫内ファン38の制御方式を冷蔵庫用の制御方式に切り替える。
【0081】
(5)実施形態の効果
以上説明した実施形態4に係る冷却貯蔵庫1によると、庫内設定温度が基準温度未満の場合はインバータ圧縮機31の制御方式を冷凍庫用の制御方式に切り替え、基準温度以上の場合は冷蔵庫用の制御方式に切り替えるので、冷凍庫として使用される場合にエネルギー効率を向上させつつ、冷蔵庫として使用される場合に、断熱扉12が開閉されたときに庫内温度を速やかに低下させることができる。
【0082】
更に、冷却貯蔵庫1によると、庫内温度が庫内設定温度に維持される回転速度でインバータ圧縮機31を回転させる場合は、庫内温度が庫内設定温度まで低下すると庫内ファン38の回転速度を遅くするので、庫内温度が庫内設定温度よりも低下してしまうことを抑制できる。一方、庫内温度が庫内設定温度より低下する回転速度でインバータ圧縮機31を回転させる場合は、庫内温度が庫内設定温度まで低下しても庫内ファン38を速い回転速度のまま回転させるので、庫内温度を庫内設定温度に対して第1の温度以上低い温度まで低下させることができる。
【0083】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0084】
(1)上記実施形態では基準温度が0℃である場合を例に説明したが、基準温度は0℃に限定されるものではなく、0℃近傍において適宜に決定できる。
【0085】
(2)上記実施形態では冷却貯蔵庫として4ドア式の冷却貯蔵庫1を例に説明したが、冷却貯蔵庫は4ドア式に限定されるものではなく、冷凍庫としても冷蔵庫としても使用可能なものであれば任意の冷却貯蔵庫であってよい。
【0086】
(3)上記実施形態4では庫内温度が庫内設定温度より第1の温度以上低下するとインバータ圧縮機31の回転を停止させる場合を例に説明した。これに対し、完全に停止させしまうのではなく、庫内温度が上昇する回転速度でインバータ圧縮機31の回転を継続してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1・・・冷却貯蔵庫、14・・・操作部、30・・・冷却ユニット、31・・・インバータ圧縮機、33・・・蒸発器、36・・・庫内温度センサ、38・・・庫内ファン、40・・・制御部、44・・・除霜ヒータ、45・・・外気温度センサ、46・・・結露防止ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12