(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
差動信号線を介して送信装置と接続され、前記送信装置から送出された差動信号を入力し、クロックが指示するタイミングで前記差動信号をサンプリングすることでデータを生成するとともに、その差動信号サンプリングの際に前記差動信号が論理値1および論理値0の何れであるかを判定する際の閾値のずれであるオフセットが調整可能である信号入力部と、
前記オフセットを調整する為の差動信号の送出を前記送信装置に対して要求する要求信号を前記送信装置へ送出する要求出力部と、
前記要求出力部から前記送信装置へ送出された前記要求信号に基づいて前記送信装置から送られて来た差動0Vの差動信号を前記信号入力部が入力したときに、前記信号入力部から出力されるデータに基づいて前記オフセットを調整する調整部と、
を備える受信装置。
前記調整部が、前記送信装置から送出される差動0Vの差動信号を前記信号入力部が入力したときに、前記信号入力部における差動信号サンプリングにより論理値1および論理値0の各データが互いに等しい頻度で出力されるように前記オフセットを調整する、請求項1に記載の受信装置。
前記受信装置から前記送信装置へ前記要求信号を伝送する信号線として、前記送信装置の側で抵抗器を介して第1基準電位端に接続され前記受信装置の側でスイッチを介して第2基準電位端に接続された信号線を備え、前記受信装置において前記スイッチの開閉状態に基づいて前記要求信号を送信する、請求項3に記載の送受信システム。
前記受信装置から前記送信装置へ前記要求信号を伝送する信号線として、前記送信装置から前記受信装置へ前記差動信号を伝送する差動信号線の間隔を空ける際に生じる余り線を用いる、請求項3または4に記載の送受信システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
図1は、本実施形態の送受信システム1の構成を示す図である。送受信システム1は、差動信号線30および信号線40を介して互いに接続された送信装置10および受信装置20を備え、送信装置10から送出された差動信号を受信装置20により受信する。
【0016】
送信装置10は、信号出力部11、要求入力部12および抵抗器13を備える。要求入力部12は、受信装置20から信号線40を介して送られてきた要求信号を入力する。抵抗器13は、要求入力部12の入力端(すなわち、信号線40)と第1基準電位端との間に設けられている。第1基準電位端には電源電位Vddが与えられる。信号出力部11は、差動信号線30を介して差動信号を受信装置20へ送出する。また、信号出力部11は、要求入力部12が入力した要求信号に基づいて差動0Vの差動信号を受信装置20へ送出する。
【0017】
受信装置20は、信号入力部21、要求出力部22、スイッチ23および調整部24を備える。信号入力部21は、送信装置10の信号出力部11から差動信号線30を介して送られてきた差動信号を入力し、クロックが指示するタイミングで差動信号をサンプリングすることでデジタルデータを生成する。また、信号入力部21における差動信号サンプリングの際のオフセットは調整可能である。
【0018】
信号入力部21は、差動信号線30を経て到達した差動信号を増幅して出力するアンプ211と、アンプ211により増幅された差動信号Vsp,Vsnをクロックに基づいてサンプリングすることでデータVsop,Vsonを生成するサンプラ212とを含む。アンプ211およびサンプラ212の何れがオフセット調整可能であってもよい。
【0019】
Vsop,Vsonは互いに相補的な値をとるデジタルデータであり、一方が論理値1であるとき他方は論理値0である。クロックは、送信装置10からデータとは別に送られて来たものであってもよいし、送信装置10から送られて来た信号がデータにクロック情報を埋め込んだ信号である場合に該信号に基づいて受信装置20において復元したクロックであってもよい。
【0020】
要求出力部22は、信号線40を介して要求信号を送信装置10へ送る。この要求信号は、信号入力部21における差動信号サンプリングの際のオフセットを調整する為の差動信号の送出を送信装置10に対して要求する信号である。スイッチ23は、信号線40と第2基準電位端との間に設けられている。第2基準電位端には接地電位Vssが与えられる。
【0021】
スイッチ23が閉じているときには信号線40の電位は第2基準電位(接地電位Vss)となる。スイッチ23が開いているときには信号線40の電位は第1基準電位(電源電位Vdd)となる。すなわち、要求出力部22は、スイッチ23の開閉状態に基づいて要求信号を送信装置10へ送ることができる。スイッチ23は例えばMOSトランジスタにより構成され、その場合、ゲート電圧の大きさによってスイッチ23の開閉状態が設定される。
【0022】
このような信号線40、抵抗器13およびスイッチ23を含む構成は、ホットプラグ検出(HotPlug Detect)機能を実現する構成と同等である。すなわち、送信装置10と受信装置20との間でケーブル/コネクタが外れているときや、受信装置20がパワーダウンしているときには、信号線40の電位が第1基準電位(電源電位Vdd)となる。送信装置10と受信装置20との間でケーブル/コネクタが接続されていて、受信装置20が動作可能であるときには、信号線40の電位が第2基準電位(接地電位Vss)となる。送信装置10は、信号線40の電位レベルを検知することで、受信装置20が信号を受信し得る状態であるか否かを把握することができる。送信装置10は、受信装置20が受信可能状態であることを確認した上で受信装置20へ信号を送信することができる。
【0023】
調整部24は、要求出力部22から送信装置10へ送出された要求信号に基づいて送信装置10の信号出力部11から送られて来た差動0Vの差動信号を信号入力部21が入力したときに、信号入力部21から出力されるデータに基づいて、信号入力部21における差動信号サンプリングの際のオフセットを調整する。好適には、調整部24は、信号入力部21における差動信号サンプリングにより論理値1および論理値0の各データが互いに等しい頻度で出力されるようにオフセットを調整する。
【0024】
調整部24は、カウンタ241および制御回路242を含む。カウンタ241は、信号入力部21から出力されるデータを入力するとともに、クロックをも入力して、一定期間に亘って、その出力データが論理値1である事象を計数し、また、出力データが論理値0である事象を計数する。或いは、カウンタ241は、一定期間に亘って、出力データが論理値1である場合に計数値を1増し、出力データが論理値0である場合に計数値を1減することで、出力データが論理値1である事象の数と論理値0である事象の数との差を求める。
【0025】
制御回路242は、カウンタ241による計数結果を入力するともに、クロックをも入力して、デジタル値cntlに応じた計数結果に基づいて、信号入力部21における差動信号サンプリングにより論理値1および論理値0の各データが互いに等しい頻度で出力されるようにデジタル値cntlを決定する。制御回路242は、デジタル値cntlを信号入力部21へ出力する。信号入力部21は、このデジタル値cntlに応じてオフセットを調整する。
【0026】
差動信号線30は、送信装置10の信号出力部11から送出された差動信号を、受信装置20の信号入力部21へ伝送する。差動信号線30を構成する1対の信号線の間には抵抗器33が設けられている。
【0027】
送信装置10と受信装置20との間がAC結合される場合には、差動信号線30を構成する1対の信号線それぞれにコンデンサ31,32が挿入される。AC結合の場合には、送信装置10は、差動信号線30を構成する1対の信号線それぞれに一定電圧値を出力することで、受信装置20の信号入力部21へ到達する差動信号を差動0Vとすることができる。
【0028】
送信装置10と受信装置20との間がDC結合される場合には、コンデンサ31,32は不要である。DC結合の場合には、送信装置10は、差動信号線30を構成する1対の信号線それぞれに互いに同じ電圧値を出力することで、受信装置20の信号入力部21へ到達する差動信号を差動0Vとすることができる。
【0029】
信号線40は、受信装置20の要求出力部22から送信装置10の要求入力部12へ要求信号を伝送する。この信号線40が伝送する要求信号は高速でなくてよいので、信号線40として低速で安価な線を用いることができる。また、送信装置10と受信装置20との間でフラットケーブルのような信号間干渉が大きくケーブル品質が悪いものを使用する場合は、差動信号線30の間隔を空ける際に生じる余り線を信号線40として用いることもできる。
【0030】
図2は、オフセット調整可能なサンプラ212の回路例を示す図である。サンプラ212は、NMOSトランジスタ50〜59、抵抗器60,61、電流源62〜65およびNAND回路66,67を備える。また、サンプラ212は、アンプ211から出力される信号Vspを入力する第1入力端P
11、アンプ211から出力される信号Vsnを入力する第2入力端P
12、データVsopを出力する第1出力端P
21、データVsonを出力する第2出力端P
22、クロックを入力するクロック入力端P
3、制御回路242から出力されるデジタル値cntlを入力するデジタル値入力端P
4、第1内部ノードN
1、第2内部ノードN
2、第3内部ノードN
3、第4内部ノードN
4、第5内部ノードN
5、第6内部ノードN
6、第7内部ノードN
7、第8内部ノードN
8 を有する。
【0031】
NMOSトランジスタ50のドレインは電源電位Vddが与えられ、NMOSトランジスタ50のソースは第8内部ノードN
8に接続され、NMOSトランジスタ50のゲートは第7内部ノードN
7に接続されている。NMOSトランジスタ51のドレインは電源電位Vddが与えられ、NMOSトランジスタ51のソースは第7内部ノードN
7に接続され、NMOSトランジスタ51のゲートは第8内部ノードN
8に接続されている。
【0032】
NMOSトランジスタ52のドレインは第8内部ノードN
8に接続され、NMOSトランジスタ52のソースは第1内部ノードN
1に接続され、NMOSトランジスタ52のゲートは第7内部ノードN
7に接続されている。NMOSトランジスタ53のドレインは第7内部ノードN
7に接続され、NMOSトランジスタ53のソースは第2内部ノードN
2に接続され、NMOSトランジスタ53のゲートは第8内部ノードN
8に接続されている。
【0033】
NMOSトランジスタ54のドレインは第1内部ノードN
1に接続され、NMOSトランジスタ54のソースは第3内部ノードN
3に接続され、NMOSトランジスタ54のゲートは第1入力端P
11に接続されている。NMOSトランジスタ55のドレインは第2内部ノードN
2に接続され、NMOSトランジスタ55のソースは第3内部ノードN
3に接続され、NMOSトランジスタ55のゲートは第2入力端P
12に接続されている。
【0034】
NMOSトランジスタ56のドレインは第1内部ノードN
1に接続され、NMOSトランジスタ56のソースは第4内部ノードN
4に接続され、NMOSトランジスタ56のゲートは第5内部ノードN
5に接続されている。NMOSトランジスタ57のドレインは第2内部ノードN
2に接続され、NMOSトランジスタ57のソースは第4内部ノードN
4に接続され、NMOSトランジスタ57のゲートは第6内部ノードN
6に接続されている。
【0035】
NMOSトランジスタ58のドレインは第3内部ノードN
3に接続され、NMOSトランジスタ58のソースは接地電位Vssが与えられ、NMOSトランジスタ58のゲートはクロック入力端P
3に接続されている。NMOSトランジスタ59のドレインは第4内部ノードN
4に接続され、NMOSトランジスタ59のソースは接地電位Vssが与えられ、NMOSトランジスタ59のゲートはクロック入力端P
3に接続されている。
【0036】
抵抗器60は、電源電位端と第5内部ノードN
5との間に設けられている。抵抗器61は、電源電位端と第6内部ノードN
6との間に設けられている。電流源62,63は、第5内部ノードN
5と接地電位端との間に並列的に設けられている。電流源64,65は、第6内部ノードN
6と接地電位端との間に並列的に設けられている。電流源63,64は、一定電流を流す。電流源62,65は、デジタル値入力端P
4に入力されるデジタル値cntlに応じた量の電流を流す。
【0037】
NAND回路66の一方の入力端子は第7内部ノードN
7に接続され、NAND回路66の他方の入力端子は第1出力端P
21に接続され、NAND回路66の出力端子は第2出力端P
22に接続されている。NAND回路67の一方の入力端子は第8内部ノードN
8に接続され、NAND回路67の他方の入力端子は第2出力端P
22に接続され、NAND回路67の出力端子は第1出力端P
21に接続されている。
【0038】
このように構成されるサンプラ212では、デジタル値入力端P
4に入力されるデジタル値cntlに応じた電流を電流源62,65が流すことにより、第5内部ノードN
5の電位Vonおよび第6内部ノードN
6の電位Vopそれぞれもデジタル値cntlに応じたものとなる。第5内部ノードN
5の電位VonがNMOSトランジスタ56のゲートに与えられる。第6内部ノードN
6の電位VopがNMOSトランジスタ57のゲートに与えられる。
【0039】
クロック入力端P
3に入力されるクロックの立上りエッジのタイミングで、入力端P
11,P
12に入力される差動信号Vsp,Vsnがサンプリングされて、出力端P
21,P
22からデータVsop,Vsonが出力される。このサンプリングの際に、Vop,Vonの電位差によって、Vsp,Vsnの電位差に偏りが生じる。この偏りの量はオフセットと比例する。したがって、デジタル値cntlによってVop,Vonの電位差を調整することで、オフセットを調整することができる。
【0040】
本実施形態の送受信システム1の動作例は以下のとおりである。受信装置20がパワーオンまたはウェイクアップされると、要求出力部22は、スイッチ23を開状態として、信号線40の電位を第1基準電位(電源電位Vdd)とすることで、要求信号を送信装置10へ送る。送信装置10の要求入力部12は、信号線40の電位が第1基準電位(電源電位Vdd)となったことを検知して、受信装置20から要求信号が送られて来たことを把握する。そして、送信装置10の信号出力部11は、差動0Vの差動信号を受信装置20へ送出する。
【0041】
差動0Vの差動信号を受信した受信装置20の信号入力部21は、クロックが指示するタイミングで差動信号をサンプリングすることでデータVsop,Vsonを生成する。このとき、信号入力部21がサンプリングする差動信号は、差動0Vであるが、ランダムなノイズが重畳されたものとなっている。したがって、オフセットが理想値0であれば、データVsop,Vsonが論理値0および論理値1それぞれになる頻度が互いに等しい。そこで、調整部24は、信号入力部21から出力される論理値1および論理値0の各データが互いに等しい頻度で出力されるように、信号入力部21に与えるデジタル値cntlを設定することで、信号入力部21におけるオフセットを最適に調整する。
【0042】
オフセット調整が終了すると、調整部24は、最適調整時のデジタル値cntlを記憶し、その記憶したデジタル値cntlを以降も信号入力部21に与える。また、要求出力部22は、スイッチ23を閉状態として、信号線40の電位を第2基準電位(接地電位Vss)とすることで、オフセット調整が終了した旨を送信装置10へ通知する。この通知を受けた送信装置10の信号出力部11は、これ以降、通常データを差動信号として受信装置20へ送出する。
【0043】
このように、本実施形態では、受信装置20の要求出力部22から送信装置10の要求入力部12へ要求信号が送られた後、送信装置10の信号出力部11から受信装置20の信号入力部21へ差動0Vの差動信号が送られ、この差動0Vの差動信号を入力した信号入力部21のオフセットが調整部24により調整される。このとき、アンプ211およびサンプラ212を含む信号入力部21の全体のオフセットが調整される。
【0044】
本実施形態の受信装置20は、調整部24をデジタル回路で構成することができるので、特許文献1に開示された発明の構成と比べて回路面積および消費電力を低減することができる。また、特許文献1に開示された発明では受信装置の入力端において差動信号線を短絡させるためのスイッチが必要であるのに対して、本実施形態の受信装置20は、このようなスイッチが不要であることから、入力端の負荷容量の増加を招くことなく、オフセット調整により高速差動伝送が可能である。
【0045】
また、本実施形態では、受信装置20の要求出力部22から送信装置10の要求入力部12へ要求信号を伝送する信号線40をホットプラグ検出用の信号線と共用するので、送信装置10と受信装置20との間で新たな信号線を追加する必要はなく、また、要求信号を送受信するための回路の追加は必要ないか又は僅かな規模で済む。