特許第6496581号(P6496581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6496581-電圧非直線抵抗素子及びその製法 図000004
  • 特許6496581-電圧非直線抵抗素子及びその製法 図000005
  • 特許6496581-電圧非直線抵抗素子及びその製法 図000006
  • 特許6496581-電圧非直線抵抗素子及びその製法 図000007
  • 特許6496581-電圧非直線抵抗素子及びその製法 図000008
  • 特許6496581-電圧非直線抵抗素子及びその製法 図000009
  • 特許6496581-電圧非直線抵抗素子及びその製法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496581
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】電圧非直線抵抗素子及びその製法
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/10 20060101AFI20190325BHJP
   H01C 7/18 20060101ALI20190325BHJP
   H01C 17/12 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   H01C7/10
   H01C7/18
   H01C17/12
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-55490(P2015-55490)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-195369(P2015-195369A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年10月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-56497(P2014-56497)
(32)【優先日】2014年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 哲
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 徹
(72)【発明者】
【氏名】森本 健司
(72)【発明者】
【氏名】川崎 真司
(72)【発明者】
【氏名】武内 幸久
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−228302(JP,A)
【文献】 特開平02−214101(JP,A)
【文献】 特公昭62−053923(JP,B1)
【文献】 特開昭55−150204(JP,A)
【文献】 特開平06−267713(JP,A)
【文献】 特開平06−204006(JP,A)
【文献】 特開2000−243608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/10
H01C 7/18
H01C 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛を主成分とし体積抵抗率が1.0×10-1Ωcm以下の酸化亜鉛セラミックス層と酸化ビスマスを主成分とする酸化ビスマス層とが接合された接合体を少なくとも1つ含む電圧非直線抵抗体と、
前記酸化亜鉛セラミックス層と前記酸化ビスマス層との接合面を導電経路が横切るように前記電圧非直線抵抗体に形成された一対の電極と、
を備えた電圧非直線抵抗素子。
【請求項2】
前記酸化亜鉛セラミックス層は、Al23、In23及びGa23からなる群より選ばれた1つ以上を含有する、
請求項1に記載の電圧非直線抵抗素子。
【請求項3】
前記酸化ビスマス層は、前記酸化亜鉛セラミックス層にスパッタにより形成されている、
請求項1又は2に記載の電圧非直線抵抗素子。
【請求項4】
前記電圧非直線抵抗体は、前記接合体が2つ以上積層され、隣り合う酸化亜鉛セラミックス層同士の間に、酸化ビスマス層が介在するか、酸化ビスマス層と導体層とが介在するか、酸化ビスマス層と導体層と酸化ビスマス層とが介在する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電圧非直線抵抗素子。
【請求項5】
前記酸化亜鉛セラミックス層は、体積抵抗率が1.0×10-3Ωcm以下である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電圧非直線抵抗素子。
【請求項6】
(a)酸化亜鉛を主成分とし体積抵抗率が1.0×10-1Ωcm以下の酸化亜鉛セラミックス層に、酸化ビスマスを主成分とする酸化ビスマス層をスパッタで形成することにより接合体を得る工程と、
(b)前記接合体を少なくとも2つ用意し、一方の接合体の前記酸化ビスマス層と他方の接合体の前記酸化亜鉛セラミックス層との間に導体箔を挟んで重ね合わせるか又は何も挟まず直接重ね合わせ、その状態で不活性雰囲気中で300〜700℃の熱処理を行うことにより前記接合体を接合し積層した電圧非直線抵抗体を得る工程と、
(c)一対の電極を、前記酸化亜鉛セラミックス層と前記酸化ビスマス層との接合面を導電経路が横切るように形成する工程と、
を含む電圧非直線抵抗素子の製法。
【請求項7】
(a)酸化亜鉛を主成分とし体積抵抗率が1.0×10-1Ωcm以下の酸化亜鉛セラミックス層に、酸化ビスマスを主成分とする酸化ビスマス層をスパッタで形成することにより接合体を得る工程と、
(b)前記接合体を少なくとも2つ用意し、一方の接合体の前記酸化ビスマス層と他方の接合体の前記酸化ビスマス層との間に導体箔を挟んで重ね合わせるか又は何も挟まず直接重ね合わせ、その状態で不活性雰囲気中で300〜700℃の熱処理を行うことにより前記接合体を接合し積層した電圧非直線抵抗体を得る工程と、
(c)一対の電極を、前記酸化亜鉛セラミックス層と前記酸化ビスマス層との接合面を導電経路が横切るように形成する工程と、
を含む電圧非直線抵抗素子の製法。
【請求項8】
工程(b)の熱処理の温度が300〜500℃である、
請求項又はに記載の電圧非直線抵抗素子の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧非直線抵抗素子及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧非直線抵抗素子(バリスタ素子)は、電圧非直線抵抗体を一対の電極で挟んだ構造の素子であり、電子回路などを異常電圧から保護する素子として、湿度センサ、温度センサ等の各種センサに広く利用されている。この種の電圧非直線抵抗素子として、特許文献1には、ドーパントとしてAl23のような酸化物を含有する2つの酸化亜鉛系磁器の間にBi23やSb23などの2つの酸化物を含有する酸化物膜を介在させた構造の抵抗体を一対の電極で挟んだ電圧非直線抵抗素子が開示されている。この素子によれば、立ち上がり電圧V1mA(1mA(素子形状から0.4A/cm2)の電流を流したときの両端子間の電圧)は3V程度に抑えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−228302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にドーパントを含有する酸化亜鉛は、ドーパントのない酸化亜鉛に比べて低抵抗であるが、特許文献1の酸化亜鉛系磁器は、ZnOに対してドーパントのAl23が0.0009〜0.018質量%添加されたものであり、ドーパントの添加量が極めて低いことから抵抗は十分低いとはいえない。そのため、特許文献1の電圧非直線抵抗素子では、高電流領域(例えば20A/cm2の電流を流した場合)において大きな電圧が発生する可能性が高い。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、酸化亜鉛系の電圧非直線抵抗素子において、高電流領域における制限電圧を低く抑えることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電圧非直線抵抗素子は、
酸化亜鉛を主成分とし体積抵抗率が1.0×10-1Ωcm以下の酸化亜鉛セラミックス層と酸化ビスマスを主成分とする酸化ビスマス層とが接合された接合体を少なくとも1つ含む電圧非直線抵抗体と、
前記酸化亜鉛セラミックス層と前記酸化ビスマス層との接合面を導電経路が横切るように前記電圧非直線抵抗体に形成された一対の電極と、
を備えたものである。
【0007】
この電圧非直線抵抗素子では、電圧非直線抵抗体の酸化亜鉛セラミックス層として、従来に比べて体積抵抗率の低い酸化亜鉛セラミックス層を使用している。そのため、高電流領域(例えば20A/cm2の電流を流した場合)における制限電圧を従来に比べて低く抑えることができる。その結果、例えば、静電気によって本発明の電圧非直線抵抗素子に大電流が流れたとしても、電圧の立ち上がりを小さく抑えることができるし、素子自身の絶縁破壊が起きるのを防止することができる。
【0008】
本発明の電圧非直線抵抗素子において、前記酸化亜鉛セラミックス層は、Al23、In23及びGa23からなる群より選ばれた1つ以上を含有していてもよい。このような3価の金属イオンを添加することにより、酸化亜鉛セラミックス層の体積抵抗率を比較的容易に低抵抗にすることができる。
【0009】
本発明の電圧非直線抵抗素子において、前記酸化ビスマス層は、前記酸化亜鉛セラミックス層にスパッタにより形成されていてもよい。こうすれば、酸化亜鉛セラミックス層を高温に曝すことなく酸化ビスマス層を形成することができるため、酸化亜鉛セラミックス層が熱の影響を受けて体積抵抗率が上昇するおそれを回避することができる。
【0010】
本発明の電圧非直線抵抗素子において、前記電圧非直線抵抗体は、前記接合体が2つ以上積層され、隣り合う酸化亜鉛セラミックス層同士の間に、酸化ビスマス層が介在するか、酸化ビスマス層と導体層とが介在するか、酸化ビスマス層と導体層と酸化ビスマス層とが介在するように構成されていてもよい。こうすれば、電圧非直線抵抗体内に積層される接合体の数を適宜設定することにより、種々のバリスタ電圧に対応することができる。
【0011】
本発明の電圧非直線抵抗素子の製法は、
(a)酸化亜鉛を主成分とし体積抵抗率が1.0×10-1Ωcm以下の酸化亜鉛セラミックス層に、酸化ビスマスを主成分とする酸化ビスマス層をスパッタで形成することにより接合体を得る工程と、
(b)前記接合体を少なくとも2つ用意し、一方の接合体の前記酸化ビスマス層と他方の接合体の前記酸化亜鉛セラミックス層との間に導体箔を挟んで重ね合わせるか又は何も挟まず直接重ね合わせ、その状態で不活性雰囲気中で300〜700℃の熱処理を行うことにより前記接合体を接合し積層した電圧非直線抵抗体を得る工程と、
(c)一対の電極を、前記酸化亜鉛セラミックス層と前記酸化ビスマス層との接合面を導電経路が横切るように形成する工程と、
を含むもの、
あるいは、
(a)酸化亜鉛を主成分とし体積抵抗率が1.0×10-1Ωcm以下の酸化亜鉛セラミックス層に、酸化ビスマスを主成分とする酸化ビスマス層をスパッタで形成することにより接合体を得る工程と、
(b)前記接合体を少なくとも2つ用意し、一方の接合体の前記酸化ビスマス層と他方の接合体の前記酸化ビスマス層との間に導体箔を挟んで重ね合わせるか又は何も挟まず直接重ね合わせ、その状態で不活性雰囲気中で300〜700℃の熱処理を行うことにより前記接合体を接合し積層した電圧非直線抵抗体を得る工程と、
(c)一対の電極を、前記酸化亜鉛セラミックス層と前記酸化ビスマス層との接合面を導電経路が横切るように形成する工程と、
を含むものである。
【0012】
これらの製法によれば、電圧非直線抵抗体内に複数の接合体が積層された電圧非直線抵抗素子を比較的容易に製造することができる。また、工程(b)の熱処理の温度を300〜700℃と比較的低くしているため、熱の影響により酸化亜鉛セラミックス層の体積抵抗率が上昇してしまうのを防止することができる。特に、工程(b)の熱処理の温度を300〜500℃にした場合に、この効果は顕著になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電圧非直線抵抗素子10の断面図。
図2】電圧非直線抵抗素子30の断面図。
図3】電圧非直線抵抗素子130の断面図。
図4】電圧非直線抵抗素子40の断面図。
図5】電圧非直線抵抗素子140の断面図。
図6】実施例1,2,4,5及び比較例1〜3の電圧非直線抵抗素子の電流−電圧特性を示すグラフ。
図7】酸化亜鉛セラミックス層の体積抵抗率(Ωcm)と20A/cm2相当の電流値における制限電圧との関係を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は本実施形態の電圧非直線抵抗素子10の断面図である。
【0015】
電圧非直線抵抗素子10は、電圧非直線抵抗体(抵抗体と略す)14と、この抵抗体14を挟み込む一対の電極16,18とを備えている。
【0016】
抵抗体14は、酸化亜鉛セラミックス層12aと、酸化ビスマスを主成分とする酸化ビスマス層12bとが接合された接合体12を1つ有している。酸化亜鉛セラミックス層12aは、酸化亜鉛を主成分とし、体積抵抗率が1.0×10-1Ωcm以下の層である。体積抵抗率は、1.0×10-3Ωcm以下であることが好ましい。こうすれば、高電流領域における制限電圧を従来に比べて一段と低く抑えることができる。酸化ビスマス層12bは、厚みが0.01〜1μmであることが好ましく、0.05〜0.5μmであることがより好ましい。
【0017】
一対の電極16,18は、酸化亜鉛セラミックス層12aと酸化ビスマス層12bとの接合面を導電経路が横切るように抵抗体14に形成されている。電極16,18は、酸化亜鉛セラミックスと良好なオーミック性を示す電気伝導性のよい材料であれば特に限定されるものでなく、例えば、金、銀、白金、アルミなどが挙げられる。ここで、電極18を陽極として電圧を加えた場合には容易に電流が流れ、反対に電極16を陽極として電圧を加えた場合には電圧非直線性を示す素子が得られる。
【0018】
次に、電圧非直線抵抗素子10の製造例を以下に説明する。
【0019】
・酸化亜鉛セラミックス層12aの作製
酸化亜鉛セラミックス層12aは、体積抵抗率が1.0×10-1Ωcm以下、好ましくは1.0×10-3Ωcm以下の酸化亜鉛セラミックスブロックから所定サイズの板材として切り出すことにより得ることができる。酸化亜鉛セラミックスブロックは、酸化亜鉛セラミックスにドーパントとしてAl,Ga,Inなどの3価のイオンを固溶させたり、酸化亜鉛粉末を非酸化雰囲気で焼成して酸素欠陥を導入したりすることにより、得ることができる。ドーパントを固溶させた酸化亜鉛セラミックスブロックを得るには、まず、酸化亜鉛粉末にAl23,Ga23,In23などの3価の金属酸化物粉末を0.05〜2.0質量%となるように混合し、所定形状の成形体となるように成形する。次に、この成形体を、非酸化雰囲気(例えば窒素雰囲気やアルゴン雰囲気)下、900〜1200℃で数時間保持した後、さらに1300〜1500℃に昇温して数時間焼成する。こうすることにより、体積抵抗率の低い酸化亜鉛セラミックスブロックを比較的容易に得ることができる。目的とする体積抵抗率になるようにするには、酸化亜鉛粉末に混合する3価の金属酸化物粉末の質量%を調整したり、焼成温度を調整したりすればよい。また、原料に用いる酸化亜鉛粉末は、平均粒径が0.02〜5μmであることが好ましい。3価の金属酸化物粉末は、平均粒径が0.01〜0.5μmであることが好ましい。3価の金属酸化物粉末としては、Al23粉末が好ましい。Al23粉末としては、θアルミナを用いてもよいし、γアルミナやベーマイトなどを用いてもよい。一方、酸化亜鉛粉末を非酸化雰囲気で焼成して体積抵抗率の低い酸化亜鉛セラミックスブロックを得るには、例えば、酸化亜鉛粉末を非酸化雰囲気(例えば窒素雰囲気やアルゴン雰囲気)下、1300〜1500℃で数時間保持して焼成する。
【0020】
・酸化ビスマス層12bの作製
酸化ビスマス層12bは、酸化ビスマス単体であってもよいが、酸化ビスマスを主成分とし他の酸化物(例えばSb23,Cr23,MnO,CoO,ZnO,SiO2など)を副成分として含んでいてもよい。酸化ビスマス層12bが酸化ビスマス単体の場合、例えば、酸化ビスマスをターゲットとして酸化亜鉛セラミックス層12a上にスパッタにより酸化ビスマス層12bを形成してもよい。スパッタのほかに真空蒸着やイオンプレーティングなどを用いてもよい。あるいは、酸化ビスマス粉末を含有するペーストを酸化亜鉛セラミックス層12aに塗布、乾燥し、比較的低温(例えば200〜700℃、好ましくは200〜500℃)で熱処理して酸化ビスマス層12bとしてもよい。一方、酸化ビスマス層12bが副成分を含む場合、酸化ビスマスのほかに副成分もターゲットとして用い、多元同時スパッタにより酸化亜鉛セラミックス層12a上に酸化ビスマス層12bを形成してもよい。あるいは、酸化ビスマス粉末のほかに副成分の粉末を含有するペーストを酸化亜鉛セラミックス層12aに塗布、乾燥し、比較的低温で熱処理して酸化ビスマス層12bとしてもよい。熱処理の場合、比較的低温のため酸化亜鉛セラミックス層12aが熱の影響を受けて体積抵抗率が上昇するおそれはほとんどないが、スパッタの場合、より低温で処理できるためこうしたおそれを確実に回避できる。
【0021】
・電極16,18の作製
本実施形態では、抵抗体14は、酸化亜鉛セラミックス層12aと酸化ビスマス層12bとを接合した接合体12を1つ有している。電極16,18は、この抵抗体14の両面に、電極材料を蒸着したりスパッタすることにより作製することができる。電極材料としては、金、銀、白金、アルミなどが挙げられる。あるいは、板状の電極16,18を用意し、それらを抵抗体14の各面に導電性接合材を介して接合してもよい。
【0022】
以上詳述した電圧非直線抵抗素子10によれば、電極16を陽極として電圧を加えた場合に電圧非直線性を示し、高電流領域(例えば20A/cm2の電流を流した場合)における制限電圧を従来に比べて低く抑えることができる。その結果、例えば、静電気によって電圧非直線抵抗素子10に大電流が流れたとしても、電圧の立ち上がりを小さく抑えることができるし、素子自身の絶縁破壊が起きるのを防止することができる。
【0023】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0024】
例えば、上述した電圧非直線抵抗素子10では1つの接合体12を有する抵抗体14の両面に電極16,18を設けたが、抵抗体14の代わりに複数の接合体12を積層した抵抗体を用いてもよい。こうした積層型の抵抗体を用いることにより、バリスタ電圧を制御することが可能となり、用途に適したバリスタ電圧の電圧非直線抵抗素子を得ることができる。積層型の抵抗体を用いた例を図2図5に示す。
【0025】
図2に示す電圧非直線抵抗素子30は、2つの接合体12を導体層33を介して積層し接合した積層型の抵抗体34の両面に電極16,18を設けたものである。抵抗体34は、隣り合う酸化亜鉛セラミックス層12a同士の間に酸化ビスマス層12bと導体層33とが介在している。抵抗体34の製造例は以下のとおりである。まず、2つの接合体12を用意し、一方の接合体12の酸化亜鉛セラミックス層12aと他方の接合体12の酸化ビスマス層12bとを向かい合わせ、その間に導体箔であるロウ材(例えばAu−Ge合金箔、Au−Sn合金箔、Au−Si合金箔など)を挟んで重ね合わせ、これらを加圧して一体化する。それを不活性雰囲気中で所定の接合温度(例えば300〜700℃、好ましくは300〜500℃)に昇温し、所定時間保持した後降温する。これにより、ロウ材が溶融又は軟化後に固化して導体層33となるため、抵抗体34を得ることができる。電圧非直線抵抗素子30によれば、上述した素子10と同様の効果が得られる。また、接合体12を2つ積層した抵抗体34を使用したため、実施例1の電圧非直線抵抗素子10に比べて制限電圧をおよそ2倍にすることができる。更に、酸化亜鉛セラミックス層12aとして酸化亜鉛セラミックスにドーパント(3価のイオン)を多量に添加したり不活性雰囲気で熱処理して酸素欠損を多く形成したりすることで低抵抗化したものを用いた場合、接合温度が高すぎる(例えば900℃とか1000℃)とドーパントが析出したり酸素欠損が消失したりして抵抗が高くなることがあるが、ここでは接合温度を700℃以下、好ましくは500℃以下としたため、酸化亜鉛セラミックス層12aの低抵抗を維持することができる。
【0026】
図3に示す電圧非直線抵抗素子130は、3つの接合体12をそれぞれ導体層33を介して積層し接合した抵抗体134の両面に電極16,18を設けたものである。抵抗体134は、隣り合う酸化亜鉛セラミックス層12a同士の間に酸化ビスマス層12bと導体層33とが介在している。基本的な構成や得られる効果は図2の電圧非直線抵抗素子30と同様のため、ここでは詳細は省略する。但し、素子130は、接合体12を3つ積層した抵抗体134を使用したため、実施例1の電圧非直線抵抗素子10に比べて制限電圧をおよそ3倍にすることができる。
【0027】
図4に示す電圧非直線抵抗素子40は、2つの接合体12を導体層43を介して積層し接合した積層型の抵抗体44の両面に電極16,18を設けたものである。抵抗体44は、隣り合う酸化亜鉛セラミックス層12a同士の間に酸化ビスマス層12bと導体層43と酸化ビスマス層12bが介在している。抵抗体44の製造例は以下のとおりである。まず、2つの接合体12を用意し、一方の接合体12の酸化ビスマス層12bと他方の接合体12の酸化ビスマス層12bとを向かい合わせ、その間に前出のロウ材を挟んで重ね合わせ、これらを加圧して一体化する。あとは、電圧非直線抵抗素子30の場合と同様、不活性雰囲気中で熱処理することにより、ロウ材が溶融又は軟化後に固化して導体層43となるため、抵抗体44を得ることができる。電圧非直線抵抗素子40によれば、電極16と電極18のいずれを陽極として電圧を加えた場合でも電圧非直線性を示し、このときの制限電圧は実施例1の電圧非直線抵抗素子10とほぼ同じとなる。更に、電圧非直線抵抗素子30と同様の理由で酸化亜鉛セラミックス層12aの低抵抗を維持することができる。
【0028】
図5に示す電圧非直線抵抗素子140は、2つの接合体12と1つの3層構造の接合体42をそれぞれ導体層43を介して接合した積層型の抵抗体144の両面に電極16,18を設けたものである。抵抗体144は、隣り合う酸化亜鉛セラミックス層12a同士の間に酸化ビスマス層12bと導体層43と酸化ビスマス層12bとが介在している。抵抗体144の製造例は以下のとおりである。まず、2つの接合体12を用意する。また、酸化亜鉛セラミックス層12aの両面に酸化ビスマス層12bを形成して3層構造の接合体42とする。そして、1つめの接合体12の酸化ビスマス層12bと3層構造の接合体42の一方の酸化ビスマス層12bとの間に前出のロウ材を挟み、3層構造の接合体42の他方の酸化ビスマス層12bと2つめの接合体12の酸化ビスマス層12bとの間に前出のロウ材を挟み込んだ状態で、これらを加圧して一体化する。あとは、電圧非直線抵抗素子30の場合と同様、不活性雰囲気中で熱処理することにより、ロウ材が溶融又は軟化後に固化して導体層43になるため、抵抗体144を得ることができる。電圧非直線抵抗素子140によれば、電極16と電極18のいずれを陽極として電圧を加えた場合でも電圧非直線性を示し、このときの制限電圧は実施例1の電圧非直線抵抗素子10に比べて約2倍になる。
【0029】
上述した図2図5の実施形態では、複数の接合体12を導体層33,43を介して接合したが、接合時にロウ材を用いることなく、接合体12同士を直接接合してもよい。この場合も、接合体12同士を比較的低温(例えば300〜700℃、好ましくは300〜500℃)で接合することが好ましい。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
酸化亜鉛(平均粒径1.5μm)にθアルミナ(平均粒径0.02μm)を1質量%混合し成形した成形体を、N2雰囲気にて1100℃で5時間保持後、さらに1400℃に昇温して5時間焼成を行い、酸化亜鉛セラミックスブロックを作製した。この酸化亜鉛セラミックスブロックの体積抵抗率は9.3×10-4Ωcmであった。得られた酸化亜鉛セラミックスブロックを10mm×10mm×1mmの板状に切り出して酸化亜鉛セラミックス薄板を得た。この薄板の表面を研磨、洗浄したのち、酸化ビスマスをターゲットに用い、高周波プラズマスパッタリングを行い、酸化亜鉛セラミックス薄板の表面に酸化ビスマスのスパッタ膜(厚さ0.3μm)を成膜し、接合体を得た。スパッタにはULVAC機工製RFS−200を用いた。成膜条件は以下のとおり。ターゲットサイズ:直径80mm,RF出力:20W,ガス圧(Ar);2.0Pa,成膜時間:15分。
【0031】
得られた接合体をそのまま抵抗体として用い、抵抗体の両面にAl蒸着電極を設け、電圧非直線抵抗素子を得た(図1参照)。この電圧非直線抵抗素子の両電極に電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。なお、酸化亜鉛セラミックス薄板側に設けられた電極を陽極とし、酸化ビスマスのスパッタ膜に設けられた電極を陰極とした。測定結果を表1及び図6に示す。1mA/cm2相当の電流値における制限電圧は2.7V、20A/cm2相当の電流値における制限電圧は4.3Vであった。
【0032】
【表1】
【0033】
[実施例2]
酸化亜鉛にθアルミナを2質量%混合した以外は、実施例1と同様にして酸化亜鉛セラミックスブロックを作製した。この酸化亜鉛セラミックスブロックの体積抵抗率は1.1×10-4Ωcmであった。この酸化亜鉛セラミックスブロックを10mm×10mm×1mmの板状に切り出して酸化亜鉛セラミックス薄板とし、この薄板を用いて実施例1と同様にして接合体を製造した。得られた接合体をそのまま抵抗体として用い、抵抗体の両面にAl蒸着電極を設け、電圧非直線抵抗素子とした。この電圧非直線抵抗素子の両電極に実施例1と同様にして電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。測定結果を表1及び図6に示す。1mA/cm2相当の電流値における制限電圧は2.7V、20A/cm2相当の電流値における制限電圧は3.4Vであった。
【0034】
[比較例1]
酸化亜鉛に硝酸アルミニウム水溶液をAl23に換算して0.001質量%となるように添加し、水分量が50質量%となるように水を加え、更に微量のバインダー及び消泡剤を加えた後、超音波撹拌を30分間、羽撹拌を30分間行うことにより混合した。混合後、スプレードライヤーにより造粒して造粒物を得た。造粒物を目開き200μmの篩にて篩通しした後、成形し、脱脂後、大気雰囲気で1400℃、5時間焼成し、酸化亜鉛セラミックスブロックを作製した。この酸化亜鉛セラミックスブロックの体積抵抗率は3.0×10-1Ωcmであった。得られた酸化亜鉛セラミックスブロックを10mm×10mm×1mmの板状に切り出して酸化亜鉛セラミックス薄板を得た。この酸化亜鉛セラミックス薄板の表面に実施例1と同様にして酸化ビスマスのスパッタ膜を成膜し、接合体を得た。得られた接合体をそのまま抵抗体として用い、抵抗体の両面にAl蒸着電極を設け、電圧非直線抵抗素子とした。この電圧非直線抵抗素子の両電極に実施例1と同様にして電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。測定結果を表1及び図6に示す。1mA/cm2相当の電流値における制限電圧は2.5V、20A/cm2相当の電流値における制限電圧は10.2Vであった。
【0035】
[比較例2]
酸化亜鉛に硝酸アルミニウム水溶液をAl23に換算して0.002質量%となるように添加した以外は、比較例1と同様にして酸化亜鉛セラミックスブロックを作製した。この酸化亜鉛セラミックスブロックの体積抵抗率は1.5×10-1Ωcmであった。この酸化亜鉛セラミックスブロックを10mm×10mm×1mmの板状に切り出して酸化亜鉛セラミックス薄板とし、この薄板を用いて実施例1と同様にして接合体を製造した。得られた接合体をそのまま抵抗体として用い、抵抗体の両面にAl蒸着電極を設け、電圧非直線抵抗素子とした。この電圧非直線抵抗素子の両電極に実施例1と同様にして電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。測定結果を表1及び図6に示す。1mA/cm2相当の電流値における制限電圧は2.6V、20A/cm2相当の電流値における制限電圧は8.8Vであった。
【0036】
[比較例3]
酸化亜鉛にCo34,MnO2,NiO粉末を酸化亜鉛に対してそれぞれ1.2,0.50,0.47質量%となるように混合し、硝酸アルミニウム水溶液をAl23に換算して0.0018質量%添加した。この混合粉を成形し大気雰囲気で1300℃、1時間ホットプレス焼成し、酸化亜鉛セラミックスブロックを作製した。この酸化亜鉛セラミックスブロックの体積抵抗率は2.1×10-1Ωcmであった。この酸化亜鉛セラミックスブロックを10mm×10mm×1mmの板状に切り出して酸化亜鉛セラミックス薄板とし、この薄板を用いて実施例1と同様にして接合体を製造した。得られた接合体をそのまま抵抗体として用い、抵抗体の両面にAl蒸着電極を設け、電圧非直線抵抗素子とした。この電圧非直線抵抗素子の両電極に実施例1と同様にして電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。測定結果を表1及び図6に示す。1mA/cm2相当の電流値における制限電圧は2.7V、20A/cm2相当の電流値における制限電圧は9.0Vであった。
【0037】
以上のように、体積抵抗率が3.0×10-1Ωcmの酸化亜鉛セラミックス薄板を用いた比較例1の電圧非直線抵抗素子に比べて、体積抵抗率が1.0×10-1Ωcm以下(特に1.0×10-3Ωcm以下)の酸化亜鉛セラミックス薄板を用いた実施例1,2の電圧非直線抵抗素子では、高電流領域(例えば20A/cm2以上の領域)の発生電圧が低く、電子回路の保護機能に優れていることがわかった。
【0038】
[実施例3]
実施例2と同様にして作製した接合体を2つ用意した。一方の接合体の酸化亜鉛セラミックス薄板ともう一方の接合体の酸化ビスマスのスパッタ膜との間にAu−Ge合金(質量比でAu/Ge=88/12)の箔(厚さ50μm)を挟んで両接合体を重ね合わせた。その状態で、不活性雰囲気下、420℃、10分間の熱処理を行い、両接合体を接合し、積層型の抵抗体を得た。得られた抵抗体の両面にAl蒸着電極を設け、電圧非直線抵抗素子を得た(図2参照)。この電圧非直線抵抗素子の両電極に電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。なお、酸化亜鉛セラミックス薄板に設けられた電極を陽極とし、スパッタ膜に設けられた電極を陰極とした。その結果、図示しないが、実施例2と同様の電圧非直線抵抗特性を示すことを確認した。この場合の非直線性領域(電流0.01〜2A/cm2の領域)の制限電圧は実施例2に比べておよそ2倍であった。
【0039】
[実施例4]
酸化亜鉛に硝酸アルミニウム水溶液をAl23に換算して0.1質量%となるように添加した以外は、比較例1と同様にして酸化亜鉛セラミックスブロックを作製した。この酸化亜鉛セラミックスブロックの体積抵抗率は1.0×10-1Ωcmであった。この酸化亜鉛セラミックスブロックを10mm×10mm×1mmの板状に切り出して酸化亜鉛セラミックス薄板とし、この薄板を用いて実施例1と同様にして接合体を製造した。得られた接合体をそのまま抵抗体として用い、抵抗体の両面にAl蒸着電極を設け、電圧非直線抵抗素子とした。この電圧非直線抵抗素子の両電極に実施例1と同様にして電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。測定結果を表1及び図6に示す。1mA/cm2相当の電流値における制限電圧は2.6V、20A/cm2相当の電流値における制限電圧は6.1Vであった。
【0040】
[実施例5]
酸化亜鉛にθアルミナを0.5質量%混合した以外は、実施例1と同様にして酸化亜鉛セラミックスブロックを作製した。この酸化亜鉛セラミックスブロックの体積抵抗率は8.9×10-3Ωcmであった。この酸化亜鉛セラミックスブロックを10mm×10mm×1mmの板状に切り出して酸化亜鉛セラミックス薄板とし、この薄板を用いて実施例1と同様にして接合体を製造した。得られた接合体をそのまま抵抗体として用い、抵抗体の両面にAl蒸着電極を設け、電圧非直線抵抗素子とした。この電圧非直線抵抗素子の両電極に実施例1と同様にして電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。測定結果を表1及び図6に示す。1mA/cm2相当の電流値における制限電圧は2.7V、20A/cm2相当の電流値における制限電圧は5.2Vであった。
【0041】
以上の実施例1,2,4,5及び比較例1〜3につき、酸化亜鉛セラミックス層の体積抵抗率(Ωcm)と20A/cm2相当の電流値における制限電圧との関係を表すグラフを図7に示す。図7から、酸化亜鉛セラミックス層の体積抵抗率が1.0×10-1Ωcmを境界として、20A/cm2相当の電流値における制限電圧が大きく変化していることがわかる。すなわち、酸化亜鉛セラミックス層の体積抵抗率が1.0×10-1Ωcmを超える領域では20A/cm2相当の電流値における制限電圧は大きな値であるが、1.0×10-1Ωcmを境としてそれ以下の領域では制限電圧が急激に小さくなることがわかる。
【0042】
[実施例6]
実施例2と同様にして作製した酸化亜鉛セラミックスブロックを10mm×10mm×1mmの板状に切り出して酸化亜鉛セラミックス薄板を得た。この薄板の表面を研磨、洗浄したのち、酸化ビスマスにSb23,Co34,MnO2粉末をそれぞれ酸化ビスマスに対し2.5,6.7,1.8質量%となるように混合、成形し大気雰囲気で700℃、2時間焼成したものをターゲットに用い、高周波プラズマスパッタリングを行い、酸化亜鉛セラミックス薄板の表面に酸化ビスマスを主成分とするスパッタ膜(厚さ0.3μm)を成膜し、接合体を得た。スパッタにはULVAC機工製RFS−200を用いた。成膜条件は以下のとおり。ターゲットサイズ:直径80mm,RF出力:20W,ガス圧(Ar);2.0Pa,成膜時間:20分。得られた接合体をそのまま抵抗体として用い、抵抗体の両面にAl蒸着電極を設け、電圧非直線抵抗素子とした。この電圧非直線抵抗素子の両電極に実施例1と同様にして電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。その結果、図示しないが、実施例2と同様の電圧非直線抵抗特性を示すことを確認した。測定結果を表2に示す。1mA/cm2相当の電流値における制限電圧は2.6V、20A/cm2相当の電流値における制限電圧は3.2Vであった。
【0043】
【表2】
【0044】
[実施例7]
実施例6と同様にして作製した接合体を2つ用意した。一方の接合体の酸化亜鉛セラミックス薄板ともう一方の接合体の酸化ビスマスのスパッタ膜との間にAu−Ge合金(質量比でAu/Ge=88/12)の箔(厚さ50μm)を挟んで両接合体を重ね合わせた。その状態で、不活性雰囲気下、420℃、10分間の熱処理を行い、両接合体を接合し、積層型の抵抗体を得た。得られた抵抗体の両面にAl蒸着電極を設け、電圧非直線抵抗素子を得た(図2参照)。この電圧非直線抵抗素子の両電極に電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。なお、酸化亜鉛セラミックス薄板に設けられた電極を陽極とし、スパッタ膜に設けられた電極を陰極とした。この電圧非直線抵抗素子の両電極に実施例1と同様にして電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。その結果、図示しないが、実施例2と同様の電圧非直線抵抗特性を示すことを確認した。測定結果を表2に示す。1mA/cm2相当の電流値における制限電圧は5.2V、20A/cm2相当の電流値における制限電圧は6.4Vであり、実施例6の2倍であった。
【0045】
[実施例8]
実施例6と同様にして作製した接合体を2つ用意した。一方の接合体の酸化亜鉛セラミックス薄板ともう一方の接合体の酸化ビスマスのスパッタ膜との間にAg箔(厚さ20μm)を挟んで両接合体を重ね合わせて、不活性雰囲気下、700℃、30分間の熱処理を行い、両接合体を接合し、積層型の抵抗体を得た。得られた抵抗体の両面にAl蒸着電極を設け、電圧非直線抵抗素子を得た(図2参照)。この電圧非直線抵抗素子の両電極に電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。なお、酸化亜鉛セラミックス薄板に設けられた電極を陽極とし、スパッタ膜に設けられた電極を陰極とした。この電圧非直線抵抗素子の両電極に実施例1と同様にして電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。その結果、図示しないが、実施例2と同様の電圧非直線抵抗特性を示すことを確認した。測定結果を表2に示す。1mA/cm2相当の電流値における制限電圧は5.3V、20A/cm2相当の電流値における制限電圧は6.6Vであり、実施例6のおよそ2倍であった。
【0046】
[比較例4]
実施例6と同様にして作製した接合体を2つ用意した。一方の接合体の酸化亜鉛セラミックス薄板ともう一方の接合体の酸化ビスマスのスパッタ膜との間にAg箔(厚さ20μm)を挟んで両接合体を重ね合わせて、不活性雰囲気下、900℃、30分間の熱処理を行い、両接合体を接合し、積層型の抵抗体を得た。得られた抵抗体の両面にAl蒸着電極を設け、電圧非直線抵抗素子を得た(図2参照)。この電圧非直線抵抗素子の両電極に電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。なお、酸化亜鉛セラミックス薄板に設けられた電極を陽極とし、スパッタ膜に設けられた電極を陰極とした。この電圧非直線抵抗素子の両電極に実施例1と同様にして電圧を印加して電流−電圧特性を測定した。その結果、作製した抵抗体により、電圧非直線抵抗特性を示すものと示さないものが見られた。測定結果を表2に示す。電圧非直線抵抗特性を示したものでも、1mA/cm2相当の電流値における制限電圧は5.3V、20A/cm2相当の電流値における制限電圧は15.0Vであり、実施例6の2倍よりはるかに高い制限電圧となった。
【0047】
以上の実施例6〜8及び比較例4から、酸化ビスマス層に酸化ビスマス以外の他の酸化物(ここではSb23,Co34,MnO2)が含まれる場合、700℃より高い温度の熱処理により接合体同士を接合すると、電圧非直線特性の発現が不安定になったり、制限電圧が高くなったりして、高電流領域の発生電圧を低く抑えた電圧非直線抵抗素子を得ることができないおそれがあることがわかった。
【0048】
なお、上述した実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
10 電圧非直線抵抗素子、12 接合体、12a 酸化亜鉛セラミックス層、12b 酸化ビスマス層、14 電圧非直線抵抗体(抵抗体)、16,18 電極、30 電圧非直線抵抗素子、33 導体層、34 抵抗体、40 電圧非直線抵抗素子、42 接合体、43 導体層、44 抵抗体、130 電圧非直線抵抗素子、134 抵抗体、140 電圧非直線抵抗素子、144 抵抗体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7