(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1および/または第2の保持装置は、前記磁石ユニットを構成する部材のうち最も前方にある部材が、前記スリーブの軸方向に貫通する穴を有する環状または筒状である、
請求項1に記載の物品の受け渡し装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、精密部品等では、物品の表面全体を検査することがある。多種多様な物品の外観を複数の方向から見て検査するには、物品を何らかの方法で保持して、多関節ロボットアームによって物品の姿勢を変えながら、カメラで撮像する方法を用いることができる。その際、装置で保持された面は観察することができないので、方向を変えて物品を保持し直す必要がある。一つの方法として、保持した物品を一旦台上に置いて、物品を反転させた後に再度物品を吸着・保持することができる。しかし、この方法には、時間がかかるという問題がある。2台の保持装置を用意して、物品を1台の保持装置から他の保持装置に直接受け渡すことができれば、物品の反転操作に伴う時間を短縮することができる。しかしながら、特許文献1〜3に記載された装置では、物品を受け渡すことは想定されておらず、これらの文献に受け渡しに適した構造等に関する記載もない。
【0007】
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、微小な物品を保持し、1台の保持装置から他の保持装置に直接受け渡すことが可能な一対の物品保持装置、および受け渡し方法を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような一対の物品保持装置を用いる物品検査方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一対の物品保持装置は、第1および第2の保持装置からなる。そして、前記第1および第2の保持装置はいずれも、非磁性材からなるスリーブと、前記スリーブの軸方向に直線運動する可動ロッドが該スリーブ内に挿入されたリニアアクチュエーターと、前記可動ロッドに直接または間接に固定されて前記スリーブ内に収容され、1個の永久磁石または少なくとも1個の永久磁石を含む複数の磁性部材の組み合わせによって構成された磁石ユニットとを有する。そして、前記第1保持装置の磁石ユニットの前方端面と前記第2保持装置の磁石ユニットの前方端面が、同種の第1磁極である。
【0009】
ここで、前方とは保持装置から見て保持する物品のある方向をいい、後方とはその反対方向をいう。また、磁石ユニットまたは可動ロッドが前方へ移動することを前進といい、後方へ移動することを後退という。磁性部材とは磁性材からなる部材であり、磁性材とは永久磁石と軟質磁性材を含む概念である。第1磁極はN極またはS極であり、第2磁極は第1磁極と逆のS極またはN極である。
【0010】
一対の物品保持装置を構成する第1および第2の保持装置は、各々独立して物品を保持することができる。そして、第1および第2の保持装置が連携することにより、第1の保持装置から第2の保持装置に、物品を直接受け渡すことができる。
【0011】
好ましくは、前記第1および/または第2の保持装置は、前記磁石ユニットを構成する部材のうち最も前方にある部材が、前記スリーブの軸方向に貫通する穴を有する環状または筒状である。あるいは、好ましくは、前記第1および/または第2の保持装置は、前記磁石ユニットの前方端面の少なくとも中央部が、前方に凸の球面である。
【0012】
また、好ましくは、前記第1および/または第2の保持装置は、前記磁石ユニットを構成する部材のうち最も前方にある部材が永久磁石である。このとき、さらに好ましくは、前記第1および/または第2の保持装置は、前記磁石ユニットが2以上の磁性部材からなり、前記永久磁石が、後方に隣接する磁性部材に磁力により吸着して結合されている。
【0013】
また、好ましくは、前記第1および/または第2の保持装置は、前記永久磁石がNd−Fe−B系磁石である。また、好ましくは、前記第1および/または第2の保持装置は、前記磁石ユニットの前方端面における磁束密度が300mT以上である。
【0014】
また、好ましくは、前記第1および/または第2の保持装置は、前記リニアアクチュエーターがエアシリンダーである。
【0015】
本発明の物品の受け渡し方法は、上記いずれかの一対の物品保持装置を用いる。そして、前記第1保持装置を用いて物品を保持するステップと、前記第2保持装置を、前記第1保持装置と反対側から、前記物品に吸着させるステップと、前記第1保持装置のスリーブを前記物品に当接させたまま、前記第1保持装置の磁石ユニットを後退させるステップと、前記物品から前記第1保持装置全体を引き離すステップとを有する。
【0016】
本発明の物品検査装置は、上記いずれかの一対の物品保持装置を用いる。そして、前記第1保持装置と、前記第1保持装置が先端に固定され、該第1保持装置に保持された物品を所定姿勢で第1所定位置に移動する第1多関節ロボットアームと、前記第1所定位置にある前記物品に投光する第1照明と、前記第1照明に投光された前記物品を撮像する第1カメラと、前記第2保持装置と、前記第2保持装置が先端に固定され、該第2保持装置に保持された物品を所定姿勢で第2所定位置に移動する第2多関節ロボットアームと、前記第2所定位置にある前記物品に投光する第2照明と、前記第2照明に投光された前記物品を撮像する第2カメラとを有する。そして、前記第1多関節ロボットアームによって前記物品が移動可能な範囲と、前記第2多関節ロボットアームによって前記物品が移動可能な範囲とが一部で重なっている。
【0017】
前記物品検査装置は、前記第1所定位置と前記第2所定位置が同一の位置であり、前記第1照明と前記第2照明が同一の照明であり、前記第1カメラと前記第2カメラが同一のカメラであってもよい。
【0018】
好ましくは、前記第1および/または第2照明がローアングル照明である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一対の物品保持装置または物品受渡方法によれば、微小な物品を保持し、1台の保持装置から他の保持装置に直接受け渡すことができる。また、本発明の物品検査方法によれば、1台の保持装置から他の保持装置に直接受け渡すことにより、物品の外観検査にかかる時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一対の物品保持装置の実施形態を図に基づいて説明する。各図では、構造の理解を容易にするために、一部の部材を適宜断面で示した。また、各実施形態における第1保持装置と第2保持装置の構造・動作は同じである。具体的には、第1保持装置における部材と、当該部材を示す番号の末尾に「a」を付した第2保持装置における部材は、同じ形状・機能を有する。第1保持装置についての好ましい材質、サイズ等に関する説明は、第2保持装置についてもそのまま妥当する。
【0022】
本発明の一対の物品保持装置の第1の実施形態を
図1〜5に基づいて説明する。
【0023】
図1において、本実施形態の一対の保持装置10、20は、第1の保持装置10と第2の保持装置20からなる。以下に、第1保持装置の構造を説明する。
【0024】
第1保持装置10は、スリーブ30と、エアシリンダー35と、磁石ユニット40とを有する。スリーブは、前方(
図1の下側)の端に開口32を有する。エアシリンダーは、本体36がフランジ38を介してスリーブに固定されており、可動ロッド37がスリーブ内に収容されている。磁石ユニットはエアシリンダーの可動ロッドの先端に固定されている。エアシリンダーが伸びると、磁石ユニットが前進して、開口部で物品を吸着することができる。
【0025】
スリーブ30は、非磁性材からなる。非磁性材としては、プラスチック、銅、アルミニウム等を用いることができる。なかでも、プラスチックを用いることが好ましい。スリーブの開口端31が物品に当接するときに、物品を傷つけにくいからである。
【0026】
また、スリーブ開口端31には、物品のずれを抑制するためにすべり止め部を設けてもよい。すべり止め部は、例えば、厚さ0.1mm〜0.3mm程度のゴムや樹脂製の弾性体シートを開口端31に貼着して形成することができる。
【0027】
スリーブ30の形状は特に限定されないが、円筒形であることが好ましい。後述する物品の検査に利用するときに、吸着した物品の向きによらず、物品の輪郭からはみ出しにくく、照明の邪魔になりにくいからである。
【0028】
エアシリンダー35は、本体36がフランジ38を介してスリーブ30に固定されている。エアシリンダーをフランジに固定する方法およびスリーブを固定する方法は、ねじ留め等公知の方法を用いることができる。また、フランジを用いず、エアシリンダー本体を直接スリーブに固定してもよい。本体36がスリーブに固定されていることによって、エアシリンダーが伸縮すると、スリーブ内に収容された可動ロッド37がスリーブに対して相対的に、その軸方向に直線運動することができる。
【0029】
エアシリンダー35はリニアアクチュエーターの一種である。リニアアクチュエーターは、種々のエネルギーを直線運動に変換する装置である。リニアアクチュエーターとしては、エアシリンダーの他に、油圧シリンダー、電動シリンダー、リニアモーターを用いたもの、モーターの回転運動を運動変換機構により直線運動に変換するものを用いることができる。なかでも、小型化が可能で、精確な制御が容易であることから、エアシリンダーを用いるのが好ましい。
【0030】
磁石ユニット40は、可動ロッド37の先端に固定されている。これにより、エアシリンダー35が伸縮すると、可動ロッドの直線運動に伴って、磁石ユニットがスリーブ30内面に案内されてスリーブの軸方向に直線運動する。
【0031】
磁石ユニット40は、本実施形態では単一の永久磁石50からなる。磁石ユニットの前方端面47が第1磁極(例えばN極)であり、反対側の後方端面48が第2磁極(例えばS極)である。このように開口32に面して磁極を形成することにより、磁石ユニットの前方端面から出る磁束密度が大きくなり、強い吸着力が得られる。
【0032】
なお、磁石ユニットは、少なくとも1個の永久磁石を含む複数の磁性部材の組み合わせによって構成されていてもよい。磁石ユニットの他の構成例は後述する。
【0033】
永久磁石50としては、磁力の強いものを用いることが好ましい。これにより、より多種の材質からなる物品を吸着することができるからである。永久磁石は、好ましくはNd−Fe−B系の磁石(ネオジム磁石)である。あるいは、永久磁石の種類に関わらず、磁石ユニット40の前方端面47における磁束密度が、好ましくは300mT以上であり、より好ましくは400mT以上であり、特に好ましくは500mT以上である。これにより、一般的な磁石に吸着されないオーステナイト系のステンレス鋼からなる物品や、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、マンガンなどを成分として含む多くの合金からなる物品を吸着することができる。また、強い磁力で強力に保持することで、微小な物品を高速に搬送できる。なお、入手の容易さの点からは、永久磁石の磁束密度は700mT以下であることが好ましい。
【0034】
次に、本実施形態の第1保持装置による物品の吸着動作を
図2に基づいて説明する。
【0035】
図2には、保持装置10の先端部分と物品90が示されている。物品90は片状である。
【0036】
図2Aにおいて、保持装置10を物品90の吸着面95に正対させる。
【0037】
次いで、
図2Bにおいて、保持装置を物品に近づけて、スリーブの開口端31を物品の吸着面95に当接させる。保持装置をロボットアーム等によって操作する場合は、ロボットの目となるカメラで物品の位置を確認ながら保持装置の姿勢・位置を調整することにより、正確な動作が可能である。
【0038】
次いで、
図2Cにおいて、エアシリンダーを伸ばし、可動ロッド37と磁石ユニット40を前進させて物品90に吸着させる。このとき、スリーブ開口端で物品を押さえたまま、磁石ユニットを近づけていくので、吸着の瞬間に物品が動くことがない。また、点ではなく、開口端の円周全体で物品押さえるので、吸着の瞬間に物品が回転することもない。なお、磁力が強い場合は、磁石ユニットの前方端面47がスリーブの開口端31よりわずかに引っ込んだ位置で、十分な吸着力が得られる。その場合は、磁石ユニットの前方端面が物品90に接触する直前で止めてもよい。エアシリンダーによって精確な位置送りができるため、このような制御も可能である。
【0039】
次いで、
図2Dにおいて、物品を保持した状態で、保持装置を移動させることができる。このときも、スリーブ開口端31が物品に接触した状態を保つことが好ましい。ロボットアームなどを用いて保持装置を移動させる場合には、物品に大きな力が作用することがある。スリーブ開口端を物品に当接した状態を保つことにより、搬送中の物品の位置ずれ、向きの変化(軸に垂直な面内での回転)を防止することができる。特に、後述する検査装置等で保持装置を用いる場合、タクトタイムを短縮するために可能な限りの高速搬送が求められる。そのため、実際のロボットアームの移動速度は2500mm/秒、加速度は2.5Gに達することがある。このような場合でも、本実施形態の保持装置を用いることで安定した物品のハンドリングが可能となる。
【0040】
次に、第1保持装置から第2保持装置への物品の受け渡し方法を
図3に基づいて説明する。
【0041】
図3において、左側にある第1保持装置10に保持された物品90を、右側にある第2保持装置20に受け渡す。
図3では、例として、第1および第2保持装置の前方端面の第1磁極がいずれもN極である場合を示した。
【0042】
まず、
図3Aにおいて、物品が第1保持装置10に保持された状態で、第2保持装置20を反対側から近づける。このとき、第2保持装置の磁石ユニットは、スリーブ内に後退した位置にある。
【0043】
次いで、
図3Bにおいて、第2保持装置のスリーブ開口端を物品に当接させる。
【0044】
次いで、
図3Cにおいて、第2保持装置のエアシリンダーを伸ばし、磁石ユニット40aを前進させて、物品に当接させて、吸着させる。このとき、物品は、第1保持装置のスリーブの開口端31と第2保持装置のスリーブ開口端31aに挟まれている。
【0045】
次いで、
図3Dにおいて、第1保持装置のエアシリンダーを縮めて、磁石ユニット40を後退させて、物品から離脱させる。
【0046】
次いで、
図3Eにおいて、第1保持装置の全体を、物品から離脱させる。以上により、物品90が第1保持装置から第2保持装置に受け渡された。
【0047】
ここで、重要なことは、第1および第2保持装置の磁石ユニットの前方端面47、47aが、ともに同種の磁極(
図3ではN極)であることである。比較のために、第1および第2保持装置の対向する前方端面が逆の磁極、例えばN極とS極である場合を
図4に基づいて説明する。
【0048】
図4において、第1保持装置10の磁石ユニット40の前方端面がN極であるのに対して、第2保持装置29の磁石ユニット49aの前方端面がS極である。この場合は、
図4Dにおいて、第1保持装置の磁石ユニット40を後退させて、物品から離脱させたときに、物品90の第1保持装置側の表面がS極となる。そのため、
図4Eにおいて、第1保持装置の全体を物品から離脱させる際に、物品が第1保持装置に引き付けられて、第2保持装置から離れてしまう。この現象は、第1保持装置の磁石ユニットを、磁力の影響がなくなる程度まで遠くに後退させてから、第1保持装置全体を引き離すことによって、理論的には防止できる。しかし、それでは受け渡し操作に時間がかかるため、現実的ではない。
【0049】
参考のために、
図5Aに
図3Dの状態での磁力線、
図5Bに
図4Dの状態での磁力線を示す。第1および第2保持装置の対向する磁極が同種である場合は(
図5A)、第1保持装置と物品が反発するので、この後に第1保持装置を引き離しても、物品は第2保持装置に貼り付いたまま、離れることがない。
【0050】
なお、保持装置が物品を解放する動作は、上記吸着動作と反対である。すなわち、
図2を参照して、物品を所要の位置に置き(
図2C)、物品にスリーブ開口端を当接させたまま磁石ユニットを後退させ(
図2B)、磁石ユニットを完全に後退させた後、保持装置を物品から離して、物品を解放する(
図2A)。このとき、スリーブ開口端で物品を押さえたまま磁石ユニットを後退させるので、磁石ユニットを離す瞬間に物品が動きにくく、正確な位置に物品を解放することができる。
【0051】
次に、第2の実施形態の一対の物品保持装置を
図6に基づいて説明する。
【0052】
図6において、本実施形態の一対の保持装置11、21は、第1の保持装置11と第2の保持装置21からなる。本実施形態の保持装置は、磁石ユニット41、41aの構成が、第1の実施形態と異なる。以下に、第1保持装置11の構造を説明する。
【0053】
本実施形態では、磁石ユニット41は2つの部材からなる。前方の部材は永久磁石51である。後方の磁性部材61は、永久磁石であっても軟質磁性材からなる軟質磁性部材であってもよい。軟質磁性材としては、透磁率の高い、鉄などの各種公知の材料を用いることができる。好ましくは、磁石ユニットの最も前方にある部材は永久磁石である。これにより、より強い吸着力が得られるからである。
【0054】
なお、磁石ユニットの構成は、
図6のものに限られない。例えば、第1の実施形態のように、磁石ユニットが単一の永久磁石からなるものであってもよい。また、例えば、
図7に示すように、磁石ユニット43は、前方に軟質磁性部材63を配置し、後方に永久磁石53を配置してもよい。より一般的には、磁石ユニットは、1個の永久磁石、または少なくとも1個の永久磁石を含む複数の磁性部材の組み合わせによって構成されていればよい。
【0055】
図6に戻って、本実施形態のように磁石ユニットが複数の磁性部材からなる場合も、永久磁石51としては、磁力の強いものを用いることが好ましい。これにより、より多種の材質からなる物品を吸着することができるからである。永久磁石は、好ましくはNd−Fe−B系の磁石(ネオジム磁石)である。あるいは、永久磁石の種類に関わらず、磁石ユニット41の前方端面47における磁束密度が、好ましくは300mT以上であり、より好ましくは400mT以上であり、特に好ましくは500mT以上である。これにより、一般的な磁石に吸着されないオーステナイト系のステンレス鋼からなる物品や、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、マンガンなどを成分として含む多くの合金からなる物品を吸着することができる。また、強い磁力で強力に保持することで、微小な物品を高速に搬送できる。なお、入手の容易さの点からは、永久磁石の磁束密度は700mT以下であることが好ましい。
【0056】
磁石ユニット41をエアシリンダーの可動ロッド37の先端に固定する方法は特に限定されず、接着剤を用いて接着する方法や、ねじ等を用いた機械的な方法などを用いることができる。
【0057】
磁石ユニット41を構成する部材同士の接合方法も特に限定されない。
図6では、前方にある永久磁石51は、後方に隣接する磁性部材61に、磁力により吸着されて結合している。この構造を採用するためには、磁石ユニット41と物品との吸着力に比べて、永久磁石51と磁性部材61との吸着力が格段に大きい必要がある。例えば、永久磁石51がNe−Fe−B系磁石で、物品が一般的な磁石に着かないものなら、永久磁石51と磁性部材61の吸着力が格段に大きいので、この構造を採用することができる。この構造により、永久磁石51の交換を極めて容易に行うことができる。
【0058】
永久磁石51の大きさは、強い磁力が得られるという点からは、大きい方が好ましい。一方、微小な物品を対象とする本実施形態の保持装置では、保持装置自体も小型であることが望ましく、スリーブの軸に垂直な断面における外径は、好ましくは40mm以下であり、より好ましくは20mm以下である。実際には、物品の種類やハンドリングの内容に応じて、所要の吸着力を得るための磁石の種類・サイズ等を決め、磁石の外形に合わせてスリーブを選択することになろう。
図8に、より径の小さい永久磁石54と磁性部材64からなる磁石ユニット44、およびより径の小さいスリーブ34を採用した保持装置14の例を示す。永久磁石のスリーブ軸方向への長さは特に限定されない。磁石が長いほど磁力が強くなるので、必要に応じて適当な長さのものを選択することができる。
【0059】
本実施形態では、永久磁石51は環状である。物品の吸着面に穴が存在する場合、磁石ユニットの最も前方にある部材が環状または筒状であると、この形状が、物品の磁気的な位置決め手段として作用する。以下に説明する。
【0060】
物品を磁石に吸着させる場合、磁石からでる磁力線がなるべく物品内を通るように、物品が位置や向きを変えようとする力が働く。微小な部品には固定のために穴が形成されているものが多い。そして、吸着時に位置や向きを変えようとする傾向は、物品の吸着面に物品を貫通する穴が形成されていると、特に顕著になる。
【0061】
図9Aに穴97が形成された物品91の平面図を示す。このような物品を、穴のない磁石、例えば円柱状の磁石50に吸着させる場合、吸着の瞬間に物品が動いて、位置がずれたり向きが変化しやすい(
図9Bから
図9Cへの変化)。また、一旦吸着しても、搬送中に物品が動きやすく、物品を解放する瞬間にも物品が動きやすい。この現象は、穴57のある環状や筒状の磁石51を用いた場合にも起こり得る(
図9Dから
図9Eへの変化)。しかし、磁石の穴57を物品の穴97と同心にして、吸着面に垂直に磁石を近づけて、一旦吸着がされると、物品の位置および向きが安定する(
図9F)。本実施形態の保持装置では、永久磁石51の穴と物品の穴が同心になるように物品をスリーブで押さえながら、磁石ユニット41を近づけて吸着することができるので、以後は、搬送中にも物品が動きにくい。高速搬送による物品のずれを抑制するには、前述のとおり、スリーブ開口端31にすべり止め部を設けることが好ましい。
【0062】
本実施形態の保持装置11の動作は、基本的に、第1実施形態のそれと同じである。本実施形態では、吸着動作、受け渡し動作において、永久磁石51の穴57と物品の穴が同心になるように保持装置11が操作される点で、第1実施形態と異なる。保持装置11を用いる場合、スリーブを物品に当接させて、物品を押さえながら、磁石を吸着させるので、吸着の瞬間に物品が動くことがなく、永久磁石51の穴と物品の穴を同心にして、磁石ユニットを吸着させることができる。そして、2つの穴が同心になって吸着が完了すると、以後は、搬送中に物品の吸着位置がずれたり、向きが変わったりすることが起こりにくい。
【0063】
次に、本発明の一対の物品保持装置の第3の実施形態を
図10に基づいて説明する。
【0064】
図10において、本実施形態の一対の保持装置15、25は、第1の保持装置15と第2の保持装置25からなる。以下に、第1保持装置15の構造を説明する。
【0065】
図10において、本実施形態の保持装置15は、永久磁石55が球形である点で第2の実施形態と異なる。このように、磁石ユニット45の前方端面47の中央部が、前方に凸の球面であることによって、穴を有する物品を吸着するときに、物理的に位置決めができる。なお、永久磁石55の形状は、球形に限られず、例えば半球形であってもよい。
【0066】
本実施形態でも、磁石ユニット45の前方端面47に第1磁極(例えばN極)が形成されている。球形の永久磁石55を後方に隣接する磁性部材65に磁力のみによって結合する場合は、磁性部材として棒状の永久磁石を用いることにより、前方端面に正しく第1磁極がくるように永久磁石55の向きを合わせることができる。なお、その場合の棒磁石の磁力は弱くてもよい。
【0067】
本実施形態の保持装置15の動作は、基本的に、第1および第2実施形態のそれと同じである。本実施形態では、吸着動作、受け渡し動作において、永久磁石55の球面が物品の穴に嵌るように保持装置15が操作される点で、第1および第2実施形態と異なる。保持装置15を用いる場合、永久磁石55の球面が物品の穴に少し入った状態で物品が保持されるので、搬送中に物品の位置がずれることがなく、向きが変わりにくい。
【0068】
次に、本発明の物品検査装置の実施形態を
図11および
図12に基づいて説明する。
【0069】
図11において、本実施形態の物品検査装置は、2組の装置群からなる。検査装置70は、第1保持装置16と、第1多関節ロボットアーム71と、第1ローアングルリング照明72と、第1カメラ73と、第2保持装置26と、第2多関節ロボットアーム81と、第2ローアングルリング照明82と、第2カメラ83とを有する。そして、第1ロボットアームによって物品を移動可能な範囲と、第2ロボットアームによって物品を移動可能な範囲が一部で重なっており、その重なった領域で、第1保持装置から第2保持装置に物品92が受け渡される。なお、以下において多関節ロボットアームを単にロボットアームと、ローアングルリング照明を単にリング照明ということがある。
【0070】
第1および第2保持装置16、26は、本発明の一対の物品保持装置である。好ましくは、上記各実施形態に記載された保持装置を組み合わせて用いることができる。第1保持装置は、第1多関節ロボットアーム71の先端に、第2保持装置は、第2多関節ロボットアーム81の先端に、固定されている。
【0071】
多関節ロボットアームは、多くの回転軸を有することにより、人間の腕に似た複雑な動きが可能である。第1ロボットアーム71は、第1保持装置16の先端に吸着・保持された物品92を、所定の姿勢で、第1リング照明72直前の第1所定位置74に移動する。第2ロボットアーム81は、第2保持装置26の先端に吸着・保持された物品92を、所定の姿勢で、第2リング照明82直前の第2所定位置84に移動する。
【0072】
図12において、第1リング照明72は、リング型のローアングル照明である。ローアングル照明は、検査対象である物品92の表面に、低い角度から光Lを投光する。これによって、表面のキズ等が目立ちやすく、欠点の発見が容易となる。ここで、低い角度とは、検査面からの角度が小さいという意味であって、検査面への入射角θi、すなわち物品の表面に立てた垂線からの角度は大きい。入射角θiは、45度以上であることが好ましく、60度以上であることがさらに好ましく、75度以上であることが特に好ましい。ローアングル照明で物品92の表面をムラなく照明するためには、照明とワークとの距離を充分近づける必要がある。ローアングル照明72と物品92との距離は15mm以下であることが好ましい。なお、第2リング照明82は第1リング照明72と同じ構造を有し、第1リング照明についての説明は、第2リング照明についてもそのまま妥当する。
【0073】
第1カメラ73は、第1リング照明72に投光された物品92を、第1リング照明の穴を通して撮像する。得られた画像は図示しない画像処理装置によって処理され、キズ、欠け等の欠点の有無が判断される。なお、第2カメラ83は第1カメラ73と同じ構造を有する。
【0074】
次に、本実施形態の物品検査方法の動作を説明する。
【0075】
まず、検査対象である物品92を、第1保持装置16で吸着して、パレット等から取り上げる。
【0076】
次いで、第1ロボットアーム71により、物品92を所定姿勢で、第1リング照明72直前の第1所定位置74に移動させる。物品の姿勢は、例えば、吸着面の反対側の面を第1リング照明および第1カメラの光軸に垂直にして向ける。このとき、保持された物品の向き(保持装置のスリーブ軸に垂直な面内での回転方向)は一定しないので、第1カメラで物品を撮像し、画像処理によって物品の向きを判断する。同時に、撮像した面の外観検査が行われる。
【0077】
画像処理に当たっては、撮像された画像から物品のエッジを抽出するなどして、物品の向きを判断する。このとき、保持装置のスリーブが物品の輪郭からはみ出ていると、画像に映りこみ、画像処理が煩雑になって好ましくない。したがって、保持装置のスリーブの外径は、物品の輪郭に完全に入るように細く形成されていることが好ましい。
図13において、スリーブ30の断面が円形の場合は、その直径が物品92の輪郭Pの最大内接円96より小さいことが好ましい。多くの種類の物品に対して利用可能であるために、保持装置のスリーブの径は、好ましくは50mm以下であり、より好ましくは30mm以下であり、特に好ましくは20mm以下である。
【0078】
一旦物品の向きが判断されると、その結果を考慮して、検査すべき他の側面が第1リング照明および第1カメラに正対するように、物品の姿勢を変える。
図12はこの状態を示している。このとき、スリーブが物品の輪郭からはみ出ていると、検査すべき側面に照明の影ができるので、好ましくない。この点からも、保持装置のスリーブの径は、物品の輪郭に完全に入るように細く形成されていることが好ましい。また、
図12において、スリーブ30の長さは、リング照明の半径より長いことが好ましい。一般的なローアングルリング照明の半径が50〜100mm程度であることを考慮すると、スリーブの長さは、好ましくは50mm以上であり、より好ましくは75mm以上であり、特に好ましくは100mm以上である。
【0079】
続いて、角度を変えて、他の側面を検査することができる。
【0080】
次に、第1保持装置16から第2保持装置26に物品92を受け渡す。
【0081】
次いで、第2ロボットアーム81により、物品を所定姿勢で、第2リング照明82直前の第2所定位置84に移動させる。ここで、第1保持装置で保持していた物品の面を第2リング照明82および第2カメラ83に向けて、その面の検査を行うことができる。続いて、角度を変えて、他の側面を検査することができる。
【0082】
すべての検査が終了したら、第2ロボットアームは、物品をパレット等に積みつける。
【0083】
本実施形態の検査装置によれば、物品の表面全体を検査することができ、物品を第1保持装置から第2保持装置に直接受け渡すことができるので、検査時間が短縮できる。また、本発明の物品保持装置を用いれば、ロボットアームによる移動、転回を繰り返しても、上記検査工程の途中で物品の位置がずれたり、向きが変わったりしにくい。また、第2または第3実施形態の保持装置を用いれば、物品に穴が形成されている場合にも、物品の位置がずれたり、向きが変わったりしにくい。また、検査終了後に物品をパレットに積みつける際にも、正確に位置に物品を解放することができる。
【0084】
なお、本実施形態の物品検査方法の変形例としては、第1および第2ローアングルリング照明と、第1および第2カメラは、それぞれ1台の装置で兼用してもよい。その場合、途中で物品を第1保持装置から第2保持装置に受け渡して、物品の表面全体を一つの所定位置で検査することになる。
【0085】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で、様々な変形が可能である。