特許第6496609号(P6496609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東海理化電機製作所の特許一覧

<>
  • 特許6496609-電子キーシステム 図000002
  • 特許6496609-電子キーシステム 図000003
  • 特許6496609-電子キーシステム 図000004
  • 特許6496609-電子キーシステム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496609
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】電子キーシステム
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/24 20130101AFI20190325BHJP
   B60R 25/32 20130101ALI20190325BHJP
【FI】
   B60R25/24
   B60R25/32
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-111476(P2015-111476)
(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公開番号】特開2016-222148(P2016-222148A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩下 明暁
(72)【発明者】
【氏名】岸本 耕平
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−91434(JP,A)
【文献】 特開2011−52505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/24
B60R 25/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動センサにおいて振動が検出されることを条件に車載機との間で無線通信が可能となる電子キーを備え、
前記車載機は、少なくとも前記電子キーとの間で行う無線通信が成立すること、及び車両に設けられる操作部が操作されることを条件に車載機器を動作が許可された状態で動作させる車載制御部を有する電子キーシステムにおいて、
前記車両の少なくとも一部を振動させる振動部を備え、
前記車載制御部は、少なくとも前記電子キーとの間で行う無線通信が成立していないこと、及び前記操作部が操作されたことを条件に前記車載機器の動作が許可されていない状態で前記振動部を通じて前記車両の少なくとも一部を振動させる電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記電子キーは、前記車載機からの要求に応じて、前記振動センサにおいて検出された振動の変化態様を示す情報を無線送信し、
前記車載制御部は、前記振動部を通じて前記車両の少なくとも一部を振動させた際の振動の変化態様と、前記電子キーから受信する振動の変化態様との照合がさらに成立することを条件に前記車載機器を動作させる電子キーシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記車載制御部は、前回振動させた際の振動の変化態様と異なる変化態様となるように、前記振動部を通じて前記車両の少なくとも一部を振動させる電子キーシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、
前記電子キーと前記車載機との間で行う無線通信を通じて前記電子キーの位置を検出する検出部を備え、
前記車載制御部は、少なくとも前記電子キーとの間で行う無線通信が成立していないこと、及び前記操作部が操作されたことを条件に前記車載機器の動作が許可されていない状態で、前記電子キーとの間で前回成立した無線通信において前記検出部により検出された位置を、前記振動部を通じて振動させる電子キーシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、
前記車載制御部は、前記振動部を通じて振動が徐々に強くなるように前記車両の少なくとも一部を振動させる電子キーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子キーと車載機との間で行う無線通信が成立した場合に、ドア錠のロックとアンロックとが切り替えられたり、エンジンの始動が許可されたりする電子キーシステムが周知である。
【0003】
特許文献1の電子キーシステムに採用される電子キーは、振動センサを有し、当該振動センサが振動を検出している間だけ車載機との間の無線通信を行う。したがって、電子キーを家の保管場所に保管している場合など、電子キーが定置状態にある場合、この電子キーは無線通信を行わないので、電波をリレーする中継器を使用しても、電子キーと車載機との間で行う無線通信を不正に成立させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−91434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、運転者が車内で仮眠を取っている間、電子キーは定置状態にあると推測される。この場合、仮眠を終えた後、運転者がエンジンを始動させるためにスイッチを操作しても、電子キーは定置状態のままであるから、当該電子キーは無線通信を行わない。したがって、電子キーと車載機との間の無線通信は成立しないので、エンジンを始動させるためには、運転者が電子キーに振動を与える必要がある。このように、特許文献1の電子キーシステムは、運転者にとって、使い勝手がよくない状況が発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転者にとって使い勝手のよい電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、振動センサにおいて振動が検出されることを条件に車載機との間で無線通信が可能となる電子キーを備え、前記車載機は、前記電子キーとの間で行う無線通信が成立すること、及び車両に設けられる操作部が操作されることを条件に車載機器を動作させる車載制御部を有する電子キーシステムは、前記車両の少なくとも一部を振動させる振動部を備え、前記車載制御部は、前記操作部が操作されたことを条件に前記振動部を通じて前記車両の少なくとも一部を振動させることを要旨とする。
【0008】
このシステムによれば、例えば、運転者が仮眠をとり、電子キーが定置状態であったとしても、運転者が操作部を操作すれば、車両の少なくとも一部が振動し、その振動が電子キーに伝わる。これにより、電子キーは、車載機との間で無線通信が可能となるため、電子キーと車載機との間で無線通信が成立する。すなわち、従来のように、電子キーを動かさなくても、運転者は、操作部を操作するだけで、車載機器を動作させることができるので使い勝手がよい。
【0009】
上記システムにおいて、前記電子キーは、前記車載機からの要求に応じて、前記振動センサにおいて検出された振動の変化態様を示す情報を無線送信し、前記車載制御部は、前記振動部を通じて前記車両の少なくとも一部を振動させた際の振動の変化態様と、前記電子キーから受信する振動の変化態様との照合が成立することを条件に前記車載機器を動作させることが好ましい。
【0010】
振動の変化態様の照合が成立する場合、電子キーは、車内に位置し、振動部を通じて車両の少なくとも一部が振動したことにより起動したものと推定される。すなわち、このシステムによれば、車載制御部は、電子キーが車内に位置する場合にのみ車載機器を動作させる。一方、車載制御部は、電子キーが車両から離れた位置にある場合には車載機器を動作させないので、セキュリティ性がよい。
【0011】
上記システムにおいて、前記車載制御部は、前回振動させた際の振動の変化態様と異なる変化態様となるように、前記振動部を通じて前記車両の少なくとも一部を振動させることが好ましい。
【0012】
このシステムによれば、車両の振動態様は振動毎に異なる。したがって、第3者に車両の振動態様を読みとられても、その読みとられた振動態様の情報は次の車両の振動態様と異なるので、よりセキュリティ性を向上させることができる。
【0013】
上記システムにおいて、前記電子キーと前記車載機との間で行う無線通信を通じて前記電子キーの位置を検出する検出部を備え、前記車載制御部は、前記電子キーとの間で前回成立した無線通信において前記検出部により検出された位置を、前記操作部が操作されたことを条件に前記振動部を通じて振動させることが好ましい。
【0014】
このシステムによれば、電子キーが位置すると推定される場所のみ振動が与えられる。したがって、車両の乗員への振動の入力が抑制される。これにより、車両の乗員が振動による違和感を覚えにくい。
【0015】
上記システムにおいて、前記車載制御部は、前記振動部を通じて振動が徐々に強くなるように前記車両の少なくとも一部を振動させる電子キーシステム。
このシステムによれば、電子キーが車両の少なくとも一部の振動が伝わりやすい位置にあれば、電子キーは振動が弱い状態で車載機との間の無線通信が可能となるため、ユーザが振動を不快と感じにくい。一方で、電子キーが車両の少なくとも一部の振動が伝わりにくい位置にあっても、振動は徐々に強くなるので、ユーザが電子キーに振動を与えなくても電子キーは車載機との間の無線通信が可能となるので、使い勝手がよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子キーシステムは、運転者にとって使い勝手がよいという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
図2】車載制御部の処理手順を示すシーケンスチャート。
図3】シートモータによる振動の時間変化(振動態様)を示すタイムチャート。
図4】4つのアンテナと同4つのアンテナの通信範囲を示す車両の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、電子キーシステムの第1の実施形態について図面に従って説明する。
図1に示すように、電子キーシステム1は、電子キー10と車載機20との間の無線通信を通じて各種の車載制御を行う。
【0019】
<電子キー>
図1に示すように、電子キー10は、電子キー制御部11と、LF受信部12と、UHF送信部13と、振動検出部14とを備える。LF受信部12、UHF送信部13、及び振動検出部14は、それぞれ電子キー制御部11に電気的に接続されている。
【0020】
LF受信部12は、LF(Low Frequency)帯の無線信号を受信するとともに、受信した信号を電気信号に復調する。
UHF送信部13は、電気信号をUHF(Ultra High Frequency)帯に変調するとともに、変調した無線信号を送信する。
【0021】
振動検出部14は、振動センサに相当し、電子キー10の振動を検出する。
電子キー制御部11のメモリ11aには、車載機20と共通のIDコードが記憶されている。また、メモリ11aには、電子キー制御部11が後述する駆動モードから同じく後述する待機モードへ移行するために使用するモード移行時間が記憶されている。
【0022】
電子キー制御部11は、時間カウンタ11bを有する。
待機モードの電子キー制御部11は、振動検出部14からの信号のみを待機し、振動検出部14から信号が入力されることをトリガとして駆動モードに移行する。なお、電子キー制御部11は、待機モードから駆動モードへの移行とともに、時間カウンタ11bを起動させる。
【0023】
駆動モードの電子キー制御部11は、振動検出部14からの信号を待機するのに加え、LF受信部12及びUHF送信部13を統括的に制御する。駆動モードの電子キー制御部11は、LF受信部12を通じて後述のリクエスト信号を受信すると、リクエスト信号の受信を示す情報及びメモリ11aに記憶されたIDコードを含ませたレスポンス信号を生成する。当該生成されたレスポンス信号は、UHF送信部13において変調された後、無線送信される。
【0024】
なお、駆動モードの電子キー制御部11は、常時、振動検出部14において振動が検出されたか否かを監視し、振動が検出されるたびに時間カウンタ11bにおいてカウントされたカウント時間をリセットする。駆動モードの電子キー制御部11は、時間カウンタ11bのカウント時間がモード移行時間を超えた場合には、駆動モードから待機モードへ移行する。なお、電子キー制御部11は、駆動モードから待機モードへの移行とともに、時間カウンタ11bの駆動を停止させるとともに、時間カウンタ11bにおいてカウントされたカウント時間をリセットする。
【0025】
<車載機>
図1に示すように、車載機20は、車載制御部21と、LF送信部22と、UHF受信部23と、プッシュスイッチ24と、エンジン装置25とを備える。車載制御部21を除く各構成は、それぞれ当該車載制御部21と電気的に接続されている。
【0026】
LF送信部22は、車載制御部21が生成する電気信号をLF帯の無線信号に変調するとともに、変調した無線信号を設定される車内の通信エリアに向けて送信する。
UHF受信部23は、UHF帯の無線信号を受信するとともに、受信した信号を電気信号に復調する。
【0027】
プッシュスイッチ24は、押し操作される。
エンジン装置25は、エンジン25aの始動や停止を制御する。
車載制御部21のメモリ21aには、電子キー10と共通のIDコードが記憶されている。
【0028】
車載制御部21は、IDコードの送信を要求する情報を含ませたリクエスト信号を定期的に生成する。当該リクエスト信号は、LF送信部22により変調され、無線送信される。
【0029】
車載制御部21は、UHF受信部23を通じてリクエスト信号に対する応答としてのレスポンス信号を受信すると、このレスポンス信号に含まれるIDコードとメモリ21aに記憶されているIDコードとを照合する。車載制御部21は、ID照合が成立すれば、エンジン25aの始動を許可する。このエンジン25aの始動が許可された状態でプッシュスイッチ24への押し操作を検出すると、車載制御部21は、エンジン装置25を通じてエンジン25aを始動させる。
【0030】
また、車載制御部21は、エンジン25aの始動が許可されていない状態、すなわちID照合が成立していない状態でプッシュスイッチ24への押し操作を検出すると、リクエスト信号を生成する。当該リクエスト信号の生成、すなわち、プッシュスイッチ24が押し操作されたことをトリガとするID照合が成立すれば、車載制御部21は、エンジン装置25を通じてエンジン25aを始動させる。
【0031】
一方で、車載制御部21は、プッシュスイッチ24への押し操作をトリガとするID照合が成立しない場合、エンジン装置25を通じてクランキングを実行する。その後、車載制御部21は、再度リクエスト信号を生成し、ID照合を試みる。当該ID照合の試みによりID照合が成立する場合、車載制御部21は、エンジン装置25を通じてエンジン25aを始動させる。なお、クランキング後に試みたID照合が成立しない場合、車載制御部21は、エンジン25aを始動させることなく、例えばメータディスプレイ26等の報知部を通じて、ID照合が成立しない旨示す情報を報知する。
【0032】
なお、エンジン25aが振動部及び車載機器を、プッシュスイッチ24が操作部を、それぞれ構成する。
<電子キーシステムの通信動作>
次に、例えば、車内で仮眠をとったユーザが車両を動かそうとする際における電子キーシステム1の通信動作について説明する。なお、当該通信動作は、ユーザのプッシュスイッチ24への押し操作をトリガとして実行される。
【0033】
図2に示すように、車載制御部21は、プッシュスイッチ24への押し操作を検出すると、リクエスト信号を生成する(ステップS1)。そして、ID照合が成立するか否かを判断する(ステップS2)。
【0034】
ステップS2においてYES、すなわち、電子キー制御部11との間のID照合が成立するとき、車載制御部21はエンジン装置25を通じてエンジン25aを始動させ(ステップS3)、これら一連の処理を終了する。車内で仮眠をとってもユーザが電子キー10を動かす等して、電子キー制御部11が待機モードから駆動モードに移行していれば、ユーザはプッシュスイッチ24を押し操作するだけで、車両を動かすことができる。
【0035】
なお、ステップS2においてNO、すなわち、電子キー制御部11との間のID照合が成立しないとき、車載制御部21は、エンジン装置25を通じてクランキングを実行し(ステップS4)、その後リクエスト信号を生成する(ステップS5)。そして、ID照合が成立するか否かを判断する(ステップS6)。
【0036】
ステップSにおいてYES、すなわち、電子キー制御部11との間のID照合が成立するとき、車載制御部21はステップS3に移行する。すなわち、エンジン25aを始動させ、一連の処理を終了する。車内で仮眠をとったことにより、電子キー制御部11が待機状態にある場合でも、クランキングにより車両が振動し、その振動により、電子キー制御部11が待機モードから駆動モードに移行することができる。すなわち、電子キー制御部11が待機モードにあっても、ユーザはプッシュスイッチ24を押し操作するだけで、車両を動かすことができる。
【0037】
なお、ステップS6においてNO、すなわち、クランキングの実行後においてもID照合が成立しないとき、車載制御部21は、メータディスプレイ26等の報知部を通じて、ID照合が成立しない旨示す情報を報知し(ステップS7)、一連の処理を終了する。このように、クランキングによって車両を振動させてもID照合が成立しない場合、車載制御部21は、エンジン25aを始動させることなく、報知部を通じて、ID照合が成立しない旨示す情報を報知する。これにより、電子キー制御部11を待機モードから駆動モードへ切り替えるべく、ユーザに対し、電子キー10に振動を付加させる行動を促すことができる。
【0038】
以上詳述したように、第1の実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)プッシュスイッチ24が操作されたことを条件に、エンジン装置25を通じてクランキングを実行するように車載制御部21を構成した。電子キー10が車内にあれば、クランキングにより、車両が振動し、その振動により、電子キー制御部11が待機モードから駆動モードに移行する。すなわち、電子キー制御部11は車載制御部21との間で無線通信が可能となる。したがって、例えば、運転者が仮眠をとり電子キー制御部11が待機モードであったとしても、運転者は、プッシュスイッチ24を押し操作するのみで、車両を動かすことができるので、従来のシステムと比較して電子キーシステム1の使い勝手がよい。
【0039】
(2)車載制御部21は、プッシュスイッチ24の操作をトリガして試みられるID照合が成立しない場合にクランキングを実行させる。すなわち、クランキングは、プッシュスイッチ24の操作の度に実行されるものではないので、ユーザが振動による違和感を覚えにくい。
【0040】
(3)車載制御部21は、クランキングを実行させた後、再度リクエスト信号を生成し、ID照合を試みる。これにより、定期的にID照合の成立を試みる場合と比較して、ID照合が成立するまでの時間が短くなる。すなわち、車両を動かすことができるまでの時間が短いので、ユーザの使い勝手がよい。
【0041】
(4)クランキングにより車両を振動させるので、電子キー10が車両室内のいずれの位置に置かれている場合でも、電子キー制御部11を待機モードから駆動モードへ切り替えることができる。
【0042】
<第2の実施形態>
次に、電子キーシステムの第2の実施形態について説明する。当該第2の実施形態と、上記第1の実施形態との主たる相違点は、プッシュスイッチ24の操作をトリガとするID照合が成立しないとき、車載制御部21は、クランキングに代えてシートモータを動作させることである。さらに、シートモータの動作を通じて所定の時間変化を示す振動をシートに付与し、その振動の時間変化を示す情報を電子キー制御部11の照合に用いることも主たる相違点である。したがって、上記第1の実施形態と共通の部分については、その説明を省略する。
【0043】
<電子キー>
図1に示すように、駆動モードの電子キー制御部11は、待機モードから駆動モードに切り替わったことをトリガとして、あらかじめ設定された時間の間だけ、振動検出部14を通じて検出される振動の有無を及びその時間からなる振動態様情報を記録する。なお、振動態様情報の記録は、メモリ11aに行ってもよいし、メモリ11aとは別に設けた揮発性のメモリ等に行ってもよい。
【0044】
駆動モードの電子キー制御部11は、リクエスト信号に振動態様情報の要求を示す振動態様要求情報が含まれる場合に、先に記録された振動態様情報を含ませたレスポンス信号を生成する。
【0045】
<車載機>
図1に示すように、車載機20は、シートモータ27を備える。シートモータ27は、前列右側、前列左側、後列右側、及び後列左側の各シートにそれぞれ設けられており、当該シートモータ27が駆動することにより、各シートの前後位置やシートバックの傾動位置がそれぞれ変更される。
【0046】
LF送信部22には、4つのアンテナ22a,22b,22c,22dが接続されている。図4に示すように、アンテナ22aは前列右側のシートに、アンテナ22bは前列左側のシートに、アンテナ22cは後列右側のシートに、アンテナ22dは後列左側のシートに、それぞれ設けられている。なお、同図4中に一点鎖線で示すように、アンテナ22aは前列右側のシートを覆うエリアに、アンテナ22bは前列左側のシートを覆うエリアに、アンテナ22cは後列右側のシートを覆うエリアに、アンテナ22dは後列左側のシートを覆うエリアに、それぞれ無線信号が到達するように、各アンテナの出力が調整されている。
【0047】
なお、LF送信部22は、車載制御部21においてリクエスト信号とともに生成される後述するアンテナ指定情報によって指定されたアンテナからLF帯に変調したリクエスト信号を無線送信する。
【0048】
車載制御部21は、IDコードの送信を要求する情報を含ませたリクエスト信号を定期的に生成する。また、車載制御部21は、リクエスト信号とともに当該生成したリクエスト信号を無線送信するアンテナを指定するアンテナ指定情報を生成する。
【0049】
なお、車載制御部21は、前回生成したアンテナ指定情報に基づくID照合が成立した場合には、今回も前回と同じアンテナ指定情報を生成する。例えば、アンテナ22aを指定したアンテナ指定情報とともに生成したリクエスト信号による前回のID照合が成立した場合、車載制御部21は、今回も前回に引き続きアンテナ22aを指定するアンテナ指定情報とともに生成するリクエスト信号によってID照合を試みる。
【0050】
一方、車載制御部21は、前回生成したアンテナ指定情報に基づくID照合が成立しない場合には、今回生成するアンテナ指定情報は前回生成したアンテナ指定情報と異なるものとする。例えば、アンテナ22aを指定したアンテナ指定情報とともに生成したリクエスト信号による前回のID照合が成立しない場合、車載制御部21は、前回のアンテナ22aとは異なるアンテナ22bを指定するアンテナ指定情報とともに生成するリクエスト信号によってID照合を試みる。
【0051】
車載制御部21は、プッシュスイッチ24への押し操作をトリガとするID照合が成立しない場合、最後にID照合が成立したときのリクエスト信号を無線送信したアンテナが設けられるシートに対応するシートモータ27を駆動させる。例えば、最後にID照合が成立したときのリクエスト信号を無線送信したアンテナがアンテナ22cである場合、車載制御部21は、後列右側に設けられるシートモータ27を駆動させる。なお、車載制御部21は、シートにおける振動があらかじめ設定される所定の時間変化(振動態様)を示すようにシートモータ27を駆動させる。例えば、図3に示すように、車載制御部21は、シートがあらかじめ設定された時間X(X=数msec〜数十msec)間隔で振動するようにシートモータ27を設定回数だけ駆動させる。なお、車載制御部21は、回数に限らず時間等でシートモータ27の駆動を制御してもよい。
【0052】
また、車載制御部21は、シートモータ27を駆動させた後、振動態様要求情報を含ませたリクエスト信号を生成しID照合及び振動態様情報の照合を試みる。当該試みによりID照合が成立するとともに、自身に設定されている振動態様の情報とレスポンス信号に含まれる振動態様情報との照合が成立する場合、車載制御部21は、エンジン装置25を通じてエンジン25aを始動させる。なお、シートモータ27を駆動させた後に試みたID照合及び振動態様情報の照合のうちいずれか一方の照合でも成立しない場合、車載制御部21は、エンジン25aを始動させることなく、メータディスプレイ26等の報知部を通じて、ID照合が成立しない旨示す情報を報知する。
【0053】
以上詳述したように、第2の実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(5)シートモータ27の駆動を通じて所定の振動態様を示すようにシートを振動させた後、ID照合及び振動態様情報の照合を試みるように車載制御部21を構成した。振動態様情報の照合が成立する場合、電子キー10(電子キー制御部11)がシートモータ27による振動で待機モードから駆動モードに切り替えられたもの、すなわち電子キー10が車内に位置すると推定されるため、車載制御部21はエンジン25aを始動させる。一方で、振動態様情報の照合が成立しない場合、電子キー10(電子キー制御部11)がシートモータ27による振動で待機モードから駆動モードに切り替えられたものではない、すなわち車外に位置するおそれがあると考えられる。電子キー10が車外に位置するならば、無線通信に中継器が不正に使用されたおそれがあるため、車載制御部21は、エンジン25aを駆動させない。このように、シートモータ27の駆動を通じて試みるID照合及び振動態様情報の照合により、本例の電子キーシステム1は、高いセキュリティ性を有する。
【0054】
(6)プッシュスイッチ24への押し操作をトリガとするID照合が成立しない場合、最後にID照合が成立したときのリクエスト信号を無線送信したアンテナが設けられるシートに対応するシートモータ27を駆動させるように車載制御部21を構成した。電子キー制御部11は、最後にID照合が成立した位置で駆動モードから待機モードに切り替わった可能性が高い。したがって、シートを1箇所振動させるだけで電子キー制御部11を待機モードから駆動モードに切り替えることができる。また、電子キー制御部11を待機モードから駆動モードに切り替えるために振動するシート以外は、振動しないので、車両の乗客が振動によって違和感を覚えにくいという効果もある。
【0055】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第1の実施形態ではエンジン25aを、上記第2の実施形態ではシートモータ27を、それぞれ車両の少なくとも一部を振動させる振動部として説明したが、他の構成であってもよい。例えば、走行用の駆動源がエンジン及びモータにより構成されるハイブリッドシステムである場合には、図1に破線で示すようにHVモータ28の駆動を通じて車両を振動させてもよい。このように振動部が上記第1及び第2の実施形態と異なる構成であっても、ユーザは、プッシュスイッチ24を操作するだけで、車載機器、ここではエンジン25aを動作させることができる。
【0056】
なお、HVモータ28の駆動を通じて車両を振動させる場合、車載制御部21は、振動徐々に強くなるようにHVモータ28を制御することが好ましい。このように構成すれば、電子キー10が車両の振動が伝わりやすい位置にある場合、電子キー10は振動が弱い状態で車載制御部21との間の無線通信が可能となるため、ユーザがHVモータ28による車両の振動を不快と感じにくい。一方で、電子キー10が車両の振動が伝わりにくい位置にあっても、車両の振動は徐々に強くなるので、ユーザが電子キー10に振動を与えなくても電子キー10は車載制御部21との間の無線通信が可能となるので、使い勝手がよい。
【0057】
また、エンジン25a、シートモータ27、及びHVモータ28など、振動部となる構成を複数有している車両であれば、振動部自体を変更することで車両における振動の強弱を変化させることができる。例えば、シートモータ27、HVモータ28、エンジン25aの順番で車両を振動させる。この場合でも、上述の効果を得ることができる。
【0058】
・上記第1の実施形態において、車載制御部21は、前回のクランキングによる車両の振動態様と異なる振動態様となるべくクランキングを実施するようにエンジン装置25を制御してもよい。例えば、クランキングを実施するタイミングを変化させたり、クランキングの回数を異ならせたりする。この場合、電子キー10において検出される振動態様も前回と異なる。したがって、第3者に車両の振動態様を読みとられても、その読みとられた振動態様の情報は次の車両の振動態様と異なるので、このシステムにおけるセキュリティ性がより向上する。なお、当該別例は、上記第2の実施形態のようにシートモータ27を採用する場合でも、上記別例のようにHVモータ28を採用する場合でも適用することができる。
【0059】
また、エンジン25a、シートモータ27、及びHVモータ28など、振動部となる構成を複数有している車両であれば、振動部自体を変更することで振動態様を変化させることができる。この場合でも、上述の効果を得ることができる。
【0060】
・上記第1及び第2の実施形態において、車載機器は、エンジン25aをはじめとする走行用の駆動源に限らない。例えば、テレビ、オーディオ、ナビゲーション等の車両アクセサリであってもよい。また、操作部は、走行用の駆動源を始動させるためのプッシュスイッチ24に限らず、車両アクセサリ用のスイッチやウインドウを開閉させるスイッチ、照明用のスイッチ、ウインカーやワイパーを動作させるためのレバースイッチ等であってもよい。
【0061】
・上記第2の実施形態において、車載制御部21は、シートモータ27の駆動を通じてシートを振動させた後、ID照合及び振動態様情報の照合を試みたが、振動態様情報の照合の実施は、必ずしも必要ない。このように構成したシステムを採用する場合でも、上記第2の実施形態の(6)の効果と同様の効果を得ることができる。
【0062】
・上記第2の実施形態では、LF帯の無線信号を送信するアンテナとして4つのアンテナを採用したが、アンテナの数は4つに限らない。例えば、前列シート用のアンテナと後列シート用のアンテナとの2つのアンテナを設けてもよい。この場合、車載制御部21は、シートモータ27の駆動を通じて前列シートだけ、或いは後列シートだけを振動させる。このように構成した場合でも、上記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、指向性の切り替えや信号強度を測る等して電子キーの位置を特定できるアンテナを採用すれば、アンテナ数を1つにすることもできる。
【0063】
・上記第2の実施形態において、車載制御部21は、振動の変化態様として、振動の時間変化の照合を実施したが、振幅や振動時間、振動の軸等による照合を実施してもよい。
・上記第1の実施形態では、車載機器及び振動部としてエンジン25aを採用するシステムであったが、上記第2の実施形態のように車載機器としてエンジン25aを、振動部としてシートモータ27をそれぞれ採用するシステムのように、車載機器と振動部とが異なるシステムであってもよい。
【0064】
・上記第1及び第2の実施形態において、車載制御部21は、プッシュスイッチ24が操作されるたびにクランキングやシートモータ27の駆動を実行してもよい。
・上記第1及び第2の実施形態では、報知部としてメータディスプレイ26である場合について説明したが、他の構成であってもよい。スピーカやナビゲーションディスプレイなど、人間の感覚に訴えることにより報知するものであればよい。
【0065】
・上記第1及び第2の実施形態において、電子キーシステム1は、LF帯及びUHF帯の電波により無線通信を行うシステムであったが、他の帯域の電波を使用して無線通信を行ってもよい。また、Bluetooth(登録商標)等、他の通信規格による無線通信を行うシステムであってもよい。
【0066】
・上記第1及び第2の実施形態において、電子キー10は、車両専用のキーである必要はなくスマートフォン等の電子端末であってもよい。
次に、上記実施形態及び上記別例より想起される技術的思想について記載する。
【0067】
(イ)上記システムにおいて、前記車載機は、前記操作部が操作されたことをトリガとして前記電子キーとの間の無線通信を試み、当該試みが成立しなかった場合に前記振動部を通じて前記車両の少なくとも一部を振動させること。
【0068】
このシステムによれば、電子キーが車載機との間の無線通信が可能である場合、車両は振動しないので、車両の乗員が振動による違和感を覚えにくい。
(ロ)上記システムにおいて、前記車載機は、前記操作部が操作されたことをトリガとして前記電子キーとの間の無線通信を試み、当該試みが成立しなかった場合に前記振動部を通じて前記車両の少なくとも一部を振動させた後、再度前記電子キーとの間の無線通信を試みること。
【0069】
このシステムによれば、電子キーが車内にある場合に、ユーザが操作部を操作してから電子キーと車載機との間の無線通信が成立するまでの時間が他のシステムと比較して短いので、ユーザの使い勝手がよい。
【符号の説明】
【0070】
1…電子キーシステム、10…電子キー、11…電子キー制御部、11a,21a…メモリ、11b…時間カウンタ、12…LF受信部、13…UHF送信部、14…振動検出部、20…車載機、21…車載制御部、22…LF送信部、22a,22b,22c,22d…アンテナ、23…UHF受信部、24…プッシュスイッチ、25…エンジン装置、25a…エンジン、26…メータディスプレイ、27…シートモータ。
図1
図2
図3
図4