(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496611
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】光コネクタフェルール用ブーツ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/40 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
G02B6/40
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-114679(P2015-114679)
(22)【出願日】2015年6月5日
(65)【公開番号】特開2017-3642(P2017-3642A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】391005581
【氏名又は名称】三和電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069213
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 功
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】西尾 敦
【審査官】
山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−033728(JP,A)
【文献】
特開2007−279576(JP,A)
【文献】
特開2004−045751(JP,A)
【文献】
特開平10−056689(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0115218(US,A1)
【文献】
特開2009−109978(JP,A)
【文献】
特開2004−061883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36−6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ芯線を先端に有する光ファイバテープを挿入する後側開口部と、挿入された光ファイバテープ先端の光ファイバ芯線を前方外側に露出させる前側開口部とを備えるとともに、光コネクタフェルールの後端側に形成された挿入開口部に挿入される光コネクタフェルール用ブーツであって、
前記ブーツの表面には、当該ブーツの挿入方向に対して直角方向に沿って、前記光コネクタフェルール後端側の挿入開口部に挿入されることで圧潰可能とした突条を設けてなることを特徴とする光コネクタフェルール用ブーツ。
【請求項2】
光ファイバ芯線を先端に有するブーツを挿入支持するべく後端側に形成された挿入開口部と、
該挿入開口部の内奥部に前記光ファイバ芯線の先端部側を挿入して当該先端部を外方に露出させるべく前端側に備えた光ファイバ芯線挿通孔とを連設し、
前記挿入開口部の内奥部側から光ファイバ芯線挿通孔の後端開口部側にかけて接着剤を充填し前記光ファイバ芯線を固着させるべく上面に開穿された接着剤充填用窓部を有してなる光コネクタフェルールを備え、
他方、前記ブーツの表面には、当該ブーツの挿入方向に対して直角方向に沿って、前記フェルール本体後端側の挿入開口部に挿入されることで圧潰可能とした突条を設けてなることを特徴とする光コネクタフェルール用ブーツ。
【請求項3】
前記フェルール本体は、その前面から後面にかけて貫設した左右一対の位置決め用のガイドピン挿入孔を備え、前面における両ガイドピン挿入孔の間に複数の前記光ファイバ芯線挿通孔が並設されてなり、他方、前記ブーツには、前記フェルール本体の前記接着剤充填用窓部から注入して当該ブーツと、前記フェルール本体後端側の挿入開口部との隙間から漏れ出した接着剤を停留可能とした接着剤溜部を前記突条の前後に近接して凹設してなることを特徴とする請求項1または2記載の光コネクタフェルール用ブーツ。
【請求項4】
前記ブーツの前端部側に位置する前記接着剤溜部の前方縁側には、当該接着剤溜部に接着剤を誘い込むための接着剤誘導溝を設けてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光コネクタフェルール用ブーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ芯線及び光ファイバテープ芯線の接続に用いる例えばMechanically−Transferable−Splicing−Connector(以下、MTコネクタと称す)、Multifiber−Push−On(以下、MPOコネクタと称す)等の多芯一括コネクタ成形用の光コネクタフェルールに使用されるブーツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、SM型光ファイバ単芯線およびテープ芯線を一括低損失接続するためのコネクタとして、例えば4芯、8芯、12芯等のシングルモード型光ファイバテープを収納した高密度多芯ケーブルの開発に伴い、高密度で能率良く光ファイバを接続できる多芯一括コネクタが使用されている。この接続方式は多芯の光ファイバを位置決め固定したフェルール同士を2本のガイドピンで位置合わせして嵌合する方式で、このコネクタは光ファイバテープの一括接続に加え、機械的な高速切替にも適用できることからMTコネクタと呼ばれ、近年、アクセス系多芯ケーブルの4芯、8芯、12芯光ファイバテープ接続用コネクタとして実用化されている。
【0003】
また、近年においては、超多芯ケーブルの接続用にさらに多芯の24芯、72芯一括コネクタとしてプッシュプル操作で容易に着脱できるようにしたMPOコネクタも実用化されている。
【0004】
具体的には特許文献1に開示されているように、前端部にファイバ穴があり、ガイドピン穴に挿入される嵌合ピンにより相手側フェルールと位置決めされる方式の光コネクタのフェルールが、前記ファイバ穴とガイドピン穴を含む部品であるところの接続端部と、当該接続端部以外の部品であるところの本体後部とを組み合わせてなり、本体後部は、接続端部を除いた部分で、内部に内部空間を含み、該内部空間を被覆挿入部とブーツ挿入部とからなるようにしたものが公知である。
【0005】
上記した特許文献1の両コネクタは、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、フェルール本体100の上面に接着剤充填用の窓部101を備えると共に、フェルール本体100の前端面から後端面にかけて貫設した左右一対の位置決め用のガイドピン挿入孔102を備え、前端面における両ガイドピン挿入孔102の間に複数の光ファイバ芯線挿通孔103が並設されている。さらに、フェルール本体100の後端面に、矩形筒状のブーツ106(
図9(a)及び
図9(b)参照)を挿入支持する矩形開口状の挿入開口部104を備え、またフェルール本体100の後端側には当該フェルール本体100の外周面より外方へ突出した鍔部105を備えた構造である。
【0006】
而して、上記ブーツ106は、
図9(a)、
図9(b)に示すように、矩形筒状に形成され、その上下左右の外壁面はフラットな面となっている。また、前記ブーツ106の前端部の横長な後側開口部107aの縦幅と横幅は、シングルモード型光ファイバテープTの厚さと横幅に対応した大きさとなっていて、前記ブーツ106の後端部の横長な前側開口部107bの縦幅は、シングルモード型光ファイバテープTの前端部から突出している12芯の光ファイバ芯線Fのみが外方に突出できる程度に、上記前端部の後側開口部107aの縦幅よりも若干小さくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−83367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した特許文献1の場合においては、組立時に例えばエポキシ樹脂系等の強力な接着剤を接着剤充填用の窓部101からフェルール本体100内に注入して窓部101自体を閉塞硬化させることにより、シングルモード型光ファイバテープT前端部を光ファイバ芯線Fとともにフェルール本体100内に固定する構造となっている。ただ、この場合においては、フェルール本体100の後端面の挿入開口部104と、当該挿入開口部104に挿入されたブーツ外壁との間の隙間から過剰となった前記接着剤が漏れ出る虞がある。
【0009】
このような接着剤漏れによって懸念される影響としては、例えば、接着剤が漏れて硬化した部分に不図示の別部品が取り付けられた際に、この接着剤のはみ出た厚み分の隙間がフェルール本体100と別部品との間に生じてしまう虞がある。また、前記漏れ出した接着剤が左右一対のガイドピン挿入孔102にも浸入し硬化することで、ガイドピン挿入孔102自体が閉塞してしまう虞もある。
【0010】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、フェルール本体内部に充填した接着剤が、挿入開口部に挿入されているブーツと当該挿入開口部との間の隙間から漏れ出てしまうのを未然に防ぐことができる構成とした光コネクタフェルール用ブーツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明にあっては、
光ファイバ芯線を先端に有する光ファイバテープを挿入する後側開口部と、挿入された光ファイバテープ先端の光ファイバ芯線を前方外側に露出させる前側開口部とを備えるとともに、光コネクタフェルールの後端側に形成された挿入開口部に挿入される光コネクタフェルール用ブーツであって、
前記ブーツの表面には、当該ブーツの挿入方向に対して直角方向に沿って、前記光コネクタフェルール後端側の挿入開口部に挿入されることで圧潰可能とした突条を設けてなることを特徴とする。
【0012】
光ファイバ芯線を先端に有するブーツを挿入支持するべく後端側に形成された挿入開口部と、
該挿入開口部の内奥部に前記光ファイバ芯線の先端部側を挿入して当該先端部を外方に露出させるべく前端側に備えた光ファイバ芯線挿通孔とを連設し、
前記挿入開口部の内奥部側から光ファイバ芯線挿通孔の後端開口部側にかけて接着剤を充填し前記光ファイバ芯線を固着させるべく上面に開穿された接着剤充填用窓部を有してなる光コネクタフェルールを備え、
前記ブーツの表面には、当該ブーツの挿入方向に対して直角方向に沿って、前記フェルール本体後端側の挿入開口部に挿入されることで圧潰可能とした突条を設けてなることを特徴とする。
【0013】
前記フェルール本体は、その前面から後面にかけて貫設した左右一対の位置決め用のガイドピン挿入孔を備え、前面における両ガイドピン挿入孔の間に複数の前記光ファイバ芯線挿通孔が並設されてなり、前記ブーツには、前記フェルール本体の前記接着剤充填用窓部から注入して当該ブーツと、前記フェルール本体後端側の挿入開口部との隙間から漏れ出した接着剤を停留可能とした接着剤溜部を前記突条の前後に近接して凹設してなることを特徴とする。
【0014】
前記ブーツの前端部側に位置する前記接着剤溜部の前方縁側には、当該接着剤溜部に接着剤を誘い込むための接着剤誘導溝を設けてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フェルール本体内部に充填した接着剤が、前記フェルール本体後端側の挿入開口部に挿入されているブーツと、当該挿入開口部との間の隙間から漏れ出てしまうのを未然に防ぐことができる光コネクタフェルール用ブーツを提供することができる。
【0016】
すなわち、光ファイバ芯線を先端に有する光ファイバテープを挿入する後側開口部と、挿入された光ファイバテープ先端の光ファイバ芯線を前方外側に露出させる前側開口部とを備えるとともに、光コネクタフェルールの後端側に形成された挿入開口部に挿入される光コネクタフェルール用ブーツであって、
前記ブーツの表面には、当該ブーツの挿入方向に対して直角方向に沿って、前記光コネクタフェルール後端側の挿入開口部に挿入されることで圧潰可能とした突条を設けてなること、具体的には、光ファイバ芯線を先端に有するブーツを挿入支持するべく後端側に形成された挿入開口部と、
該挿入開口部の内奥部に前記光ファイバ芯線の先端部側を挿入して当該先端部を外方に露出させるべく前端側に備えた光ファイバ芯線挿通孔とを連設し、
前記挿入開口部の内奥部側から光ファイバ芯線挿通孔の後端開口部側にかけて接着剤を充填し前記光ファイバ芯線を固着させるべく上面に開穿された接着剤充填用窓部を有してなる光コネクタフェルールを備え、
前記ブーツの表面には、当該ブーツの挿入方向に対して直角方向に沿って、前記フェルール本体後端側の挿入開口部に挿入されることで圧潰可能とした突条を設けてなるものであるから、
前記フェルール本体内部に充填した接着剤がブーツと、前記フェルール本体後端側の挿入開口部との隙間から漏れ出そうになったとしても当該接着剤を、前記挿入開口部に挿入し圧潰された突条によって未然に堰き止めておくことができる。
【0017】
これによって、従来のように、フェルール本体の前記挿入開口部側に別部品が取り付けられた際において、接着剤のはみ出た厚み分の隙間がフェルール本体と別部品との間に生じてしまうのを防止することができる。
【0018】
前記フェルール本体は、その前面から後面にかけて貫設した左右一対の位置決め用のガイドピン挿入孔を備え、前面における両ガイドピン挿入孔の間に複数の前記光ファイバ芯線挿通孔が並設されてなり、他方、前記ブーツには、フェルール本体の前記接着剤充填用窓部から注入して当該ブーツと、前記フェルール本体後端側の挿入開口部との隙間から漏れ出した接着剤を停留可能とした接着剤溜部を前記突条の前後に近接して凹設してなるものであるから、前記接着剤充填用窓部から注入した接着剤が前記ブーツと前記フェルール本体の挿入開口部との隙間から漏れ出そうとしても当該接着剤を接着剤溜部で未然に溜めておくことができ、これによって従来品のような、前記接着剤が漏れ出した場合の左右一対のガイドピン挿入孔内部への浸入も未然に防止することができる。しかも、各接着剤溜部に停留した接着剤の硬化後には、前記ブーツは前記フェルール本体に対し強固(頑丈)に固定された状態とすることができる。
【0019】
前記ブーツの前端部側に位置する前記接着剤溜部の前方縁側には、当該接着剤溜部に接着剤を誘い込むための接着剤誘導溝を設けてあるので、該接着剤誘導溝を通じて、上面前端部側に位置する接着剤溜部に接着剤が誘い込まれることで平面視略T字状となって当該接着剤が充填されることから、前記フェルール本体後端側の挿入開口部から当該ブーツが確実に抜けないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を実施するための一形態におけるブーツを示すもので、(a)は斜め前方側から見た斜視図、(b)は斜め後方側から見た斜視図である。
【
図2】同じくブーツを示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は正面図、(e)は背面図である。
【
図3】同じくブーツを示すもので、(a)は
図2(a)のA−A断面図、(b)は
図2(b)のB−B断面図である。
【
図4】光コネクタフェルールを示すもので、(a)は平面図、(b)は
図3(a)のC−C断面図である。
【
図5】光コネクタフェルールのブーツ組立使用状態を斜め後方側から視た状態の斜視図である。
【
図6】同じく光コネクタフェルールのブーツ組立使用状態を斜め前方側から視た状態の斜視図である。
【
図7】同じく光コネクタフェルールのブーツ組立使用状態の側断面図である。
【
図8】同じく光コネクタフェルールのブーツ組立使用状態の平断面図である。
【
図9】従来例におけるブーツを示すもので、(a)は斜め前方側から見た斜視図、(b)は斜め後方側から見た斜視図である。
【
図10】従来例における光コネクタフェルールのブーツ組立使用状態を示すもので、(a)は斜め後方側から視た状態の斜視図、(b)は側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を詳細に説明する。
本実施形態において、本発明に係る多芯一括コネクタ成形用の光コネクタフェルールは、
図4乃至
図8に示すように、12芯のシングルモード型光ファイバテープTを収納した高密度多芯ケーブルを接続できる多芯一括MTコネクタとして使用される略長方形筐体状に樹脂成型されたフェルール本体10によって構成されており、この接続方式は多芯の光ファイバを位置決め固定したフェルール本体10同士を2本のガイドピンで位置合わせして嵌合する方式としている。
【0022】
なお、以下の説明においては、上記構成によるMTコネクタに関してのものであるが、これに限らず、例えば4芯、8芯等のシングルモード型光ファイバテープTを収納した高密度多芯ケーブル接続用のMTコネクタ、さらには超多芯ケーブルの接続用に多芯の16芯、80芯等の一括コネクタとしてプッシュプル操作で容易に着脱できるようにした例えばMPOコネクタ等の多芯一括コネクタにも応用可能である。
【0023】
<ブーツの構成>
前記フェルール本体10の後端面側に形成された後述する矩形開口状の挿入開口部14に、例えば12芯の光ファイバ芯線Fをテープ状に束ねてなるシングルモード型光ファイバテープTが挿入固定された略角筒状のブーツBが装着される。
【0024】
以下に、このブーツBの具体的な構成について説明すると、
図1(a)、
図1(b)、
図2(d)、
図2(e)、
図3(a)に示すように、前記ブーツBの前端部の横長な前側開口部21aの縦幅と横幅は、シングルモード型光ファイバテープTの厚さと横幅に対応した大きさとなっていて、前記ブーツBの後端部の横長な後側開口部21bの縦幅は、シングルモード型光ファイバテープTの前端部から突出している例えば12芯の光ファイバ芯線Fのみが外方に突出できる程度に、上記前端部の前側開口部21aの縦幅よりも若干大きくなっている。
【0025】
また、
図1(a)、
図1(b)、及び
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)、
図3(a)、
図3(b)に示すように、前記ブーツBには、当該ブーツBの挿入方向に対して直角方向に沿った表面全周に、前記フェルール本体10の後端側に形成された挿入開口部14に挿入されることで圧潰可能とした3本の突条22a、22b、22cを設けてある。なお、これら突条22a、22b、22cは、3本とする代わりに1本もしくは2本、または4本以上であっても良い。また、これら突条22a、22b、22cは図示ではブーツBの全周に形成されているが、上下面のみに形成させてあっても良い。
【0026】
さらに、前記ブーツB表面の上下対称位置には、
図1(a)、
図1(b)、
図2(a)、
図2(c)、
図3(a)に示すように、前記突条22a、22b、22cそれぞれの前後に近接して矩形凹溝状の4個の接着剤溜部23a、23b、23c、23dが各凹設され、これにより、前記フェルール本体10の後述する接着剤充填用窓部11から注入して当該ブーツBと前記フェルール本体10の挿入開口部14との隙間から漏れ出した接着剤Vを停留可能となるようにしてある。具体的には、最前端側に位置する接着剤溜部23aの後縁側に隣接するように1番目の前記突条22aが形成され、後方2番目に位置する接着剤溜部23bの後縁側に隣接するように2番目の前記突条22bが形成され、後方3番目に位置する接着剤溜部23cの後縁側に隣接するように3番目の前記突条22cが形成されている。
【0027】
以上、前記ブーツBに形成された前記突条22a、22b、22cは、矩形溝状の接着剤溜部23a、23b、23c、23dを介して、多重に並行配置された「堰」となって形成され、前記ブーツBと前記フェルール本体10との間の隙間を閉鎖する。上述したように、前記フェルール本体10の挿入開口部14の縦横幅サイズはブーツBの縦横幅サイズと略同じか若干大きいものとし、前記フェルール本体10の挿入開口部14に前記ブーツBが挿入された際には前記突条22a、22b、22cが任意の高さまで容易に圧潰され易いようにするために、前記ブーツBの縦横幅サイズに応じて、当該ブーツB表面からの高さを例えば約0.1〜0.5mm程度としている(
図7、
図8参照)。
なお、この高さは本発明の技術的範囲を何等限定するものではないことはもちろんである。
【0028】
また、
図2(a)、
図2(c)、
図7に示すように、前記ブーツBの上下両面の各最前端側に位置する前記接着剤溜部23aの前方縁側(図中では、前方下り傾斜面となっている部分)の中央には、当該接着剤溜部23a内に接着剤Vを誘い込むための接着剤誘導溝24を設けてあり、該接着剤誘導溝24を通じて、前記接着剤溜部23aに接着剤Vが誘い込まれることで平面視略T字状となって当該接着剤Vが充填されるようにしてある。
【0029】
<フェルール本体の構成>
前記フェルール本体10の具体的な構成について説明すると、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、当該フェルール本体10の後端面側には、12芯の光ファイバ芯線Fをテープ状に束ねてなるシングルモード型光ファイバテープTが挿入固定された略角筒状のブーツBを装着するための矩形開口状の挿入開口部14が形成されている。この挿入開口部14を通して前記ブーツBの前端側一部(約半分)が収容されるよう当該フェルール本体10の内部がブーツBの収納空間部Sとなっている。
【0030】
また、
図4(b)、
図6、
図7、
図8に示すように、前記フェルール本体10の前端面側には、12個の小孔状となった光ファイバ芯線挿通孔13が前記フェルール本体10の挿入開口部14の内奥部(ブーツBの収納空間部Sの前方端内壁)位置まで穿設され、これにより各光ファイバ芯線挿通孔13は前記ブーツBの収納空間部Sに連通した状態となっている。
【0031】
図示(
図4(b)、
図7等参照)による例では、後述する接着剤充填用窓部11の後側縁部位置に対向するよう収納空間部Sの内奥部手前位置に段差部17が形成されており、この段差部17によって、挿入されたブーツBの先端面下部側が接着剤充填用窓部11手前で係止されるものとなっている。このとき、前記シングルモード型光ファイバテープTの先端側から突出した12芯の光ファイバ芯線Fの各先端部側は、これら12個の光ファイバ芯線挿通孔13に、前記ブーツBの収納空間部S内側から各挿入され、当該先端部の端面をフェルール本体10の前面側に露呈させるものとしてある。
【0032】
すなわち、前記フェルール本体10の上面略中央には、略矩形開口状の接着剤充填用窓部11が開穿され、前記フェルール本体10の挿入開口部14の内奥部側(ブーツBの収納空間部Sの前方端内壁)から12個の光ファイバ芯線挿通孔13の各後端開口部側にかけてのフェルール本体10上側半分が抉られた状態となっており、前記光ファイバ芯線挿通孔13の各後端開口部から接着剤充填用窓部11の略中間に対向する位置にかけて合計12個のU型のガイド溝18が形成されている(
図4(b)、
図7等参照)。
【0033】
図4(a)では前記光ファイバ芯線挿通孔13の後端開口部側とU型のガイド溝18が接着剤充填用窓部11を通して視認可能となっている。前記フェルール本体10の挿入開口部14にブーツBが装着され且つ各光ファイバ芯線挿通孔13に光ファイバ芯線Fの各先端部側が挿入されている状態において、この接着剤充填用窓部13から例えばエポキシ樹脂系の接着剤Vを注入することにより、前記各光ファイバ芯線F、例えば前記シングルモード型光ファイバテープTの先端側から突出した12芯の光ファイバ芯線Fの各根元部分がフェルール本体10に固着されるものとなっている。
【0034】
また、
図5、
図6、
図8等に示すように、前記フェルール本体10の前端面から後端面にかけて、左右一対の位置決め用のガイドピン挿入孔12が貫設されており、フェルール本体10の前端面における前記12個の光ファイバ芯線挿通孔13が両ガイドピン挿入孔12の間に横一列となって並置された状態となっている。
【0035】
なお、
図4乃至
図8等に示すように、フェルール本体10の後端側には当該フェルール本体10の外周面より外方へ突出した鍔部15を備えている。
【0036】
次に、以上のように構成された形態についての組立使用の一例について説明する。
図4乃至
図7に示すように、12芯の光ファイバ芯線Fをテープ状に束ねてなるシングルモード型光ファイバテープTが装着されているブーツBを、フェルール本体10の挿入開口部14に挿入する。このとき、3本の上記突条22a、22b、22cそれぞれが任意の高さまで圧潰され、前記ブーツBと前記フェルール本体10との間の隙間を閉鎖する。
【0037】
そして、上記のようにして挿入されたブーツBの先端面下部側は前記フェルール本体10の収納空間部S内の段差部17によって接着剤充填用窓部11手前で係止されると同時に、シングルモード型光ファイバテープTの先端側の12芯の光ファイバ芯線Fの各先端部側がU型のガイド溝18に沿って12個の光ファイバ芯線挿通孔13に各挿入され、当該先端部の端面がフェルール本体10の前面側に露呈する。
【0038】
次いで、前記フェルール本体10の接着剤充填用窓部11から接着剤Vを注入することにより、前記シングルモード型光ファイバテープTの先端側から突出した12芯の光ファイバ芯線Fの各根元部分がフェルール本体10に接着一体化され、シングルモード型光ファイバテープTの先端部分と、当該先端部分から突出している光ファイバ芯線Fの根元部分とがともに当該接着剤Vによって固着される。このとき、前記ブーツB中央に設けられた接着剤誘導溝24を通じて、当該ブーツBの上下面の各最前端側に位置する上記接着剤溜部23aに接着剤Vが誘い込まれて平面視略T字状となって当該接着剤Vが充填される。
【0039】
而して、前記接着剤充填用窓部11から接着剤Vが注入された際に、ブーツBとフェルール本体10の挿入開口部14との隙間から接着剤Vが、漏れ出そうになったとしても当該接着剤Vを、前記挿入開口部14に挿入し圧潰されて当該挿入開口部14内壁に食い込んで密着した状態となった前記複数の突条22a、22b、22cによって未然に堰き止めておくことができると同時に、万が一、最初の部分で漏れ出したとしても、前記複数の接着剤溜部23a、23b、23c、23d(特に、最後部の接着剤溜部23dの存在)によって、当該接着剤Vを完全に停留させておくことができる。これにより、従来品のような漏れ出した接着剤Vの左右一対のガイドピン挿入孔12内部等への侵入が未然に食い止められる。
因みに、以上は全てMTコネクタのみについて説明してきたが、本発明は、他形式の多芯光コネクタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
B ブーツ
V 接着剤
T 光ファイバテープ
F 光ファイバ芯線
S 収納空間部
10 フェルール本体
11 接着剤充填用窓部
12 ガイドピン挿入孔
13 光ファイバ芯線挿通孔
14 挿入開口部
15 鍔部
17 段差部
18 ガイド溝
21a 前側開口部
21b 後側開口部
22a、22b、22c 突条
23a、23b、23c、23d 接着剤溜部
24 接着剤誘導溝
100 フェルール本体
101 窓部
102 ガイドピン挿入孔
103 光ファイバ芯線挿通孔
104 挿入開口部
105 鍔部
106 ブーツ
107a 前側開口部
107b 後側開口部