(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の入力装置では、物理的な回転操作に加えて押圧操作も検出したいという要望がある。この押圧操作の検出に機械的なスイッチ機構を用いると、機構部品が増えて構造が複雑化するとともに、装置の厚みが増すため薄型化に不利である。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機械的なスイッチ機構を用いない簡易な構成で回転操作と押圧操作を検出可能な入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る入力装置は、基台と、前記基台に回転自在に保持された回転操作部と、前記基台に設けられた固定電極と、前記回転操作部に設けられ、前記回転操作部の回転に伴って前記固定電極との間に形成されるキャパシタの静電容量が変化する可動電極と、前記キャパシタの静電容量に応じた検出信号を生成する検出信号生成部と、前記検出信号に基づいて前記回転操作部の回転に係わる情報を取得する処理を行う回転情報処理部とを有し、前記回転操作部が前記基台に向かって押圧されると前記回転操作部と前記基台との距離が変化し、前記押圧を解除すると前記距離が前記押圧前に戻り、前記押圧によって前記回転操作部と前記基台との距離が変化すると前記固定電極と前記可動電極との距離が変化し、前記押圧による前記検出信号の変化に基づいて、前記回転操作部の前記押圧に係わる情報を取得する処理を行う押圧情報処理部を有する。
上記の構成によれば、前記回転操作部が前記基台に向かって押圧されると、当該押圧によって前記回転操作部と前記基台との距離が変化し、前記固定電極と前記可動電極との距離が変化し、これにより前記固定電極と前記可動電極との間に形成される前記キャパシタの静電容量が変化するため、前記検出信号が変化する。また、前記回転操作部に対する前記押圧が解除されると、前記固定電極と前記可動電極との距離が前記押圧前に戻るため、前記押圧により変化した前記検出信号は前記押圧前に戻る。すなわち、押圧の有無に応じて前記検出信号が変化する。前記押圧情報処理部では、前記押圧による前記検出信号の変化に基づいて、前記回転操作部の前記押圧に係わる情報を取得する処理が行われる。従って、スイッチ機構などの追加部品を設けずとも、前記回転操作部の前記押圧に係わる情報の取得が可能となる。
【0007】
前記押圧情報処理部は、前記押圧の開始を判定したときから前記押圧の終了を判定したときまでの押圧期間に前記回転情報処理部が取得した前記回転の情報に基づいて、前記押圧期間における前記回転操作部の回転角度の変化量を算出し、当該算出した回転角度の変化量が所定の角度より小さい場合、前記回転操作部の回転が停止した状態で押圧操作がなされたと判定
する。
上記の構成によれば、前記回転操作部の回転が停止した状態での意図的な押圧操作とそれ以外の操作とを判別することが可能となる。
【0008】
好適には、前記回転操作部と前記基台は、前記回転操作部の回転の軸方向と垂直な平面部をそれぞれ有してよい。前記回転操作部が前記軸方向と平行な方向へ前記基台に向かって押圧されると、前記回転操作部の前記平面部と前記基台の前記平面部との距離が変化し、前記押圧を解除すると、前記平面部間の距離が前記押圧前に戻ってよい。前記固定電極は、前記基台の前記平面部に設けられてよく、前記可動電極は、前記回転操作部の前記平面部に設けられてよい。
上記の構成によれば、前記固定電極が設けられた前記基台の平面部と、前記可動電極が設けられた前記回転操作部の平面部とが、共に前記軸方向と垂直であるため、前記基台の平面部と前記回転操作部の前記平面部とを近づけても、前記基台に対する前記回転操作部の回転が妨げられない。すなわち、前記軸方向における上記入力装置の外形の厚みを薄型化し易くなる。
また、前記基台の平面部と前記回転操作部の平面部とを近づけることで、前記固定電極と前記可動電極との距離が短くなり、前記キャパシタの静電容量が大きくなる。すなわち、外形の薄型化を図りつつ、前記キャパシタの静電容量を大きくすることが可能となる。
更に、薄型化を妨げることなく前記平面部の面積を広げられるため、前記固定電極及び前記可動電極の面積を大きくすることができる。これにより、前記キャパシタの静電容量を更に大きくすることが可能となる。
しかも、外形の薄型化によって前記基台の平面部と前記回転操作部の平面部とが近づくと、前記固定電極と前記可動電極との距離が僅かに変化しても前記キャパシタの静電容量が大きく変化するようになる。すなわち、前記押圧に対する前記検出信号の変化が大きくなる。そのため、前記押圧の検出感度が向上する。
【0009】
好適には、上記入力装置は、前記可動電極との間に形成されるキャパシタの静電容量がそれぞれ異なる複数の前記固定電極からなる少なくとも一組の固定電極群を有してよい。前記検出信号生成部は、前記固定電極群と前記可動電極との間に形成される一群のキャパシタの静電容量に応じた一群の前記検出信号を生成してよい。前記回転情報処理部は、前記一群の検出信号に基づいて前記回転に係わる情報を取得してよい。前記押圧情報処理部は、前記一群の前記検出信号の和を算出し、当該和に基づいて前記押圧に係わる情報を取得してよい。
上記の構成によれば、前記一群の検出信号の和を算出することで、前記押圧に伴う個々の前記検出信号の変化が足し合わされるため、当該和の算出結果には、前記押圧に伴う大きな変化が表れる。従って、当該和の算出結果に基づいて、前記押圧に係わる情報を感度よく取得することが可能となる。
【0010】
好適には、前記押圧情報処理部は、前記一群の検出信号の和と所定のしきい値とを比較した結果に基づいて、前記押圧の有無を判定してよい。
上記の構成によれば、前記押圧の有無が簡易に精度良く判定される。
【0011】
好適には、前記回転操作部が前記基台に向かって押圧されると、前記回転操作部及び前記基台の少なくとも一方が弾性変形してよい。
上記の構成によれば、前記回転操作部及び前記基台の少なくとも一方が前記押圧により弾性変形することで、前記基台の平面部と前記回転操作部の平面部との距離が押圧力に応じて変化し、これにより、前記検出信号が押圧力に応じて変化する。従って、前記回転操作部に対する押圧力を簡易な構成で検出することが可能となる。
【0012】
第2の発明に係る入力装置は、基台と、前記基台に回転自在に保持された回転操作部と、前記基台に設けられた固定電極と、前記回転操作部に設けられ、前記回転操作部の回転に伴って前記固定電極との間に形成されるキャパシタの静電容量が変化する可動電極と、前記キャパシタの静電容量に応じた検出信号を生成する検出信号生成部と、前記検出信号に基づいて前記回転操作部の回転に係わる情報を取得する処理を行う回転情報処理部とを有し、前記回転操作部が前記基台に向かって押圧されると前記回転操作部と前記基台との距離が変化し、前記押圧を解除すると前記距離が前記押圧前に戻り、前記押圧によって前記回転操作部と前記基台との距離が変化すると前記固定電極と前記可動電極との距離が変化し、前記押圧による前記検出信号の変化に基づいて、前記回転操作部の前記押圧に係わる情報を取得する処理を行う押圧情報処理部を有する。前記回転操作部と前記基台は、前記回転操作部の回転の軸方向と垂直な平面部をそれぞれ有する。前記回転操作部が前記軸方向と平行な方向へ前記基台に向かって押圧されると、前記回転操作部の前記平面部と前記基台の前記平面部との距離が変化し、前記押圧を解除すると、前記平面部間の距離が前記押圧前に戻る。前記固定電極は、前記基台の前記平面部に設けられ、前記可動電極は、前記回転操作部の前記平面部に設けられる。上記入力装置は、前記回転操作部の回転軸を中心として円状に等間隔に並んだN組の前記固定電極群と、前記基台において前記N組の固定電極群と隣接して設けられ、前記回転軸を中心とする円環形状に形成された駆動電極と、前記駆動電極に駆動電圧を供給する駆動部とを有
する。前記固定電極群は、前記回転軸を中心として円弧状に等間隔に並んだK個の前記固定電極を含
む。前記固定電極群に含まれる前記K個の固定電極において、前記回転軸を中心とした所定の円周方向における順番が第i番目(iは1からKまでの整数を示す。)の固定電極を第i固定電極とした場合に、前記N組の固定電極群に含まれるN個の前記第i固定電極と前記可動電極との間には、共通の静電容量を持つキャパシタがそれぞれ形成され
る。前記駆動電極は、複数の部分駆動電極に分かれて
おり、前記可動電極と前記部分駆動電極との間に形成されるキャパシタの静電容量は、前記回転操作部の回転に依らず一定であ
る。前記検出信号生成部は、前記第1固定電極乃至第K固定電極に対応した第1検出信号乃至第K検出信号を生成
する。前記第i検出信号は、前記部分駆動電極への前記駆動電圧の供給により、前記N個の第i固定電極と前記可動電極との間に形成されるN個のキャパシタに蓄積された電荷の和に応じた信号であ
る。前記回転情報処理部は、前記複数の部分駆動電極の一部若しくは全部に共通の前記駆動電圧を供給するように前記駆動部を制御し、前記駆動電圧の供給に伴って生成される前記第1検出信号乃至第K検出信号に基づいて前記回転に係わる情報を取得
する。前記押圧情報処理部は、前記複数の部分駆動電極から順番に一の部分駆動電極を選択し、選択した一の部分駆動電極へ前記駆動電圧を供給するように前記駆動部を制御し、当該駆動電圧の供給に伴って生成される前記第1検出信号乃至第K検出信号の和を算出し、当該和に基づいて、当該一の部分駆動電極に対応した前記基台上の一領域への前記押圧に係わる情報を取得
する。
上記の構成によれば、前記複数の部分駆動電極の一部若しくは全部に共通の前記駆動電圧を供給することにより生成される前記第1検出信号乃至第K検出信号に基づいて、前記回転操作部の回転に係わる情報が取得される。また、一の部分駆動電極へ前記駆動電圧を供給することにより生成される前記第1検出信号乃至第K検出信号の和に基づいて、当該一の部分駆動電極に対応した前記基台上の一領域への前記押圧に係わる情報が取得される。
【0013】
第3の発明に係る入力装置は、基台と、前記基台に回転自在に保持された回転操作部と、前記基台に設けられた固定電極と、前記回転操作部に設けられ、前記回転操作部の回転に伴って前記固定電極との間に形成されるキャパシタの静電容量が変化する可動電極と、前記キャパシタの静電容量に応じた検出信号を生成する検出信号生成部と、前記検出信号に基づいて前記回転操作部の回転に係わる情報を取得する処理を行う回転情報処理部とを有し、前記回転操作部が前記基台に向かって押圧されると前記回転操作部と前記基台との距離が変化し、前記押圧を解除すると前記距離が前記押圧前に戻り、前記押圧によって前記回転操作部と前記基台との距離が変化すると前記固定電極と前記可動電極との距離が変化し、前記押圧による前記検出信号の変化に基づいて、前記回転操作部の前記押圧に係わる情報を取得する処理を行う押圧情報処理部を有する。前記回転操作部と前記基台は、前記回転操作部の回転の軸方向と垂直な平面部をそれぞれ有する。前記回転操作部が前記軸方向と平行な方向へ前記基台に向かって押圧されると、前記回転操作部の前記平面部と前記基台の前記平面部との距離が変化し、前記押圧を解除すると、前記平面部間の距離が前記押圧前に戻る。前記固定電極は、前記基台の前記平面部に設けられ、前記可動電極は、前記回転操作部の前記平面部に設けられる。上記入力装置は、前記回転操作部の回転軸を中心として円状に等間隔に並んだN組の前記固定電極群と、前記基台において前記N組の固定電極群と隣接して設けられ、前記回転軸を中心とする円環形状に形成され、前記回転操作部の回転に依らない一定の静電容量を持つキャパシタが前記可動電極との間に形成される駆動電極と、前記駆動電極に駆動電圧を供給する駆動部とを有
する。前記固定電極群は、前記回転軸を中心として円弧状に等間隔に並んだK個の前記固定電極を含
む。前記固定電極群に含まれる前記K個の固定電極において、前記回転軸を中心とした所定の円周方向における順番が第i番目(iは1からKまでの整数を示す。)の固定電極を第i固定電極とした場合に、前記N組の固定電極群に含まれるN個の前記第i固定電極と前記可動電極との間には、共通の静電容量を持つキャパシタがそれぞれ形成され
る。前記N組の固定電極群は、それぞれ連続して並んだ複数の前記固定電極群からなるM個のグループに分かれて
いる。前記検出信号生成部は、前記第1固定電極乃至第K固定電極に対応した第1検出信号乃至第K検出信号を、前記M個のグループのそれぞれについて生成
する。一の前記グループについて生成される前記第i検出信号は、前記駆動電極への前記駆動電圧の供給により、当該一のグループに所属する複数の前記第i固定電極と前記可動電極との間に形成される複数のキャパシタに蓄積された電荷の和に応じた信号であ
る。前記回転情報処理部は、前記駆動電極へ前記駆動電圧を供給するように前記駆動部を制御し、当該記駆動電圧の供給に伴って前記M個のグループのそれぞれについて生成される前記第1検出信号乃至第K検出信号に基づいて、前記回転に係わる情報を取得
する。前記押圧情報処理部は、前記駆動電極へ前記駆動電圧を供給するように前記駆動部を制御し、当該駆動電圧の供給に伴って生成される前記第1検出信号乃至第K検出信号の和を、前記M個のグループについてそれぞれ算出し、前記M個のグループについて算出したM個の前記和に基づいて、前記M個のグループに対応した前記基台上のM個の領域への前記押圧に係わる情報をそれぞれ取得
する。
上記の構成によれば、前記駆動電極への前記駆動電圧の供給に伴って前記M個のグループのそれぞれについて生成される前記第1検出信号乃至第K検出信号に基づいて、前記回転に係わる情報が取得される。また、前記駆動電極への前記駆動電圧の供給に伴って生成される前記第1検出信号乃至第K検出信号の和が、前記M個のグループについてそれぞれ算出され、前記M個のグループについて算出されたM個の前記和に基づいて、前記M個のグループに対応した前記基台上のM個の領域への前記押圧に係わる情報がそれぞれ取得される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機械的なスイッチ機構を用いない簡易な構成で回転操作と押圧操作を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る入力装置について説明する。本実施形態に係る入力装置は、例えば回転エンコーダとして回転操作の検出が可能であるとともに、押圧操作の検出が可能である。
【0017】
<第1の実施形態>
まず、
図1から
図9を参照して、本発明の第1の実施形態に係る入力装置1について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る入力装置1の表面の外観を示す図であり、
図2は入力装置1の裏面の外観を示す図である。
図1及び
図2に示すように、入力装置1の外観は、例えば、薄肉長方形状を呈している。入力装置1の表面側には外観パネル3が設けられ、裏面側には基板4が設けられている。外観パネル3には、例えば、円形の開口部3aが形成されている。この開口部3aには、回転操作部20のダイヤル部22が露出している。
【0018】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る入力装置1の分解斜視図である。
図4は、
図1のX−X線の切断端面図である。なお、
図3では、基板4に形成された固定電極群50を概略的に図示している。
図3に示すように、外観パネル3と基板4との間には、表面側から順に、主にフレーム10、回転操作部20、可動電極30及びスペーサシート40の各構成要素が設けられている。基板4に形成された固定電極群50が、スペーサシート40を介して可動電極30と対向する。以下、各構成要素について順に説明する。
【0019】
図3及び
図4に示すように、フレーム10は、概ね長方形状の板部材である。フレーム10は、外観パネル3と基板4との間隔を保持する部材である。フレーム10には、外観パネル3の開口部3aよりも開口径の大きい円形の開口部10aが形成される。この開口部10a内には、回転操作部20が回転自在に収容される。
外観パネル3と基板4とフレーム10は、入力装置1の基台5を構成しており、この基台5において回転操作部20が回転自在に保持される。
【0020】
図5は、回転操作部20の一部の拡大斜視図である。
図5に示すように、回転操作部20は、概ね円盤状の部材であり、手指で回転操作するためのダイヤル部22と、ダイヤル部22の周囲に拡径され、複数の円弧部が連なるように形成されたフランジ部24とを有する。ダイヤル部22には、手指の掛かりを良くするために複数の溝部23が形成されている。回転操作部20は、回転軸21(
図4)を中心として回転する。
【0021】
図6は、回転操作部20、可動電極30及びスペーサシート40を裏面側から観た斜視図である。
図4及び
図6に示すように、回転操作部20の裏面には、回転軸21に対して垂直な平面部25が形成されており、この平面部25に可動電極30が取り付けられる。可動電極30は、基板4に形成された固定電極群50との間にキャパシタを形成する。このキャパシタの静電容量は、回転操作部20の回転に伴って変化する。可動電極30は、概ねリング状に形成された導体の板であって、内縁部31が円形に形成され、外縁部32が正弦波状の凹凸を持つ波形に形成されている。
【0022】
図3及び
図4に示すように、回転操作部20と基板4との間には、スペーサシート40が介設されている。回転操作部20の裏面には、回転軸21を中心とする4つの同心円を成して基板4側へ突出した4つの突起部(26〜29)が形成される。同心円の径は突起部26が最も小さく、突起部26,27,28,29の順番で大きくなっている。可動電極30が取り付けられる平面部25は、突起部28と突起部29の間に位置する。回転操作部20に押圧力が加わっていない状態において、内側の3つの突起部(26〜29)はスペーサシート40に当接するが、最も外側の突起部29はスペーサシート40からやや離れた位置に浮いている。
【0023】
基板4は、概ね長方形の形状を持つ絶縁体の板であり、回転操作部20と対向した表側の平面部に固定電極群50が設けられている。固定電極群50は、例えば、基板4の平面部において電子回路(後述する検出信号生成部60,処理部70,記憶部80など)を接続するプリント配線とともに形成された導体の薄膜である。
【0024】
図4Bにおいて示すように、スペーサシート40で覆われた基板4の固定電極群50と可動電極30との間には、隙間35が形成される。回転操作部20が基板4に向かって押圧されると、この隙間35が変化し、回転操作部20と基板4との距離が短くなる。すなわち、押圧力を受けた回転操作部20に弾性変形が生じ、スペーサシート40からやや離れた位置に浮いていた突起部29が基板4に向かって近づく。回転操作部20の押圧を解除すると、回転操作部20の弾性力によって突起部29が基板4から離れる方向に動き、回転操作部20と基板4との距離は押圧前に戻る。押圧によって回転操作部20と基板4との距離が変化すると、それぞれの平面部に設けられた固定電極群50と可動電極30との距離が変化し、その結果、これらの間に形成されるキャパシタの静電容量が変化する。本実施形態に係る入力装置1は、固定電極群50と可動電極30との間に形成されるキャパシタの静電容量が回転操作部20の押圧によって変化することを利用して押圧操作を検出する。
なお、図示の例では、回転操作部20が押圧によって弾性変形するが、本発明の他の例では基板の方が弾性変形してもよいし、回転操作部と基板の両方が弾性変形してもよい。
【0025】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る入力装置における固定電極群50の一例を示す図である。
図7に示すように、基板4の平面部には、回転操作部20の回転軸21を中心として円状に等間隔に並んだ16組の固定電極群50が形成される。1組の固定電極群50は、1周の略1/16の角度範囲を占める。
【0026】
個々の固定電極群50は、回転操作部20の回転軸21を中心として円弧状に等間隔に並んだ4個の固定電極(A,B,C,D)を含む。この固定電極(A,B,C,D)は、略扇形状を呈しており、1周の略1/64の角度範囲を占める。
以下の説明では、1組の固定電極群50に含まれる4個の固定電極(A,B,C,D)において、回転軸21を中心とした
図7の右回りの円周方向における順番が第i番目(iは1から4までの整数を示す。)の固定電極を「第i固定電極」と記す場合がある。すなわち、
図7における「A」が「第1固定電極」であり、「B」が「第2固定電極」であり、「C」が「第3固定電極」であり、「D」が「第4固定電極」である。
【0027】
第1固定電極A,第2固定電極B,第3固定電極C及び第4固定電極
Dは、可動電極30との間にそれぞれ静電容量が異なるキャパシタを形成する。これらのキャパシタの静電容量は、回転操作部20の回転操作に伴って変化する。
【0028】
また、
図7において示すように、基板4において円状に並んだ16組の固定電極群50の内側には、これらの固定電極群50に隣接して、駆動電極90が設けられている。駆動電極90は、基板4の平面部において、回転操作部20の回転軸21を中心として円環状に形成される。
図7の例において、駆動電極90は、第1部分駆動電極E、第2部分駆動電極F、第3部分駆動電極G、及び第4部分駆動電極Hの4つの領域に区分されている。各々の部分駆動電極(E,F,G,H)は円弧状を呈している。可動電極30と各部分駆動電極(E,F,G,H)との間に形成されるキャパシタの静電容量は、回転操作部20の回転に依らず一定である。
【0029】
図8は、対向配置された固定電極群50と可動電極30との平面視における重なりを説明するための図である。
図8では、理解を容易にするため、円弧状に曲ったそれぞれの電極の縁部を直線状に延びた状態で表わしている。
図8において示すように、可動電極30の外縁部32に形成される周期的な正弦波状の波形の部分は、固定電極群50の各固定電極(A〜D)と平面視において重なりを有している。固定電極(A〜D)と可動電極30との間に形成されるキャパシタの静電容量は、この平面視における重なりの面積に略比例する。回転操作に応じて可動電極30が回転すると、外縁部32の波形の位置が固定電極(A〜D)に対して相対的に変化するため、固定電極(A〜D)と可動電極30との重なりの面積が変化し、これにより、固定電極(A〜D)と可動電極30との間に形成されるキャパシタの静電容量が変化する。
【0030】
可動電極30の周期的な波形の部分の1サイクル分に相当する領域は、
図8において示すように、1組の固定電極群50と略同じ角度範囲(1周の1/16)を占めている。すなわち、外縁部32の波形の繰り返し周期と固定電極(A〜D)の繰り返し周期が一致している。
従って、1つの固定電極(A〜D)に着目すると、この固定電極と可動電極30との間に形成されるキャパシタの静電容量は、回転操作部20の回転に伴って正弦波状に変化する。この静電容量は、回転操作部20を1回転する間に16サイクルの周期的な変化を生じる。
また、1組の固定電極群50に含まれる4つの固定電極(A〜D)に着目すると、各固定電極(A〜D)と可動電極30との間に形成されるキャパシタの静電容量は、回転操作部20の回転に伴って、それぞれ異なる位相で正弦波状に変化する。例えば、
図8の矢印の方向へ可動電極30が回転する場合、第1固定電極Aと可動電極30との間に形成されるキャパシタの静電容量の位相が最も進んでおり、この位相は第1固定電極A,第2固定電極B,第3固定電極C,第4固定電極Dの順番で90°ずつ遅れる。
【0031】
図8に示すように、16組の固定電極群50に含まれる16個の第i固定電極(iは1から4までの整数を示す。)と可動電極30とは、平面視における重なり面積がほぼ同じになる。そのため、16個の第i固定電極と可動電極30との間には、共通の静電容量を持つキャパシタがそれぞれ形成される。すなわち、16個の第1固定電極Aと可動電極30との間に形成される16個のキャパシタは、略等しい静電容量を持つ。16個の第2固定電極Bと可動電極30との間に形成される16個のキャパシタは、略等しい静電容量を持つ。16個の第3固定電極Cと可動電極30との間に形成される16個のキャパシタは、略等しい静電容量を持つ。16個の第4固定電極
Dと可動電極30との間に形成される16個のキャパシタは、略等しい静電容量を持つ。
【0032】
4つの部分駆動電極(E,F,G,H)からなる円環状の駆動電極90は、
図8に示す平面視において、可動電極30の内側の円環状部分と重なりを有しており、両者の重なりの面積は、回転操作部20の回転に依らず一定となる。そのため、各部分駆動電極(E,F,G,H)と可動電極30との間に形成されるキャパシタの静電容量は、回転操作部20の回転に依らず一定となる。
【0033】
図9は、第1の実施形態に係る入力装置1の全体的な構成の一例を示す図である。
本実施形態に係る入力装置1は、上述した構成に加えて、検出信号生成部60と、処理部70と、記憶部80と、駆動部100を有する。
【0034】
検出信号生成部60は、16組の固定電極群50と可動電極30との間に形成される一群のキャパシタの静電容量に応じた一群の検出信号を生成する。具体的には、検出信号生成部60は、16個の第1固定電極Aと可動電極30との間に形成される16個のキャパシタの静電容量に応じた第1検出信号SA、16個の第2固定電極Bと可動電極30との間に形成される16個のキャパシタの静電容量に応じた第2検出信号SB、16個の第3固定電極Cと可動電極30との間に形成される16個のキャパシタの静電容量に応じた第3検出信号SC、及び、16個の第4固定電極Dと可動電極30との間に形成される16個のキャパシタの静電容量に応じた第4検出信号SDをそれぞれ生成する。
【0035】
図8,
図9において示すように、16個の第i固定電極(iは1から4までの整数を示す。)は、基板4に形成された配線パターンによって電気的に接続される。すなわち、16個の第1固定電極Aが共通の配線に接続され、16個の第2固定電極Bが共通の配線に接続され、16個の第3固定電極Cが共通の配線に接続され、16個の第4固定電極Dが共通の配線に接続される。
【0036】
後述する駆動部100によって部分駆動電極(E〜H)に所定の駆動電圧が供給されると、16個の第i固定電極と可動電極30との間に形成される16個のキャパシタには、それぞれ静電容量に応じた電荷が蓄積される。上述したように、これらの16個のキャパシタはほぼ等しい静電容量を持つため、16個のキャパシタにはほぼ等しい電荷が蓄積される。検出信号生成部60は、その16個のキャパシタに蓄積される電荷の和に応じた信号を第i検出信号(SA〜SD)として生成する。
【0037】
具体的には、検出信号生成部60は、可動電極30を介して部分駆動電極(E〜H)と16個の第i固定電極との間に形成されるキャパシタの静電容量に応じた信号を、第i検出信号(SA〜SD)として生成する。このキャパシタは、部分駆動電極(E〜H)と可動電極30との間に形成される固定容量のキャパシタと、可動電極30と16個の第i固定電極との間に形成される可変容量のキャパシタとが直列に接続された合成キャパシタである。駆動部100から供給される駆動電圧によってこの合成キャパシタに所定の電圧変化が生じると、検出信号生成部60は、所定の電圧変化に起因した合成キャパシタの電荷の変化量を検出し、その検出結果を第i検出信号(SA〜SD)として生成する。従って、第i検出信号(SA〜SD)は、回転操作部20の回転に依らず一定の静電容量の成分(
図10AのオフセットOfs)と、回転操作部20の回転に応じて周期的に変化する静電容量の成分とを加算した信号となる。
【0038】
検出信号生成部60は、例えば、静電容量−電圧変換回路(CV変換回路)と、その出力電圧をデジタル信号に変換するAD変換回路を含んで構成される。
【0039】
駆動部100は、駆動電極90を構成する4つの部分駆動電極(E〜H)に所定の駆動電圧を供給する。回転操作部20の回転角度を検出する場合、駆動部100は、全ての部分駆動電極(E〜H)に駆動電圧を供給する。他方、回転操作部20への押圧操作を検出する場合、駆動部100は、個々の部分駆動電極(E〜H)に駆動電圧を供給する。
【0040】
処理部70は、入力装置1の全体的な動作を制御や信号処理などを行う回路であり、例えば記憶部80に格納されたプログラムに基づいて処理を実行するコンピュータを含んで構成される。処理部70による処理の少なくとも一部は、専用のハードウェア(ASIC等)で行ってもよい。
【0041】
図9の例において、処理部70は、回転操作の検出に関する処理を行う回転情報処理部71と、押圧操作の検出に関する処理を行う押圧情報処理部72を有する。
【0042】
回転情報処理部71は、検出信号生成部60において生成される一群の検出信号(第1検出信号SA,第2検出信号SB,第3検出信号SC,第4検出信号SD)に基づいて、回転操作部22の回転に係わる情報を取得する処理を行う。回転情報処理部71は、4つの部分駆動電極(E〜H)の全てに駆動電圧を供給するように駆動部100を制御し、この駆動電圧の供給に伴って生成される第1検出信号SA,第2検出信号SB,第3検出信号SC及び第4検出信号SDに基づいて、回転操作部20の回転に係わる情報(例えば回転角度)を取得する。なお、回転情報処理部71は、4つの部分駆動電極(E〜H)の一部にのみ駆動電圧を供給するように駆動部100を制御してもよい。
【0043】
押圧情報処理部72は、回転操作部20が基板4に向かって押圧されることによる検出信号生成部60の検出信号の変化に基づいて、回転操作部20の押圧に係わる情報を取得する処理を行う。具体的には、押圧情報処理部72は、4つの部分駆動電極(E,F,G,H)から順番に1つの部分駆動電極を選択し、選択した1つの部分駆動電極へ駆動電圧を供給するように駆動部100を制御する。1つの部分駆動電極へ駆動電圧を供給したことに伴って、検出信号生成部60により一群の検出信号(第1検出信号SA,第2検出信号SB,第3検出信号SC,第4検出信号SD)が生成されると、押圧情報処理部72は、これらの検出信号の和(SA+SB+SC+SD)を算出する。押圧情報処理部72は、この算出した和に基づいて、駆動電圧が供給された1つの部分駆動電極に対応する基台4上の一領域への押圧に係わる情報を取得する。例えば、押圧情報処理部72は、一群の検出信号の和(SA+SB+SC+SD)と所定のしきい値とを比較した結果に基づいて、基台4上の一領域が押圧されたか否かを判定する。
【0044】
また、押圧情報処理部72は、押圧の開始を判定したときから押圧の終了を判定したときまでの押圧期間に回転情報処理部71が取得した回転の情報に基づいて、押圧期間における回転操作部20の回転角度の変化量を算出する。算出した回転角度の変化量が所定の角度より小さい場合、押圧情報処理部72は、回転操作部20の回転が停止した状態で押圧操作がなされたと判定する。他方、算出した回転角度の変化量が所定の角度より大きい場合、押圧情報処理部72は、回転操作部20が回転した状態で押圧操作がなされたと判定する。例えば、処理部70は、回転操作部20の回転が停止した状態で押圧操作がなされたと判定した場合、正常な押圧操作がなされたとみなして、押圧操作に応じた処理を実行する。他方、処理部70は、回転操作部20が回転した状態で押圧操作がなされたと判定した場合、ユーザの意図しない押圧操作がなされたとみなして、この押圧操作に応じた処理を実行しない(押圧操作を無視する)。
これにより、回転操作部20の回転が停止した状態での意図的な押圧操作であるか否かを的確に判別できる。
【0045】
次に、上述した構成を有する第1の実施形態に係る入力装置1における回転操作の検出及び押圧操作の検出について説明する。
【0046】
(回転操作の検出)
図10は、第1の実施形態に係る入力装置1における回転操作の検出原理の説明するための図である。
図10Aは、各検出信号(SA,SB,SC,SD)が回転操作に伴って変化する様子を表わしたグラフである。
図10Bは、逆相の変化を示す2つの検出信号の差(SA−SC、及び、SB−SD)が回転操作に伴って変化する様子を表わしたグラフである。
【0047】
図1から
図3に示すように、本実施形態に係る入力装置1では、回転操作部20のダイヤル部22をその周方向に沿って手指で回転させることで入力が行われる。回転操作部20が回転すると、可動電極30と各固定電極(A〜D)との平面視における重なりの面積(
図8)が変化することにより、可動電極30と各固定電極(A〜D)との間に形成されるキャパシタの静電容量が変化する。
【0048】
回転操作を検出する場合、駆動部100は、4つの部分駆動電極(E〜H)の全てに例えば同一の駆動電圧を供給する。駆動電圧の供給に伴って検出信号生成部60が生成する4つの検出信号(SA,SB,SC,SD)は、固定電極群50に含まれる4つの固定電極(A〜D)と可動電極30との間に形成されるキャパシタの静電容量に応じた信号となる。4つの検出信号(SA,SB,SC,SD)は、概ね次の式で表わされる。
【0049】
SA = K・cos(16θ)+Ofs …(1)
SB = K・sin(16θ)+Ofs …(2)
SC = −K・cos(16θ)+Ofs …(3)
SD = −K・sin(16θ)+Ofs …(4)
【0050】
ここで、「θ」は回転操作部20の回転角度を示し、「K」は比例定数を示し、「Ofs」はオフセット値を示す。上式において「θ」に「16」が乗ぜられていることから、回転操作部20が1回転する間に、各検出信号(SA〜SD)には16サイクルの変化が生じることが分かる。
【0051】
図10Aにおいて示すように、4つの検出信号(SA,SB,SC,SD)には、ほぼ共通のオフセット値Ofsが加わる。また、4つの検出信号(SA,SB,SC,SD)は、互いの位相が90°又は180°ずれており、それぞれ異なった値を持つ。
【0052】
位相が180°ずれた第1検出信号SAと第3検出信号SCとの差「SA−SC」、及び、位相が180°ずれた第2検出信号SBと第4検出信号SDとの差「SB−SD」は、それぞれ次の式で表わされる。
【0053】
SA−SC = 2K・cos(16θ) …(5)
SB−SD = 2K・sin(16θ) …(6)
【0054】
「SA−SC」,「SB−SD」の振幅は、
図10Bにおいて示すように、元の検出信号(SA,SB,SC,SD)の略2倍となる。
【0055】
式(5),(6)から、「θ」は次の式で表わされる。
θ = (1/16)・Atan2{(SA−SC),(SB−SD)} …(7)
【0056】
なお、式(7)に含まれる関数「y=Atan2(a,b)」は、アークタンジェント関数「Atan(b/a)」を満たし、かつ、変数a,bの正負に基づいて値域が決定される−π<y≦πの条件を満たすyを演算するものである。
【0057】
回転情報処理部71は、式(5)で示される「SA−SC」と式(6)で示される「SB−SD」の極性や値の変化に基づいて、回転操作部20の回転方向を判定する。
また、回転情報処理部71は、起点となる位置からの回転操作によって検出信号の差「SA−SC」(若しくは「SB−SD」)に生じる周期的変化のサイクル数と、式(7)により計算した「θ」とに基づいて、当該起点となる位置からの回転操作部20の回転角度を計算する。
【0058】
(押圧操作の検出)
次に、回転操作部20に対する押圧操作の検出について説明する。
図11及び
図12は、第1の実施形態に係る入力装置における押圧操作の検出原理を説明するための図である。
図11は、固定電極群と可動電極との距離が比較的
遠い場合を示し、
図12はこの距離が比較的近い場合を示す。
【0059】
図4B及び
図7に示すように、可動電極30と固定電極群50との間には、隙間35が形成されている。回転操作部20のダイヤル部22が基板4に向かって押圧されると、回転操作部20に弾性変形が生じ、回転操作部20と基板4との距離が短くなり、隙間35が狭くなる。回転操作部20への押圧が解除されると、弾性力によって回転操作部20が元の位置へ移動し、上記距離が押圧前に戻る。このように回転操作部20と基板4との距離が変化すると、固定電極群50と可動電極40との距離が変化し、固定電極群50と可動電極40との間に形成されるキャパシタの静電容量が変化するため、検出信号生成部60が生成する4つの検出信号(SA,SB,SC,SD)が変化する。すなわち、回転操作部20への押圧操作に応じて、4つの検出信号(SA,SB,SC,SD)が変化する。
【0060】
図11Aに示すように可動電極30と固定電極群50との距離が比較的遠い場合には、この電極間に形成されるキャパシタの静電容量が比較的小さくなる。従って、
図11Bに示すように、検出信号生成部60が生成する4つの検出信号(SA,SB,SC,SD)の振幅は小さくなる。また、
図11Cに示すように、検出信号の差(SA−SC、SB−SD)の振幅も小さくなる。
他方、
図12Aに示すように可動電極30と固定電極群50との距離が比較的近い場合には、この電極間に形成されるキャパシタの静電容量が比較的大きくなる。従って、
図12Bに示すように4つの検出信号(SA,SB,SC,SD)の振幅は大きくなり、
図12Cに示すように検出信号の差(SA−SC、SB−SD)の振幅も大きくなる。
従って、検出信号生成部60が生成する4つの検出信号(SA,SB,SC,SD)の振幅に基づいて、回転操作部20に押圧操作がなされたか否かを判定することが可能である。
【0061】
押圧操作を検出する場合、駆動部100は、4つの部分駆動電極(E,F,G,H)から順番に1つの部分駆動電極を選択し、選択した1つの部分駆動電極へ駆動電圧を供給する。押圧情報処理部72は、この駆動電圧の供給に伴って生成される4つの検出信号(SA,SB,SC,SD)に基づいて、押圧操作の有無を判定する。例えば、押圧情報処理部72は、4つの検出信号の和(SA+SB+SC+SD)が所定のしきい値を超える場合、駆動電圧が供給された1つの部分駆動電極に対応する基台4上の一領域に押圧操作がなされたと判定する。押圧情報処理部72は、4つの部分駆動電極(E,F,G,H)へそれぞれ駆動電圧が供給される度に、4つの検出信号の和(SA+SB+SC+SD)としきい値との比較に基づいて、押圧操作の有無を判定する。
【0062】
なお、回転操作部20のダイヤル部22を手指で操作する際の力の与え方は個人によってばらつきがあるため、上述した押圧判定のしきい値が低い場合、回転操作を押圧操作と誤判定し易くなる可能性がある。そこで、押圧情報処理部72は、押圧操作がなされたと判定した期間における回転操作部20の回転角度に応じて、停止状態での押圧操作であるのか否かを判定する。すなわち、押圧情報処理部72は、押圧の開始を判定したときから押圧の終了を判定したときまでの押圧期間に回転情報処理部71が取得した回転の情報に基づいて、押圧期間における回転操作部20の回転角度の変化量を算出し、当該算出した回転角度の変化量が所定の角度より小さい場合、回転操作部20の回転が停止した状態で押圧操作がなされたと判定する。これにより、回転操作部20の回転が停止した状態での意図的な押圧操作とそれ以外の操作を判別できるため、回転操作を押圧操作と誤判定するケースを減らすことができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る入力装置1によれば、回転操作部20が基板4に向かって押圧されると、当該押圧によって回転操作部20と基板4との距離が変化し、固定電極群50と可動電極30との距離が変化する。これにより固定電極群50と可動電極30との間に形成されるキャパシタの静電容量が変化するため、検出信号が変化する。また、回転操作部20に対する押圧が解除されると、固定電極群50と可動電極30との距離が押圧前に戻るため、押圧により変化した検出信号が押圧前の状態に戻る。すなわち、押圧の有無に応じて検出信号が変化する。押圧情報処理部72では、この押圧による検出信号の変化に基づいて、回転操作部20の押圧に係わる情報を取得する処理が行われる。従って、スイッチ機構などの追加部品を設けなくても、回転操作部20の押圧に係わる情報の取得が可能となるため、簡易な構成で回転操作と押圧操作の両方を検出することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る入力装置1によれば、固定電極群50が設けられた基板4の平面部と、可動電極30が設けられた回転操作部20の平面部25とが、共に回転軸21の方向と垂直であるため、基板4の平面部と回転操作部20の平面部25とを近づけても、基板4に対する回転操作部20の回転が妨げられない。すなわち、回転操作部20の回転軸21の方向における入力装置1の外形の厚みを薄型化できる。
また、基板4の平面部と回転操作部20の平面部25とを近づけることで、固定電極群50と可動電極30との距離が短くなり、これらの間に形成されるキャパシタの静電容量が大きくなる。すなわち、入力装置1の外形の薄型化を図りつつ、キャパシタの静電容量を大きくすることが可能となり、検出信号生成部60で生成される検出信号(SA〜SD)の感度を高くすることができる。
更に、入力装置1の薄型化を妨げることなく基板4及び回転操作部20の平面部の面積を広げられるため、固定電極群50及び可動電極30の面積を大きくすることができる。これにより、キャパシタの静電容量を更に大きくすることが可能となり、検出信号(SA〜SD)の感度を高めることができる。
しかも、入力装置1の外形の薄型化によって基板4の平面部と回転操作部20の平面部25とが近づくと、固定電極群50と可動電極30との距離が僅かに変化してもキャパシタの静電容量が大きく変化するようになる。すなわち、押圧に対する検出信号(SA〜SD)の変化が大きくなる。そのため、押圧操作の検出感度を高めることができる。
【0065】
また、本実施形態に係る入力装置1によれば、回転操作部20及び基板4の少なくとも一方が押圧操作により弾性変形することで、基板4の平面部と回転操作部20の平面部25との距離が押圧力に応じて変化し、これにより、検出信号(SA〜SD)が押圧力に応じて変化する。従って、回転操作部20に対する押圧力を簡易な構成で検出できる。
【0066】
また、本実施形態に係る入力装置1によれば、固定電極群50を構成する4つの固定電極(A,B,C,D)と可動電極30との間に形成される4つのキャパシタの静電容量がそれぞれ異なっており、この4つのキャパシタの静電容量に応じた4つの検出信号(SA〜SD)が検出信号生成部60において生成される。押圧情報処理部72では、この4つの検出信号(SA〜SD)の和に基づいて、回転操作部20への押圧に係わる情報が取得される。4つの検出信号(SA〜SD)の和を算出すると、その算出結果には押圧操作に伴う個々の検出信号(SA〜SD)の変化が足し合わされるため、押圧操作に伴う大きな変化が表れる。従って、当該和の算出結果に基づいて、回転操作部20への押圧に係わる情報を感度よく取得することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る入力装置1によれば、押圧情報処理部72において押圧操作が判定された場合、その押圧の開始を判定したときから押圧の終了を判定したときまでの押圧期間に回転情報処理部71で取得された回転の情報に基づいて、押圧期間における回転操作部20の回転角度の変化量が算出される。そして、当該算出された回転角度の変化量が所定の角度より小さい場合、回転操作部20の回転が停止した状態で押圧操作がなされたと判定される。従って、回転操作部20の回転が停止した状態で意図的な押圧操作がなされたか否かを的確に判別することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る入力装置1によれば、押圧操作によって検出信号(SA〜SD)の振幅が変化しても、回転の角度「θ」は式(7)において示すように検出信号(SA〜SD)の比に基づいて算出されるため、押圧操作に影響を受けることなく正確な回転の角度を求めることが可能である。
【0069】
<第2の実施形態>
次に、
図13及び
図14を参照して、本発明の第2の実施形態に係る入力装置2について説明する。上述した入力装置1では、駆動電極90を複数の部分駆動電極(E〜H)に分割することで複数の部位への押圧操作が検出されるが、本実施形態に係る入力装置2では、複数の固定電極群50を複数のグループに分割することで複数の部位への押圧操作が検出される。
【0070】
図13は、第2の実施形態に係る入力装置2における固定電極群50及び駆動電極290の一例を示す図である。
図14は、第2の実施形態に係る入力装置2の全体的な構成の一例を示す図である。
本実施形態に係る入力装置2は、上述した入力装置1における駆動電極90(
図7)を駆動電極290(
図13)に置き換え、駆動部100(
図9)を駆動部100A(
図14)に置き換え、検出信号生成部60(
図9)を検出信号生成部60A(
図14)に置き換え、回転情報処理部71(
図9)を回転情報処理部71A(
図14)に置き換えたものであり、他の構成は入力装置1と同様である。以下では、入力装置1と異なる構成を中心に説明する。
【0071】
駆動電極290は、基板4において円状に等間隔で並んだ16組の固定電極群50の内側に隣接して設けられており、回転軸21を中心とする円環形状に形成される。
図13の例において、駆動電極290は、
図7に示す駆動電極90を4つに分割せずに一体とした円環形状を持つ。駆動電極290と可動電極30との間に形成されるキャパシタの静電容量は、回転操作部20の回転に依らない一定の静電容量を持つ。
【0072】
駆動部100Aは、処理部70の制御に従って、駆動電極290に所定の駆動電圧を供給する。
【0073】
図13において示すように、円状に並んだ16組の固定電極群50は、それぞれ連続して並んだ4組の固定電極群50からなる4つのグループ51,52,53,54に分かれている。
【0074】
同一のグループ(51〜54)に属する4個の第i固定電極(iは1から4までの整数を示す。)は、
図14において示すように、基板4に形成された配線パターンによって電気的に接続される。すなわち、同一のグループに属する4個の第1固定電極Aが共通の配線に接続され、同一のグループに属する4個の第2固定電極Bが共通の配線に接続され、同一のグループに属する4個の第3固定電極Cが共通の配線に接続され、同一のグループに属する4個の第4固定電極Dが共通の配線に接続される。
【0075】
検出信号生成部60Aは、固定電極群50を構成する4つの固定電極(第1固定電極A,第2固定電極B,第3固定電極C及び第4固定電極D)に対応した4つの検出信号(第1検出信号SA,第2検出信号SB,第3検出信号SC,第4検出信号SD)を、上述した4つのグループ51,52,53,54のそれぞれについて生成する。
【0076】
1つのグループ(51〜54)について検出信号生成部60Aが生成する第i検出信号(SA〜SD)は、駆動電極290への駆動電圧の供給により、当該1つのグループ(51〜54)に所属する4つの第i固定電極と可動電極30との間に形成される4つのキャパシタに蓄積された電荷の和に応じた信号である。
【0077】
例えば検出信号生成部60Aは、
図14において示すように、グループ51に対応した4つの検出信号(SA〜SD)を生成する第1検出信号生成部61と、グループ52に対応した4つの検出信号(SA〜SD)を生成する第2検出信号生成部61と、グループ53に対応した4つの検出信号(SA〜SD)を生成する第3検出信号生成部63と、グループ54に対応した4つの検出信号(SA〜SD)を生成する第4検出信号生成部64を有する。第1検出信号生成部61〜第4検出信号生成部64の動作は、固定電極群50の数が16組から4組に変わっている点を除いて、既に説明した検出信号生成部60と同様である。
【0078】
回転情報処理部71Aは、駆動電極290へ駆動電圧を供給するように駆動部100を制御し、当該記駆動電圧の供給に伴って4つのグループ(51〜54)のそれぞれについて生成される4つの検出信号(SA〜SD)に基づいて、回転に係わる情報を取得する。例えば、回転情報処理部71Aは、4つのグループ(51〜54)について生成された4つの第1検出信号SAの和、4つのグループ(51〜54)について生成された4つの第2検出信号SBの和、4つのグループ(51〜54)について生成された4つの第3検出信号SCの和、並びに、4つのグループ(51〜54)について生成された4つの第4検出信号SDの和をそれぞれ算出する。回転情報処理部71Aは、算出した4つの和を、既に述べた検出信号生成部60(
図9)による4つの検出信号(SA〜SD)とみなして、既に述べた回転情報処理部71(
図9)と同様の処理により、回転操作部20の回転に係わる情報を取得する。
【0079】
押圧情報処理部72Aは、駆動電極290へ駆動電圧を供給するように駆動部100を制御し、当該駆動電圧の供給に伴って生成される第1検出信号SA〜第4検出信号SDの和(SA+SB+SC+SD)を、4つのグループ(51〜54)についてそれぞれ算出する。押圧情報処理部72Aは、4つのグループ(51〜54)について算出した4つの和(SA+SB+SC+SD)に基づいて、4つのグループに対応した基板4上の4つの領域への押圧に係わる情報をそれぞれ取得する。例えば、押圧情報処理部72Aは、4つのグループ(51〜54)について算出した4つの和(SA+SB+SC+SD)をそれぞれ所定のしきい値と比較し、その比較結果に基づいて、4つのグループに対応した基板4上の4つの領域に対する押圧操作の有無をそれぞれ判定する。
【0080】
第2の実施形態に係る入力装置2によれば、16組の固定電極群50が4つのグループ(51〜54)に分割され、4つグループ(51〜54)の各々について生成される4つの検出信号(SA〜SD)に基づいて、4つのグループ(51〜54)に対応した基板4上の4つの領域に対する押圧操作の情報がそれぞれ取得される。従って、第2の実施形態に係る入力装置1のように部分駆動電極(E〜H)へ順番に駆動電圧を供給する必要がなくなり、4つの領域における押圧操作の情報を一度に取得できるため、押圧に関する情報の取得に要する時間を短縮できる。
【0081】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【0082】
例えば、上述した実施形態において例として挙げた、固定電極群の数や、固定電極群に含まれる固定電極の数は任意であり、本発明はこの例に限定されない。固定電極群の数は1つでもよいし、固定電極の数は1つだけでもよい。また、検出可能な回転は1回転未満(回転角度の範囲が360°未満)でもよい。
【0083】
また、上述した実施形態において例として挙げた固定電極や可動電極、駆動電極等の形状、配置は任意であり、本発明はこの例に限定されない。例えば、上述した実施形態の例では固定電極の内側に駆動電極が位置しているが、固定電極の外側に駆動電極が位置してもよい。
【0084】
上述した実施形態における静電容量の検出は、静電容量に蓄積される電荷を検出するための電極(固定電極)と駆動電極とが独立に設けられた相互容量方式で行われているが、本発明はこの例に限定されない。本発明の他の実施形態では、静電容量の検出を、駆動電極の不要な自己容量方式で行ってもよい。この場合、可動電極は一定の電位(例えばグランド)に接続される。