特許第6496647号(P6496647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496647
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】水解性ウェットシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/00 20060101AFI20190325BHJP
   D21H 19/16 20060101ALI20190325BHJP
   A47K 11/10 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
   D21H27/00 Z
   D21H19/16
   A47K11/10
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-191040(P2015-191040)
(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-66543(P2017-66543A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】向山 真平
【審査官】 弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−209657(JP,A)
【文献】 特開2008−291409(JP,A)
【文献】 特開平10−273892(JP,A)
【文献】 特開平11−269201(JP,A)
【文献】 特開2016−169442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00− 11/14
D21D 1/00− 99/00
D21F 1/00− 13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00− 27/42
D21J 1/00− 7/00
A47K 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性バインダーが添加された原紙シートにプレス加工を施すプレス加工工程と、
前記プレス加工工程の前に、前記水溶性バインダーに架橋反応を起こさせる架橋剤を浸透させるための浸透剤を配合した薬液を前記原紙シートに含浸させる第1薬液含浸工程と、
前記プレス加工工程の後に、前記浸透剤に前記架橋剤を配合した薬液を前記原紙シートに含浸させる第2薬液含浸工程と、
を含むことを特徴とする水解性ウェットシートの製造方法。
【請求項2】
前記第1薬液含浸工程では、原紙シートの重量に対して5〜30重量%となるように前記浸透剤を配合した薬液を当該原紙シートに含浸させることを特徴とする請求項1に記載の水解性ウェットシートの製造方法。
【請求項3】
前記浸透剤は、多価アルコール若しくはその誘導体、及びグリコール誘導体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水解性ウェットシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水解性ウェットシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレの清掃には、繰り返し使用される織布製の雑巾等が使われてきたが、これに替わって、近年、紙製の使い捨てのウェットシートが使用されるようになってきている。そして、この種のウェットシートは、洗浄剤が含浸された状態で提供され、また使用後にトイレに流して処理可能とされるものが好まれる。
かかるウェットシートにおいては、拭取り作業時の洗浄剤が含浸された湿潤状態において破れない紙力と、トイレ等に流した際に配管等に詰まらない程度の水解性を確保することが求められるところであるが、これらを効果的に達成する一つの技術として、その基材紙としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む水溶性バインダー等を添加した水解紙を用いることが知られている。
また、このような水解紙の製造方法では、水分含有率が10〜200重量%となるように繊維シートに水を施した後、エンボス加工を施すことにより、得られる紙を嵩高にする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4703534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、繊維シートへの凹凸賦形を首尾良く行う観点から、エンボス加工の前に繊維シートに水を噴霧しているが、水分の量が多すぎると繊維シートの繊維が伸びてしまいエンボス加工時に繊維が破断しやすい状態となり、得られる水解紙の強度が弱くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、強度を向上させた水解性ウェットシートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、水解性ウェットシートの製造方法であって、
水溶性バインダーが添加された原紙シートにプレス加工を施すプレス加工工程と、
前記プレス加工工程の前に、前記水溶性バインダーに架橋反応を起こさせる架橋剤を浸透させるための浸透剤を配合した薬液を前記原紙シートに含浸させる第1薬液含浸工程と、
前記プレス加工工程の後に、前記浸透剤に前記架橋剤を配合した薬液を前記原紙シートに含浸させる第2薬液含浸工程と、
を含むことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水解性ウェットシートの製造方法において、
前記第1薬液含浸工程では、原紙シートの重量に対して5〜30重量%となるように前記浸透剤を配合した薬液を当該原紙シートに含浸させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の水解性ウェットシートの製造方法において、
前記浸透剤は、多価アルコール若しくはその誘導体、及びグリコール誘導体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水溶性バインダーに架橋反応を起こさせる架橋剤を浸透させるための浸透剤を配合した薬液を原紙シートに含浸させ、当該原紙シートにプレス加工を施した後、浸透剤に架橋剤を配合した薬液を当該原紙シートに含浸させることとなる。
従って、プレス加工によって原紙シートに浸透剤を十分浸透させた状態で架橋剤を配合した薬液を当該原紙シートに含浸させることができるので、当該原紙シートの内部まで架橋剤を浸透させ易くなる。これにより、原紙シートの表面付近に存する水溶性バインダーだけではなく、当該シートの内部に存する水溶性バインダーも架橋反応を起こすこととなるので、清掃・清拭作業に耐え得る紙の強度を十分に高めることができるようになる。
また、第1薬液含浸工程で浸透剤を配合した薬液を前もって付与することとなるので、第2薬液含浸工程において供給される薬液のうち浸透剤の配合量を減らすことができ、
コストが上がってしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る水解性ウェットシートの製造方法を示すフローチャートである。
図2】本実施形態に係る水解性ウェットシートの製造設備の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る水解性ウェットシートの製造方法の実施の形態について、図を参照しながら説明する。
図1は、水解性ウェットシートの製造方法を示すフローチャートである。図2は、水解性ウェットシートの製造方法の製造設備の模式図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態における水解性ウェットシートの製造方法では、水溶性バインダーに架橋反応をおこさせる架橋剤を浸透させるための浸透剤を配合した薬液を原紙シート2に含浸させる第1薬液含浸工程(S1)と、当該薬液を含浸させた原紙シート2にプレス加工を施すプレス加工工程(S2)と、プレス加工した原紙シート2を折り、裁断する裁断・折り加工工程(S3)と、前段の裁断・折り加工工程(S3)で加工された加工シート7に対して、前記浸透剤に前記架橋剤を配合した薬液を含浸させる第2薬液含浸工程(S4)と、当該薬液を含浸させた加工シート7を包装する包装工程(S5)を行う。なお、各工程の詳細については後述する。
【0013】
〔第1薬液含浸工程〕
先ず、本実施形態の第1薬液含浸工程(S1)ついて説明する。
図2に示すように、第1薬液含浸工程(S1)では、原反ロール1から繰り出される原紙シート2に対してスプレーノズル3から浸透剤を配合した薬液を噴霧する。
【0014】
原紙シート2は、例えば、既知のパルプ繊維等を主原料とする抄紙原料を抄造してなる薄葉紙を加工したものである。原料となるパルプは、特にLBKPとNBKPを適宜の割合で配合したものが適する。なお、パルプ繊維以外の繊維として、レーヨン繊維や合成繊維などが含有されていてもよい。
【0015】
また、原紙シート2には水溶性バインダーが添加されている。水溶性バインダーとしては、例えばカルボキシル基を有する水溶性高分子、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。上記のうち、水解性が良好である点や後述する架橋剤との架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性高分子を用いることが好ましい。なお、本実施形態においては、カルボキシル基を有する水溶性高分子であるカルボキシメチルセルロース(以下、CMCという)を用いる。CMCの添加量は、原紙シート2の重量に対して0.5〜1.0重量%の割合とすることが好ましい。
【0016】
また、原紙シート2に含浸させる浸透剤としては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、モノブチルグリコールエーテル、ネオペンチルポリオールエステル等の多価アルコール若しくはその誘導体、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールドデシルエーテル等のグリコール誘導体を用いることができる。上記浸透剤は架橋剤を含む薬液の表面張力を低下させ、繊維間の入り込みにくいパルプ内部まで架橋剤を浸透させることができる。これにより水溶性バインダーと架橋剤の結合が強くなり、水に濡らした際の強度発現性が向上する。
ここで、得られる水解性ウェットシートの表面強度だけを考慮した場合、第1薬液含浸工程(S1)では、第1薬液含浸工程(S1)と第2薬液含浸工程(S4)とで供給される全薬液量のうち50%の薬液を原紙シート2に対して供給することが好ましい。しかし、当該水解性ウェットシートを製造する際の歩留りを考慮した場合、第1薬液含浸工程(S1)では、全薬液量のうち5〜30%の薬液を原紙シート2に対して供給することが好ましい。
【0017】
〔プレス加工工程〕
次に、本実施形態のプレス加工工程(S2)ついて説明する。
図2に示すように、プレス加工工程(S2)では、プレスロールを構成するトップロール4、同じくプレスロールを構成するボトムロール5との間に原紙シート2を通過させることによって、原紙シート2にプレス加工を施す。このプレス加工によって、原紙シート2の内部に浸透剤を配合した薬液を浸透させ易くなる。また、プレスロールとして、エンボスを施したエンボスロールにて部分的にプレスしても、エンボスロールとプレスロールとを組み合わせても良い。
【0018】
〔裁断・折り加工工程〕
次に、本実施形態の裁断・折り加工工程(S3)について説明する。
図2に示すように、裁断・折り加工工程(S3)では、製品加工設備6において、原紙シート2を製品寸法に裁断し、裁断された各加工シート7,…に折り加工を施す。そして、裁断・折り加工工程(S3)では、折り加工が施された各加工シート7,…を第2薬液含浸工程(S4)へ送り出す。
【0019】
〔第2薬液含浸工程〕
次に、本実施形態の第2薬液含浸工程(S4)ついて説明する。
図2に示すように、第2薬液含浸工程(S4)では、第1薬液含浸工程(S1)で供給された上記薬液に架橋剤を配合した薬液をスプレーノズル8から加工シート7に噴霧する。このとき加工シート7に添加されているCMC(水溶性バインダー)は、噴霧された薬液中の架橋剤(例えば、カルシウムイオン、亜鉛イオン等の特定の二価金属イオン)によって架橋反応を起こすこととなる。これによりCMCが不溶化し、清掃・清拭作業に耐え得る紙の強度を発現することができるようになる。また、本実施形態では第2薬液含浸工程(S4)よりも前の第1薬液含浸工程(S1)で原紙シート2に浸透剤が含浸されるとともに、プレス加工工程(S2)でプレス加工が施されることにより、原紙シート2の内部には既に浸透剤が浸透されているため、この第2薬液含浸工程(S4)における薬液の噴霧によって、加工シート7の内部まで架橋剤を浸透させ易くしている。これにより、加工シート7の表面付近に存するCMCだけではなく、当該シートの内部に存するCMCも架橋反応を起こすこととなるので、清掃・清拭作業に耐え得る紙の強度を十分に高めることができるようになる。また、第1薬液含浸工程(S1)で浸透剤を配合した薬液を一度付与することとなるので、第2薬液含浸工程(S4)において供給される薬液のうち浸透剤の配合量を減らすことができ、コストが上がってしまうことを防止することができる。
【0020】
第2薬液含浸工程(S4)において供給される薬液に含有される架橋剤は、CMCを水溶性バインダーとして用いた場合、多価金属イオンを用いることが好ましい。特に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の多価金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて使用に耐え得る湿潤強度が発現する点、及び水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。
【0021】
多価金属イオンは、水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩などの水溶性金属塩の形で添加される。多価金属イオンは、水溶性バインダーにおけるカルボキシル基1モルに対して1/2モル以上、特に1/1モル以上の量となるように添加することが十分な架橋反応を起こさせる点から好ましい。
【0022】
また、上記薬液には、水性洗浄剤のほか、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤等の補助剤を含む所定の薬液が配合されている。この所定の薬液としては、適宜のものを使用することができ、例えば、水性洗浄剤としては、界面活性剤のほか、低級又は高級(脂肪族)アルコールを使用することができる。香料としては、水性香料の他、オレンジオイル等の油性香料の中から、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。防腐剤としては、例えばメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等のパラベン類を使用することができる。除菌剤としては、アルコール、パラオキシ安息香酸エステル、モノマーの四級アンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム、フェノキシエタノール等を使用することができる。紙力増強剤としては、カルボキシメチルセルロース、ホウ酸、種々の金属イオン等を使用することができる。
また、上述した薬液の成分の補助剤については適宜選択可能であり、必要に応じて他の機能を果たす成分を薬液に含ませても良い。
【0023】
〔包装工程〕
次に、本実施形態の包装工程(S5)ついて説明する。
図示は省略するが、包装工程(S5)では、第2薬液含浸工程(S4)を経た各加工シート7,…が集積され、包装される。
以上の各工程を経ることにより、水解性ウェットシート(例えば、トイレクリーナー)が製造される。
【実施例】
【0024】
次に、本実施形態の水解性ウェットシートの製造方法により製造された水解性ウェットシートの湿潤強度について評価した結果を表1を用いて説明する。
【0025】
<実施条件>
実施例1〜4では、第1薬液含浸工程(1段目)において、第1薬液含浸工程(1段目)と第2薬液含浸工程(2段目)とで供給される全薬液量のうち5%の薬液を原紙シート2に対して供給する。また、第2薬液含浸工程(2段目)では、当該全薬液量のうち95%の薬液を原紙シート2に対して供給する。ここで、浸透成分Aは、プロピレングリコールモノメチルエーテルであり、浸透成分Bは、プロピレングリコールである。第2薬液含浸工程(2段目)で供給される薬液には、浸透成分A、Bの他に架橋剤として硫酸亜鉛を全薬液重量に対して1重量%添加している。また、第2薬液含浸工程(2段目)で供給される薬液には、通常添加する薬液成分として、水性洗浄剤のほか、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤等の補助剤等を添加している。
【0026】
また、実施例5〜8では、第1薬液含浸工程(1段目)において、第1薬液含浸工程(1段目)と第2薬液含浸工程(2段目)とで供給される全薬液量のうち20%の薬液を原紙シート2に対して供給する。また、第2薬液含浸工程(2段目)では、当該全薬液量のうち80%の薬液を原紙シート2に対して供給する。
【0027】
また、実施例9〜12では、第1薬液含浸工程(1段目)において、第1薬液含浸工程(1段目)と第2薬液含浸工程(2段目)とで供給される全薬液量のうち50%の薬液を原紙シート2に対して供給する。また、第2薬液含浸工程(2段目)では、当該全薬液量のうち50%の薬液を原紙シート2に対して供給する。
【0028】
また、実施例13〜16では、第1薬液含浸工程(1段目)において、第1薬液含浸工程(1段目)と第2薬液含浸工程(2段目)とで供給される全薬液量のうち50%の薬液を原紙シート2に対して供給する。また、第2薬液含浸工程(2段目)では、当該全薬液量のうち50%の薬液を原紙シート2に対して供給する。ただし、実施例13〜16では、浸透成分A及びBのうち、浸透成分Aのみを配合した薬液を供給する。また、第2薬液含浸工程(2段目)で供給される薬液には、上記実施例1〜12と同様、水性洗浄剤のほか、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤等の補助剤等が添加されているものとする。
【0029】
実施例1、5、及び9では、原紙シート2の重量に対して4重量%の割合となるように浸透成分Aを配合する。また、原紙シート2の重量に対して2重量%の割合となるように浸透成分Bを配合する。
実施例2、6、及び10では、原紙シート2の重量に対して6重量%の割合となるように浸透成分Aを配合する。また、原紙シート2の重量に対して3重量%の割合となるように浸透成分Bを配合する。
実施例3、7、及び11では、原紙シート2の重量に対して8重量%の割合となるように浸透成分Aを配合する。また、原紙シート2の重量に対して4重量%の割合となるように浸透成分Bを配合する。
実施例4、8、及び12では、原紙シート2の重量に対して10重量%の割合となるように浸透成分Aを配合する。また、原紙シート2の重量に対して5重量%の割合となるように浸透成分Bを配合する。
実施例13では、原紙シート2の重量に対して4重量%の割合となるように浸透成分Aのみを配合する。
実施例14では、原紙シート2の重量に対して6重量%の割合となるように浸透成分Aのみを配合する。
実施例15では、原紙シート2の重量に対して8重量%の割合となるように浸透成分Aのみを配合する。
実施例16では、原紙シート2の重量に対して10重量%の割合となるように浸透成分Aのみを配合する。
【0030】
また、上記各実施例1〜16に対し、下記の比較例17〜20では、第1薬液含浸工程を行わず、第2薬液含浸工程でのみ薬液を付与、すなわち、第2薬液含浸工程において100%の薬液を供給することによってサンプルを試作して、これらのサンプルを用いて比較評価を行った。
【0031】
比較例17は、実施例1、5、9、及び13を比較対象としており、比較例17では、原紙シート2の重量に対して4重量%の割合となるように浸透成分Aを配合した。また、原紙シート2の重量に対して2重量%の割合となるように浸透成分Bを配合した。
比較例18は、実施例2、6、10、及び14を比較対象としており、比較例18では、原紙シート2の重量に対して6重量%の割合となるように浸透成分Aを配合した。また、原紙シート2の重量に対して3重量%の割合となるように浸透成分Bを配合した。
比較例19は、実施例3、7、11、及び15を比較対象としており、比較例19では、原紙シート2の重量に対して8重量%の割合となるように浸透成分Aを配合した。また、原紙シート2の重量に対して4重量%の割合となるように浸透成分Bを配合した。
比較例20は、実施例4、8、12、及び16を比較対象としており、比較例20では、原紙シート2の重量に対して10重量%の割合となるように浸透成分Aを配合した。また、原紙シート2の重量に対して5重量%の割合となるように浸透成分Bを配合した。
【0032】
<評価方法>
実施例及び比較例で得られた各水解性ウェットシートのMD及びCDの湿潤強度を測定した。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示す結果のとおり、実施例1、実施例5、実施例9、実施例13、及び比較例17を比較すると、MD及びCDの何れにおいても、実施例9の湿潤強度が最も高かった。一方、比較例17の湿潤強度は、比較対象である何れの実施例よりも低かった。
また、実施例2、実施例6、実施例10、実施例14、及び比較例18を比較すると、MD及びCDの何れにおいても、実施例10の湿潤強度が最も高かった。一方、比較例18の湿潤強度は、比較対象である何れの実施例よりも低かった。
また、実施例3、実施例7、実施例11、実施例15、及び比較例19を比較すると、MD及びCDの何れにおいても、実施例11の湿潤強度が最も高かった。一方、比較例19の湿潤強度は、比較対象である何れの実施例よりも低かった。
また、実施例4、実施例8、実施例12、実施例16、及び比較例20を比較すると、MD及びCDの何れにおいても、実施例12の湿潤強度が最も高かった。一方、比較例20の湿潤強度は、比較対象である何れの実施例よりも低かった。
【0035】
つまり、第1薬液含浸工程(1段目)において、浸透剤を配合した薬液を付与するとともに、第2薬液含浸工程(2段目)において、浸透剤に架橋剤を配合した薬液を付与することによって、第2薬液含浸工程(2段目)においてのみ上記薬液を付与する場合(比較例17〜20)に比べて、得られる水解性ウェットシートの湿潤強度が向上することが分かった。また、第1薬液含浸工程(1段目)において付与される薬液の比率を5%から50%に上げることにより、得られる水解紙の湿潤強度が更に向上することが分かった。
【0036】
また、各比較対象のなかで、湿潤強度が最も高かった実施例9、実施例10、実施例11、及び実施例12の浸透成分A及びBの配合量に着目してみると、浸透成分Aの配合割合を10重量%、浸透成分Bの配合割合を5%とした実施例12の湿潤強度が最も高くなることがわかった。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、水溶性バインダーに架橋反応を起こさせる架橋剤を浸透させるための浸透剤を配合した薬液を原紙シート2に含浸させ、当該原紙シート2にプレス加工を施した後、浸透剤に架橋剤を配合した薬液を、当該原紙シート2を加工した加工シート7に含浸させることとなる。
従って、プレス加工によって原紙シート2に浸透剤を十分浸透させた状態で架橋剤を配合した薬液を、当該原紙シート2を加工した加工シート7に含浸させることができるので、加工シート7の内部まで架橋剤を浸透させ易くなる。これにより、加工シート7の表面付近に存する水溶性バインダーだけではなく、当該シートの内部に存する水溶性バインダーも架橋反応を起こすこととなるので、清掃・清拭作業に耐え得る紙の強度を十分に高めることができるようになる。
また、第1薬液含浸工程で浸透剤を配合した薬液が一度供給されているので、第2薬液含浸工程において供給される薬液のうち浸透剤の配合量を減らすことができ、コストが上がってしまうことを防止することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、上述のプレス加工工程(S2)において、エンボスロールによりプレス加工を行った場合、プレスロール以上に浸透剤を内部まで浸透させることができるので、第2薬液含浸工程(S4)において、加工シート7に対し架橋剤を配合した薬液を供給した際に、水溶性バインダーと加工シート7との架橋反応を促進することができる。また、エンボスロールとして、熱ロールを使用することで、エンボス形成を良好なものとすることが可能である。
【0039】
なお、エンボスパターンに限定はない。エンボス加工後の紙が嵩高になるものであればよい。特に凹凸状のスチールマッチエンボスは嵩高になりやすい。この凹凸状のスチールマッチエンボスでは、ロール表面に均一に且つ規則的に凹凸が存在し、2つのロール間で一方のロールの凸部ともう一方の凹部がかみあっている。この凹凸状のパターンは、凸部と凹部の繰り返しであり、凸部と凹部のピッチは3.5〜14.0mmが好ましく、更に5.0〜10.0mmが好ましい。また、凸部頂点と凹部頂点の差(溝深さ)は好ましくは1mm〜5mm、更に好ましくは1.0mm〜4.0mm、一層更に好ましくは1.2mm〜3mmであることが、水解性ウェットシートを嵩高にする観点から好ましい。
【0040】
凸部は、水解性ウェットシートの一面において、10cm×10cmの正方形の領域を考えた場合、該一面の何れの位置においても、該領域中に平均して50〜850個、特に100〜600個形成されていることが好ましい。凸部の個数をこの範囲内とすることにより、凸部と凹部とがバランスよく配されるので、本実施形態の水解性ウェットシートは、清掃用として使用される場合、汚れの除去性に一層優れたものとなる。
【0041】
また、本実施形態によれば、原紙シート2は、薬液が噴霧されて湿潤している。つまり、構成繊維間の水素結合が弱まっている。この理由によって、原紙シート2の構成繊維は、エンボスの凹凸パターンに沿って再配置できる状態になっている。従って、原紙シート2がエンボスロール間を通過すると、エンボスロールの凹凸パターンに合わせて繊維が再配置して、原料紙が凹凸賦形される。これと共にエンボスロールによる加熱によって湿潤した原紙シート2から水が乾燥除去される。この結果、再配置した繊維構造において、再度繊維間の水素結合、バインダーによる繊維間の再結合が構築される。このようにして得られた嵩高な水解性ウェットシートにおいては、特に凸部の側壁に破れが生じにくくなる。このようにして、凹凸形状の保形性に優れ、且つ強度低下の少ない水解性ウェットシートを得ることができる。さらに、先に述べた特定成分を含む水性薬剤を含浸された水解性ウェットシートにおいて、バインダーが一時的に不溶化あるいは膨潤が抑制されることによって、繊維間結合が維持されて凹凸形状が保持されることができるものとなり、且つその湿潤強度も良好なものとなる。
なお、原紙シート2をエンボスにより加熱する場合は、原料紙を十分に乾燥させ、繊維間の水素結合を保持する点から、エンボスロールの加熱温度は150〜250℃であることが好ましい。原紙シート2の乾燥の程度は原紙シート2の搬送速度等に依存する場合があるが、搬送速度が上がるとエンボスロールの熱だけでは充分に原料紙を乾燥することができなくなる。そこで、熱エンボスロールの径を大きくすることでシートの接触時間を長くして乾燥しやすくしたり、エンボスロールを覆うフードを設置し、フードの一部から所定温度に加熱された空気が供給され、更にその加熱された空気がフードの一部から排気として排出される構造にすることで乾燥能力をアップすることが可能である。エンボスロールで凹凸賦形したシートを簡単に剥離するためには、剥離剤を水と同時に添加することが好ましい。剥離剤としては、高級脂肪酸、ポリエチレンワックス、シリコンオイル、鉱物油、その他界面活性剤を配合した溶液等が挙げられる。
【0042】
また、本実施形態によれば、第1薬液含浸工程では、原紙シートの重量に対して5〜30重量%となるように浸透剤を配合した薬液を当該原紙シートに含浸させることとなる。
従って、浸透剤を原紙シートに浸透させることができる適度の量の薬液を付与するので、当該薬液が少なすぎることにより、浸透剤を原紙シートに十分に浸透させることができないといった不具合や、当該薬液が多すぎることにより、原紙シートの強度が低下してしまい、後の工程において原紙シートが破断してしまうといった不具合を防止することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、浸透剤として多価アルコール若しくはその誘導体、及びグリコール誘導体を用いているので、得られる水解性ウェットシートに保湿効果を与えることができる。
【0044】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記実施形態では、浸透成分Aとして、プロピレングリコールモノメチルエーテルを用いたが、その他のグリコール誘導体(エチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールドデシルエーテル等)を用いても良い。また、上記実施形態では、浸透成分Bとして、プロピレングリコールを用いたが、その他の多価アルコール又はその誘導体(モノブチルグリコールエーテル、ネオペンチルポリオールエステル等)を用いても良い。
【0045】
また、上記実施形態では、第1薬液含浸工程(S1)において、スプレーノズル3から浸透剤を配合した薬液を噴霧することによって、原紙シート2に当該薬液を浸透させるようにしたが、この方法に限らず、例えばグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式により当該薬液を原紙シート2に対して塗布するようにしても良い。また、第2薬液含浸工程(S4)においても、上記印刷方式により上記薬液を加工シート7に対して塗布するようにしても良い。
【0046】
また、上記実施形態では、第2薬液含浸工程(S4)において、上記薬液を加工シート7に対して噴霧した後、包装工程(S5)に移行するようにしたが、上記裁断・折り加工工程(S3)で裁断され、折り加工が施された各加工シート7,…を先に集積し、その集積体に対して上記薬液を噴霧するようにしても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 原反ロール
2 原紙シート
3 スプレーノズル
4 トップロール
5 ボトムロール
6 製品加工設備
7 加工シート
8 スプレーノズル
図1
図2