【実施例】
【0024】
次に、本実施形態の水解性ウェットシートの製造方法により製造された水解性ウェットシートの湿潤強度について評価した結果を表1を用いて説明する。
【0025】
<実施条件>
実施例1〜4では、第1薬液含浸工程(1段目)において、第1薬液含浸工程(1段目)と第2薬液含浸工程(2段目)とで供給される全薬液量のうち5%の薬液を原紙シート2に対して供給する。また、第2薬液含浸工程(2段目)では、当該全薬液量のうち95%の薬液を原紙シート2に対して供給する。ここで、浸透成分Aは、プロピレングリコールモノメチルエーテルであり、浸透成分Bは、プロピレングリコールである。第2薬液含浸工程(2段目)で供給される薬液には、浸透成分A、Bの他に架橋剤として硫酸亜鉛を全薬液重量に対して1重量%添加している。また、第2薬液含浸工程(2段目)で供給される薬液には、通常添加する薬液成分として、水性洗浄剤のほか、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤等の補助剤等を添加している。
【0026】
また、実施例5〜8では、第1薬液含浸工程(1段目)において、第1薬液含浸工程(1段目)と第2薬液含浸工程(2段目)とで供給される全薬液量のうち20%の薬液を原紙シート2に対して供給する。また、第2薬液含浸工程(2段目)では、当該全薬液量のうち80%の薬液を原紙シート2に対して供給する。
【0027】
また、実施例9〜12では、第1薬液含浸工程(1段目)において、第1薬液含浸工程(1段目)と第2薬液含浸工程(2段目)とで供給される全薬液量のうち50%の薬液を原紙シート2に対して供給する。また、第2薬液含浸工程(2段目)では、当該全薬液量のうち50%の薬液を原紙シート2に対して供給する。
【0028】
また、実施例13〜16では、第1薬液含浸工程(1段目)において、第1薬液含浸工程(1段目)と第2薬液含浸工程(2段目)とで供給される全薬液量のうち50%の薬液を原紙シート2に対して供給する。また、第2薬液含浸工程(2段目)では、当該全薬液量のうち50%の薬液を原紙シート2に対して供給する。ただし、実施例13〜16では、浸透成分A及びBのうち、浸透成分Aのみを配合した薬液を供給する。また、第2薬液含浸工程(2段目)で供給される薬液には、上記実施例1〜12と同様、水性洗浄剤のほか、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤等の補助剤等が添加されているものとする。
【0029】
実施例1、5、及び9では、原紙シート2の重量に対して4重量%の割合となるように浸透成分Aを配合する。また、原紙シート2の重量に対して2重量%の割合となるように浸透成分Bを配合する。
実施例2、6、及び10では、原紙シート2の重量に対して6重量%の割合となるように浸透成分Aを配合する。また、原紙シート2の重量に対して3重量%の割合となるように浸透成分Bを配合する。
実施例3、7、及び11では、原紙シート2の重量に対して8重量%の割合となるように浸透成分Aを配合する。また、原紙シート2の重量に対して4重量%の割合となるように浸透成分Bを配合する。
実施例4、8、及び12では、原紙シート2の重量に対して10重量%の割合となるように浸透成分Aを配合する。また、原紙シート2の重量に対して5重量%の割合となるように浸透成分Bを配合する。
実施例13では、原紙シート2の重量に対して4重量%の割合となるように浸透成分Aのみを配合する。
実施例14では、原紙シート2の重量に対して6重量%の割合となるように浸透成分Aのみを配合する。
実施例15では、原紙シート2の重量に対して8重量%の割合となるように浸透成分Aのみを配合する。
実施例16では、原紙シート2の重量に対して10重量%の割合となるように浸透成分Aのみを配合する。
【0030】
また、上記各実施例1〜16に対し、下記の比較例17〜20では、第1薬液含浸工程を行わず、第2薬液含浸工程でのみ薬液を付与、すなわち、第2薬液含浸工程において100%の薬液を供給することによってサンプルを試作して、これらのサンプルを用いて比較評価を行った。
【0031】
比較例17は、実施例1、5、9、及び13を比較対象としており、比較例17では、原紙シート2の重量に対して4重量%の割合となるように浸透成分Aを配合した。また、原紙シート2の重量に対して2重量%の割合となるように浸透成分Bを配合した。
比較例18は、実施例2、6、10、及び14を比較対象としており、比較例18では、原紙シート2の重量に対して6重量%の割合となるように浸透成分Aを配合した。また、原紙シート2の重量に対して3重量%の割合となるように浸透成分Bを配合した。
比較例19は、実施例3、7、11、及び15を比較対象としており、比較例19では、原紙シート2の重量に対して8重量%の割合となるように浸透成分Aを配合した。また、原紙シート2の重量に対して4重量%の割合となるように浸透成分Bを配合した。
比較例20は、実施例4、8、12、及び16を比較対象としており、比較例20では、原紙シート2の重量に対して10重量%の割合となるように浸透成分Aを配合した。また、原紙シート2の重量に対して5重量%の割合となるように浸透成分Bを配合した。
【0032】
<評価方法>
実施例及び比較例で得られた各水解性ウェットシートのMD及びCDの湿潤強度を測定した。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示す結果のとおり、実施例1、実施例5、実施例9、実施例13、及び比較例17を比較すると、MD及びCDの何れにおいても、実施例9の湿潤強度が最も高かった。一方、比較例17の湿潤強度は、比較対象である何れの実施例よりも低かった。
また、実施例2、実施例6、実施例10、実施例14、及び比較例18を比較すると、MD及びCDの何れにおいても、実施例10の湿潤強度が最も高かった。一方、比較例18の湿潤強度は、比較対象である何れの実施例よりも低かった。
また、実施例3、実施例7、実施例11、実施例15、及び比較例19を比較すると、MD及びCDの何れにおいても、実施例11の湿潤強度が最も高かった。一方、比較例19の湿潤強度は、比較対象である何れの実施例よりも低かった。
また、実施例4、実施例8、実施例12、実施例16、及び比較例20を比較すると、MD及びCDの何れにおいても、実施例12の湿潤強度が最も高かった。一方、比較例20の湿潤強度は、比較対象である何れの実施例よりも低かった。
【0035】
つまり、第1薬液含浸工程(1段目)において、浸透剤を配合した薬液を付与するとともに、第2薬液含浸工程(2段目)において、浸透剤に架橋剤を配合した薬液を付与することによって、第2薬液含浸工程(2段目)においてのみ上記薬液を付与する場合(比較例17〜20)に比べて、得られる水解性ウェットシートの湿潤強度が向上することが分かった。また、第1薬液含浸工程(1段目)において付与される薬液の比率を5%から50%に上げることにより、得られる水解紙の湿潤強度が更に向上することが分かった。
【0036】
また、各比較対象のなかで、湿潤強度が最も高かった実施例9、実施例10、実施例11、及び実施例12の浸透成分A及びBの配合量に着目してみると、浸透成分Aの配合割合を10重量%、浸透成分Bの配合割合を5%とした実施例12の湿潤強度が最も高くなることがわかった。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、水溶性バインダーに架橋反応を起こさせる架橋剤を浸透させるための浸透剤を配合した薬液を原紙シート2に含浸させ、当該原紙シート2にプレス加工を施した後、浸透剤に架橋剤を配合した薬液を、当該原紙シート2を加工した加工シート7に含浸させることとなる。
従って、プレス加工によって原紙シート2に浸透剤を十分浸透させた状態で架橋剤を配合した薬液を、当該原紙シート2を加工した加工シート7に含浸させることができるので、加工シート7の内部まで架橋剤を浸透させ易くなる。これにより、加工シート7の表面付近に存する水溶性バインダーだけではなく、当該シートの内部に存する水溶性バインダーも架橋反応を起こすこととなるので、清掃・清拭作業に耐え得る紙の強度を十分に高めることができるようになる。
また、第1薬液含浸工程で浸透剤を配合した薬液が一度供給されているので、第2薬液含浸工程において供給される薬液のうち浸透剤の配合量を減らすことができ、コストが上がってしまうことを防止することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、上述のプレス加工工程(S2)において、エンボスロールによりプレス加工を行った場合、プレスロール以上に浸透剤を内部まで浸透させることができるので、第2薬液含浸工程(S4)において、加工シート7に対し架橋剤を配合した薬液を供給した際に、水溶性バインダーと加工シート7との架橋反応を促進することができる。また、エンボスロールとして、熱ロールを使用することで、エンボス形成を良好なものとすることが可能である。
【0039】
なお、エンボスパターンに限定はない。エンボス加工後の紙が嵩高になるものであればよい。特に凹凸状のスチールマッチエンボスは嵩高になりやすい。この凹凸状のスチールマッチエンボスでは、ロール表面に均一に且つ規則的に凹凸が存在し、2つのロール間で一方のロールの凸部ともう一方の凹部がかみあっている。この凹凸状のパターンは、凸部と凹部の繰り返しであり、凸部と凹部のピッチは3.5〜14.0mmが好ましく、更に5.0〜10.0mmが好ましい。また、凸部頂点と凹部頂点の差(溝深さ)は好ましくは1mm〜5mm、更に好ましくは1.0mm〜4.0mm、一層更に好ましくは1.2mm〜3mmであることが、水解性ウェットシートを嵩高にする観点から好ましい。
【0040】
凸部は、水解性ウェットシートの一面において、10cm×10cmの正方形の領域を考えた場合、該一面の何れの位置においても、該領域中に平均して50〜850個、特に100〜600個形成されていることが好ましい。凸部の個数をこの範囲内とすることにより、凸部と凹部とがバランスよく配されるので、本実施形態の水解性ウェットシートは、清掃用として使用される場合、汚れの除去性に一層優れたものとなる。
【0041】
また、本実施形態によれば、原紙シート2は、薬液が噴霧されて湿潤している。つまり、構成繊維間の水素結合が弱まっている。この理由によって、原紙シート2の構成繊維は、エンボスの凹凸パターンに沿って再配置できる状態になっている。従って、原紙シート2がエンボスロール間を通過すると、エンボスロールの凹凸パターンに合わせて繊維が再配置して、原料紙が凹凸賦形される。これと共にエンボスロールによる加熱によって湿潤した原紙シート2から水が乾燥除去される。この結果、再配置した繊維構造において、再度繊維間の水素結合、バインダーによる繊維間の再結合が構築される。このようにして得られた嵩高な水解性ウェットシートにおいては、特に凸部の側壁に破れが生じにくくなる。このようにして、凹凸形状の保形性に優れ、且つ強度低下の少ない水解性ウェットシートを得ることができる。さらに、先に述べた特定成分を含む水性薬剤を含浸された水解性ウェットシートにおいて、バインダーが一時的に不溶化あるいは膨潤が抑制されることによって、繊維間結合が維持されて凹凸形状が保持されることができるものとなり、且つその湿潤強度も良好なものとなる。
なお、原紙シート2をエンボスにより加熱する場合は、原料紙を十分に乾燥させ、繊維間の水素結合を保持する点から、エンボスロールの加熱温度は150〜250℃であることが好ましい。原紙シート2の乾燥の程度は原紙シート2の搬送速度等に依存する場合があるが、搬送速度が上がるとエンボスロールの熱だけでは充分に原料紙を乾燥することができなくなる。そこで、熱エンボスロールの径を大きくすることでシートの接触時間を長くして乾燥しやすくしたり、エンボスロールを覆うフードを設置し、フードの一部から所定温度に加熱された空気が供給され、更にその加熱された空気がフードの一部から排気として排出される構造にすることで乾燥能力をアップすることが可能である。エンボスロールで凹凸賦形したシートを簡単に剥離するためには、剥離剤を水と同時に添加することが好ましい。剥離剤としては、高級脂肪酸、ポリエチレンワックス、シリコンオイル、鉱物油、その他界面活性剤を配合した溶液等が挙げられる。
【0042】
また、本実施形態によれば、第1薬液含浸工程では、原紙シートの重量に対して5〜30重量%となるように浸透剤を配合した薬液を当該原紙シートに含浸させることとなる。
従って、浸透剤を原紙シートに浸透させることができる適度の量の薬液を付与するので、当該薬液が少なすぎることにより、浸透剤を原紙シートに十分に浸透させることができないといった不具合や、当該薬液が多すぎることにより、原紙シートの強度が低下してしまい、後の工程において原紙シートが破断してしまうといった不具合を防止することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、浸透剤として多価アルコール若しくはその誘導体、及びグリコール誘導体を用いているので、得られる水解性ウェットシートに保湿効果を与えることができる。
【0044】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記実施形態では、浸透成分Aとして、プロピレングリコールモノメチルエーテルを用いたが、その他のグリコール誘導体(エチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールドデシルエーテル等)を用いても良い。また、上記実施形態では、浸透成分Bとして、プロピレングリコールを用いたが、その他の多価アルコール又はその誘導体(モノブチルグリコールエーテル、ネオペンチルポリオールエステル等)を用いても良い。
【0045】
また、上記実施形態では、第1薬液含浸工程(S1)において、スプレーノズル3から浸透剤を配合した薬液を噴霧することによって、原紙シート2に当該薬液を浸透させるようにしたが、この方法に限らず、例えばグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式により当該薬液を原紙シート2に対して塗布するようにしても良い。また、第2薬液含浸工程(S4)においても、上記印刷方式により上記薬液を加工シート7に対して塗布するようにしても良い。
【0046】
また、上記実施形態では、第2薬液含浸工程(S4)において、上記薬液を加工シート7に対して噴霧した後、包装工程(S5)に移行するようにしたが、上記裁断・折り加工工程(S3)で裁断され、折り加工が施された各加工シート7,…を先に集積し、その集積体に対して上記薬液を噴霧するようにしても良い。