特許第6496661号(P6496661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6496661食品用日持ち向上剤および食品の日持ち向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496661
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】食品用日持ち向上剤および食品の日持ち向上方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/3508 20060101AFI20190325BHJP
   A23L 3/3526 20060101ALI20190325BHJP
   A23L 3/3562 20060101ALI20190325BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20190325BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20190325BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20190325BHJP
   A23L 13/60 20160101ALI20190325BHJP
   A23L 9/20 20160101ALI20190325BHJP
【FI】
   A23L3/3508
   A23L3/3526 501
   A23L3/3562
   A23L17/00 101F
   A23L35/00
   A23G3/00
   A23L13/60 A
   A23L9/20
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-519847(P2015-519847)
(86)(22)【出願日】2014年5月26日
(86)【国際出願番号】JP2014063837
(87)【国際公開番号】WO2014192693
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年1月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-114375(P2013-114375)
(32)【優先日】2013年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516089979
【氏名又は名称】株式会社ウエノフードテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】金城 裕介
(72)【発明者】
【氏名】栗山 義顕
(72)【発明者】
【氏名】古川 陽二郎
(72)【発明者】
【氏名】野村 正史
(72)【発明者】
【氏名】カシデツ・ラーウプアン
(72)【発明者】
【氏名】ソラコン・チャーウィリヤピーシャー
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−209268(JP,A)
【文献】 特開2012−010657(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102524910(CN,A)
【文献】 特開2007−054066(JP,A)
【文献】 藤原 宏子,加工食品のおいしさ保持と日持向上剤,月刊フードケミカル, 2012, vol.6, p.34-39
【文献】 小堺 博,微生物管理における食品添加物の有効利用,月刊フードケミカル, 2006, vol.22, no.11, p.35-38
【文献】 ジャパンフードサイエンス, 2012, Vol.51, No.8, p.23-29
【文献】 食品の包装, 1992, Vol.24, No.1, p.18-36
【文献】 Czech J. Food Sci., 2011, Vol.29, No.2, p.137-144
【文献】 【上野製薬補足資料】新食品表示制度についての意見交換,2012年11月22日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23G
CAplus/FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、安息香酸ナトリウムおよびグリシンからなる群より選択される1種以上の静菌性物質と、イヌリンを含有することを特徴とする食品用日持ち向上剤であって、静菌性物質の合計1重量部に対して、イヌリン0.01〜5重量部を含有する、食品に添加して用いられる食品用日持ち向上剤。
【請求項2】
静菌性物質であるナイシンと、イヌリンを含有することを特徴とする食品用日持ち向上剤であって、ナイシン1重量部に対して、イヌリン75〜200重量部を含有する、食品に添加して用いられる食品用日持ち向上剤。
【請求項3】
静菌性物質がナイシンAである、請求項に記載の食品用日持ち向上剤。
【請求項4】
イヌリンが、フルクトースの平均重合度3〜50のイヌリンである請求項1〜のいずれか一項に記載の食品用日持ち向上剤。
【請求項5】
さらにpH調整剤を含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の食品用日持ち向上剤。
【請求項6】
pH調整剤が酢酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、コハク酸およびアジピン酸、並びにこれらのアルカリ金属塩(酢酸塩を除く)よりなる群から選択される1種以上の物質である、請求項に記載の食品用日持ち向上剤。
【請求項7】
静菌性物質の合計1重量部またはナイシン1重量部に対して、pH調整剤0.01〜30重量部を含有する請求項またはに記載の食品用日持ち向上剤。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の食品用日持ち向上剤を食品に添加することを特徴とする食品の日持ち向上方法。
【請求項9】
請求項1に記載の食品用日持ち向上剤を、食品全量に対する1種以上の静菌性物質の合計量が0.01〜10重量%となるよう食品に添加する、請求項に記載の食品の日持ち向上方法。
【請求項10】
請求項またはに記載の食品用日持ち向上剤を、食品全量に対する静菌性物質の量が0.000001〜0.1重量%となるよう食品に添加する、請求項に記載の食品の日持ち向上方法。
【請求項11】
請求項1〜のいずれかに記載の食品用日持ち向上剤を含有する食品。
【請求項12】
水産製品、フライ食品、食肉惣菜、和菓子または洋菓子のいずれかである、請求項11に記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、食品用日持ち向上剤ならびに食品の日持ち向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から加工食品製造の分野では、食品の保存性を向上させるために有機酸、有機酸塩、アミノ酸等を併用した食品保存剤が使用されている。これら食品保存剤は、保存効果、安全性、コストなど様々な観点から、対象とする食品に応じた成分が選択されている。その中でも酢酸ナトリウムやグリシンは、比較的強い静菌力を有し、安全且つ低コストであることから、幅広く利用されている成分である。
【0003】
食品中において酢酸ナトリウムの静菌力を発揮させるためには、複数の有機酸や有機酸塩を併用し、食品のpHが酸性側になるように調整する必要がある。酢酸ナトリウムは、それ自体は酢酸等に比べて酸味が穏やかであるものの、酸性pHへの調整により、酢酸ナトリウムから酢酸が遊離し、強い酸味や苦味が生じ得る。このため、食品への酢酸ナトリウムの添加量を増やすと商品価値が低下し得る。
【0004】
グリシン等のアミノ酸は、甘味を有しており、また、食品に含まれる還元性の糖質と共に加熱するとメイラード反応により褐色物質を生成し、食品の色調を変化させ得るという性質を有する。
【0005】
ソルビン酸、プロピオン酸、安息香酸およびこれらの塩、ナイシン等は、細菌、カビ、酵母等に対して抗菌作用を示すため、魚肉練り製品、食肉製品、チーズ類、飲料等に対する保存料として利用されている。これらの保存料は、十分な試験に基づいて明確な使用基準が定められている指定食品添加物である。
【0006】
上記のような背景から、ソルビン酸、プロピオン酸、安息香酸およびこれらの塩、酢酸ナトリウム、アミノ酸、ナイシン等を含有し、酸味や苦味、あるいは色調の変化が抑制された食品保存剤が提案されている。
【0007】
特許文献1には、酢酸ナトリウム、酢酸およびジグリセリンモノ脂肪酸エステルを含有する食品の変質防止剤が提案されている。ジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、脂肪酸由来の独特の臭いがあり、食品の風味を損なうおそれがある。
【0008】
特許文献2には、酢酸ナトリウム、酢酸、食酢、粉末酢酸等の酢酸成分とベタインを併用する食品用静菌組成物が提案されている。ベタインは独特の甘味を有し、多く添加すると食品本来の風味が損なわれる。また、ベタインは加熱により着色を生じる性質を有する。
【0009】
特許文献3には、1種以上のアミノ酸またはその塩、1種以上の有機酸またはその塩、および酢酸ナトリウムを含有することを特徴とする調味料組成物が提案されている。
【0010】
特許文献4には、ポリリジンと、ソルビン酸もしくは安息香酸またはそれらの塩とを有効成分とする食品保存剤が提案されている。該食品保存剤においては、それぞれの成分の有効pHが異なるため、これらの有効成分の併用による抗菌効果の改善は不十分である。
【0011】
特許文献5には、ナイシン、HLBが10以上であるショ糖脂肪酸エステルおよびリゾチームを含有することを特徴とする保存剤が提案されている。ショ糖脂肪酸エステルは脂肪酸由来の独特の臭いがあり、食品の風味を損なう可能性がある。
【0012】
食品の味質や色調に影響を与えずに食品の日持ちを改善する食品用日持ち向上剤が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−221065号公報
【特許文献2】特開2001−346559号公報
【特許文献3】特開2002−325549号公報
【特許文献4】特開平7−67596号公報
【特許文献5】特開2012−010657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本願は、食品の味質や色調に影響を与えずに、高い日持ち向上効果を発揮する食品用日持ち向上剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、食品用日持ち向上剤において特定の静菌性物質とイヌリンを共存させることにより、食品の味質や色調の変化を最小限に抑えつつ、日持ち向上効果を増大させ得ることを見出した。
【0016】
本願は、酢酸塩、ソルビン酸およびその塩、プロピオン酸およびその塩、安息香酸およびその塩、アミノ酸、およびナイシンからなる群より選択される1種以上の静菌性物質、ならびにイヌリンを含有することを特徴とする食品用日持ち向上剤(以下、「本願の日持ち向上剤」とも称する)を提供する。本願はまた、前記食品用日持ち向上剤を食品に添加することを特徴とする食品の日持ち向上方法(以下、「本願の日持ち向上方法」とも称する)、および前記食品用日持ち向上剤が添加された食品を提供する。
本願はまた、酢酸塩、ソルビン酸およびその塩、プロピオン酸およびその塩、安息香酸およびその塩、アミノ酸、およびナイシンからなる群より選択される1種以上の静菌性物質ならびにイヌリンを含有する組成物の食品用日持ち向上剤としての使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(カスタードクリーム)を示す図である。
図2】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(ハンバーグ)を示す図である。
図3】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(ハンバーグ)を示す図である。
図4】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(蒲鉾)を示す図である。
図5】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(カスタードクリーム)を示す図である。
図6】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(カスタードクリーム)を示す図である。
図7】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(カスタードクリーム)を示す図である。
図8】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(カスタードクリーム)を示す図である。
図9】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(カスタードクリーム)を示す図である。
図10】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(カスタードクリーム)を示す図である。
図11】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(カスタードクリーム)を示す図である。
図12】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(カスタードクリーム)を示す図である。
図13】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(ハンバーグ)を示す図である。
図14】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(ハンバーグ)を示す図である。
図15】本願の日持ち向上剤を用いた食品保存試験の結果(ソーセージ)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願の日持ち向上剤に含有させる静菌性物質は、酢酸塩、ソルビン酸およびその塩、プロピオン酸およびその塩、安息香酸およびその塩、アミノ酸、ならびにナイシンからなる群より選択される1種以上の物質である。
【0019】
本願において静菌性物質として用いる酢酸塩、ソルビン酸およびその塩、プロピオン酸およびその塩、安息香酸およびその塩は、食品に利用可能なものであればよい。これらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が例示され、無水酢酸ナトリウム、結晶酢酸ナトリウム(酢酸ナトリウム三水和物)、無水酢酸カリウム、結晶酢酸カルシウム(酢酸カルシウム一水和物)、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム等を用いることができる。本願において使用する酢酸塩、ソルビン酸およびその塩、プロピオン酸およびその塩、安息香酸およびその塩は市販のものであっても、合成によって得たものであってもよい。これらの静菌性物質のうち、水に対する溶解性、入手のし易さ、およびコストの点から酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、または安息香酸ナトリウムを用いることが好ましい。これらの静菌性物質は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
静菌性物質として酢酸塩を用いる場合、本願の日持ち向上剤における酢酸塩の量は、日持ち向上剤全量に対し、10〜95重量%程度であることが好ましく、20〜90重量%程度であることがより好ましく、30〜85重量%程度であることがさらに好ましい。酢酸塩の量が日持ち向上剤全量に対し10重量%未満である場合には、日持ち向上効果が不十分となる傾向にあり、酢酸塩の量が日持ち向上剤全量に対し95重量%を超える場合には酸味および苦味の抑制が不十分となる傾向がある。
【0021】
静菌性物質としてソルビン酸および/またはその塩を用いる場合、本願の日持ち向上剤におけるソルビン酸および/またはその塩の量は、日持ち向上剤全量に対し、1〜90重量%程度であることが好ましく、10〜70重量%程度であることがより好ましく、25〜50重量%程度であることがさらに好ましい。ソルビン酸および/またはその塩の量が日持ち向上剤全量に対し90重量%を超える場合にはイヌリンによる静菌効果の延長が不十分となる傾向がある。
【0022】
静菌性物質としてプロピオン酸および/またはその塩を用いる場合、本願の日持ち向上剤におけるプロピオン酸および/またはその塩の量は、日持ち向上剤全量に対し、1〜90重量%程度であることが好ましく、10〜70重量%程度であることがより好ましく、25〜50重量%程度であることがさらに好ましい。プロピオン酸および/またはその塩の量が日持ち向上剤全量に対し90重量%を超える場合にはイヌリンによる静菌効果の延長が不十分となる傾向がある。
【0023】
静菌性物質として安息香酸および/またはその塩を用いる場合、本願の日持ち向上剤における安息香酸および/またはその塩の量は、日持ち向上剤全量に対し、1〜90重量%程度であることが好ましく、10〜70重量%程度であることがより好ましく、25〜50重量%程度であることがさらに好ましい。安息香酸および/またはその塩の量が日持ち向上剤全量に対し90重量%を超える場合にはイヌリンによる静菌効果の延長が不十分となる傾向がある。
【0024】
なお、本明細書において、酸とその塩を併用する場合、「XX酸および/またはその塩の量」とは、XX酸およびその塩の合計量を意味するものとする。
【0025】
本願において用いるアミノ酸としては、アラニン、グリシン、アルギニン等が例示される。食品に添加した際の日持ち向上効果に優れ、食品の味質に与える影響が少ない点でグリシンが好ましい。アミノ酸は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
静菌性物質としてアミノ酸を用いる場合、本願の日持ち向上剤におけるアミノ酸の量は、日持ち向上剤全量に対し、10〜95重量%程度であることが好ましく、15〜90重量%程度であることがより好ましく、20〜85重量%程度であることがさらに好ましい。アミノ酸の量が日持ち向上剤全量に対し10重量%未満である場合には、日持ち向上効果が不十分となる傾向にあり、アミノ酸の量が日持ち向上剤全量に対し95重量%を超える場合には該アミノ酸に特異的な甘味が強くなる傾向がある。
【0027】
静菌性物質として酢酸塩およびアミノ酸を併用する場合、酢酸塩およびアミノ酸の合計量が、本願の日持ち向上剤全量に対し、50〜99重量%程度であることが好ましく、55〜97重量%程度であることがより好ましく、60〜95重量%程度であることがさらに好ましい。
【0028】
本願において用いるナイシンとしては、ナイシンA、ナイシンZ、ナイシンQ、ナイシンF、ナイシンU等が例示される。食品に添加した際の日持ち向上効果に優れ、食品の味質に与える影響が少ない点でナイシンAが好ましい。ナイシンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
静菌性物質としてナイシンを用いる場合、本願の日持ち向上剤におけるナイシンの量は、日持ち向上剤全量に対し、0.1〜10重量%程度であることが好ましく、0.3〜5重量%程度であることがより好ましく、0.5〜3重量%程度であることがさらに好ましい。ナイシンの量が日持ち向上剤全量に対し10重量%を超える場合にはイヌリンによる静菌効果の延長が不十分となる傾向がある。
【0030】
静菌性物質として酢酸塩、アミノ酸およびナイシンを併用する場合、酢酸塩およびアミノ酸の合計量は、本願の日持ち向上剤全量に対し、好ましくは50〜99重量%程度、より好ましくは55〜97重量%程度、さらに好ましくは60〜95重量%程度であり、且つ、ナイシンの量は、本願の日持ち向上剤全量に対し、好ましくは0.1〜5重量%程度、より好ましくは0.2〜1重量%程度、さらに好ましくは0.25〜0.75重量%程度である。
【0031】
好ましい態様において、本願の日持ち向上剤に含有させる静菌性物質は、(A)酢酸塩、ソルビン酸およびその塩、プロピオン酸およびその塩、安息香酸およびその塩、およびアミノ酸からなる群より選択される1種以上の物質、(B)ナイシン、または(C)酢酸塩、ソルビン酸およびその塩、プロピオン酸およびその塩、安息香酸およびその塩、およびアミノ酸からなる群より選択される1種以上の物質とナイシンとの組合せである。
【0032】
本願の食品用日持ち向上剤は、上記静菌性物質に加えてイヌリンを含有する。イヌリンは、[グルコースα1−(β2フルクトース1)n−β2フルクトース]と表すことができる還元性のない直鎖構造を有する重合度3乃至60程度の可溶性食物繊維である。イヌリンは、キクイモ、チコリー、ゴボウ、タマネギ等の植物に含まれる成分であり、ショ糖にイヌリン合成酵素(各種のフルクトシル転移酵素)を作用させて合成することもできる。本願においては、植物から抽出されたイヌリンおよび合成によって得られたイヌリンのいずれを用いてもよい。イヌリンの形態は、キクイモ等の植物から水やその他の溶媒により抽出された粗イヌリン、粗イヌリンを精製した液体状イヌリン、液体状イヌリンを噴霧乾燥等により粉末化した粉末状イヌリン等であってもよい。
【0033】
本願の食品用日持ち向上剤に含有させるイヌリンは、フルクトースの平均重合度が3〜50であるものが好ましく、5〜40であるものがより好ましく、7〜30であるものがさらに好ましい。平均重合度が3未満である場合、酸味および苦味の抑制が不十分となる傾向があり、平均重合度が50を超える場合、食品への分散が不良となり、平均重合度3未満の場合と同様に酸味および苦味の抑制が不十分となる傾向がある。
【0034】
酢酸塩、ソルビン酸およびその塩、プロピオン酸およびその塩、安息香酸およびその塩、およびアミノ酸からなる群より選択される1種以上の静菌性物質を用いる場合、本願の食品用日持ち向上剤におけるイヌリンの量は、該日持ち向上剤に含まれる該1種以上の静菌性物質の合計1重量部に対し、0.01〜50重量部であることが好ましく、0.05〜30重量部であることがより好ましく、0.1〜20重量部であることがさらに好ましく、0.1〜5重量部であることがより一層好ましい。イヌリンの量が静菌性物質の合計1重量部に対し0.01重量部未満の場合には、酸味および苦味の抑制効果が不十分となる傾向があり、静菌性物質の合計1重量部に対し50重量部を超える場合には、静菌効果が不十分となる傾向がある。
【0035】
静菌性物質としてナイシンを用いる場合、本願の食品用日持ち向上剤におけるイヌリンの量は、該日持ち向上剤に含まれるナイシン1重量部に対し、1〜1000重量部であることが好ましく、25〜500重量部であることがより好ましく、50〜250重量部であることがさらに好ましく、75〜200重量部であることがより一層好ましい。イヌリンの量がナイシン1重量部に対し1重量部未満の場合には、酸味および苦味の抑制効果が不十分となる傾向があり、ナイシン1重量部に対し1000重量部を超える場合には、静菌効果が不十分となり、食品本来の味へ影響が出る傾向がある。
【0036】
酢酸塩、ソルビン酸およびその塩、プロピオン酸およびその塩、安息香酸およびその塩、およびアミノ酸からなる群より選択される1種以上の静菌性物質とナイシンを併用する場合、本願の食品用日持ち向上剤におけるイヌリンの量は、以下の(1)および/または(2)を満たすことが好ましい:
(1)該1種以上の静菌性物質の合計1重量部に対し0.01〜50重量部、好ましくは0.05〜30重量部、より好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部、および/または
(2)ナイシン1重量部に対し1〜1000重量部、好ましくは25〜500重量部、より好ましくは50〜250重量部、さらに好ましくは75〜200重量部。
【0037】
本願の食品用日持ち向上剤は、上記静菌性物質およびイヌリンに加えて、さらにpH調整剤を含有するものであってもよい。例えば、静菌性物質として酢酸塩、ソルビン酸およびその塩、プロピオン酸およびその塩、ならびに安息香酸およびその塩からなる群より選択される1種以上の物質を用いる場合、本願の食品用日持ち向上剤にpH調整剤を含有させることが好ましい。一つの態様において、酢酸塩またはソルビン酸塩を含有する本願の食品用日持ち向上剤を添加した後の食品のpHは、7未満であることが好ましく、2〜6.7であることがより好ましく、4〜6.5であることがさらに好ましい。また、別の態様において、プロピオン酸塩または安息香酸塩を含有する本願の食品用日持ち向上剤を添加した後の食品のpHは、7未満であることが好ましく、4.5〜6.5であることがより好ましく、5〜6であることがさらに好ましい。さらに、静菌性物質としてアミノ酸またはナイシンを選択した場合においては、対象とする食品の種類や併用する他の静菌性物質の種類に応じて、pH調整剤を含有させてもよい。日持ち向上剤添加後の食品のpHは、該日持ち向上剤中のpH調整剤の量や、食品に対する該日持ち向上剤の添加量を増減させることにより、適宜調整することができる。
【0038】
本願の食品用日持ち向上剤に含有させ得るpH調整剤は、食品に対して使用可能なものであればよく、特に限定はされない。pH調整剤としては、酢酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、コハク酸およびアジピン酸、並びにこれらのアルカリ金属塩等が例示される(但し、酢酸塩は除く)。その中でもフマル酸、フマル酸一ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸が食品保存効果の点で好ましい。これらpH調整剤は、対象食品の味質や風味に合わせて、単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0039】
本願の食品用日持ち向上剤におけるpH調整剤の量は、該日持ち向上剤に含まれる1種以上の静菌性物質の合計1重量部に対して、0.01〜30重量部であることが好ましく、0.05〜20重量部であることがより好ましく、0.1〜10重量部であることがさらに好ましい。静菌性物質として酢酸塩、ソルビン酸塩、プロピオン酸塩および安息香酸塩からなる群より選択される1種以上の物質を含有する本願の食品用日持ち向上剤においては、pH調整剤の量が該静菌性物質の合計1重量部に対し0.01重量部未満の場合に食品保存効果が不十分となるおそれがある。pH調整剤の量が静菌性物質の合計1重量部に対し30重量部を超える場合は日持ち向上剤の酸味および苦味の抑制が不十分となり、該日持ち向上剤を添加した食品の味質や風味に影響を及ぼすおそれがある。
【0040】
本願の食品用日持ち向上剤は、食品の味質や風味に影響を与えない範囲で、さらにリン酸塩、賦形剤、増粘剤、乳化剤等の成分を含有してもよい。これら成分の量は、食品用日持ち向上剤全量に対して0.1〜30重量%程度であることが好ましい。
【0041】
本願の食品用日持ち向上剤の具体例としては、例えば、酢酸ナトリウム1重量部、イヌリン0.1重量部およびフマル酸0.1重量部を含有する食品用日持ち向上剤;酢酸ナトリウム1重量部、イヌリン0.2重量部、フマル酸0.1重量部およびデキストリン0.1重量部を含有する食品用日持ち向上剤;グリシン1重量部、イヌリン0.2重量部およびフマル酸0.1重量部を含有する食品用日持ち向上剤;酢酸ナトリウムおよびグリシン合計1重量部、イヌリン0.1重量部およびフマル酸0.2重量部を含有する食品用日持ち向上剤;ソルビン酸カリウム1重量部、イヌリン1重量部およびフマル酸1重量部を含有する食品用日持ち向上剤;安息香酸ナトリウム1重量部、イヌリン2重量部、フマル酸1重量部およびデキストリン1重量部を含有する食品用日持ち向上剤;プロピオン酸カルシウム1重量部、イヌリン0.3重量部およびフマル酸0.3重量部を含有する食品用日持ち向上剤;ナイシン1重量部およびイヌリン99重量部を含有する食品用日持ち向上剤等が例示される。
【0042】
本願の食品用日持ち向上剤を得るために特別な操作は必要ない。酢酸塩、ソルビン酸およびその塩、プロピオン酸およびその塩、安息香酸およびその塩、アミノ酸、およびナイシンからなる群より選択される1種以上の静菌性物質ならびにイヌリンを、所望によりpH調整剤と共に、適宜混合することにより該日持ち向上剤を調製することができる。調製後の日持ち向上剤は、ダブルコーン型ミキサー、ナウター型ミキサー、パドル式攪拌機、ホモミキサー等、当該技術分野において公知の方法ないし装置等を用いて粉末状あるいは液体状の製剤とすることができる。
【0043】
本願の日持ち向上方法において、本願の食品用日持ち向上剤を食品に添加する際に特別な操作は必要ない。例えば粉末状あるいは液体状の該日持ち向上剤を食品に添加し、所望により混合すればよい。加工食品に添加する場合は、その原材料と共に該日持ち向上剤を混合すれば良い。食品に対する本願の食品用日持ち向上剤の添加量は特に限定されず、該日持ち向上剤の成分組成、対象とする食品の種類、必要とする日持ち向上効果、味質への影響等に応じて適宜決定することができる。
一つの好ましい態様において、酢酸塩、ソルビン酸およびその塩、プロピオン酸およびその塩、安息香酸およびその塩、ならびにアミノ酸からなる群より選択される1種以上の静菌性物質を含有する本願の食品用日持ち向上剤は、該日持ち向上剤添加後の食品における該1種以上の静菌性物質の合計量が、該食品全量に対し0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%となるよう、食品に添加される。例えば、静菌性物質として酢酸ナトリウムを50〜80重量%含む日持ち向上剤であれば、食品全量に対し、0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%、より好ましくは0.3〜2重量%の量で添加すればよい。
また、別の態様において、ナイシンを含有する本願の食品用日持ち向上剤は、該日持ち向上剤添加後の食品におけるナイシンの量が、該食品全量に対し0.000001〜0.1重量%、好ましくは0.000005〜0.05重量%、より好ましくは0.00001〜0.03重量%となるよう、食品に添加される。例えば、静菌性物質としてナイシンAを0.01〜1重量%含む日持ち向上剤であれば、食品全量に対し、0.1〜3重量%、好ましくは0.3〜2重量%、より好ましくは0.5〜1重量%の量で添加すればよい。
【0044】
本願の食品用日持ち向上剤および食品の日持ち向上方法を適用することが可能な食品は特に限定されない。例えば、本願の食品用日持ち向上剤および食品の日持ち向上方法は、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、魚肉ハム、ソーセージなどの水産練り製品類、ハム、ソーセージ、ベーコン、ハンバーグ、ミンチボールなどの畜肉製品類、コロッケ、トンカツ、フライドチキン、魚フライ、唐揚げなどのフライ製品類、チャーハン、炊き込み御飯等の米飯類、中華麺、パスタ、うどん、そば等の麺類、ポテトサラダ、餃子、シュウマイ、卵焼き、煮物、和え物等の惣菜類、カレーパンや中華饅頭の詰め物、サンドイッチの具材等のフィリング類、カスタードクリーム、ホイップクリーム、フラワーペースト等のクリーム類、カステラ、スポンジケーキ、饅頭、餡等の菓子類、ジャム等の果実加工品類、プロセスチーズ等のチーズ類、果実飲料、野菜飲料、炭酸飲料、茶飲料等の清涼飲料類などの種々の食品に使用することが可能である。
【0045】
以下、実施例により本願の実施態様をさらに説明する。
【実施例】
【0046】
実施例1〜3および比較例1
カスタードクリームの製造
全卵51gを十分に攪拌し、砂糖75gおよび篩っておいたコーンスターチ24gを加え、さらに攪拌した後、65℃に温めた牛乳300gを攪拌しながら加え、混合物を得た。次いで表1に記載される組成の日持ち向上剤を、得られた混合物全重量に対して1重量%の量で添加した後、攪拌しながら85℃まで加熱し、85℃で2分間攪拌した。加熱を止め、バニラエッセンスを0.5g添加した後、1分間攪拌してカスタードクリームを得た。得られたカスタードクリームは、氷冷後、以下の試験に供した。
【0047】
【表1】
【0048】
官能評価
上記の通りに製造したカスタードクリームを用いて、エグ味(酸味+苦味)について官能評価を実施した。官能評価は、比較例1の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームを対照として13名のパネラーにより下記の評価基準で評価した。

【0049】
実施例1〜3の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームは、対照に比べ、エグ味(酸味+苦味)が抑制されていた。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
保存試験
上記と同様に実施例1〜3および比較例1の日持ち向上剤を添加して製造したカスタードクリーム各300gを25℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
【0052】
実施例1〜3の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームは、20日間経過後も一般細菌の増殖が抑制されており、比較例1の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームに比べ、保存性が大幅に改善されていた。結果を表3および図1に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
実施例4および比較例2
ハンバーグの製造
ハンバーグヘルパー(ハウス食品製)23gに牛乳120gおよび合挽き肉250gを混合した。次いで表4に記載される組成の日持ち向上剤を、得られた混合物全重量に対して0.5重量%の量で添加し、十分に混合した後、成型し(約20g/個)、予熱したスチームコンベンションオーブン(タニコー製)にて、230℃で4分間焼成し、ハンバーグを得た。得られたハンバーグは室温にて冷却後、以下の試験に供した。
【0055】
【表4】
【0056】
官能評価
上記の通りに製造したハンバーグを用いて、酸味(舌への刺激性)について官能評価を実施した。官能評価は、比較例2の日持ち向上剤を添加したハンバーグを対照として13名のパネラーにより下記の評価基準で評価した。

【0057】
実施例4の日持ち向上剤を添加したハンバーグは、対照に比べ、酸味(舌への刺激性)が抑制されていた。結果を表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
保存試験
上記と同様に実施例4および比較例2の日持ち向上剤を添加して製造したハンバーグを25℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
【0060】
実施例4の日持ち向上剤を添加したハンバーグは、比較例2の日持ち向上剤を添加したハンバーグに比べ、一般細菌の増殖が抑制されていた。結果を表6および図2に示す。
【0061】
【表6】
【0062】
実施例5および比較例3
ハンバーグの製造
ハンバーグヘルパー(ハウス食品製)23gに牛乳120gおよび合挽き肉250gを混合した。次いで表7に記載される組成の日持ち向上剤を、得られた混合物全重量に対して0.5重量%の量で添加し、十分に混合した後、成型し(約20g/個)、予熱したスチームコンベンションオーブン(タニコー製)にて、230℃で4分間焼成し、ハンバーグを得た。得られたハンバーグは室温にて冷却後、以下の試験に供した。
【0063】
【表7】
【0064】
保存試験
上記の通りに製造したハンバーグを25℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
【0065】
実施例5の日持ち向上剤を添加したハンバーグは、比較例3の日持ち向上剤を添加したハンバーグに比べ、一般細菌の増殖が抑制されていた。結果を表8および図3に示す。
【0066】
【表8】
【0067】
実施例6および比較例4
蒲鉾の製造
解凍した冷凍すり身200gをフードプロセッサーにて30秒間処理した後、食塩を5g添加し、さらにフードプロセッサーで30秒間処理した。次いで、旨味調味料2g、砂糖6g、および味醂6gを加え、フードプロセッサーにて30秒間処理し、氷水60gを加えた澱粉10gと共に、表9に示す組成の日持ち向上剤を、すり身全重量に対して0.5重量%の量で添加し、さらにフードプロセッサーで30秒間処理した。得られたすり身を10gずつ秤量し、無菌袋に入れて密封し、85℃のウォーターバスで20分間加熱し、蒲鉾を得た。得られた蒲鉾は、氷水中で急冷した後、以下の試験に供した。
【0068】
【表9】
【0069】
保存試験
上記の通りに製造した蒲鉾にBacillus subtilis IAM1069株の芽胞を2.2CFU/gになるよう植菌した後、15℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を計測した。
【0070】
実施例6の日持ち向上剤を添加した蒲鉾は、比較例4の日持ち向上剤を添加した蒲鉾に比べ、一般細菌の増殖が抑制されていた。結果を表10および図4に示す。
【0071】
【表10】
【0072】
実施例7および比較例5
カスタードクリームの製造
全卵51gを十分に攪拌し、砂糖75gおよび篩っておいたコーンスターチ24gを加え、さらに攪拌した後、65℃に温めた牛乳300gを攪拌しながら加え、混合物を得た。次いで表11に記載される組成の日持ち向上剤を、得られた混合物全重量に対する酢酸カルシウムの割合が0.5重量%となる量で添加した後、攪拌しながら85℃まで加熱し、85℃で2分間攪拌した。加熱を止め、バニラエッセンスを0.5g添加した後、1分間攪拌してカスタードクリームを得た。得られたカスタードクリームは、氷冷後、以下の試験に供した。
【0073】
【表11】
【0074】
保存試験
上記と同様に実施例7および比較例5の日持ち向上剤を添加して製造したカスタードクリーム各300gを25℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
比較例5の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームが15日間で腐敗したのに比べ、実施例7の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームは、15日間経過後も一般細菌の増殖が抑制されており、保存性が大幅に改善されていた。結果を表12および図5に示す。
【0075】
【表12】
【0076】
実施例8および比較例6
カスタードクリームの製造
全卵51gを十分に攪拌し、砂糖75gおよび篩っておいたコーンスターチ24gを加え、さらに攪拌した後、65℃に温めた牛乳300gを攪拌しながら加え、混合物を得た。次いで表13に記載される組成の日持ち向上剤を、得られた混合物全重量に対するソルビン酸の割合が0.1重量%となる量で添加した後、攪拌しながら85℃まで加熱し、85℃で2分間攪拌した。加熱を止め、バニラエッセンスを0.5g添加した後、1分間攪拌してカスタードクリームを得た。得られたカスタードクリームは、氷冷後、以下の試験に供した。
【0077】
【表13】
【0078】
保存試験
上記と同様に実施例8および比較例6の日持ち向上剤を添加して製造したカスタードクリーム各300gを25℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
実施例8の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームは、比較例6の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームに比べ、一般細菌の増殖が抑制されていた。結果を表14および図6に示す。
【0079】
【表14】
【0080】
実施例9及び比較例7
カスタードクリームの製造
全卵51gを十分に攪拌し、砂糖75gおよび篩っておいたコーンスターチ24gを加え、さらに攪拌した後、65℃に温めた牛乳300gを攪拌しながら加え、混合物を得た。次いで表15に記載される組成の日持ち向上剤を、得られた混合物全重量に対するソルビン酸カリウムの割合が0.1重量%となる量で添加した後、攪拌しながら85℃まで加熱し、85℃で2分間攪拌した。加熱を止め、バニラエッセンスを0.5g添加した後、1分間攪拌してカスタードクリームを得た。得られたカスタードクリームは、氷冷後、以下の試験に供した。
【0081】
【表15】
【0082】
保存試験
上記と同様に実施例9および比較例7の日持ち向上剤を添加して製造したカスタードクリーム各300gを25℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
比較例7の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームが8日間で腐敗したのに比べ、実施例9の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームは、8日間経過後も一般細菌の増殖が抑制されており、保存性が大幅に改善されていた。結果を表16および図7に示す。
【0083】
【表16】
【0084】
実施例10及び比較例8
カスタードクリームの製造
全卵51gを十分に攪拌し、砂糖75gおよび篩っておいたコーンスターチ24gを加え、さらに攪拌した後、65℃に温めた牛乳300gを攪拌しながら加え、混合物を得た。次いで表17に記載される組成の日持ち向上剤を、得られた混合物全重量に対する安息香酸の割合が0.1重量%となる量で添加した後、攪拌しながら85℃まで加熱し、85℃で2分間攪拌した。加熱を止め、バニラエッセンスを0.5g添加した後、1分間攪拌してカスタードクリームを得た。得られたカスタードクリームは、氷冷後、以下の試験に供した。
【0085】
【表17】
【0086】
保存試験
上記と同様に実施例10および比較例8の日持ち向上剤を添加して製造したカスタードクリーム各300gを25℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
比較例8の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームが7日間で腐敗したのに比べ、実施例10の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームは、7日間経過後も一般細菌の増殖が抑制されており、保存性が大幅に改善されていた。結果を表18および図8に示す。
【0087】
【表18】
【0088】
実施例11及び比較例9
カスタードクリームの製造
全卵51gを十分に攪拌し、砂糖75gおよび篩っておいたコーンスターチ24gを加え、さらに攪拌した後、65℃に温めた牛乳300gを攪拌しながら加え、混合物を得た。次いで表19に記載される組成の日持ち向上剤を、得られた混合物全重量に対する安息香酸ナトリウムの割合が0.1重量%となる量で添加した後、攪拌しながら85℃まで加熱し、85℃で2分間攪拌した。加熱を止め、バニラエッセンスを0.5g添加した後、1分間攪拌してカスタードクリームを得た。得られたカスタードクリームは、氷冷後、以下の試験に供した。
【0089】
【表19】
【0090】
保存試験
上記と同様に実施例11および比較例9の日持ち向上剤を添加して製造したカスタードクリーム各300gを25℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
比較例9の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームが7日間で腐敗したのに比べ、実施例11の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームは、7日間経過後も一般細菌の増殖が抑制されており、保存性が大幅に改善されていた。結果を表20および図9に示す。
【0091】
【表20】
【0092】
実施例12及び比較例10
カスタードクリームの製造
全卵51gを十分に攪拌し、砂糖75gおよび篩っておいたコーンスターチ24gを加え、さらに攪拌した後、65℃に温めた牛乳300gを攪拌しながら加え、混合物を得た。次いで表21に記載される組成の日持ち向上剤を、得られた混合物全重量に対するプロピオン酸ナトリウムの割合が0.3重量%となる量で添加した後、攪拌しながら85℃まで加熱し、85℃で2分間攪拌した。加熱を止め、バニラエッセンスを0.5g添加した後、1分間攪拌してカスタードクリームを得た。得られたカスタードクリームは、氷冷後、以下の試験に供した。
【0093】
【表21】
【0094】
保存試験
上記と同様に実施例12および比較例10の日持ち向上剤を添加して製造したカスタードクリーム各300gを25℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
実施例12の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームは、比較例10の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームに比べ、一般細菌の増殖が抑制されていた。結果を表22および図10に示す。
【0095】
【表22】
【0096】
実施例13及び比較例11
カスタードクリームの製造
全卵51gを十分に攪拌し、砂糖75gおよび篩っておいたコーンスターチ24gを加え、さらに攪拌した後、65℃に温めた牛乳300gを攪拌しながら加え、混合物を得た。次いで表23に記載される組成の日持ち向上剤を、得られた混合物全重量に対するプロピオン酸カルシウムの割合が0.3重量%となる量で添加した後、攪拌しながら85℃まで加熱し、85℃で2分間攪拌した。加熱を止め、バニラエッセンスを0.5g添加した後、1分間攪拌してカスタードクリームを得た。得られたカスタードクリームは、氷冷後、以下の試験に供した。
【0097】
【表23】
【0098】
保存試験
上記と同様に実施例13および比較例11の日持ち向上剤を添加して製造したカスタードクリーム各300gを25℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
比較例11の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームが15日間で腐敗したのに比べ、実施例13の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームは、15日間経過後も一般細菌の増殖が抑制されており、保存性が大幅に改善されていた。結果を表24および図11に示す。
【0099】
【表24】
【0100】
実施例14及び比較例12
カスタードクリームの製造
全卵51gを十分に攪拌し、砂糖75gおよび篩っておいたコーンスターチ24gを加え、さらに攪拌した後、65℃に温めた牛乳300gを攪拌しながら加え、混合物を得た。次いで表25に記載される組成の日持ち向上剤を、得られた混合物全重量に対するナイシンの割合が0.0006重量%となる量で添加した後、攪拌しながら85℃まで加熱し、85℃で2分間攪拌した。加熱を止め、バニラエッセンスを0.5g添加した後、1分間攪拌してカスタードクリームを得た。得られたカスタードクリームは、氷冷後、以下の試験に供した。
【0101】
【表25】
【0102】
保存試験
上記と同様に実施例14および比較例12の日持ち向上剤を添加して製造したカスタードクリーム各300gを25℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
比較例12の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームが11日間で腐敗したのに比べ、実施例14の日持ち向上剤を添加したカスタードクリームは、11日間経過後も一般細菌の増殖が抑制されており、保存性が大幅に改善されていた。結果を表26および図12に示す。
【0103】
【表26】
【0104】
実施例15及び比較例13
ハンバーグの製造
ハンバーグヘルパー(ハウス食品製)23gに牛乳120gおよび合挽き肉250gを混合した。次いで表27に記載される組成の日持ち向上剤を、得られた混合物全重量に対するソルビン酸カリウムの割合が0.1重量%となる量で添加し、十分に混合した後、成型し(約20g/個)、予熱したスチームコンベンションオーブン(タニコー製)にて、230℃で4分間焼成し、ハンバーグを得た。得られたハンバーグは室温にて冷却後、以下の試験に供した。
【0105】
【表27】
【0106】
保存試験
上記と同様に実施例15および比較例13の日持ち向上剤を添加して製造したハンバーグを25℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
実施例15の日持ち向上剤を添加したハンバーグは、比較例13の日持ち向上剤を添加したハンバーグに比べ、一般細菌の増殖が抑制されていた。結果を表28および図13に示す。
【0107】
【表28】
【0108】
実施例16及び比較例14
ハンバーグの製造
ハンバーグヘルパー(ハウス食品製)23gに牛乳120gおよび合挽き肉250gを混合した。次いで表29に記載される組成の日持ち向上剤を、得られた混合物全重量に対するナイシンの割合が0.001重量%となる量で添加し、十分に混合した後、成型し(約20g/個)、予熱したスチームコンベンションオーブン(タニコー製)にて、230℃で4分間焼成し、ハンバーグを得た。得られたハンバーグは室温にて冷却後、以下の試験に供した。
【0109】
【表29】
【0110】
保存試験
上記と同様に実施例16および比較例14の日持ち向上剤を添加して製造したハンバーグを25℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
実施例16の日持ち向上剤を添加したハンバーグは、比較例14の日持ち向上剤を添加したハンバーグに比べ、一般細菌の増殖が抑制されていた。結果を表30および図14に示す。
【0111】
【表30】
【0112】
実施例17及び比較例15
ソーセージの製造
豚肉赤身6kg、豚脂1.5kg、氷2.4kgおよび少量の香辛料をよく混合した。得られた混合物を1kgずつ小分けし、表31に記載される組成の日持ち向上剤を、該混合物全重量に対するソルビン酸カリウムの割合が0.2重量%となる量で添加してさらに混合した。一晩寝かした後、ケーシングし、50℃で30分間乾燥させた後、50℃で3時間燻蒸し、次いで72℃で40分間燻蒸した。燻製後、氷冷し、2次殺菌のため真空パックをした後、72℃で2時間ボイルをした。得られたソーセージを室温にて冷却後、以下の試験に供した。
【0113】
【表31】
【0114】
保存試験
上記と同様に実施例17および比較例15の日持ち向上剤を添加して製造したソーセージを15℃の恒温機内で保存し、経時的にサンプリングを行い、食品添加物公定書に記載の微生物限度試験法(寒天平板混釈法)に従って一般細菌の菌数を測定した。
実施例17の日持ち向上剤を添加したソーセージは、比較例15の日持ち向上剤を添加したソーセージに比べ、一般細菌の増殖が抑制されていた。結果を表32および図15に示す。
【0115】
【表32】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15