特許第6496717号(P6496717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6496717外科的処置を教示すると共に練習するための胆嚢モデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496717
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】外科的処置を教示すると共に練習するための胆嚢モデル
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/34 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   G09B23/34
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-521548(P2016-521548)
(86)(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公表番号】特表2016-523383(P2016-523383A)
(43)【公表日】2016年8月8日
(86)【国際出願番号】US2014042998
(87)【国際公開番号】WO2014205110
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2017年5月16日
(31)【優先権主張番号】61/836,512
(32)【優先日】2013年6月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ブラック ケイティ
(72)【発明者】
【氏名】ブレスリン トレイシー
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】ハート チャールズ シー
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0293026(US,A1)
【文献】 国際公開第96/042076(WO,A1)
【文献】 特開2004−049479(JP,A)
【文献】 国際公開第98/058358(WO,A1)
【文献】 米国特許第06336812(US,B1)
【文献】 特表2002−511156(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/027634(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0064378(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0082970(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00− 9/56
G09B17/00−19/26
G09B23/00−29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用訓練のための解剖学的モデルであって、
内面及び外面を備えた第1の層を有し、前記第1の層は、前記内面と前記外面との間で定められた厚さを有し、前記第1の層は、第1の解剖学的構造体の少なくとも一部分を真似るよう構成されると共に第1の周囲を有し、
内面及び外面を備えた第2の層を有し、前記第2の層は、前記内面と前記外面との間に厚さを定め、前記第2の層は、第2の周囲を有し、前記第2の層は、前記第2の層の前記外面が前記第1の層の前記内面に向くよう前記第1の層を覆い、
少なくとも1つの第2の模擬解剖学的構造体を有し、前記少なくとも1つの第2の模擬解剖学的構造体は、前記少なくとも1つの第2の模擬解剖学的構造体周りに第3の周囲を定め、前記少なくとも1つの第2の模擬解剖学的構造体は、前記第2の層の前記内面に連結され、
前記第2の層の前記外面は、少なくとも部分的に前記少なくとも1つの第2の模擬解剖学的構造体の存在場所周りで前記第1の層の前記内面に連結され
前記第2の層は、前記第2の層が前記第3の周囲の内側の場所で前記第1の層から引き離されたときに前記第2の層が前記第1の層に対してテント状になるよう前記第3の周囲の内側で前記第1の層には連結されていない、解剖学的モデル。
【請求項2】
内面及び外面を備えた第4の層を更に有し、前記第4の層は、前記内面と前記外面との間に厚さを定めると共に第4の周囲を有し、前記第4の層は、前記第4の層の前記外面が前記第2の層の前記内面及び前記少なくとも1つの第2の模擬解剖学的構造体に向くよう前記第2の層及び前記少なくとも1つの第2の模擬解剖学的構造体を覆い、前記第4の層の前記外面は、前記第2の層の前記内面に連結されている、請求項1記載の解剖学的モデル。
【請求項3】
前記第2の層の前記外面は、前記第1の層上に投影された前記第3の周囲の外側の場所で前記第1の層の前記内面に連結され、
前記第4の層の前記外面は、前記第2の層上に投影された前記第3の周囲の外側の場所で前記第2の層の前記内面に連結されている、請求項記載の解剖学的モデル。
【請求項4】
前記第2の層の前記外面は、前記第1の層上に投影された前記第3の周囲の少なくとも一部に沿う場所で前記第1の層の前記内面に連結され、
前記第4の層の前記外面は、前記第2の層上に投影された前記第3の周囲の少なくとも一部に沿い又は該第3の周囲の外側の場所で前記第2の層の前記内面に連結されている、請求項記載の解剖学的モデル。
【請求項5】
前記第2の層及び前記第4の層の厚さは、前記第1の層の厚さよりも小さい、請求項記載の解剖学的モデル。
【請求項6】
前記第2の層の前記外面は、前記第1の周囲の少なくとも一部に沿って前記第1の層の前記内面に連結され、前記第4の層の前記外面は、前記第1の周囲又は前記第2の周囲の少なくとも一部に沿って前記第2の層の前記内面に連結されている、請求項記載の解剖学的モデル。
【請求項7】
前記第1の層は、肝臓の少なくとも一部分を真似ており、前記少なくとも1つの第2の模擬解剖学的構造体は、模擬胆嚢を含む、請求項1記載の解剖学的モデル。
【請求項8】
前記第1の層は、前記第2の層よりも厚い、請求項1記載の解剖学的モデル。
【請求項9】
前記第1の層の前記内面は、平坦である、請求項1記載の解剖学的モデル。
【請求項10】
前記第2の層の前記外面は、前記第1の周囲の少なくとも一部に沿って前記第1の層の内面に連結されている、請求項1記載の解剖学的モデル。
【請求項11】
前記第2の層は、前記覆われている第2の層上に投影された前記第3の周囲の内側の場所で前記第1の層には連結されていない、請求項1記載の解剖学的モデル。
【請求項12】
第3の層は、前記第3の周囲のところで又は前記第3の周囲の内側で前記第2の層に連結されている、請求項1記載の解剖学的モデル。
【請求項13】
前記第2の層の前記外面は、前記第1の層上に投影された前記第3の周囲の少なくとも一部に沿い又は該第3の周囲の外側の場所で前記第1の層の前記内面に連結されている、請求項1記載の解剖学的モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、外科用訓練ツール、特に胆嚢を含む外科的処置を教示すると共に練習するための模擬組織構造体及びモデルに関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2013年6月18日に出願された米国特許仮出願第61/836,512号(発明の名称:Gallbladder model)の優先権及び権益主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
胆石及び他の胆嚢病態の一般的な治療方法は、肝床からの胆嚢の外科的除去である胆嚢摘出術である。腹腔鏡下胆嚢摘出術は、最も一般的な腹腔鏡下手技であり、胆石の治療に及び胆嚢の炎症の第1選択肢として開放胆嚢摘出術に取って代わった。腹腔鏡下胆嚢摘出術は、有利には、必要とする切開創が小さくて済み、その結果、疼痛が少なく、美容的結果が良く、治癒が迅速であり、しかも合併症、例えば炎症及び癒着が少ない。
【0004】
腹腔鏡下胆嚢摘出術は、外科用器械及び腹腔鏡を腹腔内に配置するために通す直径が約5〜10ミリメートルのトロカール又は小径の円筒形管の挿入を可能にするよう腹部に数個の小さな切開創が必要である。腹腔鏡は、術野を照明すると共に拡大像を体の内側からビデオモニタに送り、ビデオモニタは、外科医に臓器及び器官及び組織の拡大図を提供する。外科医は、ライブビデオフィードを監視し、トロカールを通って配置された外科用器械を操作することによって手術を行う。
【0005】
腹腔鏡下胆嚢摘出術では、患者を手術台上に仰臥位置で寝かせて麻酔する。メスを用いて臍部のところに小さな切開創を作るのが良い。トロカールを用いて、腹腔に入り、二酸化炭素ガスを送り出し、腹腔内に送気することによってこれを拡大し、それにより患者の腹部領域内に作業空間を作る。トロカールは、腹部内空間の穿通状態、挿入状態及び腹部内空間の送気状態を観察するための挿入状態の腹腔鏡を含むのが良い。追加のトロカールが肋骨の下に位置する場所に挿入される。腹腔鏡を用いて、腹膜によって覆われている胆嚢底を識別し、トロカールのうちの1つを貫通した外科用把持器で把持し、そしてリトラクトする。第2の外科用把持器を用いて胆嚢の残部を外側方向にリトラクトしてカロー三角を露出させる。カロー三角は、胆嚢管、胆嚢動脈、胆管及び肝臓の縁によって境界付けられた胆嚢解剖学的構造体の部分である。外科医は、胆嚢管及び胆嚢動脈を識別する。この領域では、下に位置する構造体は、腹膜から注意深く骨格化され、腹膜を胆嚢管と胆嚢動脈の両方から隔てている。外科用クリップアプライアをトロカールのうちの1つ中に導入し、クリップを胆嚢管と胆嚢動脈の両方に2つの場所で留める。次に、胆嚢管及び胆嚢動脈を外科用鋏によってクリップの2つの配設場所相互間で分割し、胆嚢を除去可能に自由にする。胆嚢を肝臓の肝床から切り離し、そしてトロカールのうちの1つを通って取り出す。腹腔鏡下胆嚢摘出術の際、合併症が胆嚢穿孔に起因して生じる場合があり、かかる胆嚢穿孔は、肝床からの胆嚢のリトラクション中若しくは切開中又は腹部からの取り出し中に過度のトラクションが起こる場合がある。腹腔鏡下胆嚢摘出術の結果は、この手技を実施する外科医の訓練度、経験及び技量によって大きな影響を受ける。研修医(レシデント)及び外科医がこれら外科的技術を学習したり練習したりするために、腹腔鏡下訓練器械で用いられる真に迫った機能的な且つ解剖学中に正確なモデルが必要とされる。
【0006】
胆嚢モデルは、腹腔鏡下胆嚢摘出術において研修医及び外科医を訓練するのに有用であるだけでなく、腹腔鏡下総胆管試験切開の際に研修医及び外科医を訓練するのに望ましい。総胆管は、肝臓、胆嚢及び膵臓を小腸に連結して消化を助けるために流体を送り出す管である。総胆管試験切開は、胆石又は他の何らかの障害物が胆嚢又は肝臓から腸への胆汁の流れを妨げているかどうかを確認するために用いられる手技である。腹腔鏡下総胆管試験切開術では、腹腔に上述の胆嚢摘出術の場合のように接近する。外科医は、総胆管を識別し、そして総胆管に小さな半周(hemi-circumferential)切開創を作る。胆管造影カテーテルを、トロカールのうちの1つを通ってガス注入状態の腹腔中に挿入し、次に総胆管に作られた切開創中に挿入する。造影剤又は放射性不透過性流体を胆嚢管及び総胆管中に導入し、X線を当てて総胆管内に胆石があればかかる胆石の存在場所を明らかにする。胆石が存在する場合、障害物は、造影剤の流れに不連続部として現れることになる。次に、胆石を外科的に取り出す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
患者の術後結果及び回復を助けるため、外科医は、手術室の外部から腹腔鏡下胆嚢摘出術及び総胆管試験切開を練習する手だてを必要とする。練習モデルは、解剖学的に正確で且つある必要であり、しかも外科医又は研修医に可能な限り最も真に迫った練習を提供するために手術中に通常見える全ての重要なランドマークを含む必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、外科用訓練のための解剖学的モデルが提供される。このモデルは、内面及び外面を備えた第1の層を有する。第1の層は、内面と外面との間で定められた厚さを有する。第1の層は、第1の周囲を有すると共に第1の解剖学的構造体の少なくとも一部分を真似るよう構成されている。このモデルは、内面及び外面を備えた第2の層を有する。第2の層は、内面と外面との間に厚さを定めている。第2の層は、第2の周囲を定めると共に第2の層は、第2の層の外面が第1の層の内面に向くよう第1の層を覆っている。このモデルは、少なくとも1つの第2の模擬解剖学的構造体を有し、少なくとも1つの第2の模擬解剖学的構造体は、少なくとも1つの模擬解剖学的構造体周りに第3の周囲を定めている。少なくとも1つの模擬解剖学的構造体は、第2の層の内面に連結されている。第2の層の外面は、少なくとも部分的に少なくとも1つの第2の模擬解剖学的構造体の存在場所周りで第1の層の内面に連結されている。
【0009】
本発明の別の観点によれば、外科用訓練のための解剖学的モデルが提供される。このモデルは、解剖学的部分と、解剖学的部分に取り外し可能に連結可能な支持体とを有する。解剖学的部分は、頂側部、底側部、左側部及び右側部により互いに相互連結されている内面及び外面を備えた少なくとも第1の層を有する。第1の層は、内面と外面との間に定められた厚さを有する。第1の層は、肝臓の少なくとも一部分を真似るよう構成されている。第1の層の頂側部は、山部を有する。このモデルは、山部の存在場所の上方に位置決めされた模擬胆嚢を有する。このモデルは、少なくとも第1の層に連結されたフレームを有する。フレームは、中央部分によって第2の端部に連結された第1の端部を有する。フレームの第1の端部及び第2の端部は、解剖学的部分を実質的に直立の位置で保持するよう支持体に取り外し可能に連結可能である。フレームは、山部の存在場所に位置する第1の層がフレームに対して撓むことができるよう山部の存在場所中には延びていない。
【0010】
本発明の別の観点によれば、外科用訓練のための解剖学的モデルが提供される。このモデルは、第1の層を備えた解剖学的部分を有する。第1の層は、頂側部、底側部、左側部及び右側部により相互連結されている内面及び外面を有する。第1の層は、内面と外面との間に定められた厚さを有する。第1の層は、少なくとも1つの解剖学的構造体を真似るよう構成されている。解剖学的部分は、第1の層を覆っている少なくとも1つの解剖学的構造体を含む第2の層を有する。解剖学的部分は、中央部分によって第2の端部に相互連結されている第1の端部を備えたフレームを有する。フレームの少なくとも一部は、フレームの第1の端部及び第2の端部が第1の層から延び出た状態で第1の層内に埋め込まれている。このモデルは、支持体を有し、フレームの第1の端部及び第2の端部は、解剖学的部分を支持面に対して実質的に直立した位置に保持するよう支持体に取り外し可能に連結可能である。
【0011】
本発明の別の観点によれば、外科用模擬システムが提供される。このシステムは、解剖学的モデルを含む。このモデルは、解剖学的部分を有する。解剖学的部分は、頂側部、底側部、左側部及び右側部によって相互連結されている内面及び外面を備えた第1の層を有する。第1の層は、内面と外面との間に定められた厚さを有する。第1の層は、少なくとも1つの解剖学的構造体を真似るよう構成されると共に実質的に扁平な形態を定めている。このモデルは、第1の層の内面に連結されると共にこの内面を覆う複数の解剖学的構造体を含む第2の層を有する。支持体が解剖学的部分に連結可能であり且つ解剖学的部分を支持面に対して実質的に垂直の配向状態で保持するよう構成されている。このシステムは、外科用訓練器械を更に含む。外科用訓練器械は、ベースと、トップカバーとを有し、トップカバーは、トップカバーとベースとの間に模擬ガス注入内部キャビティを構成するようベースに連結されると共にベースから間隔を置いて配置されている。内部キャビティは、ユーザによる直接観察から少なくとも部分的に遮られている。外科用訓練器械のトップカバーは、孔又は穿通可能な模擬組織領域を有する。外科用訓練器械のトップカバーは、キャビティ内から測定して水平面に対して鋭角をなすよう傾けられている。解剖学的モデルは、第1の層の内面が鋭角及び孔又は穿通可能な模擬組織領域に向くよう鋭角と反対側に或る距離を置いたところで内部キャビティ内に位置決めされている。
【0012】
本発明の別の観点によれば、外科用訓練のための解剖学的モデルが提供される。このモデルは、解剖学的部分を有する。解剖学的部分は、頂側部、底側部、左側部及び右側部により相互連結されている内面及び外面を備えた第1の層を有する。内面は、実質的に平坦であり、第1の層は、内面と外面との間に定められた厚さを有する。第1の層は、肝臓の少なくとも一部分を真似るよう構成されている。第1の層の頂側部は、山部を有する。解剖学的部分は、頂側部、底側部、左側部及び右側部によって相互に連結された内面及び外面を備えた第2の層を有する。第2の層は、第2の層の外面が第1の層の内面に向くよう第1の層を覆っている。第2の層の外面は、第1の周囲の少なくとも一部に沿って第1の層の内面に連結されている。第2の層は、内面と外面との間に厚さを定め、第2の層の厚さは、第1の層の厚さよりも小さい。解剖学的部分は、少なくとも1つの模擬解剖学的構造体を含む第3の層を有する。少なくとも1つの模擬解剖学的構造体は、第2の層の内面に連結されている。解剖学的部分は、頂側部、底側部、左側部及び右側部によって相互に連結されている内面及び外面を備えた第4の層を更に有する。第4の層は、第4の層の外面が第2の層の内面及び少なくとも1つの模擬解剖学的構造体に向くよう第2の層及び第3の層を覆っている。第4の層の外面は、第2の周囲の少なくとも一部に沿って第2の層の内面に連結されている。第4の層は、内面と外面との間に厚さを定め、第4の層の厚さは、第1の層の厚さよりも小さい。解剖学的部分は、少なくとも部分的に第1の層内に埋め込まれたフレームを有する。このモデルは、解剖学的部分を実質的に直立の位置に保持するようフレームに連結可能な支持体を有する。
【0013】
本発明の別の観点によれば、胆嚢モデルが提供される。このモデルにより、ユーザは、開放胆嚢摘出術及び総胆管試験切開術並びに腹腔鏡下胆嚢摘出術及び総胆管試験切開術を練習することができる。胆嚢モデルは、支持体に連結された解剖学的部分を有する。解剖学的部分は、肝臓層、筋膜層、胆嚢層、腹膜層、及びフレームを有し、これらは、互いに連結されると共に支持体によって直立した向きに保持される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の解剖学的モデルの上から見た斜視図である。
図2】本発明の解剖学的モデルの上から見た分解組立て斜視図である。
図3】本発明の解剖学的モデルの解剖学的部分の肝臓層の側面図である。
図4】本発明の解剖学的モデルの解剖学的部分のフレームのプロングの部分側面図である。
図5】本発明の解剖学的モデルの解剖学的部分のための支持体の断面側面図である。
図6】本発明の解剖学的モデルと共に用いられる腹腔鏡訓練器械の上から見た斜視図である。
図7】本発明の解剖学的モデルのフレーム及び支持体の上から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
今、図1を参照すると、本発明の胆嚢モデル10が示されている。胆嚢モデル10は、支持体14に取り外し可能に連結された解剖学的部分12を有する。実質的に扁平な解剖学的部分12は、支持体14によって直立形態に維持される。本明細書の背景技術の項で上述した胆嚢摘出術では、胆嚢底が目に見えこれがリトラクトされている。これを行う際、患者の前方寄りで肝臓の下に位置する胆嚢の残部は、露出され、そしてガス中に腔内でカロー三角と一緒に目に見えるようにされている。このリトラクションでは、肝臓の右葉の下側又は下方部分の一部を持ち上げる。肝臓及び胆嚢が実質的に患者のX‐Z平面又は前平面内に位置する状態でしかもリトラクションにおいて肝臓及び胆嚢を実質的に患者のY平面又は横平面内に持ち上げた状態では、本発明の胆嚢モデル10は、患者のX‐Y平面又は横平面上へのリトラクトされた肝臓及び胆嚢の少なくとも一部分の相当多くの又は部分的な投影像である。それ故、胆嚢モデル10は、模擬ガス注入腔内のリトラクトされた肝臓及び胆嚢の実質的に平面上の投影像を表している。したがって、胆嚢モデル10の形態は、有利には、臍部の存在場所から胆嚢に近づくユーザによって観察されたときに既にリトラクトされた状態の垂直の配向状態にある模擬胆嚢への外科的アプローチを提供する。また、胆嚢モデル10の形態は、別のユーザが把持器を用いてモデルの幾つかの部分をリトラクト位置に保持する必要なく、ユーザによる練習が可能であり、したがって、モデル10は、有利には、一度に一人で使用されるよう設計されている。さらに、モデル10では、肝臓の一部分だけ、特に肝臓の右葉が模擬されている。胆嚢を含む胆管構造体の全体は、右葉と一緒になって、モデルに含まれている。
【0016】
次に図2を参照すると、支持体14に連結された解剖学的部分12を有する胆嚢モデル10の分解組立て図が示されている。解剖学的部分12は、肝臓層16、筋膜層18、胆嚢層20、腹膜層22、及びフレーム24を有し、これらは、互いに連結されている。次に、各層について詳細に説明する。
【0017】
依然として図2を参照すると、肝臓層又は第1の層16は、赤色で染色されたシリコーン又は熱可塑性エラストマーで成形されると共に肝臓のリトラクトされた部分を真似るよう構成されている。特に、肝臓層16は、胆嚢及びカロー三角を露出させるようリトラクトされた人間の肝臓の右葉の一部分を表すよう形作られている。図3を参照すると、肝臓層16は、平坦で且つ平面状の内面26及び凸状湾曲外面28を有する。内面及び外面26,28は、4つの側部、即ち、湾曲した頂側部、真っ直ぐな底側部、左側部及び右側部に沿って相互に連結されており、左側部及び右側部は、頂側部と底側部を相互に連結している。湾曲した頂側部は、モデルの左側部の近く又は左側部のところの山部30を有している。頂側部は、山部30から右側部に相互に連結された下側部分まで下方に湾曲している。この山部を備えた形状は、人間の肝臓のリトラクトされた右葉の実質的に平面上の投影像に似ている。山部30は、肝臓層16の他の部分に対して長い長さを有している。肝臓層16の最も厚い部分は、約0.5インチ(12.7mm)であり、ほぼ中間部のところに配置されている。一形態では、図3に示されているように、フレーム24は、フレーム24の少なくとも一部分が肝臓層16の内側に位置し且つフレーム24の一部分が肝臓層16の外側に位置するよう肝臓層16中に直接成形されている。以下、フレーム24について詳細に説明する。
【0018】
依然として図2を参照すると、筋膜層又は第2の層18は、部分的に半透明であり、透明であり又は僅かに薄い黄色で染色された熱可塑性エラストマー又はシリコーンで作られている薄く、厚さが約0.01〜0.03インチ(0.254〜0.762mm)の層である。筋膜層18は、肝臓層16と同じ山部付きの形状のものであり、肝臓層16を覆うよう寸法決めされると共に形作られている。筋膜層18は、内面及び外面を有し、外面は、肝臓16の内面26の一部分を覆っている。筋膜層18は、接着剤により肝臓層16に取り付けられており、接着剤は、少なくとも周囲に沿って配置され、筋膜層18の中間部分又は筋膜層18の周囲から見て内方に位置する部分の大部分は、肝臓層16に取り付けられておらず、その代わりに、自由に動くことができる状態にありしかも肝臓層16から分離して離れることができるようになっている。この筋膜層18は、現実には存在せず、即ち、胆嚢と肝臓との間には組織層が存在せず、本発明の胆嚢モデル10は、有利には肝臓からの胆嚢の切開及び取り出しを真似た筋膜層18を有している。この利点について以下に詳細に説明する。
【0019】
依然として図2を参照すると、胆嚢層又は第3の層20は、少なくとも1つの本体コンポーネントを有する。図2では、少なくとも1つの本体コンポーネントは、複数の解剖学的構造体である。例えば、胆嚢層20は、胆嚢管34に連結された体壁32、総胆管38に連結された総肝管36、胆嚢動脈40、及び右肝動脈44及び左肝動脈46に連結された状態でこれらに枝分かれしている総肝動脈42を有する。これら解剖学的構造体の全ては、実際のヒトの解剖学的構造体を真似るよう構成されると共に胆嚢層20内に解剖学的に正確な仕方で配置されている。胆嚢32は、胆汁を真似るよう薄い緑色又は黄色で染色されたシリコーン又は他の熱可塑性材料で成形された中空の球状構造体である。別の形態では、胆嚢32は、中実であり、中空ではない構造体である。胆嚢管34、総肝管36及び総胆管38も又、薄い緑色で染色されたシリコーン又は熱可塑性材料で作られている。胆嚢管34は、形状が管状であり、テーパして端部を有すると共に約0.15〜0.25インチ(3.81〜6.35mm)の直径を有している。一形態では、胆嚢肝34は、最小の内径が0.15インチ(3.81mm)であり、最大の外径が0.25インチ(6.35mm)であるルーメンを有し、それにより、ルーメンは、これをクリップするのに足るほど小径であり且つカテーテルの挿入を可能にするのに足るほど大径になっている。さらに別の形態では、胆嚢管34は、潤滑剤で潤滑される内面を備えたルーメンを備える。さらに別の形態では、胆嚢管34は、訓練及びルーメン中へのカテーテルの挿入を容易にするよう現実の胆嚢管34の寸法に比較して外径が大きい。総肝管36及び総胆管38も又、形状が管状であり、約0.15インチ(3.81mm)の直径を有する。一形態では、胆嚢管34、総肝管36及び総胆管38は、中空であり、別の形態では、これらは中実である。胆嚢動脈40、総肝動脈42、右肝動脈44及び左肝動脈46は、赤色で染色されると共に約0.15インチ(3.81mm)の直径を有する管状の形状に成形されたシリコーン又は熱可塑性材料で作られている。一形態では、胆嚢動脈40、総肝動脈42、右肝動脈44及び左肝動脈46は、中空であり、別の形態では、これらは中実構造体である。胆嚢層20は、選択的に配置された接着剤によって筋膜層18に連結されている。胆嚢層20は、互いに接合された多数の小片で形成されても良く、或いは、不連続部のないユニットとして形成されても良い。一体形胆嚢層20を形成するため、製造プロセスでは、ろう型を溶融プラスチック中に浸漬させてプラスチックがいったん硬化すると、溶融させて溶かし出す。
【0020】
一形態では、胆嚢モデル10は、胆管試験切開を練習するよう構成されている。かかる形態では、胆嚢層20の胆管構造体は、中空であり、胆汁を真似た流体で満たされている。例示の流体は、緑色に着色された皿洗い液である。中空胆管構造体の内径は、約0.09インチ(2.286mm)であり、外径は、約0.15インチ(3.81mm)である。胆管試験切開向きに構成された胆嚢モデル10は、胆汁を真似た流体で満たされた中空胆嚢32を有する。模擬胆汁としての流体が失われないようにするよう胆嚢管34、総肝管36、及び総胆管38の自由端部は、閉鎖されており又はこれらの管内に流体を保持する標準型の管キャップ、中実コネクタ又は棘付きコネクタで蓋付けされている。単一ユニットとして成形されない場合、多数の管状構造体で作られた胆管構造体は、コネクタにより互いに連結される。例えば、総肝管36と総胆管38との接合部は、流体がこれらの間を流れることができるようにするコネクタ、例えばY字形スプリットに連結されている。一形態では、胆嚢管34と総胆管38は、コネクタにより連結され又は一体構造体として成形され、その結果、流体は、胆嚢管34と総胆管38との間を流れるようになっている。コネクタの採用は、胆嚢管及び総胆管を例えば胆嚢摘出術において切断する練習手順後、切開した管を同一のコネクタを用いて同一の場所に再連結された新たな管で置き換え可能であり、その結果、訓練手順を繰り返し実施することができる点で有利である。胆管試験切開向きに構成された胆嚢モデル10では、胆嚢32、胆管34、総肝管36、及び総胆管38のうちの任意1つ又は2つ以上は、1つ又は2つ以上の模擬胆石(図示せず)を有するのが良い。模擬胆石は、プラスチック又は他の材料で作られた小さなビード状の構造体である。模擬胆石は、胆嚢32の中空空間内に且つ/或いは胆嚢管34、総肝管36、及び総胆管38のうちの1つ又は2つ以上のルーメン内に配置される。これら模擬胆石は、モデルが受け入れられたときにこれら模擬胆石がユーザには見えないが、シリンジ及び/又はカテーテルを用いて模擬造影剤流体、例えば着色された水をこれらのダクトのうちの1本又は2本以上の中に注入し、造影剤流体の連続した流れが、模擬造影剤流体が胆管構造体を満たしたときに胆石によって視覚的に妨げられ又は妨害されるように形作られると共に構成されている。別の形態では、胆嚢32に流体を注入する手段としてのシリンジ及び/又は模擬胆石を含むキットが提供される。別の形態では、胆嚢32は、液体が満たされておらず、空気で満たされており、この空気は、シリンジ又は他の同様な器具を用いて胆嚢32の開放腔内に注入可能であるのが良い。胆嚢32の腔は、周囲圧力よりも高い圧力まで加圧されるのが良く、その結果、胆嚢32があたかも不適切な外科的技術によって不用意に穿通されたとき、胆嚢32が目立ってデフレートし、したがって、訓練生に視覚表示を提供するようになっている。かかる形態では、胆嚢32は、胆嚢32のデフレーションの観察を可能にするよう構成された壁厚を有している。
【0021】
依然として図2を参照すると、腹膜層又は第4の層22は、透明であり又は部分的に半透明であると共に/或いは薄い黄色で染色された熱可塑性エラストマー又はシリコーンで作られている厚さ約0.01〜0.03インチ(0.254〜0.762mm)の薄い層である。腹膜層22は、筋膜層18とほぼ同一であり、下に位置する筋膜層18及び肝臓層16と同じ山部を備えた形状のものである。腹膜層22は、内面及び外面を有し、胆嚢層20を覆うと共に第2の層18の内面の少なくとも一部分を覆っている。一形態では、筋膜層18と腹膜層22の両方は、各々、液体シリコーンをフォームの層、例えば包装用フォームの層又は他の海綿状の構造体上に成形することによって形成され、次に、このフォームが硬化された後にフォームから引き剥がされ、それにより少なくとも1つの模様付き表面が筋膜層18及び腹膜層22に与えられる。腹膜層22は、胆嚢層20を覆うよう寸法決めされると共に形作られている。腹膜層22は、接着剤により筋膜層18に取り付けられ、接着剤は、介在する胆嚢層20からの干渉を受けないで筋膜層18と直接的に接触することができる場所に配置される。それ故、腹膜層22の幾つかの部分だけが筋膜層18にくっつけられ、一形態では、腹膜層22は、筋膜層18にのみくっつけられ、胆嚢層20にはくっつけられない。別の形態では、腹膜層22の幾つかの部分は、胆嚢層20並びに筋膜層18の幾つかの部分にくっつけられる。さらに別の形態では、腹膜層22の幾つかの部分は、胆嚢層20の幾つかの部分にのみくっつけられる。これらの層は、接着剤により又はこれらの層を構成する材料の固有の粘着性によって互いにくっつけられる。本質的には、腹膜層22は、下に位置する胆嚢層20及び筋膜層18のうちの1つ又は2つ以上に接着剤によって選択的にくっつけられる。
【0022】
依然として図2を参照すると、解剖学的部分12は、フレーム24を有し、フレーム24は、腹腔鏡訓練模擬装置内に位置する器官受け入れトレイ又は他の表面を含むテーブルトップ又は他の実質的に平坦な表面に対して実質的に直立した向きで支持するよう構成されている。フレーム24は、中央部分52によって相互連結された左レッグ48と右レッグ50を有する。中央部分52は、湾曲していて他の層16,18,22と全体として山形の形状を真似ている。フレーム24は、肝臓層16、筋膜層18及び腹膜層22よりも小さく寸法決めされている。フレーム24は、モデル10の解剖学的部分12を構成するシリコーン及びプラスチックの層を直立した向きに支持することができると共にこのように支持するのに足るほど強固である硬質金属、プラスチック又は他のポリマー若しくは材料で作られている。左レッグ48は、山部のところに又はこれに隣接して位置し、長さが約3.5〜4.0インチ(8.89〜10.16cm)であり、これよりも短い右レッグ50は、長さが約2.5〜3.0インチ(6.35〜7.62cm)である。湾曲した中央部分52は、長さが約4.0〜4.5インチ(10.16〜11.43cm)であり、層16,18,22の曲率に追従している。胆嚢モデル10の全高は、約5〜6インチ(12.7〜15.24cm)であり、モデル10の長さは、約5〜6インチ(12.7〜15.24cm)である。左レッグ48は、その自由端部のところに左プロング(枝)54を備え、右レッグ50は、右レッグ50の自由端部のところで右プロング(枝)56を備えている。左プロング54及び右プロング56は、支持体14中に挿入可能に解剖学的部分12を越えて延びている。フレーム24の断面は、実質的に円形であり、直径が約0.15インチ(3.81mm)であり、プロング54,56は、これよりも僅かに大きい直径を有する。各プロング54,56は、図4に示されているように湾曲したボール形の又は球形の若しくは山形の戻り止め58を有し、図4は、左レッグ48の断面図である。プロング54,56は、山形の遠位先端部を有する。フレーム24は、プロング54,56が支持体14と連結可能に上述の層から突き出るように解剖学的部分12に連結されている。上述したように、一形態では、フレーム24は、肝臓層16中に直接成形されており、このフレームは、色が明澄若しくは透明であり、又はこのフレームがユーザには容易には見えないようにフレームが埋め込まれる肝臓層16と実質的に同一の色を有する。
【0023】
別の形態では、フレーム24は、山部を備えておらず、実質的にU字形である。図7に示されているように、フレーム24の中央部分52は、真っ直ぐであり、他の層16,18,22の山部の形状を追従してはいない。この形態により、山部30の配設場所における他の層16,18,22への支持作用が小さく、有利には、これらの層の全ては、可撓性が高く、しかもフレーム24に隣接して位置する領域に対して遠位側に又は近位側に容易に押すことができ、それにより胆嚢32からの肝臓16のリトラクションを練習することができ、他方、支持体14でのモデル10全体に対する支持作用が依然として提供される。この形態では、右レッグ50と左レッグ48の両方は、山部30の配設場所での左レッグ48がより長いのではなく、長さが約2.5〜3.0インチ(6.35〜7.62cm)の同一の長さのものである。層16,18,22に形成されている山部30は、肝臓の一部分のみ、特に、肝臓の右葉を表しており、胆嚢層20の解剖学的構造体の全ては、モデル10に示されている。
【0024】
さらに図5を参照すると、支持体14は、解剖学的部分12に結合して解剖学的部分12をテーブルトップ又は他の表面に対して実質的に直立した向きに保持するよう構成されている。支持体14は、直立部分62に相互連結されたベース60を有する。直立部分62は、フレーム24のプロング54,56を受け入れるような寸法形状の少なくとも2つの受け口64を有する。直立部分62は、各受け口64と連絡状態にあるばね押しプランジャ66を更に有する。解剖学的部分12を支持体14に連結するため、プロング54,56が支持体14の受け口64中に挿入される。プロング54,56の山形遠位先端部は、プランジャ66に対してカム作用を及ぼし、ついには、かかる山形遠位先端部は、各プロング54,56に設けられている戻り止め58内にスナップ動作で入り、それにより解剖学的部分12を支持体14にしっかりとロックする。解剖学的部分12は、プランジャ66を各戻り止め58から解除することによって又は戻り止め58がプランジャ66に対してカム作用を及ぼしてプランジャ66を邪魔にならないところに動かすような力で引くことによって支持体14から取り外すことができる。解剖学的部分12を支持体14中に又は大きな解剖学的モデル、器官トレイ又は腹腔鏡訓練器械の取り外し可能な部分として形成された受け口中にスナップ嵌めすることができる。解剖学的部分12を図7に示されているように割られて外方に扇形に開く左プロング54及び右プロング56を含む支持体14に連結するための任意方式の連結嵌合手段は、本発明の範囲に含まれる。プロング54,56は、更に外方に付勢されて傾けられ、それにより撓んだ状態で戻り止めを越えてこの戻り止めの後ろにスナップ係合し、それにより解剖学的部分12を支持体14に固定する。解剖学的部分12を取り外すためには、ユーザが支持体14の下でプロング54,56の割り端部を互いに押し潰し又はすぼめ、それによりプロング54,56が戻り止めを越えて滑ることができるようにする。フレーム24及び解剖学的部分12を支持体14から分離する。
【0025】
胆嚢モデル10を用いると、胆嚢解剖学的構造体に係る開放手技を練習することができる。また、胆嚢モデル10は、腹腔鏡下胆嚢手技を練習するのに特に好適である。腹腔鏡下胆嚢手技を練習するため、モデル10を腹腔鏡訓練器械68、例えば図6に示され且つプラボング等(Pravong et al.)により2011年9月29日に出願され、そしてアプライド・メディカル・リソーシズ・コーポレイション(Applied Medical Resources Corporation)に譲渡され、そして米国特許出願公開第2012/0082970号として公開された同時係属中の米国特許出願第13/248,449号(発明の名称:Portable laparoscopic trainer)に記載された訓練器械68内に配置する。なお、この米国特許出願公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0026】
依然として図6を参照すると、腹腔鏡訓練器械68は、トップカバー70を有し、トップカバー70は、ベース72に、トップカバー70をベース72から隔てる1対のレッグ74によって連結されている。腹腔鏡訓練器械68は、患者の胴、例えば腹部領域を真似るよう構成されている。トップカバー70は、患者の前方面を表し、トップカバー70とベース72との間に構成された空間は、臓器が納められている患者の内部又は体腔を表している。腹腔鏡訓練器械68は、患者を真似た状態で種々の外科的処置及びこれらの関連の器械を教示し、練習すると共に/或いは実演する上で有用なツールである。外科用器械がトップカバー48にあらかじめ設けられている孔76を通ってキャビティ中に挿入される。これらあらかじめ設けられた孔76は、トロカールを真似たシールを有するのが良く又は患者の皮膚及び腹壁部分を真似ている模擬組織領域を有するのが良い。種々のツール及び種々の方法を用いてトップカバー70を穿通することができ、それによりトップカバー70とベース72との間に配置されたモデル臓器、例えば胆嚢モデル10に対する実寸大の手技を実施することができる。訓練器械68のキャビティ内に配置されると、胆嚢モデル10は、一般に、ユーザの視界から覆い隠され、ユーザは、この場合、ビデオモニタ78上に表示されるビデオフィードにより手術部位を間接的に観察することによって手術法の実施を腹腔鏡下で練習することができる。ビデオディスプレイモニタ78は、トップカバー70にヒンジ留めされており、図6に開放配向状態で示されている。ビデオモニタ78は、イメージをモニタ78に送るための種々の視覚システムに連結可能である。例えば、あらかじめ形成された孔76のうちの1つ又はキャビティ内に設けられたウェブカムを通って挿入され、そして模擬手技を完成するために用いられる腹腔鏡をビデオモニタ78及び/又はモバイルコンピュータ計算装置に連結してイメージをユーザに提供するのが良い。
【0027】
組み立てられると、トップカバー70は、レッグ76が実質的に周囲のところに配置されると共にトップカバー70とベース72との間に相互に連結された状態でベース72の真上に配置される。トップカバー70及びベース72は、実質的に同一の形状及びサイズのものであり、実質的に同一の周辺輪郭を有している。腹腔鏡訓練器械68は、ベース72に対して角度をなしたトップカバー70を有する。レッグ52は、ベース72に対するトップカバー70の角度を調節することができるよう構成されている。図6は、ベース72に対して約30〜45°の角度に合わせて調節された訓練器械68を示している。トップカバー70の選択された傾斜角は、レッグ74に設けられている蝶ねじを締め付けることによってロックされる。ベース72に対する訓練器械68のトップカバー70のかかる傾斜角は、本発明の胆嚢モデル10の受け入れに関して特に有利である。
【0028】
トップカバー70が図6に示されているように傾けられた状態で、胆嚢モデル10を訓練器械68のキャビティ中に挿入し、そしてトップカバー70とベース72との間に位置決めする。胆嚢モデル10が訓練器械68に挿入された状態で、腹膜層20は、訓練器械68の正面に向く。具体的に言えば、胆嚢モデル10の内面は、実質的に、孔又は組織模擬領域76に向く。トップカバー70は、トップカバー70がユーザと胆嚢モデル10との間に位置決めされるよう傾けられる。ユーザによる接近方向は、トップカバー70に設けられた孔又は模擬組織76を介してである。トップカバー70のこれらの場所76中に挿入して胆嚢モデル10に接近し、それにより外科的処置を練習する。また、孔76のうちの1つを通ってスコープをトップカバー70とベース72との間の訓練器械キャビティ中に挿入して隠れている胆嚢モデル10のビデオ画像を捕捉してこれらをビデオモニタ78によりユーザに表示する。
【0029】
腹腔鏡下胆嚢摘出術を練習するユーザは、スコープに加えて他の器械を腹腔鏡訓練器械68のキャビティ中に通して訓練器械68内の胆嚢モデル10に接近する。モデル10は、有利には、リトラクト状態の胆嚢を描き又は真似ているので、ユーザは、外科用把持器を用いて模擬肝臓をリトラクトする必要がなく、しかも、リトラクトされた位置を維持するためにアシスタントに把持器のうちの1つ又は2つ以上を保持させる必要もない。これとは異なり、胆嚢モデル10は、1人で使用されるよう設計されている。
【0030】
腹腔鏡下胆嚢摘出術の練習にあたり、ユーザは、挿入状態のスコープを用いてモニタ78上で画像を観察することによってカロー三角を識別する練習を行う。カロー三角を識別した後、腹膜層22を切開し、胆嚢管34と胆嚢動脈40に接近する。有利には、腹膜層22の選択された部分だけが下に位置する層18又は層18,20にくっつけられているので、胆嚢管34及び胆嚢動脈40を腹膜層22から容易に骨格化し又は分離する。また、胆嚢管34及び胆嚢動脈40の幾つかの部分並びに胆嚢層20の他の要素が選択的に下に位置する層に取り付けられているので、これらは、有利には、これらの解剖学的レイアウトを維持すると共にこれらが生体内にあるように依然として比較的可動状態にある。肝臓層16又は1つ若しくは2つ以上の隣接した筋膜又は腹膜層18,22に対する胆嚢層20を含む要素の可動性は、有利には、かかる層18,22がモデル10内に単に存在すると共にかかる胆嚢層要素が筋膜層18及び腹膜層22のうちの1つ又は2つ以上に選択的にくっつけられていることによってだけでなく、それ自体下に位置する肝臓層16に選択的にくっつけられている下に位置する筋膜層18の可動性によって高められる。隣接の層への1つの層の選択的なくっつきは、あらかじめ選択された領域への接着剤の塗布及び隣接の層に対する大幅な可動性及び/又は除去を要求する解剖学的構造体の戦略的な領域には接着剤が設けられていないことに起因して得られる。胆嚢32に関し、胆嚢32は、肝臓層16の上方に配置された筋膜層18に取り付けられている。これにより、肝臓層16に対する損傷又は肝臓層16に対するほんの僅かの損傷(これらはいずれも、この手技の現実的な結果である)を及ぼすことなく、胆嚢32をモデル10から除去することができる。肝臓は、血管が集まっていて且つ敏感な構造体であり、肝臓にそれほど気を掛けないで胆嚢を除去することは、胆嚢摘出術の成功にとって重要であり、モデル10により、有利には、練習におけるかかる成果の実現が可能である。筋膜層18は、現実に存在していないが、筋膜層は、シミュレーションを助ける。と言うのは、筋膜層18が存在しない場合、接着剤を胆嚢と肝臓との間の現実の結合組織と同じ仕方で切開することができないからである。一形態では、腹膜層22の外面は、接着剤で胆嚢層20にくっつけられる。同じ形態では、腹膜層22も又、第2の層18の内面に、周囲の少なくとも一部に沿ってのみ接着剤によりくっつけられる。また、同じ形態では、第2の層18の外面は、肝臓層16の内面に、周囲の少なくとも一部に沿ってのみ接着剤によってくっつけられる。この形態の結果として、腹膜層22を引くと、その結果として、胆嚢層20が腹膜層22と一緒に引っ張られ、その結果、第2の層18及び肝臓層16に対する腹膜層22と胆嚢層20の組み合わせがテント状になる。と言うのは、腹膜層22は、第2の層18に周囲でのみ取り付けられると共に第2の層18が肝臓層16に周囲の少なくとも一部に沿ってのみ取り付けられ、それにより効果的なテント状になる効果を得ることができるからである。この形態の変形例では、胆嚢32は、第2の層30の内面にくっつけられる。胆嚢層20及び/又は腹膜層22及び/又は胆嚢32を層16,18,22に実質的に垂直な方向に又は肝臓層16から遠ざかるように引くと、その結果として、第2の層18が胆嚢32の存在場所のところで肝臓層16に対して更にテント状になる。層18,22は、延伸性でありしかも上述したように選択的にくっつけられるので、層18,20,22がテント状になることが容易に起こる。それ故、腹膜層22が肝臓層16から遠ざかる方向に引かれると、所定の数選択されたくっつきの結果として、腹膜層22がテント状になることにより腹膜層22と筋膜層18の間に第1の隙間又はポケットが形成される。また、筋膜層18が第2の層18に対する胆嚢32の所定の且つ選択的なくっつきに起因して引かれているときに筋膜層18が肝臓層16に対してテント状になるので、筋膜層18と肝臓層16との間に第2の隙間又はポケットが形成される。この場合、第2の隙間又はポケットは、腹膜層22が肝臓層16から引き離されたとき、第1の隙間又はポケットよりも小さい。また、第2の層18は、腹膜層22よりも僅かに厚く作られるのが良い。腹膜層22及び第2の層18は、肝臓層16よりも厚い。
【0031】
胆嚢32の除去に先立って、ユーザは、訓練器械68の孔76のうちの1つを通して外科用クリップアプライアを導入し、そしてクリップを2つの場所で胆嚢管34と胆嚢動脈40の両方に留めるのを練習する。血管構造体及び胆管構造体は、模擬組織構造体が人間の解剖学的構造体と同様に機能すると共に柔軟性であることができ、切開可能であり、しかも外科用クリップからの実際にクリップの適用に耐えることができる材料で作られ、その結果、クリップが胆嚢層20の構造に対して閉じられると、クリップは、これら構造を切断することがないようになる。次に、ユーザは、孔76のうちの1つを通って腹腔鏡的鋏を挿入し、そして胆嚢管34及び胆嚢動脈40をクリップの2つの場所相互間で切断する。次に、胆嚢32を肝臓の肝床から切り離して孔76のうちの1つの中に挿入されたトロカールのうちの1つを通って取り出す。胆嚢32は、有利には、筋膜層18に取り付けられており、肝臓層16には直接的には取り付けられていない。筋膜層18の存在により、胆嚢32の除去が上述したように真に迫ったものとなり、それにより切開のための位置が提供される。
【0032】
胆嚢モデル10は又、腹腔鏡下総胆管試験切開において研修医及び外科医を訓練するのに有用である。総胆管試験切開は、胆石又は他の何らかの障害物が胆嚢又は肝臓から腸への胆汁の流れを妨げているかどうかを確認するために用いられる手技である。この手技の練習では、胆嚢モデル10は、腹腔鏡訓練器械68のキャビティ内に配置され、スコープが腹腔鏡訓練器械68の孔76のうちの1つに挿入された状態で且つその結果としてのライブ画像がビデオモニタ78上に表示された状態で、上述した胆嚢摘出術の場合と同様に腹腔に接近する。ユーザは、モニタ78上で総胆管38を識別する。ブレード付きの器械を訓練器械68のキャビティ中に導入し、総胆管38に小さな半周切開創を作る。胆管造影カテーテル(図示せず)がカリフォルニア州所在のアプライド・メディカル・リソーシズ・コーポレイションによって製造されたAEROSTAT(登録商標)を孔76のうちの1つを通って腹腔鏡訓練器械68のキャビティ中に挿入し、そして総胆管38に作られた切開創中に挿入する。造影剤又は放射性不透過性流体の代わりに、着色された水をシリンジによりカテーテルの遠位端部中に注入し、そしてかかる着色水が胆嚢管34及び総胆管38中に流れるようにする。着色水は、1つ又は2つ以上の胆管構造体を満たし、それにより模擬胆石を見ることができるようにする。それ故、胆管試験切開のための訓練の際、本発明の胆嚢モデル10を用いた訓練手技において胆石の存在を識別するために蛍光透視検査は不要である。胆石が存在する場合、障害物は、着色水の流れにある不連続部として見える。次に、ユーザは、流体の流れの障害物又は色の不連続部の存在場所のところに模擬胆石の存在場所を突き止める練習を行うことができる。模擬胆石の存在場所がいったん突き止められると、ユーザは、かかる胆石を中空胆管構造体から除去するのを練習する。
【0033】
本発明は、総胆管試験切開を練習するためのキットを更に含む。総胆管試験切開のためのキットは、胆嚢モデル10及び着色水のシリンジを含む。このキットは、胆嚢層20の胆管構造体中に挿入できるカテーテル及び/又は複数の模擬胆石を更に含む。このキットは、任意の1本又は2本以上の管34,36,38及び動脈40,42,44,46及び/又はコネクタの交換部分を更に含むのが良い。交換用管は、総胆管試験切開を練習するための中空ルーメンを有する。キットに含まれる他の交換用管及び/又は動脈は、先の手技の練習の際に先に切断された管及び/又は動脈を交換するための中実直径構造体である。
【0034】
本発明の胆嚢モデル10は、腹腔鏡下手技に特に適しているが、本発明は、これには限定されず、本発明の胆嚢モデルは、開放手術手技で同様に効果的に利用できる。
【0035】
本明細書において開示した胆嚢モデル10の実施形態に対する種々の改造を行うことができることは言うまでもない。したがって、上述の説明は、本発明を限定するものではなく、好ましい実施形態の例示に過ぎないと解されるべきである。当業者であれば、本発明の範囲及び精神に含まれる他の改造例を想到するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7