(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496718
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20190325BHJP
F16H 35/10 20060101ALI20190325BHJP
F16D 43/202 20060101ALI20190325BHJP
F16D 7/04 20060101ALI20190325BHJP
H02K 5/10 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
H02K7/116
F16H35/10 G
F16D43/202
F16D7/04 A
H02K5/10 Z
【請求項の数】23
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-521576(P2016-521576)
(86)(22)【出願日】2014年6月19日
(65)【公表番号】特表2016-528861(P2016-528861A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】US2014043185
(87)【国際公開番号】WO2014205217
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2017年5月17日
(31)【優先権主張番号】61/836,936
(32)【優先日】2013年6月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501241575
【氏名又は名称】マグナ インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ マーティン アール
(72)【発明者】
【氏名】ポヴィネリ アンソニー ジェイ
【審査官】
若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−308026(JP,A)
【文献】
特開2011−195039(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0101603(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0226541(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
F16D 7/04
F16D 43/202
F16H 35/10
H02K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部クラッチを備え車両部品に取付けることができる密封型アクチュエータであって、
出力軸であって、出力ギアと、前記出力軸を中心に自由に回転可能である出力デテントリングとを有する出力軸と、
前記出力軸に摺動可能に取付けられた可動デテントリングと、
前記出力デテントリングに設けられ、前記可動デテントリングに設けられた第2の噛合い傾斜歯と選択的に噛合い係合する第1の噛合い傾斜歯と、
前記出力軸に取付けられ前記可動デテントリングに対して押圧力を付与し、これによって、前記可動デテントリングの第2の噛合い傾斜歯を前記出力デテントリングの第1の噛合い傾斜歯に対して選択的に保持する波形スプリングであって、該波形スプリングの押圧力に打勝つのに十分に高い所定レベルの荷重を受けたとき、前記第1の噛合い傾斜歯と第2の噛合い傾斜歯とが、前記波形スプリングの押圧力に打勝つ軸線方向力を生成することになり、この軸線方向力が、前記可動デタントリングを前記出力軸から係合離脱させ前記出力軸が自由に回転できるようにする、波形スプリングと、
固定されシールされたハウジング部分であって、該ハウジング部分内には出力軸が取付けられているハウジング部分と、
出力ギアと接触する選択捩り力伝達ギアを備えた主ギアと、
該主ギアと接触する選択捩り力伝達ギアを形成するウォームギアを備えたモータと、を備え、
前記ウォーギアが、前記モータからのトルクを前記主ギアおよび出力ギアを介して前記ハウジング部分の外部に前記出力軸を介して伝達するように回転可能である、
ことを特徴とする内部クラッチを備え車両部品に取付けることができる密封型アクチュエータ。
【請求項2】
前記出力デテントリングは、前記出力軸上で選択的に回転するように取付けられている、
請求項1記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項3】
前記可動デテントリングは、前記出力軸上で選択的に軸線方向移動するように取付けられている、
請求項1記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項4】
前記可動デテントリングは、前記出力軸に対して半径方向にロックされている、
請求項1記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項5】
前記出力軸は、更に、連動スプラインを有し
前記可動デテントリングは、更に、外側の連動スプラインを有し、
前記可動デテントリングは、前記外側の連動スプラインおよびそれぞれの連動スプラインにより前記出力軸上で半径方向にロックされている、
請求項1記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項6】
前記アクチュエータは、クラッチ作動するときに高さを変化させない、
請求項1記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項7】
前記アクチュエータは、クラッチ作動するときに形状または高さを変化させない、
請求項1記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項8】
前記出力ギアは、出力デテントリングの凹部と噛合う周方向セグメントを有している、
請求項1記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項9】
前記出力軸、出力ギア、出力デテントリング、可動デテントリングおよび波形スプリングを出力軸上で一体に保持するための、前記出力軸のそれぞれの端部に配置される第1ロッキングリングおよび第2ロッキングリングを更に備えている、
請求項1記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項10】
前記モータはプリント回路基板(PCB)を更に有し、該PCBは、所定の条件に基づいて、車両の通信ネットワークおよび/またはモータの付勢を指令する少なくとも1つのセンサと相関している、
請求項1記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項11】
前記ハウジング部分は第1半部および第2半部を有し、該第1および第2半部は緊締具により一体に結合および保持されて防水ハウジングを形成している、
請求項1記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項12】
第1シールおよび第2シールを更に有し、該第1および第2シールは出力軸の両端部に取付けられて出力軸と第1半部および第2半部のそれぞれの開口との間に耐候シールを形成する、
請求項11記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項13】
前記モータおよび該モータの電子デバイスおよびコネクタ接点は、前記第2半部に設けられた第1モータキャビティおよび前記第2半部の第2モータキャビティ内に配置され、前記主ギアは、前記第1半部に設けられた主ギアキャビティおよび前記第2半部の第2主ギアキャビティにより形成されたキャビティ内に配置されている、
請求項12記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項14】
前記可動デテントリング、波形スプリング、出力デテントリング、出力ギア、出力軸および第1および第2保持リングは、前記第1半部および第2半部のそれぞれ第1クラッチアセンブリキャビティおよび第2クラッチアセンブリキャビティ内に配置されている、
請求項13記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項15】
前記出力軸は両方向に回転できる、
請求項1記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項16】
前記内部クラッチを備えた密封型アクチュエータは、そのいずれか一方の端部または両端部から軸または外部駆動部品を駆動可能にする出力貫通駆動構造を有している、
請求項1記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項17】
前記内部クラッチを備えた密封型アクチュエータは、アクティブグリルシステムの駆動に使用される、
請求項1記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項18】
内部クラッチを備え車両部品に取付けることができる密封型アクチュエータであって、
下方部分に複数の連動スプラインを有する出力軸と、
連動スプラインを有していない前記出力軸の一部上に回転可能に取付けられた出力デテントリングと、
連動スプラインが設けられていない前記出力軸の一部上で回転可能に取付けられ、前記出力デテントリングと噛合っている出力ギアであって、前記出力デタントリングと該出力ギアが前記出力軸を中心に自由に回転可能である出力ギアと、
前記出力軸の下方部分に摺動可能に取付けられた可動デテントリングであって、前記出力デテントリングと相互噛合いでき、前記出力軸とともに回転できるように前記出力軸に半径方向に選択的にロックされている可動デテントリングと、
前記出力デテントリングに設けられ、前記可動デテントリングに設けられた第2の噛合い傾斜歯と選択的に噛合い係合する第1の噛合い傾斜歯と、
前記出力軸に取付けられ前記可動デテントリングに対して押圧力を付与し、これによって、前記可動デテントリングの第2の噛合い傾斜歯を前記出力デテントリングの第1の噛合い傾斜歯に対して選択的に保持する波形スプリングであって、該波形スプリングの押圧力に打勝つのに十分に高い所定レベルの荷重を受けたとき、前記第1の噛合い傾斜歯と第2の噛合い傾斜歯とが、前記波形スプリングの押圧力に打勝つ軸線方向力を生成することになり、この軸線方向力が、前記可動デタントリングを前記出力軸から係合離脱させ前記出力軸が自由に回転できるようにして前記密封型クラッチの損傷を防止する、波形スプリングと、
固定されかつシールされたハウジング部分であって、該ハウジング部分内には出力軸が取付けられているハウジング部分と、
前記出力ギアと接触する選択捩り力伝達ギアを備えた主ギアと、
該主ギアと接触する選択捩り力伝達ギアを形成するウォームギアとを有するモータと、を備え、
前記ウォームギアが、前記モータからのトルクを前記主ギアおよび出力ギアを介してハウジング部分の外部に前記出力軸を介して伝達するように回転可能である、
ことを特徴とする内部クラッチを備え車両部品に取付けることができる密封型アクチュエータ。
【請求項19】
前記出力デテントリングは、前記出力軸上で選択的に回転できるように取付けられている、
請求項18記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項20】
前記可動デテントリングは更に外側連動スプラインを有し、
前記可動デテントリングは、前記外側連動スプラインおよびそれぞれの連動スプラインにより出力軸上で半径方向にロックされている、
請求項18記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項21】
前記モータはプリント回路基板(PCB)を更に有し、該PCBは、所定の条件に基づいて、車両の通信ネットワークおよび/またはモータの付勢を指令する少なくとも1つのセンサと相関している、
請求項18記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項22】
第1シールおよび第2シールを更に有し、該第1および第2シールは出力軸の両端部に取付けられて出力軸とハウジング部分の第1半部および第2半部のそれぞれの開口との間に耐候シールを形成し、第1シールおよび第2シールは、一体結合されると防水ハウジングを形成する、
請求項18記載の内部クラッチを備えた密封型アクチュエータ。
【請求項23】
内部クラッチを備え車両部品に取付けることができる密封型アクチュエータであって、
下方部分に複数の連動スプラインを有する出力軸と、
前記出力軸上で自由に回転できるように、連動スプラインが設けられていない前記出力軸の一部上に回転可能に取付けられ出力デテントリングと、
連動スプラインが設けられていない前記出力軸の前記一部に回転可能に取付けられ、前記出力デテントリングと噛合っている出力ギアであって、該出力ギアと前記出力デテントギアとが前記出力軸を中心に自由に回転する、出力ギアと、
前記出力軸の下方部分に摺動可能に取付けられ、前記出力軸とともに回転できるように前記出力軸に選択的に半径方向にロックされている可動デテントリングと、
前記出力デテントリングに設けられ、前記可動デテントリングに設けられた第2の噛合い傾斜歯と選択的に噛合い係合する第1の噛合い傾斜歯と、
前記可動デテントリングの半径方向移動を選択的に防止するように、前記出力軸に設けられた連動スプラインと連動可能な、前記可動デテントリングに形成された外側の連動スプラインと、
前記出力軸に取付けられ前記可動デテントリングに対して押圧力を付与し、これによって、前記可動デテントリングの第2の噛合い傾斜歯を前記出力デテントリングの第1の噛合い傾斜歯に対して選択的に保持する波形スプリングであって、該波形スプリングの押圧力に打勝つのに十分に高い所定レベルの荷重を受けたとき、前記第1の噛合い傾斜歯と第2の噛合い傾斜歯とが、前記波形スプリングの押圧力に打勝つ軸線方向力を生成することになり、この軸線方向力が、前記可動デタントリングを前記出力軸から係合離脱させ前記出力軸が自由に回転できるようにする、波形スプリングと、
耐候シールを形成するハウジング部分と、
前記出力ギアと接触する選択捩り力伝達ギアを備えた主ギアと、
前記主ギアと接触する選択捩り力伝達ギアを形成するウォームギアを備えたモータとを備え、
前記ウォームギアが、前記モータからのトルクを前記主ギアおよび出力ギアを介してハウジング部分の外部に前記出力軸を介して伝達するように回転可能である、
ことを特徴とする内部クラッチを備え車両部品に取付けることができる密封型アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のアクチュエータアセンブリに使用するクラッチシステムに関する。
【0002】
本願はPCT国際出願であり、2013年6月19日付米国仮特許出願第61/836,936号の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
車両のミラーを折畳むクラッチアクチュエータアセンブリは知られている。これらの機構は多くの欠点を有しかつ特定の用途には強度が充分でないことも知られている。一般に、アクチュエータは、固定しなければならないベースと、80°しか移動できない上半部とを備えたヒンジ型アクチュエータである。このベースおよび上半部はまた、クラッチ作動中に離れて移動する。既知のアクチュエータは防水型ではなく、サイクル条件を満たさずかつ車両のエアロダイナミック構造に必要とされる他のより頑丈なアセンブリ条件を満たすものではない。従来のアクチュエータは、高サイクル寿命、防水性を有する安全な過負荷クラッチ、および保持トルクキャパシティ容量等の所望の属性が組合わされたものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、車両の床下環境における環境要素から保護され、優れたサイクル耐久性を有し、両方向に駆動でき、停止したときの位置を保持し、貫通駆動部を有し、かつ高い所定負荷を受けたときにアクチュエータを保護するクラッチシステムを有するアクチュエータを形成するアクチュエータアセンブリを提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、内部クラッチアセンブリを備えた密封型アクチュエータに関する。出力軸と、出力デテント(戻り止め)リングと、可動デテントリングと、波型スプリングロックとを有しかつ密封されたツーパートハウジング内に嵌合されたクラッチシステムが提供される。可動デテントは出力軸に対して軸線方向に移動でき、出力デテントリングは出力軸上で回転できる。これらのリングの噛合い傾斜歯は、波型スプリングロックにより一体に保持されて出力軸を回転させかつモータのトルクを出力軸により保持された出力ギアに連結された主ギアを介してツーパートハウジングの外部に伝達できる。
【0006】
アクチュエータは両方向に駆動すべく作動できるが、動的範囲より数倍大きい負荷を受けて停止したときにも後退することなく、その位置を保持する。また、アクチュエータは、駆動システムを係合離脱させて回転可能にするクラッチシステムにより、所定負荷(非常に高い所定負荷)から損傷を受けないようにアクチュエータ自体を保護する。所定の高負荷条件下では、出力デテントリングおよび可動デテントリングの傾斜歯が波型スプリングからの荷重に打勝つ軸線方向力を発生し、この力により、デテントリングが係合離脱されるように移動されて出力軸が自由に回転できるようになり、アクチュエータへの損傷が防止される。
【0007】
本発明の他の適用領域は、以下に述べる詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明および特定例は本発明の好ましい実施形態を示すものであるが、例示のみを目的とするものであって本発明の範囲を制限するものではないことを理解されたい。
【0008】
本発明は、以下の詳細な説明および添付図面からより完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明によるアクチュエータアセンブリのクラッチシステムを示す斜視図である。
【
図2】内部クラッチアセンブリを備えたアクチュエータを示す斜視図であり、明瞭化のためハウジングおよびモータ装置は取外されている。
【
図3】内部クラッチアセンブリを備えた本発明による密封型アクチュエータを示す斜視図であり、明瞭化のためハウジングは取外されている。
【
図4】内部クラッチアセンブリを備えた本発明によるアクチュエータを示す分解図である。
【
図5】内部クラッチアセンブリを備えた本発明によるアクチュエータの使用環境の一例として、アクティブグリルを備えた車両のエンジン隔室を示す一部を破断した斜視図である。
【
図6】内部クラッチアセンブリを備えた本発明によるアクチュエータの用途の一例としてアクティブグリルシステムを示す、一部を破断した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましい実施形態についての以下の説明は単なる例示であり、いかなる意味においても本発明、その用途または使用を限定するものではない。
【0011】
内部クラッチアセンブリを備えた本発明による密封型アクチュエータが提供され、該密封型アクチュエータは、所望の高サイクル耐久性が得られかつ例えば環境要素に露出される床下環境で使用される防水構造と組合わせることができる。内部クラッチアセンブリを備えた密封型アクチュエータは更に、安全なオーバーライドクラッチシステムを提供し、該オーバーライドクラッチシステムは、所定の条件下例えば所定の高負荷下でアクチュエータが回転することを可能にし、より詳細に後述するように、内部クラッチアセンブリを備えたアクチュエータのモータおよび他のコンポーネンツの保護を補助する。異常な負荷または所定の大きさの力または他の所定の条件を受けたとき、内部クラッチアセンブリを備えたアクチュエータは、これらの影響が及ばないようにしてアクチュエータへの損傷を防止する。
【0012】
図1から
図4を広く参照すると、内部クラッチアセンブリを備えた密封型アクチュエータはその全体が参照番号10で示されており、全体を参照番号12で示すクラッチシステムと、全体を参照番号14で示すハウジング部分とを有している。クラッチシステム12は、出力デテントリング18および可動デテントリング20内に受入れられかつこれらのデテント18、20を保持する出力軸16を有している。
【0013】
出力デテントリング16は、出力軸16のスプラインが形成されていない部分の回りで自由に回転できる。可動デテントリング20は、出力軸16に対して軸線方向に移動できるが、これらの両コンポーネンツに形成された複数の連動スプライン22、24により半径方向にロックされる。出力軸16の連動スプライン22は出力軸16の長手方向軸線に対して平行に配置されかつ出力軸16の下半部に形成された外面の回りで作動可能に間隔を隔てている。可動デテントリング20は外側連動スプライン24を有し、該外側連動スプライン24には、可動デテントリング20の制御された軸線方向移動を行わせるため、出力軸16の連動スプライン22と摺動可能に連動する補完チャネルが形成されている。出力軸16の連動スプライン22は一体に形成された突出リング26に終端しており、該突出リング26は軸線に対して横方向に延びている当接面28を有し、該当接面28には出力デテントリング18が係合する。出力デテントリング18は、出力軸16の当接面28と当接して、軸線方向には移動できない。
【0014】
出力ギア30は出力デテントリング18と噛合って、トルクを伝達する。出力ギア30は周方向に間隔を隔てたセグメント32を有し、該周方向セグメント32は、トルクを伝達できるように出力デテントリング18の対向凹部34内の所定位置に保持される全体として矩形歯のような形状を有している。
【0015】
出力デテントリング18および可動デテントリング20は、全体を参照番号36および38で示す、それぞれ第1および第2相互噛合い傾斜歯を有し、これらの第1および第2傾斜歯36、38は、波型スプリング40の押圧力により噛合い状態に保持される。波型スプリング40は外側出力軸16上に保持されかつ可動デテントリング20に対して出力デテントリング18の方向に押圧力を加える。
【0016】
クラッチシステム12のコンポーネンツ(例えば、出力軸16、出力ギア30、出力デテントリング18、可動デテントリング20および波型スプリング40)は、クラッチシステム12の出力軸16のそれぞれの端部に配置される第1および第2ロッキングリング42、44により一体に保持される。
【0017】
モータ46は、特定用途に適したトルクを選択的に付与する。コネクタ接点50を備えた適当な電子デバイス(例えば、遮断プリント回路基板(PCB))は、所定の条件に基づいて、車両の通信ネットワークおよび/またはモータ46に指令を与える少なくとも1つのセンサと相関している。非制限的な例であるが、モータの付勢は車両速度と相関させることができる。
【0018】
モータ46は全体を参照番号52で示すウォームギアを有し、該ウォームギア52は全体を参照番号54で示す主ギアを回転させる。主ギア54は、ギア56と、捩れ角部分58とを有している。ウォームギア52は、ギア56の歯と係合する軸(例えばねじ軸)を有し、該軸は、ウォームギア52が回転すると主ギア54のギア56を回転させる。ギア56が回転すると、主ギア54の捩れ角部分58も回転する。捩れ角部分58は、出力ギア30を回転可能に係合している。捩れ角部分58に対するギア56のギア比範囲は、モータ/ウォームギア46/52から出力ギア30へのトルク伝達作動に適した範囲である。出力デテントリング18の第1相互噛合い傾斜歯36および可動デテントリング20の相互噛合い傾斜歯38は、波型スプリング40の押圧力により一体に保持されているとき、出力軸16をロックして、該出力軸16が回転することおよびモータ46のトルクを主ギア54および出力ギア30を介してハウジング部分14の外部に伝達することを可能にする。非制限的な例であるが、出力軸16は、ハウジング部分14の外部に配置される少なくとも1つのコンポーネントを、少なくとも第1位置と第2位置との間で選択的に回転させ、折畳みまたは移動させるコンポーネントおよび/または駆動軸に連結される。波型スプリング40は、押圧力条件および所定の負荷条件を満たす限り、よりコンパクトな構造にすることができる。
【0019】
ハウジング部分14は、第1半部60および第2半部62を有している。第2半部62は、第1クラッチアセンブリキャビティ64および第1モータキャビティ66を有している。第1半部60は、第2クラッチアセンブリキャビティ68、主ギアキャビティ70および第2モータキャビティを有している。クラッチシステム12はハウジングの第1および第2半部60、62の内部(第1および第2クラッチアセンブリキャビティ64、66内)、モータ46および電子デバイス48、50は第1モータキャビティ66および第2モータキャビティ内、および主ギア54は主ギアキャビティ70内に完全に嵌合される。ハウジング部分14の第1および第2半部60、62は、緊締具および耐候ハウジングを形成すべく出力軸16上に付加される第1および第2シール72、74により一体に連結および結合される。
【0020】
作動時に、出力デテントリング18および可動デテントリング20の相互噛合い傾斜歯36および38は、波型スプリング40の押圧力により一体に保持されているとき、出力軸16を一体にロックしかつ回転可能にする。これにより、モータ46およびウォームギア52から、主ギア54および出力ギア30を通り、出力軸16を介して、ハウジング部分14の外部にトルクを伝達できる。所定レベルの高負荷が作用している間は、第1および第2相互噛合い傾斜歯36、38は、波型スプリング40からの荷重に打勝つ軸力を発生する。これにより、可動デテントリング20との係合が離脱されて出力軸16が自由に回転できるようになり、したがって、密封型アクチュエータの内部クラッチアセンブリ10への損傷が防止される。
【0021】
かくして、両方向に駆動できるが、停止したときには、所定の荷重(例えば、その動的範囲より数倍大きい荷重)を受けても逆動することなくその位置を保持できる、内部クラッチアセンブリ10を備えた密封型アクチュエータが提供される。アクチュエータ10はまた、駆動システムとの係合を離脱して駆動システムが回転できるようにする(例えば、出力軸16が自由に回転できるようにする)クラッチにより、所定の荷重(例えば非常に大きい荷重)から受ける損傷からアクチュエータ自体を保護する。内部クラッチアセンブリ10を備えた密封型アクチュエータは防水ハウジング内にあり、必要とする多くの回転数で両方向に回転できる。クラッチは、ハウジング内に完全に内臓される。アクチュエータは、出力貫通駆動構造、例えば軸またはその一部を両側から駆動できるようにする出力軸16の構造を有している。アクチュエータは、外部可動部品のみを駆動部として、固定部品に取付けることができる。内部クラッチアセンブリ10を備えた密封型アクチュエータのクラッチシステム12はまた、クラッチ作動をしたときに形状または高さが変化しないが、これも大きな長所である。
【0022】
本発明による内部クラッチアセンブリ10を備えた密封型アクチュエータは、非制限的な例として、車両のリアスポイラ、可動エアディフューザ、アクティブグリルシャッタシステムおよび可動コンポーネンツを備えた床下環境を含む種々の用途(但し、これらに限定されない)に使用できる。例えば、内部クラッチアセンブリ10を備えた密封型アクチュエータは、後部スポイラの用途に使用して、正常なエアロダイナミックの下ではリアスポイラが所定位置に留まるが、スポイラに接触してこれを押すような所定負荷の下では例えばアクチュエータへの損傷を避けるべくリアスポイラを移動させることができる。
ここで
図5を参照すると、アクティブグリル型システムへの適用例が示されている。
図5は車両のエンジン隔室100の一部を破断した斜視図であり、アクティブグリル102が連結されているところが示されている。アクティブグリル102は、開位置と閉位置との間で移動して、車両のエンジン隔室100内への空気流を調整する2枚以上のベーン104を有している。
図5に示すように、2枚以上のベーン104は、アクティブグリル102の一部として全部で6枚のベーンを有している。しかしながら、特定用途の必要性に応じて、1枚のベーンを含む任意の数のベーンを実施できる。アクティブグリル102はフレーム106およびセンターバー108を有し、これらは、空気流路を形成しかつ2枚以上のベーン104を閉位置と開位置との間で回転できるように取付ける取付け面を形成する。アクティブグリル102には電気的に駆動されるアクチュエータが連結され、該アクチュエータには、ベーン104を開位置と閉位置との間で駆動する動力が供給されるように構成される。
【0023】
図6は、
図5のアクティブグリル102を示す、一部を破断した分解斜視図である。2枚以上のベーン104は、アクチュエータ(例えば、
図1〜
図4に示した内部クラッチアセンブリを備えた密封型アクチュエータ)112に連結された少なくとも1つの被駆動ベーン106を有している。アクティブグリル102の通常の作動時には、アクチュエータ112は少なくとも1つの被駆動ベーン106を閉位置と開位置との間で駆動しかつ移動させる動力を付与する。任意であるが、少なくとも1つの被駆動ベーン106には、該被駆動ベーン106とアクチュエータ112との間に連結されるフェールセーフモジュール110を連結することもできる。フェールセーフモジュール110は、動力の故障またはアクチュエータ112の他の故障の場合に、少なくとも1つの被駆動ベーン106と他の全ての2枚以上のベーン104との連結を遮断して、2枚以上ベーン104を移動できるようにする機能を有している。アクティブグリル102を通って車両のエンジン隔室100内に流入する空気流が妨げられないようにするには、2枚以上のベーン104が閉位置を占めないことが望ましい。例えばエンジンが既に最適加熱状態にある場合のように、車両のエンジン隔室100内への空気流を妨げることを望まない場合に、エンジン隔室100内への空気流を防止するとエンジンのオーバーヒートを招くであろう。
【0024】
本発明の上記説明は本質の単なる例示であり、したがって本発明の本質から逸脱しない種々の変更は本発明の範囲内のものである。このような変更は、本発明の精神および範囲から逸脱すると考えるべきではない。
【符号の説明】
【0025】
10 密封型アクチュエータ
12 クラッチシステム
14 ハウジング部分
16 出力軸
18 出力デテントリング
20 可動デテントリング
30 出力ギア
46 モータ
54 主ギア
102 アクティブグリル
104 ベーン
110 フェールセーフモジュール
112 アクチュエータ