(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496721
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】翼形部の機械部品の研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 31/06 20060101AFI20190325BHJP
F04D 29/38 20060101ALI20190325BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20190325BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20190325BHJP
F01D 5/12 20060101ALI20190325BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20190325BHJP
【FI】
B24B31/06
F04D29/38 G
F01D25/00 X
F02C7/00 D
F01D5/12
F01D9/02 101
【請求項の数】27
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-522758(P2016-522758)
(86)(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公表番号】特表2016-535681(P2016-535681A)
(43)【公表日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】EP2014071939
(87)【国際公開番号】WO2015055601
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2017年10月6日
(31)【優先権主張番号】FI2013A000248
(32)【優先日】2013年10月17日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513243790
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】NUOVO PIGNONE S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ビアンキ,ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツィ,ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ペトローニ,フェルッチォ
(72)【発明者】
【氏名】モラ,パオロ
【審査官】
須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−516159(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0235526(US,A1)
【文献】
特表2007−516096(JP,A)
【文献】
特開2012−081569(JP,A)
【文献】
特開2004−092650(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0043231(US,A1)
【文献】
特公昭50−021035(JP,B1)
【文献】
特公昭51−040316(JP,B1)
【文献】
国際公開第2000/032354(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B31/06−31/10;31/14
F01D5/12;9/02;25/00
F02C7/00
F04D29/28;29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧側面(7S)、正圧側面(7P)、前縁(7A)、および後縁(7B)から構成される少なくとも1つの翼形部分(7)を含む機械部品(1A、1B)を研磨するための方法であって、
容器(11)内に前記機械部品(1A、1B)を配置し、前記容器(11)内に前記機械部品(1A、1B)を拘束するステップと、
前記容器(11)内に研磨混合物を添加するステップであって、前記研磨混合物は少なくとも研磨材粉末、液体、および金属粒子を含む、添加するステップと、
前記容器(11)および前記容器(11)に拘束された前記機械部品(1A、1B)を振動させることにより、前記翼形部分(7)の寸法および形状を実質的に不変に維持しつつ、前記翼形部分(7)の少なくとも一部において0.3μm以下の最終的な算術平均粗さ(Ra)が達成されるまで、前記翼形部分(7)に沿って研磨混合物の流れを生成するステップと、
を含み、
前記容器(11)および前記機械部品(1A、1B)の振動周波数を選択するステップをさらに含み、前記金属粒子を前記翼形部分(7)に沿って付着させて前進させ、前記翼形部分(7)と前記翼形部分(7)に沿って摺動する金属粒子との間の研磨材粉末により前記翼形部分(7)の研磨作用を生成し、
前記金属粒子は、前記前縁(7A)または前記後縁(7B)に達すると、前記正圧側面(7P)から前記負圧側面(7S)へ、またはその逆に縁の周りを回転する、
方法。
【請求項2】
達成される最終的な算術平均粗さ(Ra)は、0.2μm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
達成される最終的な算術平均粗さ(Ra)は、0.17μm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属粒子は、実質的に平坦な表面を有し、
前記金属粒子は、振動によって、前記金属粒子の前記平坦な表面が前記翼形部分(7)と接触した状態で、前記翼形部分(7)に沿って前進させられる、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
予備ショットピーニング処理を含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記翼形部分(7)に沿って前記研磨混合物の流れを生成する前記ステップは、前記翼形部分(7)の正圧側面(7P)および負圧側面(7S)に沿って前記研磨混合物の前記金属粒子を前進させるステップを含む、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記機械部品(1A、1B)は、根元部(3)および先端部(5)を有する、軸流ターボ機械のブレードまたはバケットであり、
前記翼形部分(7)は、前記根元部(3)と前記先端部(5)との間に延在し、前記根元部(3)から前記先端部(5)までの前記翼形部分(7)の各位置おいて、前記後縁(7B)と前記前縁(7A)との間に翼形部翼弦が画定され、
0.3μm以下の最終的な算術平均粗さが達成されるまで前記機械部品(1A、1B)を振動させる前記ステップの間に、前記翼弦の長さは実質的に不変に維持される、
請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記最終的な算術平均粗さは0.17μm以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記機械部品(1A、1B)を振動させる前記ステップの間に、前記翼弦長は0.05%未満だけ変化する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記機械部品(1A、1B)を振動させる前記ステップの間に、前記翼弦長は0.1mm以下だけ減少する、請求項7から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記機械部品(1A、1B)は、中央駆動軸挿入孔を有するハブ(31)と、前記駆動軸挿入孔の周りの前記ハブ(31)に配置された複数のブレード(35)と、を含むターボ機械のインペラ(30)であって、
隣接するブレード(35)間にベーン(37)が画定され、
各ベーン(37)は入口および出口を有し、
各ブレード(35)は対応する前記ベーン(37)の前記入口に前縁(7A)を有し、
前記出口に後縁(7B)を有し、前記機械部品(1A、1B)を振動させることにより、前記ベーン(37)内で前記研磨混合物の流れを循環させる、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記機械部品(1A、1B)を振動させる前記ステップの間に、前記ベーン(37)の内面で達成される最終的な算術平均粗さが0.3μm以下である場合に、前記中央駆動軸挿入孔の内径は実質的に不変のままである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
振動させる前記ステップの間に、前記インペラ(30)の前記ブレード(35)の厚みは、平均で0.5%未満だけ減少する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
振動させる前記ステップの間に、前記インペラ(30)の前記ブレード(35)の厚みは、0.1mm以下だけ減少する、請求項11乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記機械部品(1A、1B)を振動させる前記ステップの間に、前記中央駆動軸挿入孔の直径は、0.05%未満だけ変化する、請求項11乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記インペラ(30)は、インペラアイから構成されるシュラウド(33)を含み、
前記インペラアイは、少なくとも1つの円筒状外面部分を備えた外面を有し、
前記機械部品(1A、1B)を振動させる前記ステップの間に、前記ベーン(37)の内面で達成される最終的な算術平均粗さが0.3μm以下である場合に、前記円筒状外面部分の直径は実質的に不変のままである、
請求項11乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記機械部品(1A、1B)を振動させる前記ステップの間に、前記円筒状外面部分の直径は、0.01%未満だけ変化する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ハブ(31)、前記シュラウド(33)、および隣接するインペラ(30)のブレード(35)は、それらの間にフローベーン(37)を画定し、各フローベーン(37)は前記ブレード(35)の前記後縁(7B)に出口開口部を有し、振動させる前記ステップの間に、前記出口開口部の軸方向寸法は、平均で0.05%未満だけ変化する、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記インペラ(30)は、覆われていないインペラであり、
前記方法は、前記容器(11)内に前記研磨混合物を添加する前に、前記ブレード(35)の先端部(5)に沿って前記ベーン(37)を閉鎖する、インペラ閉鎖を適用するステップをさらに含む、請求項11乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記金属粒子は、金属チップを含む、請求項1乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記金属粒子は銅粒子を含む、請求項1乃至20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記研磨材粉末は、酸化アルミニウム、セラミック、またはこれらの組み合わせである、請求項1乃至21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記液体は水を含む、請求項1乃至22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記液体は、水および研磨媒体を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記研磨混合物は、重量で、
金属粒子90〜98%、
研磨材粉末0.05〜0.4%、
液体3〜10%
の組成を有する、請求項1乃至24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記容器(11)および前記容器(11)に拘束された前記機械部品(1A、1B)を振動させる前記ステップは、5〜8時間持続する、請求項1乃至25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記容器(11)および前記容器(11)に拘束された前記機械部品(1A、1B)を振動させる前記ステップは、1.5〜10時間持続する、請求項1乃至26のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、限定はしないが、軸流ターボ機械のロータおよびステータブレードもしくはバケット、ならびに遠心もしくは軸流−遠心ターボ機械のインペラの翼形部分などの翼形部分を含む機械部品の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
軸流圧縮機およびタービンなどの軸流ターボ機械は、1つまたは複数の段を含み、各段は固定ブレードもしくはバケットの円形配置、およびロータブレードもしくはバケットの円形配置で構成される。ブレードには、根元部および先端部が設けられる。翼形部分は、根元部と各ブレードの先端部との間に延在する。
【0003】
ターボ機械の効率を向上させるために、ブレードは、通常、研磨工程を受ける。研磨に先立って、追加処理をブレードに行うことができる。たとえばショットピーニング工程は、通常、研磨または仕上げの前に行われ、ブレード強度を高めるためのものである。ショットピーニングは、表面粗さを増加させる。研磨工程は、現在、振動研磨、たとえばバイブロタンブリングによって行われる。バイブロタンブリングは、天然研磨剤または合成研磨剤およびセラミックバインダーで作られたペレットが充填された回転タンブラ内にブレードを配置する。ペレットが翼形部の表面を研磨するように、タンブラを回転および/または振動させる。バイブロタンブリングにより達成できる最終的な算術平均粗さ(Ra)は約0.63μmの範囲である。
【0004】
ブレードのバイブロタンブリング処理を継続することにより、より低い粗さ値を達成することができる。しかし、ペレットが翼形部分の輪郭に及ぼす効果は、表面粗さおよびテクスチャを変更するだけでなく、翼形部の幾何学的形状も変更する。粗さを上記の値より低くすることは、幾何学的形状の許容できない変化をもたらすであろう。このために、現行技術の研磨方法では、より低い粗さ値を得ることができない。
【0005】
たとえば遠心圧縮機およびポンプのシュラウド付きインペラは、現在、いわゆる研磨剤流れ機械加工によって研磨される。研摩材流れ機械加工は、圧力下でインペラのベーンを通る研磨材料の液体懸濁液の流れを生成することで構成される。約0.68μmの粗さ値が達成される。研摩材流れ機械加工は、ブレードの幾何学的形状に悪影響を及ぼすが、これはインペラのブレードを通って圧力下で流れる液体懸濁液に含まれる研磨剤粒子の研磨作用に起因する。さらに、ブレードと研摩材の流れとの間の相互作用は、各ブレードの正圧側面および負圧側面において、後者の幾何学的形状に起因する不均一な研磨作用になる。したがって、上述した粗さ値を越えてインペラの研摩材流れ機械加工を継続することは適切ではないが、これは、ブレードの幾何学形状の許容できない変化、したがってインペラの効率の低下を招くからである。
【0006】
インペラまたはブレードなどの翼形部分からなる機械部品の効率は、粗さの低減と共に向上するが、それは摩擦によるエネルギー損失が低減されるからである。したがって、許容されるしきい値または公差を超えて翼形部分の輪郭の幾何学的形状を変化させることなく、粗さを低減させることにより翼形部分の輪郭の効率を向上させるために、仕上げ処理および方法を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/235526号明細書
【発明の概要】
【0008】
負圧側面、正圧側面、前縁、および後縁から構成される少なくとも1つの翼形部分を含む機械部品を研磨するための方法が提供され、それは翼形部分の表面上の特に低い粗さ値を達成することを可能にする。
【0009】
本開示では、添付の特許請求の範囲を含めて、特に指定しない限り、表面テクスチャおよび粗さは、算術平均粗さ値(Ra)によって特徴付けられる。算術平均粗さ(Ra)は、AA(算術平均)またはCLA(中心線平均)とも示されるが、評価長さ(L)内の平均線すなわち中心線からの実際の表面の算術平均偏差であり、次のように定義される。
【0011】
【数2】
特に指定しない限り、本明細書で用いる算術平均粗さ(Ra)は、マイクロメートル(μm)で表す。特に指定しない限り、明細書および特許請求の範囲において、粗さという用語は、上に定義した算術平均粗さであると理解するべきである。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、本方法は、
容器内に機械部品を配置し、容器内に機械部品を拘束するステップと、
容器内に研磨混合物を添加するステップであって、研磨混合物は少なくとも研磨材粉末、液体、および金属粒子を含む、添加するステップと、
容器および容器に拘束された機械部品を振動させることにより、最終的な算術平均粗さが達成されるまで、翼形部分に沿って研磨混合物の流れを生成するステップと、を含む。
【0013】
好適な実施形態では、0.3μm以下の最終的な算術平均粗さが機械部品上に達成されるまで、研磨が継続される。驚くべきことに、本明細書で開示される方法は、比較的短い時間で非常に低い粗さ値を達成し、かつ、幾何学的形状、すなわち翼形部の寸法および形状を実質的に不変に維持することを達成することができること、すなわち、タービンブレードもしくはバケット、およびターボ機械のインペラなどの重要な部品の全体的な幾何学的形状に悪影響を及ぼすことなく、上述した粗さ値が達成されることが見いだされた。現行技術による研磨方法は、翼形部の予測できない変化を生じさせることなく、このような低い算術平均粗さ値に達するために使用することができず、研磨された機械部品は実際には使用することができない。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、0.20μm以下、好ましくは0.17μm以下、より好ましくは0.15μm以下の最終的な算術平均粗さが翼形部で得られるまで処理が施される。
【0015】
容器は、たとえば回転カムおよび電動モータを備えた振動装置に接続することができる。装置は、振動周波数を調整するために提供することができる。いくつかの実施形態によれば、本方法は、容器およびそれに拘束された機械部品の振動周波数を選択するステップをさらに含み、金属粒子を翼形部分に沿って付着させて前進させ、翼形部分と翼形部分に沿って摺動する金属粒子との間の研磨材粉末により翼形部分の研磨作用を生成する。たとえば機械部品の構造的特徴および形状に応じて、1つまたは複数の振動周波数値を決定することができ、それは翼形部分に沿った金属粒子の摺動前進を決定する。振動周波数の選択は、たとえば容器と協動するカムを駆動する電動モータの回転速度を徐々に変化させることにより、実験的に得ることができる。適切な振動周波数は、機械部品の表面上の金属粒子の動きを観察することによって選択することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、実質的に平坦な面を有する金属粒子を使用することができる。金属粒子は、振動によって、金属粒子の平坦な表面が翼形部分と接触した状態で、翼形部分に沿って前進させることができる。
【0017】
機械部品には、たとえば予備ショットピーニング処理などの予備的な処理を施すことができる。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、翼形部分に沿って研磨混合物の流れを生成するステップは、翼形部分の正圧側面および負圧側面に沿って研磨混合物の金属粒子を前進させるステップを含む。
【0019】
機械部品は、たとえば、根元部および先端部を有する、軸流ターボ機械のブレードまたはバケットであってもよい。翼形部分は、根元部と先端部との間に延在し、根元部から先端部までの翼形部分の各位置おいて、後縁と前縁との間に翼形部翼弦が画定される。
【0020】
本明細書で開示される方法のいくつかの実施形態では、0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.17μm以下の最終的な算術平均粗さが達成されるまで機械部品を振動させるステップの間に、翼弦の長さは実質的に不変に維持される。翼弦の長さは、許容される公差値よりも小さい変化を受け得る。たとえば、翼弦の長さの変化を、0.05%以下、好ましくは0.03%以下にすることができる。
【0021】
好適な実施形態によれば、容器およびそれに拘束された機械部品を振動させるステップの開始から終了までの翼弦の長さの変化を、0.1mm以下、好ましくは0.07mm以下、さらに好ましくは0.02mm以下にすることができる。
【0022】
研磨中の翼弦の長さの変化は、0.1mm以下、好ましくは0.07mm以下に留まっており、ブレードの幾何学形状、したがってブレードの機能は実質的に変化していない。したがって、いくつかの実施形態によれば、機械部品が軸流ターボ機械のブレードまたはバケットである場合には、翼形部分の寸法および形状を実質的に不変に維持する特徴は、翼弦の長さの変化が0.1mm以下、好ましくは0.07mm以下、たとえば0.02mm以下であることを意味する。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、機械部品は、中央駆動軸挿入孔を有するハブと、中央駆動軸挿入孔の周りのハブに配置された複数のブレードと、から構成されるターボ機械のインペラである。ブレードは、翼形部分を形成し、各ブレードは負圧側面および正圧側面を有する。ベーンは、隣接するブレード間に画定される。各ベーンは入口および出口を有し、各ブレードは対応するベーンの入口に前縁および出口に後縁を有する。機械部品を振動させることで、研磨混合物の流れが生成され、インペラのブレード内およびそれを通って循環する。
【0024】
機械部品を振動させるステップの間に、インペラのブレードの厚さは、平均で0.5%未満、好ましくは、平均で0.4%未満だけ短くなるが、ベーンの内面の最終的な算術平均粗さが達成され、それは0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下とすることができる。
【0025】
好適な実施形態によれば、容器およびそれに拘束された機械部品を振動させるステップの開始から終了までのブレードの厚さの変化を、0.1mm以下、好ましくは0.07mm以下、さらに好ましくは0.02mm以下にすることができる。
【0026】
研磨中のブレードの厚さの変化は、0.1mm以下、好ましくは0.07mm以下に留まっており、ブレードの幾何学形状、したがってブレードの機能は実質的に変化していない。したがって、いくつかの実施形態によれば、機械部品がターボ機械のインペラ、たとえば遠心ポンプまたは圧縮機のインペラである場合には、翼形部分の寸法および形状を実質的に不変に維持する特徴は、インペラブレードの厚さの変化が0.1mm以下、好ましくは0.07mm以下、たとえば0.02mm以下であることを意味する。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、インペラは、インペラアイから構成されるシュラウドを含む。ハブ、シュラウド、および隣接するインペラのブレードは、それらの間にフローベーンを画定し、各フローベーンはブレードの後縁に出口開口部を有する。有利な実施形態では、本方法は、インペラを振動させて、ベーンを通る研磨混合物の流れを生成するステップを提供し、出口開口部の軸方向寸法を最初の軸方向寸法に対して平均で0.05%未満、好ましくは0.04%未満だけ変化させる。
【0028】
いくつかの実施形態では、金属粒子は金属チップを含む。特に有利な実施形態では、金属粒子は銅粒子または銅チップを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、研磨材粉末は酸化アルミニウム、セラミック、またはこれらの組み合わせである。液体は水を含んでもよく、あるいは水であってもよい。さらに、研磨媒体を添加してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、研磨混合物は、重量で、
金属粒子90〜98%、
研磨材粉末0.05〜0.4%、
液体3〜10%の組成を有する。
【0031】
容器および容器に拘束された機械部品を振動させるステップは、5〜8時間、好ましくは6〜7時間持続することができる。
【0032】
他の実施態様によれば、容器および容器に拘束された機械部品を振動させるステップは、1.5〜10時間持続することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、たとえば、軸流ターボ機械のブレードまたはバケットを研磨する場合には、振動させるステップは、1〜3時間、たとえば1〜2時間持続することができる。
【0034】
異なる態様によれば、本開示はまた、翼形部分を含む機械部品に関する。翼形部分は、0.3μm以下であり、好ましくは0.2μm以下であり、より好ましくは0.17μm以下であり、さらにより好ましくは0.15μm以下である算術平均粗さを有する。機械部品は、軸流ターボ機械のブレードまたはバケットと、ターボ機械のインペラと、を含む群から選択することができる。
【0035】
特徴および実施形態は、以下で開示され、また添付の特許請求の範囲にさらに記載されて、本明細書の不可欠な部分をなす。上記の簡単な説明は、以下の詳細な説明をよりよく理解できるように、また当該技術分野への本発明の貢献がよりよく評価されるように、本発明の様々な実施形態の特徴を記載している。当然のことながら、以下に説明され、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の他の特徴がある。この点に関して、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明する前に、本発明の様々な実施形態は、その応用において、以下の説明に記載しまたは図面に示した構造の詳細および構成要素の配置に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施し実行することができる。また、本明細書で用いられる表現および用語は説明のためのものであって、限定としてみなされるべきではないことを理解されたい。
【0036】
このように、当業者は、本発明のいくつかの目的を実行するために、他の構造、方法、および/またはシステムを設計するための基礎として、本開示の基礎をなす概念を容易に利用できることを理解するであろう。したがって、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限り、特許請求の範囲はこのような等価な構成を含むとみなすことが重要である。
【0037】
本発明の開示された実施形態のより完全な評価および本発明に付随する利点の多くは、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本明細書に開示された方法で研磨することができる翼形部分を含む機械部品を示す図である。
【
図2】本明細書で開示された方法による、ターボ機械のブレードの研磨を概略的に示す図である。
【
図3】翼形部分上の研磨媒体の作用を概略的に示す図である。
【
図4】例示的な翼形部分および粗さ測定が行われる位置を示す図である。
【
図5】例示的な翼形部分および粗さ測定が行われる位置を示す図である。
【
図6】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図7】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図8】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図9】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図10】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図11】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図12】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図13】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図14】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図15】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図16】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図17】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図18】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図19】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図20】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図21】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図22】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図23】本明細書に記載の方法で研磨されたタービンブレードサンプルで行われた測定を報告する図である。
【
図24】圧縮機のインペラの例示的な実施形態を示す図である。
【
図25】本明細書に開示される方法による、圧縮機インペラの研磨を示す図である。
【
図26】本開示による方法で研磨されたサンプルインペラの測定位置を示す図である。
【
図27】本開示による方法で研磨されたサンプルインペラの測定位置を示す図である。
【
図28】本開示による方法で研磨されたサンプルインペラの測定位置を示す図である。
【
図29】本開示による方法で研磨することができる、さらなるインペラを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面を参照する。異なる図面における同じ符号は、同一または類似の要素を示す。さらに、図面は必ずしも縮尺通りに描かれていない。また、以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。そうではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【0040】
明細書全体にわたって、「一実施形態」または「ある実施形態」または「いくつかの実施形態」に対する言及は、実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造または特性が開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたって様々な箇所に現れるフレーズ「一実施形態では」または「ある実施形態では」、または「いくつかの実施形態では」というフレーズは、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせることができる。
【0041】
軸流ターボ機械のブレードの研磨
図1Aは、軸流ターボ圧縮機の圧縮機ブレードの例示的な実施形態の斜視図であり、全体として符号1Aを付している。圧縮機ブレード1Aは、根元部3および先端部5を含む。翼形部分7は、根元部3と先端部5との間に延在する。翼形部分は、前縁7Aおよび後縁7Bから構成される。翼形部分は、正圧側面7Pおよび負圧側面7Sを含む。
【0042】
図1Bは、ガスタービンブレードの例示的な実施形態の斜視図であり、全体として符号1Bで示す。タービンブレード1Bは、根元部3および先端部5を含む。翼形部分7は、根元部3と先端部5との間に延在する。翼形部分7は、負圧側面7Sおよび正圧側面7Pと、前縁7Aおよび後縁7Bと、を有する。
【0043】
図1Aに示す軸流圧縮機ブレード1Aおよび
図1Bに示すタービンブレード1Bは、可能な機械部品の例示的な実施形態として提供され、本明細書で開示される方法を用いて適切に研磨することができる。ターボ機械の当業者であれば理解することであるが、少なくとも1つの翼形部分からなる他の種類の機械部品、たとえば静止軸流圧縮機ブレード、静止タービンブレードまたはバケット、ならびにターボ圧縮機またはポンプなどの遠心ターボ機械のインペラなどは、後でさらに詳細に説明するように、本明細書で開示された方法で処理することができる。
【0044】
機械部品1A、1Bには、表面処理工程、たとえばショットピーニング処理を施すことができる。機械部品1A、1Bは、予備研磨されると、研磨機で処理することができる。研磨機10の例示的な実施形態の概略図を
図2に示す。研磨機10は、容器11を含み、その中に機械部品が配置される。機械部品は、容器11に直接的または間接的に拘束されているので、容器11と共に動く。いくつかの実施形態では、容器11を振動台13に拘束することができる。振動台13は、たとえば1つまたは複数の弾性部材17を介して固定台座15に接続することができる。弾性部材17は、コイルばねなどで構成することができる。いくつか実施形態では、単純な弾性部材構成17の代わりに粘弾性構成を使用することができる。
【0045】
振動台13の振動を制御するために、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の電動モータ21が設けられる。モータ21は偏心カム23の回転を制御し、偏心カム23は実質的に水平な軸23Aの周りに回転することができる。偏心カム23の回転は、振動台13およびそれに拘束された容器11を、二重矢印f13で模式的に示すように垂直方向に振動させる。
【0046】
容器11内には、翼形部分からなる1つまたは複数の機械部品1A、1Bを配置することができる。好ましくは、各機械部品1A、1Bは容器11に拘束されており、機械部品1A、1Bは容器11および振動台13と一体に振動する。
【0047】
容器11は、部分的にまたは全体に研磨混合物Mで充填されている。研磨混合物は機械部品1A、1Bの全体を覆っているので、機械部品は研磨混合物Mにより全体が浸漬される。本明細書で開示される方法の他の実施形態では、機械部品1A、1Bを部分的に覆うだけの、たとえば機械部品1A、1Bの全高Hの60%、70%、または80%まで覆うだけの、より少量の研磨混合物Mを用いることができる。
【0048】
研磨混合物Mは、液体、たとえば水、金属粒子、および研磨剤粉末から構成することができる。金属粒子は、金属チップ、たとえば、銅チップなどの銅粒子を含むことができる。研磨剤粉末は、酸化アルミニウム、セラミック粒子、またはこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0049】
金属粒子は、実質的に平坦な形状を有することができ、すなわち金属箔または薄層の断片で作製することができる。いくつかの実施形態では、金属粒子は、1〜2mmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、金属粒子は、3〜5mmの断面寸法を有することができる。
【0050】
研磨材粒子は、2〜8μmの粒面を有することができる。
【0051】
研磨混合物Mは、研磨媒体をさらに含むことができる。研磨媒体は、石鹸、不活性化液体、またはこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0052】
研磨混合物Mの重量組成は、以下を含むことができる。
【0053】
−金属粒子:90〜98重量%
−砥粒:0.05〜0.4重量%
−液体:3〜10重量%。
【0054】
研磨混合物が容器11内に導入されると、モータ21を起動させることにより、容器11が振動される。振動周波数は、たとえば可変周波数駆動装置22を使用して、適切に調整することができる。処理は、研磨混合物の金属粒子が翼形部分7の表面と接触しながらその表面に沿って摺動可能に前進するように設定された振動周波数で行うことが好ましい。この現象を起こす振動周波数は、たとえば低い周波数値から開始して、金属粒子の摺動が始まるまで、オペレータによって容易に検出することができる状態まで、段階的または連続的に振動周波数を増加させることによって、容易に選択することができる。電動モータ21のための適切な可変周波数駆動装置22を使用して、振動周波数を翼形部分7に沿った金属粒子の摺動前進移動を始動する有効な値に調整することができることができるである。
【0055】
図3は、選択された振動周波数によって始動される上述した現象を概略的に示し、Pで概略的に示す金属粒子は、翼形部分7の表面7Sおよび7Pに付着し、振動容器11および振動台13に拘束された機械部品1A、1Bの振動の影響の下で破線矢印で示すように前進する。研磨材粒子Aは、金属粒子Pと翼形部分7の表面7Sまたは7Pとの間にトラップされる。研磨材粒子Aは、金属粒子に付着し、モータ21により生成された振動の影響の下で、金属粒子と共に前進する。金属粒子Pと翼形部分の表面7Sおよび7Pとの間にトラップされた研磨材粒子Aを伴う金属粒子Pの前進は、被処理面に研磨作用を引き起こす。
【0056】
前進移動は容器11内の機械部品1A、1Bの振動によって決定されるので、翼形部分7の表面に加えられる圧力は実質的になく、研磨効果は極めて緩やかである。
【0057】
図3に概略的に示すように、金属粒子またはチップPは、翼形部分7の前縁7Aまたは後縁7Bに達すると、機械部品との接触を実質的に緩めて、機械部品から離れるか、あるいは正圧側面から負圧側面へ、またはその逆に縁の周りを回転する。縁7A、7Bの周りの金属粒子Pの傾斜は、翼形部分7と金属粒子Pとの間に実質的に圧力が加わらずに生じるので、縁7A、7Bの形状が保存され、縁の周りの金属粒子の流れによって幾何学的変化が生じることがない。
【0058】
機械部品のいくつかの翼形部の輪郭に実施された試験は、本研磨方法の効果は、翼形部の輪郭の幾何学的形状に悪影響を及ぼすことなく、予想外に低い粗さ値をもたらすことを示している。
【実施例1】
【0059】
軸流タービンの静止および回転ブレードの研磨
軸流タービンの静止および回転ブレードもしくはバケットの複数のサンプルについて行われた試験の結果を以下に説明し、達成された粗さおよび輪郭の幾何学的形状の保存に関して研磨方法の有効性を示す。
【0060】
試験は、アメリカ合衆国オハイオ州イブンデールのゼネラルエレクトリック社から市販されている耐久性のあるガスタービンのバケットまたはブレードのサンプルについて行った。
【0061】
試験は、第2段、第3段、および第11段のタービン段階からロータブレードサンプル、ならびに第5段、第6段、および第8段の静止ブレードについて行った。
【0062】
ブレードの幾何学的形状を記述し、ブレードの翼形部の輪郭の全体的な幾何学的形状に対する研磨処理の効果を確認するために使用することができるいくつかのパラメータのうちで、翼弦の変化が選択された。翼弦は、研磨処理の前後でブレード根元部から異なる距離で測定され、研磨処理がこのパラメータにどのように影響するかを確認した。
【0063】
上述したように、現在の技術の仕上げ処理は、特に研磨ペレットがブレードの前縁および後縁に与える衝撃に起因して、ブレード翼弦の寸法に悪影響を及ぼし、縁の侵食、曲率の半径の改変、および翼弦寸法の変化を招く。翼弦寸法は、研磨処理がブレード効率を損ない得る程度にブレードの幾何学的形状を改変したかどうかを確定するための、研磨後にチェックするべき重要なパラメータである。
【0064】
以下の表1は、試験されたブレードの主なデータをまとめたものである。表は、試験されたブレードまたはバケットが属するガスタービンのロータまたはステータの数、試験されたサンプルの数、および研磨サイクル時間を示す。酸化アルミニウムが研磨剤として用いられ、銅粒子が研磨混合物内に用いられた。研磨混合物の組成は、以下の通りである。
【0065】
−金属粒子:95重量%
−研磨材粉末:0.10重量%
−水:4.9重量%。
【0066】
【表1】
最初に第2のロータ段を参照すると、以下の表2は、ショットピーニング後で研磨前の各サンプルブレードの負圧側面の異なる6点における番号19、12、10、26が付された4つの異なるサンプルについて測定された算術平均粗さRaを報告する。サンプルには、サンプル番号(S/N)19、12、10、26が付されている。上述したように、測定値はμm(マイクロメートル)で表している。算術平均粗さRaが測定された6点の位置を
図4に示す。各点S1〜S6における局所的な算術平均粗さ値を列S1〜S6に報告する。最後の列は、各サンプルについて算出された平均(サンプルごとに点S1〜S6で測定された6つのRa値の平均)を示す。
【0067】
【表2】
表3は、
図4に概略的に示す符号P1〜P4を付した4つの異なる位置で正圧側面の同じロータブレードサンプルについて算術平均粗さRaの測定値を示す。表3は、第1列にサンプル番号(S/N)、ならびに列P1、P2、P3、およびP4に各サンプルおよび4点P1〜P4の各々の算術平均粗さ値を報告する。最後の列(平均)は、各サンプルで測定された4つの粗さ値Raの平均(点P1〜P4における4つの測定値の平均)を示す。値は、ショットピーニング後で研磨の前に再度測定される。
【0068】
【表3】
以下の表4および表5は、上述したように研磨処理後の同一サンプルおよび同一測定点での粗さ値Ra、ならびに平均値(最終列、平均)を報告する。
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
図6および
図7は、2つの図において上記の報告された粗さデータを示す。
図6は、試験された4つのサンプルについて、それぞれ研磨の前後の、負圧側面の6点S1〜S6で測定された算術平均粗さRaの平均値(平均)を報告する。サンプル番号(S/N)は横軸に報告され、表2〜表5の左端の列のサンプル番号に対応する。
図7は、正圧側面上の同じ4つのサンプルについて研磨の前後の同一の算術平均粗さを報告する。
【0071】
図6および
図7にまとめられた上記の報告されたデータは、被測定サンプルについて行った研磨が、バイブロタンブリングにより達成できるものよりはるかに低い算術平均粗さを達成することを示している。試験されたすべてのサンプルの負圧側面および正圧側面の両方について、0.2μmよりも低い、場合によっては0.1μm程度の算術平均粗さが達成された。
【0072】
試験は、算術平均粗さは、120分の処理時間後にはほとんど改善されないことを示している。各サンプルの処理時間は、表1に示す。
【0073】
研磨後に得られた最終的なブレードの幾何学形状がこの種の機械部品に適用される厳しい要件を満足するか否かを確認するために、翼弦の輪郭の伸長が4つのすべての被試験サンプルについて研磨処理の前後で測定された。
図8は、研磨の前後に測定された翼弦の寸法の差を報告する。測定はブレード上の10個の異なる位置で行われ、根元部から先端部に向かって開始し、横軸に報告されている。寸法差は、縦軸に報告され、mm単位で表される。同じパラメータを、以下の
図11、
図14、
図17、
図20、
図23に示しており、これは、さらなるブレードおよびバケットサンプルで行った試験を示しており、後で説明する。
【0074】
図8で報告されたデータは、いずれの場合も、初期幾何学的形状と研磨後のブレードの最終的な幾何学的形状とのずれは無視できることを示している。これは、0.2μm未満の粗さ値(Ra)を伴う非常に効率的な研磨が達成されたにもかかわらず、ブレードの幾何学的形状は実質的に変化していないことを示す。
【0075】
いくつかのターボ機械のブレードに行われた試験は、翼弦の寸法の全変化は0.1mm未満で、通常0.07mm以下であり、0.02mmの低い変化を達成することができるが、ブレードの正圧側面および負圧側面上において上述した所望の算術平均粗さ値を依然として得ることができることを示している。
【0076】
以下の表6〜表9は、第3のタービン段の6つのロータブレードサンプルの粗さ測定値を報告する。
図6および
図7は、研磨処理の前後の表6〜表9に報告されたデータに基づいて、それぞれ負圧側面および正圧側面の算術平均粗さ値(Ra)を報告する。表6は、研磨前の番号19、11、23、24、7、38の6つのサンプルの各々の負圧側面上の6点S1〜S6(
図4に示すように配置されている)においてマイクロメートル単位で測定された局所的算術平均粗さ(Ra)を示す。
【0077】
【表6】
以下の表7は、研磨前の同じ6つのブレードサンプルの正圧側面上の4点P1〜P4(
図5)で測定された算術平均粗さ値を示す。
【0078】
【表7】
以下の表8および表9は、研磨後に表6および表7と同じサンプルの同じ点で測定された算術平均粗さ値を示す。
【0079】
【表8】
【0080】
【表9】
サンプル番号(S/N)は、第1列に報告されている。
【0081】
図9および
図10は、負圧側面(
図9)および正圧側面(
図10)上の研磨の前後の算術平均粗さデータを報告する2つの図を示す。サンプル番号(S/N)は、横軸に報告され、表6〜表9の第1列に列挙されたサンプル番号に対応する。図に報告されたデータは、前記テーブルの最終列に示した平均値である。
【0082】
図11は、6つの被試験サンプルの初期寸法(すなわち研磨前の寸法)に対する翼形部の輪郭に沿った異なる位置で測定された翼弦の寸法の差を報告する。
図11は、この1組の試験についても、研磨処理が、輪郭の形状に悪影響を与えることなく、0.2μmよりはるかに低い粗さを達成することを示している。寸法の変化は、縦軸にmm単位で報告されている。翼形部分に沿った位置は、横軸に報告されている。
【0083】
以下の表10、表11、表12、および表13は、第11タービン段に属する6つのロータブレードサンプル(S/N1、35、7、19、29、26)について、研磨前(表10および表11)および研磨後(表12および表13)の負圧側面および正圧側面で測定した算術平均粗さ値を報告する。
【0084】
【表10】
【0085】
【表11】
【0086】
【表12】
【0087】
【表13】
上の表に報告された算術平均粗さデータは、
図12および
図13に要約されている。
図14は、
図8および
図11と同様に、根元部から先端部に向かって開始される翼形部分の輪郭に沿った異なる位置における、仕上げまたは研磨処理の後の翼弦の変化を示している。
【0088】
同じタービンの第5、第8、および第16ステータ段のサンプルブレードまたはバケットについて行われた試験は、達成された粗さ値およびブレードの幾何学的形状のわずかな変化について同様の結果を示している。以下の表14、表15、表16および表17は、研磨前の負圧側面(表14)および正圧側面(表15)上で測定した粗さデータ、ならびに研磨後の負圧側面(表16)および正圧側面(表17)上の粗さ値をそれぞれ報告する。
【0089】
【表14】
【0090】
【表15】
【0091】
【表16】
【0092】
【表17】
バケットの正圧側面および負圧側面の両方で、約0.15μmまたはそれ未満の算術平均粗さ値が得られる。
図15および
図16は、負圧側面および正圧側面について研磨の前後の算術平均粗さのデータをそれぞれ要約している。
【0093】
図17は、研磨後のブレードの高さに沿った7つの異なる位置における、初期値すなわち研磨前に対する翼弦寸法の変化を示す。上述したロータブレードでは、第5段のステータバケットの場合でも、研磨処理は、ブレードの全体的な幾何学的形状に実質的に影響を与えない。
【0094】
以下の表18、表19、表20、および表21は、タービンの第8段のステータバケットの6つの異なるサンプルについて、研磨前(表18−負圧側面、表19−正圧側面)および研磨後(表20−負圧側面、表21−正圧側面)の粗さ測定値を示す。0.2μm未満、主に約0.15μmまたはそれ未満の算術平均粗さ値が得られる。負圧側面および正圧側面の算術平均粗さ値(研磨の前後)が
図18および
図19にそれぞれ示され要約されている。
【0095】
【表18】
【0096】
【表19】
【0097】
【表20】
【0098】
【表21】
図20は、
図17および
図14と同様に、研磨処理による翼弦の伸長の変化を報告する。
図20で報告されるデータは、この場合でも研磨処理が翼形部の輪郭の幾何学的形状に実質的に影響を与えないこと、すなわちブレードおよびバケットの幾何学的形状は実質的に不変のままであり、したがってそれらの機能性が実質的に不変に維持されることを示している。
【0099】
最後に、表22、表23、表24、および表25は、タービンの第16段の6つのステータバケットサンプルについて、研磨前(表22−負圧側面、表23−正圧側面)および研磨後(表24−負圧側面、表25−正圧側面)に負圧側面および正圧側面で測定された算術平均粗さ値を報告する。
【0100】
【表22】
【0101】
【表23】
【0102】
【表24】
【0103】
【表25】
図21および
図22は、第16段のステータバケットについて、負圧側面および正圧側面の算術平均粗さ値をそれぞれ要約している。この場合にも、0.2μmよりはるかに低い算術平均粗さ値が達成される。
【0104】
図23は、研磨処理がバケットの幾何学的形状に及ぼす影響は実質的になく、翼弦の寸法は実質的に影響を受けないままである。
【0105】
インペラの研磨
上述した研磨方法は、一般的に遠心圧縮機、ポンプ、および遠心もしくは軸流−遠心ターボ機械のインペラを研磨するために有利に使用することができる。
【0106】
このようなインペラの例示的な実施形態を
図24に示す。インペラは、全体として符号30で示し、ハブ31およびシュラウド33を含む。複数のブレード35が、ハブ31とシュラウド33との間に配置される。隣接するブレード35間に、各フローベーン37が画定される。ブレード35は、この機械部品の翼形部分を構成し、それぞれ前縁35Aおよび後縁35Bが設けられる。流体入口がインペラの入口側に画定され、そこには前縁35Aが配置される。加圧流体は、ブレード35の後縁35Bの間のインペラ30の排出側で半径方向に排出される。
【0107】
いくつかの実施形態では、シュラウド33は、インペラ30が回転可能に支持されている固定ケーシング内に配置されたシール構成と協働するための段のついた外側輪郭を形成する。
【0108】
図25に、研磨工程中のインペラ30を示す。研磨工程を行う装置は、符号10で示され、
図2に関して開示されたものと実質的に同じであってもよい。研磨工程中に、インペラ30は容器11に拘束されており、モータ21が回転して振動台13を振動させると、容器11と共に振動する。
【0109】
振動の周波数を調整することで、研磨混合物Mに含まれる金属粒子がインペラ30の内面および外面に沿って摺動し、特にベーン37の内部で循環する周波数に設定することができる。インペラ30の被処理面と金属粒子との間の研磨材粉末は、
図3に関連して上述した方法と全く同様に、被処理面に沿って金属粒子が摺動移動することにより、処理面に作用する。研磨混合物Mの実質的に連続した流れが、インペラ30の周りで、およびベーン37を通して確立される。インペラ30の内面および外面の全体、特に各ブレード35の正圧側面および負圧側面、ならびに内側シュラウド表面および内部ハブ表面がこのようにして研磨され、それらはインペラがターボ機械内で回転する際に、流体が処理される流れチャネルをブレード表面に沿って画定する。
【0110】
現行技術の研磨処理の研磨材流れ機械加工手順で起こることとは逆に、研磨混合物Mはインペラ30のベーンを実質的に圧力なしに流れるので、インペラの幾何学的形状はそれに作用する研磨材粒子による影響を受けないままであり、インペラの表面に沿った研磨材粉末を伴う金属粒子の移動によって得られる緩やかな処理は、インペラの内面および外面の算術平均粗さの実質的な低下をもたらす。
【実施例2】
【0111】
以下のデータは、上述した研磨処理で処理した2D遠心圧縮機インペラのサンプルで得られた。これらのデータは、本処理が、インペラの重要な部分、特にインペラの翼形部輪郭を画定するブレードの幾何学的形状に悪影響を及ぼすことなく、非常に低い算術平均粗さ値(Ra)に達することができることを示している。
【0112】
研磨処理は、以下の組成を有する研磨混合物を用いて行われた。
【0113】
金属粒子(銅):93.67重量%
研磨材(酸化アルミニウム):0.24重量%
研磨媒体(石鹸):0.47重量%
水:5.62重量%
インペラは7時間30分振動下で維持された。
【0114】
以下の表26は、インペラ出口から開始する、インペラの隣接するブレード間のベーンに沿った異なる3点において、研磨の前後で測定された算術平均粗さを報告する。測定は、インペラ出口から半径方向に10、44、および75mmの3点について行われた。
【0115】
測定にはシュラウドの部分的な除去を必要とするので、研磨前後の測定は異なるベーンについて行われた。シュラウド部分は、ベーン内部へのアクセスを得るために、最初に1つのベーンから取り外された。研磨後、さらなるシュラウド部分が異なるベーンから取り外され、被測定ベーンの研磨処理がシュラウドで閉じられたベーンで行われた。
【0116】
【表26】
インペラ出口の軸方向寸法およびブレードの厚さは、ブレードの全体的な幾何学的形状に及ぼす研磨処理の影響を確認するための重要なパラメータとして使用された。
図26は、インペラ30のベーン37の出口を拡大して示す。寸法B、すなわち出口の軸方向の高さは、インペラの異なるブレードの異なる位置で測定された。
【0117】
考慮した2つのベーンおよびすべての測定位置において、研磨の前後の測定値の差は無視することができ、使用した測定器の感度(0.005mm)より小さい。
【0118】
以下の表27は、後縁で測定された同じインペラの3つのブレードの厚さを示す。表は、研磨の前後のブレードの厚さを報告する。処理の前後の測定値の差は、無視することができる。
【0119】
【表27】
これらのデータは、研磨処理がインペラの幾何学的形状およびブレードの輪郭の幾何学的形状に実質的に影響を与えないことを示している。
【実施例3】
【0120】
図27〜
図29に概略的に示す炭素鋼製の3Dインペラは、以下の組成の研磨混合物を用いて研磨処理が施された。
【0121】
金属粒子(銅):96重量%
研磨材(酸化アルミニウム):0.25重量%
研磨媒体(石鹸):0.20重量%
水:3.55重量%
図25に示すように、処理は研磨機10で6時間行われた。
【0122】
図27は、研磨工程前のインペラの軸方向上面図である。文字A、B、C、Dは、処理前に算術平均粗さRaが測定された4つの領域を示す。領域Dは、インペラのベーンのうちの1つの内側にある。インペラシュラウドの一部分は、
図27に示すように、測定の目的のために取り外されている。
図28は、
図27と同様の図であり、さらなるインペラベーンの内側にあるEとラベル付けされた領域へアクセスするために、さらなるシュラウド部分が取り外されている。領域Eは、研磨後に関連するシュラウド部分を取り外すことによって、粗さを測定するためにアクセス可能になった。
【0123】
表28は、研磨前の領域A〜Dおよび研磨後の領域A〜Eにおいて測定された算術平均粗さを示す。
【0124】
【表28】
図29に最もよく示されているように、インペラは、インペラアイに設けられたシールリングを有する。
図29には、5つのリングが示されており、符号R1〜R5が付されている。符号dxおよびsxはインペラのベーンの出口開口の高さを示し、Dはインペラハブに設けられた軸流路の内径を示す。
【0125】
研磨の前後のインペラのこれらの部分の寸法について行われた測定は、研磨処理終了時に到達した極めて低い算術平均粗さ値(表28)にもかかわらず、これらの重要なインペラの寸法が研磨処理によって変化していないことを示している。
【0126】
以下の表29は、ハブの内径、5つのシールリングR1〜R5の直径、ならびにベーン出口の軸方向寸法dxおよびsxについて、研磨の前後に行われた測定値をそれぞれ要約する。
【0127】
【表29】
上の表29に報告されたデータによって証明されるように、インペラの重要な部分は、研磨処理によって影響されないままであり、約0.1μmの極めて低い算術平均粗さ値に達する。
【0128】
平均ブレード厚さの公差は通常±5%程度であり、平均出力幅の公差は±3%程度である。本明細書に開示された方法で処理されたサンプルについて行われた測定は、これらの重要な尺度の変化が無視できて、許容可能な公差より十分に小さいことを示している。
【0129】
本明細書に記載した主題の開示された実施形態について、図面に示し、いくつかの例示的な実施形態に関連して具体的かつ詳細に上で完全に説明したが、新規な教示、本明細書に記載した原理および概念、ならびに添付の特許請求の範囲に記載した発明の主題の利点から実質的に逸脱することなく、多くの修正、変更、および省略が可能であることは当業者には明らかであろう。したがって、開示された発明の適正な範囲は、すべてのそのような修正、変更、および省略を含むように、添付の特許請求の範囲の最も広い解釈によってのみ決定されるべきである。さらに、いかなる処理もしくは方法ステップの順序またはシーケンスは、代替的な実施形態に応じて変更または再順番付けすることができる。
【符号の説明】
【0130】
1A 機械部品、圧縮機ブレード
1B 機械部品、タービンブレード
3 根元部
5 先端部
7 翼形部分
7A 前縁
7B 後縁
7P 正圧側面、表面
7S 負圧側面、表面
10 研磨機
11 振動容器
13 振動台
15 固定台座
17 弾性部材、弾性部材構成
21 電動モータ
22 可変周波数駆動装置
23 偏心カム
23A 実質的に水平な軸
30 インペラ
31 ハブ
33 シュラウド
35 ブレード
35A 前縁
35B 後縁
37 ベーン