(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンピュータ読取り可能なプログラムコードを含む非一時的記憶媒体であって、コンピュータ読取り可能なプログラムコードを実行すると、請求項8乃至請求項14のいずれか1項記載のステップがプロセッサにより実施される、非一時的記憶媒体。
【背景技術】
【0002】
現在、インビボ造影剤として使用するための放射性標識化合物は、典型的には自動合成装置(或いは、「放射性化合物合成装置」)により調製されている。そのような自動合成装置は、GE Healthcare社、CTI社、Ion Beam Applications社(ベルギー国、B−1348ルヴァン・ラ・ヌーヴ、シュマン・デュ・シクロトロン3)、Raytest社(ドイツ)及びBioscan社(米国)を始めとする様々な供給業者から市販されている。放射化学反応は、装置に脱着可能に及び交換可能に装着されるように設計されている「カセット」又は「カートリッジ」で生じ、カセットの操作は、装置の可動部の機械的運動により制御されるようになっている。好適なカセットは、幾つかの工程で装置に組み付けられる部品のキットとして提供されてもよく、又は1工程で取り付けられ、それにより人為的ミスのリスクが低減される一体型として提供されてもよい。一体型の構成は、一般的に、所与のバッチの放射性医薬品の調製を実施するのに必要な試薬、反応槽、及び装置を全て含む、使い捨ての単回使用カセットである。
【0003】
市販されているGE Healthcare社製FASTlab(商標)カセットは、試薬又はバイアルを取り付けることができるポートに各々が連結されている直線的な配列のバルブを含む、試薬が予め充填されている使い捨ての一体型カセットの例である。各バルブは、自動合成装置の対応する可動アームと接続する雄雌ジョイントを有する。したがって、カセットを装置に取り付けると、このアームを外旋させることにより、バルブの開閉が制御される。装置の更なる可動部は、シリンジプランジャー先端をつかみ、それによりシリンジバレルを上昇又は下降させるように設計されている。FASTlab(商標)カセットは、直線的配列の25個の同じ3方向バルブを有する。それらの例は、
図1及び
図2に示す。
図1には、市販のFDGリン酸塩FASTlab(商標)カセットが、
図2には、市販のFDGクエン酸塩FASTlab(商標)カセットが示されている。
【0004】
図1及び
図2のカセットでの[
18F]フルオロデオキシグルコース([
18F]FDG)の合成は、
18O(p,n)
18F反応で生成する[
18F]フッ化物による求核性フッ素化により実施される。そのようにして生成された[
18F]フッ化物は、位置6のカセットに入り、位置5のチューブを介して、位置4に設置されているQMA(四級メチルアンモニウム陰イオン交換)固相抽出(SPE)カラムへと移動する。[
18F]フッ化物は、イオン交換反応で保持され、
18O水は、カセットの共通流路を流れて、位置1で回収される。その後、QMAに保持された[
18F]フッ化物は、溶出溶液(位置2のKryptofix(商標)222及び炭酸カリウムのアセトニトリル溶液)で溶出され、位置3のシリンジに取り出され、反応槽(3本のチューブで接続されており、チューブは、位置7、8、及び25の各々に至る)へと入る。水を蒸発させ、マンノーストリフラート前駆体(位置12から)が反応槽に添加される。その後、[
18F]標識マンノーストリフラート([
18F]フルオロテトラアセチルグルコース、FTAG)が捕捉され、位置17のチューブを介して位置18の環境用tC18 SPEカラムで[
18F]フッ化物から分離され、NaOH(位置14のバイアルから)による加水分解に供して、アセチル保護基が除去される。その後、その結果生じた加水分解塩基性溶液は、位置24に設置されているシリンジにおいて、リン酸塩構成(
図1)の場合はリン酸で、又はクエン酸塩構成(
図2)の場合はクエン酸緩衝液中に存在する塩酸で中和される。残留している可能性のある[
18F]フッ化物は、位置21のチューブを介して位置20のアルミナSPEカラムで除去され、弱親水性不純物は、位置23のチューブを介して位置22のHLB SPEカラム(
図1のリン酸塩カセットの場合)又はtC18 SPEカラム(
図2のクエン酸塩カセットの場合)で除去される。[
18F]FDGの最終精製溶液は、位置19に接続されている長いチューブを介して収集バイアルに移される。
【0005】
図1又は
図2に示す公知の[
18F]FDGカセットの各々の場合、FASTlab(商標)カセットの2つの位置、即ち位置9及び10は、使われていない。それらの位置にあるバルブには蓋がされている。
【0006】
典型的な[
18F]FDG生産サイトでは、最低でも1日2バッチの[
18F]FDGが生産される。しかしながら、バッチ完了後のFASTlab(商標)カセット、移送ラインの残存活性、及び廃棄物ボトルから生じる放射線影のため、同じ装置で上述のプロセスを連続して実施するのは、安全上の理由で不可能である。これは、FASTlab(商標)装置が比較的大型であることを加味すると、このプロセスを使用して同じ日に第2のバッチの[
18F]FDGを生産するためには、第2のホットセルに第2の装置を有することが必要であることを意味する。
【0007】
FASTlab(商標)を使用して同じ日にたった1つのホットセルで複数バッチの[
18F]FDGを生産するための手段を有することが望ましいだろう。上述の市販されているFASTlab(商標)[
18F]FDGカセットの場合は両方とも、合計25個の位置のうち23個が使用されている。したがって、第2のバッチ用の重複部品を全て同じカセットに装着することは不可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
用語「カセット」は、自動合成装置に脱着可能に及び交換可能に装着され、カセットの操作が、合成装置の可動部の機械的運動によりカセットの外側から、つまり外部から制御されるように設計された単回使用一体型装置を意味する。本発明のカセットの状況で使用される場合、用語「単回使用」は、カセットが、複数バッチの[
18F]標識PETトレーサーを生産するために1回使用して破棄することを意味する。好適なカセットは、直線的配列のバルブを備え、各々は、逆さにしたセプタム密封バイアルを針で刺すか、又は気密接続ジョイントによるかのいずれかにより、試薬又はバイアルを取り付けることができるポートに接続されている。一実施形態では、各バルブは、3方向バルブである。一実施形態では、各バルブは、回転可能なストップコックを備えるストップコックバルブである。各バルブは、自動合成装置の対応する可動アームと接続する雄雌ジョイントを有する。したがって、カセットを自動合成装置に取り付けると、このアームを外旋させることにより、バルブの開閉が制御される。自動合成装置の更なる可動部は、シリンジプランジャー先端をつかみ、それによりシリンジバレルを上昇又は下降させるように設計されている。カセットは、多用途であり、典型的には、試薬を取り付けることができる幾つかの位置、及び試薬又はクロマトグラフィーカラムのシリンジバイアルを取り付けるのに好適な幾つかの位置を有する。カセットは、必ず反応槽を含み、一般的に、カセットの3つ以上のポートが反応槽に接続され、カセットの種々のポートから試薬又は溶媒の移送をすることが可能になるように構成されている。カセットは、放射性医薬品製造に好適であるように設計されている必要があり、したがって放射線分解に耐性があるだけでなく医薬品等級の材料で製造されている。本発明の一実施形態では、単回使用カセットは、FASTlab(商標)カセット、つまりFASTlab(商標)自動合成装置での使用に好適なものである。
【0015】
本発明の一実施形態では、カセットの種々の要素は、選択的に流体接続されている。用語「選択的に流体接続される」は、流体が、本発明の特徴的要素へと、及び/又は本発明の特徴的要素から別の特徴的要素へと通過し得るか否かを、例えば好適なバルブを使用することにより選択することが可能であることを意味する。本発明の一実施形態では、好適なバルブは、3つのポート、及び3つの関連ポートのいずれか2つを互いに流体連通させ、第3のポートを流体的に孤立させるための手段を有する3方向バルブである。本発明の別の実施形態では、好適なバルブは、回転可能なストップコックを備えるストップコックバルブである。一実施形態では、カセットの部品は、共通流路に選択的に流体接続されている。用語「共通流路」は、本発明のシステム又はカセットの他の部品が、選択的に流体接続されている流体経路であると理解されるだろう。一実施形態では、共通流路は、直線的流体経路である。一実施形態では、共通流路は、放射線に耐性の剛性医薬品等級ポリマー材料で作られている。好適なそのような材料の非限定的な例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、及びUltem(登録商標)が挙げられる。一実施形態では、共通流路は、ポリプロピレン又はポリエチレンで作られている。
【0016】
用語「自動合成装置」とは、Satyamurthyら(1999 Clin Positr Imag;2(5):233−253)に記載されている単位操作の原理に基づく自動化モジュールを意味する。用語「単位操作」は、複雑なプロセスを、様々な材料に適用することができる一連の単純な操作又は反応に簡素化することを意味する。そのような自動合成装置は、特に放射性医薬品組成物が所望の場合、本発明の方法に好ましい。そのような自動合成装置は、GE Healthcare社、CTI社、Ion Beam Applications社(ベルギー国、B−1348ルヴァン・ラ・ヌーヴ、シュマン・デュ・シクロトロン3)、Raytest社(ドイツ)及びBioscan社(米国)を始めとする様々な供給業者から市販されている(Satyamurthy他)。自動合成装置は、放射線被曝の可能性から作業者を防御するための好適な放射線遮蔽、並びに化学薬品蒸気及び/又は放射性蒸気の換気を提供する、適切に構成されている放射性作業用セル、つまり「ホットセル」の中で使用するように設計されている。カセットを使用すると、自動合成装置には、単にカセットを変更することにより、相互汚染のリスクを最小限に抑えつつ、様々な異なる放射性医薬品を作製するという柔軟性が備わる。また、この手法は、設定が単純化されており、したがって作業者ミスのリスクが低減されること、GMP(グッドマニュファクチュアプラクティス)遵守の向上、複数トレーサー能力、生産工程間での迅速な変更、生産開始前のカセット及び試薬の自動診断チェック、化学試薬と実施する合成との自動バーコード照合、試薬トレーサビリティ、単回使用、したがって相互汚染のリスクがないこと、改ざん及び乱用がされにくいこと等の利点を有する。
【0017】
[
18F]標識PETトレーサーのバッチの状況で本明細書にて使用される用語「複数」は、1つを超えるバッチを指し、その1つを超えるバッチは、単回使用カセットで合成されることを意味する。1つの態様では、複数という用語は、2つのバッチ、つまり第1のバッチ及び第2のバッチをいう。「第1のバッチ」及び「第2のバッチ」という用語は、同じカセットで生産される[
18F]標識PETトレーサーの2つの別個の連続合成を表し、第2のバッチは、第1のバッチの生産が完了した後で初めて、つまり産物が産物収集バイアルに収集された後で初めて生産される。用語「バッチ」は、最終的に合成された[
18F]標識PETトレーサーのバッチを示すために使用される。複数のバッチは、同じ日に、カセット及び自動合成装置が設置されているホットセルを開けることを必要とせずに生産することができる。
【0018】
「[
18F]標識pETトレーサー」は、
18F原子を含み、PETトレーサーとしての使用に好適な化学化合物である。[
18F]標識PETトレーサーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:[
18F]フルオロデオキシグルコース([
18F]FDG)、[
18F]フルオロミソニダゾール([
18F]FMISO)、[
18F]フルオロチミジン([
18F]FLT)、[
18F]フルオロアゾマイシンアラビノフラノシド([
18F]FAZA)、[
18F]フルオロエチル−コリン([
18F]FECH)、[
18F]フルオロシクロブタン−1−カルボキシル酸([
18F]FACBC)、[
18F]フルマゼニル([
18F]FMZ)、[
18F]チロシン、[
18F]アルタンセリン、4−[
18F]フルオロ−3−ヨードベンジルグアニジン([
18F]FIBG)、メタ−[
18F]フルオロベンジルグアニジン([
18F]mFBG)及び[
18F]5−フルオロウラシル。本発明の一実施形態では、
18F標識化合物は、[
18F]FDG、[
18F]FMISO、[
18F]FLT、及び[
18F]FACBCから選択される。本発明の別の実施形態では、
18F標識化合物は、[
18F]FDGである。
【0019】
本発明の状況では「反応槽」は、合成に必要な反応物及び試薬を移送することができ、産物を適切な順序で取り除くことができる、本発明のカセットの容器である。反応槽は、反応物及び試薬を含有するのに好適な内部体積を有し、放射線に耐性の医薬品等級材料で作られている。
【0020】
本発明の方法の状況では「アリコート」は、PETトレーサーの1つのバッチの合成に使用するのに十分な特定の試薬の量である。
【0021】
「前駆体化合物」は、本明細書では、検出可能な標識の便利な化学的形態との化学反応が、最小限のステップ数で(理想的には1段階で)部位特異的に生じ、所望の放射性標識化合物が得られるように設計された、放射性標識化合物の非放射性誘導体と理解されるだろう。部位特異的な標識を確実にするために、前駆体化合物は、保護基を有していてもよい。そのような前駆体化合物は、合成物であり、良好な化学的純度で便利に得ることができる。幾つかの前駆体化合物が、[
18F]標識化合物の合成に好適であることが周知であり、例えば、「Handbook of Radiopharmaceuticals:Radiochemistry and Applications」(2003 John Wiley&Sons Ltd.、Wench&Redvanly、Eds.)の第7章に教示されている。
【0022】
用語「保護基」は、不要な化学反応を阻害又は抑制するが、その分子の残りの部分を改変しない程度に十分に穏やかな条件下で検討中の保護基から切断され、所望の産物を産出する基をいう。保護基、及びそれらを除去(つまり、「脱保護」)するための方法は、当業者に周知であり、「Protective Groups in Organic Synthesis」、Theorodora W.Greene and Peter G.M.Wuts、(Fourth Edition、John Wiley&Sons、2007)に記載されている。
【0023】
本明細書で使用される用語「試薬」は、特定の[
18F]標識PETトレーサーの合成に使用される溶媒及び反応物を示す用語である。適切には、これらは、試薬バイアルに保管されている。用語「試薬バイアル」は、[
18F]標識PETトレーサーの生産に使用される、所望の複数バッチの生産に十分な試薬の1つを含有するバイアルを意味すると受け取られる。用語「十分な」は、複数バッチを得ることができることを保証する好適な試薬の量を意味する。一般的には、この量は、必要とされる正確な量をわずかに超える量である。典型的な試薬バイアルは、放射線に耐性の剛性医薬品等級ポリマーで作られている。試薬バイアルに含有される好適な試薬としては、エタノール、アセトニトリル、脱保護剤、及び緩衝液が挙げられる。一実施形態では、脱保護剤は、HCl、NaOH、及びH
3PO
4から選択される。一実施形態では、脱保護剤は、NaOHである。一実施形態では、緩衝液は、例えば、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、及びアスコルビン酸塩から選択される弱酸に基づく。例えば、本発明の[
18F]標識化合物が[
18F]FDGである場合、単回使用カセットは、エタノールを含有する試薬バイアル、アセトニトリルを含有する試薬バイアル、NaOHを含有する別の試薬バイアル、クエン酸塩又はリン酸塩から選択される弱酸に基づく緩衝液を含有する別の試薬バイアルを含む。
【0024】
用語「固相抽出(SPE)」は、溶液中の化合物が、試料が通過する固体(「固相」又は「固定相」)及び化合物が溶解されている溶媒(「移動相」又は「液相」)に対する化合物のそれぞれの親和性に基づき互いに分離される試料調製プロセスをいう。その結果、目的の化合物は、固相又は移動相のいずれかに保持される。固相を通過する部分は、それが目的の化合物を含有するか否かに応じて、収集又は廃棄される。固定相に保持される部分が目的の化合物を含む場合、「溶出液」として知られている別の溶液で固定相をすすぐ追加のステップにて、目的の化合物を固定相から取り出すことができる。本発明の場合、SPEは、「SPEカラム」(「SPEカートリッジ」と呼ばれることも多い)を使用して適切に実施される。SPEカラムは、商業的に容易に入手可能であり、典型的には、固相が充填されたシリンジ型カラムの形態をしている。ほとんどの公知の固相は、特定の官能基、例えば様々な長さの炭化水素鎖(逆相SPEに好適)、四級アンモニウム又はアミノ基(陰イオン交換に好適)及びスルホン酸基又はカルボキシル基(陽イオン交換に好適)が結合されているシリカに基づく。
【0025】
用語「溶出」は、固相に結合した1以上の目的化合物を放出させることを目的に、溶液をSPEカラムに通すことをいう。
【0026】
また、一般的にSPEとの関連でにて使用されている用語「溶出液」は、具体的には本発明の単回使用カセットとの関連で使用され、陰イオン交換カラムに捕捉された[
18F]フッ化物を溶出するために使用される溶出液をいう。[
18F]標識化合物の合成に使用するのに好適な[
18F]フッ化物は、通常、核反応
18O(p、n)
18Fから、水溶液として得られる。[
18F]フッ化物の反応性を増加させるために、及び水の存在に起因する水酸化副産物を低減又は最小限に抑えるために、典型的には、反応前に[
18F]フッ化物から水が除去され、フッ素化反応は、無水反応溶媒を使用して実施される(Aigbirhio et al 1995 J Fluor Chem;70:279−87)。放射性フッ素化反応の[
18F]フッ化物の反応性を向上させるために使用される更なるステップは、水を除去する前に陽イオン型対イオンを添加することである。この陽イオン型対イオンは、有機−水溶液中に溶解されており、この溶液は、[
18F]フッ化物が捕捉されている陰イオン交換カラムから[
18F]フッ化物を溶出するための溶出液として使用される。一実施形態では、有機−水溶液は、アセトニトリル又はメタノールの水溶液である。一実施形態では、有機−水溶液は、アセトニトリルの水溶液である。適切には、対イオンは、[
18F]フッ化物の溶解度を維持するために、無水反応溶媒内への十分な溶解度を有するべきである。したがって、典型的に使用される対イオンには、ルビジウム又はセシウムのような大型だが柔らかい金属イオン、Kryptofix(商標)222のようなクリプタンドと錯化したカリウム、又はテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられ、Kryptofix(商標)222のようなクリプタンドと錯化したカリウム又はテトラアルキルアンモニウム塩が好ましい。用語Kryptofix(商標)222(又はK222)は、本明細書では、化合物4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサンの市販調製物をいう。
【0027】
本発明の状況では、「脱保護用SPEカラム」は、[
18F]標識反応後の保護基を有する前駆体化合物が保持される固相を有し、保護基を除去して、所望の[
18F]標識PETトレーサーを得るためのSPEカラムである。一実施形態では、脱保護用SPEカラムは、本明細書で定義されている逆相SPEカラムである。
【0028】
「逆相SPE」では、無極性修飾固相及び極性移動相が使用される。化合物は、疎水性相互作用により保持され、化合物を固相に結合させる力を妨害する無極性溶出溶媒を使用して溶出される。逆相SPEカラムの非限定的な例としては、C18、tC18、C8、CN、ジオール、HLB、Porapak、RDX、及びNH
2 SPEカラムが挙げられる。本発明の一実施形態では、逆相SPEカラムは、tC18又はHLB SPEカラムである。一実施形態では、逆相SPEカラムは、HLB SPEカラムである。本発明の別の実施形態では、逆相SPEカラムは、tC18カラムである。本発明の幾つかの実施形態では、tC18カラムは、長鎖tC18カラム又はtC18プラスカラムと呼ばれることが多い環境用tC18カラムである。一実施形態では、脱保護に使用される逆相SPEカラムは、環境用tC18カラムである。
【0029】
「順相SPE」では、極性修飾固相及び無極性移動相が使用される。化合物は、親水性相互作用により保持され、元の移動相よりも極性であり、結合機序を妨害する溶媒を使用して溶出される。順相SPEカラムの非限定的な例としては、アルミナ、ジオール、及びシリカSPEカラムが挙げられる。本発明の一実施形態では、順相SPEカラムは、アルミナSPEカラムである。
【0030】
「陰イオン交換SPE」では、化合物の荷電基が、吸着剤表面の荷電基に静電的に引き付けられることを使用し、溶液中で荷電されている化合物に使用することができる。化合物の主要な保持機序は、主として、シリカ表面に結合されている荷電基に、化合物の荷電官能基が静電的に引き付けられることに基づく。化合物の官能基又は吸着剤表面の官能基のいずれかを中和するpHを有する溶液を使用して、目的の化合物を溶出する。陰イオン交換SPEカラムの非限定的な例は、四級アンモニウム陰イオン交換(QMA)SPEカラムである。
【0031】
用語「洗浄手段」は、洗浄すべき部品と選択的に流体接続されている試薬の供給源をいう。選択的な流体接続は、適切には、バルブ、及びある長さの可撓性チューブを含む。洗浄に好適な試薬としては、エタノール及びアセトニトリル、それらの水溶液、及び水が挙げられる。本発明の状況では、用語「洗浄」は、洗浄すべき部品を[
18F]標識PETトレーサーの次のバッチの調製での使用に好適にするために、洗浄すべき部品に好適な量の1以上の試薬を通過させるプロセスをいう。一実施形態では、反応槽及びSPEカラムの洗浄手段は、反応槽及びSPEカラムに流体接続されている水の供給源を含む。好適な水の供給源は、注射用蒸留水である。一実施形態では、水の供給源は、カセットに流体接続されている水の袋である。一実施形態では、反応槽及びSPEカラムの洗浄手段は、脱保護用SPEカラムに流体接続されているアセトニトリルの供給源を含む。一実施形態では、反応槽及びSPEカラムの洗浄手段は、精製用SPEカラムに流体接続されているエタノールの供給源を含む。一実施形態では、試薬の供給源は、本発明のカセットに含まれているバイアルの中に存在する。
【0032】
用語「捕捉する」は、1以上の特定の化合物が、SPEカラムの固相と結合するプロセスをいう。
【0033】
用語「通過させる」は、バルブを選択的に開けることより、反応物、試薬、又は反応溶液を特定の部品に流す行為をいう。
【0034】
用語「加熱する」は、本明細書では、特定の化学反応の発生を促進するために熱を加えることを意味する。本明細書で企図されているような[
18F]標識の状況では、熱は、適切には、約2〜10分間という短時間の100〜150℃の領域の温度である。
【0035】
用語「精製する」又は「精製」は、本明細書で使用される場合、実質的に純粋な[
18F]標識化合物を得るプロセスを意味すると受けられてもよい。用語は、「実質的に」は、行為、特徴、特性、状態、構造、アイテム、又は結果が、完全な又はほとんど完全な程度又は度合いであることをいう。用語「実質的に純粋な」は、そうであれば理想的である完全に純粋な[
18F]標識化合物を意味すると受け取られてもよいが、PETトレーサーとしての使用に好適な程度に十分に純粋な[
18F]標識化合物を意味すると受け取られてもよい。用語「PETトレーサーとしての使用に好適な」は、実質的に純粋な[
18F]標識化合物が、哺乳類対象体に静脈内投与し、その後PET画像法を行って、[
18F]標識化合物の位置及び/又は分布に関する1以上の臨床的に有用な画像を得るのに好適であることを意味する。本発明の一実施形態では、精製は、各々がで定義されている逆相SPEカラム及び/又は順相SPEカラムにより実施される。
【0036】
本発明の状況では、用語「洗浄」は、洗浄すべき部品を、[
18F]標識PETトレーサーの次のバッチの調製での使用に好適にするために、洗浄すべき部品に好適な量の1以上の試薬を通過させるプロセスをいう。一実施形態では、本発明の方法の状況での洗浄ステップは、反応槽及びSPEカラムを水ですすぐことを含む。本発明の方法の別の実施形態では、洗浄ステップは、SPEカラムを、水ですすぐ前にアセトニトリルですすぐことを含む。本発明の方法の別の実施形態では、洗浄ステップは、SPEカラム(11,12)を、水ですすぐ前にエタノールですすぐことを含む。
【0037】
本発明の方法の一実施形態では、ステップは順に実施される。
【0038】
本発明の代表的な例は、FASTlab(商標)(GE Healthcare社)での[
18F]FDGの合成である。第1の[
18F]FDG合成は、FASTlab(商標)での現行の[
18F]FDGプロセスと類似しており、同じ量の試薬が使用される。第1の[
18F]FDGプロセスの終了時には、第1のバッチは、第1の産物収集バイアルに移送される。この段階では、第2の[
18F]FDG合成用の異なるバイアルには、十分な残留試薬が存在する。FASTlab(商標)は、第1の[
18F]FDGバッチの送達後、待機モードに留まる。この瞬間から、FASTlab(商標)は、第2の[
18F]FDG合成用に、サイクロトロンから放射活性物質を受け取る準備ができている。サイクロトロンからの[
18F]フッ化物溶液が、カセットの円錐形バイアルに届くと、作業者は、第2の[
18F]FDGプロセスを開始することができ、このプロセスは、tC18カラムを1mlのアセトニトリルで洗浄すること、精製カラムを注射用蒸留水ですすぐことから始まる。反応槽は、第1の合成中に既に洗浄されている。[
18F]フッ化物が適切に捕捉及び溶出されるのを確実にするために、乾燥ステップの前に、第2のQMAカラム及びチューブをカセットに付加する。[
18F]フッ化物を反応器へと溶出させた後、[
18F]FDGプロセスの残りを、第1の[
18F]FDG合成と同じ方法で実施する。別々の排出ラインが使用される。カセットは、2つの[
18F]FDGバルクが、専用の排出ライン、滅菌フィルタ、及び産物収集バイアルを有することを可能にし、したがって、バッチの分離が明確である。
【0039】
図3は、[
18F]FDGを2連続バッチで放射性化合物合成するために設計されている本発明のカセットの非限定的な例の概略図である。
【実施例】
【0040】
実施例の簡単な説明
実施例1では、1つのFASTlab(商標)カセットでの2バッチの[
18F]FDGの合成について記載する。
【0041】
実施例で用いた略語のリスト
[
18F]FDG [
18F]フルオロデオキシグルコース
[
18F]FTAG [
18F]フルオロテトラアセチルグルコース
GC ガスクロマトグラフィー
HLB 親水性−親油性バランス
IC イオンクロマトグラフィー
K222 4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン
MeCN アセトニトリル
min 分
NCY 未補正収率
ppm 百万分率
QMA 四級メチルアンモニウム
SPE 固相抽出。
【0042】
実施例1
1つのFASTlab(商標)カセットでの2バッチの[18F]FDGの合成
図3に示すカセット構成を使用して、2連続バッチの[
18F]FDGを以下の方法を使用して生産した(本方法における数字は、「位置」と記載されていない限り、
図3の参照番号である。「位置」は、
図3のカセットの左から右の位置1〜25の1つである)。
(i)800μLのMeCN(試薬バイアル(7)から)を使用して、tC18環境用SPEカラム(10)の条件を整え、5mLのH
2Oを使用して、HLB SPEカラム(11)及びアルミナSPEカラム(12)の各々の条件を整えた。
(ii)サイクロトロンであるCyclone18/9(IBA社)から抽出した高エネルギー陽子線を[
18O]−H
2Oに照射して[
18F]フッ化物を得、それを位置6の円錐形レザバーを介してカセットに移送した。
(iii)[
18F]フッ化物を、QMAカラム(3)に捕捉し、濃縮水から分離した。濃縮水は、位置5〜4〜1を通る経路を介して外部バイアルに収集した。
(iv)溶出液(バイアル(2)から)を、位置3のシリンジに取り出し、QMAカラム(3)を通過させて[
18F]フッ化物を放出し、反応槽(5)に移送した。
(v)反応槽(5)での水の蒸発は、少量の25mg/mLマンノーストリフラート前駆体(位置12のバイアル(6))を120℃で加えることにより触媒した。
(vi)マンノーストリフラート前駆体(バイアル(6)から)を、位置11のシリンジに取り出し、位置10の反応槽(5)に移送し、そこで標識反応を125℃で2分間実施した。
(vii)その結果生じた放射性標識中間体である[
18F]FTAGを、位置18のtC18環境用カラム(10)の上部側で捕捉し、したがって未反応フッ化物から分離した。
(viii)水酸化ナトリウム(試薬バイアル(8)から)をSPEカラム(10)に流して、[
18F]FTAGを[
18F]FDGに変換し、位置24のシリンジに収集した。
(ix)その結果生じた塩基性溶液の中和を、リン酸(試薬バイアル(9)から)を使用して実施した。
(x)最終生産物を、連続している2つの精製カラム(11,12)(つまり、位置23のHLB及び位置20のアルミナ)を介して、位置21に接続されている第1の外部収集バイアル(13)に移送した。
(xi)環境用tC18を、位置13(試薬バイアル(7))からのアセトニトリルで洗浄し、反応器、精製カラム、及びチューブを、位置15のスパイクに接続されている水の袋からの水ですすいだ。
(xii)サイクロトロンからの[
18F]フッ化物の第2のバッチを、ステップ(ii)と同様にカセットに移送した。
(xiii)[
18F]フッ化物を、新しいQMAカラム(4)に捕捉し、濃縮水から分離した。濃縮水は、位置7〜8〜19〜1を通る経路を介して外部バイアルに収集する。
(xiv)位置8のQMAカラム(4)からの[
18F]フッ化物を用いて、ステップ(iv)〜(ix)を、第1のバッチと同様に実施した。
(xv)[
18F]FDGの第2のバッチを、位置23(HLB)及び位置20(アルミナ)にある同じカラム(11,12)で精製し、その後、位置22のチューブで接続されている新しい外部収集バイアル(14)に移送した。
【0043】
このカセット構成は、第1のバッチの場合はカセットの左側(
図4上部)及び第2のバッチの場合はカセットの右側(
図4下部)に濃縮水リサイクル流路を有しており(マニホールドは濃縮水により汚染される可能性がある)、カセットの7か所の位置が使用されており、つまり、位置6は活性物質入口であり、位置1は濃縮水バイアルと接続しており、位置4はQMA1用であり、位置5はQMA1のチューブ用であり、位置7はQMA2用であり、位置8はQMA2のチューブ用であり、位置19は、バッチ2からの濃縮水の回収用である。
【0044】
開始活性、最終活性、及び残留活性を、較正済みの電離箱VEENSTRA(VIK−202)で測定した。
【0045】
収率を決定するために、以下の収率計算を行った。
・ΔTf=合成を開始してから経過した時間(分)の場合、
・Af=最終活性(mCi)の場合、
・cAf=合成の開始(分)に関して補正した最終活性(mCi)=Af.Exp(ln(2)×(ΔTf/110))、式中110=[
18F]フッ素の半減期(分)
・cAi=合成の開始(mCi)に関して補正した最終活性(mCi)の場合
・ΔTs=合成の継続時間の場合
・補正収率(CY)=(cAf/cAi)×100
・未補正収率(NCY)=CY×Exp(ln(2)×(−ΔTs/110))。
【0046】
開始活性、最終活性、及び残留活性に関する下記の結果は、本カセット構成を用いて得られたものである。
【0047】
【表1】
品質管理のために、pH、グルコース濃度、酢酸濃度、及びK222濃度の測定を行った。
【0048】
pHは、Metrohm744型pH計を使用して測定した。
【0049】
グルコース濃度は、イオンクロマトグラフィー(IC)で求めた。分析条件は以下の通りである。
・Dionex社製ICシステム
・カラム Dionex社製Carbopak PA10、4.0×250mm、25℃。
・溶媒 KOH 100mM、1mL/分
・電気化学的検出器 30℃
使用したFDGの標準物質の組成は、以下の通りだった。
・グルコース=25μg/mL
・FDM=50μg/mL
・FDG=50μg/mL
・ClDG=50μg/mL。
【0050】
酢酸量の決定は、CP−8400オートサンプラーを備えたVarian社製CP−3800により、以下のパラメータを使用して実施したガスクロマトグラフィー(GC)を使用して評価した。
・カラム:Macherey−Nagel社製Optima(登録商標)624−LBカラム、30m×0.32mm ID、1.80μmフィルム
・インジェクション:容積1μL、分割比1:10、インジェクターは250℃
・キャリヤガス:ヘリウム 10PSI 5mL/分
・温度:0〜3分までは80℃、3〜9分までは20℃/分で80〜200℃、及び最後に9〜10分までは200℃。
・検出器:250℃でのFID(He 20mL/分、H2 30mL/分、及び圧搾空気260mL/分)
・使用した基準物質:重量/重量で500ppmの酢酸水溶液(限界値である5000ppmの10分の1に相当する)。
【0051】
最終生産物中のK222の量は、ヨード白金酸塩の展開溶液(0.5gの塩化白金酸6水和物:H
2PtCl
6・6H
2O(!高度に吸湿性!)、9gのヨウ化カリウム:KI、200mLの蒸留水)に含浸されているTLCプレートに試料のスポットを付け、それを1、5、10、50、及び100ppmのK222標準溶液と比較することで求めた。得られる染色の色強度は、溶液中に存在するK222の量に比例する。
【0052】
以下の結果が得られた。
【0053】
【表2】