特許第6496729号(P6496729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6496729支持パッドを備える円盤状カッター本体を有する回転切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496729
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月3日
(54)【発明の名称】支持パッドを備える円盤状カッター本体を有する回転切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/08 20060101AFI20190325BHJP
【FI】
   B23C5/08 Z
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-533640(P2016-533640)
(86)(22)【出願日】2014年11月27日
(65)【公表番号】特表2016-540653(P2016-540653A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】IL2014051031
(87)【国際公開番号】WO2015092784
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年10月4日
(31)【優先権主張番号】14/135,164
(32)【優先日】2013年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アイゼン,ヤロン
(72)【発明者】
【氏名】モクサル,ルーヒ
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−121757(JP,A)
【文献】 特開2005−254342(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0158623(US,A1)
【文献】 特開昭58−102615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/02,5/06−5/08,
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状カッター本体(22)と、そこに取り外し可能に保持された複数の支持パッド(24、24’)とを含む、カッター本体アセンブリ(20、20’)であって、
前記カッター本体(22)は、回転軸(R)と、前記回転軸(R)の周りでの回転方向(D)と、2つの対向する端面(26a、26b)と、これら端面間に延在する本体周囲面(28)とを有し、および
前記複数の支持パッド(24、24’)のそれぞれは、前記2つの対向する端面(26a、26b)のうちの一方から突出し、
前記回転軸(R)に対して垂直な中間面(M)は、前記本体周囲面(28)と交差し、および2つの環状の平面(P1)は、前記中間面(M)の両側から第1の距離(D1)だけ等距離でオフセットしており、前記第1の距離(D1)は、前記中間面(M)と前記2つの対向する端面(26a、26b)のそれぞれとの距離よりも大きく、
前記複数の支持パッド(24、24’)のそれぞれは、前記2つの環状の平面(P1)のうちの一方と交差し、および前記カッター本体(22)は、前記2つの環状の平面(P1)のいずれとも交差せず、
前記カッター本体(22)が、前記複数の支持パッド(24、24’)を取り付けかつ割り出すための複数のパッドポケット(40)を有し、および各支持パッド(24、24’)は、前記中間面(M)から第2の距離(D2)に配置された軸方向最外点(No)を有し、および
各支持パッド(24、24’)は、その関連のパッドポケット(40)において割り出し可能であり、前記第2の距離(D2)を増減させる、カッター本体アセンブリ(20、20’)。
【請求項2】
前記本体周囲面(28)が、前記複数の支持パッド(24、24’)と数が等しい複数の円周方向に離間した本体凹部(30)を有し、および
前記中間面(M)は、前記複数の本体凹部(30)のそれぞれと交差する、請求項1に記載のカッター本体アセンブリ(20、20’)。
【請求項3】
前記複数の本体凹部(30)のそれぞれが、前記2つの対向する端面(26a、26b)の少なくとも一方に開口する、請求項2に記載のカッター本体アセンブリ(20、20’)。
【請求項4】
前記複数の本体凹部(30)のそれぞれが、対向する両端面(26a、26b)に開口する、請求項2に記載のカッター本体アセンブリ(20、20’)。
【請求項5】
前記複数の支持パッド(24、24’)の全てが同じ環状の平面(P1)と交差するわけではない、請求項1〜4のいずれか1項に記載のカッター本体アセンブリ(20、20’)。
【請求項6】
前記複数の支持パッド(24、24’)が互いに同一であり、および
等しい数の支持パッド(24、24’)が、前記2つの環状の平面(P1)のそれぞれと交差する、請求項5に記載のカッター本体アセンブリ(20、20’)。
【請求項7】
円周方向に隣接する2つの支持パッド(24、24’)が、異なる環状の平面(P1)と交差する、請求項5または6に記載のカッター本体アセンブリ(20、20’)。
【請求項8】
前記第2の距離(D2)が前記第1の距離(D1)以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカッター本体アセンブリ(20、20’)。
【請求項9】
各パッドポケット(40)が、前記中間面(M)に対して非平行である平面的な座面(42)を有し、および各支持パッド(24、24’)は、互いに対向する上面および下面(44、46)およびそれらの間に延在するパッド周囲面(48)を有し、および
各下面(46)は、前記支持パッド(24、24’)の各割り出し位置においてその関連の座面(42)に当接する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカッター本体アセンブリ(20、20’)。
【請求項10】
各支持パッド(24、24’)が、その関連の座面(42)に対して垂直なポケット軸(A1)の周りで割り出し可能である、請求項9に記載のカッター本体アセンブリ(20、20’)。
【請求項11】
各座面(42)が、前記中間面(M)と鋭角の第1の傾斜角度(α1)を形成し、および
前記第1の傾斜角度(α1)は、20度未満の値を有する、請求項9または10に記載のカッター本体アセンブリ(20、20’)。
【請求項12】
円盤状カッター本体(22)と、そこに取り外し可能に保持される複数の支持パッド(24)とを含む、カッター本体アセンブリ(20)であって、前記カッター本体(22)は、回転軸(R)と、前記回転軸(R)の周りでの回転方向(D)と、2つの対向する端面(26a、26b)と、それらの間に延在する本体周囲面(28)とを有前記複数の支持パッド(24)のそれぞれは、前記2つの対向する端面(26a、26b)のうちの一方から突出する、カッター本体アセンブリ(20)と、
前記カッター本体(22)に取り外し可能に保持され、かつ前記本体周囲面(28)の周りで円周方向に離間している、複数の切削インサート(32)と
を含む、切削工具(70)であって、
前記回転軸(R)に対して垂直な中間面(M)は、前記本体周囲面(28)と交差し、
2つの環状の平面(P1)は、前記中間面(M)の両側から第1の距離(D1)だけ等距離でオフセットしており前記第1の距離(D1)は、前記中間面(M)と前記2つの対向する端面(26a、26b)のそれぞれとの距離よりも大きく、
前記複数の支持パッド(24)のそれぞれは、前記2つの環状の平面(P1)のうちの一方と交差し、および前記カッター本体(22)は、前記2つの環状の平面(P1)のいずれとも交差せず、
前記複数の支持パッド(24)のそれぞれが、工作物(78)の機械加工面(76a、76b)と動作接触するように構成され、前記機械加工面(76a、76b)は、前記回転軸(R)に対して垂直であり、
前記複数の切削インサート(32)のそれぞれの動作切れ刃(80)が、前記2つの環状の平面(P1)の正確に1つと、また中間交点(I)において前記中間面(M)と交差
等しい数の支持パッド(24)が、前記2つの環状の平面(P1)のそれぞれと交差する、切削工具(70)。
【請求項13】
支持パッド(24)の総数と切削インサート(32)の総数とが等しい、請求項12に記載の切削工具(70)。
【請求項14】
前記複数の支持パッド(24)のそれぞれは、前記2つの対向する端面(26a、26b)の一方のみから突出する、請求項12または13に記載の切削工具(70)。
【請求項15】
前記複数の支持パッド(24)の全てが同じ環状の平面(P1)と交差するわけではない、請求項12〜14のいずれか1項に記載の切削工具(70)。
【請求項16】
前記複数の動作切れ刃(80)の全てが、同じ環状の平面(P1)と交差するわけではない、請求項12〜15のいずれか1項に記載の切削工具(70)。
【請求項17】
前記カッター本体(22)が、前記複数の支持パッド(24)を取り付けかつ割り出すための複数のパッドポケット(40)を有し、および各支持パッド(24)は、前記中間面(M)から第2の距離(D2)に配置された軸方向最外点(No)を有し、および
各支持パッド(24)は、その関連のパッドポケット(40)において割り出し可能であり、前記第2の距離(D2)を増減させる、請求項12〜16のいずれか1項に記載の切削工具(70)。
【請求項18】
カッター本体アセンブリ(20、20’)であって、回転軸(R)と、前記回転軸(R)の周りでの回転方向(D)と、を有し、外側環状本体部分(23)に接続される中心ハブ(36)と、外側環状本体部分(23)に対応付けられた2つの対向する端面(26a、26b)と、前記2つの対向する端面(26a、26b)間に延在する本体周囲面(28)と、前記本体周囲面(28)の周りで円周方向に離間した複数のインサート収容ポケット(74)とを含む、カッター本体アセンブリ(20、20’)と;
前記本体周囲面(28)の半径方向内側に配置される複数の支持パッド(24)と;
前記インサート収容ポケット(74)に取り外し可能に保持された複数の切削インサート(32)であって、各切削インサート(32)は、動作切れ刃(80)を有する、複数の切削インサート(32)と
を含む、切削工具(70)であって、
前記切削工具(70)は、工作物(78)に、スロット幅Wを有するスロット82を切削するように構成され;
前記動作切れ刃(80)は、集合的に、前記スロット幅(W)の全体にわたり、
それぞれの支持パッド(24)は、前記2つの対向する端面(26a、26b)の一方のみから突出し;および
前記支持パッド(24)は、集合的に、前記スロット幅(W)に対応する軸方向範囲を有する、切削工具(70)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して金属切削プロセスにおいて使用するための、および特にスロット加工(slotting)作業およびスリット加工(slitting)作業用の、複数の支持パッドを有する、円盤状回転切削工具とカッター本体アセンブリとに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
複数の支持パッドを有する回転切削工具の分野では、支持パッドがカッター本体の周囲面に配置されかつ半径方向において工作物に接触されるように構成されて、切削工具を安定化させかつ中心に置く装置が知られている。支持パッドはまた、「摩耗パッド」、「軸受パッド」、または「ガイドパッド」とも称し得る。
【0003】
米国特許出願公開第2010/0158623号には、そのような回転切削工具が開示されている。
【0004】
スロット加工作業およびスリット加工作業で使用されている回転切削工具の分野では、複数の切削インサートがカッター本体の周囲面に配置され、および各切削インサートが、2つの平行なスロット加工面(slot surface)のうちの一方を切削するように構成されている装置が知られている。
【0005】
米国特許出願公開第2011/0097164号には、そのような回転切削工具が開示されている。
【0006】
そのような回転切削工具は、切削工具に作用する軸方向の切削力に起因して、不正確なスロット幅を生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点を克服する改良型の回転切削工具・カッター本体アセンブリを提供することにある。
【0008】
また、本発明の目的は、複数の支持パッドを有する改良型の回転切削工具・カッター本体アセンブリを提供することにある。
【0009】
本発明のさらなる目的は、改良型の回転切削工具・カッター本体アセンブリが、複数の割り出し可能な(indexable)支持パッドを有することである。
【0010】
本発明の目的のさらに別の目的は、複数の割り出し可能な支持パッドを、軸方向に調整可能にすることである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、複数の支持パッドの軸方向の調整が、正確にかつ信頼性高く実施されるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明によれば、
円盤状カッター本体と、そこに取り外し可能に保持された複数の支持パッドと
を含む、カッター本体アセンブリであって
カッター本体は、回転軸と、回転軸の周りでの回転方向と、2つの対向する端面と、それらの間に延在する本体周囲面とを有し、および
複数の支持パッドのそれぞれは、2つの対向する端面の一方から突出し、
回転軸に対して垂直な中間面(median plane)は、本体周囲面と交差し、および2つの環状の平面は、中間面の両側から第1の距離だけ等距離でオフセットされ、および
複数の支持パッドのそれぞれは、2つの環状の平面の一方と交差し、およびカッター本体は、2つの環状の平面のいずれとも交差しない、カッター本体アセンブリが提供される。
【0013】
また、本発明によれば、円盤状カッター本体に取り外し可能に保持可能であり、
互いに対向する上面および下面と、それらの間に延在するパッド周囲面と
を含む、支持パッドであって、
下面は、平面的であり、かつカッター本体にあるパッドポケットの関連の座面に当接するように構成され、および
パッド周囲面は、上面と交差する上部を有し、
上部は、パッド軸の周りでN回の回転対称性を示し、および
パッド軸は、下面に対して非垂直である、支持パッドが提供される。
【0014】
さらに本発明によれば、
カッター本体と、そこに取り外し可能に保持される複数の支持パッドとを含む、カッター本体アセンブリ
を含む、切削工具であって
カッター本体は、回転軸と、回転軸の周りでの回転方向と、2つの対向する端面と、それらの間に延在する本体周囲面とを有し、および
複数の切削インサートは、カッター本体に取り外し可能に保持され、かつ本体周囲面の周りで円周方向に離間し、
回転軸に対して垂直な中間面は、本体周囲面と交差し、
複数の支持パッドのそれぞれは、工作物の機械加工面と動作接触するように構成され、および
機械加工面は、回転軸に対して垂直である、切削工具が提供される。
【0015】
図面の簡単な説明
よりよく理解するために、ここで、例としてのみ、添付図面を参照して本発明について説明し、図面では、一点鎖線が、部材の部分的な図に関して切削される境界を表す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態によるカッター本体アセンブリの分解斜視図である。
図2図1に示すカッター本体アセンブリの部分的な側面図である。
図3図1に示すカッター本体アセンブリの部分的な端面図である。
図4】関連の支持パッドの軸方向突出部を備える、図2に示すカッター本体アセンブリの、線IV−IVに沿って取った部分的な断面図である。
図5】関連の支持パッドを側面図で示す、図3に示すカッター本体アセンブリの、線V−Vに沿って取った断面図である。
図6】関連の支持パッドが取り除かれた、図5に示す断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態によるカッター本体アセンブリの分解斜視図である。
図8図7に示すカッター本体アセンブリの部分的な側面図である。
図9図7に示すカッター本体アセンブリの部分的な端面図である。
図10】関連の支持パッドの軸方向突出部を備える、図8に示すカッター本体アセンブリの、線X−Xに沿って取った部分的な断面図である。
図11】関連の支持パッドを側面図で示す、図9に示すカッター本体アセンブリの、線XI−XIに沿って取った断面図である。
図12】関連の支持パッドが取り除かれた、図11に示す断面図である。
図13】本発明のいくつかの実施形態による切削工具の斜視図である。
図14】工作物に係合する、図13に示す切削工具の側面図である。
図15図14に示す切削工具の詳細な図である。
図16図13に示す切削工具の部分的な端面図である。
図17図16に示す切削工具の、線XVII−XVIIに沿って取った断面図である。
図18】関連の支持パッドの軸方向突出部を備える、図17に示す切削工具の、線XVIII−XVIIIに沿って取った部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
まず図1〜3、および図7〜9に注目すると、カッター本体22と、そこに取り外し可能に保持された複数の支持パッド24、24’とを含むカッター本体アセンブリ20、20’が示されている。
【0018】
カッター本体22は、回転軸Rと、2つの対向する端面26a、26bと、それらの間に延在する本体周囲面28とを有する。
【0019】
図2および図8に示すように、回転軸Rに対して垂直な中間面Mが、本体周囲面28と交差する。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の支持パッド24、24’のそれぞれが、2つの対向する端面26a、26bのうちの一方から突出し得る。
【0021】
また、本発明のいくつかの実施形態では、中間面Mは、その全周に沿って本体周囲面28と交差し得る。
【0022】
図1図2図7および図8に示すように、本体周囲面28は、複数の支持パッド24、24’と数が等しい複数の円周方向に離間した本体凹部30を有し、および中間面Mは、複数の本体凹部30のそれぞれと交差し得る。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の本体凹部30のそれぞれは、2つの対向する端面26a、26bのうちの少なくとも一方に開口し得る。
【0024】
また、本発明のいくつかの実施形態では、複数の本体凹部30のそれぞれは、対向する両端面26a、26bに開口し得る。
【0025】
各本体凹部30は、切削インサート32を取り外し可能に保持しかつおよび切削作業の最中に生じた金属の切り屑を排出するために必要な空間を提供し得ることを認識されたい。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、本体周囲面28は、複数の本体凹部30と円周方向において交互となる複数の外周部分34を有し得る。
【0027】
図4および図10に示すように、各外周部分34は中間面Mと交差して、回転軸Rに含まれる第1の中心点C1を有する第1のパイ状セクターS1の弧を規定し、および各第1のパイ状セクターS1は、少なくとも部分的に、単一の支持パッド24、24’の軸方向の突起を含み得る。
【0028】
また、本発明のいくつかの実施形態では、複数の第1のパイ状セクターS1は、互いに同一とし得る。
【0029】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、各第1のパイ状セクターS1は、第1のセクター角度β1に対し、および第1のセクター角度β1は、15度未満の値を有し得る。
【0030】
図2および図8に示すように、2つの環状の平面P1は、中間面Mの両側から第1の距離D1だけ等距離でオフセットしており、および複数の支持パッド24、24’のそれぞれは、2つの環状の平面P1のうちの一方と交差し、およびカッター本体22は、2つの環状の平面P1のいずれとも交差しない。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の支持パッド24、24’の全てが、同じ環状の平面P1と交差しなくてもよい。
【0032】
また、本発明のいくつかの実施形態では、複数の支持パッド24、24’は、互いに同一としてもよく、および等しい数の支持パッド24、24’が、2つの環状の平面P1のそれぞれと交差し得る。
【0033】
図1図2図7および図8に示すように、カッター本体22は円盤状である。
【0034】
いくつかの実施形態では、カッター本体22は、半径方向外側の環状本体部分23に接続された半径方向内側の中心ハブ36を有し得る。中心ハブ36は、カッター本体22の2つの対向する端面26a、26bの少なくとも一方から突出し、およびそこを通って軸方向に延在する中心アパーチャ38を有し得る。
【0035】
中心ハブ36は、2つの環状の平面P1がそれぞれ中心ハブ36の外径よりも大きい内径を有することに起因して、2つの環状の平面P1のいずれとも交差しないことを認識されたい。それゆえ、2つの環状の平面P1は、外側環状本体部分23のみに対面すると考えられ得る。
【0036】
図1および図7に示すように、カッター本体22は、複数の支持パッド24、24’を取り付けかつ割り出すための複数のパッドポケット40を有し得る。支持パッド24、24’は、半径方向外側の環状本体部分23の軸方向外側に突出する。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、図5図6図11および図12に示すように、各パッドポケット40は、中間面Mに対して非平行である平面的な座面42を有してもよく、各支持パッド24、24’は、互いに対向する上面および下面44、46、およびそれらの間に延在するパッド周囲面48を有し、および各下面46は、支持パッド24、24’の各割り出し位置においてその関連の座面42に当接し得る。
【0038】
また、本発明のいくつかの実施形態では、各座面42は、中間面Mと鋭角の第1の傾斜角度α1を形成し、および第1の傾斜角度α1は、20度未満の値を有し得る。
【0039】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、載置された各支持パッド24、24’は、中間面Mから第2の距離D2に配置された軸方向最外点Noを有し、および各支持パッド24、24’は、その関連のパッドポケット40において割り出し可能であり、第2の距離D2を増減させ得る。
【0040】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、載置された各支持パッド24、24’の軸方向最外点Noは、その上面44に形成され、および各上面44は、凸状とし得る。
【0041】
載置された支持パッド24、24’の各割り出し位置において各下面46がその関連の座面42に当接することによって、好都合なことに、安定性のある構成を生じ、それにより、第2の距離D2の正確かつ信頼性の高い調整を確実に行うことを認識されたい。
【0042】
載置された各支持パッド24、24’の軸方向最外点Noは、各割り出し位置においてその上面44の異なる部分に形成され得ることも認識されたい。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、各支持パッド24、24’は、その関連の座面42に対して垂直なポケット軸A1の周りで割り出し可能とし得る。
【0044】
図5および図11に示すように、各パッド周囲面48は、その関連の上面44と交差する上部50を有し、および各上部50は、上面44の中心を通過するパッド軸A2の周りでN回の回転対称性を示し得る。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、各支持パッド24、24’は、その関連のパッドポケット40にN個の割り出し位置を有し、およびパッド軸A2は、その関連の座面42に対して非垂直とし得る。
【0046】
また、本発明のいくつかの実施形態では、各パッド周囲面48は、その関連の下面46と交差する下部52を有し、および下部52は、支持パッド24、24’の側面図において楔状とし得る。
【0047】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、各下面46は、平面的であってもよく、および各パッド軸A2は、その関連の下面46に対して非垂直とし得る。一実施形態では、パッド軸A2は、下面46と88°〜89°の角度を形成する。
【0048】
図5および図11に示すように、各パッド軸A2は、その関連の座面42と鋭角の第2の傾斜角度α2を形成し、および第2の傾斜角度α2は、80度超の値を有し得る。
【0049】
ポケットおよびパッド軸A1、A2が非同軸である本発明の実施形態に関し、上部50は、ポケット軸A1の周りで偏心して割り出し可能とし得ることを認識されたい。
【0050】
その関連のパッドポケット40において各支持パッド24、24’にN個の割り出し位置を設けることによって、第2の距離D2の増分調整を可能にすることも認識されたい。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態では、Nは、少なくとも3の値とし得る。
【0052】
また、本発明のいくつかの実施形態では、Nは、最大で16の値とし得る。
【0053】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、Nは偶数としてもよく、および第2の距離D2は、2つの回転式に対向する割り出し位置において最大値および最小値に設定され得る。
【0054】
Nが偶数である実施形態に関し、第2の距離D2は、その最大値と最小値との間に(N−2)/2の増分を有し得ることを認識されたい。例えば、合計N=8個の割り出し位置に関し、支持パッドを初期の0°の位置から45°、90°、135°および180°だけいずれかの方向に割り出すと(すなわち、「回転させると」)、4つの距離の増分があるとし得る。さらに、1つの割り出し位置から次の割り出し位置までの距離の増分は、等しい必要はない。例えば、一実施形態では、0°の位置から45°、90°、135°および180°まで支持パッドを割り出すことによって、それぞれ+0.010mm、+0.0250mm、+0.040mmおよび+0.045mmの段階的な距離の増分を生じ得る。
【0055】
図3および図9に示すように、上面44は、支持パッド24、24’の現在の割り出し位置を反映する割り出し印45を備え得る。一実施形態では、割り出し印は、上面44の特定の周囲位置に形成されたノッチを含む。別の実施形態では、割り出し印は、英数字や他のシンボルの形態を取り得る。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、各支持パッド24、24’に関連付けられた第2の距離D2は、第1の距離D1以上とし得る。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態では、第2の距離D2は、関連の支持パッド24、24’の1つの割り出し位置では第1の距離D1に等しくてもよく、および第2の距離D2は、関連の支持パッド24、24’のN−1個の割り出し位置では第1の距離D1を上回り得ることを認識されたい。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態では、各上部50は、N個の平面的なファセット54を有してもよく、およびパッド軸A2の周りの少なくとも3個の連続的で平面的なファセット54は、関連のパッドポケット40の等しい数の対応する平面的な壁56に対面し得る。
【0059】
各パッドポケット40に少なくとも3つの平面的な壁56を設けることによって、操作者が、関連の支持パッド24、24’を迅速にかつ繰り返し割り出しを行うのを支援し、かつパッドポケット40において支持パッド24、24’が不注意に回転されないようにし得ることを認識されたい。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態では、各支持パッド24、24’は、締付ネジ58によってその関連のパッドポケット40に取り外し可能に締結され得る。
【0061】
本発明の第1の実施形態では、図5に示すように、各支持パッド24は、その下面46から離れるように延在する隆起60を有してもよく、および締付ネジ58は、隆起60の遠位面64にある第1のネジ孔62にネジ式に係合し得る。
【0062】
また、本発明の第1の実施形態では、第1のネジ孔62は、支持パッド24が載置されるとき、ポケット軸A1と同軸とし得る。
【0063】
さらに、本発明の第1の実施形態において、支持パッド24は、硬化鋼から製造され得る。
【0064】
本発明の第1の実施形態は、その締付ネジ58と組み合わせて、各支持パッド24の好都合に小型な構成を提供することを認識されたい。
【0065】
本発明の第2の実施形態では、図11に示すように、各支持パッド24’は、その下面46から離れて延在する隆起を有していなくてもよく、および締付ネジ58は、パッドポケット40にある第2のネジ孔66にネジ式に係合し、および締付ネジ58のネジ頭68は、支持パッド24’の平面的なファセット54のうちの1つに当接し得る。
【0066】
また、本発明の第2の実施形態では、支持パッド24’は、焼結炭化物から製造され得る。
【0067】
本発明の第2の実施形態に関連付けられた支持パッド24’は、加圧焼結プロセスによって単純にかつ安価に製造され得ることを認識されたい。
【0068】
ここで図13〜16に注目すると、カッター本体アセンブリ20と、カッター本体22に取り外し可能に保持されかつ本体周囲面28の周りで円周方向に離間した複数の切削インサート32とを含む、切削工具70が示されている。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、カッター本体22は、回転軸Rに沿って延在する工具シャンク72に結合され得る。
【0070】
また、本発明のいくつかの実施形態では、各切削インサート32は、そのそれぞれの本体凹部30内のインサート収容ポケット74に直接取り付けられ得る。
【0071】
本発明の他の実施形態では(図示せず)、各切削インサートは、切削インサートの軸方向の位置調整を可能にするカートリッジによって、そのそれぞれのインサート収容ポケットに間接的に取り付けられ得る。
【0072】
本発明によれば、図14および図15に示すように、複数の支持パッド24のそれぞれは、工作物78の機械加工面76a、76bと動作接触するように構成されており、および機械加工面76a、76bは、回転軸Rに対して垂直である。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態では、支持パッド24の総数および切削インサート32の総数は、等しいとし得る。
【0074】
また、本発明のいくつかの実施形態では、各支持パッド24の上面44は、その関連の機械加工面76a、76bと動作接触して、工作物78をより深く切削するときに、回転しているカッター本体22を安定させる。
【0075】
各支持パッド24の上面44が凸状にされている本発明の実施形態に関し、単一の接点において、その関連の機械加工面76a、76bと、低摩擦の動作接触が行われることを認識されたい。
【0076】
各支持パッド24に関連付けられた単一の接点は、その軸方向最外点Noと一致してもよく、これは、耐用寿命の延長に関して好都合にも、各割り出し位置において、その上面44の異なる部分に形成され得ることも認識されたい。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の切削インサート32のそれぞれの動作切れ刃80は、2つの環状の平面P1のうちの正確に1つ、かつまた中間交点(median intersection point)Iにおいて中間面Mと交差し得る。
【0078】
また、本発明のいくつかの実施形態では、複数の動作切れ刃80の全てが同じ環状の平面P1と交差しなくてもよい。
【0079】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、複数の切削インサート32は、互いに同一としてもよく、および等しい数の動作切れ刃80が、2つの環状の平面P1のそれぞれと交差し得る。
【0080】
図14および図15に示すように、回転切削工具70は、2つの平行な機械加工面76a、76bを有する工作物78に、スロット82を切削するように構成されてもよく、およびスロット82は、第1の距離D1の2倍以上のスロット幅Wを有し得る。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態では、中間面Mは、スロット82を二等分し得る。
【0082】
2つの環状の平面P1の正確に1つと交差する動作切れ刃80を有する切削インサート32は、2つの平行な機械加工面76a、76bの一方のみおよびスロット幅Wの一部分を切削してもよく、およびそのような切削インサート32は、「効果半減的(half-effective)」と呼ばれ得ることを認識されたい。
【0083】
「効果半減的」な切削インサート32は、軸方向の切削力Fを、それらの関連の機械加工面76a、76bから離れる方向に、切削工具70に作用するようにさせることも認識されたい。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態では、切削工具70は、各支持パッド24を割り出すことによって、スロット加工またはスリット加工作業を行うように設定され得るため、D2=W/2である。これにより、各支持パッド24が、その関連の機械加工面76a、76bと確実に動作接触するようにし、これにより、対向する機械加工面76a、76bに係合する「効果半減的」な切削インサート32によって引き起こされた切削工具70の軸方向の撓みを好都合に抑制するため、高精度のスロット幅Wを生じる。そのような場合には、これら支持パッド24は、集合的に、スロット幅Wに対応する軸方向範囲を有する。
【0085】
設定中の支持パッド24の割り出しは、摩耗した動作切れ刃80に応答して実行されてもよいし、またはその代わりに、本発明の他の実施形態では(図示せず)、切削インサートが切削工具において軸方向の位置調整を行ったことも認識されたい。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態では、円周方向に隣接する2つの支持パッド24は、異なる環状の平面P1と交差し得る。
【0087】
また、本発明のいくつかの実施形態では、円周方向に隣接する2つの切削インサート32の動作切れ刃80は、異なる環状の平面P1と交差し得る。
【0088】
図18に示すように、円周方向に隣接する2つの切削インサート32の中間交点Iは、回転軸Rに含まれる第2の中心点C2を有する第2のパイ状セクターS2の弧の端点を規定し得、および各第2のパイ状セクターS2は、単一の支持パッド24のみの軸方向の突起を含み得る。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態では、複数の第2のパイ状セクターS2は、互いに同一とし得る。
【0090】
さらに、本発明のいくつかの実施形態では、各第2のパイ状セクターS2は、第2のセクター角度β2に対し、および第2のセクター角度β2は、30度未満の値を有し得る。
【0091】
図16および図17に示すように、切削工具70は、回転軸Rの周りでの回転方向Dを有する。
【0092】
円周方向に隣接する2つの切削インサート32の動作切れ刃80が異なる環状の平面P1と交差する本発明のいくつかの実施形態では、各支持パッド24は、動作切れ刃80が支持パッド24のものとは異なる環状の平面P1と交差する、円周方向に隣接する切削インサート32の回転方向後方に、配置され得る。
【0093】
また、本発明のいくつかの実施形態では、各ポケット軸A1は、第1および第2の交点I1、I2において2つの環状の平面P1と交差し得る。各第1の交点I1は、その関連の第2の交点I2の回転方向前方に配置され、および各座面42は、その関連の第1の点I1において環状の平面P1の方に対面し得る。
【0094】
第1の交点I1を、その関連の第2の交点I2の回転方向前方に配置することによって、好都合なことに、支持パッド24を、その関連の機械加工面76a、76bに対して、引っ掻きおよび/またはマーキングのリスクを最小限にするように、向けることを認識されたい。
【0095】
図18に示すように、各支持パッド24の軸方向の突起は、その円周方向に隣接する2つの切削インサート32に半径方向に重なり合い得る。同様に、この図に示すように、アーチ形の境界線Rによって示すように、支持パッド24の半径方向の最も外側の部分は、動作切れ刃80の半径方向内側、かつまた本体周囲面28の外周部分34の半径方向内側である。その一方で、図17に示すように、各支持パッド24の軸方向最外点Noは、カッター本体22の関連の端面26aの軸方向外側に配置される。
【0096】
各支持パッドの軸方向の突起と、その円周方向に隣接する2つの切削インサート32との半径方向の重なりによって、切削工具70の軸方向の撓みを好都合に抑制するため、より高精度のスロット幅Wに寄与することを認識されたい。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態では、図18に示すように、各支持パッド24の軸方向の突起は、動作切れ刃80が支持パッド24と同じ環状の平面P1と交差する、円周方向に隣接する切削インサート32よりも、動作切れ刃80が支持パッド24とは異なる環状の平面P1と交差する、円周方向に隣接する切削インサート32の近くに配置され得る。
【0098】
各支持パッド24を、その軸方向の突起が、動作切れ刃80が支持パッド24とは異なる環状の平面P1と交差する、円周方向に隣接する切削インサート32の近くに配置されるように、構成することによって、切削工具70の軸方向の撓みを好都合に抑制するため、より高精度のスロット幅Wに寄与することも認識されたい。
【0099】
本発明を、ある程度詳細に説明したが、以下特許請求するような本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、様々な代替および修正を行い得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18