(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼板は、ステンレス特有の美麗な金属光沢を活かした高級感のある外観が得られる(例えば、特許文献1,2参照)。そのため、家庭用、業務用を問わず電化製品の筐体や内装材、表装材に広く使われている。また、ステンレス鋼板は、その高級な外観だけでなく、耐食性に優れるため、家庭用あるいは業務用の厨房や厨房に設置される電化製品においても広く使われている。
ところで、台所や厨房等の水周り箇所においては、ゴキブリ等の害虫が寄り付き易い傾向があるため、害虫対策が求められる。とりわけ、冷蔵庫や炊飯器等の生活家電類の多くはその機構上、熱を発する。発熱した生活家電は、ゴキブリ等の害虫の温床になり易いため、生活家電類に使用される素材には害虫忌避性を有することが求められている。
【0003】
一般に、害虫忌避剤としては、接触忌避型と揮散忌避型の2種類が知られている。接触忌避型の害虫忌避剤は、塗膜の表層部に濃化して偏在することで、直接的に害虫に接触した場合に忌避効果を発揮するものである。接触忌避型の害虫忌避剤は、それ自体は変質することがないため、長期的な持続効果を期待できる。しかし、接触忌避型の害虫忌避剤が塗膜の表層部に偏在しない場合には、効果が低くなる。
揮散忌避型の害虫忌避剤は、それ自体が徐々に揮散することで、害虫を寄せ付けなくするものであり、害虫を忌避させる範囲を広くできる利点を有する。しかし、揮散忌避型の害虫忌避剤は揮発によって徐々に消失していくため、忌避効果の持続性に難がある。
生活家電類等では、購入してから廃棄するまでの間に、塗装を塗り替えたり、パーツを交換したりすることは稀である。そのため、生活家電類に害虫忌避性を付与する際には、効果を持続させやすい接触忌避型が選択される。
しかしながら、接触忌避型の害虫忌避剤は、上記のように、表層部に存在するもののみが害虫忌避効果を示すため、害虫忌避性を向上させることが容易ではなかった。さらに、害虫忌避性を向上させながらも、低コストにすることが求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<害虫忌避性ステンレス鋼板>
本実施形態の害虫忌避性ステンレス鋼板は、ステンレス鋼板原板と、前記ステンレス鋼板原板の少なくとも一方の面に設けられた化成処理層とを備える。本実施形態の害虫忌避性ステンレス鋼板は、クリヤ塗膜等のトップコートを備えず、化成処理層が最表層となる。
【0010】
(ステンレス鋼板原板)
本実施形態に使用されるステンレス鋼板原板としては、フェライト系、オーステナイト系、マルテンサイト系等、一般に使用されるステンレス鋼板が挙げられる。
また、ステンレス鋼板原板の表面は各種の研磨方法で研磨されてもよい。研磨方法としては、例えば、JIS規格で規定されたNo.4研磨、HL研磨等が挙げられる。
【0011】
(化成処理層)
化成処理層は、ステンレス鋼板原板の保護のために設けられる層である。通常のステンレス鋼板は、化成処理層を備える。
本実施形態における化成処理層は、シランカップリング剤及び害虫忌避剤を含有
する。通常、ステンレス鋼板用の化成処理剤として、クロメート処理液が用いられる。化成処理層がシランカップリング剤を含有すれば、クロメート処理液を用いる必要がない。このため、クロメートフリーにでき、環境への負荷を抑制できる。
シランカップリング剤としては、アミノシラン系シランカップリング剤およびエポキシシラン系シランカップリング剤の少なくとも一方が好ましい。
ここで、アミノシラン系カップリング剤としては、例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシ系シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
前記シランカップリング剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
化成処理層の付着量は、害虫忌避性を確保するために、0.10g/m
2以上とする。
一方、化成処理層の付着量は0.30g/m
2以下であることが好ましい。化成処理層の付着量が前記上限値を超えると、化成処理層を安定に形成できないことがある。また、化成処理層が厚くなってステンレス鋼板の素地が見えにくくなるため、ステンレス特有の美観を損ねることがある。
さらには、化成処理層の付着量は、0.18〜0.30g/m
2であることがより好ましく、0.20〜0.30g/m
2であることがさらに好ましい。
化成処理層の付着量は、以下の手順により求める。まず、蛍光X線分析によってシランカップリング剤由来の元素の付着量を測定してシランカップリング剤の付着量を得る。次いで、下記式により化成処理層の付着量を求める。
化成処理層の付着量=蛍光X線分析によって求めたシランカップリング付着量×{(化成処理液に含まれるシランカップリング剤の固形分の量(質量)+化成処理液に含まれる害虫忌避剤の固形分の量(質量))/(化成処理液に含まれるシランカップリング剤の固形分の量(質量))}
化成処理層がステンレス鋼板原板の両面に設けられている場合、両方の化成処理層の付着量が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0013】
化成処理層に含まれる害虫忌避剤は、接触忌避型の害虫忌避剤である合成ピレスロイド系化合物を含む。なお、本実施形態では、害虫忌避剤は、合成ピレスロイド系化合物のみからなる。
合成ピレスロイド系化合物としては、アクリナトリン≪化学名:S−α−シアノ−3−フェノキシベンジル=(Z)−(1R,3S)−2,2−ジメチル−3−[2−(2,2,2−トリフロオロ−1−トリフルオロメチルエトキシカルボニル)ビニル]シクロプロパンカルボキシラート≫、アレスリンI≪化学名:2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペニル)−2−シクロペンテン−1−イルエステル≫、アレスリンII≪化学名:3−(3−メトキシ−2−メチル−3−オキソ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペニル)−2−シクロペンテン−1−イルエステル≫、D−テトラメトリン≪化学名:(1R)−2,2−ジメチル−3β−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパン−1β−カルボン酸[(1,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2H−イソインドール)−2−イル]メチル≫、レスメトリン≪化学名:2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸(5−ベンジル−3−フリル)メチル≫、フラメトリン≪化学名:2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸5−プロパルギルフラン−2−イルメチル≫、フェノトリン≪化学名:2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸m−フェノキシベンジル≫、ペルメトリン≪化学名:3−(2,2−ジクロロエテニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボン酸(3−フェノキシベンジル)≫、シフェノトリン≪化学名:2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸シアノ(3−フェノキシフェニル)メチル≫、ブラトリン≪化学名:2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸(6−クロロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)メチル≫、エトフェンブロックス≪化学名:2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル=3−フェノキシベンジルエーテル≫、シフルトリン≪化学名:2−(2,2−ジクロロビニル)−3,3−ジメチルシクロプロパンカルボン酸α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル≫、テフルトリン≪化学名:2, 3, 5, 6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル=(Z)−(1RS, 3RS)−3−(2−クロロ−3, 3, 3−トリフルオロ−1−プロペニル)−2, 2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート≫、ビフェントリン≪化学名:2−メチルビフェニル−3−イルメチル=(1RS, 2RS)−2−(Z)−(2−クロロ−3, 3, 3−トリフルオロ−1−プロペニル)−3, 3−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート≫、プロフルトリン≪化学名:(1R)−2,2−ジメチル−3α−[(Z)−1−プロペニル]シクロプロパン−1β−カルボン酸−2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル≫、メトフルトリン≪化学名:(1R,3R)−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)ベンジル≫、トランスフルトリン≪化学名:(1R,3S)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)メチル≫、ピレトリン≪化学名:(1R,3R)−3−[(E)−3−メトキシ−2−メチル−3−オキソ−1−プロペニル]−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸(S)−2−メチル−4−オキソ−3−[(Z)−2,4−ペンタジエニル]−2−シクロペンテン−1−イル≫、エムペントリン≪化学名:(1R)−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル≫、プラレトリン≪化学名:2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペン−1−イル)−1−シクロプロパンカルボン酸2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロピニル)−2−シクロペンテン−1−イル≫、イミプロトリン≪化学名:2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)−1−シクロプロパンカルボン酸[2,5−ジオキソ−3−(2−プロピニル)イミダゾリジン−1−イル]メチル≫等が挙げられる。害虫忌避剤としては、上記化合物群から選択される1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
害虫忌避剤としては、害虫忌避性がより高く、さらに耐熱性及び害虫忌避効果の持続性も高いことから、アクリナトリン≪化学名:S−α−シアノ−3−フェノキシベンジル=(Z)−(1R,3S)−2,2−ジメチル−3−[2−(2,2,2−トリフロオロ−1−トリフルオロメチルエトキシカルボニル)ビニル]シクロプロパンカルボキシラート≫が好ましい。
【0015】
化成処理層において、シランカップリング剤の含有量を100質量部とした際、害虫忌避剤の含有割合(含有量)は、10〜50質量部であり、10〜25質量部であることが好ましい。
害虫忌避剤の含有割合が前記下限値未満であると、害虫忌避効果が充分に発揮されない。一方、害虫忌避剤の含有割合が前記上限値を超えると、害虫忌避効果の向上が頭打ちになり、含有割合を増やしてもコストが高くなるばかりで無益である。
【0016】
化成処理層には、化成処理層の形成及び機能を損なわない範囲で、着色剤等が含まれてもよい。
【0017】
<害虫忌避性ステンレス鋼板の製造方法>
本実施形態の害虫忌避性ステンレス鋼板の製造方法は、ステンレス鋼板原板の少なくとも一方の面に化成処理液を塗布し、乾燥させて、化成処理層を形成する工程を有する。
【0018】
化成処理液は、合成ピレスロイド系化合物を含む害虫忌避剤とバインダと溶剤とを含有する液である。なお、本実施形態では、害虫忌避剤は、合成ピレスロイド系化合物のみからなる。
化成処理液に含まれる溶剤としては、特に制限はなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、トルエン等を使用できる。前記溶剤群から選択される1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
化成処理液には、害虫忌避性ステンレス鋼板の意匠性付与のために、着色剤が含まれてもよい。
【0019】
化成処理液において、シランカップリング剤の含有量を100質量部とした際、害虫忌避剤の含有割合(含有量)は、10〜50質量部であり、10〜25質量部であることが好ましい。
害虫忌避剤の含有割合が前記下限値未満であると、害虫忌避効果が充分に発揮されない。一方、害虫忌避剤の含有割合が前記上限値を超えると、害虫忌避効果の向上が頭打ちになり、含有割合を増やしてもコストが高くなるばかりで無益である。
【0020】
化成処理液の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、スプレー、ロールコート、バーコート、カーテンフローコート、静電塗布等を採用できる。
また、化成処理液の塗布後に化成処理層を形成する際には、ステンレス鋼板の表面到達温度(PMT)が60〜140℃となるように焼付け、乾燥することが好ましい。
【0021】
<本実施形態の作用効果>
本実施形態の害虫忌避性ステンレス鋼板では、化成処理層が害虫忌避剤を上記の特定量で含有するため、害虫忌避性が高い。特に、化成処理層を薄くした場合には、化成処理層の表面における害虫忌避剤の存在量が多くなるため、害虫忌避性をより高くすることができる。また、害虫忌避剤の使用効率も高くなる。
また、ステンレス鋼板の製造において、化成処理層の形成は通常の工程である。このため、化成処理層に害虫忌避剤を含有させれば、特別な設備や工程を付加することなく、低コストで、ステンレス鋼板に害虫忌避性を付与することができる。
【実施例】
【0022】
以下に、実施例および比較例によって本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
ステンレス鋼板原板として、新日鐵住金ステンレス(株)製のステンレス鋼板SUS430/No.4研磨仕上げ材を用いた。
以下の含有割合でアミノシラン系シランカップリング剤とアクリナトリンと溶剤とを含有するノンクロメート系の化成処理液を用意した。
アミノシラン系カップリング剤の含有割合:2.0質量部、アクリナトリンの含有割合:0.2質量部、溶剤の含有割合:98.0質量部。
このステンレス鋼板原板の両面に、前記ノンクロメート系の化成処理液を、ロールコーター用いて、化成処理液の乾燥塗工量が0.18g/m
2になるように塗装した。次いで、表面到達温度(PMT)が100℃になるように焼き付け、乾燥させることにより化成処理層を形成して、ステンレス鋼板を得た。アミノシラン系カップリング剤を100質量部としたときのアクリナトリンの含有割合は10.0質量部であった。
【0024】
(実施例2)
化成処理液におけるアクリナトリンの含有割合を0.5質量部に変更して、アミノシラン系カップリング剤100質量部に対するアクリナトリン含有割合を25.0質量部にした以外は実施例1と同様にしてステンレス鋼板を得た。
【0025】
(実施例3)
化成処理液におけるアクリナトリンの含有割合を1.0質量部に変更して、アミノシラン系カップリング剤100質量部に対するアクリナトリン含有割合を50.0質量部にした以外は実施例1と同様にしてステンレス鋼板を得た。
【0026】
(実施例4)
化成処理液の乾燥塗工量を0.10g/m
2に変更した以外は実施例2と同様にしてステンレス鋼板を得た。
【0027】
(実施例5)
化成処理液の乾燥塗工量を0.13g/m
2に変更した以外は実施例2と同様にしてステンレス鋼板を得た。
【0028】
(実施例6)
化成処理液の乾燥塗工量を0.21g/m
2に変更した以外は実施例2と同様にしてステンレス鋼板を得た。
【0029】
(実施例7)
化成処理液の乾燥塗工量を0.24g/m
2に変更した以外は実施例2と同様にしてステンレス鋼板を得た。
【0030】
(実施例8)
化成処理液の乾燥塗工量を0.30g/m
2に変更した以外は実施例2と同様にしてステンレス鋼板を得た。
【0031】
(比較例1)
化成処理液におけるアクリナトリンの含有割合を0.1質量部に変更して、アミノシラン系カップリング剤100質量部に対するアクリナトリン含有割合を5.0質量部にした以外は実施例1と同様にしてステンレス鋼板を得た。
【0032】
(比較例2)
化成処理液におけるアクリナトリンの含有割合を0.5質量部に変更して、アミノシラン系カップリング剤100質量部に対するアクリナトリン含有割合を25.0質量部にし、化成処理液の乾燥塗工量を0.08g/m
2にした以外は実施例1と同様にしてステンレス鋼板を得た。
【0033】
<評価>
得られたステンレス鋼板について、害虫忌避性を下記のように測定した。その結果を表1,2示す。
【0034】
・害虫忌避性
害虫忌避性は以下の方法にて評価した。
まず、
図1に示すように、縦70mm、横70mmの正方形のベニヤ板11の片面に、その面の各辺に沿って、5mm角で長さが40mmの正四角柱体12を取り付けて、試験用カバー10を作製した。次いで、
図2に示すように、その試験用カバー10を、各例で作製したステンレス鋼板からなる試験板20aの上に取り付けて、試験体1を作製した。
また、試験用カバー10を、各例で使用したステンレス鋼板原板(新日鐵住金ステンレス(株)製のステンレス鋼板SUS430/No.4研磨仕上げ材)20bの上に取り付けて、比較用試験体2を作製した。
図3に示すように、試験体1及び比較用試験体2を箱3の内部に設置し、試験体1と比較用試験体2との間に水4及び餌5を配置した。その後、箱3の内部に、チャバネゴキブリの成虫を20匹投入し、24時間放置した。放置後、試験体1及び比較用試験体2の試験用カバー10を取り外し、試験体1の内部に存在したチャバネゴキブリの数、比較用試験体2の内部に存在したチャバネゴキブリの数をそれぞれ数えた。この数を元に下記式(1)によって害虫忌避率を算出した。
各例のステンレス鋼板に対して、同様の試験を6回行い、それぞれの試験で害虫忌避率を求めた。得られた害虫忌避率の平均値を算出し、平均値をステンレス鋼板の害虫忌避率とした。このステンレス鋼板の害虫忌避率(6回の試験での害虫忌避率の平均値)を表1,2に示す。ステンレス鋼板の害虫忌避率により、忌避効果の程度を評価した。
ゴキブリは暗く狭い所を好むため、通常は試験用カバーの下に形成された隙間に入り込むが、試験用カバーの下に設置された板が害虫忌避性を有していると、ゴキブリは敬遠するようになる。そのため、試験体におけるステンレス鋼板の害虫忌避性が高い程、害虫忌避性を有していない比較用試験体の内部にゴキブリが集まりやすくなる。したがって、試験体1の内部に存在したチャバネゴキブリの数と、比較用試験体2の内部に存在したチャバネゴキブリの数とを対比することによって、害虫忌避性を評価することができる。
害虫忌避率(%)=(1−[試験体内に存在したチャバネゴキブリの数]/[比較用試験体内に存在したチャバネゴキブリの数])×100 (1)
害虫忌避性80%以上:合格、90%以上は特に優れている。
害虫忌避性80%未満:不合格
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
シランカップリング剤100質量部に対する害虫忌避剤の含有割合が10〜50質量部であり、化成処理液の乾燥塗工量(化成処理層の付着量)が0.10g/m
2以上である実施例1〜8のステンレス鋼板は害虫忌避性に優れていた。
シランカップリング剤100質量部に対する害虫忌避剤の含有割合が10質量部未満である比較例1のステンレス鋼板は害虫忌避性が低かった。
化成処理液の乾燥塗工量(化成処理層の付着量)が0.10g/m
2未満である比較例2のステンレス鋼板は害虫忌避性が低かった。