特許第6496813号(P6496813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6496813放射線療法の線量計算のための方法、コンピュータプログラム、およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496813
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】放射線療法の線量計算のための方法、コンピュータプログラム、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20190401BHJP
【FI】
   A61N5/10 P
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-510861(P2017-510861)
(86)(22)【出願日】2016年3月21日
(65)【公表番号】特表2018-507000(P2018-507000A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】EP2016056128
(87)【国際公開番号】WO2016156086
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2017年3月31日
(31)【優先権主張番号】15161820.4
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516027694
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ,エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハーデマーク,ビョルン
【審査官】 石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/096993(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/161766(WO,A1)
【文献】 特表2005−518908(JP,A)
【文献】 特開2010−51811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線療法のための線量計算を実行する医療装置であって、前記医療装置が、
第1のイメージング装置と、第2のイメージング装置と、ならびに、データメモリ、プログラムメモリおよびプロセッサを有するコンピュータとを備え、
a.前記コンピュータに内蔵される前記プログラムメモリに基づき、前記プロセッサが前記第1のイメージング装置を用いて放射線療法を受ける身体の一部のプランニング画像を提供し、かつ前記データメモリに前記プランニング画像の情報を記録し、
b.前記コンピュータに内蔵される前記プログラムメモリに基づき、前記プロセッサが前記第2のイメージング装置を用いて前記身体の一部と同じ部分の分画画像を提供し、かつ前記データメモリに前記分画画像の情報を記録し、
c.前記コンピュータに内蔵される前記プログラムメモリに基づき、前記プロセッサが、前記プランニング画像に関する変形領域を生成するために、前記プランニング画像を前記分画画像と位置合わせすること(S2)を実行し、および前記変形領域を使用して前記部分に関連した第1の位置情報および第1の物質特性情報を含む第1の計算根拠を得ることを実行し、前記コンピュータに内蔵される前記プログラムメモリに基づき、前記プロセッサが
d.前記部分に関連した第2の位置情報および第2の物質特性情報を含む、前記分画画像に基づく第2の計算根拠を得るステップ(S3)を実行し、
e.前記第1の計算根拠および前記第2の計算根拠の両方を使用して線量計算を行うステップ(S5)を実行し、前記第1および第2の計算根拠からの物質特性情報を使用するステップを実行する
ことを特徴とする、医療装置。
【請求項2】
前記コンピュータに内蔵される前記プログラムメモリに基づき、前記プロセッサが、
前記線量計算を、前記身体の一部の少なくとも第1の領域における第1の計算根拠からの物質特性情報と、前記身体の一部の少なくとも第2の領域における第2の計算根拠からの物質特性情報とを使用して行う、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記線量計算を行うステップにおいて、前記コンピュータに内蔵される前記プログラムメモリに基づき、前記プロセッサが、
f.前記第1の計算根拠および前記第2の計算根拠に基づき、複合計算根拠を生成すること(S4)を実行し、前記生成が、
g.前記第2の計算根拠に基づく物質特性情報を組み込むべき前記複合計算根拠の第1の領域を少なくとも決定することと、
h.前記第1の領域における前記第2の計算根拠に基づく物質特性情報、および少なくとも第2の領域における前記第1の計算根拠に基づく物質特性情報を含む、複合計算根拠を生成することと
を含む、生成すること(S4)を含む、請求項1または2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記複合計算根拠を生成するステップ(S4)を、少なくとも第1の領域における分画画像およびプランニング画像の両方からの物質特性情報を使用して行う、請求項3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記第1の領域における物質特性情報を、前記分画画像および前記プランニング画像から組み合わせた情報を使用して、少なくとも1つのボクセルにおいて計算する、請求項3または4に記載の医療装置。
【請求項6】
前記第1の領域が、以下:胃、腸、膀胱、子宮、肺、舌のうちの1つの少なくとも一部を含む、請求項3〜5のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項7】
前記プランニング画像に関する変形領域を生成するために、前記プランニング画像を前記分画画像と位置合わせすること(S2)は、変形可能なレジストレーション法を使用して行われる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項8】
前記物質特性情報が、目的領域の密度および/または原子構造を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項9】
前記第1のイメージング装置は、ファンビームCTを用いることにより、前記プランニング画像を取得する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項10】
第2のイメージング装置は、コーンビームCTを用いることにより、前記分画画像を取得する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項11】
コンピュータ可読コード手段を含むコンピュータプログラム製品であって、コンピュータで請求項1〜10のいずれか1項に記載の医療装置の手段を実行可能な、コンピュータプログラム製品。
【請求項12】
請求項11のコンピュータプログラム製品を備えるキャリアー。
【請求項13】
放射線療法のために線量計算を行うコンピュータシステム(5)であって、前記プランニング画像に関する変形領域を生成するために、前記プランニング画像を前記分画画像と位置合わせすること(S2)を実行するための処理手段(7)を含み、前記コンピュータシステムが、請求項11のコンピュータプログラム製品をその中に保存したメモリ(11)を有しており、前記コンピュータプログラム製品が実行される場合に、前記処理手段(7)を制御するように構成される、コンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線療法の治療、特に、たとえば放射線療法における線量のプランニングの最適化で使用し得る線量計算に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法は、1つまたは複数の放射線ビームを、患者の中の腫瘍などの標的に当てることを含む。理想的には、特定の線量を標的に送達すべきであり、周辺組織への照射は最小限にするべきである。特に心臓などの重要な組織または臓器への照射は最小限にすべきである。通常放射線療法は複数のセッションに分かれ、たとえば何日または何週間にもわたり1日に1回行われる。
【0003】
総合的に放射線療法を計画するために、患者の関連する部分の3Dプランニング画像を作製して、セグメント化する。画像のセグメント化は、標的および周辺組織、臓器などの様々な目的領域の境界を決定することと、これらの境界を画像へ入力することとを意味する。またプランニング画像は、画像アトラスからの画像に基づいてもよい。腫瘍および他の臓器の大きさおよび形状ならびにそれらの位置は、通常放射線療法の過程で変化するため、放射線療法の間、たとえば各放射線療法のセッションの開始時に、1回または複数回、分画画像を撮影することが一般的な方法である。分画画像からの情報を使用して、放射線療法の治療の計画を更新する。これは、適応放射線療法治療プランニングと呼ばれる。
【0004】
線量のプランニングは、様々な臓器の位置、また密度および/または原子組成などの物質の特性についての情報を必要とする。密度の情報は線量のプランニングに使用されている。光子放射線療法を使用する場合、密度および原子組成は、放射線の減衰を決定する。陽子放射線療法などのイオン放射線療法を使用する場合、密度および原子組成は、イオンが患者の体内を移動する距離に影響する阻止能を決定する。最初のプランニングでは、この情報はプランニング画像から取得される。分画画像は、概して、正確に放射線ビームを向けるために目的領域の新たな境界を決定するために使用される。
【0005】
よって、プランニング画像は、各目的領域の輪郭についての情報だけでなく、各目的領域の物質の特性についての情報も含むべきである。腫瘍および他の組織の形状は治療の過程で変化するため、分画画像は、最新の輪郭の情報を得るために使用されている。よって分画画像は、プランニング画像よりも相当少ない情報を有し得る。このことにより、各分画画像により患者に対する放射線量を少なくすることが可能となり、また分画画像を撮影するより安価なイメージングシステムを使用することが可能であるため、利点がある。たとえばファンビームCTスキャン(本明細書においてCTを表す)は、プランニング画像に使用することができ、対してコーンビームCT(CBCT)スキャンは、治療画像に使用されている。CT画像は、線量のプランニングに必要とされるすべての情報を含むが、比較的高価であり、たとえばCBCTよりも患者に対して高い放射線量を伴う。他方でCBCTは、物質の特性についての信頼できる情報を必ずしも提供するものではなく、特にカッピングのゆがみなどのゆがみを受け、画像の輝度が、画像の端の近くで不正確に表示される。他のイメージング技術はより放射線が少ない、または放射線を全く用いないが、適切な治療のプランニングに必要な情報のすべてを提供するものではない。
【0006】
適応治療プランニングにおいて、プランニング画像と1つまたは複数の分画画像との間の座標のマッピングを確立する工程は、画像レジストレーションと呼ばれている。いくつかのレジストレーション法が当該分野で知られている。概して放射線療法の間に起こる各臓器の個々の動きおよび変形の両方を考慮する変形可能な画像レジストレーション法が特に好ましい。変形可能なレジストレーションでは、身体の対応する部分の動きを決定できるように、プランニング画像における各ボクセルが、分画画像の対応するボクセルにマッピングされている。変形可能なレジストレーションおよび弾性レジストレーションという用語は互換可能に使用されている。
【0007】
欧州特許出願第1 778 353号は、治療セッションの間に放射線療法の計画を適応させる変形可能なレジストレーションの使用を開示する。輪郭情報は、プランニング画像と共に変形可能なレジストレーションを利用することにより分画画像で得られ、放射線療法の計画を更新するために使用される。
【0008】
目的領域の大部分では、密度が放射線療法の過程でごくわずかに変動する。他の部分では、密度が短い時間枠内に有意に変動し得る。例えば、腸及び膀胱の大きさおよび内容物は、時間と共に変化する。空気または液体の存在は密度に影響を与えることから、臓器の減衰または阻止能に有意に影響する。現在利用可能な画像レジストレーションの方法はこれらの変化を考慮していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって本発明の目的は、放射線療法の治療の過程で起こり得る組織密度の変化を考慮する線量計算方法を提供することである。
【0010】
この目的は、請求項1に記載の方法および請求項11に記載のコンピュータプログラム製品による本発明により達成される。また本発明は、本発明に係るコンピュータ製品のプログラムメモリを含む、線量計算のシステムに関する。
【0011】
本明細書において、線量のプランニングは、当該分野で一般的であるように、分画画像からの最新の位置情報に基づき行われ得る。位置情報は、患者の身体の臓器または組織の大きさ、位置、および輪郭についての情報を含み得る。また本発明により、線量のプランニングは、場合によっては分画画像が画像の一部の領域においてプランニング画像よりも正確な物質特性情報を有することを考慮し得る。他方で、上述されるようにプランニング画像は、いくつかの他の領域においてより正確な物質特性情報を有し得る。よって本発明により、物質特性情報は、物質特性情報に関してプランニング画像のみに頼るのではなくて、分画画像およびプランニング画像の両方から、またはこれら画像のそれぞれに関連した情報から取得され得る。好ましくは画像の異なる領域を定義して、一部の領域はプランニング画像からの物質特性情報を使用すべきであり、その他の領域は分画画像からの物質特性情報を使用すべきであると決定する。ボクセルまたは領域の物質特性情報は、概して密度を含み、また領域の原子組成も含み得る。
【0012】
一実施形態では、線量計算を行うステップは、
a.第1の計算根拠および第2の計算根拠に基づき、複合計算根拠を作製することであって、前記作製が、
b.第2の計算根拠に基づく物質特性情報を組み込むべき、複合的な計算根拠の少なくとも第1の領域を決定することと、
c.第1の領域における第2の計算根拠に基づく物質特性情報と、少なくとも第2の領域における第1の計算根拠に基づく物質特性情報とを含む、複合計算根拠を生成することと
を含む作製すること
を含む。
【0013】
これは、複合計算根拠に基づいて合成画像を実際に作製することを含み得る。また、複合計算根拠を表すデータセットを作製することも含み得る。あるいは複合計算根拠は、第1の計算根拠、第2の計算根拠、および各領域に関して、物質特性情報を第1または第2の計算根拠のいずれからそれぞれ取得すべきであるかを決定する情報を含み得る。
【0014】
線量計算の結果は治療のプランニングに使用し得る。本方法は、上記に定義されるように適応治療プランニングに特に有益である。本発明のシステムおよび方法は、提供される放射線療法の種類とは無関係に使用され得るが、組織の密度は患者の体内でイオンが移動する距離に直接影響を与え、どの部分が放射線により影響を受けるかを決定することから、陽子線療法または電子線療法などのイオン療法に特に有益である。
【0015】
プランニング画像および分画画像は、画像メモリから得てもよく、またはその場で取得してもよい。概してプランニング画像は放射線療法の初期段階で取得されるが、分画画像はレジストレーションおよび放射線療法のセッションに近い時点で取得される。またプランニング画像は、好ましくは個々の患者に適応させた画像アトラスから取得してもよい。レジストレーションは、好ましくは変形可能なレジストレーション法を使用して行われる。
【0016】
様々な領域のセグメント化および命名の基準に基づき、プランニング画像および分画画像からそれぞれ密度の情報を取得すべきである目的領域の一般的な設計書を、身体の各部分または各条件に関して作製することが可能である。この場合、第1および第2の計算根拠にそれぞれ基づくべきである物質特性情報の選択が自動的になされ得る。またこの設計書は、個々の患者または治療の計画のために作製してもよい。
【0017】
概して、これらの特性が実質的に安定である、すなわち、最初のプランニングの時間から分画の配信時間までの間で変動しないと予測される画像の部分の物質特性情報は、プランニング画像から取得してもよい。他方で、最初のプランニングから分画の配信までの期間で特性が放射線療法に影響するような方法で有意に変化し得る領域および臓器に関しては、分画画像から、情報を取得するべきである。この期間は、数時間〜数か月のいずれかであってもよい。このような領域は、たとえば胃、腸、膀胱、子宮、肺、および舌である。また、2つの画像において対応するボクセルの加重平均として、プランニング画像および分画画像の両方に由来する物質特性情報を使用することも可能である。概して、物質特性は目的領域の密度を含むが、原子組成などの他の特性を、代わりにまたは追加的に使用してもよい。
【0018】
好ましい実施形態では、プランニング画像は、ファンビームCTの画像であり、分画画像はCBCT画像である。たとえばプランニング画像にはMR画像、分画画像にはCBCT画像を使用するといった、他のイメージング技術を使用することも可能である。好ましくは変形可能なレジストレーション法は、この方法が組織および臓器で起こったいずれかの形状の変化への適応を可能にするため、画像の位置合わせに使用される。
【0019】
本発明を、単なる例としておよび添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の方法が適用され得るシステムを例示する。
図2】本発明の好ましい実施形態に係る方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましい実施形態の詳細な説明
図1は、本発明に係る方法を行い得るシステムの実施形態を概略的に例示する。本システムは、最初の放射線療法治療の計画を作製するための開始点として適切であるプランニング画像を生成するためのデータを取得する第1のイメージング装置1を含む。このようなイメージング装置は当該分野でよく知られており、本明細書中詳細に論述はしない。また本システムは、放射線療法の治療計画を更新するためのプランニング画像との位置合わせに適している分画画像を生成するためのデータを取得するための第2のイメージング装置3を含む。本発明の文脈において、第1のイメージング装置は、概してCTイメージング装置であるが、必ずしもCTイメージング装置である必要はなく、第2のイメージング装置はCBCTイメージング装置であってもよい。以下に論述されるように、他の種類のイメージング装置を使用してもよい。またプランニング画像を、画像アトラスなどの別の供給源から取得してもよい。
【0022】
第1のイメージング装置1および第2のイメージング装置3は、コンピュータ5に接続されており、プランニング画像および分画画像からの情報を使用して、最初の放射線療法の治療計画に基づき更新された治療計画を作製するために、放射線療法の治療計画を更新するよう構成されている。コンピュータ5は、当該分野でよく知られたアルゴリズムによって最初の放射線療法の治療計画を決定するために使用したプロセッサと同じプロセッサであってもよく、または最初の計画は他のいくつかの方法で提供されてもよい。更新を行うために、コンピュータ5は、以下に詳細に論述されている処理手段7を含む。またコンピュータ5は、データメモリ9およびプログラムメモリ11を含む。データメモリ9は、プロセッサ7による使用のため少なくとも以下:プランニング画像、分画画像、および最初の放射線療法の治療計画を保持するように構成されている。この計画の適応はオンラインまたはオフラインで行われてもよく、すなわち、分画nで取得した分画画像を、同じ分画(分画n)の前の計画、または次の分画(分画n+1)の前の計画のために、それぞれ使用してもよい。
【0023】
さらにデータメモリ9は、好ましくは、プランニング画像および分画画像からそれぞれ物質特性情報を取得すべきである画像の一部を同定する情報を保持する。あるいはデータメモリ9は、コンピュータプログラムから直接制御されていてもよく、または情報を手動で入力してもよく、もしくは他の何等かの方法で提供してもよい。これを実行する方法は以下により詳細に論述されている。また物質特性情報が、以下により詳細に論述されるように、プランニング画像および分画画像の両方からのデータに基づくべきである領域も存在し得る。プログラムメモリ11は、更新した治療計画を生成するために、最初の放射線療法の治療計画の更新を制御するコンピュータプログラムを保持するように構成されている。
【0024】
イメージングシステム1、3、およびコンピュータ5を、システムの一部として図1に示すが、これらは、プランニング画像および分画画像、または複数の画像をコンピュータが利用できるようにすることを除き、同じ位置に配置する必要はなく、または互いに統合する必要が全くないことに留意すべきである。これは、有線または無線の接続を含む当該分野で知られているいずれかの方法、またはモバイルメモリユニットを使用することにより達成することができる。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係る治療計画を更新する方法のフローチャートである。第1のステップS1では、プランニング画像および分画画像を、それぞれイメージングシステム1、3から、またはコンピュータ5のメモリから得る。概して、プランニング画像および分画画像は、2つの異なるイメージングシステムを使用してそれぞれ異なる時間で取得されて、データメモリ9に入力されている。また、1つまたは両方の画像を、それぞれのイメージング装置から、または他のいくつかの供給源から直接提供してもよい。プランニング画像は、好ましくは、画像において異なる臓器、組織などを同定するためにあらかじめセグメント化されている。概して、少なくとも処置される領域、すなわち腫瘍が、セグメント化により同定されている。
【0026】
ステップS2では、プランニング画像および分画画像を、当該分野で知られたレジストレーション法を使用して互いに位置合わせする。画像レジストレーションそれ自体は当該分野で知られており、他の画像の対応する要素にこれらをマッピングするために必要な1つの画像の要素の位置ずれを定義することを意味する。好ましくは、変形可能なレジストレーション法が使用されるが、この方法は異なる臓器の位置、大きさ、または形状に対して起こり得るいずれかの種類の変化を考慮するために使用され得る。結果として、他の画像にマッチさせるために画像の一つに行わなければならない変形を表す位置ずれマップが得られる。本発明の文脈では、好ましくは分画画像とのレジストレーションに必要なプランニング画像の変形が、その後のステップにおいて第1の線量計算根拠として使用される。
【0027】
ステップS3では、分画画像に基づいて、位置情報および物質特性情報の両方を含む第2の線量計算根拠を決定する。これを行う方法は当業者によく知られている。
【0028】
ステップS4では、ステップS2で得た第1の線量計算根拠およびステップS3で得た第2の線量計算根拠を、線量計算に対する入力データとして使用する。最も入念な形態では、これは、一部が第1の線量計算根拠に基づき、すなわち変形したプランニング画像に基づき、一部が第2の線量計算根拠に基づき、すなわち分画画像から得た情報に基づく合成画像を作製することを含む。実際に画像を作製する代わりに、各ボクセルに関するデータを含み、以下に論述される選択基準に従い第1または第2の線量計算根拠から取得される複合線量計算根拠を作製してもよい。第1および第2の線量計算根拠を保存すること、ならびに線量計算を行う際に各ボクセルに適切なものから入力を取得することも可能である。画像の一部の物質特性情報のためにどの線量計算根拠を使用するか、画像のセグメント化に基づき決定される。上述のように、セグメント化は、画像における臓器または他の領域の境界を決定することを含む。
【0029】
セグメント化に基づき、特性の情報を、第1または第2の計算根拠からそれぞれ取得すべきである1つまたは複数の臓器または領域を決定するための選択基準を設定することが可能である。これは、個々に、各ボクセル、領域、または臓器に関して選択してもよい。実際に、各領域または臓器の規定値は、第1の計算根拠からの物質特性情報を使用するためのものであってもよい。次に、物質特性情報を第2の計算根拠から取得すべきである領域を示さなければならない。当然、物質特性情報の規定値の供給源として第2の計算根拠を使用すること、およびそれに関する物質特性情報を第1の計算根拠から取得すべき領域を示すこと、またはそれぞれのボクセルもしくは領域に関して、どの計算根拠を使用すべきかを示すことも可能である。また選択は、個々の事例において手動で制御してもよい。典型的な事例では、たとえば胃または直腸として同定される領域内の画像のすべての部分に関して、密度情報を、分画画像に基づく第2の計算根拠から取得すべきであり、および他のすべての領域で、密度情報を、変形したプランニング画像から取得すべきであると決定することができる。
【0030】
当然、ステップS2およびS3は任意の順で行われてもよい。またセグメント化は、この方法または別の手法と組み合わせて行ってもよい。
【0031】
ステップS4の一実施形態では、一部を、第1の計算根拠から取得してもよく、その他を第2の計算根拠から取得してもよいが、他のいくつかの部分では、物質の特性は、第1の計算根拠および第2の計算根拠の両方に基づき決定すべきである。たとえば規定値の物質特性情報を、第1の計算根拠から取得し、第2の計算根拠を胃の領域に使用する場合、胃と周辺組織との間の境界領域では中間値を使用することが望ましい場合がある。このような中間値は、プランニング画像および分画画像の値の間の平均値または加重平均として各ボクセルに関して、それぞれ計算され得る。さらなる別の代替例は、特定のボクセルまたは領域における物質特性値に依存した関数を使用することである。このような関数は、たとえば「分画画像における特定のボクセルまたはボクセルの群の密度が、閾値よりも低い場合、第2の計算根拠からの密度の値を使用すべきであり、そうでなければ第1の計算根拠からの値を使用すべきである」ことであり得る。この例では、値は、閾値を下回る密度の値を伴うボクセルでは第2の計算根拠に基づくべきであり、および閾値を超える密度の値を伴うボクセルでは第1の計算根拠に基づくべきである。閾値は、たとえば0.1g/cm3であってもよく、このことは低い密度を有するいかなるものも、おそらくは空気であり、計算では空気のように処理すべきであることを意味する。
【0032】
任意のステップであるステップS5では、最初の放射線療法の治療計画を更新する手法において、合成画像の一部の領域では第1の線量計算根拠(すなわちプランニング画像)から、および合成画像のその他の領域では第2の線量計算根拠(すなわち分画画像)からの物質特性情報を考慮して、ステップS4で作製された複合線量計算根拠を使用する。上述のように、合成画像を必ずしも作製する必要はない。
【0033】
後の更新は、最初の放射線療法の治療計画に基づくものであってもよく、または更新した治療計画を最初の放射線療法の治療計画の代わりに行ってもよい。
【0034】
また、合成画像を生成するために2超の画像からの情報を使用することが可能である。たとえば異なる時間で取得した分画画像由来の情報を、レジストレーション前にプランニング画像に適用することができる。あるいは、異なるイメージング技術の異なる特性を利用するために、各画像の特性に依存した画像のそれぞれから最適化した情報を提供するための異なるイメージング技術を使用して、分画画像を得ることができる。この場合、上記のステップS3は、分画画像のそれぞれに関する第2の計算根拠の例を作製するために、2つ以上の分画画像のそれぞれについて行うべきである。合成画像は、一部の領域ではプランニング画像(第1の計算根拠)に基づく物質特性情報を含み得るが、分画画像のそれぞれに基づく物質特性情報は、合成画像の1つまたは複数の他の領域に使用することができる。
【0035】
代替的な実施形態では、MR画像はプランニング画像として使用され、CBCT画像は、分画画像として使用される。MRは、物質特性についての有益な情報ならびに高解像度およびコントラストを提供するが、形状の歪みがあり、これは輪郭を正確に表すことができないことを意味する。MRのさらなる欠点は、たとえば空気と骨とを区別することが困難な場合があることである。よって、概して、このような未決領域が皮膚に近い位置にある場合には、骨として解釈されるが、体内のより深い位置にある場合には、空気として解釈される。しかしながら頭部では、骨に隣接して空気を含むいくつかの領域が存在し、これらは、MRイメージングを使用して正確に同定することができない。プランニング画像にMRが使用される場合の1つの選択肢は、画像の中心部ではプランニング画像、および患者の輪郭についての情報ならびに骨および/または空気を含む領域では治療画像からの情報を使用することである。
図1
図2