特許第6496835号(P6496835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496835
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】隠しパターンを創出する方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20190401BHJP
   C09D 11/50 20140101ALI20190401BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20190401BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20190401BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20190401BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   B41M5/00 100
   C09D11/50
   B41J2/01 501
   B41J2/015
   B41J2/01 123
   B41J29/00 Z
   B41M5/52 110
   B41M5/00 120
【請求項の数】19
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2017-548129(P2017-548129)
(86)(22)【出願日】2016年3月9日
(65)【公表番号】特表2018-518381(P2018-518381A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】EP2016055050
(87)【国際公開番号】WO2016146458
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2017年11月9日
(31)【優先権主張番号】15159107.0
(32)【優先日】2015年3月13日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】62/135,802
(32)【優先日】2015年3月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボールストレーム,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】シェルコップ,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ゲイン,パトリック・エイ・シー
【審査官】 樋口 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−073158(JP,A)
【文献】 特表2003−508256(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/018112(WO,A1)
【文献】 特公昭40−048122(JP,B1)
【文献】 特開2015−193964(JP,A)
【文献】 特開2006−017690(JP,A)
【文献】 特開2002−331745(JP,A)
【文献】 特開平06−228900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
B41M 5/00
B41M 5/50 − 5/52
B41M 1/00 − 3/18
B41M 7/00 − 9/04
B42D15/02
B42D25/00 − 25/485
C09D11/00 − 13/00
D21F 1/44 − 1/46
D21H11/20 − 11/22
D21H21/40 − 21/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に対して第1の角度で見たときに不可視であり、前記基材の表面に対して第2の角度から見たときに可視である、前記基材上に隠しパターンを創出する方法であって、前記方法は、以下の工程:
a)基材を提供する工程であって、この基材が塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物を含む少なくとも1つの外面を含み、前記塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物が、アルカリまたはアルカリ土類水酸化物、アルカリまたはアルカリ土類ビカーボネート、アルカリまたはアルカリ土類カーボネート、またはこれらの混合物である、工程、
b)少なくとも1つの酸を含む液体処理組成物を提供する工程、および
c)インクジェット印刷によって予め選択されたパターンの形態で前記少なくとも1つの外面上に前記液体処理組成物を適用して隠しパターンを形成する工程
を含み、前記液体処理組成物は、1000pl以下の体積を有する液滴の形態で適用され、
前記液滴間隔は1000μm以下である、方法。
【請求項2】
前記工程a)の少なくとも1つの外面が、前記塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物を含むラミネートまたはコーティング層の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基材が、紙、ボール紙、段ボール紙、プラスチック、不織布、セロファン、繊維製品、木材、金属、ガラス、雲母板、大理石、カルサイト、ニトロセルロース、天然石、複合石、レンガ、コンクリート、錠剤およびこれらのラミネートまたは複合体からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程a)の少なくとも1つの外面および基材が、同じ材料から作製される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物は、アルカリまたはアルカリ土類カーボネートであ、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
アルカリまたはアルカリ土類カーボネートが、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、炭酸カルシウムまたはこれらの混合物から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物が、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウムおよび/または表面処理炭酸カルシウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの酸が、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、スルファミン酸、酒石酸、フィチン酸、ホウ酸、コハク酸、スベリン酸、安息香酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソクエン酸、アコニット酸、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、酸性有機硫黄化合物、酸性有機リン化合物およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記液体処理組成物がさらに、蛍光色素、りん光色素、紫外線吸収色素、近赤外線吸収色素、サーモクロミック色素、ハロクロミック色素、金属イオン、遷移金属イオン、磁性粒子、またはこれらの混合物を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記液体処理組成物が、液体処理組成物の総重量に基づいて0.1から100重量%の量で酸を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記予め選択されたパターンが、1次元バーコード、2次元バーコード、3次元バーコード、セキュリティマーク、数字、文字、英数字記号、ロゴ、画像、形状またはデザインである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記液滴が、500plから1flの体積を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記液滴間隔が10nmから500μmである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、少なくとも1つの表面改質領域の上方に保護層および/または印刷層を適用する工程d)をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる隠しパターンを含む基材。
【請求項16】
前記隠しパターンが、表面粗さ、光沢、光吸収、電磁放射線反射、蛍光、りん光、磁気特性、導電率、白色度および/または明るさにおいて少なくとも1つの外面と異なる、請求項15に記載の基材。
【請求項17】
前記隠しパターンが、1次元バーコード、2次元バーコード、3次元バーコード、セキュリティマーク、数字、文字、英数字記号、ロゴ、画像、形状およびデザインを含むセキュリティ機能および/または装飾機能を含む、請求項15または16に記載の基材。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか一項に記載の基材を含む製品であって、前記製品は、香水、薬物、タバコ製品、アルコール性薬物、医薬品、食用製品、瓶、衣服、包装、容器、スポーツ用品、玩具、ゲーム、携帯電話、CD、DVD、ブルーレイディスク、機械、道具、自動車部品、ステッカー、ラベル、タグ、ポスター、パスポート、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、債券、チケット、税スタンプ、紙幣、証明書、ブランド認証タグ、名刺、グリーティングカード、および壁紙を含むブランド製品、セキュリティ文書、非セキュア文書、または装飾製品であ、製品。
【請求項19】
セキュリティ用途、公然セキュリティ要素、秘密のセキュリティ要素、ブランド保護、マイクロレタリング、マイクロイメージング、装飾用途、芸術的用途、ビジュアル用途、または包装用途での、請求項15から17のいずれか一項に記載の基材の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷の分野に関し、より詳細には、基材上に隠しパターンを創出する方法、この方法によって得ることができる隠しパターンおよびこの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
製品およびブランドの著作権侵害は、影響を受けた企業の商業的損失をもたらすことがあり、ブランド価値および企業の評判を低下させる可能性がある、広く世界的に懸念される現象である。2014年に欧州連合が発行したEU税関における知的財産権に関する報告書によると、食料品、アルコール飲料、宝飾品およびこの他の付属品、携帯電話、CD/DVD、玩具およびゲーム、医薬品、自動車部品およびこの付属品ならびに事務用品のカテゴリに関して、偽造の顕著な増大が認められた。しかし、インクカートリッジおよびトナー、スポーツ用品、巻きタバコおよびタバコ製品、機械および道具、ライター、ラベル、タグおよびステッカー、繊維製品などの製品も、しばしば偽造の対象となる。
【0003】
この結果、ブランド保護および偽造防止のための戦略的および技術的対策に対する要求が高まっている。
【0004】
さらに、デスクトップパブリッシングおよびカラー複写機の改良により、文書詐欺の機会が劇的に増加した。従って、パスポート、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、証明書または支払い手段などの書類の信憑性を検証するために使用できるセキュリティ要素に対する要求が高まっている。
【0005】
WO2008/024542A1には、金属性粒子を含むインクを使用する直描印刷方法によって反射フィーチャが形成される方法が記載されている。
【0006】
US2014/0151996A1は、視野角が変更されたときにセキュリティ要素の外観を変更することを可能にする光学構造を有するセキュリティ要素に関する。
【0007】
完全性のために、出願人は、この名において出願番号14169922.3の未公開の欧州特許出願に言及することを望み、これは表面改質材料の製造方法に関する。
【0008】
しかしながら、容易に再現することができず、簡単で迅速な認証を可能にする、信頼性の高いセキュリティ要素に対する技術の必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2008/024542号
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0151996号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、偽造が困難であり、簡単で迅速な認証を可能にする信頼性の高いセキュリティ要素を創出する方法を提供することである。この方法は、既存の印刷設備で実施するのが容易であることも望ましい。さらに、この方法は、多種多様な基材に用いることができることが望ましい。
【0011】
本発明のさらなる目的は、従来技術の方法および既存の製造ラインに容易に実装することができるセキュリティ要素を創出する方法を提供することである。この方法は、少量および大量の生産量の両方に適していることも望ましい。
【0012】
また、本発明の目的は、特定の条件下で人間の目に対して観察可能であり、従って検証ツールの使用を必要としない秘密のセキュリティ要素を提供することである。秘密のセキュリティ要素は、これを機械で読み取り可能にし、従来技術のセキュリティ要素と組み合わせることができるさらなる機能を備えることができることも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述および他の目的は、独立請求項において本明細書で定義されるような主題によって解決される。
【0014】
本発明の1つの態様によれば、基材の表面に対して第1の角度で見たときに不可視であり、基材の表面に対して第2の角度から見たときに可視である、前記基材上に隠しパターンを創出する方法が提供され、この方法は、以下の工程:
a)基材を提供する工程であって、この基材が塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物を含む少なくとも1つの外面を含む、工程、
b)少なくとも1つの酸を含む液体処理組成物を提供する工程、および
c)インクジェット印刷によって予め選択されたパターンの形態で少なくとも1つの外面上に液体処理組成物を適用して隠しパターンを形成する工程
を含み、液体処理組成物は、1000pl以下の体積を有する液滴の形態で適用され、液滴間隔は1000μm以下である。
【0015】
本明細書で使用される略語「pl」は単位「ピコリットル」を指し、略語「fl」は単位「フェムトリットル」を指す。当業者に知られているように、1ピコリットルは10−12リットルに等しく、1フェムトリットルは10−15リットルに等しい。
【0016】
本発明の別の態様によれば、本発明による方法によって得ることができる隠しパターンを含む基材が提供される。
【0017】
本発明のさらに別の態様によれば、本発明による基材を含む製品が提供され、製品は、ブランド製品、セキュリティ文書、非セキュア文書、または装飾製品であり、好ましくは製品は香水、薬物、タバコ製品、アルコール性薬物、医薬品、食用製品、瓶、衣服、包装、容器、スポーツ用品、玩具、ゲーム、携帯電話、CD、DVD、ブルーレイディスク、機械、道具、自動車部品、ステッカー、ラベル、タグ、ポスター、パスポート、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、債券、チケット、税スタンプ、紙幣、証明書、ブランド認証タグ、名刺、グリーティングカード、または壁紙である。
【0018】
本発明のさらに別の態様によれば、本発明による基材の、セキュリティ用途、公然セキュリティ要素、秘密セキュリティ要素、ブランド保護、マイクロレタリング、マイクロイメージング、装飾用途、芸術的用途、ビジュアル用途、または包装用途での使用が提供される。
【0019】
本発明の有利な実施形態は、対応する従属請求項に定義される。
【0020】
一実施形態によれば、工程a)の少なくとも1つの外面は、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物を含むラミネートまたはコーティング層の形態である。別の実施形態によれば、基材は、紙、ボール紙、段ボール紙、プラスチック、不織布、セロファン、繊維製品、木材、金属、ガラス、雲母板、大理石、カルサイト、ニトロセルロース、天然石、複合石、レンガ、コンクリート、錠剤およびこれらのラミネートまたは複合体、好ましくは紙、ボール紙、段ボール紙、またはプラスチックからなる群から選択される。さらに別の実施形態によれば、工程a)の少なくとも1つの外面および基材は、同じ材料から作製される。
【0021】
一実施形態によれば、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物は、アルカリまたはアルカリ土類酸化物、アルカリまたはアルカリ土類水酸化物、アルカリまたはアルカリ土類アルコキシド、アルカリまたはアルカリ土類メチルカーボネート、アルカリまたはアルカリ土類ヒドロキシカーボネート、アルカリまたはアルカリ土類ビカーボネート、アルカリまたはアルカリ土類カーボネート、またはこれらの混合物であり、好ましくは塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物は、アルカリまたはアルカリ土類カーボネートであり、これは好ましくは、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、炭酸カルシウムまたはこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物は、炭酸カルシウムであり、最も好ましくは塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物は粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウムおよび/または表面処理炭酸カルシウムである。
【0022】
一実施形態によれば、少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、スルファミン酸、酒石酸、フィチン酸、ホウ酸、コハク酸、スベリン酸、安息香酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソクエン酸、アコニット酸、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、酸性有機硫黄化合物、酸性有機リン化合物およびこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、ホウ酸、スベリン酸、コハク酸、スルファミン酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは少なくとも1つの酸は、硫酸、リン酸、ホウ酸、スベリン酸、スルファミン酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは少なくとも1つの酸は、リン酸および/または硫酸である。
【0023】
一実施形態によれば、液体処理組成物は、蛍光色素、りん光色素、紫外線吸収色素、近赤外線吸収色素、サーモクロミック色素、ハロクロミック色素、金属イオン、遷移金属イオン、磁性粒子、またはこれらの混合物をさらに含む。別の実施形態によれば、液体処理組成物は、液体処理組成物の総重量に基づいて0.1から100重量%の量、好ましくは1から80重量%の量、より好ましくは3から60重量%の量、最も好ましくは10から50重量%の量で酸を含む。
【0024】
一実施形態によれば、予め選択されたパターンは、1次元バーコード、2次元バーコード、3次元バーコード、セキュリティマーク、数字、文字、英数字記号、ロゴ、画像、形状またはデザインである。別の実施形態によれば、液滴は、500plから1fl、好ましくは100plから10fl、より好ましくは50plから100fl、最も好ましくは10plから1plの体積を有する。さらに別の実施形態によれば、液滴間隔は10nmから500μm、好ましくは100nmから300μm、より好ましくは1μmから200μm、最も好ましくは5μmから100μmである。
【0025】
一実施形態によれば、方法は、少なくとも1つの表面改質領域の上方に保護層および/または印刷層を適用する工程d)をさらに含む。
【0026】
一実施形態によれば、隠しパターンは、表面粗さ、光沢、光吸収、電磁放射線反射、蛍光、りん光、磁気特性、導電率、白色度および/または明るさにおいて少なくとも1つの外面と異なる。別の実施形態によれば、隠しパターンは、セキュリティ機能および/または装飾機能、好ましくは1次元バーコード、2次元バーコード、3次元バーコード、セキュリティマーク、数字、文字、英数字記号、ロゴ、画像、形状またはデザインを含む。
【0027】
本発明の趣旨上、以下の用語は以下の意味を有することが理解されるべきである:
本発明の趣旨上、「酸」はブレンステッド−ローリー酸として定義され、即ちHイオンプロバイダである。本発明によれば、pKは所与の酸中の所与のイオン化可能な水素に関連する酸解離定数を表す記号であり、所与の温度の水中で平衡状態でこの酸からのこの水素の自然な解離度を示す。このようなpK値は、Harris,D.C.「Quantitative Chemical Analysis:3rd Edition」,1991,W.H.Freeman & Co.(USA),ISBN 0−7167−2170−8のような参考文献に見出され得る。
【0028】
本発明で使用される場合、「坪量」という用語は、DIN EN ISO 536:1996に従って決定され、g/m単位の重量として定義される。
【0029】
本発明の趣旨上、「コーティング層」という用語は、主に基材の一方の面に残るコーティング配合物から形成、創出、調製などされた層、カバー、フィルム、スキンなどを指す。コーティング層は、基材の表面と直接接触することができ、または基材が1つ以上のプレコーティング層および/またはバリア層を含む場合、それぞれトッププレコーティング層またはバリア層と直接接触することができる。
【0030】
本発明の趣旨上、「ラミネート」とは、基材上に適用され、基材に結合され、これによって積層基材を形成することができる材料のシートを指す。
【0031】
本明細書を通して、「液滴間隔」は、連続する2滴の中心間の距離として定義される。
【0032】
本明細書で使用される用語「液体処理組成物」は、少なくとも1つの酸を含み、インクジェット印刷によって本発明の基材の外面に適用できる、液体形態の組成物を指す。
【0033】
本発明の意味において「粉砕炭酸カルシウム」(GCC)は、天然源、例えば石灰岩、大理石、またはチョークから得られた炭酸カルシウムであり、例えばサイクロンまたは分類機による、湿式および/または乾式処理、例えば粉砕、スクリーニングおよび/または分別を通して加工処理される。
【0034】
本発明の意味において「改質炭酸カルシウム(MCC)」は、内部構造の変更を伴う天然粉砕または沈降炭酸カルシウムまたは表面反応生成物、即ち「表面反応した炭酸カルシウム」を特徴とし得る。「表面反応した炭酸カルシウム」は、炭酸カルシウムおよび不溶性の、好ましくは少なくとも部分的に結晶性の、酸アニオンのカルシウム塩を表面に含む材料である。好ましくは、不溶性カルシウム塩は、炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面から延びる。このアニオンのこの少なくとも部分的に結晶性のカルシウム塩を形成するカルシウムイオンは、出発炭酸カルシウム材料に主に由来するものである。MCCは、例えば、US2012/0031576A1、WO2009/074492A1、EP2 264 109A1、WO00/39222A1、またはEP2 264 108A1に記載されている。
【0035】
本発明の意味において「沈降炭酸カルシウム(PCC)」は、水性、半乾燥または湿った環境での二酸化炭素および石灰の反応の後の沈澱によって、または水中のカルシウムおよび炭酸イオン源の沈澱によって得られる合成された材料である。PCCは、バテライト、カルサイトまたはアラゴナイトの結晶形態であり得る。PCCは、例えば、EP2 447 213A1、EP2 524 898A1、EP2 371 766A1、EP1 712 597A1、EP1 712 523A1、またはWO2013/142473A1に記載されている。
【0036】
本明細書を通して、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物の「粒径」は、粒径分布によって記載される。値dは、粒子のx重量%がd未満の直径を有する直径を表す。これは、d20値は、すべての粒子の20重量%がこの粒径よりも小さい粒径であり、d75値は、すべての粒子の75重量%がこの粒径よりも小さい粒径であることを意味する。従って、d50値は、重量中位粒径であり、即ち、全粒子の総重量の50重量%は、この粒径より大きい粒子から生じ、全粒子の総重量の50%は、この粒径より小さい粒子から生じる。本発明の趣旨上、粒径は、特に断らない限り、重量中位粒径d50として特定される。重量中位粒径d50値を決定するために、Sedigraphを使用することができる。方法および機器は、当業者に既知であり、充填剤および顔料のグレインサイズを決定するために一般に使用される。サンプルは高速度撹拌機および超音波を用いて分散させる。
【0037】
本発明の意味において塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物の「比表面積(SSA)」は、この質量で割った化合物の表面積として定義される。本明細書で使用される場合、比表面積は、BET等温線(ISO 9277:2010)を用いた窒素ガス吸着によって測定され、m/g単位で指定される。
【0038】
本発明の趣旨上、「レオロジー調整剤」は、スラリーまたは液体コーティング組成物のレオロジー挙動を、使用されるコーティング方法の必要とされる仕様に適合するように変化させる添加剤である。
【0039】
本発明の意味における「塩形成性」化合物は、酸と反応して塩を形成することができる化合物として定義される。塩形成性化合物の例は、アルカリまたはアルカリ土類酸化物、水酸化物、アルコキシド、メチルカーボネート、ヒドロキシカーボネート、ビカーボネートまたはカーボネートである。
【0040】
本発明の意味において、「表面処理された炭酸カルシウム」は、処理層またはコーティング層、例えば、脂肪酸、界面活性剤、シロキサンまたはポリマーの層を含む粉砕、沈降または改質炭酸カルシウムである。
【0041】
本明細書において、「基材」という用語は、紙、ボール紙、段ボール紙、プラスチック、セロファン、繊維製品、木材、金属、ガラス、雲母板、ニトロセルロース、石またはコンクリートなどの印刷、コーティングまたは塗装に適した表面を有するいずれかの材料として理解されるべきである。しかしながら、言及した例は、限定的な特徴ではない。
【0042】
本発明の趣旨上、層の「厚さ」および「層重量」は、適用されたコーティング組成物が乾燥された後の層のそれぞれの厚さおよび層重量を指す。
【0043】
本発明の趣旨上、用語「粘度」または「ブルックフィールド粘度」は、ブルックフィールド粘度を指す。ブルックフィールド粘度は、この趣旨上、ブルックフィールドRVスピンドルセットの適切なスピンドルを使用して、25℃±1℃、100rpmでブルックフィールドDV−II+ Pro粘度計によって測定され、mPa・s単位で指定される。当業者の技術的知識に基づいて、当業者は、測定すべき粘度範囲に適したブルックフィールドRVスピンドルセットからスピンドルを選択する。例えば、200から800mPa・sの粘度範囲ではスピンドル数3が使用されてもよく、400から1600mPa・sの粘度範囲ではスピンドル数4が使用されてもよく、800から3200mPa・sの粘度範囲ではスピンドル数5が使用されてもよく、1000から2000000mPa・sの粘度範囲ではスピンドル数6が使用されてもよく、4000から8000000mPa・sの粘度範囲ではスピンドル数7が使用されてもよい。
【0044】
本発明の意味において「懸濁液」または「スラリー」は、不溶性固形分および水、ならびに場合によりさらなる添加剤を含み、普通は多量の固形分を含有し、故にこれが形成される液体よりも粘稠であり、より高い密度を有することができる。
【0045】
本発明の趣旨上、「可視」という用語は、対象物が≧λ/2の解像度を有するレイリー基準を満たすことを意味し、従って、人間の目、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡またはUV、IR、X線またはマイクロ波検出器のような好適な検出手段を用いて波長λにて認識できることを意味する。「不可視」という用語は、上で定義した条件下で対象物を認識できないことを意味する。一実施形態によれば、「可視」という用語は、対象物が、肉眼または裸眼により、好ましくは周囲光の下で認識されることができることを意味し、「不可視」という用語は、対象物が、肉眼または裸眼によって、好ましくは周囲光の下で認識できないことを意味する。
【0046】
用語「含む」は本説明および特許請求の範囲に使用される場合に、これは他の要素を排除しない。本発明の趣旨上、用語「からなる」は、用語「含む」の好ましい実施形態であると考慮される。この後、群が少なくとも特定数の実施形態を含むように定義される場合に、これはまた、これらの実施形態のみからなるのが好ましい群を開示することも理解されるべきである。
【0047】
用語「含む(including)」または「有する(having)」が使用されるときはいつでも、これらの用語は、上記で定義されるような「含む(comprising)」と等価であることを意図する。
【0048】
不定冠詞または定冠詞、例えば「1つの(a)」、「1つの(an)」または「この(the)」が単数名詞について言及するときに使用される場合、これは他に特に記述されない限り、この名詞の複数を含む。
【0049】
「得ることができる」または「定義できる」および「得られる」または「定義される」という用語は、交換可能に使用される。例えばこれは、文脈上明確に示されない限り、用語「得られる」が、例えばある実施形態が、例えば用語「得られる」に続く工程の順序によって得られなければならないことを示す意図はないが、こうした限定的な理解は、好ましい実施形態として用語「得られる」または「定義される」によって常に含まれることを意味する。
【0050】
本発明によれば、基材上に隠しパターンを創出する方法が提供され、このパターンは、基材の表面に対して第1の角度で見たとき不可視であり、基材の表面に対して第2の角度から見たときに可視である。この方法は、(a)基材を提供する工程であって、この基材が、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物を含む少なくとも1つの外面を含む工程、(b)少なくとも1つの酸を含む液体処理組成物を提供する工程、および(c)インクジェット印刷によって予め選択されたパターンの形態で少なくとも1つの外面に液体処理組成物を適用して、隠しパターンを形成する工程を含む。液体処理組成物は、1000pl以下の体積を有する液滴の形態で適用され、液滴間隔は1000μm以下である。
【0051】
以下では、本発明の方法の詳細および好ましい実施形態をより詳細に説明する。これらの技術的詳細および実施形態は、本発明の隠しパターンおよびこの本発明の使用、ならびにこれを含有する製品にも適用されることが理解されるべきである。
【0052】
方法工程a)
本発明の方法の工程a)によれば、基材が提供される。
【0053】
基材は、少なくとも1つの外面を含み、不透明、半透明、または透明であってもよい。
【0054】
一実施形態によれば、基材は、紙、ボール紙、段ボール紙、プラスチック、不織布、セロファン、繊維製品、木材、金属、ガラス、雲母板、大理石、カルサイト、ニトロセルロース、天然石、複合石、レンガ、コンクリート、錠剤およびこれらのラミネートまたは複合体を含む群から選択される。好ましい実施形態によれば、基材は、紙、ボール紙、段ボール紙、またはプラスチックを含む群から選択される。別の実施形態によれば、基材は、紙、プラスチックおよび/または金属のラミネートであり、好ましくは、プラスチックおよび/または金属は、例えばテトラパックで使用されるような薄い箔の形態である。さらに別の実施形態によれば、基材は錠剤、例えば医薬錠剤および/または栄養補助錠剤である。好ましい実施形態によれば、錠剤は、圧縮錠剤、チュアブル錠剤、多層錠剤、プレスコーティング錠剤、徐放性錠剤、マトリックス錠剤、フィルムコーティング錠剤、腸溶コーティング錠剤、または発泡性錠剤、より好ましくは発泡性錠剤である。しかし、印刷、コーティングまたは塗装に適した表面を有するいずれかの他の材料も、基材として使用されてもよい。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、基材は、紙、ボール紙、または段ボール紙である。ボール紙は、カートン用板紙またはボール紙(boxboard)、波形のボール紙、または非包装用ボール紙、例えばクロモボード(chromoboard)または図面用(drawing)ボール紙を含んでいてもよい。段ボール紙は、ライナーボードおよび/または波形媒体を含んでいてもよい。ライナーボードと波形媒体との両方を使用して波形ボードを製造する。紙、ボール紙または段ボール紙基材は、10から1000g/m、20から800g/m、30から700g/m、または50から600g/mの坪量を有することができる。一実施形態によれば、基材は、好ましくは10から400g/m、20から300g/m、30から200g/m、40から100g/m、50から90g/m、60から80g/m、または約70g/mの坪量を有する紙である。
【0056】
別の実施形態によれば、基材はプラスチック基材である。適切なプラスチック材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート樹脂、またはフッ素含有樹脂、好ましくはポリプロピレンである。適切なポリエステルの例は、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)またはポリ(エステルジアセテート)である。フッ素含有樹脂の例は、ポリ(テトラフルオロエチレン)である。プラスチック基材は、鉱物充填剤、有機顔料、無機顔料、またはこれらの混合物で充填されてもよい。
【0057】
基材は、上述の材料の1つの層のみからなってもよく、同じ材料または異なる材料の幾つかのサブ層を有する層構造を含んでもよい。一実施形態によれば、基材は1つの層によって構成されている。別の実施形態によれば、基材は、少なくとも2つのサブ層、好ましくは3つ、5つ、または7つのサブ層によって構成され、サブ層は平坦、または例えば波型などの非平坦な構造を有することができる。好ましくは、基材のサブ層は、紙、ボール紙、段ボール紙および/またはプラスチックから作られる。
【0058】
基材は、溶媒、水、またはこれらの混合物に対して透過性または不透過性であってもよい。一実施形態によれば、基材は、水、溶媒、またはこれらの混合物に対して不透過性である。溶媒の例は、4から14個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、エーテルおよびジエーテル、グリコール、アルコキシ化グリコール、グリコールエーテル、アルコキシル化芳香族アルコール、芳香族アルコール、これらの混合物、またはこれらの水との混合物である。
【0059】
本発明によれば、工程a)で提供される基材は、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物を含む少なくとも1つの外面を含む。少なくとも1つの外面は、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物を含むラミネートまたはコーティング層であってもよい。ラミネートまたはコーティング層は、基材の表面と直接接触することができる。基材が既に1つ以上のプレコート層および/またはバリア層(これについては以下でさらに詳細に記載する。)を既に含む場合、ラミネートまたはコーティング層は、それぞれトッププレコーティング層またはバリア層と直接接触していてもよい。
【0060】
一実施形態によれば、工程a)の少なくとも1つの外面および基材は、同じ材料から作製される。従って、本発明の一実施形態によれば、基材は、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物を含む。少なくとも1つの外面は、単純に基材の外面であることができ、または基材と同じ材料からなるラミネートまたはコーティング層であることができる。
【0061】
一実施形態によれば、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物は、アルカリまたはアルカリ土類酸化物、アルカリまたはアルカリ土類水酸化物、アルカリまたはアルカリ土類アルコキシド、アルカリまたはアルカリ土類メチルカーボネート、アルカリまたはアルカリ土類ヒドロキシカーボネート、アルカリまたはアルカリ土類ビカーボネート、アルカリまたはアルカリ土類カーボネート、またはこれらの混合物である。好ましくは、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物は、アルカリまたはアルカリ土類カーボネートである。
【0062】
アルカリまたはアルカリ土類カーボネートは、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、炭酸カルシウム、またはこれらの混合物から選択されてもよい。好ましい実施形態によれば、アルカリまたはアルカリ土類カーボネートは炭酸カルシウムであり、より好ましくはアルカリまたはアルカリ土類カーボネートは粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウムおよび/または表面処理炭酸カルシウムである。
【0063】
粉砕(または天然)炭酸カルシウム(GCC)は、石灰石またはチョークのような堆積岩または変成大理石の岩石から採掘された、または、卵殻または貝殻からの、天然に存在する形態の炭酸カルシウムから製造されると理解される。炭酸カルシウムは、3つのタイプの結晶多形体:カルサイト、アラゴナイトおよびバテライトとして存在することが知られている。最も一般的な結晶多形体であるカルサイトは、最も安定な結晶形態の炭酸カルシウムであると考えられる。アラゴナイトはあまり一般的ではなく、個別またはクラスター化針状斜方晶構造を有する。バテライトは、最もまれな炭酸カルシウム多形体であり、一般に不安定である。粉砕炭酸カルシウムは、ほぼ独占的に、三方菱面体晶と言われる方解石多形体であり、炭酸カルシウム多形体の中で最も安定したものである。本出願の意味における炭酸カルシウムの「供給源」という用語は、炭酸カルシウムが得られる天然の鉱物材料を指す。炭酸カルシウムの供給源は、炭酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩などのさらなる天然成分を含んでいてもよい。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、GCCは乾式粉砕によって得られる。本発明の別の実施形態によれば、GCCは、湿式粉砕および場合によりこの後の乾燥によって得られる。
【0065】
一般に、粉砕工程は、いずれかの従来の粉砕デバイスを用いて、例えば、粉砕が、主として二次本体との衝突からもたらされる条件下、即ち、ボールミル、ロッドミル、振動ミルミル、ロールクラッシャー、遠心衝撃ミル、垂直ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デ−クランパー、ナイフカッター、または当業者に既知の他のこうした設備の1つ以上において、行うことができる。炭酸カルシウム含有鉱物材料が鉱物材料を含有する湿式粉砕炭酸カルシウムを含む場合、粉砕工程は、自己粉砕が行われるような条件下で、および/または水平ボールミル粉砕によって、および/または当業者に既知の他のこのような方法によって行われてもよい。このようにして得られた湿式加工処理された粉砕炭酸カルシウム含有鉱物材料は、周知の方法、例えば乾燥前の、凝集、遠心分離、濾過または強制蒸発によって洗浄および脱水されてもよい。乾燥の次の工程は、噴霧乾燥のような単一工程で、または少なくとも2つの工程で行われてもよい。また、このような鉱物材料が不純物を除去するための選鉱工程(浮選、漂白または磁気分離工程など)を受けることも一般的である。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、粉砕炭酸カルシウムは、大理石、チョーク、ドロマイト、石灰石およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、炭酸カルシウムは、1つのタイプの粉砕炭酸カルシウムを含む。本発明の別の実施形態によれば、炭酸カルシウムは、異なる供給源から選択された2つ以上のタイプの粉砕炭酸カルシウムの混合物を含む。
【0068】
本発明の意味において「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、一般に、水性環境での二酸化炭素および石灰の反応の後の沈澱、または水中のカルシウムおよび炭酸イオン供給源の沈澱によって、またはカルシウムおよび炭酸イオン、例えばCaClおよびNaCOの溶液からの沈澱によって得られる合成された材料である。PCCを製造するさらなる可能な方法は、石灰ソーダ方法、またはPCCがアンモニア製造の副生成物であるソルベイ方法である。沈降炭酸カルシウムは、3つの主要な結晶形態:カルサイト、アラゴナイトおよびバテライトで存在し、これらの結晶形態のそれぞれについて多くの異なる多形体(晶癖)がある。カルサイトは、偏三角面体形(scalenohedral)(S−PCC)、りょう面体形(R−PCC)、六方晶系角柱、卓面体、コロイド状(C−PCC)、立方体および角柱状(P−PCC)のような典型的な晶癖を有する三方晶構造を有する。アラゴナイトは、双晶六方晶系角柱結晶の典型的な晶癖を有する斜方晶系構造であり、ならびに薄く細長い角柱、湾曲ブレード状、急勾配のピラミッド状、チゼル形結晶、分岐樹木状およびサンゴまたは虫様形態の多様な分類を有する。バテライトは六方晶系に属する。得られたPCCスラリーは、機械的に脱水し、乾燥させることができる。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、炭酸カルシウムは、1つの沈降炭酸カルシウムを含む。本発明の別の実施形態によれば、炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの異なる結晶形態および異なる多形体から選択される2種以上の沈降炭酸カルシウムの混合物を含む。例えば、少なくとも1つの沈降炭酸カルシウムは、S−PCCから選択される1つのPCCおよびR−PCCから選択される1つのPCCを含んでいてもよい。
【0070】
別の実施形態によれば、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物は、表面処理された材料、例えば表面処理された炭酸カルシウムであってもよい。
【0071】
表面処理された炭酸カルシウムは、この表面に処理またはコーティング層を含む粉砕炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、または沈降炭酸カルシウムを特徴とし得る。例えば、炭酸カルシウムは、疎水化剤、例えば、脂肪族カルボン酸、この塩またはエステル、またはシロキサンなどで処理またはコーティングされてもよい。適切な脂肪酸は、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、またはこれらの混合物などのC−C28脂肪酸である。炭酸カルシウムは、例えば、ポリアクリレートまたはポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(polyDADMAC)を用いて、カチオン性またはアニオン性になるように処理またはコーティングされてもよい。表面処理された炭酸カルシウムは、例えば、EP2 159 258A1またはWO2005/121257A1に記載されている。
【0072】
一実施形態によれば、表面処理された炭酸カルシウムは、脂肪酸、これらの塩、これらのエステル、またはこれらの組み合わせから、好ましくは脂肪族C−C28脂肪酸、これらの塩、これらのエステルまたはこれらの組み合わせによる処理から、より好ましくはステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、またはこれらの混合物による処理から得られた処理層または表面コーティングを含む。例示的な実施形態によれば、アルカリまたはアルカリ土類カーボネートは、表面処理された炭酸カルシウム、好ましくは、脂肪酸、好ましくはステアリン酸による処理から得られる処理層または表面コーティングを含む粉砕炭酸カルシウムである。
【0073】
一実施形態では、疎水化剤は、C4−C24の炭素原子の総量を有する脂肪族カルボン酸および/またはこの反応生成物である。従って、炭酸カルシウム粒子のアクセス可能な表面領域の少なくとも一部は、C4−C24の炭素原子の総量を有する脂肪族カルボン酸および/またはこの反応生成物を含む処理層によって被覆される。材料の「アクセス可能な」表面領域という用語は、水溶液、懸濁液、分散液または疎水化剤などの反応性分子の液相と接触する材料表面の部分を指す。
【0074】
本発明の意味において脂肪族カルボン酸の「反応生成物」という用語は、少なくとも1つの炭酸カルシウムを少なくとも1つの脂肪族カルボン酸と接触させることによって得られる生成物を指す。この反応生成物は、適用された少なくとも1つの脂肪族カルボン酸の少なくとも一部と、炭酸カルシウム粒子の表面に位置する反応性分子との間に形成される。
【0075】
本発明の意味において脂肪族カルボン酸は、1つ以上の直鎖、分岐状鎖、飽和、不飽和および/または脂肪族カルボン酸から選択されてもよい。好ましくは、脂肪族カルボン酸は、モノカルボン酸であり、即ち脂肪族カルボン酸は、単一カルボキシル基が存在することを特徴とする。このカルボキシル基は、炭素骨格の末端に配置される。
【0076】
本発明の一実施形態において、脂肪族カルボン酸は、飽和非分岐状カルボン酸から選択され、即ち、脂肪族カルボン酸は、好ましくはペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸およびこれらの混合物からなるカルボン酸の群から選択される。
【0077】
本発明の別の実施形態において、脂肪族カルボン酸は、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、脂肪族カルボン酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される。例えば、脂肪族カルボン酸はステアリン酸である。
【0078】
追加的にまたは代替的に、疎水化剤は、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物であることができ、これは、置換基においてC2−C30の炭素原子の総量を有する線状、分岐状、脂肪族および環状基から選択される基で一置換されたコハク酸無水物からなる。従って、炭酸カルシウム粒子のアクセス可能な表面領域の少なくとも一部は、置換基においてC2−C30の炭素原子の総量を有する線状、分岐状、脂肪族および環状基から選択される基で一置換されたコハク酸無水物からなる少なくとも1つの一置換コハク酸無水物および/またはこれらの反応生成物を含む処理層によって被覆される。少なくとも1つの一置換コハク酸無水物が、分岐状および/または環状基で一置換されたコハク酸無水物からなる場合、この基は、置換基において、C3−C30の炭素原子の総量を有することが当業者に理解される。
【0079】
本発明の意味において、一置換コハク酸無水物の「反応生成物」という用語は、炭酸カルシウムを少なくとも1つの一置換コハク酸無水物と接触させることによって得られる生成物を指す。この反応生成物は、適用された少なくとも1つの一置換コハク酸無水物の少なくとも一部と、炭酸カルシウム粒子の表面に位置する反応性分子との間に形成される。
【0080】
例えば、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、置換基においてC2−C30、好ましくはC3−C20、最も好ましくはC4−C18の炭素原子の総量を有する線状アルキル基、または置換基において、C3−C30、好ましくはC3−C20、最も好ましくはC4−C18の炭素原子の総量を有する分枝状アルキル基である1つの基で一置換されたコハク酸無水物からなる。
【0081】
例えば、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、置換基においてC2−C30、好ましくはC3−C20、最も好ましくはC4−C18の炭素原子の総量を有する線状アルキル基である1つの基で一置換されたコハク酸無水物からなる。追加的にまたは代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、置換基においてC3−C30、好ましくはC3−C20、最も好ましくはC4−C18の炭素原子の総量を有する分岐状アルキル基である1つの基で一置換されたコハク酸無水物からなる。
【0082】
本発明の意味において用語「アルキル」は、炭素および水素で構成される線状または分岐状、飽和有機化合物を指す。換言すれば、「アルキル一置換コハク酸無水物」は、ペンダントコハク酸無水物基を含有する線状または分岐状、飽和炭化水素鎖で構成される。
【0083】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は少なくとも1つの線状または分岐状アルキル一置換コハク酸無水物である。例えば、少なくとも1つのアルキル一置換コハク酸無水物は、エチルコハク酸無水物、プロピルコハク酸無水物、ブチルコハク酸無水物、トリイソブチルコハク酸無水物、ペンチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、ヘプチルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ノニルコハク酸無水物、デシルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ヘキサデカニルコハク酸無水物、オクタデカニルコハク酸無水物およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0084】
例えば用語「ブチルコハク酸無水物」は、線状および分岐状ブチルコハク酸無水物を含むと理解される。線状ブチルコハク酸無水物の1つの具体例は、n−ブチルコハク酸無水物である。分岐状ブチルコハク酸無水物の具体例は、イソ−ブチルコハク酸無水物、sec−ブチルコハク酸無水物および/またはtert−ブチルコハク酸無水物である。
【0085】
さらに、例えば用語「ヘキサデカニルコハク酸無水物」は、線状および分岐状ヘキサデカニルコハク酸無水物を含むと理解される。1つの具体例の線状ヘキサデカニルコハク酸無水物は、n−ヘキサデカニルコハク酸無水物である。分岐状ヘキサデカニルコハク酸無水物の具体例は、14−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、13−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、12−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、11−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、10−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、9−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、8−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、7−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、6−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、5−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、4−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、3−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、2−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、1−メチルペンタデカニルコハク酸無水物、13−エチルブタデカニルコハク酸無水物、12−エチルブタデカニルコハク酸無水物、11−エチルブタデカニルコハク酸無水物、10−エチルブタデカニルコハク酸無水物、9−エチルブタデカニルコハク酸無水物、8−エチルブタデカニルコハク酸無水物、7−エチルブタデカニルコハク酸無水物、6−エチルブタデカニルコハク酸無水物、5−エチルブタデカニルコハク酸無水物、4−エチルブタデカニルコハク酸無水物、3−エチルブタデカニルコハク酸無水物、2−エチルブタデカニルコハク酸無水物、1−エチルブタデカニルコハク酸無水物、2−ブチルドデカニルコハク酸無水物、1−ヘキシルデカニルコハク酸無水物、1−ヘキシル−2−デカニルコハク酸無水物、2−ヘキシルデカニルコハク酸無水物、6,12−ジメチルブタデカニルコハク酸無水物、2,2−ジエチルドデカニルコハク酸無水物、4,8,12−トリメチルトリデカニルコハク酸無水物、2,2,4,6,8−ペンタメチルウンデカニルコハク酸無水物、2−エチル−4−メチル−2−(2−メチルペンチル)−ヘプチルコハク酸無水物および/または2−エチル−4,6−ジメチル−2−プロピルノニルコハク酸無水物である。
【0086】
さらに、例えば用語「オクタデカニルコハク酸無水物」は、線状および分岐状オクタデカニルコハク酸無水物を含むと理解される。線状オクタデカニルコハク酸無水物の1つの具体例は、n−オクタデカニルコハク酸無水物である。分岐状ヘキサデカニルコハク酸無水物の具体例は、16−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、15−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、14−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、13−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、12−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、11−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、10−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、9−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、8−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、7−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、6−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、5−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、4−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、3−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、2−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、1−メチルヘプタデカニルコハク酸無水物、14−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、13−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、12−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、11−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、10−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、9−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、8−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、7−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、6−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、5−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、4−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、3−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、2−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、1−エチルヘキサデカニルコハク酸無水物、2−ヘキシルドデカニルコハク酸無水物、2−ヘプチルウンデカニルコハク酸無水物、イソオクタデカニルコハク酸無水物および/または1−オクチル−2−デカニルコハク酸無水物である。
【0087】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルキル一置換コハク酸無水物は、ブチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、ヘプチルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ヘキサデカニルコハク酸無水物、オクタデカニルコハク酸無水物およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0088】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、1種のアルキル一置換コハク酸無水物である。例えば、1つのアルキル一置換コハク酸無水物は、ブチルコハク酸無水物である。代替的に、1つのアルキル一置換コハク酸無水物はヘキシルコハク酸無水物である。代替的に、1つのアルキル一置換コハク酸無水物は、ヘプチルコハク酸無水物またはオクチルコハク酸無水物である。代替的に、1つのアルキル一置換コハク酸無水物はヘキサデカニルコハク酸無水物である。例えば、1つのアルキル一置換コハク酸無水物は、線状ヘキサデカニルコハク酸無水物、例えばn−ヘキサデカニルコハク酸無水物または分岐状ヘキサデカニルコハク酸無水物、例えば1−ヘキシル−2−デカニルコハク酸無水物である。代替的に、1つのアルキル一置換コハク酸無水物はオクタデカニルコハク酸無水物である。例えば、1つのアルキル一置換コハク酸無水物は、線状オクタデカニルコハク酸無水物、例えばn−オクタデカニルコハク酸無水物または分岐状オクタデカニルコハク酸無水物、例えばイソ−オクタデカニルコハク酸無水物または1−オクチル−2−デカニルコハク酸無水物である。
【0089】
本発明の一実施形態において、1つのアルキル一置換コハク酸無水物は、ブチルコハク酸無水物、例えばn−ブチルコハク酸無水物である。
【0090】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、2種以上のアルキル一置換コハク酸無水物の混合物である。例えば、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、2または3種のアルキル一置換コハク酸無水物の混合物である。
【0091】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、置換基においてC2−C30、好ましくはC3−C20、最も好ましくはC4−C18の炭素原子の総量を有する線状アルケニル基、または置換基において、C3−C30、好ましくはC4−C20、最も好ましくはC4−C18の炭素原子の総量を有する分枝状アルケニル基である1つの基で一置換されたコハク酸無水物からなる。
【0092】
本発明の意味において用語「アルケニル」は、炭素および水素で構成される線状または分岐状、不飽和有機化合物を指す。この有機化合物はさらに、置換基において少なくとも1つの二重結合、好ましくは1つの二重結合を含有する。換言すれば、「アルケニル一置換コハク酸無水物」は、ペンダントコハク酸無水物基を含有する線状または分岐状、不飽和炭化水素鎖で構成される。本発明の意味において、用語「アルケニル」はシスおよびトランス異性体を含むと理解される。
【0093】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、少なくとも1つの線状または分岐状アルケニル一置換コハク酸無水物である。例えば、少なくとも1つのアルケニル一置換コハク酸無水物は、エテニルコハク酸無水物、プロペニルコハク酸無水物、ブテニルコハク酸無水物、トリイソブテニルコハク酸無水物、ペンテニルコハク酸無水物、ヘキセニルコハク酸無水物、ヘプテニルコハク酸無水物、オクテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、デセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0094】
従って、例えば用語「ヘキサデセニルコハク酸無水物」は、線状および分岐状ヘキサデセニルコハク酸無水物を含むと理解される。線状ヘキサデセニルコハク酸無水物の1つの具体例は、n−ヘキサデセニルコハク酸無水物、例えば14−ヘキサデセニルコハク酸無水物、13−ヘキサデセニルコハク酸無水物、12−ヘキサデセニルコハク酸無水物、11−ヘキサデセニルコハク酸無水物、10−ヘキサデセニルコハク酸無水物、9−ヘキサデセニルコハク酸無水物、8−ヘキサデセニルコハク酸無水物、7−ヘキサデセニルコハク酸無水物、6−ヘキサデセニルコハク酸無水物、5−ヘキサデセニルコハク酸無水物、4−ヘキサデセニルコハク酸無水物、3−ヘキサデセニルコハク酸無水物および/または2−ヘキサデセニルコハク酸無水物である。分岐状ヘキサデセニルコハク酸無水物の具体例は、14−メチル−9−ペンタデセニルコハク酸無水物、14−メチル−2−ペンタデセニルコハク酸無水物、1−ヘキシル−2−デセニルコハク酸無水物および/またはイソ−ヘキサデセニルコハク酸無水物である。
【0095】
さらに、例えば用語「オクタデセニルコハク酸無水物」は、線状および分岐状オクタデセニルコハク酸無水物を含むと理解される。線状オクタデセニルコハク酸無水物の1つの具体例は、n−オクタデセニルコハク酸無水物、例えば16−オクタデセニルコハク酸無水物、15−オクタデセニルコハク酸無水物、14−オクタデセニルコハク酸無水物、13−オクタデセニルコハク酸無水物、12−オクタデセニルコハク酸無水物、11−オクタデセニルコハク酸無水物、10−オクタデセニルコハク酸無水物、9−オクタデセニルコハク酸無水物、8−オクタデセニルコハク酸無水物、7−オクタデセニルコハク酸無水物、6−オクタデセニルコハク酸無水物、5−オクタデセニルコハク酸無水物、4−オクタデセニルコハク酸無水物、3−オクタデセニルコハク酸無水物および/または2−オクタデセニルコハク酸無水物である。分岐状オクタデセニルコハク酸無水物の具体例は、16−メチル−9−ヘプタデセニルコハク酸無水物、16−メチル−7−ヘプタデセニルコハク酸無水物、1−オクチル−2−デセニルコハク酸無水物および/またはイソ−オクタデセニルコハク酸無水物である。
【0096】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのアルケニル一置換コハク酸無水物は、ヘキセニルコハク酸無水物、オクテニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0097】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、1つのアルケニル一置換コハク酸無水物である。例えば、1つのアルケニル一置換コハク酸無水物はヘキセニルコハク酸無水物である。代替的に、1つのアルケニル一置換コハク酸無水物はオクテニルコハク酸無水物である。代替的に、1つのアルケニル一置換コハク酸無水物はヘキサデセニルコハク酸無水物である。例えば、1つのアルケニル一置換コハク酸無水物は、線状ヘキサデセニルコハク酸無水物、例えばn−ヘキサデセニルコハク酸無水物または分岐状ヘキサデセニルコハク酸無水物、例えば1−ヘキシル−2−デセニルコハク酸無水物である。代替的に、1つのアルケニル一置換コハク酸無水物は、オクタデセニルコハク酸無水物である。例えば、1つのアルキル一置換コハク酸無水物は、線状オクタデセニルコハク酸無水物、例えばn−オクタデセニルコハク酸無水物または分岐状オクタデセニルコハク酸無水物、例えばイソ−オクタデセニルコハク酸無水物、または1−オクチル−2−デセニルコハク酸無水物である。
【0098】
本発明の一実施形態において、1つのアルケニル一置換コハク酸無水物は、線状オクタデセニルコハク酸無水物、例えばn−オクタデセニルコハク酸無水物である。本発明の別の実施形態において、1つのアルケニル一置換コハク酸無水物は、線状オクテニルコハク酸無水物、例えばn−オクテニルコハク酸無水物である。
【0099】
少なくとも1つの一置換コハク酸無水物が1つのアルケニル一置換コハク酸無水物である場合、1つのアルケニル一置換コハク酸無水物は、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物の総重量に基づいて、≧95重量%、好ましくは≧96.5重量%の量で存在することが理解される。
【0100】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、2種以上のアルケニル一置換コハク酸無水物の混合物である。例えば、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、2または3種のアルケニル一置換コハク酸無水物の混合物である。
【0101】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、線状ヘキサデセニルコハク酸無水物および線状オクタデセニルコハク酸無水物を含む2種以上アルケニル一置換コハク酸無水物の混合物である。代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、分岐状ヘキサデセニルコハク酸無水物および分岐状オクタデセニルコハク酸無水物を含む2種以上アルケニル一置換コハク酸無水物の混合物である。例えば、1つ以上のヘキサデセニルコハク酸無水物は、線状ヘキサデセニルコハク酸無水物、例えばn−ヘキサデセニルコハク酸無水物および/または分岐状ヘキサデセニルコハク酸無水物、例えば1−ヘキシル−2−デセニルコハク酸無水物である。追加的にまたは代替的に、1つ以上のオクタデセニルコハク酸無水物は、線状オクタデセニルコハク酸無水物、例えばn−オクタデセニルコハク酸無水物および/または分岐状オクタデセニルコハク酸無水物、例えばイソ−オクタデセニルコハク酸無水物および/または1−オクチル−2−デセニルコハク酸無水物である。
【0102】
少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、少なくとも1つのアルキル一置換コハク酸無水物および少なくとも1つのアルケニル一置換コハク酸無水物の混合物であってもよいことが理解される。
【0103】
少なくとも1つの一置換コハク酸無水物が少なくとも1つのアルキル一置換コハク酸無水物および少なくとも1つのアルケニル一置換コハク酸無水物の混合物である場合、少なくとも1つのアルキル一置換コハク酸無水物のアルキル置換基および少なくとも1つのアルケニル一置換コハク酸無水物のアルケニル置換基が好ましくは同じであることが理解される。例えば、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、エチルコハク酸無水物およびエテニルコハク酸無水物の混合物である。代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、プロピルコハク酸無水物およびプロペニルコハク酸無水物の混合物である。代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、ブチルコハク酸無水物およびブテニルコハク酸無水物の混合物である。代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、トリイソブチルコハク酸無水物およびトリイソブテニルコハク酸無水物の混合物である。代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、ペンチルコハク酸無水物およびペンテニルコハク酸無水物の混合物である。代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、ヘキシルコハク酸無水物およびヘキセニルコハク酸無水物の混合物である。代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、ヘプチルコハク酸無水物およびヘプテニルコハク酸無水物の混合物である。代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、オクチルコハク酸無水物およびオクテニルコハク酸無水物の混合物である。代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、ノニルコハク酸無水物およびノネニルコハク酸無水物の混合物である。代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、デシルコハク酸無水物およびデセニルコハク酸無水物の混合物である。代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、ドデシルコハク酸無水物およびドデセニルコハク酸無水物の混合物である。代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、ヘキサデカニルコハク酸無水物およびヘキサデセニルコハク酸無水物の混合物である。例えば、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、線状ヘキサデカニルコハク酸無水物および線状ヘキサデセニルコハク酸無水物の混合物または分岐状ヘキサデカニルコハク酸無水物および分岐状ヘキサデセニルコハク酸無水物の混合物である。代替的に、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、オクタデカニルコハク酸無水物およびオクタデセニルコハク酸無水物の混合物である。例えば、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、線状オクタデカニルコハク酸無水物および線状オクタデセニルコハク酸無水物の混合物または分岐状オクタデカニルコハク酸無水物および分岐状オクタデセニルコハク酸無水物の混合物である。
【0104】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの一置換コハク酸無水物は、ノニルコハク酸無水物およびノネニルコハク酸無水物の混合物である。
【0105】
少なくとも1つの一置換コハク酸無水物が少なくとも1つのアルキル一置換コハク酸無水物および少なくとも1つのアルケニル一置換コハク酸無水物の混合物である場合、少なくとも1つのアルキル一置換コハク酸無水物と少なくとも1つのアルケニル一置換コハク酸無水物との重量比は、90:10から10:90(重量%/重量%)である。例えば、少なくとも1つのアルキル一置換コハク酸無水物と少なくとも1つのアルケニル一置換コハク酸無水物との重量比は、70:30から30:70(重量%/重量%)または60:40から40:60である。
【0106】
追加的にまたは代替的に、疎水化剤はリン酸エステルブレンドであってもよい。従って、炭酸カルシウム粒子のアクセス可能な表面領域の少なくとも一部は、1つ以上のリン酸モノエステルおよび/またはこれらの反応生成物および1つ以上のリン酸ジエステルおよび/またはこれらの反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む処理層によって被覆される。
【0107】
本発明の意味においてリン酸モノエステルおよび1つ以上のリン酸ジエステルの「反応生成物」という用語は、炭酸カルシウムを、少なくとも1つのリン酸エステルブレンドと接触させることによって得られる生成物を指す。この反応生成物は、適用されたリン酸エステルブレンドの少なくとも一部と、炭酸カルシウム粒子の表面に位置する反応性分子との間に形成される。
【0108】
本発明の意味において用語「リン酸モノエステル」は、アルコール置換基においてC6−C30、好ましくはC8−C22、より好ましくはC8−C20、最も好ましくはC8ーC18の炭素原子の総量を有する不飽和または飽和、分岐状または線状、脂肪族または芳香族アルコールから選択される1つのアルコール分子でモノエステル化されたo−リン酸分子を指す。
【0109】
本発明の意味において、用語「リン酸ジエステル」は、アルコール置換基において、C6−C30、好ましくはC8−C22、より好ましくはC8−C20、最も好ましくはC8−C18の炭素原子の総量を有する同じまたは異なる不飽和または飽和、分岐状または線状、脂肪族または芳香族アルコールから選択される2つのアルコール分子でジエステル化されたo−リン酸分子を指す。
【0110】
表現「1つ以上の」リン酸モノエステルは、1種以上のリン酸モノエステルが、リン酸エステルブレンドに存在し得ることを意味することが理解される。
【0111】
従って、1つ以上のリン酸モノエステルは1種のリン酸モノエステルであってもよいことに留意すべきである。代替的に、1つ以上のリン酸モノエステルは、2種以上のリン酸モノエステルの混合物であってもよい。例えば1つ以上のリン酸モノエステルは、2または3種のリン酸モノエステル、同様に2種のリン酸モノエステルの混合物であってもよい。
【0112】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基においてC6−C30の炭素原子の総量を有する不飽和または飽和、分岐状または線状、脂肪族または芳香族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。例えば、1つ以上のリン酸モノエステルは、アルコール置換基においてC8−C22、より好ましくはC8−C20、最も好ましくはC8−C18の炭素原子の総量を有する不飽和または飽和、分岐状または線状、脂肪族または芳香族アルコールから選択される1つのアルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。
【0113】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸モノエステルは、ヘキシルリン酸モノエステル、ヘプチルリン酸モノエステル、オクチルリン酸モノエステル、2−エチルヘキシルリン酸モノエステル、ノニルリン酸モノエステル、デシルリン酸モノエステル、ウンデシルリン酸モノエステル、ドデシルリン酸モノエステル、テトラデシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸モノエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0114】
例えば、1つ以上のリン酸モノエステルは、2−エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸モノエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸モノエステルは2−オクチル−1−ドデシルリン酸モノエステルである。
【0115】
表現「1つ以上の」リン酸ジエステルは、1種以上のリン酸ジエステルが、炭酸カルシウムおよび/またはリン酸エステルブレンドのコーティング層に存在し得ることを意味することが理解される。
【0116】
従って、1つ以上のリン酸ジエステルは1種のリン酸ジエステルであってもよいことに留意すべきである。代替的に、1つ以上のリン酸ジエステルは、2種以上のリン酸ジエステルの混合物であってもよい。例えば1つ以上のリン酸ジエステルは、2または3種のリン酸ジエステル、同様に2種のリン酸ジエステルの混合物であってもよい。
【0117】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基においてC6−C30の炭素原子の総量を有する不飽和または飽和、分岐状または線状、脂肪族または芳香族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。例えば、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基においてC8−C22、より好ましくはC8−C20、最も好ましくはC8−C18の炭素原子の総量を有する不飽和または飽和、分岐状または線状、脂肪族または芳香族アルコールから選択される2つの脂肪族アルコールでエステル化されたo−リン酸分子からなる。
【0118】
リン酸をエステル化するために使用される2つのアルコールは、独立に、アルコール置換基においてC6−C30の炭素原子の総量を有する同じまたは異なる、不飽和または飽和、分岐状または線状、脂肪族または芳香族アルコールから選択されてもよいことが理解される。換言すれば、1つ以上のリン酸ジエステルは、同じアルコールから誘導されている2つの置換基を含んでいてもよく、またはリン酸ジエステル分子は、異なるアルコールから誘導されている2つの置換基を含んでいてもよい。
【0119】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基において、C6−C30、好ましくはC8−C22、より好ましくはC8−C20、最も好ましくはC8−C18の炭素原子の総量を有する同じまたは異なる飽和線状脂肪族アルコールから選択される2つのアルコールでエステル化されるo−リン酸分子からなる。代替的に、1つ以上のリン酸ジエステルは、アルコール置換基において、C6−C30、好ましくはC8−C22、より好ましくはC8−C20、最も好ましくはC8−C18の炭素原子の総量を有する同じまたは異なる飽和分岐状脂肪族アルコールから選択される2つのアルコール分子でエステル化されるo−リン酸分子からなる。
【0120】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸ジエステルは、ヘキシルリン酸ジエステル、ヘプチルリン酸ジエステル、オクチルリン酸ジエステル、2−エチルヘキシルリン酸ジエステル、ノニルリン酸ジエステル、デシルリン酸ジエステル、ウンデシルリン酸ジエステル、ドデシルリン酸ジエステル、テトラデシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸ジエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0121】
例えば、1つ以上のリン酸ジエステルは、2−エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸ジエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸ジエステルは2−オクチル−1−ドデシルリン酸ジエステルである。
【0122】
本発明の一実施形態において、1つ以上のリン酸モノエステルは、2−エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸モノエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択され、1つ以上のリン酸ジエステルは、2−エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−ドデシルリン酸ジエステルおよびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0123】
例えば、炭酸カルシウムのアクセス可能な表面領域の少なくとも一部は、1つのリン酸モノエステルおよび/またはこれらの反応生成物および1つのリン酸ジエステルおよび/またはこれらの反応生成物のリン酸エステルブレンドを含む。この場合、1つのリン酸モノエステルは、2−エチルヘキシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプチルノニルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸モノエステルおよび2−オクチル−1−ドデシルリン酸モノエステルを含む群から選択され、1つのリン酸ジエステルは、2−エチルヘキシルリン酸ジエステル、ヘキサデシルリン酸ジエステル、ヘプチルノニルリン酸ジエステル、オクタデシルリン酸ジエステル、2−オクチル−1−デシルリン酸ジエステルおよび2−オクチル−1−ドデシルリン酸ジエステルを含む群から選択される。
【0124】
リン酸エステルブレンドは、1つ以上のリン酸モノエステルおよび/またはこれらの反応生成物と、1つ以上のリン酸ジエステルおよび/またはこれらの反応生成物とを特定のモル比で含む。特に、処理層および/またはリン酸エステルブレンド中の1つ以上のリン酸モノエステルおよび/またはこれらの反応生成物と、1つ以上のリン酸ジエステルおよび/またはこれらの反応生成物とのモル比は、1:1から1:100、好ましくは1:1.1から1:60、より好ましくは1:1.1から1:40、さらにより好ましく1:1.1から1:20、最も好ましくは1:1.1から1:10である。
【0125】
文言「1つ以上のリン酸モノエステルおよびこれらの反応生成物と、1つ以上のリン酸ジエステルおよびこれらの反応生成物とのモル比」は、本発明の意味において、リン酸ジエステル分子の分子量の合計および/またはこれらの反応生成物中のリン酸ジエステル分子の分子量の合計に対するリン酸モノエステル分子の分子量の合計および/またはこれらの反応生成物中のリン酸モノエステル分子の分子量の合計を指す。
【0126】
本発明の一実施形態において、炭酸カルシウムの表面の少なくとも一部においてコーティングされたリン酸エステルブレンドはさらに、1つ以上のリン酸トリエステルおよび/またはリン酸および/またはこれらの反応生成物を含んでいてもよい。
【0127】
本発明の意味において、用語「リン酸トリエステル」は、アルコール置換基において、C6−C30、好ましくはC8−C22、より好ましくはC8−C20、最も好ましくはC8−C18の炭素原子の総量を有する同じまたは異なる不飽和または飽和、分岐状または線状、脂肪族または芳香族アルコールから選択される3つのアルコール分子でトリエステル化されたo−リン酸分子を指す。
【0128】
表現「1つ以上の」リン酸トリエステルは、1種以上のリン酸トリエステルは、炭酸カルシウムのアクセス可能な表面領域の少なくとも一部に存在し得ると理解される。
【0129】
従って、1つ以上のリン酸トリエステルは1種のリン酸トリエステルであってもよいことに留意すべきである。代替的に、1つ以上のリン酸トリエステルは、2種以上のリン酸トリエステルの混合物であってもよい。例えば1つ以上のリン酸トリエステルは、2または3種のリン酸トリエステル、同様に2種のリン酸トリエステルの混合物であってもよい。
【0130】
本発明の好ましい実施形態によれば、工程a)において、基材は、炭酸カルシウム、好ましくは粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウムおよび/または表面処理炭酸カルシウムを含む少なくとも1つの外面を含むものが提供される。さらに好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの外面は、炭酸カルシウム、好ましくは粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウムおよび/または表面処理炭酸カルシウムを含むコーティング層である。
【0131】
一実施形態によれば、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物は、15nmから200μm、好ましくは20nmから100μm、より好ましくは50nmから50μm、最も好ましくは100nmから2μmの重量メジアン粒径d50を有する粒子の形態である。
【0132】
一実施形態によれば、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物は、窒素およびISO 9277に従うBET法を用いて測定される場合、4から120m/g、好ましくは8から50m/gの比表面積(BET)を有する。
【0133】
少なくとも1つの外面における塩形成性アルカリまたはアルカリ土類金属化合物の量は、コーティング層の総重量を基準にして、40から99重量%、好ましくは45から98重量%、より好ましくは60から97重量%の範囲であることができる。
【0134】
一実施形態によれば、少なくとも1つの外面はさらに、バインダを、好ましくは、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物の総重量を基準にして、1から50重量%、好ましくは3から30重量%、より好ましくは5から15重量%の量で含む。
【0135】
いずれかの適切なポリマー性バインダが、少なくとも1つの外面に存在してもよい。例えば、ポリマー性バインダは、疎水性ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロースエーテル、ポリオキサゾリン、ポリビニルアセトアミド、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル/ビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアルキレンオキシド、スルホン化またはリン酸化ポリエステルおよびポリスチレン、カゼイン、ゼイン、アルブミン、キチン、キトサン、デキストラン、ペクチン、コラーゲン誘導体、コルディアン、寒天、アロールート、グアー、カラギーナン、デンプン、トラガカント、キサンタンまたはラムサンおよびこれらの混合物であってもよい。他のバインダ、例えば疎水性材料、例えばポリ(スチレン−co−ブタジエン)、ポリウレタンラテックス、ポリエステルラテックス、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、n−ブチルアクリレートとエチルアクリレートのコポリマー、ビニルアセテートとn−ブチルアクリレートのコポリマーなどおよびこれらの混合物を使用することもできる。適切なバインダのさらなる例は、アクリル酸および/またはメタクリル酸、イタコン酸および酸エステル、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、スチレン、非置換または置換塩化ビニル、ビニルアセテート、エチレン、ブタジエン、アクリルアミドおよびアクリロニトリルのホモポリマーまたはコポリマー、シリコーン樹脂、水希釈性アルキド樹脂、アクリル/アルキド樹脂の組み合わせ、亜麻仁油のような天然油およびこれらの混合物である。
【0136】
一実施形態によれば、バインダは、デンプン、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエンラテックス、スチレン−アクリレート、ポリビニルアセテートラテックス、ポリオレフィン、エチレンアクリレート、ミクロフィブリル化セルロース、微結晶セルロース、ナノセルロース、セルロース、カルボキシメチルセルロース、バイオ系ラテックスまたはこれらの混合物から選択される。
【0137】
別の実施形態によれば、少なくとも1つの外面はバインダを含まない。
【0138】
外面に存在し得る他の任意の添加剤は、例えば、分散剤、粉砕助剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、潤滑剤、消泡剤、蛍光増白剤、色素、防腐剤またはpH調節剤である。一実施形態によれば、少なくとも1つの外面は、レオロジー調整剤をさらに含む。好ましくは、レオロジー調整剤は、充填剤の総重量を基準にして1重量%未満の量で存在する。
【0139】
例示的な実施形態によれば、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物は、分散剤で分散される。分散剤は、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物の総重量に基づいて、0.01から10重量%、0.05から8重量%、0.5から5重量%、0.8から3重量%、または1.0から1.5重量%の量で使用されてもよい。好ましい実施形態では、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物は、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物の総重量に基づいて、0.05から5重量%、好ましくは0.5から5重量%の分散剤で分散される。好適な分散剤は、好ましくは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸およびアクリルアミドまたはこれらの混合物に基づくポリカルボン酸塩のホモポリマーまたはコポリマーを含む群から選択される。アクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーが特に好ましい。このような製品の分子量Mは、好ましくは2000から15000g/molの範囲であり、分子量Mは3000から7000g/molが特に好ましい。このような製品の分子量Mはまた、好ましくは2000から150000g/molの範囲であり、15000から50000g/molのMが特に好ましく、例えば35000から45000g/molである。例示的な実施形態によれば、分散剤はポリアクリレートである。
【0140】
少なくとも1つの外面はまた、例えば酵素、pHまたは温度の変化を受けやすい色彩指示薬、または蛍光材料などの添加剤としての生物活性分子などの活性剤を含んでいてもよい。
【0141】
少なくとも外面は、好ましくはラミネートまたはコーティング層の形態で、少なくとも1μm、例えば少なくとも5μm、10μm、15μmまたは20μmの厚さを有していてもよい。好ましくは、外面の厚さは1μmから150μmの範囲である。
【0142】
一実施形態によれば、基材は、第1の面および裏面を含み、基材が、第1の面および裏面に塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物を含む外面を含む。好ましい実施形態によれば、基材は、第1の面および裏面を含み、基材が、第1の面および裏面に、アルカリまたはアルカリ土類のカーボネート、好ましくは炭酸カルシウムを含むラミネートまたはコーティング層を含む。一実施形態によれば、ラミネートまたはコーティング層は、基材の表面と直接接触している。
【0143】
さらなる実施形態によれば、基材は、基材と塩形成性のアルカリまたはアルカリ土類化合物を含む少なくとも1つの外面との間に、1つ以上の追加のプレコート層を含む。このような追加のプレコート層は、カオリン、シリカ、タルク、プラスチック、沈降炭酸カルシウム、改質炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。この場合、コーティング層はプレコーティング層と直接接触していてもよく、または複数のプレコーティング層が存在する場合、コーティング層はトッププレコーティング層と直接接触していてもよい。
【0144】
本発明の別の実施形態によれば、基材は、基材と、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物を含む少なくとも1つの外面との間に、1つ以上のバリア層を含む。この場合、少なくとも1つの外面は、バリア層と直接接触していてもよく、または複数のバリア層が存在する場合、少なくとも1つの外面は、トップバリア層と直接接触していてもよい。バリア層はポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロースエーテル、ポリオキサゾリン、ポリビニルアセトアミド、部分的に加水分解されたポリビニルアセテート/ビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアルキレンオキシド、スルホン化またはリン酸化ポリエステルおよびポリスチレン、カゼイン、ゼイン、アルブミン、キチン、キトサン、デキストラン、ペクチン、コラーゲン誘導体、コロジオン、寒天、アロールート、グアー、カラギーナン、デンプン、トラガカント、キサンタン、ラムサン、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)、ポリウレタンラテックス、ポリエステルラテックス(n−ブチルアクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、n−ブチルアクリレートとエチルアクリレートとのコポリマー、ビニルアセテートとn−ブチルアクリレートとのコポリマーなどおよびこれらの混合物を含んでいてもよい。適切なバリア層のさらなる例は、アクリル酸および/またはメタクリル酸、イタコン酸および酸エステル、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、スチレン、非置換または置換塩化ビニル、ビニルアセテート、エチレン、ブタジエン、アクリルアミドおよびアクリロニトリルのホモポリマーまたはコポリマー、シリコーン樹脂、水希釈性アルキド樹脂、アクリル/アルキド樹脂の組み合わせ、亜麻仁油のような天然油およびこれらの混合物である。一実施形態によれば、バリア層は、ラテックス、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、カオリン、タルカム、蛇行構造(スタックされた構造)を生成するための雲母およびこれらの混合物を含む。
【0145】
本発明のさらに別の実施形態によれば、基材は、基材と、塩形成性のアルカリまたはアルカリ土類化合物を含む少なくとも1つの外面との間に、1つ以上のプレコーティング層およびバリア層を含む。この場合、少なくとも1つの外面は、それぞれトッププレコーティング層またはバリア層と直接接触していてもよい。
【0146】
本発明の一実施形態によれば、工程a)の基材は、
i)基材を提供する工程、
ii)基材の少なくとも一方の面に塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物を含むコーティング組成物を適用してコーティング層を形成する工程、および
iii)場合によりコーティング層を乾燥させる工程
により調製される。
【0147】
コーティング組成物は、液体または乾燥形態であることができる。一実施形態によれば、コーティング組成物は、乾燥コーティング組成物である。別の実施形態によれば、コーティング組成物は液体コーティング組成物である。この場合、コーティング層を乾燥させてもよい。
【0148】
本発明の一実施形態によれば、コーティング組成物は水性組成物、即ち唯一の溶媒として水を含む組成物である。別の実施形態によれば、コーティング組成物は非水性組成物である。好適な溶媒は当業者に知られており、例えば、4から14個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、エーテルおよびジエーテル、グリコール、アルコキシル化グリコール、グリコールエーテル、アルコキシル化芳香族アルコール、芳香族アルコール、これらの混合物、または水とのこれらの混合物である。
【0149】
本発明の一実施形態によれば、コーティング組成物の固形分含有量は、組成物の総重量に基づいて、5重量%から75重量%、好ましくは20から67重量%、より好ましくは30から65重量%、最も好ましくは約50から約62重量%の範囲である。好ましい実施形態によれば、コーティング組成物は、組成物の総重量に基づいて、5重量%から75重量%、好ましくは20から67重量%、より好ましくは30から65重量%、最も好ましくは50から62重量%範囲の固形分含有量を有する水性組成物である。
【0150】
本発明の一実施形態によれば、コーティング組成物は20℃で10から4000mPa・s、好ましくは20℃で100から3500mPa・s、より好ましくは20℃で200から3000mPa・s、最も好ましくは20℃で250から2000mPa・sのブルックフィールド粘度を有する。
【0151】
一実施形態によれば、方法工程ii)およびiii)はまた、基材の裏面で行われて、第1の面および裏面でコーティングされる基材を製造する。これらの工程は、それぞれの面で別々に行われてもよく、または第1の面および裏面で同時に行われてもよい。
【0152】
本発明の一実施形態によれば、方法工程ii)およびiii)は、異なるまたは同じコーティング組成物を用いて2回以上行われる。
【0153】
本発明の一実施形態によれば、方法工程ii)の前に、1つ以上の追加のコーティング組成物が基材の少なくとも1つの面に適用される。追加のコーティング組成物は、プレコーティング組成物および/またはバリア層組成物であってもよい。
【0154】
コーティング組成物は、この分野で一般的に使用されている従来のコーティング手段によって基材上に適用されてもよい。好適なコーティング方法は、例えばエアーナイフコーティング、静電コーティング、計量サイズプレス、フィルムコーティング、スプレーコーティング、巻線ロッドコーティング、スロットコーティング、スライドホッパーコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、高速コーティングなどである。これらの方法の幾つかは、2つ以上の層の同時コーティングを可能にし、これは製造上の経済的観点から好ましい。しかし、基材上にコーティング層を形成するのに適したいずれかの他のコーティング方法を使用してもよい。例示的な実施形態によれば、コーティング組成物は、高速コーティング、計量サイズプレス、カーテンコーティング、スプレーコーティング、フレキソおよびグラビアコーティング、またはブレードコーティング、好ましくはカーテンコーティングによって適用される。
【0155】
工程iii)によれば、基材上に形成されたコーティング層が乾燥される。乾燥は、当該技術分野で知られているいずれかの方法によって行うことができ、当業者は、この処理装置に応じて温度などの乾燥条件を適合させる。例えば、コーティング層は、赤外線乾燥および/または対流乾燥によって乾燥することができる。乾燥工程は、室温、即ち20℃±2℃の温度または他の温度で行われてもよい。一実施形態によれば、方法工程iii)は、25から150℃、好ましくは50から140℃、より好ましくは75から130℃の基材表面温度で行われる。場合により適用されたプレコーティング層および/またはバリア層は、同じ方法で乾燥することができる。
【0156】
コーティング後、表面平滑性を高めるために、コーティングされた基材をカレンダ処理またはスーパーカレンダ処理に供してもよい。例えば、カレンダ処理は、例えば、2から12ニップのカレンダを用いて、20から200℃、好ましくは60から100℃の温度で行われてもよい。このニップは、硬質または軟質であってもよく、硬質ニップは、例えば、セラミック材料で作製することができる。例示的な一実施形態によれば、光沢のあるコーティングを得るために、コーティングされた基材は300kN/mでカレンダ処理される。別の例示的な実施形態によれば、コーティングされた基材は、艶消しコーティングを得るために120kN/mでカレンダ処理される。
【0157】
一実施形態によれば、コーティング層は、0.5から100g/m、好ましくは1から75g/m、より好ましくは2から50g/m、最も好ましくは4から25g/mのコーティング重量を有する。
【0158】
方法工程b)
本発明の方法の工程b)によれば、少なくとも1つの酸を含む液体処理組成物が提供される。
【0159】
液体処理組成物は、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物と反応するときにCOを形成するいずれかの無機酸または有機酸を含んでいてもよい。一実施形態によれば、少なくとも1つの酸は有機酸、好ましくはモノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸である。
【0160】
一実施形態によれば、少なくとも1つの酸は、20℃で0以下のpKを有する強酸である。別の実施形態によれば、少なくとも1つの酸は、20℃で0から2.5のpK値を有する中強酸である。20℃におけるpKが0以下である場合、酸は、好ましくは、硫酸、塩酸、またはこれらの混合物から選択される。20℃におけるpKが0から2.5である場合、酸は、好ましくは、HSO、HPO、シュウ酸、またはこれらの混合物から選択される。しかし、例えば、スベリン酸、コハク酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、スルファミン酸、酒石酸、安息香酸、フィチン酸などのpKが2.5を超える酸を使用してもよい。
【0161】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、スルファミン酸、酒石酸、フィチン酸、ホウ酸、コハク酸、スベリン酸、安息香酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソクエン酸、アコニット酸、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメシン酸、グリコール酸、乳酸、マンデル酸、酸性有機硫黄化合物、酸性有機リン化合物およびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、ホウ酸、スベリン酸、コハク酸、スルファミン酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、少なくとも1つの酸は、硫酸、リン酸、ホウ酸、スベリン酸、スルファミン酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、少なくとも1つの酸は、リン酸および/または硫酸である。
【0162】
酸性有機硫黄化合物は、ナフィオン、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、チオカルボン酸、スルフィン酸および/またはスルフェン酸などのスルホン酸から選択されてもよい。酸性有機リン化合物の例は、アミノメチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、テトラメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(TDTMP)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(HDTMP)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、N−(ホスホノメチル)イミノ二酢酸(PMIDA)、2−カルボキシエチルホスホン酸(CEPA)、2−ヒドロキシホスホノカルボン酸(HPAA)、アミノ−トリス−(メチレン−ホスホン酸)(AMP)、またはジ−(2−エチルヘキシル)リン酸である。
【0163】
少なくとも1つの酸は、1タイプの酸のみからなってもよい。または、少なくとも1つの酸は、2タイプ以上の酸からなることができる。
【0164】
少なくとも1つの酸は、濃縮形態または希釈形態で適用されてもよい。本発明の一実施形態によれば、液体処理組成物は、少なくとも1つの酸および水を含む。本発明の別の実施形態によれば、液体処理組成物は、少なくとも1つの酸および溶媒を含む。本発明の別の実施形態によれば、液体処理組成物は、少なくとも1つの酸、水および溶媒を含む。適切な溶媒は当業者に知られており、例えば、4から14個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、エーテルおよびジエーテル、グリコール、アルコキシル化グリコール、グリコールエーテル、アルコキシル化芳香族アルコール、芳香族アルコール、これらの混合物、または水とのこれらの混合物である。1つの例示的な実施形態によれば、液体処理組成物は、リン酸、エタノールおよび水を含み、好ましくは液体処理組成物は、液体処理組成物の総重量に基づいて、30から50重量%のリン酸、10から30重量%のエタノールおよび25から25重量%の水を含む。別の例示的な実施形態によれば、液体処理組成物は、硫酸、エタノールおよび水を含み、好ましくは、液体処理組成物は、液体処理組成物の総重量に基づいて、1から10重量%の硫酸、10から30重量%のエタノールおよび70から90重量%の水を含む。
【0165】
一実施形態によれば、液体処理組成物は、液体処理組成物の総重量に基づいて0.1から100重量%の量、好ましくは1から80重量%の量、より好ましくは2から50重量%の量、最も好ましくは5から30重量%の量で少なくとも1つの酸を含む。
【0166】
液体処理組成物はさらに、少なくとも1つの酸の他に、蛍光色素、りん光色素、紫外線吸収色素、近赤外線吸収色素、サーモクロミック色素、ハロクロミック色素、金属イオン、遷移金属イオン、磁性粒子、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。このような追加の化合物は、特定の光吸収特性、電磁放射線反射特性、蛍光特性、りん光特性、磁気特性、導電率、白色度、輝度および/または光沢などの追加の機能を有する創出された隠しパターンを備えることができる。
【0167】
方法工程c)
本発明の方法の工程c)によれば、液体処理組成物は、隠しパターンを形成するためにインクジェット印刷によって予め選択されたパターンの形態で少なくとも1つの外面上に適用される。
【0168】
液体処理組成物は、当該技術分野で知られているいずれかの適切なインクジェット印刷技術によって、少なくとも1つの外面上に適用することができる。一実施形態によれば、液体処理組成物は、連続インクジェット印刷、間欠的インクジェット印刷および/または液滴オンデマンドインクジェット印刷によって適用される。
【0169】
本発明の要件は、液体処理組成物が1000pl以下の体積を有する液滴の形態で適用され、液滴間隔が1000μm以下であることである。
【0170】
一実施形態によれば、液滴は、500plから1fl、好ましくは100plから10fl、より好ましくは50plから100fl、最も好ましくは10plから1plの体積を有する。別の実施形態によれば、液滴は1000pl未満、好ましくは600pl未満、より好ましくは200pl未満、さらにより好ましくは80pl未満、最も好ましくは20pl未満の体積を有する。さらに別の実施形態によれば、液滴は、1pl未満、好ましくは500fl未満、より好ましくは200fl未満、さらにより好ましくは80fl未満、最も好ましくは20fl未満の体積を有する。
【0171】
一実施形態によれば、液滴間隔は10nmから500μm、好ましくは100nmから300μm、より好ましくは1μmから200μm、最も好ましくは5μmから100μmである。別の実施形態によれば、液滴間隔は800μm未満、より好ましくは600μm未満、さらにより好ましくは400μm未満、最も好ましくは80μm未満である。さらに別の実施形態によれば、液滴間隔は500nm未満、より好ましくは300nm未満、さらにより好ましくは200nm未満、最も好ましくは80nm未満である。液滴間隔はまたゼロにすることができ、これは液滴が完全に重なることを意味する。
【0172】
当業者であれば、液滴体積を制御することによって液滴直径を制御することができ、従って液体処理組成物で処理される領域の直径を制御できることを理解する。2つの連続液滴間の距離は、液滴間隔によって決定される。従って、液滴の体積および液滴の間隔を変化させることによって、パターンの解像度を調整することができる。
【0173】
一実施形態によれば、隠しパターンは、xおよびy方向に少なくとも150dpi、好ましくはxおよびy方向に少なくとも300dpi、より好ましくはxおよびy方向に少なくとも600dpi、さらにより好ましくはxおよびy方向に少なくとも1200dpi、最も好ましくはxおよびy方向に少なくとも2400dpiまたはxおよびy方向に少なくとも4800dpiの解像度を伴って形成される。
【0174】
液体処理組成物の少なくとも1つの外面への適用は、基材の表面温度(これは室温、即ち20±2℃の温度である。)、または高温、例えば約60℃で行うことができる。高温で方法工程c)を行うことは、液体処理組成物の乾燥を促進することがあり、従って、製造時間を短縮する可能性がある。一実施形態によれば、方法工程c)は、5℃を超える、好ましくは10℃を超える、より好ましくは15℃を超える、最も好ましくは20℃を超える基材表面温度で行われる。一実施形態によれば、方法の工程c)は、5から120℃の範囲、より好ましくは10から100℃の範囲、より好ましくは15から80℃の範囲、最も好ましくは20から60℃の範囲の基材表面温度で行われる。
【0175】
一実施形態によれば、工程c)は、インクリザーバからプリントヘッドを通って少なくとも1つの外面に液体処理組成物を適用する工程を含む。好ましくは、インクリザーバおよび/またはプリントヘッドの温度は5℃超過、好ましくは10℃から100℃、より好ましくは15℃から80℃、最も好ましくは20℃から60℃である。
【0176】
本発明の方法によれば、液体処理組成物は、予め選択されたパターンの形態で少なくとも1つの外面上に適用される。本発明の一実施形態によれば、予め選択されたパターンは、1次元バーコード、2次元バーコード、3次元バーコード、セキュリティマーク、数字、文字、英数字記号、ロゴ、画像、形状またはデザインである。パターンは、150dpi超過、好ましくは300dpi超過、より好ましくは600dpi超過、さらにより好ましくは1200dpi超過、最も好ましくは2400dpi超過または4800dpi超過の解像度を有していてもよい。
【0177】
いかなる理論にも束縛されることなく、液体処理組成物を少なくとも1つの外面に適用することにより、外面の塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物が、処理組成物に含まれる少なくとも1つの酸と反応すると考えられる。これにより、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類金属化合物は少なくとも部分的に酸塩に変換され、元の材料と比べて異なる光散乱特性を有することができる。塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物がアルカリまたはアルカリ土類カーボネートである場合、例えば、化合物は酸処理によって非カーボネートアルカリまたはアルカリ土類塩に変換される。
【0178】
本発明者らは、驚くべきことに、インクジェット印刷技術を使用することによって、処理組成物の非常に小さな液滴を少なくとも1つの外面に適用することができることを見出し、これは、外面の小さな領域でさえも、周囲の表面構造に影響を与えることなく、非常に精密に局所的に被覆できる。これにより、少なくとも1つの外面上に高解像度パターンを創出することができる。さらに、本発明の方法は、従来のインクを本発明の液体処理組成物に置き換えるだけで、従来のインクジェットプリンタで行うことができるという利点を有する。従って、本発明の方法は、既存の印刷設備で実施することができ、コストを浪費する必要もなく、既存のインクジェット印刷ラインの時間のかかる修正も必要としない。
【0179】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、創出されたパターンは、基材の表面に対して特定の角度で見たときにのみ可視であったが、基材の表面に対して他の角度で見たときは隠れることを見出した。言い換えれば、本発明は、一見すると見ることができないが、視野角を変えるときに容易に検出できる、隠しパターンを基材上に創出する可能性を提供する。従って、潜在的な偽造者はパターンの存在を知らないかもしれないが、訓練された人は特別な道具を使用せずに視覚検査だけでただちにパターンを識別することができる。本発明の方法によって創出された隠しパターンは、複写機を使用して複写することによっては複写できないという利点も有する。
【0180】
さらに、本発明は、さらなる化合物を液体処理組成物に添加することにより、このパターンに付加的な機能を付与する可能性を提供する。例えば、パターンは、UV吸収色素を添加することによってUV光下で検出することができ、または磁性粒子または導電性粒子を添加することによって機械で読み取り可能とすることができる。本発明のさらなる利点は、創出された隠しパターンが、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物の対応する酸塩への変換によりエンボス構造を有することができ、視覚障害者および弱視のユーザが触れることができるパターンを創出する可能性を提供する。
【0181】
方法工程c)に従って液体処理組成物を適用することにより、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物を水不溶性塩または水溶性塩に変換することができる。
【0182】
一実施形態によれば、隠しパターンは、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物の酸塩を含む。別の実施形態によれば、隠しパターンは、非カーボネートアルカリまたはアルカリ土類塩、好ましくは不溶性の非カーボネートアルカリまたはアルカリ土類塩を含む。好ましい実施形態によれば、隠しパターンは、非炭酸カルシウム塩、好ましくは不溶性の非炭酸カルシウム塩を含む。本発明の意味において、「水不溶性」材料は、脱イオン水と混合し、0.2μmの孔径を有するフィルタ上で20℃で濾過して液体濾液を回収する場合に、この液体濾液100gを95から100℃で蒸発させた後に0.1g以下の回収固体材料を与える材料として定義される。「水溶性」材料は、この液体濾液100gを95から100℃で蒸発させた後に、0.1gを超える回収固体材料の回収をもたらす材料と定義される。
【0183】
追加の方法工程
本発明の一実施形態によれば、方法は、少なくとも1つの表面改質領域の上方に保護層および/または印刷層を適用する工程d)をさらに含む。保護層および/または印刷層は、透明層、半透明層、または不透明層であり得る。
【0184】
本発明の一実施形態によれば、方法は、少なくとも1つの表面改質領域の上方に保護層を適用する工程d)をさらに含む。
【0185】
保護層は、望ましくない環境的影響または機械的摩耗から下層の隠しパターンを保護するのに適したいずれかの材料で作製できる。適切な材料の例は、樹脂、ワニス、シリコーン、ポリマー、金属箔、またはセルロース系材料である。
【0186】
保護層は、当該技術分野で既知であり、保護層の材料に適したいずれか方法によって隠しパターンの上に適用されてもよい。好適な方法は、例えばエアーナイフコーティング、静電コーティング、計量サイズプレス、フィルムコーティング、スプレーコーティング、押出コーティング、巻線ロッドコーティング、スロットコーティング、スライドホッパーコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、高速コーティング、積層、印刷、接着結合などである。
【0187】
本発明の一実施形態によれば、保護層は、隠しパターンおよび周囲の外面の上に適用される。
【0188】
一実施形態によれば、保護層は、除去可能な保護層である。
【0189】
本発明の別の実施形態によれば、方法は、少なくとも1つの表面改質領域の上方に印刷層を適用する工程d)をさらに含む。
【0190】
印刷層は、当業者に知られているいずれかの適切な印刷技術によって適用することができる。例えば、印刷層は、インクジェット印刷、オフセット印刷、輪転グラビア印刷、フレキソ印刷、またはスクリーン印刷によって創出できる。一実施形態によれば、印刷層は、インクジェット印刷層、オフセット印刷層、輪転グラビア印刷層、またはフレキソ印刷層である。オフセットまたは輪転グラビアなどの印刷技術によって適用されるインクの量は、依然として表面改質領域の厚さ、即ち隠しパターンよりもはるかに低いことが当業者には理解される。言い換えれば、インクの量は、ボイドを充填し、隠しパターンを消失させるには低すぎる。従って、印刷層によって部分的または完全に覆われた隠しパターンは、基材の表面に対して第2の角度から見たときに依然として見ることができる。
【0191】
本発明のさらなる実施形態によれば、工程a)で提供される基材は、第1の面に第1の外面を含み、裏面に第2の外面を含み、第1および第2の外面は、塩形成性のアルカリまたはアルカリ化合物を含み、工程c)において、少なくとも1つの酸を含む液体処理組成物を第1面および裏面の第1および第2の外面に適用して、第1面および裏面に隠しパターンを形成する。工程c)は、それぞれの面で別々に行われてもよく、または第1の面および裏面で同時に行われてもよい。
【0192】
本発明の一実施形態によれば、方法工程c)は、異なるまたは同じ液体処理組成物を用いて2回以上行われる。これにより、異なる特性を有する異なる隠しパターンを作成することができる。
【0193】
隠しパターン
本発明の一態様によれば、本発明による方法によって得られる隠しパターンを含む基材が提供される。
【0194】
本発明のさらなる態様によれば、隠しパターンを含む基材が提供され、基材が、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物を含む少なくとも1つの外面を含み、前記少なくとも1つの外面は少なくとも1つの隠しパターンを含み、前記隠しパターンは、この塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物の酸塩を含む。好ましくは、塩形成性アルカリまたはアルカリ土類化合物は、アルカリまたはアルカリ土類カーボネート、好ましくは炭酸カルシウムであり、表面改質領域は非カーボネートアルカリまたはアルカリ土類塩、好ましくは非炭酸カルシウム塩を含む。
【0195】
いずれの理論にも縛られることなく、本発明者らは、隠しパターンおよび周囲の外面の異なる光散乱特性のために、隠しパターンは、基材の表面に対して第1の角度で見たときに不可視であり、基材の表面に対して第2の角度から見たときは可視であると考えられる。一実施形態によれば、隠しパターンは、基材の表面に対して80°から100°、好ましくは約90°の角度で見たときに不可視であり、基材の表面に対して10°から50°、好ましくは20から30°の角度で見たときに可視である。好ましくは、隠しパターンは周囲光の下で見られる。視野角が定義される基材の表面は、隠しパターンが適用される表面、即ち基材の少なくとも1つの外面である。一実施形態によれば、隠しパターンは、周囲光の下で基材の表面に対して第1の角度で見たときに、肉眼または裸眼では不可視であり、周囲光の下で基材の表面に対して第2の角度で見たときに、肉眼または裸眼では可視である。
【0196】
一実施形態によれば、隠しパターンは、基材の表面に対して80°から100°、好ましくは約90°の角度で照明されたときに不可視であり、基材の表面に対して10°から50°の角度、好ましくは20から30°の角度で照明されたときに可視である。一実施形態によれば、隠しパターンは、基材の表面に対して第1の角度で照明されたときに、肉眼または裸眼では不可視であり、基材の表面に対して第2の角度で照明されたときに、肉眼または裸眼では可視である。
【0197】
追加的に、特に、隠しパターンが、蛍光色素、りん光色素、紫外線吸収色素、近赤外線吸収色素、サーモクロミック色素、ハロクロミック色素、金属イオン、遷移金属イオン、磁性粒子またはこれらの混合物などのさらなる化合物を含む場合、隠しパターンは、さらなる態様において周囲外面とは異なり得る。
【0198】
一実施形態によれば、隠しパターンは、表面粗さ、光沢、光吸収、電磁放射線反射、蛍光、りん光、磁気特性、導電率、白色度および/または明るさにおいてコーティング層と異なる。これらの識別可能な特性は、例えば、適切な検出器を使用してUV光または近赤外光の下で、追加または代替の条件で隠しパターンを検出するために利用することができ、機械で読み取り可能にすることができる。
【0199】
一実施形態によれば、隠しパターンは、セキュリティ機能および/または装飾機能、好ましくは1次元バーコード、2次元バーコード、3次元バーコード、セキュリティマーク、数字、文字、英数字記号、ロゴ、画像、形状またはデザインを含む。本明細書では、「セキュリティ機能」という用語は、この機能が認証の目的で使用されることを意味し、一方で「装飾的機能」は、この機能が主に認証のために提供されるが、主に画像または装飾目的のために提供されることを意味する。
【0200】
一実施形態によれば、隠しパターンは可変情報を表示する。別の実施形態によれば、可変情報は、秘密情報および/または公然情報を含む。一実施形態によれば、隠しパターンはエンボス構造を含む。
【0201】
隠しパターンは、光学的に可変なフィーチャ、エンボス、透かし、スレッド、またはホログラムなどの他のセキュリティ機能と組み合わせてもよい。
【0202】
一般に、本発明の隠しフィーチャを含む基材は、偽造、模造または複製を受けるいずれかの製品に使用され得る。さらに、本発明の隠しフィーチャを含む基材は、非セキュリティまたは装飾製品に使用されてもよい。
【0203】
本発明のさらなる態様によれば、本発明による隠しパターンを含む基材を含む製品が提供され、製品は、ブランド製品、セキュリティ文書、非セキュア文書、または装飾製品であり、好ましくは製品は香水、薬物、タバコ製品、アルコール性薬物、医薬品、食用製品、瓶、衣服、包装、容器、スポーツ用品、玩具、ゲーム、携帯電話、CD、DVD、ブルーレイディスク、機械、道具、自動車部品、ステッカー、ラベル、タグ、ポスター、パスポート、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、債券、チケット、税スタンプ、紙幣、証明書、ブランド認証タグ、名刺、グリーティングカード、または壁紙である。
【0204】
既に上述したように、本発明による隠しパターンは、広範囲の用途に適している。当業者は、所望の用途のための隠しパターンのタイプを適切に選択する。
【0205】
本発明の一実施形態によれば、本発明による隠しパターンを含む基材は、セキュリティ用途、公然セキュリティ要素、秘密セキュリティ要素、ブランド保護、マイクロレタリング、マイクロイメージング、装飾用途、芸術的用途、ビジュアル用途、または包装用途で使用される。
【0206】
本発明の範囲および関心は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図し、非限定的な以下の図および実施例に基づいてよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0207】
図1】10plの液滴体積を用いて異なる液滴間隔を有する液体処理組成物でインクジェット印刷されたコーティング層を含む表面の走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真を示す。図中の数字は、特定の印刷領域の液滴間隔(μm単位)を示す。
図2】1plの液滴体積を用いて異なる液滴間隔を有する液体処理組成物でインクジェット印刷されたコーティング層を含む表面の走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真を示す。図中の数字は、特定の印刷領域の液滴間隔(μm単位)を示す。
図3】コーティング層とロゴの形態の隠しパターンとを含む表面の走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真を示す。
図4】コーティング層とロゴの形態の隠しパターンとを含む表面の光学顕微鏡写真を示す。
図5】コーティング層とロゴの形態の隠しパターンとを含む表面の光学顕微鏡写真を示す。
図6】コーティング層とロゴの形態の隠しパターンとを含む表面の光学顕微鏡写真を示す。
図7】上部周囲光で照明された隠しパターンを含む包装箱の写真を示す。
図8】基材の表面に対して35°の角度で周囲光で照明された隠しパターンを含む包装箱の写真を示す。
図9】基材の表面に対して20°の角度で周囲光で照明された隠しパターンを含む包装箱の写真を示す。
図10】2つの栄養補助錠剤の写真を示し、右の錠剤は、上部周囲光で照明された隠しパターンを含む。
図11】2つの栄養補助錠剤の写真を示し、右の錠剤は、錠剤の表面に対して20°の角度で周囲光で照明された隠しパターンを含む。
図12】基材の表面に対して20°の角度で周囲光で照明された隠しパターンおよびオフセットオーバプリントを含む印刷基材の写真を示す。
図13】基材の表面に対して20°の角度で周囲光で照明された隠しパターンおよび輪転グラビアオーバプリントを含む印刷基材の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0208】
1.測定方法
以下では、実施例で実施される測定方法について説明する。
【0209】
走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真
調製されたパターン化試料を、Sigma VP電界放出走査型電子顕微鏡(Carl Zeiss AG,Germany)および約50Paのチャンバ圧力を有する変圧二次電子検出器(VPSE)によって調べた。
【0210】
光学顕微鏡写真
調製されたパターン化試料をLeica MZ16A双眼実体顕微鏡(Leica Microsystems Ltd.,Switzerland)で検査した。
【0211】
X線回折(XRD)分析
サンプルは、Braggの法則に従うBruker D8 Advance粉末回折計で分析した。この回折計は、2.2kWのX線管、試料ホルダー、θ−θゴニオメーターおよびVANTEC−1検出器から構成されていた。ニッケルフィルタCu Kα線をすべての実験に用いた。プロファイルは2θで毎分0.7°の走査速度を用いて自動的に記録されたチャートであった(XRD GV_7600)。得られた粉末回折パターンを、ICDD PDF 2データベース(XRD LTM_7603)の基準パターンに基づいて、DIFFRACsuiteソフトウェアパッケージEVAおよびSEARCHを用いて鉱物含有量によって分類した。
【0212】
2.材料
塩形成性アルカリ土類化合物
CC1:Omya AG,Switzerlandから市販されている固形分含有量78%の粉砕炭酸カルシウム(d50:1.5μm、d98:10μm)、予備分散スラリー。
【0213】
CC2:Omya AG,Switzerlandから市販されている固形分含有量78%の粉砕炭酸カルシウム(d50:0.7μm、d98:5μm)、予備分散スラリー。
【0214】
CC3:Omya AG,Switzerlandから市販されている固形分含有量72%のアラゴナイト系沈降炭酸カルシウム(A−PCC)(d50:0.45μm、d98:2μm)、予備分散スラリー。
【0215】
CC4:固形分含有量55%の粉砕炭酸カルシウム(d50:0.21μm、d98:0.85μm)、予備分散スラリー。
【0216】
CC5:Omya AG,Switzerlandから市販されている固形分含有量78%の粉砕炭酸カルシウム(d50:0.5μm、d98:3μm)、予備分散スラリー。
【0217】
KA1:Omya AG,Switzerlandから市販されている固形分含有量72%、細かさ:45μmシーブ上の残留物(ISO 787/7)、粒子<2μm(Sedigraph 5120)である予備分散したカオリンスラリー。
【0218】
バインダ
B1:Cargill,USAから市販されているデンプン(C*−Film 07311)。
【0219】
B2:BASF,Germanyから市販されているスチレン−ブタジエンラテックス(Styronal D628)。
【0220】
B3:BASF,Germanyから市販されているレオロジー調整剤(Sterocoll FS)。
【0221】
表面コーティング基材
S1:Synteape/Yupo,Oji−Yuka Synthetic Paper Company Ltd.,Japanから市販されている不透過性ポリプロピレン可撓性フィルム(坪量:62g/m)。
【0222】
S2:Ziegler Papier,Switzerlandから市販されているZ−Offsetkarton、Z−Mail Supra(坪量170g/m)。
【0223】
基材S1または基材S2のそれぞれに、以下の表1に示す組成を有する1つ以上のコーティング層を備えさせることによって、表面コーティング基材を調製した。コーティングは、卓上K202コントロールコーター(RK PrintCoat Instruments Ltd.,Great Britain)を用いて行った。
【0224】
【表1】
【0225】
【表2】
【0226】
S3:90g/mの坪量を有するダブルコーティング紙。ダブルコーティングされたベースボードのプレコートは、10g/mのコート重量を有し、100pphのCC1および6pphのB2から構成された。ダブルコーティングされたベースボードのトップコートは、8.5g/mのコート重量を有し、100pphのCC5および8pphのB2から構成された。
【0227】
液体処理組成物
L1:41重量%のリン酸、23重量%のエタノールおよび36重量%の水(重量%は液体処理組成物の総重量に基づく)を含む。
【0228】
L2:3.7重量%の硫酸、19.2重量%のエタノール、77.1重量%の水(重量%は液体処理組成物の総重量に基づく)を含む。
【実施例】
【0229】
3.実施例
[実施例1]−アレイのインクジェット印刷
アレイ形態の予め選択されたパターンが、液体処理組成物L1またはL2のいずれかを適用することによって表面コーティング基材1上に創出された。液体処理組成物は、1plまたは10plのいずれかの液滴体積を有するカートリッジベースのインクジェットプリントヘッドを備えたFujifilm Dimatix Inc.,USAのDimatix Materials Printer(DMP)を使用したインクジェット印刷によって基材上に堆積された。印刷方向は、左から右、一度に1列(行)であった。液体処理組成物を、それぞれ1plおよび10plの液滴体積で、異なる液滴間隔を用いて基材上に適用した。このプリントの結果は視覚検査されたが、以下の表3および表4にまとめられている。
【0230】
【表3】
【0231】
【表4】
【0232】
図1および2は、液体処理組成物L1で印刷された基材の走査電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真を示す。図の上部の数字は、特定のパターンの液滴間隔(μm)を示す。この画像は、液滴体積および液滴間隔充填領域を変化させることによって、個々の行または個々のドットを調製することができることを明確に示している。さらに、図2は、液体処理組成物の1滴が堆積された表面領域の拡大断面を示す。この拡大から、処理された表面領域の構造は周囲の表面構造とは異なることがわかる。
【0233】
回転可能なPMMA試料ホルダリングを用いて、液体処理組成物L1、液滴体積10plおよび液滴間隔10、15、20、25および30μmで印刷された基材の印刷領域でX線回折(XRD)測定を行った。測定されたデータセットとICDD基準パターンとの比較は、すべてのサンプルが、液体処理組成物の適用によって形成されたカルサイトおよび追加の相からなることを明らかにした。結果を以下の表5に要約する。
【0234】
【表5】
【0235】
この結果は、表面コーティング基材の表面が、液体処理組成物L1の適用によって改質され、隠しパターンが、塩形成性アルカリ土類化合物炭酸カルシウムの酸塩を含むことを確認する。XRDで測定された面積は直径6mmの円であり、分析は基材を「貫通する」(最外表面のみならず分析される)ため、液滴間隔が小さくなるにつれて(面積当たりの量が増大するにつれて)、未変換炭酸カルシウム(カルサイト)の残存量が減少する傾向がある。面積当たりのリン酸の量が多いほど、リン酸含有化合物は相対的に増加する。
【0236】
[実施例2]−ロゴの形態の隠しパターンのインクジェット印刷
液体処理組成物L1を適用することによって、基材1から4上に、ロゴ、2次元バーコードおよびセキュリティマークの形態の予め選択されたパターンを創出した。液体処理組成物は、それぞれ1plまたは10plの液滴体積を有するカートリッジベースのインクジェットプリントヘッドを備えたFujifilm Dimatix Inc.,USAのDimatix Materials Printer(DMP)を使用したインクジェット印刷によって基材上に堆積された。印刷方向は、左から右、一度に1列(行)であった。液体処理組成物を、液滴堆積が1pl、液滴間隔が15μmで表面コーティング基材1上に、および液滴体積10plおよび液滴間隔30μmで表面コーティング基材2から4上に適用した。
【0237】
これらのプリントの結果を走査型電子顕微鏡および光学顕微鏡で検査した。創出されたロゴのSEM顕微鏡写真を図3に示し、創出されたロゴの光学顕微鏡画像を図4から6に示す。これらの画像からわかるように、液体処理組成物の適用は表面コーティング基材上にパターンをもたらし、これは、残りの非印刷領域上にはっきりと現れる。
【0238】
上部周囲光で照明された印刷基材2の写真を図7に示す。この図からわかるように、これらの隠しパターンは、この基材の表面に対して約90°の照明角では人間の目には不可視である。図8および図9は、それぞれ35°±5°および20°±5°の照明角で同じ印刷基材を示す。これらの図は、照明角を減少させることによって、隠しロゴ(1)、隠し2次元バーコード(2)および隠しセキュリティマーク(3)が可視になるようになることを示している。照明のために、RB 5055 HF照明ユニット(Kaiser Fototechnik GmbH & Co.KG,Germany)を使用した。印刷基材は、照明ユニットの中央テーブルの中央に配置され、2つのランプのうちの1つで照明され、基材とランプの中心との間の距離は約50cmであった。
【0239】
[実施例3]−錠剤上のロゴの形態の隠しパターンのインクジェット印刷
液体処理組成物L1を適用することによって、ロゴの形態の予め選択されたパターンが、市販の発泡性炭酸カルシウム含有錠剤(Calcium−Sandoz(R)forte 500 mg,Hexal AG,Germany)の表面上に創出された。液体処理組成物は、10plの液滴体積を有するカートリッジベースのインクジェットプリントヘッドを備えたFujifilm Dimatix Inc.,USAのDimatix Materials Printer(DMP)を使用したインクジェット印刷によって錠剤上に堆積された。印刷方向は、左から右、一度に1列(行)であった。液体処理組成物を、液滴体積10plおよび液滴間隔25μmで錠剤上に適用した。
【0240】
このプリントの結果を視覚検査した。上部の周囲光で照明された印刷されていない元の錠剤(左の錠剤)と印刷された錠剤(右の錠剤)との写真を図10に示す。この図からわかるように、これらの隠しパターンは、この基材の表面に対して約90°の照明角では人間の目には不可視である。図11は、20°±5°の照明角での同じ錠剤を示す。この図は、照明角を減少させることによって、右の錠剤上の隠しロゴが可視になることを示している。照明のために、RB 5055 HF照明ユニット(Kaiser Fototechnik GmbH & Co.KG,Germany)を使用した。印刷された錠剤は、照明ユニットの中央テーブルの中央に配置され、2つのランプのうちの1つで照明され、錠剤とランプの中心との間の距離は約50cmであった。
【0241】
[実施例4]−隠しパターンおよびオフセットオーバプリントのインクジェット印刷
液体処理組成物L1を適用することにより、基材S3上にロゴの形態の予め選択されたパターンおよび四角形を創出した。液体処理組成物は、10plの液滴体積を有するカートリッジベースのインクジェットプリントヘッドを備えたFujifilm Dimatix Inc.,USAのDimatix Materials Printer(DMP)を使用したインクジェット印刷によって基材上に堆積された。印刷方向は、左から右、一度に1列(行)であった。液体処理組成物を、液滴体積10plで基材上に適用した。正方形の液滴間隔は25、30、40、50および80μmであり、ロゴの液滴間隔は25μmであった。
【0242】
パターンは、市販のオフセットインク(Novavit(R)X 800 Skinnex(R),Flint Group Germany GmbH,Germany)およびプリンタSeGan ISITインク表面相互作用試験機(Segan,Great Britain)を用いてタック測定ユニットなしで100%被覆でオーバプリントした。
【0243】
このプリントの結果を視覚検査した。20°±5°の角度で照明された印刷基材の写真を図12に示す。この図からわかるように、この角度で見たとき、人間の目には隠しパターンが可視である。基材の表面に対して約90°の照明角では、正方形およびロゴは不可視になった(図示せず)。照明のために、RB 5055 HF照明ユニット(Kaiser Fototechnik GmbH & Co.KG,Germany)を使用した。印刷された基材は、照明ユニットの中央テーブルの中央に配置され、2つのランプのうちの1つで照明され、基材とランプの中心との間の距離は約50cmであった。
【0244】
[実施例5]−隠しパターンおよび輪転グラビアオーバプリントのインクジェット印刷
液体処理組成物L1を適用することにより、基材S3上にロゴの形態の予め選択されたパターンおよび四角形を創出した。液体処理組成物は、10plの液滴体積を有するカートリッジベースのインクジェットプリントヘッドを備えたFujifilm Dimatix Inc.,USAのDimatix Materials Printer(DMP)を使用したインクジェット印刷によって基材上に堆積された。印刷方向は、左から右、一度に1列(行)であった。液体処理組成物を、液滴体積10plで基材上に適用した。正方形の液滴間隔は30、40、および50μmであり、ロゴの液滴間隔は30μmであった。
【0245】
商業的に入手可能な輪転グラビアインク(10−115395−5.1650,Siegwerk Druckfarben AG & Co.KGaA,Germany)および実験室グラビア印刷システムLabratester I(nsm Novert Schlafli AG,Switzerland)を使用して、100%から0%までの輪転グラビアグラジェントでパターンをオーバプリントした。
【0246】
このプリントの結果を視覚検査した。20°±5°の角度で照明された印刷基材の写真を図13に示す。この図からわかるように、この角度で見たとき、人間の目には隠しパターンが可視である。基材の表面に対して約90°の照明角では、正方形およびロゴは不可視になった(図示せず)。照明のために、RB 5055 HF照明ユニット(Kaiser Fototechnik GmbH & Co.KG,Germany)を使用した。印刷された基材は、照明ユニットの中央テーブルの中央に配置され、2つのランプのうちの1つで照明され、基材とランプの中心との間の距離は約50cmであった。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
図11
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図13