特許第6496838号(P6496838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6496838短距離用途のためのアンテナ及びそのようなアンテナの利用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6496838
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】短距離用途のためのアンテナ及びそのようなアンテナの利用方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/42 20060101AFI20190401BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20190401BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   H01Q9/42
   H01Q1/38
   H01Q1/50
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-549667(P2017-549667)
(86)(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公表番号】特表2018-512804(P2018-512804A)
(43)【公表日】2018年5月17日
(86)【国際出願番号】EP2016000192
(87)【国際公開番号】WO2016150537
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2017年11月8日
(31)【優先権主張番号】102015003784.6
(32)【優先日】2015年3月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516089658
【氏名又は名称】ディーター キリアン
【氏名又は名称原語表記】Dieter KILIAN
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ディーター キリアン
【審査官】 橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−129856(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0164824(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0103056(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0303136(US,A1)
【文献】 特開2012−138966(JP,A)
【文献】 特開2012−085215(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/141910(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
短距離用途、特に、RFID用途のためのアンテナであって、
内部導体と、該内部導体を同軸状に取り囲むシース導体とを有する細長い2極導体構造体と、
前記導体構造体の長手方向端部に配置された端子構造体と、
を備え、
前記端子構造体は、
上側部及び下側部を有する電気絶縁キャリアプレートと、
前記キャリアプレートの前記上側部上において前記キャリアプレートの第1の領域にわたって延在し、前記シース導体に接続されている導電性シース導体接続面と、
前記キャリアプレートの前記上側部上において、前記キャリアプレートの前記第1の領域から離間した前記キャリアプレートの第2の領域にわたって延在し、前記内部導体に接続されている導電性内部導体接続面と、
前記キャリアプレートの前記下側部上において、前記キャリアプレートの第3の領域にわたって延在する導電性結合導体面であって、前記第3の領域は、前記キャリアプレートの前記第1の領域及び前記第2の領域の少なくとも一部分にそれぞれ重なっている、導電性結合導体面と、
前記キャリアプレートの前記上側部上の前記内部導体接続面を前記キャリアプレートの前記下側部上の前記結合導体面に接続する少なくとも1つのスループレーティングと、を備え
容量結合が前記導電性結合導体面と前記導電性シース導体接続面との間に実現される、アンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナであって、前記キャリアプレートは、細長い形状、特に矩形形状を有する、アンテナ。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナであって、前記第1の領域は、少なくとも部分的に、前記キャリアプレートの第1の長手方向端部に隣接して配置されている、アンテナ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のアンテナであって、前記第2の領域は、少なくとも部分的に、前記キャリアプレートの第2の長手方向端部に隣接して配置されている、アンテナ。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のアンテナであって、前記第2の領域は、前記キャリアプレートの長手方向にストリップ形状で延在する少なくとも1つのストリップセクションを備える、アンテナ。
【請求項6】
請求項2又は3に記載のアンテナであって、前記第3の領域は、前記キャリアプレートの長手方向にストリップ形状で延在する少なくとも1つのストリップセクションを備える、アンテナ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のアンテナであって、少なくとも1つのストリップセクションは、前記キャリアプレートの前記長手方向において一貫していない幅を有する、アンテナ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のアンテナであって、前記第3の領域は、前記第2の領域の少なくとも大部分に重なっている、アンテナ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のアンテナであって、前記シース導体は、該シース導体の長手方向に細長くされた接触エリアによって前記シース導体接続面に接続されている、アンテナ。
【請求項10】
請求項9に記載のアンテナであって、前記シース導体の前記長手方向に対して横方向の前記シース導体接続面の寸法は、前記接触エリアにおいて、前記シース導体の対応する寸法よりも大きい、アンテナ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のアンテナであって、前記内部導体接続面は、前記内部導体に接続された接続セクションと、該接続セクションに隣接して配置された複数のストリップ形状のブランチセクションとを備え、該ブランチセクションのそれぞれの端部は、少なくとも1つのそれぞれのスループレーティングによって前記結合導体面に接続されている、アンテナ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のアンテナであって、前記結合導体面は、少なくとも1つのスループレーティングに接続された接続セクションと、該接続セクションに隣接して配置された複数のストリップ形状のブランチセクションとを備え、該ブランチセクションは、前記シース導体接続面との重なり部分の分離した領域に延在する、アンテナ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のアンテナを、結合モードにおける進行波アンテナとして利用する方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のアンテナを、前記アンテナの周囲に位置する少なくとも1つのトランスポンダーとの通信及び/又は前記アンテナの周囲に位置するコンピューターネットワークの少なくとも1つの構成要素との通信のために利用する方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のアンテナを、前記アンテナと該アンテナの周囲に位置する少なくとも1つのデバイスとの間のエネルギーの送信のために利用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高周波数技術の分野に関し、特に、RFID等の短距離用途のアンテナに関する。本発明は、更に、そのようなアンテナを動作させる方法及びそのようなアンテナの利用に関する。
【0002】
本発明において、「短距離用途」という用語は、アンテナを利用することにより、5m未満、特に1m未満の距離にわたって電磁エネルギー及び/又は電磁信号の伝送を実現する適用例を特に指す。一方で、この距離は0.01mより長く、特に0.05mより長いことが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、簡単な手段を用いた、特に短距離にわたるエネルギー及び/又は情報の信頼性のある無線送信を実現するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、アンテナであって、
内部導体と、該内部導体を同軸状に取り囲むシース導体とを有する細長2極導体構造体(例えば、従来の「同軸ケーブル」)と、
前記導体構造体の長手方向端部に配置された端子構造体と、
を備え、
前記端子構造体は、
上側部及び下側部を有する電気絶縁キャリアプレートと、
前記キャリアプレートの前記上側部上において前記キャリアプレートの第1の領域にわたって延在し、前記シース導体に接続されている導電性シース導体接続面と、
前記キャリアプレートの前記上側部上において、前記キャリアプレートの前記第1の領域から離間した前記キャリアプレートの第2の領域にわたって延在し、前記内部導体に接続されている導電性内部導体接続面と、
前記キャリアプレートの前記下側部上において、前記キャリアプレートの第3の領域にわたって延在する導電性結合導体面であって、前記第3の領域は、前記キャリアプレートの前記第1の領域及び前記第2の領域の少なくとも一部分にそれぞれ重なっている、導電性結合導体面と、
前記キャリアプレートの前記上側部上の前記内部導体接続面を前記キャリアプレートの前記下側部上の前記結合導体面に接続する少なくとも1つのスループレーティングと、を備える、アンテナによって達成される。
【0005】
高周波数技術の分野では、内部導体と、この内部導体を同軸状に取り囲むシース導体とを有する細長2極導体構造体が、(例えば、従来の「同軸ケーブル」の形で)高周波数信号の伝送のための従来技術からよく知られている。
【0006】
そのような既知の同軸導体構造体は、終端インピーダンス(例えば、50Ω抵抗)が、それぞれの長手方向端部において、一方ではシース導体に接続され、他方では内部導体に接続されるといった方法で「正しく終端され」、このようにして形成された従来の端子構造体は、同軸構造体が妨害されず、シース導体(「ファラデー箱」)のシールド効果が末端部においても保持されるようにシース導体によって周囲を囲まれた領域内に存在する。高周波数(HF)信号(内部導体とシース導体との間に印加される)が、この導体構造体の反対側の長手方向端部に入力された場合、HF交流が、第1の端部、すなわち「接続端
部」から第2の端部、すなわち「末端部」に流れ、内部導体電流の大きさ(magnitude:振幅)と一致する大きさを有する電流がシース導体に印加されるが、反対方向に流れる。表皮効果に起因して、この「戻り電流」は、シース導体内に小さな侵入深さしか有さず、シース導体によって形成された導電性シールドに起因してどの地点においても外方に広がらない。
【0007】
しかしながら、この状況は、上述した導電性面と少なくとも1つのスループレーティングとを有するキャリアプレートによる同軸導体構造体の本発明の終端においては非常に異なる。
【0008】
この設計に起因して、同軸構造体の第2の端部(末端部)は遮断される(これは、従来技術から知られている同軸線路では常に回避されている)。シース導体の内側部に対して印加される戻り電流のための追加の戻り電流パスが、「シースをオープンする」ことによってシース導体の外側部に沿って実現される。この時、表皮効果によって、両方の電流がシース導体に完全に侵入することなく(シース導体の内側部及び外側部に)流れることが可能になる。シース導体上の「外部電流」は、この時、意外にも、内部導体内の元の「信号電流」と同相で実現することができる。これは、或る意味で、信号電流がシース導体の外側部に直接接続されているようなものである。2つの電流(内部導体内及びシース導体の外側部)は同相であるので、これは、コモンモード結合と呼ばれる場合もある。本発明の端子構造体は、位相平衡に加えて少なくともほぼ一致する大きさも理論上は達成されるように、シース導体の外側部の電流が最大にされる動作モードを実現することを有利に可能にする。アンテナの送信モードでは、「シース導体の外側部に方向転換されたHF交流」が、表面波又はシース波の形で第2の端部又は末端部から第1の端部の方向に戻って同軸構造体に沿って伝播することができ、特に、シース導体の周囲に集中した比較的強い電磁場を形成することができ、エネルギー及び/又は情報の無線送信に有利に用いることができる。いわゆる「結合モード」は、基本的に、シース導体からの電磁波の分離がこの動作モードにおいて起こらない場合に実現される。
【0009】
逆に、電磁HF信号は、本発明のアンテナを用いて受信することもでき、これらの信号は、アンテナ受信信号が同軸導体構造体の第1の端部において利用可能となるように、シース導体の外側部上に表面波を引き起こす。したがって、本発明のアンテナの動作に関する一実施の形態によれば、導体構造体の第1の端部が、アンテナを用いて送信されるアンテナ信号又はアンテナによって受信されるアンテナ信号のための送信機及び/又は受信機を接続する接続端部の形で実現され、端子構造体は、第1の端部の反対側にある導体構造体の第2の端部に接続されることが提案される。
【0010】
比較的単純な本発明の設計は、特に、短距離用途のための広帯域同軸進行波アンテナを実現することを有利に可能にする。
【0011】
本発明に関して、「進行波」という用語は、電磁波が、例えば、送信中に、同軸導体構造体の第2の端部からこの導体構造体の第1の端部に向かう方向に導体構造体に沿って進む、アンテナの前述の好ましい動作モードを指す。
【0012】
このように機能するアンテナの送信モードにおいて、すなわち、高周波数送信信号が接続端部(第1の端部)内に入力されたとき、内部導体とシース導体との間の導体構造体の第1の端部に印加された送信信号は、基本的に、従来の「同軸線路」と同様に、同軸導体構造体に沿ってその第2の端部に送信される。端子構造体によるシース導体への内部導体端部の結合に伴って第2の端部によって作成される導体構造体の不連続性によって、電磁表面波は、上述したように、(シース導体の外側部上を)導体構造体に沿って導体構造体の第1の端部の方向に戻って進む。
【0013】
この状況では、アンテナが、或る程度、それ自体の周囲に集中した電磁場(進行波)を生成するが、(電磁波を「分離する」ことに起因して)電磁エネルギーを非常に僅かしか放出しないか又は全く放出しないならば、すなわち、アンテナが前述の「結合モード」で動作されているならば、多くの興味深い用途にとって有利である。
【0014】
本発明のアンテナの「結合モード」動作の一実施の形態によれば、例えば、信号入力に起因して導体構造体の第2の端部に到達するエネルギーの50%よりも多くが、送信モードにおいて、「導体構造体にバインドされる」進行波の形で第2の端部から(第1の端部の方向に戻って)進むことが提案される。その結果、この場合には、第2の端部に到達するエネルギーの50%未満が、電磁波の形でアンテナによって放出される。
【0015】
本発明のアンテナの「結合モード」動作では、これに代えて又はこれに加えて、例えば、導体構造体の第1の端部(接続端部)における送信信号の入力に起因して入力されているエネルギーの40%よりも多くが、送信モードにおいて、導体構造体にバインドされる進行波の形で第2の端部から(第1の端部の方向に戻って)進むことが提案される。
【0016】
本発明のアンテナは細長導体構造体を有する。この導体構造体は、剛性であってもよいし、柔軟であってもよい。導体構造体は、少なくとも1つの剛性セクションと少なくとも1つの柔軟セクションとから構成されることも可能である。例えば、細長導体構造体の長さは、この導体構造体の(最大)断面寸法(例えば、直径)よりも約10倍〜約50000倍大きい場合がある。
【0017】
細長導体構造体の長さは、例えば、少なくとも0.05m、特に、少なくとも0.1mに等しくてもよい。実際には、この長さは、特に興味深い用途ではかなり大きい。ただし、用途の大部分については、この長さは、せいぜい200m、特にせいぜい100mもあれば十分である。
【0018】
一実施の形態では、細長導体構造体の長さ(又は以下で更に説明する信号送信/受信セクションの長さ)は、前述の進行波の意図した動作波長の少なくとも2倍、特に少なくとも5倍に等しいことが提案される。
【0019】
一実施の形態では、細長導体構造体の長さは、1GHzまでの意図した動作信号周波数においては、対応する波長の500倍以下、特に300倍以下に等しいことが提案される。一実施の形態によれば、この長さは、1GHzよりも高い動作周波数については、進行波の対応する動作波長の1000倍以下、特に500倍以下に等しいことが提案される。
【0020】
本発明のアンテナは、好ましくは、400MHz〜6GHzの範囲の動作周波数(送信モードにおけるアンテナ信号のキャリア周波数)とともに用いられる。一実施の形態では、この動作周波数は、例えば、860MHz〜960MHzの範囲にある(これは、多くのRFID用途の通常の動作周波数範囲である)。別の実施の形態では、用いられる動作周波数は、1GHz〜3GHzの範囲にあり、例えば、2.4GHzである。
【0021】
内部導体及びシース導体は、導電性を有する(例えば、金属製である)。最も単純な場合、内部導体は円形の断面を有し、シース導体は環状の断面を有する。
【0022】
内部導体及び/又はシース導体は、例えば、矩形、正方形又は長円形等の非円形の断面輪郭を有してもよい。
【0023】
内部導体は、中実で実現することもできるし、中空導体の形で実現することもできる。
【0024】
最も単純な場合、内部導体及び/又はシース導体は、導体構造体の長さにわたって一貫した断面を有する。
【0025】
電気絶縁体又は誘電体(例えば、空気を含む)が、内部導体とシース導体との間に径方向に配置されてもよい。以下では外側層又は「絶縁シース」と呼ばれる電気絶縁体(例えば、プラスチックからなる)が、好ましくは、内部導体と同様に好ましくは金属材料から作製されるシース導体の外側部に径方向に設けられる。
【0026】
端子構造体は、導体構造体の第2の端部上に配置されて、上述した形式で(「内部導体接続面」及び「シース導体接続面」によって)内部導体及びシース導体に電気的に接続される構造体である。アンテナの送信モードでは、端子構造体は、(シース導体の外側部に戻り表面波(returning surface waves)を生成するために)内部導体からエネルギーを「結合解除」し、このエネルギーをシース導体に「結合」するのに役立つ。
【0027】
端子構造体の設計に関して有利な実施の形態を以下に説明する。
【0028】
一実施の形態では、キャリアプレートは、細長形状、例えば矩形形状を有することが提案される。キャリアプレートの長さは、キャリアプレートの幅よりも大きくすることができ、例えば、少なくとも2倍又は3倍にすることができる。キャリアプレート(誘電体として機能する非導電領域)の厚さは、例えば、0.3mm〜2mmの範囲とすることができる。
【0029】
細長キャリアプレートの長手方向は、例えば、導体構造体端部の領域においては、導体構造体の長手方向と平行に又は連続して延在することができる。
【0030】
一実施の形態では、第1の領域(したがって、シース導体接続面)は、少なくとも部分的に、キャリアプレートの第1の長手方向端部に隣接して配置され、キャリアプレートのこの第1の長手方向端部は、好ましくは、導体構造体の前述の「第2の端部」の領域内に又は導体構造体のこの第2の端部に隣接して配置されるのに対して、第1の長手方向端部の反対側にあるキャリアプレートの第2の長手方向端部は、導体構造体の第2の端部からより遠く(正:farther)に配置されることが提案される。第1の領域は、好ましくは、キャリアプレートの長手方向を基準としてキャリアプレートの中心よりも遠くには延在しない。
【0031】
一実施の形態では、第2の領域(したがって、内部導体接続面)は、少なくとも部分的に、(第1の長手方向端部の反対側にある)キャリアプレートの第2の長手方向端部に隣接して配置されることが提案される。
【0032】
一変形形態では、第1の領域は、第1の長手方向端部に隣接して配置され、第2の領域は、キャリアプレートの第2の長手方向端部に隣接して配置され、これらの2つの領域間の隙間は、比較的大きく、例えば、キャリアプレート長の少なくとも50%に等しい。この変形形態では、内部導体は、前述の隙間を橋絡するために、すなわち、一体的に(すなわち、この領域において「シース導体を除去する」ことによって)又は内部導体の端部に別個に取り付けられた導電性「内部導体延長部」によって、導体構造体の第2の端部においてシース導体端部から延びて、第2の領域まで延在させることができる。
【0033】
別の変形形態では、第1の領域は、キャリアプレートの第1の長手方向端部に隣接して配置され、第2の領域は、部分的にのみ、キャリアプレートの第2の長手方向端部に隣接して配置され、比較的小さな隙間、例えば、キャリアプレート長の10%未満に等しい隙
間しか第1の領域と第2の領域との間に残らないように、第2の領域は、キャリアプレートの長手方向に比較的遠くまで延在する。
【0034】
上記変形形態も考慮に入れた一実施の形態では、第2の領域は、ストリップ形状でキャリアプレートの長手方向に延在する少なくとも1つのストリップセクションを備えることが提案される。このストリップセクションの長さは、好ましくは、キャリアプレート長の少なくとも50%に等しい。
【0035】
一実施の形態では、第3の領域(したがって、結合導体面)は、ストリップ形状でキャリアプレートの長手方向に延在する少なくとも1つのストリップセクションを備えることが提案される。
【0036】
最も単純な場合、前述のストリップセクションのそれぞれは、キャリアプレートの長手方向において一貫した幅を有することができる。例えば、対応するストリップセクションは、この場合に矩形に実現することができる。別の実施の形態では、少なくとも1つのストリップセクションは、キャリアプレートの長手方向において一貫していない幅を有することが提案される。一拡張形態では、ストリップセクション幅は、キャリアプレートの長手方向においてそれぞれ単調に増加するか又は単調に減少する。
【0037】
少なくとも1つのストリップセクションを有する実施の形態の別の拡張形態では、少なくとも1つのストリップセクションは、キャリアプレートの横方向において一貫していない長さを有することが提案される。
【0038】
これは、第3の領域(結合導体面)のストリップセクションに特に有利である。なぜならば、それによって、第3の領域と第1の領域との間の重なりの「一貫していない重なりの長さ」をキャリアプレートの横方向に実現することができるからであり、これは、通常、アンテナの動作中に送信及び受信されるHFアンテナ信号の使用可能な帯域幅を増加させるからである。
【0039】
結合導体面の一貫していない長さに代えて又はこれに加えて、一貫していない重なりの長さを達成するために、一貫していない長さを有するシース導体接続面を実現することも考えられる。
【0040】
一実施の形態では、(導体表面を結合する)第3の領域は、第2の領域(内部導体接続面)の少なくとも大部分に重なることが提案される。
【0041】
第3の領域は、第2の領域に完全に重なり、好ましくは、第2の領域を越えてかなり突出することさえも特に提案される。
【0042】
第2の領域及び第3の領域が、(少なくとも)1つのストリップセクションによってそれぞれ形成されている場合、第3の領域は、好ましくは、第2の領域の全長にわたって横方向において第2の領域を越えて突出する。
【0043】
一実施の形態では、シース導体は、その長手方向に細長くされた接触エリアによってシース導体接続面に接続(例えば、半田付け又は溶接)されることが提案される。
【0044】
この実施の形態の一拡張形態では、シース導体の長手方向に対して横方向(すなわち、キャリアプレートの長手方向に対して横方向)のシース導体接続面の寸法は、接触エリアでは、シース導体の対応する寸法よりも大きいことが提案される。このように、より大きな許容範囲が、製造プロセスにおいて、端子構造体への導体構造体の接続中に有利に達成
される。
【0045】
一実施の形態では、内部導体接続面は、内部導体に接続される接続セクションと、この接続セクションに隣接して配置される複数のストリップ形状ブランチセクションとを備え、これらのブランチセクションのそれぞれの端部は、それぞれ少なくとも1つのスループレーティングによって結合導体面に接続されることが提案される。
【0046】
この実施の形態の一拡張形態では、内部導体接続面は、2つのそのようなストリップ形状(例えば、それぞれ矩形)ブランチセクションを備え、それらのそれぞれの端部は、例えば、1つ以上のスループレーティングによって結合導体面に接続されている。代替の拡張形態では、内部導体接続面は、3つのストリップ形状ブランチセクションを備え、これらも、それぞれ、例えば矩形状に実現することもでき、1つ以上のスループレーティングによって結合導体面に接続することができる。
【0047】
複数のストリップ形状ブランチセクションが設けられる場合、これらのブランチセクションは、例えば、互いに平行に延在し、及び/又は互いに同一にそれぞれ成形されてもよい。
【0048】
一実施の形態では、結合導体面は、少なくとも1つのスループレーティングに接続された接続セクションと、この接続セクションに隣接して配置された複数のストリップ形状のブランチセクションとを備え、上記ブランチセクションは、シース導体接続面との重なり部分の分離した領域に延在することが提案される。
【0049】
この実施の形態の一拡張形態では、結合導体面は、2つのブランチセクションを備えることが提案される。別の拡張形態では、結合導体面は、3つのブランチセクションを備える。複数のブランチセクションは、例えば、互いに平行に延在し、及び/又は互いに同一にそれぞれ成形されてもよい。
【0050】
結合導体面が複数のブランチセクションを備える実施の形態の一拡張形態では、これらのブランチセクションは、個々のブランチセクションが第3の領域と第1の領域との間の重なりの「異なる重なりの長さ」を形成するように、異なる長さを有することが提案される。複数の更に接続されたブランチセクションを有する結合導体面の代わりに、端子構造体には、互いに分離した、隣接して延在する複数の結合導体面が設けられてもよい。
【0051】
好ましい実施の形態では、表面波減衰デバイスが、導体構造体の第2の端部からその長手方向において離間するように、例えば、(例えば、絶縁シースを取り囲む)シース導体の外周部上に配置される。
【0052】
そのような表面波減衰デバイスは、それによって、導体構造体に沿った前述の「戻り進行波」の領域を明確に画定して制限することができるので有利に設けられる。減衰デバイスは、到達する戻り進行波のエネルギーの少なくとも大部分を吸収するのに役立つ。一実施の形態では、減衰デバイスは、この目的で、シース導体の外周部を取り囲む少なくとも1つのフェライトリングを備える。特に、シース導体の外周部をそれぞれ取り囲む複数のフェライトリングを、導体構造体の長手方向に縦一列(相互の隙間の有無を問わない)に配置することも可能である。一拡張形態では、フェライトリング(又は複数のフェライトリングのうちの少なくとも1つ)は、導体構造体上に変位可能に配置される。
【0053】
シース導体を取り囲む少なくとも1つのフェライトリングに代えて又はこれに加えて、表面波減衰デバイスは、減衰ユニットも備えてもよい。この減衰ユニットは、細長2極同軸導体構造体内に挿入され、(容量素子及び/又は誘導素子及び/又は抵抗素子の)減衰
ネットワークを備える。
【0054】
一実施の形態では、表面波減衰デバイスは、シース導体の接地を備える。この接地は、例えば、シース導体の外周部上に配置された「接地カラー」によって実現することができる。そのような接地カラーは、例えば、分割された形式で実現することができ、当該接地カラーを取り付けるために互いに接続された(例えば、ネジ留めされた)2つのカラーハーフから構成することができる。
【0055】
表面波減衰デバイスが設けられる場合、同軸導体構造体の全長は、それによって、導体構造体の第1の端部と減衰デバイスとの間に延在する「信号線路セクション」と、減衰デバイスと導体構造体の第2の端部との間に延在する「信号送信/受信セクション」とに分割される。本発明の一拡張形態では、1つ以上の「不連続点」(進行波の実効インピーダンスのかなりの局所的な偏り)が信号送信/受信セクション内に設けられることが提案される。例えば、これらの不連続点のそれぞれも、上記で既述したようなフェライトリング又は同様のデバイスの形で実施することができる。この拡張形態の利点は、導体構造体に沿った進行波の伝播が、それによって、(例えば、「波形整形」について)所望の方法で影響を受ける可能性があるという点に見ることができる。
【0056】
比較的長い本発明のアンテナでは、表面波減衰デバイスの配置は、第2の導体構造体端部から第1の導体構造体端部に戻る進行波が、この場合に生じる不可避の強度損失に起因して第1の端部の近傍に達したときにもはや非常に高い強度を有しない限りにおいて不要とすることができる。ただし、アンテナに沿った1つ以上のロケーションにおいて、例えば、フェライトリング等の形で実施される上述した不連続点の配置は、この場合には、波伝播に意図的に影響を与えるために有利でもあり得る。
【0057】
上記で既述したように、本明細書において説明されるタイプのアンテナは、好ましくは、「結合モード」において進行波アンテナとして動作又は利用される。本発明のこの動作及び本発明のこの利用は、特に、例えば、アンテナの周囲に位置するトランスポンダー(例えば、RFIDトランスポンダー)との通信及び/又はアンテナの周囲に位置するコンピューターネットワークの構成要素との通信を実現することに役立つことができる。
【0058】
「結合モード」動作中、通信は、特に、最も厳密な意味での電磁放射によって実現されなくてもよく、代わりに、アンテナ範囲内に位置するシステム又はユニットと結合する波によって実現することができる。
【0059】
無線通信に代えて又はこれに加えて、そのようなシステム又はユニット(例えば、センサー、特に「インテリジェントセンサー」)の無線エネルギー供給も達成することができる。
【0060】
最も一般的な意味での本発明のアンテナの有利な利用は、例えば、短距離情報送信;短距離無線用途並びに建物及び車両内の無線用途、例えば、トンネル無線;列車、飛行機及び車両内のWLAN;RFID;短距離エネルギー送信、例えば、充電式電池の充電;無線センサー、スマートフォン等の無線エネルギー供給;電動自転車、電気自動車等の充電である。
【0061】
本発明の別の態様によれば、本明細書において説明されるタイプのアンテナは、より大きな技術デバイスに統合された通信構成要素として動作される。この技術デバイスは、例えば、キャビネット又はラック(特に、IT構成要素を有するキャビネット又はラック)からなるものであってもよいし、特に、ストックされる物品を格納する別の家具からなるものであってもよい。この技術デバイスは、更に、例えば、幾つかの特定の壁、ブレース
、ドア又はドアフレーム等の建物又は車両の部品からなるものであってもよい。この場合、このアンテナは、特に、アンテナの近接した周囲に位置するトランスポンダー(例えば、RFIDトランスポンダー)との通信に用いることができ、そのようなトランスポンダーは、例えば、対応する技術デバイスの領域に格納又は(技術デバイスの外部又は内部に)移動される物体上に配置される。このように、アンテナとそれぞれのトランスポンダーとの間の通信によって、特に、在庫表を作成すること、すなわち、トランスポンダーが設けられた物体(例えば、サーバー、スイッチ等のIT構成要素)を検出することが可能になる。本発明によれば、検出エラーは、好ましくはこの通信の短距離に起因して有利に防止される。
【0062】
「情報記憶」トランスポンダーに代えて又はこれに加えて、電池を備えず、アンテナ場を介して電気エネルギーを供給される1つ以上のセンサー(又は「センサー技術を備えた」トランスポンダー)もアンテナ上に配置することができる。このように、それぞれのセンサータイプに応じたアンテナに沿って、基本的に任意の物理パラメーターを検出することができる。
【0063】
アンテナ上へのそのようなセンサーの直接の配置に代えて又はこれに加えて、例えば、受動センサー(アンテナ場からそれらの電気エネルギーを受信する)をアンテナ範囲内の技術デバイス上又は技術デバイス内に配置することも可能である。そのようなセンサーを用いて取得された情報は、アンテナを介した通信によって容易に読み出すこともでき、その後、解析することもできる。
【0064】
例えば技術デバイスに統合されたアンテナの、例えば、導体構造体又は同軸導体構造体の信号送信/受信セクションは、直線状に延在してもよいし、少なくとも1つの角度を有するセクション及び/又は少なくとも1つの湾曲セクションを備えてもよい。例えば、全体的に蛇行形状の範囲が実現されてもよい。
【0065】
そのような複雑な範囲(例えば、2次元又は3次元)によって、通信及び/又はエネルギー送信が非常に短いアンテナ範囲を用いて行われるべきエリアの意図的なカバレッジが特に可能になる。複雑な範囲を有する非常に長いアンテナに関して、特に、アンテナは、複数のセグメントから(例えば、電気プラグタイプコネクターによって)組み立てられることが提案される。さらに、アンテナに沿った接合部を実現するのに、Tピースも用いることができる。このように、(本明細書において説明されるタイプの端子構造体がそれぞれ配置される端部における)2つ又は3つ以上の信号送信/受信セクションへの分岐は、例えば、信号線路セクションの端部において分散ピースによって実現することができる。
【0066】
本発明の一拡張形態では、アンテナは、特に、導体構造体の第1の端部(接続端部)と導体構造体の第2の端部(末端部)との間に1つ以上の電気接点(例えば、プラグタイプ接続及び/又はネジタイプ接続)を設けることによって実現することができる「モジュラー設計」を有し、したがって、上記電気接点は、アンテナを組み立てる個々の「モジュール」を画定することが提案される。
【0067】
対応する実施の形態では、上述したタイプの表面波減衰デバイスは、対応するコネクター(例えば、電気プラグ等)をその端部の一方又は双方に備えることが提案される。そのようなコネクターは、代替的に又は付加的に、キャリアプレートを備える端子構造体を接続するために、特に導体構造体の第2の端部上に配置することもできる。したがって、端子構造体は、(接合(mating))コネクターを備えてもよい。この(接合)コネクターは、例えば、シース導体接続面及び内部導体接続面上に半田付けされることによってキャリアプレートに電気的及び機械的に接続することができる。
【0068】
アンテナのそのようなモジュラー設計の重要な利点は、例えば、アンテナの一部分を構築するのに、例えば「同軸ケーブル」等の従来の構成要素及び市販の構成要素を用いることができ、本発明のアンテナを実現するには、それぞれ必要とされる追加のモジュールを用いて補完するだけでよいという点に見ることができる。従来の同軸ケーブルは、特に、本発明の導体構造体を形成するのに用いられてもよい。表面波減衰デバイスが設けられる場合、このデバイスは、2つの同軸ケーブルによって一方においてアンテナの信号線路セクションを形成し、他方においてアンテナの信号送信/受信セクションを形成するために、例えば、(例えば、従来の電気プラグ/ネジタイプ接続によって)双方の側部に従来の同軸ケーブルを用いて補完される対応する減衰モジュールによって形成されてもよい。
【0069】
一拡張形態によれば、導体構造体の第2の端部及び端子構造体の領域は、この領域からの電磁放射の放出を最小にするために、シールド構造体(例えば、導電性金属材料からなる)を用いてシールドされることが提案される。例えば、このシールド構造体は、或る種の「シールドポット」の形でアンテナ端部に取り付けて固定(例えば、接着)することができるように、一方の端部が閉鎖された中空円筒の形状を有することができる。
【0070】
本発明を、添付図面に示された例示的な実施形態を参照して以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】一例示的な実施形態によるアンテナ用の端子構造体の上面図である。
図2図1による端子構造体の側面図である。
図3図1及び図2による端子構造体を用いて実現された一例示的な実施形態によるアンテナの上面図である。
図4図3によるアンテナの側面図である。
図5】別の例示的な実施形態によるアンテナの上面図である。
図6図5によるアンテナの側面図である。
図7】別の例示的な実施形態による端子構造体の上面図である。
図8】別の例示的な実施形態による端子構造体の上面図である。
図9】別の例示的な実施形態による端子構造体の上面図である。
図10】別の例示的な実施形態による端子構造体の上面図である。
図11】別の例示的な実施形態による端子構造体の上面図である。
図12】別の例示的な実施形態によるアンテナの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1及び図2は、本発明における使用に適しているとともに電気絶縁キャリアプレート16を備える端子構造体14の一例示的な実施形態を示している。電気絶縁キャリアプレート16は、図示した例では矩形状に実現され、上側部18及び下側部20を有する。
【0073】
端子構造体14は、キャリアプレート16の上側部18上においてキャリアプレートの第1の領域にわたって延在する導電性のシース導体接続面22(図1のハッチングされた部分)と、キャリアプレート16の上側部18上においてキャリアプレート16の第1の領域から離間したキャリアプレート16の第2の領域にわたって延在する導電性の内部導体接続面24と、キャリアプレート16の下側部20上においてキャリアプレート16の第3の領域にわたって延在する導電性の結合導体面26(図1の破線部分)とを更に備える。第3の領域は、キャリアプレート16の第1の領域及び第2の領域とそれぞれ重なっている。
【0074】
端子構造体14は、最後に、キャリアプレート16の上側部18上の内部導体接続面24をキャリアプレート16の下側部20上の結合導体面26に電気的に接続する1つのス
ループレーティング28も備える。ただし、代替的に、内部導体接続面24を結合導体面26に接続する複数のスループレーティングが設けられてもよい。
【0075】
図示した端子構造体14の例示的な実施形態では、キャリアプレート16は、細長い矩形形状を有する。導電性面22、24、26は、従来、図示した例では、電気絶縁キャリアプレート16のそれぞれの側部18及び20上の金属被覆層(例えば、銅被覆等)の形で実現される。キャリアプレート16は、例えば、プリント回路基板に一般に用いられる材料(例えば、エポキシ樹脂、セラミック等)で構成されてもよい。
【0076】
図示した例では、導電性の面22、24、26は、それぞれ細長い矩形形状で実現される。
【0077】
図1及び図2は、キャリアプレート16及び表面22、24、26の寸法決めを示している。この場合、以下の名称が適用される。
Ldiel:キャリアプレートの長さ
Wdiel:キャリアプレートの幅
LGP:シース導体接続面の長さ
WGP:シース導体接続面の幅
LTL1:内部導体接続面の長さ
WTL1:内部導体接続面の幅
LTL2:結合導体面の長さ
WTL2:結合導体面の幅
G:シース導体接続面と内部導体接続面との間の長手方向の隙間
Hdiel:キャリアプレートの厚さ
LC:第1の領域(シース導体接続面)と第3の領域(結合導体面)との間の重なりの長さ
【0078】
この例示的な実施形態(図1及び図2)及び他の例示的な実施形態の有利な「寸法決めルール」が以下に更に提供される。
【0079】
図1及び図2によれば、第3の領域(結合導体面26)は、第1の領域(シース導体接続面22)には部分的にしか重なっていないが、第2の領域(内部導体接続面24)には完全に重なり、第2の領域を越えて突出もしている。
【0080】
図3及び図4は、上述した端子構造体14(図1及び図2)と、細長い2極導体構造体12とを備えるアンテナ10の一例示的な実施形態を示している。この細長い2極導体構造体12は、内部導体30と、この内部導体を同軸状に取り囲むシース導体32(図3及び図4において波状にハッチングされた部分)とを備え、その第1の長手方向端部において端子構造体14に接続されている。最も単純な場合には、同軸導体構造体12は、従来の「同軸ケーブル」からなる。図3及び図4によれば、そのような従来の同軸ケーブルは、内部導体30とシース導体32との間に径方向に配置された電気絶縁中間層(例えば、プラスチックからなる)と、シース導体32の外側に径方向に配置された電気絶縁外側層(例えば、プラスチックからなる)とを更に備える。
【0081】
図におけるシース導体32の右端部は、シース導体接続面22に電気的に接続され、図における内部導体30の右端部は、内部導体接続面24に電気的に接続されている(それによって、ギャップ長Gを橋絡している)。これらの接続のそれぞれは、例えば、半田付け接続又は溶接接続の形で実現されてもよい。
【0082】
内部導体30の右端部は、好ましくは、内部導体接続面24に、その左端部から小さな
隙間を伴って接続されている(例えば、隙間は、内部導体接続面24の長さの5%未満に等しい)。
【0083】
これらの電気的接続を容易にもたらすことができることを確保ために、シース導体32上に配置された外側層が(好ましくは、長さLGP全体にわたって)その接触エリアにおいてシース導体から除去されるとともに、内部導体30上に配置された層(中間層、シース導体及び外側層)がその接触エリアにおいて内部導体から除去されることが好ましい。
【0084】
図示したアンテナ10は、特に、短距離用途、例えば、RFID用途、又は短距離エネルギー伝送用途に用いることができる。この目的のために、アンテナ10を用いて送信されるアンテナ信号又はアンテナ10によって受信されるアンテナ信号用の送信機及び/又は受信機を導体構造体12の第1の端部(図では、左端部)に設けることができ、例えば、従来の「同軸コネクター」を装備することができる(対応する同軸コネクターは、例えば、図12における最も左側に示されている)。そのような同軸コネクターによって、導体構造体12の第1の端部において(内部導体30とシース導体32との間に印加される)アンテナ信号をそれぞれ入力及び出力することが可能になる。
【0085】
導体構造体12の第2の端部(図では、右端部)は、上述した形式で端子構造体14に接続されている。
【0086】
アンテナ10の送信モードでは、すなわち、送信されるアンテナ信号が、同軸導体構造体12の第1の端部において入力されたときは、このアンテナ信号は、導体構造体12に沿って、端子構造体14が接続された第2の端部(末端部)まで進み、この位置において大なり小なり或る程度は反射されて、第2の端部から導体構造体12の第1の端部の方向にシース導体32に沿ってはね返り進行波(bound traveling wave)(表面波)の形で戻って進む。
【0087】
「正しく終端された同軸線路構造体」と比較すると、図3及び図4に示す同軸線路構造体は、或る意味で、その第2の端部において接地電流パスが遮断されている「開放型同軸線路構造体」12を表し、戻り電流(接地電流)を同軸シールド(=シース導体32)の外側部に「方向転換」し、そのフロー方向を逆にする。
【0088】
動作モードが、適宜に、例えば、入力されているアンテナ信号の周波数及び電力に関して選択された場合、アンテナ10は、比較的小さな電磁エネルギーを放出している間、それ自体の周囲に電磁交流場を生成することが可能である。実際上、アンテナ10は、アンテナ10の(好ましくは比較的短い)距離(range)を容易に制御するために、「結合モード」にある進行波アンテナとして動作させることができる。
【0089】
この点において有利であるとともに、本発明のアンテナにおいて個別に又は任意の組み合わせで用いることができる端子構造体14の例示的な詳細を以下に列挙する。
・シース導体接続面22は、キャリアプレート16の第1の長手方向端部(図では、左端部)に隣接して配置され、長手方向にキャリアプレート16の長さの30%未満にわたって延在する。
・内部導体接続面24は、キャリアプレート16の長さの50%よりも多くにわたってキャリアプレート16の長手方向にストリップ形状に延在する1つのストリップの形で実現されている。このストリップの端部のうちの一方は、シース導体接続面22から比較的小さな長手方向の隙間Gを伴って配置されている。この長手方向の隙間Gは、図示するように、内部導体30の端部セクションによって橋絡され、この例では、キャリアプレート16の長さの5%未満に等しい。ストリップのこの端部は、キャリアプレート16の中心領域の左に位置するのに対して、ストリップの反対側の端部は、キャリアプレート16の
第2の長手方向端部から比較的小さな隙間を伴って右側領域に配置されている。
・結合導体面26は、キャリアプレート16の長手方向に延在する1つのストリップの形で実現されている。このストリップの左端部は、長手方向において、好ましくは、シース導体接続面22の長さLGPの20%〜80%に等しい長さだけシース導体接続面に重なっている。結合導体面26の左端部は、内部導体接続面24の左端部よりもその分だけ左に遠く離れて位置する。内部導体接続面24及び結合導体面26の右端部は、長手方向に関してほぼ同じ位置に位置する。
・内部導体接続面24は、キャリアプレート16の横方向に関してキャリアプレート16のほぼ中心に位置する。結合導体面26は、その両方の側部において(横方向に)内部導体接続面24を越えて突出している。結合導体面26は、内部導体接続面24の大きさの2倍よりも大きい。
・シース導体32は、シース導体の長手方向に細長くされた接触エリアによってシース導体接続面22に接続されている(例えば、半田付けされる)。このストリップ形状の接続(この場合には、半田付け)は、キャリアプレート16の長さの20%よりも多くにわたって延在する。
・この接触エリアでは、シース導体32の長手方向に対して横方向のシース導体接続面22の寸法は、シース導体32の寸法の2倍よりも大きい。
・シース導体32の右端部は、キャリアプレート16の長手方向を基準として、シース導体接続面22の右端部が位置する、ほぼその位置に配置されている。シース導体32とシース導体接続面22との間の接触接続をもたらす場合、シース導体32の右端部がシース導体接続面22の右端部に対して左方にせいぜい僅かに後退する(したがって、反対方向、すなわち右方にシース導体接続面22の端部を越えて突出しない)ようにシース導体32の右端部を位置決めすることが好ましい。
【0090】
図3及び図4に示す例とは対照的に、キャリアプレート16の代わりに、例えばスペーサーによって互いに平行に保持された2つのキャリアプレートを設けることも可能である。この場合、上側部上の導体表面と下側部上の導体表面との間に位置する誘電体は、その2つの導電性のプレート間の空気の形で部分的に実現される。
【0091】
高周波数技術に関して、端子構造体14は、好ましくは、大きな損失のない終端インピーダンスがそれぞれのアンテナ動作周波数において実現されるような方法で実現される。
【0092】
図1図4に示すアンテナ10の様々な構成要素の寸法に関する有利な寸法決めルールの例を以下に列挙する。ここで、これらの寸法決めルールは、本発明のアンテナに個別に適用することもできるし、任意の組み合わせで適用することもできる。
・Ldiel(最小)=(LGP+G+LTL1)
・Ldiel(最大)=(LGP+G+LTL1)×1、ただし、1≦i≦3である
・Wdiel(最小)=WTL2、又はWGP>WTL2である場合、Wdiel(最小)=WGP
・Wdiel(最大)=WTL2×1.5、又はWGP>WTL2である場合、Wdiel(最大)=WGP×1.5
・0.01mm≦Hdiel≦4mm
・0.5×φcoax≦Hdiel≦5×φcoax、ただし、φcoax=導体構造体の直径である
・LGP:φcoax≦LGP≦10×φcoax
・WGP=Wdiel又はWTL2≦WGP≦WTL2×j、ただし、1≦j≦3である
・0.8×φcoax≦WGP≦1.5×φcoax
・LTL1は、少なくとも(λ/8−G−Via)×kにほぼ等しい。ただし、0.5≦k≦2であり、λ=波長であり、Via=スループレーティングの長さ(高さ)である
・0.1×WTL2≦WTL1≦WTL2
・内部導体接続面の高さ(厚さ)は、
−同軸導体構造体の内部導体の断面寸法(例えば、直径)に少なくとも近似的に対応し、及び/又は
−0.01mm〜0.4mmの範囲内にあるか、若しくは
−0.5mm〜5mmの範囲内にある(特に、より高いアンテナ信号電力、例えば、少なくとも100Wのアンテナ信号電力の場合)
・LTL2=(λ/8−Via)×m、ただし、1≦m≦2である
・WTL2>WTL1(例えば、より高い帯域幅を達成するのに有利である)
・WTL1≦WTL2≦10×WTL1
・結合導体面の高さ(厚さ)は、
−0.01mm〜0.4mmの範囲内にあるか、又は
−0.5mm〜5mmの範囲内にある(特に、より高いアンテナ信号電力、例えば、少なくとも100Wのアンテナ信号電力の場合)
・0≦LC≦0.3×LTL2。
【0093】
ミリメートル範囲における短いライン長であっても、特に、(例えば、400MHzから開始する)より高い信号周波数においては、端子構造体14の周波数応答(インピーダンス)に大きく影響する。したがって、例えば、スループレーティング28のさVa及びギャップ間隔Gもアンテナ構成要素の寸法決めに組み込むことが特に好ましい。
【0094】
図3及び図4による例では、接地導体接続面22と結合導体面26との間の重なりは、この位置における静電容量を実現する。重なりの長さLC=0の場合、結合導体面26及び接地導体接続面22の末端のエッジしか、静電容量の形成に効果を有しない。したがって、図示するように、LC>0であることが一般に好ましい。ただし、少なくとも1つのディスクリート構成要素(キャパシター)が、重なり領域上に追加して配置され、例えば、半田付けされることは除外されない。この構成要素の一方の端子は、結合導体面26に接続され、この構成要素の他方の端子は、接地導体接続面22に導電するように接続される(例えば、スループレーティングによって半田付けされる)。1つ以上のディスクリート構成要素(例えば、コイル等のインダクタ)を内部導体接続面及び/又は結合導体面に沿って配置することも考えられる。
【0095】
他の例示的な実施形態の以下の説明では、全く同一に動作する構成要素には同じ参照符号が用いられるとともに、それぞれの実施形態を区別するために小文字がそれぞれ付加される。この場合、それぞれ説明される実施形態と、上述した例示的な単数又は複数の実施形態との間の本質的な相違のみが論述され、これによって、他の点では、前出の例示的な実施形態の説明が明示的に参照される。
【0096】
図5及び図6は、別の例示的な実施形態によるアンテナ10aを示している。その設計及び機能に関して、アンテナ10aは、基本的には、上述したアンテナ10に対応する。内部導体接続面及び同軸導体構造体へのその電気的接続のみが変更されている。アンテナ10aでは、内部導体接続面24aは、キャリアプレート16の第2の長手方向端部に隣接して(スループレーティング28aの領域内に直接)延在するのみであり、キャリアプレート16の長さの5%未満に等しい長さを有するように配置されている。したがって、シース導体接続面22aと内部導体接続面24aとの間の長手方向の隙間Gは、この場合にかなり大きくなっており(キャリアプレート16aの長さの50%よりも長くなっている)、この長手方向も隙間を橋絡するために、導体構造体12aの内部導体30aは、これに対応して右方遠方まで延在する。したがって、内部導体30aのこの端部セクションは、シース導体32aの右端部を越えて非常に遠方まで突出し、図3及び図4による例示的な実施形態における細長い内部導体接続ストリップに機能的に取って代わっている。
【0097】
図7図11は、例えば、上述したタイプ(例えば、図3及び図4に示すようなタイプ)の導体構造体との接続において用いることができる他の端子構造体の例を示している。
【0098】
図7は、端子構造体14bを示している。この端子構造体14bにおいて、キャリアプレート16b及び導電性の面22b、24b、26bは、図1及び図2に示す例と同様に実現されるが、次の変更点を有する。すなわち、シース導体接続面22bが、キャリアプレート16bの第1の長手方向端部に隣接して配置されるだけでなく、キャリアプレート16bの上側部18b上の内部導体接続面24bを枠で囲んでいる(frames)。もう1つの変更点は、この場合、例えば、内部導体接続面24bと同じ幅を有する結合導体面26bが、導電性の面として下側部20b上に配置されるだけでなく、結合導体面26bを枠で囲む付加的な面も下側部20b上に配置されるという点に見ることができる。下側部20b上の後者の面は、上側部上に内部導体接続面24を枠で囲むシース導体接続面22bとほぼ一致して配置されている(結合導体面26bとシース導体接続面22bとの間の重なりに従って左端部において僅かだけ変更されている)。
【0099】
図7による例では、したがって、(好ましくは、上側部及び下側部上の)導体面は、コプレナー線路の原理に従って接地面によって(好ましくは完全に)取り囲まれており、ストリップ線路24b、26bを介した電磁波の放出が有利に防止されるか又は少なくとも抑制されるようになっている。図7に示す例とは対照的に、ストリップ線路24b、26bは、異なる幅を用いて実現されてもよい。
【0100】
図8は、別の例示的な実施形態による端子構造体14cを示している。図1による例とは対照的に、端子構造体14cにおける結合導体面26cの長さは、横方向において一貫しておらず、むしろ変化している。この変化は、この例では、長さが一方の側方端部から他方の側方端部に単調減少するように実現され、したがって、結合導体面26cとシース導体接続面22cとの間の「重なりの長さ」も、横方向において一貫しておらず、同様に単調に変化している。図示した例では、結合導体面26の左端部は、キャリアプレートの横方向において、図1による例のように延在せず、代わりに横方向に対して或る角度で延在する。この角度は、例えば、10度〜40度の範囲内にあるものとすることができる。図8において、結合導体面26cの「最大長」は、参照符号LTL2−1によって特定され、結合導体面26cの「最小長」は、参照符号LTL2−2によって特定される。
【0101】
重なりの長さのこの変化は、アンテナの動作中の使用可能な信号帯域幅を有利に増加させる。同じ有利な効果は、図9及び図10を参照して以下で説明する実施形態においても実現される。
【0102】
図9は、別の例示的な実施形態による端子構造体14dを示している。図8による例とは対照的に、結合導体面26dとシース導体接続面22dとの間の「重なりの長さ」の変化は、図9によるアンテナ14dでは、重なりの長さ(及び結合導体面26dの長さも)が、一方の側方端部から開始して最初は単調に減少し、他の側方端部に向かって再度単調に増加するように実現される。換言すれば、結合導体面26dの左端部は、重なり領域において陥凹している。図示した例では、この陥凹は、キャリアプレート16dの長手方向の中心線に対して対称に実現され、例えば、(図9に破線形式で示されるような)直線状に延在する陥凹フランク(flanks)又は代替的に膨らんだ、例えば、(図9に点線形式で示されるような)ほぼ半円形の境界を有する。
【0103】
図10は、別の例示的な実施形態によるアンテナ14eを示している。図1による例とは対照的に、アンテナ14では、内部導体接続面24e及び結合導体面26eが変更されている。
【0104】
内部導体接続面24eは、対応する同軸導体構造体の内部導体に接続される接続セクションと、複数(この場合には3つ)の近接するストリップ形状のブランチセクションとを備え、これらのブランチセクションのそれぞれの端部は、それぞれ割り当てられたスループレーティング28eによって結合導体面26eに接続されている。複数のスループレーティングは、代替的に、各ブランチセクション上に設けられてもよい。
【0105】
内部導体接続面24eのブランチセクションの数に対応する数の結合導体面26e、この場合には3つの結合導体面が、単一のコヒーレントな結合導体面の代わりに設けられ、これらの結合導体面は、内部導体接続面24eのブランチセクションとほぼ一致するストリップ形状で延在するが、それらの左端部では、シース導体接続面22eに重なるための3つの重なり領域が形成されるように延ばされている。この場合、これらの3つの重なり領域は、異なる重なりの長さを有する。これは、3つの結合導体面26eが異なる長さを有することから達成される。
【0106】
内部導体接続面(例えば、この例による内部導体接続面24e)が、同一又は異なる長さを有する複数のストリップ形状のブランチセクション(或いは、複数の別々の「個別導体面」)を備える場合、接地導体接続面(例えば、この例では接地導体接続面22e)の幅は、好ましくは、内部導体接続面(複数の場合もある)の全幅と少なくともほぼ同一である。内部導体接続面のストリップ間(及び/又は結合導体面のストリップ形状のセクション間)のギャップの幅は、例えば、0.3mm〜5mmの範囲とすることができる。
【0107】
図11は、別の例示的な実施形態による端子構造体14fを示している。図1による例とは対照的に、図11による端子構造体14fでは、内部導体接続面24f及び結合導体面26fが変更されている。
【0108】
内部導体接続面24fは、キャリアプレート16fの長手方向において一貫していない幅を有する。図示した例では、この幅は、左端部から(スループレーティング28fにおける)右端部に向けて単調に増加する。図示した例では、内部導体接続面24fは、細長いストリップの形の台形で実現される。
【0109】
結合導体面26fは、キャリアプレート16fの長手方向において一貫していない幅を有する。図示した例では、この幅は、(スループレーティング28fにおける)右端部から(重なり領域内の)左端部に向けて単調に増加する。結合導体面26fは、図示した例では台形である。
【0110】
図示した例では、内部導体接続面24f及び結合導体面26fは、キャリアプレート16fの長手方向を基準とした同じ右方の位置において終了している。
【0111】
図11において、W1TL1は、内部導体接続面24fの「初期幅」を特定するものであり、W2TL1は、内部導体接続面24fの「最終幅」を特定するものであり、W2TL2は、結合導体面26fの「最終幅」を特定するものである。この例によれば、内部導体接続面24fの最終幅は、好ましくは、結合導体面26fの初期幅に対応する。この状況では、φcoax≦W1TL1が好ましくは当てはまる。さらに、上述した寸法決めルールに関する次の例示的な代用、すなわち、WTL1→W2TL1及びWTL2→W2TL2も有利である。
【0112】
図11による例は、更により大きな帯域幅を達成するために、図8及び図9による例を参照して上述した「長さの変化」が用いられるように変更されてもよい。すなわち、結合
導体面26fの幅にわたる結合導体面26fの一貫していない長さ(図11における一点鎖線形式及び点線形式で示される結合導体面26fの例示的な境界を参照)に変更されてもよい。
【0113】
図12は、別の例示的な実施形態によるアンテナ10gを示している。その設計及び機能に関して、導体構造体12gと、これに接続された端子構造体14gとからなるアンテナ10gは、基本的には、図3及び図4による上述したアンテナ10に対応する。導体構造体12gのみが、表面波減衰デバイス、この場合には、シース導体32gの外周部に(絶縁外側層を取り囲むように)配置されたフェライトリング34gが、導体構造体12gの長手方向を基準とした導体構造体12gの2つの端部間に設けられるように変更されている。
【0114】
フェライトリング34gは、導体構造体12gに沿った「戻り進行波」の領域をそれによって明確に画定して制限することができる限りにおいて有利である。導体構造体12gの全長は、フェライトリング34gによって(或いは他の任意の表面波減衰デバイスによって)、この位置で「信号線路セクション」と「信号送信/受信セクション」とに分割される。図12では、信号線路セクションの長さはLCONによって特定され、信号送信/受信セクションの長さはLSWによって特定される。
【0115】
例えば、異なる表面波減衰の選択肢が一般に考慮されてもよい。
・導体構造体(例えば、同軸ケーブル)の遮断がない場合:導体構造体を或る程度きつく囲む1つ以上のフェライトリングによる。図12には、1つの例示的なフェライトリング(フェライトリング34g)のみが示されている。例えば、従来の同軸ケーブルは、それによって、図12における位置Tにおいて表面波線路に変換される。
・導体構造体の遮断がある場合:コモンモードフィルター(例えば、「コモンモード線路フィルター」)を、例えばプリント回路基板等の回路キャリア上に挿入することによる。
・シース導体のガルバニック接地(Galvanic grounding)(例えば、金属シースクランプを用いる)。
【0116】
図12における例を参照して説明した導体構造体12gは、例えば、前出の例示的な実施形態を参照して上述したタイプの端子構造体に関しても用いることができる。
【0117】
要約すれば、上述した例示的なアンテナ及びそのようなアンテナの構築に用いられる上述した例示的な端子構造体の設計、機能及び利点は、以下のように略述することができる。
−アンテナの第1の主要構成要素は、その第2の端部(末端部)において端子構造体に接続される同軸導体構造体である。この同軸導体構造体は、例えば、柔軟な又は半剛性のケーブルから構成することもできるし、剛性構造体から構成することもできる。
−アンテナの第2の主要構成要素は、「同軸構造体を遮断し」、したがって、例えば、送信モードにおいて、シース導体の外側部に戻り表面波の生成を誘発する端子構造体である。このために、内部導体の端部に到着するアンテナ信号とシース導体との「容量結合」が、内部導体接続面と、スループレーティング(複数の場合もある)と、結合導体面とによって特に実現される。この容量結合は、具体的には、第3の領域(結合導体面)と第1の領域(内部導体接続面)との間の「重なり」を用いて実現される。
−例えば、1つ以上のフェライトリングによって形成され、導体構造体に沿った位置に設けられる任意選択の表面波減衰デバイスが、送信/受信のための有効アンテナ長(送信/受信セクションLSW)を制限する。このアンテナ長の調整に加えて、減衰デバイスの位置、特に、複数の離間したフェライトリングが設けられる場合には、(導体構造体の末端部の最も近くに位置する)最初のフェライトリングの位置も、減衰デバイスの特性に影
響を与え、したがって、戻り表面波の特性に影響を与える。
−送信/受信セクション(長さLSW)は、シース導体(同軸シールド)の外側部における表面波伝播のセクションを示す。境界がない場合、送信/受信セクションは、事実上、電力損失に起因して電流をもはや測定することができなくなる遠方まで末端部から延在することになる。図12による例は、長さLSWをどのようにして非常に容易に調整することができるのかを示している。例えば、次のもの、すなわち、LSW(最小)=LGP及び/又はLGP≦LSW≦200×λ及び/又はLSW(最大)=100mを長さLSWに適用することができる。
−戻り表面波の所望の生成に関して、シース導体から突出する内部導体セクションに沿ってシース導体の端部から延在し、次いで、内部導体接続面、スループレーティング及び結合導体面に沿って延在する「パス」の累積的な全長が、アンテナの動作中に用いられるアンテナ信号の「4分の1波長」を少なくとも近似的に表すならば一般に好都合である。アンテナ信号のキャリア周波数は、例えば、50MHz〜5000MHzの範囲とすることができる。
−任意選択で設けられる複数のフェライトリングの特定の位置、特に、最初のフェライトリングの位置も、アンテナのインピーダンスに大きな影響を与える。この点において、複数のフェライトリングのうちの少なくとも1つのフェライトリング、特に、少なくとも最初のものの調整機能を、インピーダンスを調整するのに有利に用いることができる(例えば、可能な限り50Ω又は同軸構造体のインピーダンスレベルに近いもの)。
−アンテナの適した幾何形状及び対応する動作モード(例えば、アンテナ信号のキャリア周波数)は、かなり小さな高周波数エネルギーしか放出されないように、送信信号の大部分がシース波の形で「信号送信/受信セクション」に沿って進むことを可能にする(「結合モード」)。
−表面波減衰デバイスを実現する複数のフェライトリングの配置によって、特に、導体構造体の他の部分(信号線路セクション)に対するシース波の非常に効果的な抑制が得られる。前述の2つのセクション間の遷移は、導体構造体に沿った減衰デバイスの位置によって規定される。一拡張形態によれば、その限りにおいて、減衰デバイスを導体構造体に沿ってまとめて変位させることができるように減衰デバイスを配置することが提案される。
−シース導体から突出する内部導体セクションに沿ってシース導体の端部から延在し、次いで、内部導体接続面、スループレーティング及び結合導体面に沿って延在するパスの累積的な全長は、例えば、アンテナの起こり得る最も高い戻りロスを達成する所望のインピーダンスが、フェライトリング(又は、例えば、複数のフェライトリングのうちの最初のもの)の(好ましくは可変の)位置と組み合わせて調整されるように選ぶことができる。
【0118】
本発明のアンテナの長さ及びこのアンテナの個々のセクション(導体構造体、シース導体から突出する内部導体セクション、内部導体接続面の信号パス、スループレーティング長及び結合導体面の信号パス)の長さは、それぞれの用途に適合させることができる。
【0119】
図1図4による例では、表面波減衰デバイスが設けられないので、導体構造体12全体を信号線路セクション及び信号送信/受信セクションとみなすことができる。これは、例えば、導体構造体12gの長さが、長さLCONを有する信号線路セクションと長さLSWを有する信号送信/受信セクションとに分割される図12による例では異なって実現される。
【0120】
例えば、これらの長さは、それぞれ次の範囲とすることができる。すなわち、LCONは、0.05m〜1mとすることができ、表面波減衰デバイスの長さは、0.05m〜0.5mとすることができ、LSWは、0.2m〜10mとすることができ、G+LTL1+(スループレーティングの長さ)+LTL2は、好ましくは4分の1波長として選ばれ
る波長に応じて、0.03m〜0.15mとすることができる。
【0121】
複数のフェライトリングが設けられる場合、フェライトリング間の相互の隙間(正幅(clear width))は、例えば、5mm〜20mmの範囲とすることができる。
【0122】
減衰デバイスを実現するのに用いられるフェライトリング、すなわち、図12による例におけるフェライトリング34gは、断面寸法、すなわち、好ましくは導体構造体とフェライトリングの内周との間の3mm未満の環状ギャップを有する導体構造体(設けられる可能性がある外側層(絶縁シース)を含む)の直径に適合されるべきである。一実施形態では、各フェライトリングのインピーダンスは、アンテナの動作周波数では100Ωよりも大きい。適したフェライトリングは、例えば、ドイツ国ヴァルデンブルク74638のWuerth Elektronik社から「WE−AFB EMI Suppression Axial Ferrite Bead」という名称で市販されている。
【0123】
本発明のアンテナの有利な実施形態では、減衰デバイスが、インピーダンスが異なるこのタイプの複数の「不連続点」、例えばフェライトリングを備えることが提案される。これは、特に、例えば、減衰デバイスに到達する反射進行波の割合が最小にされる波減衰を実現することを可能にする。
【0124】
図12に示す例示的な実施形態とは対照的に、追加の上述したタイプの不連続点又はフェライトリングを導体構造体12g又は信号送信/受信セクションLSWに沿って配置することができ、それによって、例えば、所望の「波形整形」を実現することができる。
【0125】
多くの用途において、送信/受信用に設けられるアンテナの信号送信/受信セクション(例えば、図12におけるLSW)が、技術デバイス(例えば、キャビネット又はラック)上又は技術デバイス内の或る特定のパスに沿って延在することは価値のあることである。このパスは、例えば、直線状に延在する場合もあるが、より複雑な経路に沿って延在する場合もある。
【0126】
要約すれば、説明した実施形態によって、例えば、以下の利点を有するアンテナを実現することが可能になる。
−アンテナ周辺における本質的に短距離であるが、比較的少ない放出の電磁場の生成。
−範囲、場の強度、反射、電力損失に関する場の良好な制御;アンテナに沿った「検出ギャップ」がないこと。
−異なる周囲及び周波数帯域における所望のアンテナインピーダンス(例えば、50Ω)への単純な調整機能。
−例えば、柔軟な同軸線路又は剛性の同軸線路のいずれからも、1つの同じ原理に従ってアンテナを非常に容易に製造することができる。
−アンテナは、全ての意図した動作周波数において「結合モード」で動作することができる。放出(「放射モード」)の割合を低く保つことができる。
−アンテナは、必要とされるシース導体又は内部導体を実現するために通常ならば同時に用いられる構造体から、特に中実又は中空の金属構造体から少なくとも部分的に製造することができる。本発明に関して、当然ながら、適した金属構造体が、例えば衣類レール、白杖又は機械ブレース及び(例えば、ラック、商品提示スタンド等の)プロファイルキャリア(profile carriers)において有用であり得る。なお、これらの構造体は、例として引用されているにすぎない。
−高送信電力を用いて、金属表面の近傍において、大きな反射がこれらの表面において引き起こされないように、アンテナを動作させることもできる。アンテナは、金属表面から数mmで動作させることができる。
−ロバストで影響を受けない動作を実現することができ、例えば、アンテナが金属の近
傍に配置されている場合にインピーダンスも大幅に変化しないような動作を実現することができる(例えば、開かれた金属キャビネット及び閉じられた金属キャビネットにおける良好な機能(sound function))。
−2次元及び3次元のアンテナ構造体を容易に実現することができる(例えば、テーブルトップ又はカウンタートップの下、トンネル又は倉庫の扉の上、建物のフロア(例えば、フロア通路等)内又は車両内の設置)。
−上記アンテナは、容易に実装することができ、上述したタイプの物体(特に、キャビネット、ラック等)内に統合することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11
図12