(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
口部の外周部に、開口先端を径方向外方に折り返した状態に形成されたカール部を有し、前記カール部の外周面は、缶軸方向に沿う縦断面において、前記カール部の上端の天頂部から連続して径方向外方に向けて凸となる天頂折返部と、前記天頂折返部の下端に連続して径方向内方に向けて凸となる下端屈曲部と、前記下端屈曲部の下端で屈曲して缶軸方向に沿って延びる外側直立部とを有するボトル缶の製造方法であって、
前記ボトル缶となる中間成形体の開口端部に形成された開口筒部の先端を径方向外方に折り返して折返部を形成する第1工程の後、前記折返部の前記缶軸方向の上側部分を残し、前記缶軸方向の下側部分の少なくとも一部を径方向外方から押圧することにより、前記天頂折返部と、前記下端屈曲部と、前記天頂折返部の最大外径とほぼ同じ最大外径を有する前記外側直立部とを形成する第2工程を有することを特徴とするボトル缶の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るボトル缶、キャップ付きボトル缶及びボトル缶の製造方法の実施形態を図面を参照して説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のボトル缶101と、このボトル缶101に装着されるキャップ201とのキャッピング前の状態を示しており、ボトル缶101の缶軸Oを通る中心から右半分を断面にした正面図である。また、
図2は、
図1に示したボトル缶101とキャップ201とを缶軸Oを通る中心から右半分を断面にして示し、ボトル缶101の口部13付近を拡大したものである。このうち
図2(a)がボトル缶101の口部13にキャップ201を巻き締める前のキャッピング前の状態である。また、
図2(b)がボトル缶101の口部13にキャップ201を巻き締めたキャッピング後の状態であり、キャップ付きボトル缶301の要部断面図を示している。また、
図3が
図2(a)に示されるボトル缶101のカール部24付近の拡大断面図を示しており、
図4が
図2(b)に示されるキャップ付きボトル缶301のカール部24付近の拡大断面図を示している。
【0025】
図5〜
図8は、本発明の実施形態のボトル缶の製造方法の各工程を模式的に示す説明図である。このうち、
図7及び
図8は、ボトル缶101の製造方法の各工程のうち、口部13にカール部24を形成する各工程を説明する説明図であり、ボトル缶101となる中間成形体53の開口端部付近を、缶軸Oを通る位置で断面にした要部断面図を示している。また、
図9は、ボトル缶101の口部13にキャップ201を装着するキャッピング装置の一部を構成するキャッピングヘッド70を示す模式図である。
【0026】
本実施形態のボトル缶101は、アルミニウム又はアルミニウム合金等の薄板金属からなり、
図1に示すように、円筒状をなす胴部10と円板状をなす底部20とを備える有底円筒状に形成されている。
【0027】
図1に示すように、胴部10及び底部20は互いに同軸に配置されており、本実施形態において、これらの共通軸を缶軸Oと称して説明を行う。また、缶軸Oに沿う方向(缶軸O方向)のうち、胴部10の開口端部10aから底部(缶底)20側へ向かう方向を下方(下側)、底部20から開口端部10a側へ向かう方向を上方(上側)とし、以下の説明においては、
図1〜
図9に示す向きと同様に上下方向を定めるものとする。また、缶軸Oに直交する方向を径方向といい、径方向のうち、缶軸Oに接近する向きを径方向の内方(内側)、缶軸Oから離間する向きを径方向の外側(外方)とする。また、缶軸O回りに周回する方向を周方向とする。
【0028】
ボトル缶101の胴部10は、
図1に示されるように、底部20側においてストレートの円筒状に形成された円筒部11と、円筒部11の上端で缶軸O方向の上方(開口端部10a側)に向けて漸次縮径するテーパ状の縮径部12と、縮径部12の上端に形成された口部13と、を備える。これらの円筒部11、縮径部12、口部13は、互いに滑らかに連なって形成されており、互いの間に段差を形成することなく滑らかに接続されている。なお、円筒部11、縮径部12、口部13は、それぞれ胴部10の周方向全周にわたって延びる環状をなしている。
【0029】
図1に示すように、口部13は開口端部10aにより外部に開口しており、飲料等の内容物は口部13を通じてボトル缶101の内部に充填される。また、
図2(b)及び
図4に示すように、口部13にキャップ201を装着することにより、ボトル缶101の内部に充填された内容物が密封されるようになっている。
【0030】
胴部10の上部に配置された口部13は、
図1に示すように、縮径部12の上端で一旦拡径された膨出部21と、膨出部21の上端に連続するボトル側ねじ部22と、ボトル側ねじ部22の上端から上方に向かうにしたがって漸次縮径された小径部23と、小径部23の上端の開口端部10aに形成されたカール部24と、を有している。
【0031】
カール部24は、小径部23に連続して形成されており、
図2(a)及び
図3に示すように、ボトル缶101の切断端部である開口先端38を径方向外方に折り返した状態に形成されている。カール部24の外表面のうち、カール部24の上端の天頂部31よりも径方向内方に配置される内周面は、
図3に示すように、缶軸O方向に沿う縦断面において、小径部23の内周面の上端で屈曲して缶軸O方向に沿って延びる内側直立部32と、内側直立部32の上端で径方向外方に向けて凸となり、上端の天頂部31に連続する天頂屈曲部33と、を有している。また、カール部24の天頂部31よりも径方向外方に配置される外周面は、
図3に示すように、缶軸O方向に沿う縦断面において、上端の天頂部31から連続して径方向外方に向けて凸となる天頂折返部34と、この天頂折返部34の下端に連続して径方向内方に向けて凸となる下端屈曲部35と、下端屈曲部35の下端で屈曲して缶軸O方向に沿って延びる外側直立部36と、を有している。また、カール部24は、外側直立部36の下端に連続して径方向内側に折り畳まれた折畳部37を有しており、カール端部(開口先端)38が、カール部24の内側に形成された空間部40内に折り込まれて配置されている。このため、折畳部37は、
図3に示すように、内側直立部32と外側直立部36との間に配置されている。
【0032】
このように構成されるカール部24において、天頂折返部34の上面部分の曲率半径Rは、0.8mm以上2.5mm以下であることが好ましい。なお、天頂折返部34の上面部分の曲率半径Rは、単一の曲率半径でもよいし、異なる複数の曲率半径の円弧を連続させてもよい。図示例では、天頂折返部34の下端側に若干のストレート状の筒状面部39が形成されているが、天頂折返部34は、筒状面部39を有さず、前述した曲率半径Rの湾曲面で全体が形成される場合もある。本実施形態では、天頂折返部34の最大外径がストレート状の筒状面部39で規定されており、この筒状面部39と外側直立部36の最大外径とがほぼ同じ直径(外径D1)で形成されている。そして、下端屈曲部35は、カール部24の最大外径D1よりも小さい外径に形成された部分、すなわち、天頂折返部34の最大外径及び外側直立部36の最大外径よりも径方向内方に突出して設けられた部分で形成されている。
【0033】
また、下端屈曲部35の上端は、カール部24の比較的上側の位置に設けられており、カール部24の天頂部31から下端屈曲部35の上端までの缶軸O方向の高さ、すなわち天頂折返部34の高さH1が、カール部24の高さH0の7/10以上9/10以下の範囲に形成されている。カール部24の高さH0は、カール部24の外周面における、缶軸O方向の上端の天頂部31から缶軸O方向の下端までの缶軸Oと平行な垂直距離とされる。また、同様に、天頂折返部34の高さH1も缶軸Oと平行な垂直距離とされる。
なお、天頂折返部34と接続される下端屈曲部35の上端側は、天頂折返部34の下端から缶軸O方向下方に向かうにしたがって漸次縮径され、径方向外方に向けて凸となる非常に小さな曲率半径の湾曲面で形成されている。
【0034】
このような形状のボトル缶101において、その他の寸法については必ずしも限定されるものではない。なお、ボトル缶101の諸寸法について一例を挙げると、成形前の元板厚が0.250mm以上0.500mm以下のアルミニウム合金板により、胴部10の厚さ(ウォール厚)が0.110mm以上0.125mm以下、ボトル側ねじ部22からカール部24までの厚さが0.210mm以上0.230mm以下、カール部24の外径(天頂折返部34の最大外径)D1が32.0mm以上35.0mm以下、カール部24の高さH0が1.6mm以上3.0mm以下に形成される。
【0035】
一方、このように構成されるボトル缶101に装着されるキャップ201は、カップ状に形成されたキャップ本体210と、そのキャップ本体210の内面に設けられたライナー250と、を有する。
キャップ本体210は、アルミニウム又はアルミニウム合金等の薄板金属を成形してなり、ボトル缶101の口部13に装着される前には、
図1及び
図2(a)に示すように、円板状の天板部211と、その天板部211の周縁から缶軸O方向に沿って略垂下する円筒状の円筒部212と、を有する。円筒部212には、
図1に示すように、天板部211側の基端側から開口する先端側に向けて順に、ナール凹部221及びベントホール222、ねじ形成予定部223、スリット224及びブリッジ225、裾部226が形成されている。
【0036】
このうち、円筒部212上側の天板部211に近い位置に形成されたナール凹部221は、開栓時に手に摩擦力を付与するものである。また、ベントホール222は、開栓時に内圧を開放するためのものであり、ナール凹部221とベントホール222とは、円筒部212の周方向に複数ずつ形成されている。また、ベントホール222の上側片231及び下側片232は、径方向内方に押し込まれた状態に形成されており、この上側片231と天板部211との間にライナー250が配置され、抜け止めされている。なお、下側片232の先端は、上側片231の先端よりもさらに径方向内方に押し込まれた位置に形成されている。これにより、後述するライナー250の摺動層251をキャップ本体210の内部に嵌め込む際に、摺動層251の周縁部(外周部)が上側片231に接触することがなく、摺動層251を下側片232の内面を滑らせて所定の位置に円滑に押し込むことができる。
【0037】
また、円筒部212の下側には、周方向に断続的に複数のスリット224が形成されるとともに、隣り合うスリット224どうしの間にブリッジ225が形成されている。したがって、円筒部212は、スリット224を介して上部227と下部228とが分けられるとともに、スリット224の間に形成された複数のブリッジ225により、上部227と下部228とが連結した形状とされている。
【0038】
キャップ本体210に挿入されるライナー250は、例えば、キャップ本体210の天板部211の内面側に配置されて天板部211の内面と接触する摺動層251と、この摺動層251に積層されてボトル缶101のカール部24に接触する密封層252との二層構造とされる。摺動層251は、密封層252よりも高い硬度を有し、ポリプロピレン樹脂等によりほぼ均一厚さの円板状に形成されている。また、密封層252は、柔軟なエラストマー樹脂等で形成され、ボトル缶101の口部13にキャップ201が装着されたときに、カール部24に当接してボトル缶101の内部を密封するシール機能を有している。なお、摺動層251と密封層252との硬度比較は、例えばタイプDデュロメータ硬さ(JIS K 7217)により判断される。
【0039】
また、本実施形態では、密封層252が摺動層251よりも外径がわずかに小さく形成されており、比較的薄肉の中央部253に対して、外周部分に厚肉のシール部254が周方向に沿う環状に形成されている。なお、各層の厚みは特に限定されるものではない。
【0040】
なお、キャップ本体210へのライナー250の取り付けは、別に作製したライナー250をキャップ本体210の開口端部からキャップ本体210の内部に挿入して行うこともできるが、キャップ本体210内でモールド成形することによりライナー250を形成することも可能である。キャップ本体210内でモールド成形する場合、摺動層251はシートから形成してキャップ本体210内に挿入しておき、その摺動層251の上に溶融状態の合成樹脂球を落として密封層252をモールド成形することも可能であるし、摺動層251もキャップ本体210内でモールド成形し、その摺動層251の上に重ねて密封層252をモールド成形することも可能であり、種々の方法を採用できる。
【0041】
このうち、摺動層251をモールド成形によって形成する場合、ライナー付きキャップ201をボトル缶101に装着した後の開栓時に、摺動層251がキャップ本体210との間で摺動し得るように、キャップ本体210の内面塗料としては、摺動層251を構成するポリプロピレン樹脂等がモールド時に接着されないエポキシフェノール系樹脂を用いたものを用いることが好ましい。また、キャップ本体210の内面塗装には、エポキシフェノール系樹脂にオリーブ油等のグリセリン・脂肪酸エステルを含むものを用いることができる。なお、ポリオレフィン系樹脂を含む内面塗料の場合は、摺動層251が強固に接着しない程度に配合を調整するとよい。
【0042】
このように構成されるキャップ201は、
図2(a)及び(b)に示すように、ボトル缶101の口部13に被せられ、キャップ本体210に設けられたライナー250を口部13のカール部24に圧接させた状態でキャッピング加工を施すことにより口部13に装着され、キャップ付きボトル缶301とされる。具体的には、ボトル缶101の内部に内容物を充填後、口部13に形成されたボトル側ねじ部22に沿ってキャップ本体210の円筒部212のねじ形成予定部223をねじ加工してキャップ側ねじ部229(
図9参照)を成形するとともに、円筒部212の裾部226を膨出部21の下部に巻き込んで係止することにより、キャップ201を口部13に装着する。これにより、ボトル缶101の口部13をキャップ201により密閉したキャップ付きボトル缶301が製造される。
【0043】
キャップ201の口部13へのキャッピング時には、
図4に示すように、キャップ201の天板部211周縁が絞り加工され、絞り部241が形成される。この際、天板部211周縁には缶軸O方向下方及び径方向内方に向けた荷重が作用する。このため、カール部24の天頂部31から外周面の広い範囲にライナー250(密封層252のシール部254)を密接させることができ、ライナー250と口部13との密封性を高めることができる。また、本実施形態のボトル缶101においては、前述したように、カール部24の外周面に、径方向外方に向けて凸となる天頂折返部34と、この天頂折返部34の下端に連続して径方向内方に向けて凸となる下端屈曲部35と、が設けられており、この下端屈曲部35の上端がカール部24の比較的上側に配置されている。このため、キャッピング時に、ライナー250を下端屈曲部35にかかる位置まで密接させることができる。したがって、キャップ201に内圧が作用する際にも、ライナー250が下端屈曲部35の上側部分、すなわちカール部24の最大外径D1よりも径方向内方に突出した面に、より強く密接することになり、高い密封性を維持できる。
【0044】
なお、このように構成されるキャップ付きボトル缶301では、ボトル缶101に対しキャップ201のブリッジ225よりも上側の上部227が缶軸回りに回動されると、上部227がボトル側ねじ部22に沿って周方向及び軸方向の上方に移動するが、ブリッジ225よりも下側の下部228は膨出部21に係止されていることから、ブリッジ225が破断され、円筒部212の上部227と下部228とが切り離される。そして、キャップ201の上部(円筒部212の上部227)が口部13から取り外され、キャップ201の下部(円筒部212の下部228)が口部13に残されるようになっている。キャップ201の上部を口部13から取り外すことにより、口部13が開栓され、ボトル缶101内部の内容物を取り出ることができる。一方、取り外したキャップ201の上部を口部13に再び取り付けることにより、ボトル缶101の口部13を再閉栓することが可能である。
【0045】
なお、本実施形態のキャップ付きボトル缶301は、キャップ201に摺動層251と密封層252とを有するライナー250が設けられ、キャップ本体210の天板部211に接する面が摺動層251により形成されている。このため、開栓時にキャップ本体210とライナー250の摺動層251とが摺動し、密封性が高いにもかかわらず容易に開栓できる。
【0046】
次に、上記のように構成されたボトル缶101を製造する場合を例として、本発明のボトル缶の製造方法を説明する。
ボトル缶101を製造するには、まず、アルミニウム合金等の薄板金属の板材を打ち抜いて絞り加工することにより、
図5(a)に示すように比較的大径で浅いカップ51を成形した後、このカップ51に再度の絞り加工及びしごき加工(DI加工)を加えて、
図5(b)に示すように所定高さの有底円筒状の筒体52を成形し、その上端をトリミングにより切り揃える。このDI加工により、筒体52の底部は最終のボトル缶101としての底部20の形状に成形される。
【0047】
次いで、筒体52の開口端部側を縮径加工(ネックイン加工)することにより、
図5(c)に示すように底部20側の円筒部11に連続する縮径部12を形成するとともに、縮径部12の上方で缶軸O方向に延びる小径円筒部41を形成する。また、小径円筒部41を再度拡径及び縮径することにより、
図6(a)に示すようにねじ加工する前の筒状部42を形成する。そして、この筒状部42にねじ加工を施して、
図6(b)に示すようにボトル側ねじ部22が形成された中間成形体53を形成する。この中間成形体53のボトル側ねじ部22の下方には膨出部21が形成され、ボトル側ねじ部22の上方には、小径部23を介して円筒状の開口筒部25aが形成されており、この開口筒部25aを加工してカール部24を形成する。
【0048】
なお、筒体52の開口筒部25aを加工してカール部24を有する最終形状のボトル缶101を製造する過程で、加工の進捗に応じて中間成形体53の形状が変化していくが、以下では、ボトル缶101に至るまでの間で中間成形体53の形状を特に限定せずに、同一の符号53を用いて説明する。
【0049】
カール部24は、
図7(b)に示すように開口筒部25aの先端に折畳部37を形成する前工程と、
図7(d)に示すように折畳部37が形成された開口筒部25bの先端を径方向外方に折り返した折返部28を形成する第1工程と、
図8に示すように折返部28の外周面に天頂折返部34及び下端屈曲部35を形成する第2工程と、を経て形成される。
【0050】
(前工程)
前工程では、
図7(b)に示すように、開口筒部25aの開口先端(切断端部)38を径方向外側に折り畳んで、先端に折畳部37を有する開口筒部25bを形成する。この前工程では、初めに
図7(a)に示すように開口筒部25aの開口先端38を径方向外方に向けてフランジ加工して第1フランジ部26を形成した後、第1フランジ部26の先端側に缶軸O方向の上方から押圧力を加えて缶底方向に向けて押し下げることにより、
図7(b)に示すように折畳部37を形成する。
【0051】
(第1工程)
次に、第1工程では、
図7(d)に示すように、折畳部37が形成された開口筒部25bの先端55をUターンさせるように径方向外方に折り返して、その先端55を缶底方向に向けた折返部28を形成する。この第1工程では、
図7(c)に示すように開口筒部25bの先端を径方向外側に向けてフランジ加工して折返部28の外周部28oとなる第2フランジ部27を形成した後、
図7(d)に示すように第2フランジ部27の先端側に缶軸O方向の上方から押圧力を加えて缶底方向に向けて押し下げることにより、先端の折畳部37を内側に巻き込むようにして折り返す。これにより、開口筒部25bの先端に形成された折畳部37が折返部28の内側に折り込まれ、折返部28の外周部28oと内周部28iとの間に配置される。
【0052】
図7(d)及び
図8は、このようにして成形された折返部28を示しており、中間成形体53の開口端部の先端(缶軸O方向の先端)56が上方に凸となる円弧面に形成され、その下方に折返部28の基端側の内周部28iと先端側の外周部28oとがほぼ平行に配置される。そして、折畳部37よりも缶軸O方向の上側部分に折返部28で囲まれた空間部40が形成される。このように、折返部28の外周部28oと内周部28iとの間に折畳部37を配置しているので、空間部40は、少なくとも折畳部37の板厚分の幅をもって形成される。
【0053】
(第2工程)
第2工程では、
図8に示すように、折返部28の缶軸O方向の上側部分を残して下側部分の少なくとも一部を挟持するように径方向外方から折返部28の外周部28oを押圧することにより、その挟持部分に下端屈曲部35を形成し、その挟持部分よりも缶軸O方向上側に天頂折返部34を形成する。また、第2工程では、折返部28の外周部28oに下端屈曲部35及び天頂折返部34を形成する際に、折返部28の内周部28i及び外周部28oの形状を整えることにより、内側直立部32、天頂屈曲部33、天頂部31、外側直立部36等の形状も最終形状に整えられる。
【0054】
具体的には、第2工程は、例えば、
図8に二点鎖線で示すように、折返部28の径方向内方に挿入される内側ロール61と、折返部28の径方向外方に配置される外側ロール62と、を用いて実施される。外側ロール62の成形面には、径方向内方に突出する成形凸部621が設けられており、この成形凸部621で折返部28の外周部28o(外周面)を押圧することにより、
図3に示すようにカール部24の最大外径D1よりも径方向内方に凸となる下端屈曲部35を形成する。なお、外側ロール62の成形凸部621の上下の成形面は、
図8に示すようにストレート状に形成されており、下端屈曲部35の成形時に、天頂折返部34や外側直立部36が径方向外方に向けて突出することがないように、カール部24の最大外径D1を規定する。また、内側ロール61の成形面も、
図8の断面に示すようにストレート形状に形成されており、下端屈曲部35の成形時に、径方向内方から折返部28の内周部28iを押圧することにより、内側直立部32や天頂屈曲部33が径方向内方に向けて突出することがないように、カール部24の内周面を支持する。
【0055】
そして、第2工程では、
図8の白抜き矢印で示すように、内側ロール61と外側ロール62とを相互に接近させることにより、折返部28の内周部28i(内側直立部32)に内側ロール61を当接させ、折返部28の外周部28oに外側ロール62を当接させて、折返部28を径方向に押しつぶすようにして挟持し、外側ロール62の成形凸部621により径方向外方から折返部28の外周面を押圧する。この際、外側ロール62は、空間部40の径方向外方から外周部28oの外周面に当てられるようになっている。このように、折返部28の内側には空間部40が設けられているので、その空間部40の径方向外方から外側ロール62で押圧することにより、確実に折返部28の外周部28oの一部を径方向内方に突出するようにして折り曲げることができる。したがって、内側ロール61と外側ロール62との挟持部分に下端屈曲部35を形成でき、その挟持部分よりも缶軸O方向上側に天頂折返部34を形成できる。これにより、カール部24の成形が完了し、
図3に示すように、カール部24を有するボトル缶101が製造される。
【0056】
このように構成されるボトル缶101の口部13にキャップ201を装着する場合、例えば、
図9に示すようなキャッピングヘッド70を複数備えるキャッピング装置が用いられる。
この場合、キャッピングヘッド70は、キャップ押さえ731を備えたプレッシャーブロック73と、ねじ部成形ロールとしての第1ロール71と、ピルファープルーフロールとしての第2ロール72とを備えている。プレッシャーブロック73は下端部が筒状に形成されており、その内側に配置されるキャップ押さ731との間で缶軸O方向に相対移動可能であり、キャップ押さえ731との間にばね732が設けられている。また、第1ロール71及び第2ロール72はプレッシャーブロック73の周囲を旋回可能かつ缶軸O方向に移動可能に支持されている。
【0057】
まず、
図2(a)に示すように、ボトル缶101の口部13にキャップ201を被せた状態で、
図4及び
図9に示すように、キャップ押さえ731によりキャップ201の天板部211を押さえ、その状態でプレッシャーブロック73により天板部211の周縁の外周部を絞り成形する。このようにキャップ装着時にプレッシャーブロック73でキャップ201が絞り加工されることにより、キャップ201の天板部211の外周部から円筒部212の上端部にかけた部分が縮径され、その部分のキャップ201の外面に絞り部241が環状に形成される。そして、絞り部241に缶軸O方向下方及び径方向内方に向けた荷重が作用することで、
図4に示すように、キャップ201の内側においては、ライナー250の密封層252におけるシール部254が、カール部24の天頂部31に向かって缶軸O方向下方に押し付けられるとともに、カール部24の天頂部31よりも径方向外側に突出したシール部254の外周部分が、カール部24の外周面の広い範囲に押し付けられる。
【0058】
具体的には、天頂部31から下端屈曲部35の一部にかかる位置までの外周面に沿って、ライナー250が折り曲げられた状態で径方向内方に向けて押し付けられる。これにより、シール部254は、カール部24の天頂部31から下端屈曲部35の上側部分にかけて密接する。また、
図4に示すように、ライナー250は、カール部24の天頂折返部34とキャップ本体210との間で最も圧縮させられ、その厚みが小さくなる。
【0059】
このプレッシャーブロック73による絞り加工が施された後、第1ロール71によりキャップ本体210の上部にボトル側ねじ部22に沿ってキャップ側ねじ部229を成形するとともに、第2ロール72によりキャップ本体210の下部を膨出部21に巻き込んで固定する。これにより、ライナー250の密封層252がカール部24に圧接し、キャップ201が口部13に装着され、ボトル缶101を密封状態としてキャップ付きボトル缶301となる。
【0060】
このようにして密封されたキャップ付きボトル缶301においては、上述したように、ボトル缶101にキャップ201が装着されたときに、ライナー250が少なくともカール部24の天頂部31から下端屈曲部35の上側までの範囲に密接することになる。このように、広い範囲でライナー250とカール部24とが密接するので、密封性を高めることができる。
【0061】
このキャップ付きボトル缶301は、炭酸飲料や窒素ガス封入飲料等の陽圧状態の内容物を充填する陽圧缶として用いる場合に特に好適である。すなわち、陽圧缶においてボトル缶101に作用する内圧は、キャップ201の天板部211に対しては缶軸O方向の上方に持ち上げるように作用し、それに伴い、シール部254の内周部分においてはカール部24の天頂部31への押圧力が小さくなる方向に作用するが、シール部254の天頂部31よりも外周部分においては、最も圧縮されている付近を中心とするモーメントにより、逆に下端屈曲部35への押圧力を大きくする方向に作用する。このため、カール部24の外周面の天頂折返部34から下端屈曲部35の上側部分にかけた範囲においてライナー250のシール部254が圧接し、ライナー250の持ち上がりを規制できる。したがって、カール部24とライナー250との密接状態を維持でき、キャップ付きボトル缶301の高い密封性を維持できる。
【0062】
また、炭酸飲料の場合、コーヒー飲料等のようにレトルト殺菌される内容物の場合と異なり、充填後の熱処理は一般に低い温度でなされる。なお、レトルト殺菌の場合は100℃を超える温度で熱処理されることにより、密封層252が軟化し、カール部24が密封層252(シール部254)に大きく食い込んで密接するため、優れた密封性を発揮することができる。これに対して、炭酸飲料の場合は、熱処理温度が低いため、カール部24への食い込みはレトルト殺菌したものに比べて少なくなる。そこで、この実施形態では、カール部24に密接する範囲に下端屈曲部35を設けて、この下端屈曲部35にシール部24を強く圧接させることにより、密封性を高めている。
【0063】
一方、このように密封性が高い場合、開栓のための開栓トルクが高くなり、キャップ201が開けづらくなるおそれがあるが、本実施形態のキャップ201は、キャップ本体210にライナー250の摺動層251が接しているので、開栓時にキャップ本体210と摺動層251とが摺動することにより、開栓トルクの増大を抑制することができる。
【0064】
(第2実施形態)
以上のように構成されるボトル缶は、前述したほぼシート状のライナー250を備えるキャップ201の他にも、
図10及び
図11に示すように成形されたライナー260を備えるキャップ202にも適用することができる。以下の第2実施形態の説明及び
図10及び
図11では、前述の第1実施形態と共通する部分について同一符号を用いて説明を簡略化する。
【0065】
図10は、ボトル缶101の口部13にキャップ202を巻き締める前のキャッピング前の状態を示す要部断面図である。また、
図11は、ボトル缶101の口部13にキャップ202を巻き締めたキャッピング後の状態であり、キャップ付きボトル缶302の要部断面図を示している。
第2実施形態では、ライナー260は、密封層261の外周部に形成された環状のシール部262が、同心円の二重の環状に形成された内側凸条部81及び外側凸条部82と、これら内側凸条部81と外側凸条部82との間に形成された凹溝部83と、を有する。この場合、内側凸条部81と外側凸条部82の缶軸O方向の高さH3,H4を天頂折返部34の高さH1より大きく設定しておく。また、凹溝部83の径方向の開口幅W3をカール部24の径方向の幅W0と同じか、それよりも小さく設定しておく。
【0066】
このライナー260を有するキャップ202をボトル缶101の口部13に被せると、キャップ押え731によりキャップ本体210の天板部211が缶底方向に押圧されることで、シール部262の凹溝部83にカール部24が押し込まれ、凹溝部83内にカール部24が嵌合する。この嵌合の初期段階では、内側凸条部81と外側凸条部82との間隔が押し広げられるが、カール部24の天頂部31が凹溝部83の底面まで達すると、両凸条部81,82の先端部がシール部262の弾性力により、相互に接近する方向に間隔が狭められる。また、プレッシャーブロック73によりキャップ本体210の天板部211の外周側が缶底方向に押圧されながら絞り加工されると、
図11に示すように、天板部211の周縁の外周部に絞り部241が形成され、ライナー250の周縁部がカール部24の外周面に押し付けられる。これにより、シール部262の外側凸条部82がカール部24の外周面の天頂折返部34及び下端屈曲部35の上側部分に押し付けられることで変形し、内側凸条部81がカール部24に引き寄せられ、カール部24の内周面(主に天頂屈曲部33)に密接する。
【0067】
このように、ボトル缶101では、内側凸条部81及び外側凸条部82と凹溝部83とを有するライナー260を備えたキャップ201を装着することにより、シール部262にカール部24を広い範囲で密接させることができる。したがって、キャップ付きボトル缶302の密封性を一層高めることができる。
【0068】
(第3実施形態)
第1実施形態及び第2実施形態では、カール部24の外周面の下端部分に、天頂折返部34の最大外径D1と同じ径で形成した外側直立部36を形成し、下端屈曲部35をこれら両側に配設される天頂折返部34の最大外径及び外側直立部36の最大外径よりも径方向の内側に凹ませた凹溝状に形成していたが、下端屈曲部の形状は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、
図12及び
図13に示す第3実施形態のように、カール部94の外周面の外側直立部96を下端屈曲部95の最小外径と同じ径で形成することもできる。以下の第3実施形態の説明及び
図12及び
図13では、前述の第1実施形態及び第2実施形態と共通する部分について同一符号を用いて説明を簡略化する。
【0069】
図12は、ボトル缶102の口部13にキャップ201を巻き締める前のキャッピング前の状態を示す要部断面図である。また、
図13は、ボトル缶102の口部13にキャップ201を巻き締めたキャッピング後の状態であり、キャップ付きボトル缶303の要部断面図を示している。
【0070】
第3実施形態のボトル缶102を製造する際には、第1実施形態と同様に、中間成形体53の開口端部に折返部28を形成する。折返部28を形成する第1工程までの製造工程は、第1実施形態と同様であり、第3実施形態では説明を省略する。
【0071】
(第2工程)
第2工程では、
図14に示すように、折返部28の缶軸O方向の上側部分を残して下側部分の少なくとも一部を挟持するように径方向外方から折返部28の外周部28oを押圧することにより、その挟持部分に下端屈曲部95を形成し、その挟持部分よりも缶軸O方向上側に天頂折返部34を形成する。また、この第2工程では、折返部28の外周部28oに下端屈曲部35及び天頂折返部34を形成する際に、下端屈曲部95の形成領域と併せてさらに下側の折返部28の下側部分を押圧することにより、天頂折返部34の最大外径よりも径方向内方位置にストレート状の外側直立部96を形成する。さらに、第2工程では、折返部28の内周部28i及び外周部28oの形状を整えることにより、内側直立部32、天頂屈曲部33、天頂部31等の形状も最終形状に整えられる。
【0072】
具体的には、第3実施形態では、第2工程は、例えば、
図14に二点鎖線で示すように、折返部28の径方向内方に挿入される内側ロール61と、折返部28の径方向外方に配置される外側ロール63と、を用いて実施される。内側ロール61の構成は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。一方、外側ロール63の成形面には、径方向内方に突出する成形凸部631が設けられており、この成形凸部631で折返部28の外周部28o(外周面)を押圧することにより、
図14に二点鎖線で示すようにカール部94の最大外径D1よりも径方向内方に凸となる下端屈曲部95を形成するとともに、下端屈曲部95の最小外径位置に連続するストレート状の外側直立部96を形成する。なお、
図14の断面に示すように、成形凸部631の上側部分が下端屈曲部95の成形面とされ、缶軸O方向の下方に向かうにしたがって漸次縮径された成形面とされている。また、成形凸部631の下側部分が外側直立部96の成形面とされており、
図14の断面に示すように、成形凸部631の最小外径位置において缶軸O方向に沿ったストレート状の成形面とされている。一方、外側ロール63の成形凸部631の上側の成形面は、
図14に示すように成形凸部631の最大外径位置において缶軸O方向に沿ったストレート状に形成されており、下端屈曲部95の成形時に、天頂折返部34が径方向外方に向けて突出することがないように、カール部94の最大外径D1を規定する。
【0073】
そして、第2工程では、
図14の白抜き矢印で示すように、内側ロール61と外側ロール63とを相互に接近させることにより、折返部28の内周部28i(内側直立部32)に内側ロール61を当接させ、折返部28の外周部28oに外側ロール63を当接させて、折返部28を径方向に押しつぶすようにして挟持し、外側ロール63の成形凸部631により径方向外方から折返部28の外周面を押圧する。この際、折返部28の内側には空間部40が設けられているので、その空間部40の径方向外方から外側ロール63で押圧することにより、折返部28の外周部28oの一部を径方向内方に突出するようにして折り曲げることができる。また、折返部28の内周部28iと外周部28oとの間には予め折畳部37が配置されているので、内側ロール61と外側ロール63により折返部28の大部分を挟持した際に、内周部28iと外周部28oとの間に折畳部37の板厚分のスペースが確実に確保され、カール部94の上側部分の湾曲面(天頂屈曲部33、天頂部31、天頂折返部34)の形状(曲率半径)を高精度に形成できる。これにより、カール部94の成形が完了し、
図12に示すように、カール部94を有するボトル缶102が製造される。
【0074】
このボトル缶102にキャップ201を装着する際には、
図12に示すように、ボトル缶102の口部13にキャップ201を被せた状態で、
図13に示すように、キャップ押え731によりキャップ201の天板部211を押さえ、プレッシャーブロック73により天板部211の周縁の外周部を絞り成形する。この際、天板部211の外周部に絞り部241が形成され、キャップ201の内側に配設されたライナー250に缶軸O方向下方及び径方向内方に向けた荷重が作用することで、ライナー250の周縁部がカール部94の外周面に押し付けられる。カール部94の外周面には、径方向外方に向けて凸となる天頂折返部34と、この天頂折返部34の下端に連続して径方向内方に向けて凸となる下端屈曲部95と、が設けられており、この下端屈曲部95の上端がカール部94の比較的上側に配置されている。このため、キャッピング時に、ライナー250を下端屈曲部95にかかる位置まで密接させることができる。したがって、キャップ201に内圧が作用する際にも、ライナー250が下端屈曲部95の上側部分に、より強く密接することになり、高い密封性を維持できる。
【0075】
(第4実施形態)
以上のように構成されるボトル缶102は、前述したほぼシート状のライナー250を備えるキャップ201の他にも、
図10等に示す第2実施形態と同様に、ライナー260を備えるキャップ202にも適用することができる。ボトル缶102の構成及びキャップ202の構成は上記の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0076】
図15は、ボトル缶102の口部13にキャップ202を巻き締めたキャップ付きボトル缶304の要部断面図を示している。この
図15に示すように、第4実施形態のキャップ付きボトル缶304においても、キャッピング時に天板部211の周縁の外周部に絞り部241が形成され、ライナー260の周縁部がカール部94の外周面に押し付けられることにより、シール部262の外側凸条部82が変形し、内側凸条部81がカール部94に引き寄せられ、カール部94の内周面(主に天頂屈曲部33)に密接するので、シール部262にカール部94を広い範囲で密接させることができる。したがって、キャップ付きボトル缶304の密封性を一層高めることができる。
【0077】
(他の実施形態)
なお、上述した第1〜第4実施形態のボトル缶101,102では、開口端部の切断端部(開口先端38)をカール部24,94の内側に折り畳むようにして折畳部37を形成していたが、
図16に示すボトル缶103のように、切断端部(開口先端38)をカール部98の内側に完全に折り畳むことなく、外周面にテーパ部97を形成してもよい。
この場合も、カール部98の外周面に下端屈曲部35を形成したことにより、ライナー250を下端屈曲部35の上側部分に密接させることができるので、キャップ付きボトル缶305の高い密封性を維持できる。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【解決手段】ボトル缶は、口部の外周部に、開口先端を径方向外方に折り返した状態に形成されたカール部を有し、カール部の外周面は、缶軸方向に沿う縦断面において、カール部の上端の天頂部から連続して径方向外方に向けて凸となる天頂折返部と、天頂折返部の下端に連続して径方向内方に向けて凸となる下端屈曲部と、を有し、天頂部から下端屈曲部の上端までの缶軸方向の高さが、カール部の高さの7/10以上9/10以下の範囲に形成されている。