特許第6496874号(P6496874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6496874
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/38 20180101AFI20190401BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20190401BHJP
   H04W 40/02 20090101ALI20190401BHJP
【FI】
   H04W4/38
   H04W84/12
   H04W40/02
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-162971(P2018-162971)
(22)【出願日】2018年8月31日
【審査請求日】2018年9月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516047175
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズインダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】青江 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】加茂 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】旗手 朋和
(72)【発明者】
【氏名】西原 康雄
(72)【発明者】
【氏名】是永 元尚
(72)【発明者】
【氏名】西口 均
【審査官】 古市 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−022416(JP,A)
【文献】 特開2016−100803(JP,A)
【文献】 特開2008−042399(JP,A)
【文献】 特開2015−082303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントのフィールド機器に信号線で接続される無線通信機器であって、
前記信号線から入力される入力信号の信号値をデータ化した信号データを生成する信号入力部と、
前記信号データを無線で送信するための無線通信部と、
他の無線通信機器に有線で接続される機器間通信部と、
前記無線通信部を介した前記信号データの無線通信処理、または前記機器間通信部を介した前記信号データの迂回通信処理、の少なくとも一方の通信処理を実行する通信処理部と、を有する複数の無線通信機器と、
前記無線通信機器から無線で送信された前記信号データを取集する、制御装置またはゲートウェイ装置である収集装置であって、前記複数の無線通信機器の各々が有する前記無線通信部とそれぞれ無線で直接通信する無線機器に有線接続され、前記無線機器を介して、前記複数の無線通信機器のうちの少なくとも1つに前記信号データの送信要求を送信する収集装置と、を備え、
前記複数の無線通信機器の各々は、前記複数の無線通信機器がそれぞれ生成する前記信号データを共有するための複数の共有グループのいずれかに属し、
前記複数の無線通信機器の各々は、前記送信要求を受信すると、該無線通信機器が属する前記共有グループで共有されている全ての前記信号データを前記収集装置に無線で送信することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記無線通信機器は、前記信号線を介して前記フィールド機器に駆動電源を供給する電源供給部を、さらに有することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記無線通信機器は、前記信号入力部により生成される前記信号データ、および前記機器間通信部を介して受信される、前記他の無線通信機器により生成される信号データを記憶するデータ共有部を、さらに有し、
前記通信処理部は、少なくとも、前記迂回通信処理を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記通信処理部は、前記無線通信部を介して前記信号データの前記送信要求を受信すると、前記無線通信処理を実行し、前記データ共有部に記憶されている少なくとも1つの前記信号データを送信することを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記収集装置は、前記無線機器を介して、前記複数の共有グループの各々毎に定められる代表の前記無線通信機器に対してそれぞれ前記送信要求を送信した後、所定時間が経過しても前記送信要求に応じた前記信号データが受信されない前記代表の無線通信機器が存在した場合には、前記送信要求に応じた前記信号データが受信されない前記代表の無線通信機器と同一の前記共有グループに属する他の前記無線通信機器に、前記無線機器を介して、前記送信要求を送信することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記収集装置は、前記無線機器を介して、前記複数の無線通信機器の全てに前記送信要求を送信することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
同一の前記共有グループ内の前記無線通信機器は、同じ電源から電力の供給を受けることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラントに設置されるフィールド機器に接続され、フィールド機器の入出力信号を無線で通信(中継)する無線通信機器を備える通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、プラントには、差圧変換器や温度変換器などの計測器(発信器)や、調節弁といった操作端などとなるフィールド機器が多数設置される。これらのフィールド機器は制御装置に接続されており、温度、流量、圧力などの計測値を制御装置に定期的に送信したり、制御装置から受信した操作指令(例えば弁開度の指令値など)に従って動作したりする。この際、フィールド機器への入出力は4〜20mAの直流のアナログ信号で行われ、アナログ信号の信号値で計測値や操作指令の内容が通信される。上記の直流のアナログ信号に交流のデジタル信号が重畳(周波数変調)されることで、複数の情報を同時に通信することも可能であり、このような通信方式は、HART通信などハイブリッド通信(スマート通信)として知られている。
【0003】
従来は、これらの各種のフィールド機器と制御装置とは個別の信号線でそれぞれ接続されていた。近年では、配線コストやメンテナンスコストの低減のため、各フィールド機器と制御装置との間を無線化が進められている(特許文献1参照)。例えば特許文献1では、複数のフィールド機器が接続された無線中継装置は、各フィールド機器から入力されるアナログ信号をデータ(デジタルデータ)に変換し、データ化されたアナログ信号となる信号データを無線LANで接続された制御装置に対してデータ通信する。また、特許文献1には、無線中継装置を無線だけでなく有線でも制御装置に接続させ、通信経路の状況に応じて有線通信または無線通信に切り換える切換手段を設けることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−333189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、無線通信(無線接続)は、電波が届きにくいと通信速度が遅くなったり、通信が不安定になったりするなど電波状況に応じて通信品質が変化するため、有線通信(有線接続)に比べて信頼性が劣る。このため、フィールド機器と制御装置との間の無線化は、計測対象を低頻度で計測できれば良いようなリアルタイム性を問わないデータの収集への適用は容易であるが、リアルタイム性が重視されるような制御指令や重要なデータの収集への適用は、短時間の停止がプラントの動作上致命的となる可能性があるため容易ではない。このため、例えば特許文献1のように、フィールド機器と制御装置との間の通信経路を無線および有線で二重化すると、有線接続のために要する配線コスト等を要するため、無線化によるメリットが十分に得られない。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、プラントに設置されるフィールド機器の通信を信頼性良く無線で中継可能な無線通信機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る無線通信機器は、
プラントのフィールド機器に信号線で接続される無線通信機器であって、
前記信号線から入力される入力信号の信号値をデータ化した信号データを生成する信号入力部と、
前記信号データを無線で送信するための無線通信部と、
他の無線通信機器に有線で接続される機器間通信部と、
前記無線通信部を介した前記信号データの無線通信処理、または前記機器間通信部を介した前記信号データの迂回通信処理、の少なくとも一方の通信処理を実行する通信処理部と、を備える。
【0008】
上記(1)の構成によれば、無線通信機器は、例えばプラントの制御装置などの通信先へ信号データを送信するにあたって、自機から無線で送信することと、有線で接続された他の無線通信機器を介して送信することが可能に構成される。よって、例えば周囲の電波状況が良好の場合には信号データを自機から無線で送信し、電波状況が悪い場合には、周囲の電波状況が良好となっているような他の無線通信機器を介して信号データを送信することが可能となる。これによって、無線通信機器から通信先に対する信号データの通信がより確実に行えるように図ることができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記信号線を介して前記フィールド機器に駆動電源を供給する電源供給部を、さらに備える。
【0010】
上記(2)の構成によれば、無線通信機器は、ディストリビュータ(電源供給装置)の機能を有しており、フィールド機器に対して信号線を介して電源を供給する。これによって、フィールド機器に対して電源供給を行うことができる。また、従来必要であった、制御装置側から信号線を介して電源を供給する電源供給装置(ディストリビュータ)を不要とすることができ、プラントのコストを抑制することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(2)の構成において、
前記信号入力部により生成される前記信号データ、および前記機器間通信部を介して受信される、前記他の無線通信機器により生成される信号データを記憶するデータ共有部を、さらに備え、
前記通信処理部は、少なくとも、前記迂回通信処理を実行する。
【0012】
上記(3)の構成によれば、無線通信機器は、自機が生成した信号データを他の無線通信機器に送信すると共に、他の無線通信機器が生成した信号データを受信して記憶(保管)する。つまり、複数の無線通信機器間において、周囲の電波状況にかかわらず、各無線通信機器が生成した各信号データを機器間で通信し合い、互いの信号データを共有するように構成される。このようにすれば、電波状況の良好な無線通信機器が1つでもあれば、その無線通信機器から通信先に信号データを適時に送信することが可能となる。したがって、無線通信機器から通信先に対する信号データの通信をリアルタイムに、確実に行えるように図ることができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記通信処理部は、前記無線通信部を介して前記信号データの送信要求を受信すると、前記無線通信処理を実行し、前記データ共有部に記憶されている少なくとも1つの前記信号データを送信する。
【0014】
上記(4)の構成によれば、無線通信機器は、無線通信された送信要求の受信に応じて、共有されている、各無線通信機器で生成された信号データで構成される複数の信号データを無線で送信する。つまり、複数の無線通信機器がそれぞれ生成した信号データが、上記の送信要求を受信した無線通信機器から送信される。これによって、複数の信号データを1つの無線通信機器から集約された形で送信することができ、複数の信号データを効率良く無線で送信することができる。
【0015】
(5)本発明の少なくとも一実施形態に係る通信システムは、
プラントのフィールド機器に信号線で接続され、前記信号線から入力される入力信号の信号値をデータ化した信号データを無線で送信可能な複数の無線通信機器と、
前記無線通信機器から無線で送信された前記信号データを取集する収集装置であって、前記複数の無線通信機器のうちの少なくとも1つに前記信号データの送信要求を送信する収集装置と、を備え、
前記複数の無線通信機器の各々は、前記複数の無線通信機器がそれぞれ生成する前記信号データを共有するための複数の共有グループのいずれかに属し、
前記複数の無線通信機器の各々は、前記送信要求を受信すると、該無線通信機器が属する前記共有グループで共有されている全ての前記信号データを前記収集装置に無線で送信する。
【0016】
上記(5)の構成によれば、上記(3)〜(4)と同様の効果を奏する。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記収集装置は、前記複数の共有グループの各々毎に定められる代表の前記無線通信機器に対してそれぞれ前記送信要求を送信した後、所定時間が経過しても前記送信要求に応じた前記信号データが受信されない前記代表の無線通信機器が存在した場合には、前記送信要求に応じた前記信号データが受信されない前記代表の無線通信機器と同一の前記共有グループに属する他の前記無線通信機器に前記送信要求を送信する。
【0018】
上記(6)の構成によれば、収集装置は、各共有グループを代表する無線通信機器から信号データが得られない場合に、同一の共有グループに属するの他の無線通信機器から信号データを得るように動作する。これによって、信号データを確実に得ることができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記収集装置は、前記複数の無線通信機器の全てに前記送信要求を送信する。
【0020】
上記(7)の構成によれば、収集装置は、複数の無線通信機器に対して送信要求を同時期に行う。このため、送信要求を受信できた1以上の無線通信機器から同じ内容の信号データを同時期に受信することになる。よって、トラフィックは増大するものの、信号データを迅速に(遅延なく)得ることができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(5)〜(7)の構成において、
同一の前記共有グループ内の前記無線通信機器は、同じ電源から電力の供給を受ける。
【0022】
上記(8)の構成によれば、同一の共有グループ内の無線通信機器は電源を共有する。これによって、同一の共有グループ内に属する無線通信機器を、機器間通信部を介して、通信用の通信線と電源供給用の電源線とで構成される複合ケーブルを用いて接続すれば、信号データの共有のための通信線を別途設けることなく、複合ケーブルで通信可能に接続された無線通信機器間で信号データを共有することができる。また、無線通信機器同士の接続状態から各共有グループに属する無線通信機器の判別が容易になるなど、管理が容易となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、プラントに設置されるフィールド機器の通信を信頼性良く無線で中継可能な無線通信機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る無線通信機器の構成を概略的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る通信システムの構成を概略的に示す図であり、複数の無線通信機器が共有グループにグループ分けされている。
図4】本発明の一実施形態に係る収集装置が要求する信号データの要求方式を説明するための図であり、送信要求は共有グループ毎に代表の無線通信機器に送信される。
図5】本発明の一実施形態に係る収集装置が要求する信号データの要求方式を説明するための図であり、送信要求は共有グループ毎に複数の無線通信機器に送信される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システム7の構成を概略的に示す図である。通信システム(以下、プラント通信システム7は、プラントに設置されるフィールド機器8とプラントの制御装置91(以下、単に、制御装置91)とを通信可能に接続するための通信システムである。フィールド機器8は、例えば温度、流量、圧力などを計測し、計測値をアナログ信号で通信する各種の計測器81(センサ)や、例えばリミットスイッチなどのスイッチのオン、オフを2値信号で通信するデジタル入力機器83などとなる入力機器や、アナログ信号で制御される調節弁(バルブ)などの制御機器82や、オン、オフの2値信号で制御される電磁弁(ON−OFF弁)などのデジタル出力機器84などとなる操作端(出力機器)などであり、プラントには、通常、複数のフィールド機器8が設置される。また、制御装置91は、例えば分散制御システム(DCS:Distributed Control System)であり、各種のフィールド機器8からそれぞれ送られてくる各種の計測値などのプラントの状態を示す状態情報の収集や、各種のフィールド機器8に対するの制御指令(指令値)の演算や送信などを通してプラントを制御する。
【0027】
そして、プラント通信システム7は、図1に示すように(後述する図3も同様)、フィールド機器8に接続される少なくとも1つ(図1では複数)の無線通信機器1と、この無線通信機器1から無線で送信された信号データDを収集する上記の制御装置91などとなる収集装置9と、を備える。つまり、プラント通信システム7において、フィールド機器8と制御装置91との間の通信経路上には、無線で通信(中継)が行われる無線通信区間が設けられる。より具体的には、制御装置91には上記の無線通信機器1と無線通信が可能な無線機器93が接続されており、無線通信機器1と制御装置91側の無線機器93との間が無線通信区間となる。
【0028】
図1に示す実施形態では、制御装置91は有線ネットワーク72を介して無線機器93に接続されている。無線機器93はアクセスポイントであり、上記の無線通信機器1とは、IEEE802.11の諸規格に準拠した通信を行うようになっている。なお、他の幾つかの実施形態では、制御装置91と、制御装置91側の無線機器93とが有線で直接接続されていても良い。無線機器93は複数設置されていても良い。
【0029】
また、図1に示すように(後述する図3も同様)、プラント通信システム7は、ゲートウェイ装置92(コンピュータ装置)をさらに備えていても良い。図1に示す実施形態では、無線機器93と制御装置91とはゲートウェイ装置92を介して接続されている。ゲートウェイ装置92は、無線機器93側と、制御装置91側とのプロトコル変換を行う役割や、複数のフィールド機器8から送信される状態情報を保存し、まとめて制御装置91に送ることにより制御装置91の負荷を軽減する役割などを担う装置である。
【0030】
すなわち、図1に示す実施形態では、ゲートウェイ装置92と制御装置91とは制御ネットワーク72cで接続されており、ゲートウェイ装置92と制御装置91との間(制御ネットワーク72c)、および、ゲートウェイ装置92と無線機器93との間(IPネットワーク72l)での通信プロトコルが異なっている。よって、ゲートウェイ装置92は、両ネットワークを跨った通信を中継するためにプロトコル変換を行うようになっている。また、このように、プロトコル変換機能を制御装置91にもたせず、ゲートウェイ装置92で実行させることにより、制御装置91の負荷を軽減している。なお、図1に示す実施形態では、ゲートウェイ装置92と制御装置91とは、ネットワーク機器94(図1図3ではハブ)を介して接続されているが、他の幾つかの実施形態では、ゲートウェイ装置92と制御装置91とは、ネットワーク機器94を介することなく、通信線で直接接続されていても良い。
【0031】
ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、制御装置91にプロトコル変換機能を実装することで、ゲートウェイ装置92を設けなくても良い。また、ゲートウェイ装置92は、インターネット75に接続されることで、インターネット上のクラウド76に状態情報のデータを送信しても良い。このようにすれば、複数のプラントの情報の一元管理や、クラウド上のデータに基づいて遠隔監視や、運転支援、予兆診断、遠隔制御などを行うことが可能となる。この場合、上記の収集装置9は、ゲートウェイ装置92であっても良い。
【0032】
次に、上記の無線通信機器1について、図2を用いて詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る無線通信機器1の構成を概略的に示す図である。
無線通信機器1は、プラントのフィールド機器8に信号線71で接続され、フィールド機器8からの入力信号Sの信号値をデータ化した信号データDを無線で送信可能な機器である。図2に示すように、無線通信機器1は、信号入力部21と、無線通信部3と、機器間通信部4と、通信処理部5と、を備える。これらの構成は、電子回路(電気回路)などで実現される。
以下、無線通信機器1が備える上述した機能部(回路)について、それぞれ説明する。
【0033】
信号入力部21は、フィールド機器8と無線通信機器1とを接続する信号線71から入力される入力信号Sの信号値をデータ化した信号データDを生成するよう構成される。図2に示すように、信号入力部21とフィールド機器8とは信号線71(有線)により接続される。そして、例えば、アナログ信号による入力を行うフィールド機器8(計測器81など)が信号線71に、計測値などがマッピングされた4〜20mAの直流のアナログ信号(入力信号S)を出力すると、アナログ信号が信号線71を伝送されることにより、入力信号Sが信号入力部21に入力される。また、信号入力部21は、入力信号S(アナログ信号)として入力される電流値または電圧値をデジタルデータにデータ化することにより、信号データDを生成する。同様に、例えば、2値信号(HighまたはLow、オンまたはオフなど)による入力を行うデジタル入力機器83が信号線71に2値信号(入力信号S)を出力すると、この2値信号が信号線71を伝送されることにより、入力信号Sが信号入力部21に入力される。信号入力部21は、2値信号をデジタルデータにデータ化することにより、信号データDを生成する。なお、信号入力部21は、複数のフィールド機器8が接続可能に構成されていても良い。
【0034】
なお、フィールド機器8が出力するアナログ信号には、アナログ信号と同時に通信する付加情報を示すデジタル信号が重畳されていても良い。付加情報は、例えば計測値を計測したフィールド機器8の識別番号などの機器情報などである。この場合には、信号入力部21は、入力信号Sに含まれるアナログ信号(直流成分)およびデジタル信号(周波数成分)を分離し、アナログ信号およびデジタル信号で通信された情報の両方を含む信号データDを生成する。このような、複数の信号を同時に伝送する通信方式はHART通信などハイブリッド通信(スマート通信)として知られている。ハイブリッド通信では、ビット値(0または1)を示す周波数を予め定めておき、直流のアナログ信号を、付加情報を構成するビット列の各ビット値(0、1)に応じた周波数でそれぞれ変調することによってデジタル信号をアナログ信号に重畳して伝送する。
【0035】
無線通信部3は、信号データDを無線で送信(通信)することが可能に構成される。無線通信部3は、後述する通信処理部5に接続されており、通信処理部5から信号データDを含む通信データが入力されると、アンテナ(図2では無指向性のホイップアンテナ)を介して無線で通信するためのフレームに通信データを載せて、フレームを無線で送信する。また、無線通信部3は、無線通信の通信相手となる無線機器93が送信したフレームを受信することも可能に構成される。これによって、無線通信の通信相手となる無線機器93との無線による双方向の通信が可能となる。
【0036】
機器間通信部4は、他の無線通信機器1に有線(通信ケーブル73)で接続するよう構成される。図2に示すように、機器間通信部4は、後述する通信処理部5に接続されており、通信処理部5から信号データDを含む通信データが入力されると、機器間通信部4に通信ケーブル73で接続された他の無線通信機器1に通信データを送信する。機器間通信部4から送信された通信データは、通信ケーブル73を伝送されて他の無線通信機器1に受信される。
【0037】
図2に示す実施形態では、機器間通信部4はシリアル通信を行うようになっている。より具体的には、機器間通信部4はRS−485規格に準拠した通信を行うようになっている。RS−485は、同一の通信ライン上に複数の無線通信機器1を接続(マルチドロップ接続)できると共に、リアルタイム性が良いという特徴を有するため、後述するような複数の無線通信機器1間でデータを共有するのに適している。他の幾つかの実施形態では、機器間通信部4は、RS−422規格などの他のシリアル通信の規格に準拠した通信を行うよう構成されても良い。その他の幾つかの実施形態では、機器間で通信できれば、機器間通信部4は、RS−232規格などの他のシリアル通信の規格や、シリアル通信以外の通信の規格に準拠した通信を行うように構成されても良い。
【0038】
通信処理部5(CPU)は、無線通信部3に信号データDを入力することにより、無線通信部3を介した信号データDの通信処理(無線通信処理)、または、機器間通信部4に信号データDを入力することにより、機器間通信部4を介した信号データDの通信処理(迂回通信処理)の少なくとも一方の通信処理を実行する。図2に示す実施形態では、無線通信機器1は、ROMやRAMといったメモリ(記憶装置m)を備えている。そして、メモリ(主記憶装置)にロードされたプログラムの命令に従ってCPU(プロセッサ)が動作(データの演算など)すること、通信処理部5による上記の通信処理が実行される。上記の無線通信処理は、TCP(UDP)/IPパケットの生成や、TCPコネクションの確立、開放、再送制御など、無線通信機器1と収集装置9との間のE2Eの通信で必要な通信制御を含んでも良い。他方、迂回通信処理は、シリアル通信に必要となる宛先アドレスの設定などの処理を含んでも良い。
【0039】
例えば、通信処理部5は、RSSIや各種のエラー率などの電波状況の評価が可能な情報を取得し、その情報に基づいて、電波状況が良好な場合には上記の無線通信処理を実行し、電波状況が良好でないと判断される場合や無線通信ができない場合には、上記の迂回通信処理を実行しても良い。図2に示す実施形態では、無線通信機器1は、RSSIなどの電波状況を測定(取得)する電波状況測定部32をさらに備えており、電波状況測定部32により測定された電波状況が通信処理部5に入力されるようになっている。なお、無線通信部3と電波状況測定部32とは1つのモジュールで構成されていても良い。また、後述するように、通信処理部5は、上記の迂回通信処理を電波状況にかかわらず実行しつつ、電波状況が良好な場合には上記の無線通信処理を実行しても良い。
【0040】
図1図2に示す実施形態では、図1に示すように、プラント通信システム7は複数の無線通信機器1を備えている。そして、複数の無線通信機器1の各々が、機器間通信部4同士を接続する通信ケーブル73で直列(数珠繋ぎ)に接続されることで、同一の通信ライン上に接続されている(後述する図3参照)。このため、任意の無線通信機器1がその機器間通信部4から送信した信号データDは、同一の通信ラインに接続されている他の少なくとも1つの無線通信機器1が受信することが可能となっている。よって、各無線通信機器1が生成した信号データDは、同一の通信ラインに接続されている無線による通信が可能な無線通信機器1から無線で収集装置9に送信することが可能になっている。
【0041】
なお、上述した構成を備える無線通信機器1は、図2に示すように、フィールド機器8に接続される信号線71に、アナログ信号やハイブリッド信号などの信号(出力信号So)を出力する信号出力部22(出力回路)を、さらに備えても良い。同様に、無線通信機器1は、デジタル出力機器84に接続される信号線71に2値信号(出力信号So)を出力する信号出力部22を備えても良い。図2に示す実施形態では、信号出力部22は、信号線71によりフィールド機器8に接続される。そして、通信処理部5は、制御装置91から送信される、例えばダンパーに対するダンパー制御や、調整弁に対する比例弁制御などによる指令値や、フィールド機器8に対する付加情報の要求を受信すると、受信した内容に対応する2値信号や、4〜20mAの信号値を判別するなどして得られる信号値を信号出力部22に入力する。信号出力部22は、入力された信号値が信号線71に伝送されるように、信号線に直流のアナログ信号や、ハイブリッド信号、2値信号を出力する。
【0042】
その他、無線通信機器1は、幾つかの実施形態では、図2に示すように、過電圧保護回路11aおよび逆極性接続保護回路11bを介して外部電源P(直流電源)に接続される電源回路11と、メンテナンス用のパソコンに接続するためのインターフェース(図2ではUSB通信回路12a)と、デバッグ用のパソコンに接続するためのインターフェース(図2ではSCI通信回路12b)と、エラーログなど、無線通信機器1と外部とで情報をやり取りするための記憶媒体の着脱が可能なインターフェース(図2では、SDカードを着脱可能なSDカードスロット13)と、計測値表示やエラーコード表示など多目的に用いることが可能な液晶表示ディスプレイ14(LCD)と、を必要な範囲で備えても良い。電源回路11以外は、必要に応じて設ければ良い。
【0043】
これらの構成は、上述した信号入力部21、無線通信部3、機器間通信部4、および通信処理部5と共に、無線通信機器1の筐体10内に収容される。
【0044】
上記の構成によれば、無線通信機器1は、例えばプラントの制御装置91などの通信先へ信号データDを送信するにあたって、自機から無線で送信することと、有線で接続された他の無線通信機器1を介して送信することが可能に構成される。よって、例えば周囲の電波状況が良好の場合には信号データDを自機から無線で送信し、電波状況が悪い場合には、周囲の電波状況が良好となっているような他の無線通信機器1を介して信号データDを送信することが可能となる。これによって、無線通信機器1から通信先に対する信号データDの通信がより確実に行えるように図ることができる。
【0045】
幾つかの実施形態では、上述した無線通信機器1は、信号入力部21により生成される信号データD、および機器間通信部4を介して受信される、他の無線通信機器1により生成される信号データDを記憶するデータ共有部6を、さらに備えていても良い。つまり、通信処理部5は、少なくとも、上記の迂回通信処理を実行することにより、機器間通信部4を介して信号データDを他の無線通信機器1に送信する。つまり、通信処理部5は、複数の無線通信機器1間で信号データDを共有するために、自機の周囲の電波状況にかかわらず、機器間通信部4を介して信号データDを通信する。
【0046】
図1図2に示す実施形態では、各無線通信機器1が機器間通信部4を介して送信する信号データDは、他の1以上の無線通信機器1が受信するようになっている。このため、各無線通信機器1のデータ共有部6には、自機が生成する信号データDと、他の1以上の無線通信機器1がそれぞれ生成する信号データDとから構成される複数の信号データDが記憶される。
【0047】
この実施形態において、幾つかの実施形態では、上述した通信処理部5は、無線通信部3を介して信号データDの送信要求Rq(以下、単に、送信要求Rq)を受信すると、上述した無線通信処理を実行し、データ共有部6に記憶されている少なくとも1つの信号データDを送信しても良い。図1図2に示す実施形態では、上記の送信要求Rqは収集装置9から送信される。また、各無線通信機器1は、送信要求Rqを受信すると、その送信元に対して、データ共有部6に記憶されている、自機で生成した信号データDと、他の無線通信機器1で生成された信号データDとを、通信データとして一緒に通信するようになっており、複数の信号データDを送信するようになっている。
【0048】
つまり、複数の無線通信機器1がそれぞれ生成した信号データDが、上記の送信要求Rqを受信した無線通信機器1から送信される。これによって、複数の信号データDを1つの無線通信機器1から集約された形で送信することができ、複数の信号データDを効率良く無線で送信することが可能となる。この時、他の無線通信機器1は、同じ信号データDを無線で送信する必要はなく、無線通信を省略できるので、消費電力の抑制を図ることも可能となる。
【0049】
ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、通信処理部5は、信号入力部21から信号データDが入力された場合や、無線通信部3を介して信号データDを定期的に収集装置9に送信するように構成されていても良い。そして、送信タイミングになると、データ共有部6に格納されている他機が生成した信号データDを、自機が生成した信号データDと共に送信しても良い。
【0050】
なお、フィールド機器8によって計測値を送信(信号線71に出力)するタイミングは同じとは限らない。よって、通信処理部5は、送信要求Rqを受信した際や定期的などの送信タイミングに、各フィールド機器8から既に受け取っている信号データDのうち、未だ収集装置9に通信できていない信号データDを一緒に送信するように無線送信処理を実行する。通信できた信号データDはデータ共有部6から消去されるなどする場合には、通信処理部5は、送信要求Rqを受信した際にデータ共有部6に残っている全ての信号データDを送信する。
【0051】
上記の構成によれば、無線通信機器1は、自機が生成した信号データDを他の無線通信機器1に送信すると共に、他の無線通信機器1が生成した信号データDを受信して記憶(保管)する。つまり、複数の無線通信機器1間において、周囲の電波状況にかかわらず、各無線通信機器1が生成した各信号データDを機器間で通信し合い、互いの信号データDを共有するように構成される。このようにすれば、電波状況の良好な無線通信機器が1つでもあれば、その無線通信機器1から通信先に信号データDを適時に送信することが可能となる。したがって、無線通信機器1から通信先に対する信号データDの通信をリアルタイムに、確実に行えるように図ることができる。
【0052】
また、幾つかの実施形態では、上述した無線通信機器1は、フィールド機器8に接続される信号線71を介してフィールド機器8に駆動電源を供給する電源供給部を、さらに備えても良い。つまり、無線通信機器1は、ディストリビュータ(電源供給装置)の機能を有しており、信号線71で接続されたフィールド機器8に、例えば一定の電圧など、電源を供給する。このため、フィールド機器8に別途電源を接続する必要がないため、フィールド機器8の近くに外部電源Pを設ける必要がなく、フィールド機器8の設置が容易となる。図2に示す実施形態では、電源供給部24が信号入力部21に接続されることにより、信号線71からフィールド機器8に電源供給がなされるようになっている。
【0053】
上記の構成によれば、無線通信機器1は、信号線で接続されたフィールド機器8に対して電源供給を行う。これによって、従来必要であって、制御装置91側から信号線71を介して電源を供給する電源供給装置(ディストリビュータ)を不要とすることができ、プラントのコストの低減を行うことができる。
【0054】
次に、プラント通信システム7が複数の無線通信機器1を備える場合を前提とした幾つかの実施形態について、図3図5を用いて説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る通信システム7の構成を概略的に示す図であり、複数の無線通信機器1が共有グループGにグループ分けされている。図4は、本発明の一実施形態に係る収集装置9が要求する信号データDの要求方式を説明するための図であり、送信要求Rqは共有グループG毎に代表の無線通信機器1に送信される。また、図5は、本発明の一実施形態に係る収集装置9が要求する信号データDの要求方式を説明するための図であり、送信要求Rqは共有グループG毎に複数の無線通信機器1に送信される。
【0055】
幾つかの実施形態では、図3図5に示すように、プラント通信システム7が備える複数の無線通信機器1の各々は、複数の共有グループGのいずれかに属するようにグループ分けされていても良い。共有グループGは、複数の無線通信機器1がそれぞれ生成する信号データDをグループ内で共有するためのグループであり、各共有グループGには1以上の無線通信機器1が所属する。そして、複数の無線通信機器1のグループ分けは、任意の方法であっても良い。
【0056】
例えば、幾つかの実施形態では、図3図5に示すように、電源(外部電源P)を共有する1以上の無線通信機器1で1つの共有グループGが構成されても良い。換言すれば、同一の共有グループG内の無線通信機器1は、例えば無線通信機器1の電源プラグ(不図示)が接続されるコンセントが同じなど、同じ電源から電力の供給を受ける。図3図5に示す実施形態では、同一の共有グループG内に属する無線通信機器1を、機器間通信部4を介して接続する上記の通信ケーブル73として通信用の通信線と電源供給用の電源線とで構成される複合ケーブルを用いている。これによって、図3に示すように、機器間通信部4を介した通信のための通信ケーブル73を電源線とは別に設けることなく、複数の無線通信機器1が、機器間通信部4を介して同一の電源に対して数珠繋ぎで接続される。よって、同一の電源を共有する1以上の無線通信機器1で共有グループGを構成することにより、信号データDの共有のための通信線を別途設けることなく、複合ケーブルで通信可能に接続された無線通信機器1間で信号データDを共有することができる。また、無線通信機器1同士の接続状態から各共有グループGに属する無線通信機器1の判別が容易になるなど、管理が容易となる。
【0057】
図3図5に示す実施形態では、第1電源DC1に接続された4つの無線通信機器1(1a〜1d)によって第1共有グループG1が構成されており、第2電源DC2に接続された3つの無線通信機器1(1e〜1g)によって第2共有グループG2が構成されている。よって、第1共有グループG1に属する各無線通信機器1のデータ共有部6には、4つの無線通信機器1(1a〜1d)がそれぞれ生成する信号データD(Da〜Dd)が記憶され、第2共有グループG2に属する各無線通信機器1のデータ共有部6には、3つの無線通信機器1(1e〜1g)がそれぞれ生成する信号データD(De〜Dg)が記憶されることになる。なお、他の幾つかの実施形態では、第1無線通信機器1aと第1電源DC1との間や、第5無線通信機器1eと第2電源DC2との間をさらに通信ケーブル73(複合ケーブル)で接続することにより、共有グループG内の無線通信機器1を、電源DCを介してリング型に接続しても良い。この場合には、共有グループG内で、いずれかの通信ケーブル73(複合ケーブル)が切れるなどしても、その共有グループG内の全ての無線通信機器1に対して継続して電源供給を行うことができる。
【0058】
また、本実施形態では、収集装置9(図3ではゲートウェイ装置92)は、複数の無線通信機器1のうちの少なくとも1つに送信要求Rqを送信するようになっている。そして、複数の無線通信機器1の各々は、送信要求Rqを受信すると、その無線通信機器1が属する共有グループGで共有されている全ての信号データDを収集装置9に無線で送信する。上述したように、この全ての信号データDは、収集装置9への通信が完了できていない全ての信号データDであっても良い。
【0059】
より詳細には、幾つかの実施形態では、図4に示すように、収集装置9は、複数の共有グループGの各々毎に定められる代表の無線通信機器1に対してそれぞれ上記の送信要求Rqを送信した後、所定時間(タイムアウト時間)が経過しても、送信要求Rqに応じた信号データDが受信されない代表の無線通信機器1が存在した場合には、送信要求Rqに応じた信号データDが受信されない代表の無線通信機器1と同一の共有グループGに属する他の無線通信機器1に送信要求Rqを送信しても良い。上記の代表とされる無線通信機器1の数は、共有グループG毎に1または複数で良い。図4に示す実施形態では、収集装置9が送信要求Rqを送信する代表の無線通信機器1は、第1共有グループG1では第1無線通信機器1aであり、第2共有グループG2では第5無線通信機器1eとなっている。
【0060】
よって、図4(a)に示すように、通信障害や無線通信機器1の故障などの異常が発生していない通常時には、収集装置9は、例えば周期的などに、第1無線通信機器1aに送信要求Rqを送信することにより、第1無線通信機器1aから応答送信される、第1無線通信機器1a〜第4無線通信機器1dの各々により生成された信号データD(D1〜D4)を受信する。また、収集装置9は、第5無線通信機器1eに送信要求Rqを送信することにより、第5無線通信機器1eから応答送信される、第5無線通信機器1e〜第7無線通信機器1gの各々により生成された信号データD(D5〜D7)を受信する。
【0061】
また、図4(b)に示すように、異常時には、収集装置9は、送信した送信要求Rqに対して応答が得られない代表の無線通信機器1と同一の共有グループGに属する他の無線通信機器1に送信要求Rqを送信する。収集装置9は、この他の無線通信機器1から送信要求Rqに対する応答が得られることにより、代表の無線通信機器1から収集しようとした信号データDを、他の無線通信機器1から代わりに得ることができる。図4(b)では、第1共有グループG1の代表となる第1無線通信機器1aへの送信要求Rqに対する応答のタイムアウトを検知すると、送信要求Rqの送信先を、同じ第1共有グループG1に属する第2無線通信機器1bに切り替えている。そして、収集装置9が送信要求Rqを第2無線通信機器1bに送信することにより、第2無線通信機器1bから、第1無線通信機器1aから受信すべき信号データDと同じ信号データDを得ている。
【0062】
上記の構成によれば、収集装置9は、各共有グループGを代表する無線通信機器1から信号データDが得られない場合に、同一の共有グループGに属するの他の無線通信機器1から信号データDを得るように動作する。これによって、信号データDを確実に得ることができる。
【0063】
他の幾つかの実施形態では、図5に示すように、収集装置9は、複数の無線通信機器1の全てに送信要求Rqを送信しても良い。図5(a)に示すように、収集装置9が全ての無線通信機器1に送信要求Rqを送信すれば、例えば図5(b)の第5無線通信機器1eのように送信要求Rqに対する応答が得られない無線通信機器1が存在しても、他の無線通信機器1(第6無線通信機器1fまたは第7無線通信機器1g)から同じ信号データDが得られることによって、収集すべき信号データDをより確実に、迅速に得られる。
【0064】
上記の構成によれば、収集装置9は、複数の無線通信機器1に対して送信要求Rqを同時期に行う。このため、送信要求Rqを受信できた1以上の無線通信機器1から同じ内容の信号データDを同時期に受信することになる。よって、トラフィックは増大するものの、信号データDを迅速に(遅延なく)得ることができる。
【0065】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、幾つかの実施形態では、収集装置9は、制御時の操作指令を送信する場合に、上述した送信要求Rqと同様の手法を適用しても良い。具体的には、1または複数の共有グループG毎の代表(1以上)の無線通信機器1に操作指令を送信したり、あるいは、全ての無線通信機器1に操作指令を送信したりしても良い。この際、複数の無線通信機器1で操作指令を機器間通信部4により共有するようにすれば、収集装置9は、操作指令の送信先のフィールド機器8が直接接続されている無線通信機器1と無線通信ができない状況であっても、無線通信が可能な他の無線通信機器1を介してリアルタイムに操作指令を送信先のフィールド機器8に届けるように図ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 無線通信機器
m 記憶装置
11 電源回路
11a 過電圧保護回路
11b 逆極性接続保護回路
12a USB通信回路
12b SCI通信回路
13 SDカードスロット
14 液晶表示ディスプレイ
21 信号入力部
22 信号出力部
24 電源供給部
3 無線通信部
32 電波状況測定部
4 機器間通信部
5 通信処理部
6 データ共有部
7 プラント通信システム(通信システム)
71 信号線
72 有線ネットワーク
72c 制御ネットワーク
72l ネットワーク
73 通信ケーブル
75 インターネット
76 クラウド
8 フィールド機器
81 計測器
82 制御機器
83 デジタル入力機器
84 デジタル出力機器
9 収集装置
91 制御装置
92 ゲートウェイ装置
93 無線機器
94 ネットワーク機器

S 入力信号
So 出力信号
D 信号データ
DC1 第1電源
DC2 第2電源
G 共有グループ
G1 第1共有グループ
G2 第2共有グループ
Rq 送信要求
P 外部電源
【要約】      (修正有)
【課題】プラントに設置されるフィールド機器の通信を信頼性良く無線で中継可能な無線通信機器を提供する。
【解決手段】無線通信機器1は、プラントのフィールド機器8に信号線で接続される。無線通信機器は、信号線71から入力される入力信号Sの信号値をデータ化した信号データDを生成する信号入力部21と、信号データを無線で送信するための無線通信部3と、他の無線通信機器に有線で接続される機器間通信部4と、無線通信部を介した信号データの無線通信処理または機器間通信部を介した信号データの迂回通信処理、の少なくとも一方の通信処理を実行する通信処理部5と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5