(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
問診サーバは、患者側端末から入力される影響要素によって記憶部に記憶された各疾患の基礎点数を変更し、変更した基礎点数に基づいて疾患を絞り込むためのカテゴライズ質問を前記患者側端末に提供することを特徴とする請求項1又は2記載の問診システム。
問診サーバは、疾患の確率の演算と質問の提供の繰り返しを終了させる特定の条件として、疾患の確率が特定数を超えるか、または、質問の数が一定数を超えた場合とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の問診システム。
問診サーバは、患者側端末に表示させた問診の質問事項と回答の内容を示すテキストデータと2次元バーコードを前記患者側端末に表示させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の問診システム。
問診サーバは、患者側端末から入力される影響要素によって記憶部に記憶された各疾患の基礎点数を変更し、変更した基礎点数に基づいて疾患を絞り込むためのカテゴライズ質問を前記患者側端末に提供することを特徴とする請求項6又は7記載のプログラム。
問診サーバは、疾患の確率の演算と質問の提供の繰り返しを終了させる特定の条件として、疾患の確率が特定数を超えるか、または、質問の数が一定数を超えた場合とすることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか記載のプログラム。
問診サーバは、患者側端末に表示させた問診の質問事項と回答の内容を示すテキストデータと2次元バーコードを前記患者側端末に表示させることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか記載のプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る問診システムは、問診サーバが、問診DBに各疾患について基礎点数を保持し、患者側端末から入力された年齢、性別等の影響要素によって基礎点数を増減し、カテゴライズ質問により鑑別すべき疾患を絞り込み、絞り込まれた疾患の事前確率を計算し、事前確率が高い疾患の推定に影響が大きい質問(尤度比が高くなることが期待される質問)から順番に鑑別質問を患者側端末に提供し、その回答結果に基づいて各疾患の確率を再計算し、疾患の確率が特定数を超えるか、鑑別質問が一定数を超えた段階で鑑別処理を終了し、問診後の確率(最終確率)が高い順に疾患名と最終確率を医師側端末に提供するものであり、これにより、問診入力の効率化を図ると共に、医師における診断を効率化するものである。
【0023】
[本システム:
図1]
本発明の実施の形態に係る問診システム(本システム)について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本システムの構成ブロック図である。
本システムは、
図1に示すように、対話式の問診を行って疾患を絞り込み、確率の高い疾患を推論する問診サーバ1と、問診サーバ1が接続するネットワーク3と、ネットワーク3に接続する患者側端末4及び医師側端末5とを基本的に備えている。
尚、患者側端末4と医師側端末5とは、本来複数台がネットワーク3に接続するものであるが、
図1では説明を簡単にするために各1台を示している。
【0024】
[本システムの各部]
[問診サーバ1]
問診サーバ1は、問診処理を実行し、記憶部12の問診情報を参照しながら、患者側端末4に質問事項を提供し、疾患の絞り込みを行い、確率の高い疾患を推定(推論)して医師側端末5に疾患の確率を提供する。
問診サーバ1は、制御部11と、記憶部12と、インタフェース部13とを備えている。
【0025】
制御部11は、記憶部12から処理プログラムを読み込んで問診処理を実行する。処理プログラムによって実現される手段には、影響要素入力手段と、事前・事後確率演算手段と、疾患絞込手段と、鑑別手段等がある。問診処理についての詳細は後述する。
【0026】
記憶部12は、処理プログラム、処理に必要なパラメータ及びデータ、問診情報を記憶する。
問診情報は、記憶部12に記憶するようにしているが、外部の問診データベースに記憶するようにしてもよく、問診データベースは、問診サーバ1に直接接続してもよいし、ネットワーク3を介して問診サーバ1に接続してもよい。
インタフェース部13は、ネットワーク3に接続するためのインタフェース部である。
【0027】
[ネットワーク3、患者側端末4、医師側端末5]
ネットワーク3は、インターネットを想定しているが、病院内のローカルネットワークであってもよい。
患者側端末4は、ネットワーク3に無線接続するタブレット等の端末装置であり、表示される質問事項に患者が回答を入力するものである。患者側端末4は、ネットワーク3に接続する基地局装置と無線通信を行う。
医師側端末5は、ネットワーク3に無線又は有線で接続するタブレット等の端末装置又は医師の診察室に設置されるパーソナルコンピュータ(PC)であり、問診サーバ1での問診処理の結果を表示するものである。
【0028】
ここで、患者側端末4は、来院した患者にクリニックが貸与して質問事項への回答を入力する端末装置を想定したが、患者が個人で所有するスマートフォン、タブレット等の患者個人端末装置であってもよい。
患者個人端末装置であれば、患者は、来院してから質問事項に回答するのではなく、予め自宅でクリニックのホームページにアクセスして質問事項のページにリンクして、質問事項を表示させて回答するようにしてもよい。
また、来院した患者が、患者個人端末装置を用いて、クリニックが用意した紙に印刷した2次元バーコード、例えばQRコード(登録商標)をアプリで読み込ませて、質問事項のページにリンクするようにしてもよい。
【0029】
[問診情報:
図2]
次に、記憶部12に記憶される問診情報について
図2を参照しながら説明する。
図2は、問診情報の関係を示す概略図である。
記憶部12内の問診情報としては、医療機関マスタ21と、主訴カテゴライズマスタ22と、疾患マスタ23と、症状マスタ24と、質問マスタ25と、実績テーブル26とを基本的に有している。
【0030】
制御部11は、これらマスタに記憶されるデータを参照して、まず、医療機関に応じた疾患リストを生成し、患者の基本情報と主訴等によって患者の疾患の絞り込みを行い、随伴症状、発症様式の質問に対する回答によって疾患の確率(患者が当該疾患であると疑われる確率)を計算して更に絞り込みを行い、疾患を絞り込むのに影響の高い順に鑑別質問を提供し、その回答によって疾患の確率を再計算して疾患の候補リスト(鑑別リスト)を生成するものである。尚、疾患の確率を演算するのに、例えば、ベイズ統計学を利用している。
具体的な診断推論のロジックは、
図3を用いて後述する。
【0031】
以下、各マスタ、テーブルを具体的に説明する。
[医療機関マスタ21]
医療機関マスタ21は、問診を行う医療機関に関するデータを記憶する。例えば、医療機関(クリニック)が「内科」であれば、当該クリニックの状況に合わせた内科に関連するデータを記憶している。つまり、クリニックが「内科」であれば、皮膚病や眼病の患者は来院することは考えられないので、医療機関マスタ21のデータに基づいて「内科」に応じた疾患リストが疾患マスタ23から生成される。
【0032】
更に、医療機関マスタ21は、後述する環境要素の当該クリニックの傾向(特殊要因)を記憶している。この特殊要因は、疾患の絞り込みに利用される。
特殊要因は、本システムを運用することで、実績テーブル26に蓄積されたデータに基づいて更新されて、疾患絞り込みの精度を向上させるものとなっている。
【0033】
[主訴カテゴライズマスタ22]
主訴カテゴライズマスタ22は、医療機関マスタ21のデータに基づいて、疾患を分類して絞り込むために、主訴についてのカテゴライズに関連する情報を記憶する。
まず、制御部11は、主訴カテゴライズマスタ22のデータを参照して、質問マスタ25から主訴を問う質問「主訴はなんですか?」を患者側端末4に出力し、その回答に対して、その症状がいつから継続しているのかを問う質問等を質問マスタ25から患者側端末4に出力し、その回答に対して症状マスタ24の症状と疾患マスタ23の疾患を参照し、クリニックに応じて患者の疾患を分類して絞り込みを行う。
【0034】
つまり、カテゴライズ質問は、質問マスタ25に記憶されており、主訴カテゴライズマスタ22は、出力(提供)するカテゴライズ質問を特定する情報が記憶され、カテゴライズ質問によって疾患を分類し、絞り込むために、当該質問の回答に対して、次に出力する質問を特定する情報を記憶している。カテゴライズ質問の例は後述する。
【0035】
[疾患マスタ23]
疾患マスタ23は、疾患(病気)に関連するデータを記憶し、各疾患に関する「基礎点数」も記憶する。
基礎点数とは、性別、年代、季節などによらず、当クリニックの外来に来るすべての患者の内、その疾患を持っている患者の総数を点数化(外来での出現頻度のランク化)したものである。疾患マスタ23に記憶されている基礎点数は、後述する診断推論ロジックの処理における初期値となる。基礎点数の詳細は後述する。
【0036】
[症状マスタ24]
症状マスタ24は、症状に関連するデータを記憶する。症状に関連するデータは、疾患マスタ23の症状のデータと紐づいており、カテゴライズ質問に対する回答の症状について症状マスタ24が参照され、疾患の分類、絞り込みに利用される。
また、後述する鑑別質問への回答の症状についても症状マスタ24が参照され、疾患の確率を演算するのに利用される。
【0037】
具体的には、制御部11は、カテゴライズ質問への回答に応じて症状マスタ24の症状を検索し、回答と症状に基づいて疾患マスタ23の疾患を検索して、質問マスタ25から適正な質問を生成して出力する。例えば、症状が「発熱」であれば、「いつから熱がありますか?」との質問を生成する。
また、鑑別質問においても、症状に関連する回答があると、症状マスタ22と疾患マスタ23を参照して、症状に応じた質問を生成する。
【0038】
[質問マスタ25]
質問マスタ25は、カテゴライズ質問、鑑別質問を記憶する。
カテゴライズ質問は、疾患を分類して当該患者に該当する可能性のある疾患を絞り込むための質問である。
鑑別質問は、絞り込まれた疾患について、当該患者がその疾患であると疑われる確率(疾患の確率)を算出するための個別質問である。
カテゴライズ質問と鑑別質問についての詳細は後述する。
また、質問マスタ25には、質問と予想される回答に応じて尤度比が設定されている。尤度比は、疾患の確率を計算する際に用いられるもので、詳細は後述する。
【0039】
[実績テーブル26]
実績テーブル26は、上記のカテゴライズ質問と回答、鑑別質問と回答を問診回答結果データとして記憶し、絞り込まれた疾患の疾患名と疾患の確率を鑑別リストとして記憶する。
そして、実績テーブル26は、クリニックの過去数年分の実績データ(病気毎の患者数の総計等)を記憶している。尚、実績データは、後述する環境要素として利用される。
【0040】
[診断推論ロジック:
図3]
次に、本システムにおける問診サーバにおける診断推論のロジックについて
図3を参照しながら説明する。
図3は、診断推論のロジックを示す概略図である。
図3の左側は、取り扱う情報(入力情報[Input]と出力情報[Output])を記載している。
図3の右側は、左側の情報によって制御部11で実行される処理を示しており、右側の一連の処理が診断推論のロジックのフローとなっている。
そして、当該フローの出力が「鑑別リスト」である。
【0041】
診断推論のロジックを説明する。
図2に示した医療機関マスタ21から、患者が問診を受けるクリニック(例えば、内科等)に関するデータを取得し、当該データに基づいて疾患マスタ23の疾患情報から関連性のある疾患を候補として抽出し、疾患マスタ23に記憶する各疾患の基礎点数(疾患基礎点数)から疾患リストを生成する。この段階では、疾患リストの疾患の数は例えば数百程度である。
【0042】
基礎点数は、年齢、性別、季節、特殊要因の影響要素を考慮せず、クリニックの全ての外来患者の内、その疾患を持っている患者数の総数を点数化している。
最も頻出する病気を「100」とし、頻出の可能性がないものを「0」とし、0〜100の間で疾患毎に点数を付与している。
【0043】
次に、基礎点数を初期値として、患者の問診における年齢、性別、季節等の影響要素を含む患者基本情報を反映させて、患者数全体における当該疾患が出現する可能性を示す数値(オッズ)を計算する。
オッズは、基礎点数に各影響要素の数値(%)を乗算したものである。影響要素については後述する。
オッズは、疾患リストに記載されている全ての疾患について算出される。
【0044】
そして、疾患毎のオッズを合計してオッズ合計を算出し、各疾患について、当該疾患のオッズをオッズ合計で除算して、疾患毎に事前確率の基礎データを算出し、疾患リストを事前確率の基礎データの高い順に並び替える。事前確率の基礎データは、事前確率の初期値となるものである。
【0045】
次に、主訴(カテゴライズ質問)によって対象疾患を絞り込む。
カテゴライズ質問と回答の例を説明する。
例えば、「主訴は何ですか?」というカテゴライズ質問に対して、回答として「発熱」があると、発熱時期を特定するため、「いつから熱がありますか?」という次の(カテゴライズ)質問をして、「3日前」の回答があると、これによって対象疾患を絞り込むものである。この絞り込みにより疾患の数は数十程度となる。
【0046】
そして、随伴症状を確認するため、「他の症状は何かありますか?」の質問をし、「喉が痛い」「咳が出る」「下痢がある」との回答があると、その随伴症状に応じて、絞り込まれた疾患リストに記載された各疾患について事前確率の再計算が為されて、疾患リストの並べ替えを行う。
【0047】
ここで、カテゴライズ質問の主訴の回答「発熱」と発熱時期の回答「3日前」のデータに対して各疾患の疾患出現の可能性を示す尤度比(LR:likelihood ratio)が予め定められており、カテゴライズ質問によって特定される尤度比を事前確率の基礎データに乗算して事前確率の再計算を行い、再計算後の事前確率に基づいて疾患リストの並び替えを行う。
【0048】
つまり、尤度比は、質問と回答によって疾患毎に数値が予め決定されている。
質問に対する回答は、疾患と症状を特定することになるので、尤度比は疾患と症状に関連し、尤度比が低い場合は、患者が当該疾患である可能性が低く、尤度比が高い場合は当該疾患である可能性が高いことになる。
事前確率の再計算は、事前確率の基礎データ(x)と尤度比(LR)を用いて、{x/(1−x)*LR}を[1+{x/(1−x)*LR}]で除算することで為される。
【0049】
尚、カテゴライズ質問に対する尤度比を用いた事前確率の再計算を行わず、疾患の絞り込みだけを行うようにしてもよい。
更に、症状回答によって発症様式(慢性・急性)を判別して絞込を行う。
【0050】
そして、鑑別質問では、疾患リストの上位の疾患について、診断の精度を上げるために、尤度比(疾患の確からしさ)が高くなると思われる質問を患者側端末4に出力し、その回答によって得られる尤度比を用いて事前確率を再計算し、疾患リストの並べ替えを行う。
更に、事前確率が高い疾患に関して尤度比が高くなると思われる鑑別質問を患者側端末4に出力して事前確率の再計算を行う。
【0051】
結果として、患者の回答した問診回答結果データと、そこから推論(推測)された疾患の確率(事後確率)を含む疾患リスト(鑑別リスト)が得られる。
以上が診断推論のロジックである。
【0052】
[処理内容:
図4]
次に、問診サーバ1における具体的な問診処理について
図4を参照しながら説明する。
図4は、問診処理のフローチャートである。
問診サーバ1は、
図4に示すように、影響要素入力手段が、患者側端末4に影響要素として年齢、性別、季節、特殊要因を入力させるための画面を表示し、影響要素のデータを入力させて取得する(S1)。
【0053】
影響要素は、疾患の出現頻度に影響を及ぼす要素のことであり、年齢、性別、季節、特殊要因の4つの要素がある。そして、各影響要素について、その内容に応じた疾患の出現頻度を示す数値(点数、%)が規定されている。当該数値は、記憶部12の医療機関マスタ21に記憶されている。影響要素の点数は、疾患毎の基礎点数を採点してオッズを算出する際に用いられる。影響要素の点数及び基礎点数の採点については、後述する。
特殊要因とは、クリニックのある地域の地域性、そのクリニックでの傾向を考慮して特定の疾患の基礎点数を通常より高い点数とするためのデータとなる。
【0054】
影響要素の点数は、疾患毎に出現の可能性をパーセンテージで表したものであり、例えば、性別の場合、ある疾患について女性が男性の9倍出現するのであれば、男性「0.1」(10%)、女性「0.9」(90%)が設定される。
そして、患者が女性であった場合には、当該疾患の基礎点数に0.9が乗算されて採点され、男性であった場合には、疾患基礎点数に0.1が乗算されて採点される。
【0055】
また、年齢の場合、例えば、老人に多い疾患であれば、老人の年齢に「85%」、成人の年齢に「10%」、児童、幼児の年齢には「0%」が設定される。
また、季節の場合、例えば、冬場に流行する疾患であれば、9−11月と12−2月に「40%」、3−5月と6−8月に「10%」が設定される。
【0056】
事前・事後確率演算手段が、入力された影響要素のデータに基づいて、記憶部12の疾患マスタ23を参照して各疾患に関する基礎点数の演算を行う(S2)。
疾患の基礎点数は、事前確率をより精度の高いものにするために、外来による疾患の出現頻度を点数化(外来での出現頻度のランク化)したものである。
【0057】
そして、事前・事後確率演算手段が、基礎点数に各影響要素の点数を乗算して演算(採点)を行う。影響要素は、医療機関マスタ21に記憶されているので、患者の基本情報を元に疾患毎の基礎点数に乗算され、オッズが算出されて、各疾患の事前確率の基礎データが算出される。
【0058】
具体的には、基礎点数に影響要素の数値(%)を乗算して疾患のオッズを演算し、全ての疾患のオッズ合計を分母とし、各疾患のオッズを分子として得られた数値が疾患毎の事前確率の基礎データである。
【0059】
つまり、事前確率の基礎データは、以下に説明するカテゴライズ質問の要素を一切考慮していないものである。そして、カテゴライズ質問に回答することで疾患が絞り込まれて、質問と回答に応じて得られる尤度比を考慮した疾患の事前確率が算出される。
【0060】
次に、疾患絞込手段が、主訴カテゴライズマスタ22、疾患マスタ23、症状マスタ24を参照して、鑑別すべき疾患を絞り込むためのカテゴライズ質問を質問マスタ25から提供し、当該カテゴライズ質問に対する回答により、鑑別すべき疾患を10〜20程度に絞り込み、事前・事後確率演算手段が、絞り込まれた疾患について事前確率を計算(再計算)する(S3)。
【0061】
カテゴライズ質問は、主訴(例えば、「発熱」)によって対象の疾患を20〜50に絞り込み、入力される随伴症状に応じて
事前確率を再計算し、疾患の候補となる鑑別リストを並
べ替え、症状が慢性か急性かの回答によって更に疾患の絞り込みを行い、高い精度の事前確率を求める。
【0062】
鑑別手段が、事前確率が高い疾患について、尤度比が高くなることが期待される質問(疾患の推定に影響が大きい質問)から順番に鑑別質問として患者側端末4に提供し、事前・事後確率演算手段が、その回答結果に応じた尤度比に基づいて各疾患の確率(事前確率)を変動させる(再計算する)(S4)。
【0063】
つまり、鑑別手段が、質問マスタ25から鑑別質問を患者側端末4に提供し、事前・事後確率演算手段が、その回答によって得られた尤度比を用いて各疾患の確率の再計算を行い、更に、鑑別手段が、疾患マスタ23を参照して尤度比が高くなる質問を質問マスタ25から患者側端末4に提供して、事前・事後確率演算手段が、各疾患の確率を再計算する処理を繰り返す。
【0064】
そして、疾患の確率が特定数を超えるか、鑑別質問が一定数を超えた段階(鑑別終了の条件)かを判定し(S5)、鑑別終了の条件でなければ(Noの場合)、処理S4に戻り、鑑別終了の条件であれば(Yesの場合)、鑑別を終了し、問診後の確率(最終確率/事後確率)が高い順に疾患名と最終確率、それに質問と回答内容を実績テーブル26に出力する(S6)。
【0065】
処理S4では、患者が回答した主訴や随伴症状に応じて疾患の事前確率が再計算され、事前確率が高い疾患に関連する質問が鑑別質問として選択されることになる。
このように、回答結果により疾患の事前確率が再計算されて変動し、その変動に応じて鑑別リストが並べ替えられ、更に鑑別精度を高めるための最適な鑑別質問が提供される。
そして、算出された最終確率と疾患名、質問と回答内容が実績テーブル26に記憶され、医師側端末5からのアクセスによって表示部に最終画面として表示される。
【0066】
[問診結果確認画面:
図5]
次に、医師側端末5に提供される問診結果確認画面について
図5を参照しながら説明する。
図5は、医師側端末に表示される問診結果確認画面を示す概略図である。
図5に示すように、医師側端末5の表示画面には、左側に患者の基本情報を示す「患者基礎情報」の欄が表示され、その下側にスタッフが入力した「スタッフコメント」欄が表示される。
【0067】
「患者基礎情報」の欄の右に、患者が回答した主訴や随伴症状となる「症状」の欄が表示され、その下側に鑑別質問となる、例えば「風邪用追加質問」の欄が表示される。
更に、問診結果確認画面の右側に「病歴・生活慣習質問」の欄が表示され、その下側に「診察に関する要望」の欄が表示される。
【0068】
「患者基礎情報」の欄には、ステータス、問診ID、患者名、主訴カテゴライズ、診察券番号、年齢、性別、生年月日、受診日時等の患者の基本情報が表示される。
ステータスは、診察が完了したかどうかを示すものであり、また、主訴カテゴライズは、カテゴライズ質問に回答したことにより、上述した処理によって特定された疾患の確率の高い病名が表示される。
【0069】
「患者基礎情報」の欄の下に、「電子カルテ用フォーマット」のボタンが設けられ、そのボタンをクリックすると、
図5の右下の電子カルテS欄転記用フォーマットとして、患者の基本情報と質問に対する回答をカルテ風に表示させることができる。
「スタッフコメント」欄に記入されたコメントは、病歴・生活慣習質問とその回答として利用されるものである。
【0070】
「症状」欄は、主訴としてカテゴライズ質問への回答に基づく症状、いつから等が表示され、「風邪用追加質問」の欄には、鑑別質問に対して、現在飲んでいる薬、インフルエンザ検査、処方希望の薬、薬の注意点等の回答が表示される。
また、「病歴・生活習慣質問」の欄には、質問に対して、病歴、手術歴、アレルギー等の回答が表示される。
「診察に関する要望」の欄には、クリニック側で任意に追加した質問とその回答が表示される。
【0071】
[最終画面:
図6]
次に、医師側端末5に提供される最終画面について
図6を参照しながら説明する。
図6は、医師側端末に表示される最終画面を示す概略図である。
図6に示すように、医師側端末5の表示画面には、最終確率(事後確率)が高い順に、病気ID、病名5a、基礎点数、年齢、性別、季節に対する影響要素の点数、患者への質問に対する回答に応じた尤度比の点数(5b)、更に事後確率(5c)が、一覧で表示される。
【0072】
図6では、事後確率を更に分かり易くするために、一覧の表の中に細い横方向の棒グラフ(5d)で確率を示している。この棒グラフ(5d)により、事後確率の数字を参照しなくても、おおよその確率を把握できる。
【0073】
また、事後確率の右側に、診断に関するメモ(診断メモ)を記入できるアイコン(5e)を表示しており、そのアイコン(5e)をクリックすると、診断メモを入力して記録できるようになっている。
【0074】
尚、
図6に示した最終画面において、見逃してはいけない重大な疾患にはフラグを付して表示してもよい。これにより、事後確率が低くても、重大な疾患を見落とさないようにすることができるものである。
また、各疾患の事後確率に影響を与えた質問数を表示し、それをクリックすると、その質問の一覧と結果が表示されるように構成してもよい。これにより、確率が低い疾患がきちんと除外されているかどうか確認することができるものである。
【0075】
[応用例1]
以下、本実施の形態の応用例1について説明する。
図5の画面では、「電子カルテ用フォーマット」ボタンで電子カルテS欄転記用フォーマットを表示して、そのデータをコピーし、電子カルテ用のネットワークを介して電子カルテのサーバにアクセスし、当該患者の電子カルテにコピーしたデータをペーストして、電子カルテに患者の基本情報と質問に対する回答を取り込むようにしている。
【0076】
尚、上記の方法では、医師側端末5が疾患を絞り込む問診サーバ1のネットワーク3と電子カルテのネットワークの双方にアクセスする構成であるため、機密性の高い電子カルテのネットワークを問診サーバ1のネットワーク3から完全に分離するものとはなっていない。尚、ネットワーク3は、インターネットを想定している。また、電子カルテへの転記の作業も面倒である。
そこで、問診サーバ1のネットワーク3と電子カルテのネットワークを完全に分離し、電子カルテへの転記を容易にした手法を以下に説明する。
【0077】
[問診内容確認画面:
図7]
患者側端末4で質問事項に患者が回答した結果内容(問診内容)を確認する機能(例えば、確認ボタン)を患者側端末4の画面に設け、問診内容の確認作業が為されると、
図7に示す画面を表示する。
図7は、問診内容確認画面を示す概略図である。
問診内容確認画面では、
図7に示すように、問診内容がテキストで表示されると共にその下に2次元バーコードも表示される。問診内容は、問診処理によって得られるものであるから、患者毎に質問事項と回答内容が異なるものである。
【0078】
問診の質問事項と回答のデータは、問診サーバ1で保持しているので、患者側端末4で確認作業が為されると、問診サーバ1から患者側端末4に当該データが送信され、
図7の画面を患者側端末4に表示させるものとなっている。
ここで、問診サーバ1が接続するネットワーク3と電子カルテを記憶する電子カルテのサーバが接続するネットワークは、分離されており、双方に接続する端末は設けられていない。
【0079】
電子カルテのネットワークに接続する端末装置(電子カルテ端末装置)に2次元バーコードリーダーを接続し、そのバーコードリーダーで
図7の2次元バーコードを読み取ることで、電子カルテのサーバに問診内容のテキストデータが取り込まれる(転記される)ようになっている。
尚、
図7の2次元バーコードを電子カルテ端末装置がバーコードリーダーで読み取った後に、
図7の下側の「転記済み」ボタンをタッチしてチェックを入れるようにすると、転記を行ったか否かが容易に判別できる。
【0080】
クリニックが貸与した患者側端末4に2次元バーコードを表示させて、電子カルテ端末装置のバーコードリーダーで読み取らせる場合には、常に電子カルテへの取り込みが可能である。しかし、患者個人端末装置に2次元バーコードを表示させて電子カルテ端末装置のバーコードリーダーで読み取らせる場合には、当該端末装置を自宅に置き忘れることも想定され、電子カルテへの取り込みができなくなることがある。
【0081】
そこで、患者個人端末装置のアプリでは、問診内容の2次元バーコードを表示させず、確認だけを行うようにし、クリニック側の端末で問診サーバ1から問診内容をダウンロードして
図7の画面を表示させ、電子カルテ端末装置のバーコードリーダーで読み取るようにしてもよい。
このように、問診サーバ1が接続するネットワーク3と電子カルテのサーバが接続するネットワークを分離し、電子カルテへの転記を2次元バーコードにより行うようにすることで、セキュリティを向上させることができる。
【0082】
[応用例2]
次に、本実施の形態の応用例2について説明する。
応用例2では、問診質問設計アルゴリズムを医師が参照できるよう1画面で表示する機能を設けたものである。つまり、問診票の画面遷移(出現する質問及び出現する条件、回答による各疾患の点数の増減等)を一覧表示する。これにより、医師は、質問設計アルゴリズムを視覚的に確認し、質問の遷移を設計できることになる。
【0083】
具体的には、主訴の詳細についての回答候補と出現条件、症状の詳細についての回答候補と出現条件、薬や治療、アレルギーについての回答候補と出現条件等が一覧表示されるようになっている。
【0084】
[実施の形態の効果]
本システムによれば、問診サーバ1が、患者側端末4から入力された年齢、性別等の影響要素によって問診DB2に記憶された基礎点数を演算して事前確率の基礎データを求め、カテゴライズ質問により鑑別すべき疾患を絞り込み、絞り込まれた疾患の事前確率を計算し、事前確率が高い疾患の尤度比が高くなると期待される質問から順番に鑑別質問を患者側端末4に提供し、その回答結果に基づいて各疾患の確率を変動させ、鑑別終了の条件で鑑別を終了し、問診後の確率(最終確率)が高い順に疾患名と最終確率を医師側端末5に提供するものであり、これにより、問診と診断を効率化できる効果がある。
【課題】 問診の質問への回答内容に応じて質問内容を遷移させ、問診結果に基づいて可能性のある疾患の確率を推定して医師に提供して、問診と診断を効率化できる問診システム及びそのプログラムを提供する。
【解決手段】 問診サーバ1が、患者側端末4から入力された年齢、性別等の影響要素によって問診DB2に記憶された基礎点数を演算して事前確率の基礎データを求め、カテゴライズ質問により鑑別すべき疾患を絞り込み、絞り込まれた疾患の事前確率を計算し、事前確率が高い疾患の推定に影響が大きい質問から順番に鑑別質問を患者側端末4に提供し、その回答結果に基づいて各疾患の確率を変動させ、鑑別終了の条件で鑑別を終了し、問診後の確率(最終確率)が高い順に疾患名と最終確率を医師側端末5に提供する。