特許第6496893号(P6496893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6496893-氾濫防止機構を備えた堤防 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6496893
(24)【登録日】2019年3月15日
(45)【発行日】2019年4月10日
(54)【発明の名称】氾濫防止機構を備えた堤防
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20190401BHJP
   E02B 3/10 20060101ALI20190401BHJP
【FI】
   E02B3/06
   E02B3/10
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-146294(P2018-146294)
(22)【出願日】2018年7月17日
【審査請求日】2018年8月8日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305007148
【氏名又は名称】中川 輝行
(72)【発明者】
【氏名】中川 輝行
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−293811(JP,A)
【文献】 特開2015−117474(JP,A)
【文献】 特開2016−217062(JP,A)
【文献】 特開2008−088657(JP,A)
【文献】 特開2005−282284(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3183033(JP,U)
【文献】 特開2003−138546(JP,A)
【文献】 米国特許第05032038(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04
E02B 3/06
E02B 3/10
E02B 3/12
E02B 7/02
E02B 7/16
E02B 7/20
E02B 8/06
E02B 8/08
E03F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の氾濫防止機構を備えた堤防(1)であって、前記堤防(1)の頂部(3)に余剰の雨水の逃げ道となる凹部(2)が設けられており、該凹部(2)として底面(4)と頂部(3)の上場(3a)との高低差(H)が異なる深型凹部(2a)と浅型凹部(2b)とのいずれかが設けられており、河川の蛇行の円周となる地点において、外周部分に深型凹部(2a)を設け、内周部分に浅型凹部(2b)を設けたことを特徴とする氾濫防止機構を備えた堤防。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の氾濫を防止することができる堤防に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からの河川Fの堤防11は土盛りの素材で造成されている。
【0003】
豪雨が発生すると洪水により氾濫に発展する恐れがあるため、災害を防止する観点から川幅を拡幅して堤防11を嵩上げしての造成で氾濫に対応がなされている。
【0004】
従来の堤防11は余剰の雨水の排出機構は設けられていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の堤防11は素材が土盛りにより造成されているため、集中豪雨により洪水が発生して氾濫となり雨水が堤防11の頂部13を乗り越えると、堤防11の外側の法面15が抉られ結果的に堤防11の決壊を招くこととなる、
【0006】
集中豪雨の自然災害により河川Fの上流付近をはじめ、平坦な地域までが大量の降雨に見舞われた場合、雨水が支流等から合流して本流となり洪水を引き起こす、本流が洪水により氾濫の発生となると、洪水の氾濫により堤防11の決壊に至る、堤防11の決壊ともなれば過去の幾多の例を取り上げるまでもなく、人命を伴う甚大な災害を被るとともに永年苦労の上に築き上げた住民の財産が一瞬にして消滅されてしまうこと明らかである。
【0007】
集中豪雨が発生すると洪水により氾濫に発展する恐れがあるため、災害を防止する観点から川幅を拡幅して堤防11を嵩上げしての造成で氾濫に対応がなされている。
しかしながら、川幅を拡幅して堤防11を嵩上げすればするほど堤防内の雨水は膨大な量となり、堤防11の強度が限界点に達した時点で決壊に至ったとしたら、壊滅的災害、打撃を被ることはあきらかである。
本願発明の目的は河川Fの洪水による氾濫を未然に防止可能とする堤防1を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の1は河川の氾濫防止機構を備えた堤防1であって、前記堤防1の頂部3に余剰の雨水の逃げ道となる凹部2を設けたことを特徴とする氾濫防止機構を備えた堤防である。
【0009】
本願発明の2は前記凹部2が有為な深さを有し、堤防1の頂部3の所定位置に複数個所設けられていることを特徴とする本願発明の1に記載の氾濫防止機構を備えた堤防である。
【0010】
本願発明の3は前記凹部2の底面4と頂部3の上場3aとの高低差Hを複数種類設け、凹部深型2aと凹部浅型2bの2種類設けたことを特徴とする本願発明1又は2に記載の氾濫防止機構を備えた堤防である。
【0011】
本願発明の4は前記堤防1の側面に法面5と排水口6を設けたことを特徴とする本願発明の1〜3のいずれかに記載の氾濫防止機構を備えた堤防である。
【発明の効果】
【0012】
集中豪雨により洪水となった河川Fの堤防1において、堤防1の頂部3に余剰の雨水の逃げ道となる凹部2を設けて、該設けた凹部2の底面4bの位置を警戒水位9より低い位置に設けたことにより、洪水が警戒水位9に到達以前に堤防1の頂部3に設けた凹部2から雨水が排出されることにより氾濫が防止され災害を最小限に抑えることができる。
【0013】
集中豪雨により洪水となった河川Fの堤防1の複数箇所において、余剰の雨水が氾濫防止機構を設けて排出されることによっての洪水の解消と、雨水の排出によって堤防1内の水量に余裕が生じるため、堤防1の間隔距離(現状において川幅数百メートルに及ぶ)を縮小させてもなんら危険性が増すことがなく、よって川幅が縮小された面積の土地(国土)が再利用されることによって国への貢献となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】 本願発明の河川の鳥瞰図、生活圏Dを避けた地域に本願発明の氾濫防止機構を備えた図である。
図2図1のB−Bの側面図である。
図3図1のC−Cの断面斜視図である。
図4図1のA−Aの断面図である。
図5図1のB−Bの断面で凹部深型浅型の図である。
図6】 本願発明の堤防1の凹部底面4の傾斜角度(α)を示す図である。
図7】 従来の堤防の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願発明は集中豪雨により河川本流で発生した洪水による氾濫を抑制するために、堤防内の余剰の雨水を排出して堤防内の雨水を減少させることに目的がある。対処方法として堤防1に水抜きするための凹部2を複数個所設ける手順1と、堤防1の凹部2の底面4と頂部3の高低差Hを調整する手順2と、堤防1の凹部2の底面4で河川Fの水嵩の調整とする手順3と、この順で調整することを特徴とする余剰の雨水を調整する方法である。
【0016】
堤防1の頂部3の凹部2が有為な深さ(浅型60〜90cm、深型90〜120cmが好適である)を有し、堤防1の警戒水位9から凹部2の低面4までの距離は約30〜50cmが好適である、洪水となった雨水を堤防1の頂部3の凹部2を、堤防1の所定位置に複数箇所設けて堤防1内の洪水を分散して放流することにより、効率的に氾濫を防止することができる。
【0017】
堤防1の凹部2の底面4と頂部3の上場3aとの高低差Hを複数種設け、又凹部深型2a(90〜120cm)と凹部浅型2b(60〜90cm)の2種類数のいずれかを設置する箇所を統計的に選び出し、選びだした箇所ごとに設置することにより氾濫を防止することができる。
【0018】
堤防1の頂部3と凹部底面4と法面5と排水口6からなる氾濫防止機構であって、堤防1の警戒水位9より低い位置の凹部の底面4の堤防凹部底面の内側4bから、凹部底面の外側4aに向かって下り傾斜角度αを設けることにより、雨水が退け易く水嵩の調整に役立てることができる。
【0019】
氾濫防止機構の構造としては、堤防1の凹部2の側面7と凹部底面4の保護と、法面5の側面7の保護と法面5の底面を抉り対応の構造としたことによって、河川Fの雨水が警戒水位9より低い位置の凹部底面の内側4bから放出されて、凹部底面の内側4bから低位置となる凹部底面4aが傾斜角度αとすることにより、雨水がスムーズな流水と、法面5の底面が抉り対応の構造としたことにより流水に抉られることなく法面5を流水して、排水口6から排水される。
【0020】
堤防1の警戒水位9より低い位置で堤防1の頂部3の凹部2の堤防凹部底面の内側4bから排出された雨水が傾斜角度αとなる下りの先の、堤防凹部底面の外側4aに流水して法面5を流水し、排水口6から排水され排水路10に流水され、又洪水が溢れた時点において本流の水位より低位置が見込まれる近辺の小川等に導水されて合流する。
【実施例】
【0021】
以下添付図面に従って実施例を説明する。図1は平常時において、堤防1内の雄大な河川敷Eでは小川Fに等しい規模の流水にすぎない、ところが一旦、上流の山間部又は平坦部が集中豪雨に等しい降雨となると洪水となり、洪水が上流から下流に至る河川Fの堤防1内では雨量は収容の限界に達する、ために堤防外に雨水を逃し調整を図る必要上生活圏Dに災害、影響が及ばない地域又は対岸、遠方の地域等の箇所で洪水となった雨水を堤防1の凹部2で排出し、堤防1内の水嵩を制することができる氾濫防止機構である。
【0022】
図2は堤防の側面図である。上流の山間部から平坦部に至る広範囲で豪雨を被ると洪水となり、上流から下流に至り河川の収容量は警戒水位9を超えた限界点に達し氾濫を引き起こす,河川Fの氾濫を防止するため堤防1の頂部3に余剰の雨水の逃げ道となる凹部2を複数個所設け、該凹部2の底面4の堤防凹部底面の内側4bの位置を警戒水位9の位置より低位置(深型の底面4との距離は約30〜50cm)とすることにより、堤防1内の洪水となった雨水が流出、流出した雨水は更に傾斜角度αを設けて低位置とした堤防凹部底面の外側4aにスムーズに流水、更に流水の抉りに対応の構造とした法面5を流水、排水口6より排水する事を特徴とした氾濫防止機構である。
【0023】
図3は堤防の断面斜視図である。上流地域での豪雨の発生による洪水により、河川Fの堤防1の頂部3に迫る勢いの雨水に対し、堤防1の頂部3に設けた両脇が防護壁7で防護され高低差Hが設けられた凹部2から雨水が排出され、流水による抉り対応の構造とした法面5を流水して排水口6から排水とする氾濫防止機構である
【0024】
図4は氾濫防止機構のA−Aの断面図である、上流での豪雨により発生した洪水を、警戒水位9の位置より低位置とした防護壁7で防護の凹部2の、堤防底面の内側4bから排出された雨水が、更に傾斜角度αをもたせた低位置となる堤防凹部底面の外側4aへのスムーズな流水、抉り対応の構造とした防護壁7で防護された法面5を流水し、排水口6から排水路10への流水とする氾濫防止機構である。
【0025】
本願発明の堤防1は図4に示すとおり浮遊物防除板8を備えている。上流山間部での豪雨となると崩落事故により山肌が削られ、山肌が削られると草木等が浮遊物となり洪水に流される。洪水に流された浮遊物が堤防1の頂部3の開口となった凹部2から洪水と一緒に排出されるとなると、排水処理先が浮遊物の被害の対象となる。二次被害を無くすための対処法として、堤防1の頂部3の上場3aから堤防の内面の法面に添って、凹部底面4より浮遊物に影響されない低位置までを覆った形に浮遊物防除板8を備えている。
【0026】
すなわち、浮遊物防除板8は堤防1の頂部3の上場3aの位置から凹部底面4の内側4bよりも低い位置に設けられている。
【0027】
また浮遊物防除板8の上端8cが警戒水位9より高い位置に、又下端8aは洪水時浮遊物の下限となる位置より更に影響が及ばない低位置とする。
【0028】
浮遊物に影響されない低位置まで浮遊物防除板8で覆うことにして、浮遊物防除板8の裏面8bと法面5との間にある開口スペースSは洪水の排出に有効な寸法の開口とする、洪水が浮遊物防除板8の裏面8b側にある開口スペースSを通過して、堤防凹部底面の内側4bから堤防凹部の防護壁7で囲われたスペースを堤防凹部底面の外側4aに向かって流水して法面5を経て排水口から排水される。
【0029】
図5は堤防1の凹部2の深型、浅型の図である。洪水により大河となった河川の蛇行の大きな円周となる地点において、遠心力により堤防に負担が生じた外周部分で凹部2を深型2aとして水量を多く逃すことにより、堤防1の負担を減らすことができる、又内周の部分においては浅型2bもしくは通常の高低差Hとし、調整を図り設けることとした氾濫防止機構である。
【0030】
図6は本願発明の堤防1の凹部底面4の傾斜角度αを示す図である。堤防凹部底面4bの内側から排出された雨水が傾斜をもたせた堤防凹部底面4aの外側に向かってスムーズに流水が可能となるために設けた傾斜角度αである。傾斜角度αは水平線に対して10°〜30°が好適である。
【0031】
図7は従来の堤防11の断面図である、従来の堤防11は土盛りで造成されているため、洪水の氾濫により雨水が堤防11の頂部13を乗り越えると、乗り越えた雨水に堤防11の外面の法面15が抉りとられる、外面の法面15が抉りとられると頂部13が崩壊、と同時に堤防11の決壊に発展して行くこととなる。
【符号の説明】
【0032】
1 本願発明の河川の堤防
2 凹部
2a 凹部(深型)
2b 凹部(浅型)
3 堤防の頂部
3a 頂部の上場
4 凹部の底面
4a 堤防凹部底面の外側
4b 堤防凹部底面の内側
5 法面
6 排水口
7 防護壁
8 浮遊物防除板
8a 浮遊物防除板の下端
8b 浮遊物防除板の裏面
8c 浮遊物防除板の上端
S 開口スペース
9 警戒水位
10 排水路
D 生活圏
E 河川敷
F 河川
H 堤防の頂部表面と凹部底面との高低差
α 堤防1の凹部2の底面4と水平線との傾斜角度
11 従来の堤防
13 従来の堤防の頂部
15 従来の堤防の法面
【要約】
【課題】 豪雨により河川が洪水となり氾濫を引き起こし、堤防1の頂部から溢れた出た雨水が外側法面を抉り取り堤防の決壊を引き起こす。
【解決手段】水害を防止するため川幅を拡幅して高く築き上げた河川の堤防1において、土盛りにより築かれた現状の堤防1においては、洪水により氾濫した雨水が溢れて堤防1の頂部3を乗り越えてしまったら法面を抉り取られ、結果的に決壊を免れることができない。
解決手段として市街地、生活圏を避けた地域、又は水害に最小限となる地域の複数個所で、河川の堤防1の頂部3に凹部2を設けて、設けた凹部2の複数個所で分散して溢れた余剰の雨水を排出して氾濫を未然に防止する、又洪水により高水位となった本流の河川から排出された雨水は低水位が見込まれる近辺の小河川等に導水しての合流させての処理方法が好適である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7